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神経細胞の雑種形成 石 井 一 宏 ,(2)

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神経細胞の雑種形成 石 井 一 宏 ,(2)
1
3
神経 細胞 の雑種 形成
石
井
一
宏
京都大学 ウイルス研究所細胞生物学部 門
を細胞生物学的 ・分 子生物学的に よ りよ く理解す
1.は じ め に
るこ とが で きる
。
さらに,神経系の発生過程 にお
近年,神経機能 を細胞培養系 で再現す る方法論
け る細胞相互作用 に関す る分子生物学的研究がや
を開発 しよ うとい う気運が高 まって きた。 この気
りやす くな る 神経栄養 因子の研究がその好例 の
運 は,神経科学の研究に分子生物学や神経工学の
一つ であ る
手法 を導 入 し, そ して駆使す るための一つの ステ
て も, 同 じ性質 を持 った細胞 を大量に扱 えるこ と
ップ として重要 であるとい う認識に基づ いている。
は生化学的 ・分 子生物学的研究 に とってたいへ ん
。
。
第二 に, どの ような研究分 野におい
神経科学においては細胞培養系 をもちいた研究は,
好都合 であ る。 第三 に,脳 におけ る記憶 の細胞生
三つの観点か ら行 われつつ ある。
(
1
)神経細胞の初
物学的 ・分 子生物学的理解 は, 記憶現象 を細胞培
代培養 と神経栄養 因子の研 究,
(
2
)神経 回路の形成
養系において解析 す るこ とに よ り初めて可能 にな
の誘導 -
るのではないか と思 われ る
初代培養 した神経細胞ならびに脳組織
3)
の薄片におけ る電気生理学的研究 も含 まれ る,(
神経系細胞の培養株 の樹立, の三分 野であ る 本
。
3.腫癌組織 由来培養細胞株
。
稿 では,第三の神経細胞の培養株 について見て行
こ
つ
一般 に,腹痛組織の細胞 を培養す ると株化 しや
すい。神経系 では神経芽細胞腫か ら多 くの培養細
。
胞株が樹立 されてい る
。
2.培養細胞株の樹立の方法 と意義
ラッ トやマ ウスな ど実験動物 を用 いた場合 は,
神経細胞の培養系において も, その培養株 の樹
神経腫癌 は 自然発生ガ ンだけではな く,動物 に発
立の方法は他 の種類の細胞の場合 と変 わ りはない。
ガ ン剤 を注入 し人工 的に腫癌 をつ くらせ, その腫
その方法は三通 り知 られてい る。(
1
)神経系の施療
癌 をもちいて培養細胞株 を樹立す ることも行 われ
組織 の培養。 この方法 は既 に多 くの細胞株 を樹立
0
3(
Sc
hube
r
te
tal
リ1
9
7
4
)や RT4
てい る。 B1
している。(
2)胎児あるいは若年動物 由来神経細胞
AC (
Dr
o
msandSue
oka, 1
9
8
7
)な どがある。 あ
を初代培養 し, そこへ細胞の不死化 をもた らすガ
るいは, ガ ン遺伝 子 を組み込んだ レ トロウイルス
Ⅰ
mmo
r
t
al
i
z
i
ngGe
ne
s
)を細胞移 入す る
ン遺伝子 (
3
)細胞融合法に よる雑種細胞の形成。この
方法。(
子導入動物) をつ くり, その胎 児, あ るいは出生
三通 りの方法 は, 当然予想 され るよ うにそれぞれ
後成体 になって発生 して くる施療 を利用す る方法
長所 と短所 を合 わせ もってお り,細胞の特性や研
1
)(
Ha
mma
n
ge
ta1
.
,
も知 られてい る(
マ ウス RT-
究の 目的に応 じて使 い分 け る必要が あ る。具体 的
1
9
9
0
)
0
な話 はそれ ぞれの箇所 で述べ るこ とに しよう
。
を受精卵に注入 し, トランスゲニ ック動物 (
遺伝
ヒ トの場合 は もちろん, 自然発生的に形成 され
それでは,培養細胞株 を樹立 した り, それ を用
I
MR
た神経芽腫 をもちいて培養株 を樹立 している。
いて研究す ることはどんな利点があるのだろうか。
まず,発生生物学的には次の ような利点が考 え ら
" 1
9
7
0
)
, SKNDZ,
3
2(
Tum
il
o
wi
c
ze
t al
GOTO, RTLN1(
Hor
i
ie
ta
l
リ1
9
8
9
)な ど多 く
れ る 発生過程 におけ る細胞分化 の様子は細胞系
の培養株が知 られてい る。
。
譜の作製によ り把握 されてい るが,幹細胞 を培養
ここで,動物 に実験的に腫癌 を作 らせ, その腫
し, さらには株化 で きれば, その細胞分イヒの様子
壕か ら神経性細胞培養株 を樹立 した例 を紹介 しよ
1
4
それは ラッ ト神経様細胞培養株 B1
03であ る
胞に感染 させ る とウ イルスゲ ノムは細胞の染色体
(
Sc
hube
r
te
ta1
.
,1
97
4
)
。妊娠 1
5日目の BDI
Xラ
ッ トにニ トロソエテール ウレア (
NEU)を注射 し
に組み込 まれ,細胞の遺伝 子 として転写 され る。
た ところ, その新生児は出生後 4ケ月か ら1
0ケ月
胞株 として半永 久的に増殖 し続けることがで きる
の間に約半数の個体 が神経異常症状 をあ らわした。
その ようなガ ン遺伝 子は不死化遺伝子 と呼ばれて
3%の ものに
それ ら個体 を解剖学的に調べ る と, 9
い る 不死化遺伝子には my
c,SV4
0T坑原,求
う
。
その よ うな細胞は もはや老化現象 はお こさず,細
。
。
中枢神経系 に腫癌が見つか った。 そこで, その腫
リオーマウイルス T一抗原,パ ピローマウイルス E7
癌 を取 り出 し,培養 した.培養 方法 は簡単 で, ま
な どが知 られてい る。 このガン遺伝子が どの様 な
ず腫壕組織 を細か く切 り刻 み,細胞 を単離 し,組
仕組みで細胞の不死化 をもた らすのであるかは,
0%の牛胎 児
織の小 片 とともに培養皿 にまいて, 2
まだ十分 に理解 されていない。 ここで特筆すべ き
gl
eMEM 培養液 中で培養 した。そ
血清 を含 む Ea
こ とは, この方法が有効 なのは,少 な くとも一 回
の後, クローニ ング ・カルチャー をして, 多 くの
は細胞分裂 で きる細胞に限 られ るこ とであ る。 レ
0
3細胞はその内の一つの
クロー ンを分離 した。B1
トロウイルス ・ゲ ノムが細胞の染色体 に組み込 ま
クロー ンであ る 著者 らは,分離 した各 クロー ン
れ るためには この条件 が必要 なのである
。
が神経性細胞であ るか ど うか をいろいろな方法 で
。
ところで,腫癌細胞が培養系において細胞株 に
調べ てい る。電気生理学的性質,す なわち電気的
な りやす い とい う傾 向は, たいていの腫癌細胞で
興奮膜 をもっていた クロー ンは B3
5
, B5
0
, B6
5
,
はガン遺伝子が発現 してい るとい う事実 と関係 が
B1
03
,B1
0
4の五つの クロー ンのみ であった。BI
O
3
あると推定 されてい る
細胞はの ちほ ど述べ るように筆者 らの研究 に も使
われた。
。
近年,神経系の細胞に もこの方法が採用 され始
め た。 まだ,報告例 は少 ないが,神経細胞や幹細
なお,神経細胞の分化 のモデル として よ く使 わ
胞や グ リア細胞の培養株が とられてい る (
表 1)
0
れている PC1
2
細胞はラット副 腎髄質褐色細胞腫か
その具体例 につ いて見 て い こ う (
Evr
ar
de
ta1
.
,
Gr
e
e
neandTi
s
c
hl
er
,
ら分離 された培養株 である(
1
9
9
0
)
0
1
97
6)
0
出生後 1日目のマ ウスの脳の線状体 をとりだし,
細胞 を単離 して培養 した。培養液 はダルベ ッコ-
4.不死化遺伝子の利用
の MEM に 1
0%牛胎 児血清 を加 えた ものである
。
発生膳 に しろ成体 の組織 に しろ, これ らの細胞
を初代培養す るとたいていの場合 は何 回かの細胞
分裂 を行 うが,継代培養 して行 くと,次第に増殖
性 が低下 し,つ いには細胞は死滅す る
。
この現象
を細胞の加齢 と呼 び,増殖性 の低下 した細胞 を老
化細胞 と呼んでいる。
実際には, この老化現象 を切 り抜けて半永久的
に増殖能 を獲得す る場合 が あ る
。
この よ うな現象
を細胞の不死化 と呼び, こ うして得 られた細胞集
団 を細胞株 と呼んでいる 線維芽細胞はその代表
。
的 な例 の一つ であ る。
しか し,正常組織の細胞 を培養 して, そこか ら
細胞株 を得 るにはその頻度が極 めて低 く, たいん効率 が悪 いのが現状 である
。
そこで, ガ ン遺伝
子 をもちいる方法が開発 された。 ガン遺伝 子 を組
換体 レ トロウイルスに挿入 し, その ウイル スを細
表 1 不死化遺伝 子の細 胞内移 入による培養細胞株 の樹立
TRANSFEROFI
MMORTALI
ZI
NGGENES
(a) Ne
ur
onalCe
l
lLi
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9
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RT1:Re
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SV4
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mma
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(b) Gl
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ST1
5
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M1
5
B:PN2RatCe
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l
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SV4
0
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vmyc
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St
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SVLT.
3.
8.PN1
Mo
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SV4
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SV4
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99
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Pol
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Gal
i
a
nae
ta1
初代培養 細胞に不死化遺伝 子を導 入す る と,神経細胞のみ ならず グ 1
)ア
細胞 (
神経膿細胞)や神経系前駆細胞な ども樹 立され る. ここでは, そ
の ような細胞株 の数例 を紹介 した。
1
5
0Lar
geT遺伝 子 をも
細胞 を 1日間培養後, SV4
第一の組合せ は,腫癌細 胞が細胞融合 したのち
つ組換体 レ トロウイルスを感染 させ る 培養液 を
雑種細胞になる と, その腫癌性が喪失 した り減少
交換後,培養 を続けた。 この際,培養液 にはネオ
す る場合 が あ る とい う現象,す なわち腫癌細胞の
1
8を入れてお く。
マ イシン誘導体 の一つ であ る G4
正常化現象 を利用 しよ うと言 うのであ る。 この様
組換体 DNA にはネオマ イシン耐性遺伝子が入 っ
な雑種細胞が得 られ る と, その細胞が薬 品処理 な
。
1
8
含有
ているので, この DNA をもつ細胞は G4
どに よ り細胞分化 した時,分化 形質 の発現が促進
培養液 中で増殖 で きるが, この DNA をもたない
された り, 長期 間安 定 した状態が維持 され るこ と
細胞は死滅す る。 か くして,不死化遺伝子 をもっ
が期待 され る 後程述べ る BI
M 細胞 (
I
s
hi
ie
ta1
.
,
た細胞だけが増殖 して コロニー を形成す る 分離
た。牛胎児血清 を含む培養液 中で培養 した時,細
1
9
9
0
)は この よ うな性質 を示 した。 Ni
r
e
nbe
r
gら
の NG1
0
81
5細胞 もこの組合せ の一例 であ り,マ
ウス神経芽腫 由来培養細胞株 N1
8
TG2とラッ ト
グリオーマ細胞 とから作 られた雑種細胞である(
1
9
8
3
胞密度が飽和 に達す る と, この細胞はアス トロサ
年 に総 説あ り)
。
r
.
SVLT.
3.
8と名づけた。
した クロー ンの一つ を St
この細胞は分化能 に関 して興 味深い性質 を示 し
。
0
イ トに分化 した。 ところが,無血清培地で培養 す
第二 と第三 の組合せ は同 じよ うに見 えるが, 莱
る と,神経細胞に分化 したのである。 以上 の結果
二の場合 は細胞分裂能 を持 っている神経細胞 (し
は, この細胞が神経細胞 とグ リア細 胞 との前駆細
たが って,主 として胎 児脳 の神経細胞である)に
胞である事 を示 してお り, しか も,細胞分裂能の
ついてであ り, 第三 の場合 は分裂能 を持 たない神
あ る前駆細胞が出生後 1日日の線状体 に も存在す
経細胞の場合 を考 えてい る
ることが明 らかにされたのであ る
初代培養細胞で融合 した細胞が増殖能 を持 ってい
。
5.雑種細胞の形成
。
もっ とも,実際 には
Pl
at
i
c
ae
ta1
.
,
たか どうか を見分 け ることは難 しい (
1
9
8
3
)
。第三の場合,特 に,脳 の記憶細胞 (
細胞分
ウイル スあ るいはポ リエチ レング リコール をも
裂能 を持 っていない と考 え られている)が培養細
ちいて細胞融合 を誘導 し, そこか ら雑種細胞 を分
胞株 と融合 し, その後細胞分裂 を行 って雑種細胞
離す る方法は, モ ノクローナル抗体 の産生や ヒ ト
を形成すれば, そ してその雑種細胞が記憶 に関す
染色体 のマ ッピングにおいて 多大な貢献 を果 た し
る細胞生理学的 ・分 子生物学的諸性質 を発現す る
た。
な らば,脳の記憶現象 を細胞培養 系で研究す るす
この方法が神経系細胞の培養株 の樹立に利用 さ
れつつ ある
。
この方法の利点は幾つか あげ られ る
が,最 も興味深 い点は,細胞分裂能 を持 っていな
い細胞で も培養株 として樹立で きる可能性があ る
ことであ る
。
もちろん, この場合 その細胞のい く
ぼ らしい実験系が得 られ るこ とが期待 され る
。
6.BI
M 細胞 につ いて
ここで,私 たちの研 究 につ いて簡単に紹介 した
M 細胞 は,ヒ ト神経芽腫細胞 とラッ ト神経
い。BI
つかの特性 だけ を持 った雑種細胞が得 られ るわけ
様細胞 とを融合 させ て得 られた雑種細胞であ る
。
である 第二 に,細胞融合 に もちい る細胞数が少
両親細胞 ともに腫癌性細胞であるが, その雑種細
ない場合 で も, 目的 とす る雑種細胞が得 られ る可
胞 BI
M は部分 的に正常細胞の性質 を獲得 した。
能性が高 いこと。第三 に,比較 的短期 間 (
2
0
-3
0
BI
M 細胞は dbc
AMP に反応 して細胞分化 を行
日程度)で雑種細胞が えられ るこ とな どである。
い,細胞体 は丸 くな り,長 い突起 を伸展 させ る。
。
1)
細胞の組合せ としては,三通 り考 え られ る。(
二種類の培養細胞株 のあいだでの細胞融合 ,(
2)培
この反応 は早 く,薬 品投与後3
0
分 に細胞の形態変
8時間位 で
化 を顕微鏡下 で観察 で きる その後, 1
。
養細胞株 ×初代培養 の細胞 (
あ るいは神経組織か
形態学的には細胞分化 は完 了す る。 この ような性
,(
3)培養細胞株 ×
ら細胞 を単離後 ただちに用いる)
M 細胞 につ いて もう少 し詳 し く説明
質 をもつ BI
記憶細胞。 この ような細胞の組合せ の意図につ い
したい。
て簡 単に説明 したい。
】
6
(
a) チ ミジン要求細胞の樹立
雑種形成 においては,雑種 細胞だけが生 き残 り,
両親細胞が死滅す る選択培地が使 われ る。一般 に,
名ずけた
(
I
s
hi
ie
ta
】
リ1
9
9
0
)
0
(
C) BI
M 細胞
BI
M 細胞 は平均 して1
5
6
本の染色体 を持 ってい
ヒ ト細胞はウアバ インに対 して非常 に感受性が高
た。詳 しい核 型分析 は まだ行 っていないが, ヒ ト
0
0
倍か
く,ラッ トやマ ウス細胞は ヒ ト細胞 よ りも1
8
は容易 に同定 できた。
I
MR3
2
細胞
染色体 ♯1と1
ら1
,
0
0
0
倍 も感受性が低 いOそこで,親細胞の一つ
mycの座位
では,染色体 ♯1にはガ ン遺伝 子 N-
I
MR1
3
2
はウアバ インで選択的に死滅 させ られるO
もうーつの親細胞 B1
0
3
細胞はその ような選択に役
立つマー カー を持 っていないので,B1
0
3
細胞か ら
チ ミジン要求株 を作 った。 その細胞 を B3
T 細胞
と呼んだ (
I
s
h
i
i
,1
9
9) B3
T 細胞 は ピ リミジン
生合成系の酵素の一つ,TMP合成酵素 (
TS)(図
0
0
があ り, ♯1
8には
TS遺伝 子の座位 があ るこ とが
myc遺伝 子
知 られてい る。正常 ヒ ト細胞 では,Nは染色体 ♯2に座位 しているが,神経芽腫細胞 で
は Nmyc遺伝 子 に遺伝 子増幅が起 こ り,かつ染
Sh
i
l
o
he
ta
1
.
,
1
9
8
5
)
0
色体 ♯1に転座 したのである (
興味深 いこ とに,BI
M 細胞 は増殖 して,細胞密
1) に変異 を起 こ してお り, その酵素 活性が極 め
度が飽和状 態に達す ると,増殖 を停 止 して休 止期
3
T
て低 いのであると推測 されてい る。 そこで,B
に入 った。 そ して, 同時に神経突起 が伸展 した。
細胞は TMP欠損 を起 こ し,DNA合成が停 止 し,
I
M細胞が正常細胞の性質 を獲得 し
この現象は,B
細胞増殖がで きないで,つ いには死滅す る。 チ ミ
Tや
たことを示 してい る。親細胞 であ る B3
ジン要求株の分雛の方法につ いては ここでは省略
I
MR
3
2
はこの ような性質 を示 さない。しか し,
BI
M細
したい。
胞は完全 に正常細胞に変化 したわけではない。 寒
天培養す る とコロニー を作 ったのであ る (
図 2)0
(
b) 雑 種 形 成
B3
T細胞 と I
MR3
2
細胞 とをポ リエチレング リ
(
PEG)1
5
0
0(
BDH)を用 いて融合 させ た。
その後,細胞 を選択培地 中で1
7日間培養 した。八
つの コロニーが得 られ, その内の一つ を B
I
Mと
コール
この性質は腫癌細胞の ものであ り,正常細胞は寒
天中では,す なわち細胞の形が円形の時 には増殖
で きない。したが って,BI
M 細胞は部分 的に正常
細胞の性質 を獲得 したわけであ る。
BI
M 細胞 は環状 AMP に関す る薬 品に反応 し
PYRr
MJ
DF
NE METABOLt
SMS
OMP
く
≠
∫
-- Pyrazofuri
n
uK
ur
)L
MP
↓
UDP
J
TK
dU
〉
,K
dT
dU
i
DP dCMp-D
dCK
dL
NPく
dCMP← dC
J TS
)dTMP
図 1 ピ リミジン生合成 系 (
一部 )
略号 .
UK .り りジン ・キナーゼ .TK 'チ ミジン ・
CMpD.dCMpデ ア ミナ- ゼ.TS二
キナ-ゼ ,d
TMP一合成酵素 ,d
CK:デ オキ シシチ ジン ・キナー
デ カルボキ シラー ゼの阻
ゼ。ビラゾフ リンは OMp
害剤 であ る。
図2
BI
M 細 胞の コロニー
BI
M 細 胞 を1.2% メナー ルセル ロー ズ培地 (寒天培
8日間培養 した。細胞増殖 に よ り
地 で も良 い) 中で 1
コロニー を作 り, その後 コロニー か ら神 経 突起 が伸
展 した。
1
7
表 2 BI
M 細胞の分化の誘導
I
NDUCTI
ON OF工
)
I
FFERENTI
ATI
ON I
N BI
M
CELLSWI
TH VARI
OUSREAGENTS
Re
a
ge
nt
s
Conc
e
nt
r
at
i
on
5
O
F
L
M
1
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∫
M
0.
li
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劣/
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1
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J
M
5
O
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r
n
l
十
H7
A2
31
8
7
TPA
Re
t
i
noi
cAc
i
d
NGF
+ /: 一
ト
l
mM
l
mM
0.
1
mM
l
mM/
01
mM
l
O
mM
Ef
f
e
c
t
s
++T
+
一 十 一± 十 十 1
十
十十1
nOn亡:
dbC
AMP
CAMP
i
bmX
L
I
AMP+i
bmX
For
s
kul
i
n
細胞を2日間培養し,そこへ薬品を投与したoその後 13日目に観察 したO細胞分化の判定は,細胞体の球形化お
よ び 神 経 突 起 の 伸 展 に よ り行 っ た。一 一無 反
+,
++,+十十 :反応の程度の大きさを表す。(
略号)
応,
dbC
AMP di
but
yr
yl
a
de
nos
i
ne3
'
,
5
'
cy
cl
i
cmonophos
phat
e
,l
bmX -i
s
obut
y1
me
t
hyl
xant
hi
m・
.
て細 胞分化 す る (
表 2と図 3)。 この反応 は早 く,
0
分 に細胞の形態変化 の開始 を観察 で
薬 品処理 後 3
きる。 したが って, この雑種 細 胞 は細胞分化 の研
究 に大 いに役立つ もの と思 われ る。
た とえば,BI
M 細胞 を
E
g
1
3 BI
M 細胞の分化
C
AMP(
1
mM)を投与し,
細胞を2日間培養後 dbその lE
7
後に観察したO(
上図)無投与,(
下図)秦
品投与o細胞体は丸 くなり,長い突起を形成してい
るo
dbc
AMP で処理す る
osのmRNA レベ ルが一過性
と, ガ ン遺伝 子 C-f
能 に なった時, その後飛躍的 に研 究が進展 した。
0分に増加 し始め,6
0
分
に増加 した。薬 品処理 後 3
ガ ン細 胞や免疫細胞 を培養す るこ とに よ り細胞 の
後 に ピー クとな る (
Ada
c
hie
ta
l
リ1
9
9
1)。 さらに,
性質 の解 明が容易 にな っただけ では な く, ガ ン遺
タンパ クの リン酸化 を調べ た,
, 神経細胞 は細胞骨
伝 子の作 用や 免疫機 能 のア ッセ Iが 多様 に行 うこ
格 の一つ, ニ ュー Uフ ィラメン ト(
NF)を持 って
とが可能 に なったか らであ る。
1
0
Kに d
bC
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いるが,3種 のサブユニッ トの内2
神経科 学 にお いて もこの こ とが可能 になれば,
処理 後3
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分 に ピー クとな る一過性 ut
)リン酸化 か起
脳 の研 究 は飛 躍的 に発展 す るこ とが期待 され る。
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KNF は神経 突起 の伸 展 時 にkd
_こ ろ
こ った。2
神経栄養 因子の研 究 に しろ神 経 bl
路の研 究に しろ,
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プ リンの会合 に関係 が あ るこ とか知 られ rお
NFの リン酸化 現 象 は興 味深 い
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M 細胞は神経栄養 因子 を産生 していることが,
り,この点か らも
鶴 や ラ ッ トの脳 の神経細 胞 をもちいたア ッセ イ法
これ らの研 究 は まだ始 まったばか りであ り, さ ら
には脳 の働 きの 内で も最 も主要 な もC
7
)
の一つ であ
る記憶現 象 の分 子生物学 的研 究 は,細胞培養系 に
お いて記憶 現 象の ア ッセ イ法 が開発 され るこ とに
よ り飛躍的 に進 む もの と思 われ る。
に よ り明 らかに され た) この点 は,今 後 さらに研
謝
究が進め ば, また改め て御紹 介 したい0
7.お わ り に
ガ ンの研 究や 免疫学 は,細胞培養 系の導入が可
辞
第2
0回岡山実験動物研 究会 におけ る講演 な らび
にその会報へ の執筆 の機 会 を賜 った岡 山大学農学
部 の猪
貴義 先生 な らびに佐藤勝 紀先生 にお礼 申
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