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神経細胞の雑種形成 石 井 一 宏 ,(2)
1 3 神経 細胞 の雑種 形成 石 井 一 宏 京都大学 ウイルス研究所細胞生物学部 門 を細胞生物学的 ・分 子生物学的に よ りよ く理解す 1.は じ め に るこ とが で きる 。 さらに,神経系の発生過程 にお 近年,神経機能 を細胞培養系 で再現す る方法論 け る細胞相互作用 に関す る分子生物学的研究がや を開発 しよ うとい う気運が高 まって きた。 この気 りやす くな る 神経栄養 因子の研究がその好例 の 運 は,神経科学の研究に分子生物学や神経工学の 一つ であ る 手法 を導 入 し, そ して駆使す るための一つの ステ て も, 同 じ性質 を持 った細胞 を大量に扱 えるこ と ップ として重要 であるとい う認識に基づ いている。 は生化学的 ・分 子生物学的研究 に とってたいへ ん 。 。 第二 に, どの ような研究分 野におい 神経科学においては細胞培養系 をもちいた研究は, 好都合 であ る。 第三 に,脳 におけ る記憶 の細胞生 三つの観点か ら行 われつつ ある。 ( 1 )神経細胞の初 物学的 ・分 子生物学的理解 は, 記憶現象 を細胞培 代培養 と神経栄養 因子の研 究, ( 2 )神経 回路の形成 養系において解析 す るこ とに よ り初めて可能 にな の誘導 - るのではないか と思 われ る 初代培養 した神経細胞ならびに脳組織 3) の薄片におけ る電気生理学的研究 も含 まれ る,( 神経系細胞の培養株 の樹立, の三分 野であ る 本 。 3.腫癌組織 由来培養細胞株 。 稿 では,第三の神経細胞の培養株 について見て行 こ つ 一般 に,腹痛組織の細胞 を培養す ると株化 しや すい。神経系 では神経芽細胞腫か ら多 くの培養細 。 胞株が樹立 されてい る 。 2.培養細胞株の樹立の方法 と意義 ラッ トやマ ウスな ど実験動物 を用 いた場合 は, 神経細胞の培養系において も, その培養株 の樹 神経腫癌 は 自然発生ガ ンだけではな く,動物 に発 立の方法は他 の種類の細胞の場合 と変 わ りはない。 ガ ン剤 を注入 し人工 的に腫癌 をつ くらせ, その腫 その方法は三通 り知 られてい る。( 1 )神経系の施療 癌 をもちいて培養細胞株 を樹立す ることも行 われ 組織 の培養。 この方法 は既 に多 くの細胞株 を樹立 0 3( Sc hube r te tal リ1 9 7 4 )や RT4 てい る。 B1 している。( 2)胎児あるいは若年動物 由来神経細胞 AC ( Dr o msandSue oka, 1 9 8 7 )な どがある。 あ を初代培養 し, そこへ細胞の不死化 をもた らすガ るいは, ガ ン遺伝 子 を組み込んだ レ トロウイルス Ⅰ mmo r t al i z i ngGe ne s )を細胞移 入す る ン遺伝子 ( 3 )細胞融合法に よる雑種細胞の形成。この 方法。( 子導入動物) をつ くり, その胎 児, あ るいは出生 三通 りの方法 は, 当然予想 され るよ うにそれぞれ 後成体 になって発生 して くる施療 を利用す る方法 長所 と短所 を合 わせ もってお り,細胞の特性や研 1 )( Ha mma n ge ta1 . , も知 られてい る( マ ウス RT- 究の 目的に応 じて使 い分 け る必要が あ る。具体 的 1 9 9 0 ) 0 な話 はそれ ぞれの箇所 で述べ るこ とに しよう 。 を受精卵に注入 し, トランスゲニ ック動物 ( 遺伝 ヒ トの場合 は もちろん, 自然発生的に形成 され それでは,培養細胞株 を樹立 した り, それ を用 I MR た神経芽腫 をもちいて培養株 を樹立 している。 いて研究す ることはどんな利点があるのだろうか。 まず,発生生物学的には次の ような利点が考 え ら " 1 9 7 0 ) , SKNDZ, 3 2( Tum il o wi c ze t al GOTO, RTLN1( Hor i ie ta l リ1 9 8 9 )な ど多 く れ る 発生過程 におけ る細胞分化 の様子は細胞系 の培養株が知 られてい る。 。 譜の作製によ り把握 されてい るが,幹細胞 を培養 ここで,動物 に実験的に腫癌 を作 らせ, その腫 し, さらには株化 で きれば, その細胞分イヒの様子 壕か ら神経性細胞培養株 を樹立 した例 を紹介 しよ 1 4 それは ラッ ト神経様細胞培養株 B1 03であ る 胞に感染 させ る とウ イルスゲ ノムは細胞の染色体 ( Sc hube r te ta1 . ,1 97 4 ) 。妊娠 1 5日目の BDI Xラ ッ トにニ トロソエテール ウレア ( NEU)を注射 し に組み込 まれ,細胞の遺伝 子 として転写 され る。 た ところ, その新生児は出生後 4ケ月か ら1 0ケ月 胞株 として半永 久的に増殖 し続けることがで きる の間に約半数の個体 が神経異常症状 をあ らわした。 その ようなガ ン遺伝 子は不死化遺伝子 と呼ばれて 3%の ものに それ ら個体 を解剖学的に調べ る と, 9 い る 不死化遺伝子には my c,SV4 0T坑原,求 う 。 その よ うな細胞は もはや老化現象 はお こさず,細 。 。 中枢神経系 に腫癌が見つか った。 そこで, その腫 リオーマウイルス T一抗原,パ ピローマウイルス E7 癌 を取 り出 し,培養 した.培養 方法 は簡単 で, ま な どが知 られてい る。 このガン遺伝子が どの様 な ず腫壕組織 を細か く切 り刻 み,細胞 を単離 し,組 仕組みで細胞の不死化 をもた らすのであるかは, 0%の牛胎 児 織の小 片 とともに培養皿 にまいて, 2 まだ十分 に理解 されていない。 ここで特筆すべ き gl eMEM 培養液 中で培養 した。そ 血清 を含 む Ea こ とは, この方法が有効 なのは,少 な くとも一 回 の後, クローニ ング ・カルチャー をして, 多 くの は細胞分裂 で きる細胞に限 られ るこ とであ る。 レ 0 3細胞はその内の一つの クロー ンを分離 した。B1 トロウイルス ・ゲ ノムが細胞の染色体 に組み込 ま クロー ンであ る 著者 らは,分離 した各 クロー ン れ るためには この条件 が必要 なのである 。 が神経性細胞であ るか ど うか をいろいろな方法 で 。 ところで,腫癌細胞が培養系において細胞株 に 調べ てい る。電気生理学的性質,す なわち電気的 な りやす い とい う傾 向は, たいていの腫癌細胞で 興奮膜 をもっていた クロー ンは B3 5 , B5 0 , B6 5 , はガン遺伝子が発現 してい るとい う事実 と関係 が B1 03 ,B1 0 4の五つの クロー ンのみ であった。BI O 3 あると推定 されてい る 細胞はの ちほ ど述べ るように筆者 らの研究 に も使 われた。 。 近年,神経系の細胞に もこの方法が採用 され始 め た。 まだ,報告例 は少 ないが,神経細胞や幹細 なお,神経細胞の分化 のモデル として よ く使 わ 胞や グ リア細胞の培養株が とられてい る ( 表 1) 0 れている PC1 2 細胞はラット副 腎髄質褐色細胞腫か その具体例 につ いて見 て い こ う ( Evr ar de ta1 . , Gr e e neandTi s c hl er , ら分離 された培養株 である( 1 9 9 0 ) 0 1 97 6) 0 出生後 1日目のマ ウスの脳の線状体 をとりだし, 細胞 を単離 して培養 した。培養液 はダルベ ッコ- 4.不死化遺伝子の利用 の MEM に 1 0%牛胎 児血清 を加 えた ものである 。 発生膳 に しろ成体 の組織 に しろ, これ らの細胞 を初代培養す るとたいていの場合 は何 回かの細胞 分裂 を行 うが,継代培養 して行 くと,次第に増殖 性 が低下 し,つ いには細胞は死滅す る 。 この現象 を細胞の加齢 と呼 び,増殖性 の低下 した細胞 を老 化細胞 と呼んでいる。 実際には, この老化現象 を切 り抜けて半永久的 に増殖能 を獲得す る場合 が あ る 。 この よ うな現象 を細胞の不死化 と呼び, こ うして得 られた細胞集 団 を細胞株 と呼んでいる 線維芽細胞はその代表 。 的 な例 の一つ であ る。 しか し,正常組織の細胞 を培養 して, そこか ら 細胞株 を得 るにはその頻度が極 めて低 く, たいん効率 が悪 いのが現状 である 。 そこで, ガ ン遺伝 子 をもちいる方法が開発 された。 ガン遺伝 子 を組 換体 レ トロウイルスに挿入 し, その ウイル スを細 表 1 不死化遺伝 子の細 胞内移 入による培養細胞株 の樹立 TRANSFEROFI MMORTALI ZI NGGENES (a) Ne ur onalCe l lLi ne s NRCe l l s・E7 {hi cke nNe ur or e t i na/ Vmyc ( Ca s al bor ee ta1 . ,1 9 8 7 ) 2. 3 D:El ° Mous eMe s e nc e phal o n/ Cmyc ( Bar t l e t te ta1 . ,1 9 8 8 ) RT1:Re t i nalTumorf r om Tr ans ge ni cMous e ( SV4 0T ge ne)( Ha mma nge ta1 . ,1 9 9 0) (b) Gl i oNe ur onalCe l ll J i ne s ST1 5 A/ M1 5 B:PN2RatCe r e be l l um/ SV4 0 / vmyc ( Fr e de r i c ks e ne ta1 . ,1 9 8 8) St r . SVLT. 3. 8.PN1 Mo us eSt r i at um/ SV4 0T ( Evr ar de ta1 . .1 9 9 0 ) lLi ne s (C) Gl i alCel A7:Ne wbor nRa tOpt i cNe r ve / SV4 0T ( °el l e ra ndDuboi s Dal c q,1 9 8 8 ) C. LT. T. 1. 1・El BTr a ns ge n] ' cMo us eBr ai nCor t ex/ . ,1 99 0) Pol yo maT ( Gal i a nae ta1 初代培養 細胞に不死化遺伝 子を導 入す る と,神経細胞のみ ならず グ 1 )ア 細胞 ( 神経膿細胞)や神経系前駆細胞な ども樹 立され る. ここでは, そ の ような細胞株 の数例 を紹介 した。 1 5 0Lar geT遺伝 子 をも 細胞 を 1日間培養後, SV4 第一の組合せ は,腫癌細 胞が細胞融合 したのち つ組換体 レ トロウイルスを感染 させ る 培養液 を 雑種細胞になる と, その腫癌性が喪失 した り減少 交換後,培養 を続けた。 この際,培養液 にはネオ す る場合 が あ る とい う現象,す なわち腫癌細胞の 1 8を入れてお く。 マ イシン誘導体 の一つ であ る G4 正常化現象 を利用 しよ うと言 うのであ る。 この様 組換体 DNA にはネオマ イシン耐性遺伝子が入 っ な雑種細胞が得 られ る と, その細胞が薬 品処理 な 。 1 8 含有 ているので, この DNA をもつ細胞は G4 どに よ り細胞分化 した時,分化 形質 の発現が促進 培養液 中で増殖 で きるが, この DNA をもたない された り, 長期 間安 定 した状態が維持 され るこ と 細胞は死滅す る。 か くして,不死化遺伝子 をもっ が期待 され る 後程述べ る BI M 細胞 ( I s hi ie ta1 . , た細胞だけが増殖 して コロニー を形成す る 分離 た。牛胎児血清 を含む培養液 中で培養 した時,細 1 9 9 0 )は この よ うな性質 を示 した。 Ni r e nbe r gら の NG1 0 81 5細胞 もこの組合せ の一例 であ り,マ ウス神経芽腫 由来培養細胞株 N1 8 TG2とラッ ト グリオーマ細胞 とから作 られた雑種細胞である( 1 9 8 3 胞密度が飽和 に達す る と, この細胞はアス トロサ 年 に総 説あ り) 。 r . SVLT. 3. 8と名づけた。 した クロー ンの一つ を St この細胞は分化能 に関 して興 味深い性質 を示 し 。 0 イ トに分化 した。 ところが,無血清培地で培養 す 第二 と第三 の組合せ は同 じよ うに見 えるが, 莱 る と,神経細胞に分化 したのである。 以上 の結果 二の場合 は細胞分裂能 を持 っている神経細胞 (し は, この細胞が神経細胞 とグ リア細 胞 との前駆細 たが って,主 として胎 児脳 の神経細胞である)に 胞である事 を示 してお り, しか も,細胞分裂能の ついてであ り, 第三 の場合 は分裂能 を持 たない神 あ る前駆細胞が出生後 1日日の線状体 に も存在す 経細胞の場合 を考 えてい る ることが明 らかにされたのであ る 初代培養細胞で融合 した細胞が増殖能 を持 ってい 。 5.雑種細胞の形成 。 もっ とも,実際 には Pl at i c ae ta1 . , たか どうか を見分 け ることは難 しい ( 1 9 8 3 ) 。第三の場合,特 に,脳 の記憶細胞 ( 細胞分 ウイル スあ るいはポ リエチ レング リコール をも 裂能 を持 っていない と考 え られている)が培養細 ちいて細胞融合 を誘導 し, そこか ら雑種細胞 を分 胞株 と融合 し, その後細胞分裂 を行 って雑種細胞 離す る方法は, モ ノクローナル抗体 の産生や ヒ ト を形成すれば, そ してその雑種細胞が記憶 に関す 染色体 のマ ッピングにおいて 多大な貢献 を果 た し る細胞生理学的 ・分 子生物学的諸性質 を発現す る た。 な らば,脳の記憶現象 を細胞培養 系で研究す るす この方法が神経系細胞の培養株 の樹立に利用 さ れつつ ある 。 この方法の利点は幾つか あげ られ る が,最 も興味深 い点は,細胞分裂能 を持 っていな い細胞で も培養株 として樹立で きる可能性があ る ことであ る 。 もちろん, この場合 その細胞のい く ぼ らしい実験系が得 られ るこ とが期待 され る 。 6.BI M 細胞 につ いて ここで,私 たちの研 究 につ いて簡単に紹介 した M 細胞 は,ヒ ト神経芽腫細胞 とラッ ト神経 い。BI つかの特性 だけ を持 った雑種細胞が得 られ るわけ 様細胞 とを融合 させ て得 られた雑種細胞であ る 。 である 第二 に,細胞融合 に もちい る細胞数が少 両親細胞 ともに腫癌性細胞であるが, その雑種細 ない場合 で も, 目的 とす る雑種細胞が得 られ る可 胞 BI M は部分 的に正常細胞の性質 を獲得 した。 能性が高 いこと。第三 に,比較 的短期 間 ( 2 0 -3 0 BI M 細胞は dbc AMP に反応 して細胞分化 を行 日程度)で雑種細胞が えられ るこ とな どである。 い,細胞体 は丸 くな り,長 い突起 を伸展 させ る。 。 1) 細胞の組合せ としては,三通 り考 え られ る。( 二種類の培養細胞株 のあいだでの細胞融合 ,( 2)培 この反応 は早 く,薬 品投与後3 0 分 に細胞の形態変 8時間位 で 化 を顕微鏡下 で観察 で きる その後, 1 。 養細胞株 ×初代培養 の細胞 ( あ るいは神経組織か 形態学的には細胞分化 は完 了す る。 この ような性 ,( 3)培養細胞株 × ら細胞 を単離後 ただちに用いる) M 細胞 につ いて もう少 し詳 し く説明 質 をもつ BI 記憶細胞。 この ような細胞の組合せ の意図につ い したい。 て簡 単に説明 したい。 】 6 ( a) チ ミジン要求細胞の樹立 雑種形成 においては,雑種 細胞だけが生 き残 り, 両親細胞が死滅す る選択培地が使 われ る。一般 に, 名ずけた ( I s hi ie ta 】 リ1 9 9 0 ) 0 ( C) BI M 細胞 BI M 細胞 は平均 して1 5 6 本の染色体 を持 ってい ヒ ト細胞はウアバ インに対 して非常 に感受性が高 た。詳 しい核 型分析 は まだ行 っていないが, ヒ ト 0 0 倍か く,ラッ トやマ ウス細胞は ヒ ト細胞 よ りも1 8 は容易 に同定 できた。 I MR3 2 細胞 染色体 ♯1と1 ら1 , 0 0 0 倍 も感受性が低 いOそこで,親細胞の一つ mycの座位 では,染色体 ♯1にはガ ン遺伝 子 N- I MR1 3 2 はウアバ インで選択的に死滅 させ られるO もうーつの親細胞 B1 0 3 細胞はその ような選択に役 立つマー カー を持 っていないので,B1 0 3 細胞か ら チ ミジン要求株 を作 った。 その細胞 を B3 T 細胞 と呼んだ ( I s h i i ,1 9 9) B3 T 細胞 は ピ リミジン 生合成系の酵素の一つ,TMP合成酵素 ( TS)(図 0 0 があ り, ♯1 8には TS遺伝 子の座位 があ るこ とが myc遺伝 子 知 られてい る。正常 ヒ ト細胞 では,Nは染色体 ♯2に座位 しているが,神経芽腫細胞 で は Nmyc遺伝 子 に遺伝 子増幅が起 こ り,かつ染 Sh i l o he ta 1 . , 1 9 8 5 ) 0 色体 ♯1に転座 したのである ( 興味深 いこ とに,BI M 細胞 は増殖 して,細胞密 1) に変異 を起 こ してお り, その酵素 活性が極 め 度が飽和状 態に達す ると,増殖 を停 止 して休 止期 3 T て低 いのであると推測 されてい る。 そこで,B に入 った。 そ して, 同時に神経突起 が伸展 した。 細胞は TMP欠損 を起 こ し,DNA合成が停 止 し, I M細胞が正常細胞の性質 を獲得 し この現象は,B 細胞増殖がで きないで,つ いには死滅す る。 チ ミ Tや たことを示 してい る。親細胞 であ る B3 ジン要求株の分雛の方法につ いては ここでは省略 I MR 3 2 はこの ような性質 を示 さない。しか し, BI M細 したい。 胞は完全 に正常細胞に変化 したわけではない。 寒 天培養す る とコロニー を作 ったのであ る ( 図 2)0 ( b) 雑 種 形 成 B3 T細胞 と I MR3 2 細胞 とをポ リエチレング リ ( PEG)1 5 0 0( BDH)を用 いて融合 させ た。 その後,細胞 を選択培地 中で1 7日間培養 した。八 つの コロニーが得 られ, その内の一つ を B I Mと コール この性質は腫癌細胞の ものであ り,正常細胞は寒 天中では,す なわち細胞の形が円形の時 には増殖 で きない。したが って,BI M 細胞は部分 的に正常 細胞の性質 を獲得 したわけであ る。 BI M 細胞 は環状 AMP に関す る薬 品に反応 し PYRr MJ DF NE METABOLt SMS OMP く ≠ ∫ -- Pyrazofuri n uK ur )L MP ↓ UDP J TK dU 〉 ,K dT dU i DP dCMp-D dCK dL NPく dCMP← dC J TS )dTMP 図 1 ピ リミジン生合成 系 ( 一部 ) 略号 . UK .り りジン ・キナーゼ .TK 'チ ミジン ・ CMpD.dCMpデ ア ミナ- ゼ.TS二 キナ-ゼ ,d TMP一合成酵素 ,d CK:デ オキ シシチ ジン ・キナー デ カルボキ シラー ゼの阻 ゼ。ビラゾフ リンは OMp 害剤 であ る。 図2 BI M 細 胞の コロニー BI M 細 胞 を1.2% メナー ルセル ロー ズ培地 (寒天培 8日間培養 した。細胞増殖 に よ り 地 で も良 い) 中で 1 コロニー を作 り, その後 コロニー か ら神 経 突起 が伸 展 した。 1 7 表 2 BI M 細胞の分化の誘導 I NDUCTI ON OF工 ) I FFERENTI ATI ON I N BI M CELLSWI TH VARI OUSREAGENTS Re a ge nt s Conc e nt r at i on 5 O F L M 1 / ∫ M 0. li l 劣/ mJ 1 / J M 5 O ng/ r n l 十 H7 A2 31 8 7 TPA Re t i noi cAc i d NGF + /: 一 ト l mM l mM 0. 1 mM l mM/ 01 mM l O mM Ef f e c t s ++T + 一 十 一± 十 十 1 十 十十1 nOn亡: dbC AMP CAMP i bmX L I AMP+i bmX For s kul i n 細胞を2日間培養し,そこへ薬品を投与したoその後 13日目に観察 したO細胞分化の判定は,細胞体の球形化お よ び 神 経 突 起 の 伸 展 に よ り行 っ た。一 一無 反 +, ++,+十十 :反応の程度の大きさを表す。( 略号) 応, dbC AMP di but yr yl a de nos i ne3 ' , 5 ' cy cl i cmonophos phat e ,l bmX -i s obut y1 me t hyl xant hi m・ . て細 胞分化 す る ( 表 2と図 3)。 この反応 は早 く, 0 分 に細胞の形態変化 の開始 を観察 で 薬 品処理 後 3 きる。 したが って, この雑種 細 胞 は細胞分化 の研 究 に大 いに役立つ もの と思 われ る。 た とえば,BI M 細胞 を E g 1 3 BI M 細胞の分化 C AMP( 1 mM)を投与し, 細胞を2日間培養後 dbその lE 7 後に観察したO( 上図)無投与,( 下図)秦 品投与o細胞体は丸 くなり,長い突起を形成してい るo dbc AMP で処理す る osのmRNA レベ ルが一過性 と, ガ ン遺伝 子 C-f 能 に なった時, その後飛躍的 に研 究が進展 した。 0分に増加 し始め,6 0 分 に増加 した。薬 品処理 後 3 ガ ン細 胞や免疫細胞 を培養す るこ とに よ り細胞 の 後 に ピー クとな る ( Ada c hie ta l リ1 9 9 1)。 さらに, 性質 の解 明が容易 にな っただけ では な く, ガ ン遺 タンパ クの リン酸化 を調べ た, , 神経細胞 は細胞骨 伝 子の作 用や 免疫機 能 のア ッセ Iが 多様 に行 うこ 格 の一つ, ニ ュー Uフ ィラメン ト( NF)を持 って とが可能 に なったか らであ る。 1 0 Kに d bC AMP いるが,3種 のサブユニッ トの内2 神経科 学 にお いて もこの こ とが可能 になれば, 処理 後3 0 分 に ピー クとな る一過性 ut )リン酸化 か起 脳 の研 究 は飛 躍的 に発展 す るこ とが期待 され る。 1 0 KNF は神経 突起 の伸 展 時 にkd _こ ろ こ った。2 神経栄養 因子の研 究 に しろ神 経 bl 路の研 究に しろ, チ 1 プ リンの会合 に関係 が あ るこ とか知 られ rお NFの リン酸化 現 象 は興 味深 い ( Ada c hie ta1 . ,1 9 9 1)0 BI M 細胞は神経栄養 因子 を産生 していることが, り,この点か らも 鶴 や ラ ッ トの脳 の神経細 胞 をもちいたア ッセ イ法 これ らの研 究 は まだ始 まったばか りであ り, さ ら には脳 の働 きの 内で も最 も主要 な もC 7 ) の一つ であ る記憶現 象 の分 子生物学 的研 究 は,細胞培養系 に お いて記憶 現 象の ア ッセ イ法 が開発 され るこ とに よ り飛躍的 に進 む もの と思 われ る。 に よ り明 らかに され た) この点 は,今 後 さらに研 謝 究が進め ば, また改め て御紹 介 したい0 7.お わ り に ガ ンの研 究や 免疫学 は,細胞培養 系の導入が可 辞 第2 0回岡山実験動物研 究会 におけ る講演 な らび にその会報へ の執筆 の機 会 を賜 った岡 山大学農学 部 の猪 貴義 先生 な らびに佐藤勝 紀先生 にお礼 申 1 8 9)Gr e e ne ,L A.a ndTi s c hl e r ,A.S.Pr o c.Nat l .Ac a. し上 げ ます。 参考 文献 Sc i .USA 7 3:24 2 4-24 2 8 ,1 97 6 . 1 0)Ha mmang, J . P.e tal .Ne ur o n 4 :775-78 2 ,1 990 . 1)Ada c hi ,Y.e tal .( i npr e pa r a t i o n)1 9 91 . ll )Ho r i i ,Y.e tal .I nt .J.Canc e r43:305-309 ,1 9 89 . 2)Bar t l e t ,P.F. e tal . Pr oc. Nat l . Ac ad_S° i . USA85: 1 2)I s hi i ,K.Ce l lSt r uc t .Func t .1 5:9 3-97 ,1 9 9 0 . 32 5 5-32 5 9 ,1 9 8 8. 3)Ca s al bor e ,P.e tal .Nat ur e3 2 6:1 8 8-1 90 ,1 9 87 . 4)Dr oms ,K.a ndSue oka,N.Pr oc .Nat l .Ac ad.S° i . USA 84:1 3 09-1 31 3 ,1 987 . 5)Evr ar d,C.e tal .Pr oc .Nat l .Ac ad.S°i .USA 87: 3 0 62-3 06 6 ,1 9 9 0 . 6)Fr e de r i ks e n, K. e tal .Ne ur on 1:4 39-4 4 8 ,1 9 88 . l i a na,E.e tal . J J .Ne ur o s c i .Re s .26:269-277 , 7)Ga 1 9 9 0. 8)Ge l l e r ,H.M.a ndDuboi s Dal c q,M.J J .Ce l lBi ol . 1 07:1 97 7 -1 9 86 ,1988. 1 3)I s hi i , K. e tal . ∫ . Ce l l . Phys i ol .1 4 3:5 6 9-5 7 6 ,1 9 9 0 . 1 4)Ni r e n be r g,M.e tal .Col d Spr i ng Har b.Symp. Quant i t .Bi ol .4 8:7 07-71 5 ,1 9 83 . 1 5)Pl at i c ae taLPr oc . Nat l . Ac ad. S° i . 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