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造礁サンゴの環境変化に対する順応機構と適応の可能性

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造礁サンゴの環境変化に対する順応機構と適応の可能性
海の研究(Oc
e
anogr
aphyi
nJapan),21
(5),147- 15
8,2
01
2
― 総 説 ―
造礁サンゴの環境変化に対する順応機構と適応の可能性*
井口
亮**・磯村 尚子†
要
旨
地球的規模,地域的規模の各種の環境変化によって,サンゴ礁の基盤構成生物であるサ
ンゴの減少が危惧されている。そのため,今後の環境変化に対して,サンゴがどのように
応答できるのかを評価することが急務となっている。これまでの飼育実験において,サン
ゴの環境変化に対する応答を,成長率,死亡率,光合成活性など,様々なパラメーターに
着目して調べた研究や総説は多く存在する。その一方で,ある環境要因の段階的変化に対
して,サンゴがどのような順応的応答を示すのか,また順応の閾値を過ぎた時にどのよう
な応答を示すのかに関して,体系的にまとめられた報告は限られている。また,集団内の
遺伝子型組成が変わることによって環境要因に対する応答が変化する,適応の可能性につ
いても,サンゴにおいてはあまり注目されていなかった。本総説では,複数の環境変化
(水温変化,酸性化海水,栄養塩負荷,光環境変化,その他)に対するサンゴの順応機構
について,これまでの知見を概説する。また,環境変化に対する適応の可能性についても
触れ,今後の研究の展望について述べる。
キーワード:造礁サンゴ,褐虫藻,環境変化,順応,適応
源の二酸化炭素(CO2)によって引き起こされる地球温
1. はじめに
暖化や海洋酸性化によって,体内に生息する褐虫藻との
共生関係の崩壊を引き起こす白化現象や石灰化の低下が
現在急速に生じている地球的規模,地域的規模での環
引き起こされることは,既に認知されている。また,地
境変化によって,サンゴ礁の基盤構成生物である造礁サ
域的規模で生じる環境変化,具体的には栄養塩負荷,懸
ンゴ(以下,サンゴ)の減少が危惧されている。人為起
濁物による透明度の低下や土壌物(赤土など)の堆積な
どにより,サンゴの成長率及び生存率が低下する可能性
*2011年 12月 14日受領;2012年 7月 2日受理
著作権:日本海洋学会,2012
†沖縄工業高等専門学校
*
*
連絡著者:井口 亮
琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設
〒905-0227
TEL・FAX:098-047-2888・098-047-4919
c
om
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mai
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guc
hi
.
a0218@gmai
l
.
が示唆されている。また,こうした地球的規模,地域的
規模の環境変化が複合的に働くことにより,相加的,相
乗的にサンゴに負の影響を及ぼす可能性もある。
環境変化に鋭敏であるとされ,また多くが固着性で移
動性に乏しいサンゴにおける環境変化に対する応答機構
1
4
8
井口・磯村
の解明は,今後の環境変化に対するサンゴ及びサンゴ礁
れ,今後の研究の展望について述べる。
生態系の応答を理解する上でも重要な課題である。野外
で見られる種々の環境変化がサンゴにどのような影響を
及ぼすかについては,フィールドでの観察や室内実験に
2. サンゴの環境変化に対する馴化,順応,適応
よるアプローチなどによって多くの実証データが積み重
ある生物がある環境条件にどのように応答するかは,通例
ねられて理解が進んでいる。フィールド調査は実際の自
として,馴化(Ac
c
l
i
mat
i
on)
,順応(Ac
c
l
i
mat
i
z
at
i
on)
,
然現象としての観察であり,より現実に即した結果であ
適応(Adapt
at
i
on)の語句が用いられる。これらの語
る。しかし野外では,様々な環境要因が混在するケース
句の扱いに関しては,本総説内では,Col
e
sandBr
own
が多いため,サンゴが具体的にどのような環境変化の影
(20
03
)に従い,以下のように用いる。馴化とは,ある
響を受けたのかを把握するのは困難なケースがしばしば
実験条件下におけるある個体の表現型(ストレス耐性な
見られる。そのため,環境要因を人為的に制御できる室
ど)の変化を指す。順応とは,野外での環境条件に対す
内実験によるアプローチは,ある特定の環境要因がサン
るある個体の表現型の変化を指し,一世代限りでの応答
ゴにどのような影響を及ぼすのかを詳細に理解するのに
である。通常の室内実験では,厳密には馴化を見ている
有効である。しかし今度は,ある特定の環境要因に注目
ことになるが,馴化は実験を始める前の実験条件下に馴
した観察結果が,様々な環境要因が混在する自然界で実
染ませる意味合いで用いられることもある。以降は,馴
際に起こりえるのかどうかを判断するのは難しい場合が
化も順応と同じ意味合いで取り扱う。そして適応とは,
多い。
環境変化とともによりストレス耐性の高い個体が生き残っ
て,集団内の遺伝的組成が変化することを指し,複数世
室内実験によって,ある環境要因に対してサンゴがど
代に渡った応答を意味する。
のように応答するのかを調べる際は,通常ある特定の箇
所から,限られた数の群体を用いて,群体そのもの,あ
サンゴの場合,環境応答を考える上で重要なのは,体
るいは群体からサンゴ片を切り出す。そしてサンゴ片を,
内に共生する褐虫藻の存在である。褐虫藻は,サンゴへ
環境要因を制御した実験水槽下に置き,ある環境条件下
の有機物の供給,石灰化の促進を行い,サンゴは褐虫藻
での石灰化率や呼吸量の変化,タンパク質量や脂質量の
に無機栄養塩の供給,生息場所の提供を行うことで,相
変化,サンゴ体内の褐虫藻の光合成活性などの代謝(生
利共生関係を築いている。サンゴがある環境に対して応
命活動を維持する際の一連の化学反応の変化)に関わる
答する場合,サンゴ群体内の褐虫藻の遺伝子型組成が変
パラメーターを測定して応答を見る。そしてこれらの値
わる可能性も指摘されている(e
.
g.
,Rowane
tal
.
,1
9
9
7
)
。
から,対象生物が負の影響を受けていると考えられた時,
サンゴ群体内に生息する褐虫藻は集団として存在してお
対象生物が制御した環境要因によってストレス(生体内
り,褐虫藻を中心に考えると,こうした応答は適応とも
の恒常性が崩れた状態)を受けていると判断される。こ
捉えられるが(実際,・
phot
oadapt
at
i
on・という語句
れは,通常ある遺伝子型の群体がどのように応答するの
も用いられる),本レビューでは,環境変化に対するサ
かといった,一世代限りの応答を見ることになるため,
ンゴ群体内の褐虫藻の遺伝子型変化も,サンゴ-褐虫藻
ある環境要因に対して実験対象種がどの程度の環境要因
共生体による順応の一例として考える。
の幅まで順応できるのかを調べていることになる。これ
まで,ある環境要因に対するサンゴの順応機構について
体系的に概説した報告は,限られている。こうした背景
を踏まえ,本総説では,環境変化に対するサンゴの順応
機構について,これまでの知見を概説する。また,サン
ゴの集団内の遺伝子型組成が変わることによって環境要
因に対する応答が変化する,適応の可能性についても触
3. 地球的規模での環境変化に対するサンゴの
順応機構
3.
1 水温変化に対するサンゴの順応
地球的規模での環境変化がサンゴに及ぼす影響の代表
サンゴの環境変化に対する順応と適応
1
49
例は,地球温暖化とよく関連づけられる高水温ストレス
によるサンゴ白化現象である(レビューとして Hoe
ghGul
dbe
r
g,199
9
)。サンゴ白化現象は,サンゴと体内に
共生する褐虫藻との共生関係が崩壊してサンゴが白くな
り,褐虫藻が戻らない場合には,サンゴ本体が死に至る
現象である。主な原因としては,高水温によって褐虫藻
から放出される活性酸素によるストレスが原因と考えら
れており,強光などの他の環境要因でも引き起こされる
とされる(Takahas
hie
tal
.
,2004)。高水温によるサン
ゴ の 白 化 は , 通 常 29- 32℃ く ら い で 引 き 起 こ る が
(Bai
r
de
tal
.
,2
0
09)
,種の違いや生息場所の違い等によっ
てもその閾値は変化する (e
.
g.
,Mar
s
hal
landCl
ode
,
2
00
4)。高水温によって引き起こされる白化現象はよく
知られているが,実際はその閾値に達する前までは,水
温が上がれば,サンゴの石灰化率は炭酸カルシウム飽和
度 (Ω) の上昇とともに上がっていく (Lough and
Fi
g.1. Thewe
i
ght
sofpr
i
mar
ypol
ypsofAc
r
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po
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(2
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ne
s
,20
0
0;I
nouee
tal
.
,20
12)。しかし一方で,水温
Bar
がある閾値を過ぎると,石灰化の低下が見られるように
なる (Mar
s
hal
landCl
ode
,2004
,I
nouee
tal
.
,201
2;
割合が増加することが報告されている (Bake
re
tal
.
,
Fi
g.1
)。これは,水温上昇に対してサンゴはある範囲
20
04)。しかし,白化前後で褐虫藻組成に変化がみられ
までは順応しうるが,ある閾値を超えると,高水温がス
たとしても,その共生関係は永続せず,ほとんどが一時
トレスに変化するものと解釈される。サンゴ白化現象の
的なもの (長くても数年の単位) である (Le
wi
sand
詳細に関しては,中村(2012)を参考にされたい。
f
r
ot
h,20
04
;Thor
nhi
l
le
tal
.
,200
5)。これは,高水
Cof
温耐性の強い褐虫藻が必ずしもサンゴの成長にとって適
白化現象が起こると,褐虫藻組成は以下のように変化
し て い る と は 限 ら な い た め (Li
t
t
l
ee
t al
.
,2
0
0
4
;
することが予想されている(Bake
r
,20
03
):(a)白化感
Be
r
ke
l
mansandvanOppe
n,20
06;Jone
sandBe
r
ke
-
受性が異なる褐虫藻が組み合わさってサンゴ体内に存在
l
mans
,20
10),環境が回復すると元の褐虫藻組成に戻る
しているため,白化によりサンゴは異なる死亡率を示す;
と考えられる。サンゴが比較的長寿命であることを考慮
(b)サンゴ体内で元々存在していた褐虫藻集団の相対
しても,環境変化に対するサンゴ群体内の褐虫藻の遺伝
的な存在比が変化して褐虫藻組成が変化する (Shuf
-
子型変化は一世代限りの応答であることから,褐虫藻組
l
i
ng);(c
)外部環境から褐虫藻を獲得し,褐虫藻集
f
成の変化はやはり順応として考えるのが適当であろう。
団が再構成されて褐虫藻組成が変化する(Swi
t
c
hi
ng)。
実際には(b)と(c
)を区別することは困難であるが,
これまで,主にサンゴ種内における環境変化に対する
両者とも「白化から回復したサンゴは新しい環境に適し
順応パターンについて述べたが,高水温ストレスに対す
た褐虫藻を獲得し,白化前より環境ストレスに強くなる」
る順応は,種間によっても変異が見られることが指摘さ
と い う ・適 応 的 白 化 仮 説 (Adapt
i
veBl
e
ac
hi
ng Hy-
れている。1998年の世界的なサンゴ白化現象によって,
pot
he
s
i
s
;Budde
me
i
e
randFaut
i
n,1993)・における過
多くのサンゴの死滅が確認された一方で,高水温に対す
程の一部であると考えられる。実際に,白化現象が起こっ
る耐性には,種間差が見られることも明らかになった
たサンゴ礁のサンゴは,白化の影響を受けなかったサン
(Loyae
tal
.
,2
00
1)。具体的には,ミドリイシ属サンゴ
ゴと比較して,高水温ストレス耐性の強い褐虫藻を持つ
やハナヤサイサンゴ科の枝状のサンゴは白化しやすく,
1
50
井口・磯村
ハマサンゴ属やキクメイシ科の塊状のサンゴは白化しに
下する。この反応で生じた H+が,海水中の炭酸イオン
くいことが, 野外環境においても明らかとなった
(CO32-)と反応することで,海水中の CO32-が減少し,
(Loyae
tal
.
,2
001)。こうした種間差のメカニズムとし
炭酸カルシウム飽和度の低下とともに,石灰化が抑制さ
て,群体形状の違いによる外界と体内の間での物質交換
れると考えられている。そのため,海洋酸性化は,海洋
及び代謝の効率の違いが指摘されている。 Pat
t
e
r
s
on
に生息する多くの石灰化生物に深刻な影響を及ぼすとさ
(1
9
92
)は,流れのある状況では,平坦な形状の生物の
れており(レビューとして Kl
e
ypase
tal
.
,2
006
),サン
方が,細い筒状の形状の生物よりも物質交換及び代謝の
ゴ礁生態系にとっての基盤生物である造礁サンゴ類も例
効率が良いと報告している。よって,枝状のサンゴの方
外ではない。実際,酸性化海水がサンゴに及ぼす影響は,
が,塊状のサンゴよりも物質交換の効率が低かったため,
これまでのところ,どの生物群よりも実験例が多く,そ
表面の活性酸素などの除去がうまくいかなかったのでは
の多くが,酸性化海水はサンゴの石灰化に負の影響を及
ないかと考えられている(Loyae
tal
.
,2001)。また,
ぼすことが示唆されている(レビューとして Rave
ne
t
Gat
e
sandEdmunds
(1999)は,サンゴの成長と代謝
al
.
,2
0
05;Kl
e
ypase
tal
.
,2
00
6)
。
との間には負の相関関係があり,塊状サンゴの場合は,
成長は遅いが代謝は高い。その一方で,枝状サンゴの場
最近の研究では,酸性化海水とサンゴの石灰化との関
合は,成長は速いが代謝は低い可能性を報告している。
係は,サンゴ体内に共生する褐虫藻による光合成の影響
そのため,成長は遅いが代謝の高い塊状サンゴは,環境
を介して複雑であることも報告されている。 例えば
変化に対する順応力が高かったのではないかと考察して
Mar
ubi
nie
tal
.
(2
008
)はショウガサンゴ(St
yl
o
pho
r
a
い る (Gat
e
s and Edmunds
,1999)。 Br
own e
tal
.
pi
s
t
i
l
l
at
a)を用いた実験系において,pHの低下はサン
(20
0
2b)の報告では,高水温に対するストレス耐性が
ゴ体内の褐虫藻の光合成に影響しないが,炭酸水素イオ
at
s
hoc
k
高 か っ た パ リ カ メ ノ コ キ ク メ イ シ で は , he
ン(HCO3- )の増加は光合成を促進させることを報告
pr
ot
e
i
n(HSP,熱ショックタンパク質)が多く作られ
している。 また, Jur
ye
tal
.
(20
10) は, Madr
ac
i
s
ていたことが示されている。HSPの産出を通じて,サ
aur
e
t
e
nr
aにおいては, pH や CO32- の変化よりも,
ンゴは高温ストレスに対して,ある程度は順応できるの
HCO3- の変化の方が,石灰化の変化に大きく影響して
かもしれない。具体的にどのような機構によって順応力
いることを報告している(Fi
g.2)。Ri
e
se
tal
.
(2
0
0
9
)
が高まるのかは,まだほとんど明らかにはなっておらず,
においても,温帯サンゴの 1種では,極端な酸性化海水
今後の研究が待たれる。また,サンゴの群体形状と環境
中以外では明瞭な石灰化率の低下は見られず,海水の酸
変化に対する順応との関係が,高水温ストレス以外にも
性化に伴う HCO3-の増加により,光合成増加が生じた,
当てはまるかどうかも,今後検証していく必要がある。
すなわち酸性化海水による褐虫藻への施肥効果があった
のではないかと考察している。これは,サンゴ体内の褐
3
.
2 酸性化海水に対するサンゴの順応
地球温暖化と並び,近年大きく注目されている地球的
虫藻側による酸性化海水への順応と解釈することができ
る。トゲスギミドリイシ(Ac
r
opor
ai
nt
e
r
me
di
a)とフ
カアナハマサンゴ(Po
r
i
t
e
sl
o
bat
a)への酸性化海水の
規 模 で の 環 境 変 化 は , 海 洋 酸 性 化 で あ る (Hoe
gh-
影響を調べた Ant
honye
tal
.
(20
08
)による実験では,
Gul
dbe
r
ge
tal
.
,200
7)。海洋酸性化とは,人為的活動
トゲスギミドリイシにおいては,光合成による純生産が
などで増加した大気中の CO2が海中に溶解することで,
低 pH 区(7.
60
~7
.
70
)では減少するものの,中間 pH
海水中の pHが低下する現象である。具体的には,大気
.
85
~7.
95
)では増加することを報告している。
実験区(7
中の CO2 が海水中に溶け込むと,その一部が水分子を
スギノキミドリイシ(A.mur
i
c
at
a:以前は A.f
o
r
mo
s
a
取り込んで炭酸(H2CO3)となり,海水中の pCO2が増
の種名が用いられていた)への酸性化海水影響を調べた
加する。 炭酸はさらに解離して, 炭酸水素イオン
Cr
awl
e
ye
tal
.
(2
009
) も , 酸 性 化 海 水 中 (pCO2 :
(HCO )と水素イオン(H )が生じ,海水の pHが低
-
3
+
60
0
~79
0ppm,11
60~1
500ppm) で, 褐虫藻当たりの
サンゴの環境変化に対する順応と適応
1
5
1
Fi
g.2
. Pl
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an
(±SE)c
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tal
.
(20
10
).Copyr
i
ght2009Bl
ac
kwe
l
lPubl
i
s
hi
ngLt
d.
クロロフィル量の増加が見られたことを報告している。
くいことを示しているかもしれない。よって高水温に対
すなわち,これらミドリイシ属サンゴ 2種においては,
するサンゴの順応に種間で違いが見られるように,酸性
おそらく HCO の増加に伴い,酸性化海水に対してサ
化海水に対するサンゴの順応においても,種間差が見ら
ンゴ体内の褐虫藻が順応したことが示唆される。しかし
れる可能性がある。今後様々な種間で酸性化海水への順
Ant
honye
tal
.
(2008)の実験では,トゲスギミドリイ
応の差を比較し,酸性化海水に対する耐性とどのような
シにおいては,中間 pH実験区(7.
85~7
.
95
)でも,コ
関係があるのか,調べていく必要がある。
-
3
ントロールと比較して石灰化率は減少していることから,
酸性化海水による褐虫藻の順応による正の効果よりも,
CO32-の減少に伴う石灰化の減少の負の効果の方が大き
かったと考えられる。
先述の Ant
honye
tal
.
(2008
) の研究でもう一つ興
4. 地域的規模での環境変化に対するサンゴの
順応機構
4.
1 栄養塩負荷に対するサンゴの順応
味深いのは,フカアナハマサンゴにおいては,トゲスギ
陸域からの栄養塩負荷がサンゴの成長や生存に負の影
ミドリイシとは異なり,酸性化海水に対する褐虫藻の順
響を及ぼす可能性については,室内実験や野外観察から
応は明瞭ではなかった点である。I
guc
hie
tal
.
(20
12
)
も示唆されている(Fabr
i
c
i
us
,20
0
5;田中,印刷中)。
においても,フカアナハマサンゴと同じ塊状のハマサン
栄養塩負荷がサンゴに及ぼす影響の詳細に関しては,田
ゴにおいては,酸性化海水では褐虫藻密度や褐虫藻のク
中(印刷中)を参考にされたい。ここでは,栄養塩負荷
ロロフィル量の変化は見られなかったことを報告してい
に対するサンゴの順応について触れる。
る。これは塊状ハマサンゴ類においては,ミドリイシ属
サンゴよりも酸性化海水に対する褐虫藻の順応が起きに
田中(20
12
)でもまとめられているように,栄養塩負
1
52
井口・磯村
荷に伴い,サンゴ体内の褐虫藻の増加やクロロフィル量
やすい可能性が示唆されている(Fabr
i
c
i
us
,200
6
)。栄
の増加といった順応パターンが見られる。Chauvi
ne
t
養塩負荷に伴って,褐虫藻の増加やクロロフィル量の増
al
.
(2
011
)は,スギノキミドリイシにおいては,栄養
加が見られたサンゴが,高水温や強光にどのような反応
塩負荷に伴ってクロロフィル量及び光合成量の増加が見
を示すのかは,今後の研究が待たれる。
られることを報告している。Chauvi
ne
tal
.
(2
0
11)の
研究でもう一つ興味深いのは,栄養塩負荷に伴ってクロ
ロフィル量及び光合成量の増加が見られたサンゴ片にお
4.
2 光環境変化に対するサンゴの順応
いては,酸性化海水による石灰化の低下が顕著ではなかっ
褐虫藻と共生して共生体を維持しているサンゴにおい
た点である。これはサンゴ体内の褐虫藻の光合成量の増
て,光環境変化に対する順応は古くから知られており,
加によって炭素の取り込みが増し,酸性化海水による石
oac
c
l
i
mat
i
on・とも表現される。通常光が強い場
・phot
灰化のための炭素源の低下が緩和されたことが示唆され
所では,サンゴは象牙色のような色を帯びているが,光
ている。温帯サンゴの 1種である As
t
r
angi
apo
c
ul
at
a
の弱い環境下では,濃い茶色を帯びたような状態になる
を用いて実験した Hol
c
ombe
tal
.
(2010)の結果におい
(Fi
g.3
;Dubi
ns
ky,20
09)。これは,弱い光条件下でも
ても,同様のパターンが示されている。これらの結果は,
十分な光合成が維持できるように,褐虫藻のクロロフィ
栄養塩負荷に対するサンゴ体内の褐虫藻の順応によって,
ル量が増加したことによるものであるが,栄養塩負荷に
酸性化海水に対するサンゴの耐性が高まる可能性を示唆
対する応答とは異なり,褐虫藻密度はあまり変化しない
する。一方で,栄養塩負荷によって,サンゴ体内の褐虫
(Dubi
ns
ky,20
09
)。こうした光に対するサンゴ体内の
藻の増加やクロロフィル量の増加が見られることから,
褐虫藻の順応は,多くのサンゴにおいて,5-10日程度
褐虫藻から放出される活性酸素も生じやすくなる可能性
で達せられることが知られている(Fabr
i
c
i
us
,20
0
5)
。
がある。また,褐虫藻の増加やクロロフィル量が増えた
サンゴは,単純に黒みがかっているため,よりサンゴ表
サンゴの光環境に対する順応は野外でも見られる。
面の温度が上がりやすく,高水温ストレスの影響を受け
Wi
nt
e
r
se
tal
.
(2
00
9)では,ショウガサンゴ(St
yl
o
pho
r
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Fi
g.3
. Br
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awat
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r
.
サンゴの環境変化に対する順応と適応
1
5
3
pi
s
t
i
l
l
at
a)においては,褐虫藻密度に関しては,水深
流れによって左右されるものと考えられる。また,サン
の異なる場所間では明瞭な違いは見られないものの,深
ゴの強光や高水温に対する順応の幅は,それぞれの環境
い場所(10-20m)では浅い場所(1-5m)よりも,
要因をどのように経験したかによっても変化する。
褐虫藻当たりのクロロフィル量が増加するような順応パ
Br
owne
tal
.
(20
02a)は,強光を経験した場所のパリ
ターンが見られたことが報告されている。Wi
nt
e
r
se
t
カメノコキクメイシ(Goni
as
t
r
e
aas
pe
r
a)は,高水温
al
.
(20
09
)の研究でもう一つ興味深いのは,ショウガ
に対する耐性が高くなったことを報告している。
サンゴにおいては,深い場所ではクレード Cの褐虫藻
Br
owne
tal
.
(20
02a)の報告でもう一つ興味深いのは,
を保持していたのに対し,浅い場所ではクレード Aの
光量の異なる場所で高水温に対するストレス耐性の違い
褐虫藻を保持していたこと,また,温度ストレス実験に
を示したパリカメノコキクメイシは,褐虫藻の遺伝子型
おいて,前者のサンゴの方が,後者の方よりも明らかに
は場所間では異なっていなかったことから,ホストであ
ストレス耐性が低かったことが示されている点である。
るサンゴ自体が強光に対して順応し,高水温に対する耐
すなわちショウガサンゴにおいては,水深の変化,おそ
性が高まった可能性がある。よってサンゴの強光に対す
らく光環境の変化に対する順応において,クロロフィル
る順応を考える際は,サンゴ体内の褐虫藻の変化のみな
量の増加だけでなく,褐虫藻の遺伝子型の変化も生じた
らず, ホスト側の耐性の変化も考慮する必要がある
ことを意味する。Rowane
tal
.
(1997)は,水深とサン
ゴ群体内の位置によって,褐虫藻の遺伝子型組成が変化
することを報告している。すなわち,サンゴの光環境に
対する順応は,サンゴ体内の褐虫藻のクロロフィル量の
(Bai
r
de
tal
.
,20
09
)。
4.
3 他の地域的規模の環境変化に対するサンゴの順応
の可能性
変化から褐虫藻の遺伝子型組成まで幅広く生じることが
地域的規模での環境変化に対するサンゴの応答の例と
示唆される。一方で,サンゴは種によって,褐虫藻の遺
して,上記の他には塩分変化や懸濁物(堆積物)に対す
伝子型の変化がより柔軟なものとそうでないものが存在
るサンゴの順応の可能性が挙げられる。塩分変化に関し
するため(Bake
r
,2003),褐虫藻の遺伝子型の変化でど
ては,これまで野外観察において,低塩分がサンゴの白
れくらいの順応の幅が示せるのか,あるいはクロロフィ
化や死亡を引き起こす事例は多く報告されており(e
.
g.
,
ル量の変化のみでの順応の幅がどれくらいあるのかにも
Nakanoe
tal
.
,2
00
9),室内実験での観察例も複数報告
留意していく必要がある。
されている。低塩分は,浸透圧ストレスとして作用する
ため,細胞体積の急激な膨張による細胞の崩壊によって,
上述したように,光環境の変化に対しては,サンゴは
体内の褐虫藻の変化を通じて順応することができるが,
サンゴ体内の褐虫藻にも,ホストであるサンゴ自体にも
悪影響を及ぼすと考えられる。 実際, Downse
tal
.
高い光量下では,サンゴの白化が生じやすくなることも
(20
09)は,ショウガサンゴ(St
yl
ophor
api
s
t
i
l
l
at
a)
t
報告されている(Nakamur
ae
tal
.
,2003;Takahas
hie
を低塩分(20-3
2ppt
。コントロールは 3
9ppt
)に曝露
al
.
,20
0
4
)。サンゴの場合,室内飼育実験下においては,
すると,組織の壊死や褐虫藻の崩壊が観察されたことを
s 程度の光量下でも,
報告している。また,光合成活性の指標となる Fv/Fm
正常に成長が行われるが(Mar
ubi
nie
tal
.
,2003
,2
00
8;
値が,ショウガサンゴにおいては,2
0pptと 24
pptの間
Hol
c
ombe
tal
.
,2
010;Jur
ye
tal
.
,2010;I
guc
hie
tal
.
,
で急激に落ちていることから,この値の間に,低塩分に
数十から数百μmolphot
onsm
-2
2
01
2
),10
0
0μmolphot
onsm
-2
-1
s を超えると,白化
-1
対するサンゴ体内の褐虫藻の閾値が存在するものと考え
が 生 じ や す く な る (e
.
g.
,Nakamur
ae
t al
.
,20
03;
られる。また,塩分が低くなるほど,炭酸カルシウム飽
Takahas
hie
tal
.
,20
04)。しかし光量が 1000μmolpho-
和度の低下が生じるので,石灰化も抑制されると考えら
t
onsm
-2
s を超える実験条件下でも,正常な成長が見
-1
ら れ る 場 合 も あ り (Mar
s
hal
land Cl
ode
,200
4
;Ant
honye
tal
.
,2
008;Chauvi
ne
tal
.
,2
011),流量や水の
れる(I
nouee
tal
.
,2
0
12)。Nakanoe
tal
.
(200
9)は,
コブハマサンゴ (Po
r
i
t
e
sl
ut
e
a) においては低塩分下
(20,2
4‰。コントロールは 28‰)で共肉部の成長が停
15
4
井口・磯村
滞することを報告している。段階的に塩分を変化させた
に対する応答が変化する可能性も留意しておくべきで
状態でのサンゴの応答に関する知見はまだ少なく,今後
ある。
の研究が待たれる。また,低塩分に対する耐性には種間
差も見られるため(Nakanoe
tal
.
,2009),高水温に対
これまで多くの集団遺伝学的研究で,サンゴ集団内に
するサンゴの応答に種間差が見られるのと同様に,塩分
は様々な地理的スケールで遺伝的多型が存在することが
変化に対する順応の違いにも種間差があると考えられ,
報 告 さ れ て い る (van Oppe
n and Gat
e
s
,20
0
6
)。
その詳細に関しても今後調べられる必要がある。
Vol
l
me
randKl
i
ne
(2008
)は,カリブ海のミドリイシ
属サンゴ(Ac
r
opo
r
ac
e
r
vi
c
or
ni
s
)を対象に野外調査と
懸濁物に関しては,懸濁物そのものがサンゴの栄養源
感染実験を行ない,Whi
t
eBandDi
s
e
as
e
(WBD,白帯
として利用される場合もあることが,室内実験からも野
病)の発症と遺伝子型との関係を検証した。その結果,
外 で の 観 察 か ら も 報 告 さ れ て い る (Ant
hony,199
9,
調査したホストであるサンゴ自体の 49個の遺伝子型の
2
0
06
)。このことを考えると,懸濁物の変化に対してサ
うち,ある 6個の遺伝子型を示すサンゴでは WBDへ強
ンゴは順応しうると考えられる。一方で,懸濁物が大量
い耐性を持つことが示された。このことは,病気になり
の堆積物としてサンゴを覆ってしまった場合,サンゴが
にくい遺伝子型のサンゴが存在すること,また,WBD
窒息してしまうことで,光合成活性の低下や,褐虫藻密
が広い地域で発症した際にも,いくつかの小集団が生き
度とクロロフィル量の低下が生じるなど,サンゴに負の
残る可能性があることを示している。遺伝子型による病
影 響 を 与 え る 可 能 性 が あ る (e
.
g.
, Phi
l
i
pp and
気への耐性の違いは,野外だけではなく水族館で飼育さ
Fabr
i
c
i
us
,200
3)。沖縄では,赤土の流出でサンゴが負
れているサンゴでも見られる。水温や光環境がほぼ同じ
の影響を受ける可能性が指摘されている (Ni
s
hi
hi
r
a,
であると考えられる水族館の同一水槽内で飼育されてい
19
8
7;Yamaz
at
o,1987)。また,懸濁物によって光量が
るミドリイシ属サンゴ・スギノキミドリイシにおいて,
低下するため,光環境の変化と同じ順応が起きるとも考
ueNe
c
r
os
i
s
(RTN,和名は無し)という病
Rapi
dTi
s
s
えられる。懸濁物は,その中身によっては重金属などに
気の発症頻度が,ホストであるサンゴ自体の遺伝子型の
よる化学ストレスも引き起こすと考えられ(中村ら,
違いによって異なることが確認された(磯村,未発表)
。
20
06
),評価が難しい。赤土に暴露したハナヤサイサン
ゴ (Po
c
i
l
l
o
po
r
adami
c
or
ni
s
) では, HSPの発現が増
また,同じ種内でも,群体間で成長が大きくことなる
加することも観察されているが (Has
hi
mot
oe
tal
.
,
ことも報告されている。例えば Mar
ubi
nie
tal
.
(2
0
0
3
)
2
00
4
),なぜ HSPの発現が増加するのかについては,
においては,ミドリイシ属サンゴの 1種,A.ve
r
we
yi
その詳細な理由についてはまだ明らかになっておらず,
においては,酸性化海水中で石灰化率は低下するものの,
現在拡大中のサンゴの遺伝子情報を踏まえた解析が進展
群体間で石灰化率そのものに大きな差が見られ,一番成
することで,サンゴの懸濁物に対する順応機構がより詳
長の早い群体の酸性化海水中の石灰化率は,一番成長の
細に明らかになることが期待される。
遅い群体のコントロール条件の石灰化率よりも大きいこ
とが示されている。I
guc
hie
tal
.
(201
2)においても,
5. 環境変化に対するサンゴの遺伝子型変化に
よる適応的応答の可能性
ハマサンゴ(Por
i
t
e
saus
t
r
al
i
e
ns
i
s
)の成長速度は,群
これまで,様々な環境変化に対するサンゴの順応につ
褐虫藻当たりのクロロフィル量も,群体間で差が見られ
いて述べてきた。また,サンゴ体内の褐虫藻の遺伝子型
る(I
guc
hie
tal
.
,2
012
)。こうした同種内の群体間での
が変わることで,環境要因に対する応答が変化する可能
環境変化に対する応答の違いは,環境変化による自然選
性についても上記で述べたが,ホストであるサンゴの集
択によって生き残る遺伝子型の選択に大きく影響するも
団内の遺伝子型の組成が変わることによっても環境変化
のと考えられ,今後の環境変化で集団内の遺伝的組成が
体間で大きく異なり,酸性化海水に対しても,上述の
A.ve
r
we
yiと同様のパターンが報告されている。また,
サンゴの環境変化に対する順応と適応
1
5
5
どのように変化していくのかを予測する上でも重要で
によって,環境変化によるストレスが緩和されたり増加
ある。
したりする可能性があることを念頭に置く必要がある。
サンゴは地質学的には,様々な環境変化を乗り越えて古
Bar
s
hi
se
tal
.
(2010) は , フ カ ア ナ ハ マ サ ン ゴ
くから存続してきた。一方で,サンゴは最近の急速な環
(Po
r
i
t
e
sl
obat
a)を対象に,数 km の範囲内で,環境
境変化によって衰退していることが多くの研究報告から
変化が大きくストレスの多い場所と,環境変化が小さい
示唆されている(Car
pe
nt
e
re
tal
.
,2
00
8)。この見解の
ストレスの少ない場所から,複数群体を採集して相互移
不一致は, ・
I
nge
ni
ous par
adox・ と も 表 現 さ れ る
植実験を行い,HSPなどのストレス応答に関わる複数
(Budde
me
i
e
randSmi
t
h,19
99
)。タイムスケールの違
遺伝子の発現の変化を調べた。その結果,ストレスの多
いはあるものの,地質学なスケールにおいて,サンゴが
い場所由来の群体から作成したサンゴ片は,ユビキチン
様々な環境変化を生き延びてきた事実がある一方で,現
タンパク質(不要なタンパク質の分解を促すための分解
在多くのサンゴが急速な環境変化によって絶滅の危惧に
シグナルとして働く)の高い発現が見られ,ストレスの
あるとされているこの矛盾を説明するには,サンゴのス
少ない場所に移植しても同じ傾向が見られた。逆に,ス
トレス応答に関する理解を深めることが重要であると提
トレスの少ない場所由来の群体から作成したサンゴ片は,
案されている(Budde
me
i
e
randSmi
t
h,199
9)。上述し
ユビキチンタンパク質において低い発現が見られ,スト
てきたように,サンゴは様々な環境変化に対してそれな
レスの多い場所に移植しても同様であった。また,場所
りの順応の幅を持って応答することが可能である。また
間での褐虫藻の遺伝子型組成に違いは見られなかった。
その順応の幅を超えた環境変化によってストレスを受け
これらの結果は,フカアナハマサンゴにおいては,ユビ
たとしても,遺伝子型の変化を通じた適応により,新た
キチンタンパク質の発現量に関わる遺伝子座における異
な応答パターンを示す可能性もある。サンゴのゲノム情
なる遺伝子型が,環境の違いによって選択されうる可能
報も充実してきた近年,サンゴの環境変化に対する順応
性を示唆し,サンゴの環境変化に対する適応の可能性を
機構,そして適応機構の理解も飛躍的に進むことが期待
示した貴重な例である。現在のところ,集団内の遺伝的
され,上述の ・I
nge
ni
ouspar
adox・が矛盾のない形で
変異の評価は中立マーカーによる解析が主流で,生物の
説明されることが望まれる。
適応度に密接に関わる,機能的に重要な形質と関連する
量的遺伝的変異を自然集団で調べた研究はほとんどない
(Sanf
or
dandKe
l
l
y,2011)。サンゴのゲノム情報が拡
張している現在(新里,2012;Shi
nz
at
oe
tal
.
,20
11),
謝
辞
本研究は, 環境省環境研究総合推進費 (RF-1
0
0
9
,
こうしたゲノム情報を基にして,ストレス耐性に関わる
課題名:サンゴ骨格を用いたサンゴ礁環境に及ぼす人間
ような,機能的に重要な形質と関連する遺伝子座をマー
活動の影響評価に関する研究)及び科研費(1
1J0
3
2
3
6
)
カーとして,その遺伝子型頻度の野外集団での分布パター
の助成を受けたものである
ンを明らかにし,追跡することで,近未来でのサンゴ集
団の適応力評価が可能になるものと期待される。
6. 今後の展望
以上述べてきたように,ある環境変化に対して,サン
ゴは順応の幅を持って応答することができる。自然界で
は様々な環境要因が複雑に絡み合って生物に影響を及ぼ
すが,サンゴに対する複合ストレス影響を評価する際は,
それぞれの環境変化に対してサンゴが示す順応パターン
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,232,85-106.
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,319,111-116.
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17442-17446.
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