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全文PDF - 日本精神神経学会

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全文PDF - 日本精神神経学会
シンポ ジウム :
OCD関連障害 をめ ぐって
第
1
47
1
0
2回日本精神神経学会総会
回[
∃回回B]
回
強迫性障害
松 永 寿 人,切 池
(
OCD)の概要
信 夫 (
大阪市立大学大学院医学研究科神経粁神医学)
O
C
Dの診断,疫学,臨床像,精神病理学的特徴
Obs
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ve Di
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強 迫性 障 害 (
de
r;OCD)は不安障害の-型であ り, 自分 に と
確実性 に関する耐性の低 さな ど,特徴的認知的プ
ロセスにより, 自制困難な状態 まで不安が増強 さ
れ る過程であ り,強迫行為や不安状況の回避行動
って無意味ない し不合理 と判断 される思考や衝動,
は,増強 された不安が これによ り軽減,中和化 さ
あるいは行動が支配的 となって制御できな くなる
れ る ことの学習 ・習慣化 す る過程 とも考 えられ
病態である. これはたえず心を占め,意識的に除
る11).
去 しようとして も取 り除 けない思考や衝動,イメ
強迫観念 には様々な内容があ り,通常それぞれ
ージな どの強迫観念 (
o
bs
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s
i
on) と,通常 は観
と関連性の強い強迫行為を伴 う. しか し中には,
念,及び観念 に伴 う不安 を中和する試み として,
性的なイメージなど純粋に強迫観念のみが出現す
その不合理性,過剰性 を自覚 し止めたい という意
る場合が ある.強迫症状の内容 と,本邦 の OCD
志を持ちつつ も,駆 り立て られ る様 に行 う行為,
患者 での出現頻度 を表 2に示 すが,汚染/
洗浄,
すなわ ち強迫行為 (
c
ompul
s
i
on)か らな る.演
確認などが高率であるなど欧米 とほぼ一貫 した傾
迫行為には,数を数える,声を出さずに言葉 を繰
向を認めた.強迫観念の内容 は,宗教や治安な ど
,
り返すな ど 「
心 の中の行為」 も含 まれ る. この
社会文化的背景の影響 を受 けうるが,概ね強迫症
様 に,不合理性や過剰性 を自覚 していること,す
状 の出現様式において,社会文化的要因の関与 は
なわち症状の自我異質性が重要な診断的根拠 とな
少ない もの と考 えられる13).
るが,近年 その レベルの多様性 が指摘 されてい
OCDの有病率 は,欧米で は 2% 前後 とされ る.
る14
)
. この点 DSMⅠ
Vl
)で は,症状 に関す る洞
察 は,経過中の 「ある時点」のみ必要 とされ, ほ
とん どの期間,症状の不合理性 の自覚 に乏 しい場
合 を特定する 「
洞察が乏 しいもの」が,下位分類
として追加 されている.
強迫症状 は多 くの場合, トイレ後の手洗いや,
外出前の施錠の確認な ど日常や社会生活における
通常の思考や行動 の延長上 にあるが (
表1
)
,過
剰性や不合理性 を理解 し,症状 の抑制や抵抗 を試
みつつ も自らの意志で制御できず,葛藤や不安 ・
焦燥感,抑 うつ気分な どを生 じ,日常的,社会的
機能 に障害を来たす ことが病的である.強迫観念
は, ある刺激や状況について,過大 な責任感や不
表 1 強迫症状 の例
例 1 トイレの後や子供 の排滑物 をさわ った りす ると,
なかなか きれいになった気がせず に手洗 い を繰 り
返す.
例 2 外出 した時 に,何か汚い ものに触れて自分が汚れ
た と思い,帰宅後 にシャワーや入浴,手洗 いな ど
を繰 り返す.
例 3 自分の不注意で火郡 を起 こした り,泥棒 に入 られ
ることを心配 して,窓やガス栓 な どが正確 に閉 ま
っているかの確認 を繰 り返 す.
例 4 串 を運転 している時に証 か を砕 かなかったか, ま
たは歩いていて子供や老人 とすれ違 った時 に, ケ
ガをさせていないかを心配 して,元 の道 に引 き返
した りして繰 り返 し確認 する.
1
4
8
精 神経誌 (
2
0
0
7)1
0
9巻 2号
表 2 日本人 によ くみ られ る強迫症状
汚染恐怖一洗浄強迫
攻撃的 な観念一確認
正確性-確認 o
r儀式
数字 への こだわ り-数 を数 える
対称性 一儀式行為
無用 な ものへの こだわ り一保存
その他
4
0
-4
5%
3
0%
3
0%
1
5%
ル な どが しば しば先行 す る.更 に OCD 患者の臨
床像 には,以下 の様 な特徴 を認 め る11) ; 1) 強迫
症状 に強い苦痛 を感 じてお り,無視 した り抑制 し
た り,止めようと努力 していた り,少な くともそ
1
0%
の意志 を示すが, しばしば不安 に強 くとらわれ,
5
-1
0%
2
0%
無視や行為 を中断するな ど制御や抵抗が費臣しい.
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)
または不安 に圧倒 され,抵抗 しようと思 う余裕す
らない.2) 強迫観念や行為,不安 な どを自制 で
きず,確認 を強要 した り,保証 を繰 り返 し要求 し
た りして, しば しば家族 な ど周囲 を巻 き込 んでい
回避),回
る.3) 不安 を引 き起 こす状況 を避 け (
表 3 0CDの s
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g- YBOCSの標 的症状評価
リス トに従 った s
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on分類-
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);3因子モデル
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避 によ り不安な対象や状況の怖いイメージを,更
に強 く意識 している. 4) うつ病や他の不安障害,
人格障害な ど,他の精神障害の併存 を認 める場合
が多 く,特 にうつ病 は OCD が先行 して二次的 に
生 じる場合が多い とされ る.
近年 ,OCD は単一 的,均質 的 とい うよ り,症
候学的,及 び精神病理学的特徴,病因や病態生理,
そ して治療反応性な ど様々な観点か ら多様性が指
摘 され てい る12・19-21).す なわ ち OCD の中 に,病
因や生物学的病理性 な どを特異的 に共有す る亜型
が存在 し,有効 な薬物 のみな らず,その作用部位
や機序 などに,差異 を認 める可能性がある. この
)
,洞 察 や衝
様 な多様性 は,性差 16)や発症 年齢 18
動性 レベルな どを分類基準 として検討 されてきた
,中で も強迫症状,特 に確認や洗浄 な ど主
が 14,17)
要 な強迫行為の内容 を基準 とす る ものが最 も注 目
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veされている.最近では Yal
,
7
)を用 い て同定
Compul
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Y-BOCS)6
された強迫症状 の因子分析 によ り,強迫観念一行
為症状 群 が抽 出 され,中で も汚染 (
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本邦の一般人 口でのデータはないが,近畿圏 に所
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洗浄 (
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ng),対 称 性 (
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整
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在す る総合病院精神科 9施設 における総初診患者
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ng),保 存 (
hoar
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ng) な どが独
理 整頓 (
中 の OCD 患者 の割 合 は,1.
75- 3.
82% で あ っ
立 した因子 を構成す ることは,ほぼ一貫 して支持
た 15). OCD の発症時期 は,児童期後半 か ら 25歳
され てい る2
,
4
・
7・
8) (
表3
)
. この分類 法 の臨床 的,
頃が多 く,男性 は 15- 20歳頃,女性 は 20- 25歳
神経生物学的妥当性検討では,併存す る人格障害
頃 と,男性 が より若年 に発症す る傾向があるが,
や SSRIに対す る反応性,チ ック障害 との関連,
有病率 には,有意 な性差 を認 めない. また発症契
視覚的嫌悪刺激 を用いた症状誘発パ ラダイム下の
機 として,何 らかの重大 な出来事やス トレス,例
f
MRI検査所見な どによ り,各症状群間の差異的
えば身内の死,妊娠,出産,人 間関係上の トラブ
特徴が確認 されてお り,病因や精神病理,生物学
1
4
9
シ ンポ ジ ウム :OCD関連 障f
u
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Zをめ ぐって
表 4 典型的外来治療 プログラム
DSMⅠ
V に よる OCDの診 断 と評価
J
心理教育
症状 の患者や家族の理解 を高 め,治療意志 を強化 する
+
薬物療法
タロ ミプラ ミン :1
5
0
-2
5
0mg/
日, または
フル ボキサ ミン :1
5
0
-3
0
0mg/
日, または
パ ロキセテ ン :3
0
-5
0mg/
日
+
認知行動療法
曝霜反応妨害法 +認知療法
OFCな ど)障害 に よる脱抑 制状 態
を担 う皮質 (
な どのいずれか, または組 み合わせが考 えられ る.
神経化学 システムに関 して は,強力なセロ トニ
ン (
5
HT)再取 り込 み阻害作用 を有す る選択 的
Se
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セ ロ トニ ン再 取 り込 み阻害 薬 (
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s;SSRI
)の有効性 な
-HT神経伝達 異
どを根拠 とし,OCDの病態 に 5
常 が密接 に関連 す る とい う 5
-HT仮説 が支持 さ
れて きた. しか し中脳 の縫線核 か らの 5
-HT の
投射 は広範 囲 に及 び, また 5
-HT には受容体 の
サブタイプが数多 く存在 してお り,脳 内分布や効
果,作用発現様式 な どが異なっている.例 えば,
ク障害な ど各種神経精神疾患 との関連や,神経心
5
-HT作 動 薬 で あ る me
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mCPP)は,5
-HTIA,5
-HTl
。,及 び 5
HT2C 受 容 体 に高 度 の親 和 性 を有 し, これ が
OCD患者の不安 や抑 うつ,強迫症状 を増悪 させ
ることは,OCDの病態生理 において 5
-HT の関
理学的検査所見,外傷 な どによる限局性皮質損傷
与 を示唆す るものである12-19∼21).現在の ところ,
例,ならびに形態学的,機能的脳画像研究な どの
特定 の 5
HT受容体 や機能異常 の関与 は明 らか
知見 より,皮質一
線条体一
視床皮質回路 〔
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CSTC)ci
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注 目されて きた12・19-21).例 えば SPECT検査で は,
-HTl
。受容体 の感 受性冗進 が 注 目
容体 で あ る 5
的背景 との一貫性 も推定 されている2,7-9)
O
C
Dの病態 と治療
OCDに関す る神経生物学的モデルで は,チ ッ
で はないが,最近 で は 5
-HT神経終末 の 自己受
され,SSRIは, その長期的投与 の結果 に生 じる
安 静 時 PET研 究 で は,眼 筒 前 頭 皮 質 (
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o-
5
HTI
D受容体 の感受性低下 を介 し奏効 す る可能
性が示唆 されてい る.更 に OCDで は, ドーパ ミ
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r
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x;OFC)そ して線条体 (
特 に尾状
ンやノルア ドレナ リン系 を含 む多 くの神経伝達物
核 顔 部)の代 謝 冗 進 が 確 認 さ れ て い る. また
質,及び神経調整機能が複雑 に関連 している もの
SSRIな どの薬物, また は CBT に よる治療前後
の糖代謝 を比較 した研 究 にお いて,OFC,及 び
と推定 されている1
2
)
.
尾状核双方の代謝率低下が認 め られ, これ らの治
を中心 とした薬物療法に加 え,暴露反応妨害法な
療 は,CSTC回路活性 を正常化 す る と考 え られ
Co
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ど認知行動療 法 (
ている.更 には,言語刺激 な どによる強迫症状誘
apy;CちT)があ り,更 には,強迫症状 や治療,
発時 の脳血流研究 で は,強迫症状 の重症度 と,
家族 のサポー トな どに関す る心理教育が重要であ
OFC,尾状核,視床 の血流増加 との相 関が示 さ
れている12,19・20). この様 に OCDで は,前頭葉一皮
る11
)(
表4
)
.薬 物 療 法 は, タ ロ ミプ ラ ミ ンや
前頭葉や大脳基底核 の機能障害が明 らかにされ,
現 在 ,OCD に対 す る主 要 な治 療 に は,SSRI
質下回路の関与が示唆 されているが,皮質線条体
SSRIが主体 であ り,現在本邦 において, フル ボ
キサ ミンやパ ロキセチンの OCDへの適応が認可
)線 条
機能異常 に よる OCDの発現機 序 には,1
されている. これ らを,反応や副作用 を確認 しつ
体 な ど基底核病変 によ り,同郡 に一次的過活動が
つ漸増 し維持 用量 を決 めてい くが,概 して OCD
例 えば内的動機 に関
生 じる場合 , 2) 他 の皮質 (
に対 す る SSRIの治療 は,1
) うつ病 よ りも高用
す る前部帯状皮質な ど)が過活動 を来た し,二次
量 を要する,2) うつ病 に比 べ,効果発現 に長期
的 に基底核機能が冗進 す る場合 , 3) 基底核制御
2週 の継続投与
間 を要 し,治療反応性 は,最低 1
1
5
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表 5 Co
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- SSRIの付加 的薬物療法1.セ ロ トニ ン強化型
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有効性 の報告はあ るが ,c
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alでの実証 はな
い.
SSRIによ りCMIの血 中濃度 が上 昇 す る為,癌 撃
や心 毒性 の副作 用 に注 意 を要 し,5
0mg
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日以下 の
使用が望 ましい.
2.cl
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alで実
SSRIとの併用療 法 の有効性が ,cont
証 されてい る.特 に強迫症状 に よる二次的な不安 に
有効 とされ ,SSRIの効 果発現 まで に使用 され る こ
とがあ る.
2.ドーパ ミン作動性
1.hal
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特 にチ ック障害や分裂病型人格 障害 を併存す る患者
に有用 とされてい る.
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neとは併用注意 !)
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4.que
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これ らの有効性 は,c
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alで実証 されてい る.
しか し他の障害 (
例 えば統合失調症 な ど) に併発 す
る強迫症状 が, これ らによ り増 悪す る場合 も報告 さ
れてい る。
*perospironeの併用 に も有効例の報告があ る.
栢 神経誌 (
20
0
7)1
09巻 2号
機づけを強化確認 した後,CBT に導入す る とい
った併用療法が一般的である11)
. また強迫症状の
分類や,治療反応性評価 には,YBOCSな どの
評価尺度が有用である5・6・10)
これ らの定型的治療に抵抗性 を示す患者では,
診断を再確認 し,反応不良の原因を十分 に検討 し
て治療法 を再考す る必要がある11・22). SSRIによ
る定型的薬物療法に対 しては,保存 に関する強迫
症状や強迫性緩慢,及びチ ック障害や統合失調症
型人格 障害 な どの comorbi
di
t
yを有 す る場合 に
抵抗性 を示す傾向が指摘 されている. この様 に,
十分な量及び期間施行 した SSRI単独 に反応性が
不良であれば,他系統薬剤の付加的投与 を検討す
る. これ には,大別 して 5
-HT強化性, また は
ドーパ ミン (
DA) 阻害性 に作用す る薬剤の有効
性が検証 されている2
2
)(
表 5)
. また治療抵抗性
の背景 に認知的問題が著明な場合には,認知面へ
の直接的アプローチによる洞察や治療的動機づけ
の強化,認知的歪みの修正 を,そして家族 など周
囲 との葛藤 といった心理 ・社会的要因が背景 にあ
る場合 には,家族療法な ど他の精神療法の適応 を,
それぞれ検討す る
11)
.
これ らの定型的治療 により,5
-1
0年程度の長
の上,評価することが望 ましい,3) すなわち大
期的予後では,約半数の OCD患者が寛解,ない
抵 は,最大反応 に達するまで,数週間にわた り漸
し部分的寛解 に至 るとされ る3).しか し現在の治
増 を要するという反応特性 を示すが,中には投与
療的限界 も明 らかであ り,今後更なる検討が必要
2
-3週で効果発現 に至 る場合 もある,4
)多 くの
である.特 に近年,OCDにおける亜型の存在 を
場合,完全 というよ り部分的改善 を示す,5
)中
支持す る証拠が増 してお り,亜型 をよ り的確 に,
断により再発 しやす く, その防止には可能な限 り
すなわち神経生物学的,臨床的, また治療反応性
長期の投与が望 ましい,な どが特徴 とされ る11,12).
に関 して も,一貫性や特異性 を示 しうる妥当な基
また SSRIの副作用 は,三環系など他系統の抗 う
準で定義 し分類 を試みることが注目されている12)
.
つ薬 に比 して軽度であ り, より安全性,忍容性 に
この様 な分類基準の検討は,脳画像や遺伝子など
優 れてい るが,一過性 で短期 間 (
1
-3週)の吐
今後の神経生物学的研究の信頼性,妥当性 を向上
き気や不安増強などを認 めることがある.長期投
させる上で極 めて重要であ り,臨床面 において も,
与 で問題 とな るの は,性機能低下 な どであ る.
より有効 な治療法の合理的選択 を可能 にすると共
個々の患者 に施行 され る治療 は,病状の内容や精
に,難治 とされ る患者の治療戦略を開発する上で,
神病理,洞察や治療的動機づけの程度など,臨床
不可欠な もの と考 えられる.
像 を多面的に検討 し選択 されるが,多 くの場合,
うつ病 を併存す るな ど CBTへの導入が当初困難
であ り,SSRIなどの薬物 を先行 させ,治療的動
文
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)興野健也,松永寿人,松井徳造 ほか :OCD の発
症年齢 と臨床像の比較.特に早発例 と後発例の特徴 につい
て.強迫性障害の研究 5(
OCD研究全編).星和告店,栄
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)松永寿人 :強迫性障害の症状特徴 と治療.精神科
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