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拡大する上海住宅市場の現状とリスク

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拡大する上海住宅市場の現状とリスク
海
外
通
香港駐在
拡大する上海住宅市場の現状とリスク
信
上海住宅市場の拡大と背景
物件の開発を積極的に進めたことから、
一部で
上海を始めとする中国の主要都市は、活発
売れ残り物件が増加するなど過剰感も出始めて
な住宅建設投資と旺盛なマイホーム購入需要
いる。香港系不動産業者の統計によれば、上海
を背景に住宅ブームの様相を呈している。上
市内の高級住宅物件の空室率は 2002 年末時点
海の住宅市場に目を向けると、2002 年の住宅
で18.2%に達しており、
将来的に大幅な価格調
建設投資額は前年比 17.6%増、住宅販売額の
整が起きるリスクは無視できないと言えよう。
伸びは同 25.9%増となり、ともに 2003 年 1 ∼
3月期も好調を持続している。住宅市場の拡大
ソフトランディングに向けた政府の対応
は、住宅建設需要の高まりに加え、住宅関連
こうしたなかで上海市政府は 2002 年後半以
サービスや個人向けローンの拡大、電化製品
降、高級物件に対する土地供給の抑制、不動産
や家具等の耐久消費財販売への波及効果など
購入税の引き上げなどの対策を打ち出し、中
を通じて、高成長の原動力となっている。
国人民銀行上海支店もデベロッパー向け貸出
98年以降、
政府や企業が住宅を割り当てる住
や投資目的の個人向け住宅ローンに対する規
宅分配制度から持ち家制度への転換が進むなか
制などを検討している。ある地場の金融機関
で、所得水準の向上と住宅ローンの普及に伴い
は、不動産バブルが懸念され始めたことを受
マイホーム需要が急速に顕在化してきた。さら
けて、昨年後半以降デベロッパー向け貸出を
に、上海周辺地域の今後の成長可能性に対する
抑制し始めているという。
期待感を背景に、投資対象としても住宅物件が
将来不動産バブルの調整を契機に住宅価格
注目され始めてきた。また、市場の拡大をにら
の急落が起きた場合には、デベロッパー向け
んだ不動産開発業者
(デベロッパー)
の新規参入
貸出などが不良債権化することによって金融
が相次ぎ、不動産プロジェクトが急拡大を遂げ
システムがダメージを受けるほか、逆資産効
たことも住宅市場の成長を促す要因となった。
果を通じて家計の消費マインドが冷え込むな
頭をもたげる不動産バブルの懸念
ど、マクロ経済に深刻な打撃を与える懸念も
ないとは言えない。
2
2
住宅市場は、3,000∼5,000 元/m(広さ100m
こうした事態を未然に防ぐためには、バブ
として円換算 450 ∼ 700 万円)
を中心とする中
ルの芽を早期に摘み取ることが肝要となろう。
2
級住宅と 7,000 元/m(同約
1,000 万円)
を超え
ただし、住宅分野は内需拡大の重要な柱でも
るハイグレードの高級住宅に分類される。
あることから、経済成長にブレーキを掛ける
2002 年ごろから主に高級住宅市場で不動産
ようなドラスティックな規制策は取りにくい
バブルが懸念され始めている。
地元の高所得者
のも事実である。過熱を抑制しつつ、住宅市場
層によるマイホームの実需に加えて、
華僑を中
の安定的な成長を維持するソフトランディン
心とする外国人投資家や上海市内外の富裕層な
グが、上海を始めとする中国の住宅政策にお
どによる投資目的の需要が急増した結果、
一部
ける最大のテーマとなろう。
の物件で価格が高騰している。一方で、デベ
12
ロッパーが高いマージン率を確保しやすい高級
みずほリサーチ Jul. 2003
(重並 朋生 TEL.03-3201-0524)
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