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韓国オンラインゲーム産業を牽引する二人の企業家
特 集 経 済・政 治・社 会 の 発 展 に お け る 企 業 家・経 営 者 の 役 割 安倍 誠 イズゲーム﹁クイズクイズ﹂など を次々に開発するとともに、中小 のゲームメーカーを次々に買収し ていった。そして自社のポータル サイトにアクセスすれば誰でも自 分の嗜好にあったゲームを楽しめ るような体制を整えた。ネクソン はこのビジネスモデルを日本、中 国など海外でも展開して成功をみ を発表した。一九九七年の通貨危 チせずにグループ全体を統括する として個々のゲーム開発にはタッ ンジュは持株会社ネクソンの会長 せている。積極的な企業買収の結 いた。二人はグラフィックゲーム 機直後、韓国ではブロードバンド 立場にある。 能を開花させた。まずパソコン通 の開発で意気投合し、卒業後しば Ｃ房﹂と呼ばれるネットカフェが でつないだパソコンを揃えた﹁Ｐ ジェギョンは在学中からパソコン 約九八〇億円と同年の日本国内市 ら く し て ネ ク ソ ン を 立 ち 上 げ た。 果、ネクソンは多くの系列企業を 場では最大規模の新規上場であっ キムジョンジュは社長としてプロ 信を基盤としていた風の王国をリ た。世界のゲーム産業において韓 安価でゲームを楽しめる場所とし ●ＮＣソフトのキムテクジン 通信によるテキスト形式のオンラ 韓国オンラインゲーム産業を 牽引する二人の企業家 二〇一一年一二月一四日に韓国 のオンラインゲーム会社であるネ 国企業のプレゼンスが高まってい ジェクト全体の統括や国内初の て急速に普及したが、ＰＣ房のコ 抱えたグループとなり、キムジョ ることを端的に示すニュースと言 ウェブ制作事業の立ち上げなどに ンテンツとして風の王国は大ヒッ 一九六七年生まれのキムテクジ ンはアップルⅡをいじるのに夢中 ニューアルしてインターネット版 える。本稿では成長を続ける韓国 より予算獲得に奔走し、副社長の トを記録した。 インゲームの開発で頭角を現して オンラインゲーム産業を牽引して ソンジェギョンはプログラミング ク ソ ン が 東 証 第 一 部 に 上 場 し た。 きた二人の企業家を紹介したい。 ソンは世界初のＭＭＯＲＰＧ という。一九九六年、ついにネク 広いユーザーを獲得するために多 いったのに対して、ネクソンは幅 を 時 間 を か け て 製 作、 販 売 し て さらに、この時期に生まれた多 くのゲーム会社がひとつのゲーム 現した。大学院卒業後に現代電子 タプログラミングの世界で頭角を の開発に参加するなどコンピュー ワープロソフト﹁アレアハングル﹂ 学電子工学科に入学後、はやくも な高校時代を過ごした。ソウル大 ︵ 様なゲームを短期間にリリースす に入社、アメリカで研修期間を過 およびグラフィック制作を行った ︶である﹁風 Role-Playing Game の王国﹂を完成させた。風の王国 る体制を目指した。そのために自 ごした後はポータルサイトの開発 ●ネクソ ン の キ ム ジ ョ ン ジ ュ キムジョンジュはソウル大学コン はパソコン通信の世界で爆発的な 社の組織、人員を整備して﹁闇の ＭＯＲＰＧだけでなくチェーシン 伝説﹂、﹁エランシア﹂といったＭ まもなくは大企業向けのインター 独立してＮＣソフトを設立、創業 などを行っていた。一九九六年に の頃からパソコンに親しんでいた ネクソンを率いるキムジョン ジュは一九六八年生まれ、高校生 ピュータ学科に入学、卒業後は理 ヒットを記録した。 間もなく開発者のソンジェギョ ンはネクソンを去るが、その後キ グ ゲ ー ム﹁ カ ー ト レ イ ダ ー﹂、 ク Massively Multiplayer Online 工系大学院である韓国科学技術院 ル大、ＫＡＩＳＴを通じた同期生 ムジョンジュは経営者としての才 ︵ Ｋ Ａ Ｉ Ｓ Ｔ ︶ に 進 学 し た。 ソ ウ に ソ ン ジ ェ ギ ョ ン が い た。 ソ ン 4 アジ研ワールド・トレンド No.201（2012. 6） 韓国オンラインゲーム産業を牽引する二人の企業家 た な Ｍ Ｍ Ｏ Ｒ Ｐ Ｇ﹁ リ ネ ー ジ ュ﹂ ンジェギョンがアイネット社で新 どこのとき、ネクソンを離れたソ パートナーを探していた。ちょう てゲーム開発に乗り出すために 事業を拡大したが、新規事業とし ネット環境の構築サービスなどで を開いた。 入してゲーム自体を無料化する道 ラクターに課金するシステムを導 イテムと呼ばれるゲーム上のキャ 法を初めて取り入れた。さらにア 盟店として定額料金を徴収する方 ＰＣ房を事実上の販売代理店・加 立したことである。ＮＣソフトは 代表︶は同世代であり、ソウル大 ジェギョン︵現在はＸＬゲームズ 作で大きな役割を果たしたソン とＮＣソフトのデビュー作品の製 ここで紹介したキムジョンジュ とキムテクジン、それにネクソン ●ネット第一世代の緊密な人 的ネットワーク 三世が経営する財閥が支配を続け で あ る と さ れ る。 創 業 者 の 二 世、 換を頻繁に行うなど協力関係も密 るエンジニア同士であり、情報交 として躍り出た。お互いをよく知 に創業し、インターネットの急速 発 に 没 頭 し た。 一 九 九 八 年 に リ にキムテクジンはサーバ関連の開 ネット基盤に再構築し、そのため ＮＣソフトはパソコン通信基盤 であったリネージュをインター チームを買収した。 を含むアイネット社のゲーム開発 開発を行うためにソンジェギョン ンは、自らの会社でリネージュの ギョンと知己であったキムテクジ ル﹂の開発などを通じてソンジェ 定 し て し ま っ た。﹁ ア レ ア ハ ン グ アイネット社は開発打ち切りを決 ﹂、﹁ タ ワ ー オ ブ ア キムテクジン自ら陣頭指揮して なった。他方でＮＣソフトは社長 で六〇〇万枚を超えるヒット作と 作した﹁ギルドウォーズ﹂は世界 援の下で買収したアレネットが製 とに成功した。ギャリオットの支 ド・ギャリオットを迎え入れるこ 製作の第一人者であるリチャー リカでロールプレイイングゲーム スを開始した。さらに同年にアメ にはリネージュの北米でのサービ ていたキムテクジンは二〇〇一年 開始当初から海外市場に目を向け ネクソンと同様にＮＣソフトも 積極的に海外展開を行った。事業 しているカカオ社のキムボンス代 サービス﹁カカオトーク﹂を運営 者で現在はショートメッセージ を行っている。ハンゲームの創業 れたときにネクソンは出資の支援 た。ＮＨＮが外資の攻勢にさらさ Ｔの学生寮でルームメイトだっ し、キムジョンジュとはＫＡＩＳ ウル大コンピュータ工学科を卒業 Ｏもやはり一九六七年生まれでソ ム﹂を持つＮＨＮのイヘジンＣＳ 傘下にゲームポータル﹁ハンゲー ト一位﹁ネイバー﹂の運営会社で にも、例えば韓国のポータルサイ したエンジニアである。彼ら以外 やＫＡＩＳＴなど同じ大学を卒業 国のゲーム各社は変化にうまく対 く環境は大きく変化している。韓 長が見込まれるなど産業を取り巻 普及によりモバイルゲームの急成 フォンやタブレットＰＣの急速な イ ン ゲ ー ム 産 業 だ が、 ス マ ー ト インターネットの急速な普及の なかで成長を遂げた韓国のオンラ 事実である。 との批判の声も上がっているのも し ま い、次 の 世 代 が 育 っ て い な い が あ ま り に 巨 大 化、﹁ 財 閥 化 ﹂し て しかし、いまや彼らが育てた企業 ト 第 一 世 代 は 異 彩 を 放 っ て い る。 の力で立身出世を遂げた彼らネッ ている韓国経済界のなかで、自ら な普及のなかで一気に時代の寵児 社会経験を経て一九九〇年代後半 の 開 発 を ス タ ー ト さ せ て い た が、 ネージュが完成すると、ＰＣ房で ﹁リネージュ なるが、ＮＣソフトは企業として らくしてＮＣソフトを去ることに た。ソンジェギョンはやはりしば 受け入れられ、大ヒットを記録し の企業にまで成長を遂げることに せ、ＭＭＯＲＰＧ分野で世界有数 拡大をみせた中国で大ヒットさ オンラインゲームゲーム市場が急 イアン﹂を開発して北米、さらに あり、大学院や社会人間もない時 触れることのできた最初の世代で 一〇代の多感な時期にパソコンに 産業工学科卒である。この世代は 表は一九六六年生まれでソウル大 手腕が改めて問われている。 ことができるのか、企業家たちの 応して新たな成長の時代を迎える 通貨危機により経営不振に陥った 楽しめる新たなコンテンツとして その後も成長を続けた。ＮＣソフ ︵あべ まこと／アジア経済研究所 在ソウル海外研究員︶ なった。 あたりにしている。彼らは一定の 期にインターネットの勃興を目の トが成長した最大の要因はオンラ インゲーム産業の収益モデルを確 アジ研ワールド・トレンド No.201（2012. 6） 5 2