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IT 社会の進展を映し出すユビキタス指標 - Nomura Research Institute

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IT 社会の進展を映し出すユビキタス指標 - Nomura Research Institute
10-NRI/p76-85 02.9.18 19:24 ページ 82
N
R
I
N
E
W
S
IT社会の進展を映し出すユビキタス指標
戸田重郎
NRI 野村総合研究所では、「情報通信利用者動向の調査」
ドに接続してインターネットを利
を半年ごとに実施している。2002年3月に行った11回目の
用する人は、生活者の10.8%とな
調査によれば、IT(情報技術)の利用率は、携帯電話等が
り、1年間で5倍に急増した。ま
79%、自宅のパソコンが46%、またブロードバンド(高速
た、ブロードバンドを利用したい
大容量回線)は11%に増加しており、だれもが、いつでも、
どこでもITを利用できるユビキタス・ネットワーク環境が
急速に整備されてきている。NRI では、このような社会全
体の IT化の進展度合いを測る「ユビキタス指標」として、
「ユビキタス比率」を定義した。
という人の割合は、インターネッ
ト利用者・利用意向者の76.9%と
高い。
ブロードバンドは常時接続で定
額制が普通になっており、これは
利用時間の長さに現れている。今
回の調査でも、ブロードバンド利
用者のインターネット利用時間
生活者のIT利用は急速に進展
第1回の「情報通信利用者動向
話型インターネット接続サービ
は、ナローバンド(電話回線)利
ス)が普及の兆しを見せており、
用者の2倍程度になっている。
の調査」から5年経った2002年3
家にパソコンはあっても自分は使
さらに、ブロードバンド利用者
月現在、携帯電話・PHS(簡易型
っていないという女性が、利用に
のEC(オンラインショッピング)
携帯電話)の利用率は79.0%、自
意欲を示している。
利用率は46.1%であり、インター
宅でのパソコン利用率は45.6%
Lモードのようなインターネッ
ネット利用者の16.5%を大きく上
と、5年前の約3倍に増加してい
ト端末は、インターネットを利用
回っている。年間購入金額も、イ
る。また、1年前と比べても、そ
したいがパソコンは難しいと考え
ンターネット利用者の平均4.8万
れぞれ7.9ポイント増、7.5ポイン
ている人をターゲットに、数年前
円に対し、ブロードバンド利用者
ト増となっており、依然として堅
から商品化されてきたが、成功し
は5.7万円と高い。ブロードバン
調な増加ぶりを示している。この
ていなかった。商品コンセプトが
ドの普及に伴って、現在約6200億
背景には、女性の利用が進んでい
市場のニーズにマッチしていなか
円規模のEC市場が、急速に拡大
ることがある。
ったためと考えられるが、インタ
すると考えてよいだろう。
一方、インターネットを利用し
ーネットの普及が進んだ今、多様
一方、テレビ電話の利用も、ブ
ている人の割合は、パソコンから
な関連商品が受け入れられる素地
ロードバンドの普及によって進ん
のアクセスと携帯電話からのアク
ができてきたといえよう。
でいくと思われる。インターネッ
セスを合わせると60%になった。
インターネットの汎用商品化が急
速に進んでいる。
そのなかで、Lモード(固定電
82
ト手順で音声データを送受信する
ブロードバンドで
IT 利用が大きく前進
自宅のパソコンをブロードバン
技術であるVoIPは、電話料金を
低廉化するだけでなく、テレビ電
話を安価に利用することを可能に
知的資産創造/2002年 10月号
当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
Copyright © 2002 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
10-NRI/p76-85 02.9.18 19:24 ページ 83
する。また、携帯電話のブロード
できるユビキタス・ネットワーク
が第4世代、第5世代と進化して
バンドである第3世代携帯電話に
環境が整っていることにあり、現
いき、無線 LAN(ローカルエリ
は、テレビ電話機能が搭載されて
在、この環境を活用したサービス
ア・ネットワーク)もますます広
いる。
が本格化する段階にある。他国で
まっていくだろう。
技術的な課題はあるものの、自
宅のパソコンと携帯電話との間で
のビジュアルコミュニケーション
は、まだこのような環境は整って
今後は、このような変化をユビ
キタス指標の中に取り込んでいか
いない。
したがって、今後の IT社会の
なくてはならない。さらに、IT
も、近い将来には実現するだろう。
進展を測る指標としては、個々の
の使いやすさを実現するヒューマ
このような新サービスの投入は、
機器やサービスの利用率だけでは
ンインタフェースの技術革新も、
今後ますます進むと考えられる。
十分でなく、社会全体の IT化の
指標として考える必要がある。そ
進展を定量的に示す「ユビキタス
の意味で、ユビキタス比率はユビ
指標」が必要である。
キタス指標の第1段階にすぎな
IT 社会の進展を測る
ユビキタス指標
NRI では、ユビキタス指標とし
い。
ユビキタス・ネットワーク環境
て、「ユビキタス比率」を定義し
ユビキタス・ネットワークの進
は、固定電話網におけるブロード
た。これは、自宅のパソコンでブ
展度合いを正確に測るための指標
バンド化の進展、携帯電話による
ロードバンドを利用してインター
をさらに進化させていくために、
インターネット利用の増加、およ
ネットに接続し、かつ携帯電話で
「情報通信利用者動向の調査」の
び第3世代携帯電話の台頭によっ
もインターネットを利用している
果たす役割は大きい。また、企業
て、急速に整備されてきている。
人の割合である。
や行政が、無線と有線のインフラ
今後は、ブロードバンドとモバイ
ユビキタス比率は、2002年3月
を融合させたサービスを開発した
ル通信を組み合わせたさまざまな
現在で5.8%と、1年前に比べて
り、IT 政策を策定したりする際
サービスが商品化されていくこと
10倍に激増しており、IT 環境の
に、目標値としてユビキタス指標
になろう。
急速な変化が見てとれる。これは
を掲げることで、日本にとって最
ブロードバンド利用率のそれを大
適な IT社会が実現されていくこ
きく上回る増加率である。
とになろう。
このような環境変化のなかで
は、個々の IT機器やサービスの
普及率を国際比較して一喜一憂す
ることに本質的な意味はない。
確かに、携帯電話の普及率は北
『ITソリューションフロンティア』
ユビキタス指標を目標に
I T 社会を実現
2002年9月号より転載
欧諸国や香港で高く、ブロードバ
今後、ブロードバンドは100メ
ンドは韓国で普及が著しい。しか
ガビット/秒を超えて、その10倍
し、日本の IT化の特徴は、ブロ
のキガビット/秒クラスに進むこ
ードバンドとモバイルが共に利用
とが確実である。また、携帯電話
戸田重郎(とだじゅうろう)
情報・通信コンサルティング一部上級
コンサルタント
IT社会の進展を映し出すユビキタス指標
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