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中国における携帯コンテンツビジネスの現状と展望
海外便り 中国における携帯コンテンツビジネスの現状と展望 NRIホンコン 安田範仁 世界最大規模をもつ中国の携帯電話市場では、最近になってコンテンツビジネスが進展して いる。それはまだ発展段階にあるが、技術上の制約も徐々に解消されつつあり、欧米や日本の 企業も着々と進出を始めている。本稿では、このような中国の携帯コンテンツビジネスの現状 と、市場拡大のための条件などについて考察する。 機能的制約から、着メロは単音、待ち受け画 新しいサービスの進行 中国情報産業省の統計によると、中国にお 像は白黒といったレベルにとどまっている。 コンテンツはSina社、Netease社、Sohu社、 ける携帯電話の利用者数は2001年11月時点で LinkTone社などの大手ICP(インターネット 1 億3,992万人と、日本、米国を抜いて世界 コンテンツプロバイダー)を中心に100社あ 最大である。また増加数も、2001年 1 月∼11 まりが提供している。利用料金は着メロ、待 月だけで5,465万人と、日本の携帯電話利用 ち受け画像が 1 コンテンツにつき 1 ∼ 2 元 者数に肉迫する規模である。 (約15∼30円)程度、ニュース情報が0.1∼0.5 中国の通信方式は、アジアや欧州で普及し 元(約1.5円∼7.5円)程度である。コンテン ているGSM(汎欧州デジタルセルラーシス ツ利用に対する課金については、中国移動通 テム)が主流で、音声通話が中心である。し 信社が通話料と合わせて利用者から徴収する かしそのなかでも徐々に携帯電話でのインタ 回収代行の形をとっており、利用料の15%が ーネット接続、携帯コンテンツ利用の動きが 手数料となっている。 進みつつある。その中心が中国版iモードと も言える「Monternet(移動夢網) 」である。 進む外資の進出、日本も本格化 ノキア社、モトローラ社、エリクソン社、 「Monternet」のサービス 18 シーメンス社といった欧米の携帯電話メーカ Monternetは、中国最大手の携帯キャリア ーは、すでに中国で熾烈な競争を繰り広げて ーである中国移動通信社が2001年 1 月より開 いるが、差別化のため大手ICPと提携するケ 始したサービスで、ショートメッセージの送 ースが出てきている。たとえばノキア社は 受信がベースとなっている。このショートメ LinkTone社を通じ、各種プロモーションと ッセージは年間100億通に達する見込みで、 連動して自社の豊富なコンテンツを提供して さらに拡大しようとしている。コンテンツに いる。また他のメーカーも各地域のICPと共 は着メロ、待ち受け画像、天気・株価のニュ 同でプロモーションを展開するほか、コンテ ースなどがあるが、携帯電話機やサービスの ンツ開発などで積極的な協力を行っている。 システムマンスリー 2002年2月号 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2002 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. この背景には、メーカーにとってコンテン るとともに、和音機能やカラー液晶を備えた ツの充実が機器の売上増加のための重要な要 携帯電話機が投入されれば、より魅力的なコ 素であることに加えて、制度上の制約から外 ンテンツが提供でき、市場の拡大に大きく寄 資系企業が直接コンテンツ配信を行うことが 与するであろう。 できないという事情があり、今後も欧米企業 一方、2001年12月のWTO(世界貿易機関) と中国のICPとの協力関係は深まっていくと 加盟にともない、中国政府は国内電信市場の 思われる。 対外開放準備を進めているが、2002年中にも 一方、iモードでは成功した日本企業も、 移動体通信業務を許可証制度にし、外資系企 GSM携帯電話市場での劣勢もあり、中国で 業にも門戸を開放すると言われている。今後、 の存在感の薄さは否めない。しかし、ヤマハ 外資系企業による資本参加や合弁会社設立な 社が2001年 1 月より上海のEdongCity社と提 ど市場参入が進むことは間違いない。 携し、台湾に続いて上海で着メロ配信サービ スを開始したり、占いコンテンツなどを手掛 注目される日系企業の動向 けるインデックス社が、三菱商事社と組んで やや出遅れた感のある日系企業の巻き返し LinkTone社に出資するなど、日本企業の中 も期待される。NTTドコモ社は、すでに香 国進出も始まっており、これからさらに進ん 港のHutchson Telephone社に対しiモードコ でいくと思われる。 ンテンツの技術支援を行っているが、2002年 中には欧州・台湾でもiモードサービスを開 ビジネスの成長のカギ 始するなど、日本発ビジネスモデルの拡大を 中国における携帯コンテンツビジネスはま 着々と進めており、世界最大の中国市場への だ産声をあげたばかりである。その成長には 参入もそう遠くないものと思われる。また 携帯機器とインフラの技術進化、移動体通信 KDDI社も、2001年 6 月に業界第 2 位の通信 業務の対外開放がカギとなるであろう。 キャリアーである中国聯合(れんごう)通信 現在のMonternetは技術上の制約から非常 社と技術・業務提携を行い、7 月には中国移 にシンプルなサービスレベルにとどまってい 動通信社と国際電話サービスに関する協定を るため、コンテンツビジネスの大幅な拡大は 結ぶなど積極的な動きを見せている。 難しい。しかし今後GPRS(General Packet 中国の携帯電話市場は世界最大とはいえ、 Radio Service。 第 2.5世 代 技 術 ) 方 式 や まだその普及率は10%程度に過ぎない。拡大 CDMA(符号分割多重接続)方式が普及す 余地が非常に大きい携帯コンテンツビジネス るにつれ、インフラとしての制約が小さくな の動向には注目したいところである。 ■ システムマンスリー 2002年2月号 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2002 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 19