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企業内ブログ1年間の経験 ―部門内ブログ「ENGAWA」
特 集 [企業内Web2.0への挑戦] 企業内ブログ 1 年間の経験 ―部門内ブログ「ENGAWA」― 野村総合研究所(NRI)基盤サービス事業本部では、社員の知識の共有と活用を目指して企業 内ブログを導入している。共通の興味や関心によって結ばれる“縁”という意味から「ENGAWA」 と名付けられているが、本稿では、1 年を経過したこのブログの運営状況と、企業内ブログの あり方についてアンケートなどで得られた知見をまとめる。 「ENGAWA」ブログ導入の目的 スから会社の業務に至るまで幅広く、これに いま企業では、さまざまな電子ツールによ 対して部長も新入社員も自由にコメントを寄 って社員間の知識共有の仕組みは整備されて せている。メンバーへのアンケートでも「人 いる。しかし、スピーディーな業務や、より となりがうかがえて楽しい」「本部の方向性 進んだ協働のためには、個々の社員がもって がみえる」という声が寄せられた。また、社 いる知識をさらに効果的に共有し活用する仕 員が現場で感じたことを何気なく書いたブロ 組みが必要と感じることも多い。各社員がも グにおいてコメントが盛り上がり、トップも つ知識を集めるためには、個人からの情報発 含む多くの社員によって熱い議論が交わされ 信を促すことが必要で、それにはブログを活 たケースもあった。 用することが有効ではないかと考えた。そこ ②横断的な知識の共有 で2005年 4 月より20名規模の試験運用を行 ブログツールのコミュニティ機能を利用 い、同年10月より300名規模での本格運用を し、業務に役立つTips(豆知識・ヒント集)や 開始した。 ツールを紹介しあう「オススメ便利ツール」の 運営方針は「紹介制ではなく全員登録とす 場や、業務で取り扱う端末やネット機器の情 る」「事業本部内の社員のみ閲覧・投稿が可 報交換を行う「ワンポイント情報共有」とい 能」「記名制」「投稿は業務に直接関係なくて ったコミュニティが作られ、部門を越えた横 よい」とした。 の知識共有が進みつつある。また、口コミで 導入の効果 効果検証のために行ったアンケートも参考 に、「ENGAWA」ブログの使われ方や効果 を 3 つに絞って紹介しよう。 ①トップダウン・ボトムアップの知識共有 2006年 4 月より、本部長による週 1 回のブ 14 ログ投稿が開始された。話題は一般のニュー おいしいランチの店を紹介する「ENGAWA グルメ」は、職場周辺のグルメ情報が日々投 稿され人気を集めている。 ③対面の会議を補完 職場が離れていて対面での会議の開催が少 ないという委員会活動では、議事録や配布資 料の管理サイトとして公開範囲を限定したク 2007年2月号 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2007 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 野村総合研究所 基盤サービス事業本部 基盤マネジメントサービス部 主任テクニカルエンジニア 久保智之(くぼともゆき) 専門はIT基盤のマネジメント、技術経 営・知識経営など ローズドブログが活用されている。資料とコ 機能は、採用したブログシステムにも組み込 メントが時系列に並ぶため、議事の流れが把 まれていたが、週に 1 回、手作りのメールマ 握しやすいと好評である。また別の事例とし ガジンを送信すると、その直後にアクセス数 て、初対面の人と打ち合わせする際に、事前 が増加することがわかった。メールマガジン にブログで相手の人となりがある程度わかっ の作成には手間がかかるが、機械的なメール ていたために、スムーズに打ち合わせが進ん とは違った形でブログ利用のきっかけを与え だというケースもあった。 る効果があるようだ。またブログにコメント 活性化のための施策 アンケートでは「ブログを使っていると暇 だと思われないか心配」「記名制では思うよ があると次の投稿がしやすくなるようなの で、読者にはできる限りコメントをつけるよ うに勧めている。 逆に失敗したのは、「何を書いたらよいの うに書けない」という意見もあった。また、 かわからない」という声に応えた「お題(投 お互いの人となりがまだ十分に共有できてい 稿テーマ)」の提供である。社内や世間の動 ない初期段階では、投稿から細かいニュアン きに関連させて「GWの過ごし方」「会議の スが伝わらない可能性がある。そのため積極 質を向上させるには」というような硬軟とり 的にコミュニケーションを行うことに躊躇し 混ぜたテーマを掲げて投稿を促したのだが、 て初めの一歩が踏み出せないという場合もあ 投稿数はほとんど増えなかった。おそらくブ るようである。大規模な組織に企業内ブログ ログというものは「誰かに書かされる」もの を導入するには、よく知っている者同士の小 ではなく「自発的に書く」ものだということ さなグループでいくつか並行的に始め、徐々 なのであろう。ちなみにアンケートでは、 に組み合わせて規模を大きくしていくという 「どういうときにブログを書こうと思うか?」 やり方が望ましいであろう。 という問に対する回答は、「アクセスランキ アンケート結果などを受けて、ブログの利 ングが上位になったとき」というのはほとん 用率を上げるためのいくつかの施策を講じ どゼロで、最も多かったのは意外にも「他の た。成功例と失敗例をあげてみよう。 人の面白いブログを読んだとき」というもの 成功例は、週に 1 回のメールマガジンであ であった。 る。投稿されたブログからいくつか記事を選 こうしたことから、ブログ利用を活性化さ び、紹介文をつけてその記事の前半部分をメ せるためのキーワードは、「自発的な投稿」 ールで送った。 機械的にブログの記事をまとめて送信する 「活発なコメント」「ほどよい競争関係」とな るであろう。 ■ 2007年2月号 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2007 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 15