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ユーザー企業に必要なIT人材とは - Nomura Research Institute
特 集 [2010年のIT人材像] ユーザー企業に必要なIT人材とは ―『最新 図解CIOハンドブック』より― 野村総合研究所(以下、NRI)では、CIO(最高情報責任者)のためのIT経営手法の実務書と して『図解CIOハンドブック』を2000年に発刊している。このほど、情報システムをめぐる環境 が初版時から変化してきていることを踏まえ、同書を全面的に改訂した『最新 図解CIOハン ドブック』を2005年 9 月に発刊した。本稿はそのIT人材に関する記述部分からの抜粋である。 発・運用に必要な人材が真っ先に頭に浮かぶ 必要とされるIT企画人材 はずである。実際、ユーザー企業においても、 ユーザー企業に必要なIT人材というと、 SI(システムインテグレーション)ベンダー かつてはこうした人材をIT部門に配属する のが一般的であった。 に必要なIT人材と基本的に違いはないと思 しかし今日、情報システムを整備すること われるかもしれない。すなわち、アプリケー 自体が重要視されてきた時代(自動化、機械 ションシステムを設計・開発する人材や、シ 化の時代)から、情報システムを活用して自 ステムインフラを設計・構築する人材、また 社のビジネスを発展・向上させることが求め それらのプロジェクトを管理するプロジェク られる時代(業務革新の手段となる情報シス トマネジメント人材など、ITの設計・開 テムが期待される時代)へと変わってきてい 図1 ユーザー企業において今後拡充すべきIT人材 I T 企 画 人 材 38.3 全体IT統治者 54.0 ITアナリスト 55.3 ITビジネスリーダー 31.7 ITアーキテクト I プロジェクトマネージャー T テクニカルエンジニア 提 供 アプリケーションエンジニア 人 運用マネージャー 材 49.0 28.1 22.2 20.6 (%) 複数回答(n=441) 人材の名称 全体IT統治者 I T ITアナリスト 企 画 人 ITビジネスリーダー 材 ITアーキテクト 内容 ITに関するヒト、モノ、カネ、 リスクを 管理(ガバナンス)する人材 ITを活用した業務改革を企画・立案 する人材(情報システム部門人材) 業務現場においてITを活用した業務改 革を推進する人材(ユーザー部門人材) 技術の目利きができ、自社のITにとって最 適なアーキテクチャーを選別できる人材 人材の名称 プロジェクトマネージャー 内容 システムの開発・構築においてプロ ジェクトを牽引する人材 I T テクニカルエンジニア データベース、ネットワーク、セキュリティなど のシステムインフラを設計・構築できる人材 提 供 専門とする業務分野のアプリケーシ 人 アプリケーションエンジニア ョンを設計・開発できる人材 材 システムの運用工程のQCD(品質・ 運用マネージャー コスト・納期)の維持・向上を担う人材 出所)NRI「ユーザー企業のIT運営実態調査」 (2004年)より 14 2006年1月号 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2005 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部 産業ITマネジメントコンサルティング部 副主任システムコンサルタント 宮嶋勇太郎(みやじまゆうたろう) 専門はIT運営戦略策定 図2 ユーザー企業におけるIT人材の実際の所属組織 I T 企 画 人 材 ITアナリスト 本体(自社内) 48.3 14.7 31.3 34.2 37.4 5.0 6.1 16.1 4.3 49.9 35.4 53.1 2.0 37.6 31.3 69.2 35.6 1.8 15.2 5.2 5.0 81.9 ITアーキテクト 情報子会社 15.9 76.2 ITビジネスリーダー I プロジェクトマネージャー T テクニカルエンジニア 提 供 アプリケーションエンジニア 人 運用マネージャー 材 10.0 89.6 全体IT統治者 5.0 47.6 34.5 外部(SIベンダー、ソフトハウスなど) 25.2 無回答 4.8 3.6 (%) 複数回答の足し合わせ(n=441) 出所)NRI「ユーザー企業のIT運営実態調査」 (2004年)より る。そのため、ITを設計・開発・運用する 達でよいと答えた企業が半数近くにのぼって ために必要な人材(以下、IT提供人材)だ いる(図 2 参照) 。 けでなく、ITを活用してビジネスを変革す こうしたことから、ユーザー企業が社内に る人材(以下、IT企画人材)の必要性が高 確保すべき人材と、SIベンダーをはじめとし まっている。 た外部事業者から調達してもかまわないと考 2つのIT企画人材とさまざまなIT提供人材 える人材が、区別されつつある傾向を読み取 ることができる。すなわち、IT企画人材は 2004年にNRIが行った「ユーザー企業のIT 外部から調達できないものとして社内に確保 運営実態調査」の結果をみると、今後拡充が し、手段としてのITに精通したIT提供人材 必要なIT人材として、調査した企業の半数 は外部から調達すべし、という考えが広まり 以上が、2 つのIT企画人材をあげている。そ つつあるようである。 れは、ITを活用した業務改革を企画・立案 する企業内IT部門人材“ITアナリスト”と、 情報システムの企画、設計、開発・構築、 実際にITを活用して業務改革を牽引する企 運用という一連のプロセスは、すべてIT人 業内ユーザー部門人材“ITビジネスリーダ 材によって支えられている。情報システム全 ー”である(図 1 参照)。また、同じ調査で、 体のマネジメントを検討する上で、IT人材 アプリケーションシステムを設計・開発する のマネジメントは欠くことのできない要素で 人材(アプリケーションエンジニア)と、デ ある。とくに、ITを生業としているわけで ータベース、ネットワーク、セキュリティな はないユーザー企業では、自社グループの置 どシステムインフラを設計・構築する人材 かれている環境を前提に、独自のIT人材マ (テクニカルエンジニア)については外部調 ネジメントを検討する必要があろう。 ■ 2006年1月号 レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2005 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 15