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資料4 いろいろな評価(用語集) (1) 絶対評価、相対評価、個人内評価 これらの用語は、それを用いる人によっても意味が同一でない場合があり、必ずしも確立された概 念ではない。 ○ 絶対評価 指導前にあらかじめ設定しておいた教育目標を評価の規準として、それに照らして評価する方法で ある。評価の規準は、集団の外部にあり、集団のでき具合に左右されない。相対評価とは異なり、各 段階の配分比率は自由である。5段階絶対評価の場合、多くの子どもの達成状況が望ましい状態にあ れば、1や2の評定を全くつけなくてもかまわない。 ■ 目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価) 「絶対評価」という言葉は広く一般に使われているが、その意味は明確さをもっていない。それゆ え、今回の教育課程審議会答申(平成12年12月)においては、「学習指導要領の目標に準拠した評価 (いわゆる絶対評価)」という表現をもちいることで、混乱を避けたものと思われる。 目標に準拠した評価とは、いわゆる絶対評価に相応するもので、学習指導要領に示された目標に照 らして、知識や技能の到達度のみならず、自ら学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などの資質や能力 まで含めて、学習の到達度を評価するものである。各教科の学習の記録における「観点別学習状況」 の評価や「評定」がそれである。 目標に準拠した評価とした理由として 、「児童生徒一人一人の進歩の状況や教科の目標の実現度を 的確に把握し学習指導の改善生かす必要性 」「学習指導要領に示した基礎的・基本的内容が確実に習 得されたかどうかを評価する必要性 」「児童生徒がその学校段階の目標を実現しているかどうかを評 価することによって、上級の学校段階との円滑な接続を図る必要性 」「個に応じた指導などに生きる 評価の必要性 」「少子化等により集団に準拠した評価の客観性や信頼性が必ずしも妥当でなくなった こと」が挙げられている。 ○ 相対評価 評価の基準を集団基準(例えば平均値)に照らして、集団の中での個人の相対的位置を明らかにす る方法である。基準は集団内部にあり、そのときの集団のでき具合に左右される。得点分布は正規分 布を前提としている。この前提を満たすためには、データ数は「大数の法則」が適用できるだけの数 が必要である 。「大数の法則」とは、データ数が大きくなればなるほど、実測値が理論値に近づくこ とを示す法則であり、学力の得点分布では、数百名程度のデータが必要となる。5段階相対評価の場 合、1と5の配分比率は各々7%、2と4の配分比率は各々24%、3の配分比率は38%となる。 ■ 集団に準拠した評価(いわゆる相対評価) いわゆる相対評価に相応するもので、学級や学年を母集団として、その集団内での子どもの相対的 位置付けによって評価するものである。従来、各教科の学習の記録における「評定」は、絶対評価を 加味しつつこの相対評価を主体としてきたが、今回、「評定」においても目標に準拠した評価へと改 められたため、集団に準拠した評価は大幅に後退した。 その評価の結果は 、「総合所見及び指導上参考となる諸事項」欄に、学級・学年など集団の中での - 121 - 相対的な位置付けに関する情報も、必要に応じて記入することとなった。 ○ 個人内評価 評価の基準を集団に依拠するのではなく、一人の子どもの個人内の変化を継続的に評価していく方 法である。個人内評価は、それぞれの子ども自身に準拠して、そのよい点や可能性、進歩の状況など を積極的に評価しようというものである。自ら学ぶ意欲や問題解決の能力といった子どもの主体的な かかわり、個性の伸長などに資する上で、一人一人の子どものよさや変容、伸びをとらえ、子どもの 自己向上に役立てようとするものである。前の学期や他の教科と比べたり、単元間の比較を行ったり することが多い。 □ 相対評価と絶対評価の比較 相対評価と絶対評価についての特徴を挙げると次のようにまとめられる。 相対評価 絶対評価 きじゅん 基準は集団の平均値である。 規準は教育目標である。 評価情報 平均値より高いか低いか 。( 集 団 内 で の 位置) 目標を達成したか。 長 所 ・客観性が高い。 ・集団内の自分の順位や相対的位置付け が明確になる。 ・異なる評価資料を比較できる。 ・基準の設定は容易。 ・評価は簡単。 ・競争心が育つ。 ・一人一人に即して学習状況の把握が できる。 ・自分が目標に対してどの程度到達し ているのかを知ることができる。 ・事後の指導改善に生かしやすい。 ・やればできるという意欲が育つ。 ・子どもの学習状況から指導の在り方 を問うことができる。 短 所 ・小集団に適用できない。 ・異なる集団との比較ができない。 ・指導の効果が適切に反映されない。 ・目標をどの程度達成したかという十分 な情報が得られない。 ・指導の在り方を問う客観的な情報を得 にくい。 ・評定者の主観が入り込みやすく、評 定者による評価の差異が生じやすい。 ・集団内での自分の位置付けが分から ない。 ・規準の設定が大変。 ・評価に手間がかかる。 (2) 診断的評価、形成的評価、総括的評価 ○ 診断的評価 診断的評価とは、学年初めや単元の指導に入る前に、その学年やその単元の内容を習得するのに必 要な能力や技能を、子どもが身に付けているかどうかを診断する評価である。そのために 、「事前テ スト」等を行い、身に付いていない子どもが発見されれば補充学習を行う。また、身に付いている子 どもがほとんどの場合、指導計画を変更するなどの、情報を得ることができる。 - 122 - ○ 形成的評価 形成的評価とは 、教育活動の途中に行う評価である。机間指導における評価などはその典型である。 いろいろな教育活動の途中において、その活動が所期の目的を達成しつつあるのか、また、どのよう な点で軌道修正が必要であるのかについての情報を得ることができる。そこには、子どもが、どの内 容についてどこまで目標を達成しているのか、どこでつまずいているのかの情報も含まれる。 このような評価を行うためには、その単元について、しっかりとした目標分析がなされているとと もに、目標分析されたそれぞれの下位目標が達成されたのかどうかを調べる「形成的テスト」が用意 されていなければ、教授・学習活動を調節するための情報を得ることができない。 なお、学習のまとまりをどのように設定するかによって、形成的評価のスパンは様々である。 ○ 総括的評価 総括的評価というのは、ある一定期間の学習が終了したあと(単元終了時、学期末、学年末に )、 その期間で、どれだけ目標を達成することができたかを総括的に明らかにする評価である。総括的評 価では、通知表や指導要録の記入に見られるように、評定が用いられる。総括的評価の目的は、指導 計画の終了時に学習者の学習の到達程度を調べ、その指導計画のどこに問題点があったかをチェック し、それを矯正することにある。 (3) 自己評価、相互評価 ○ 自己評価 ゲストティーチャー、授業を参観した教員や保護者等による評価を他者評価と呼ぶのに対して、自 己評価は 、「自ら学び自ら考える力の育成」の一環として、子どもが自分で自分の学びを振り返って 評価し、それによって得た情報を自分で確認し、自らの今後の学びを改善・調整するという一連の行 動を意味する。子どもが評価しやすいように、評価のためのチェックリスト(自己評価カード)等を 工夫することがよく行われる。 自己評価は、ただ自らの学びを振り返って反省するだけでなく、積極的に次の学びのためにこれを 生かして役立てることが重要である。自己評価によって、子どもが、自らの力によって自らの学び方 を自己点検し、自分のよいところはなにか、何をどうのように改めればよいのかということを理解す るようになることが大切である。 ○ 相互評価 子ども同士がお互いに評価をし合うものである。自己評価は、ややもすると主観に陥る欠点がある ことから、子どもが相互に評価し合うことによって補完することができる。また、相互評価において は、子どもが相互に評価することから、非難や中傷に陥らないように、お互いによさを認め合いなが ら友達を真摯に評価すること、そして、友だちを評価することが同時に自分を反省し評価するための 契機にもなることを指導することが肝要である。 自己評価の甘い子どもには基準の妥当性を示し、自己評価の厳しい子どもを賞賛しながら、子ども の自己評価を補完して学びを強化する相互評価が求められる。 子どもの相互評価の結果は、教師にとっても、自らの評価を補ってくれたり自らの目が及ばない部 分についての貴重な資料となるものである。 - 123 -