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あずま通信 2014.11

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あずま通信 2014.11
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読書の秋 紙面「特別授業」
あなたも読みたくなる『星の王子さま』講座
担当
齋藤 優
みなさんにとって何度も読みたくなるような大切な本は何
ですか。私はなんといっても『星の王子さま』です。
もう100回以上は読みました。フランス語で書かれていま
すが、ノートに写したり訳したりもしましたよ。世界では聖書
に次いで2番目に読まれているらしいです。みなさんは読んだ
ことがありますか。意外と「名前は知っているけど、読んだこ
とがない」という人も多いのではないのでしょうか。今回は『星
の王子さま』の魅力について語ってみたいと思います。
ストーリー
語り手は 6 歳の時、
「象を飲み込んだ大蛇(ウワバミ)の絵」を描いたのに、大人に
「帽子の絵」だろと言われて画家になるのをやめ、飛行士になります。あるとき飛行機
の故障でサハラ砂漠に不時着してしまいます。
すると小さな王子があらわれ、いきなり「羊の絵を描いて」と頼まれてしまいます。
王子さまの星は草の手入れをしないと、いつのまにか巨大なバオバブの木が覆ってしま
って大変なことになるらしいのです。羊に草を食べてもらいたいというわけですね。
ある時王子さまの星に「バラの種」が飛んできて花を開かせました。あまりの美しさ
に王子さまは魅了されてしまいます。でもバラ(彼女)はかなり高飛車で気難しい性格。
世話をしているのに冷たいことを言われて王子さまは傷つきます。「今のぼくにはバラ
を幸せにすることができない」とバラと別れて星々を旅します。
最後にやってきたのは地球でした。そこでは砂漠のキツネから「飼いならす」ことを
教えられます。愛情(友情)には責任があり、
「大切なものは目に見えない」と。
「自分にとって大切なものはバラだ」と気が付いた王子はバラへの想いを果たすため、
蛇に自分を噛ませて(魂になって)帰っていくのです。
この作品は、児童書として書かれましたが、子供向けとは思えないほど深~いメッセー
ジ性があります。
「I’ essential est invisible pour les yeux」
(いちばん大切なことは目に見えないんだ
よ)
・・大切なのは「どれだけ深い関わりをもったか」です。関わりの深さって見えな
いでしょ? 関わりが深くなればなるほど欠かせないものになるのです。
思い出の品がそうですね。
「壊れたらまた買えばいい?そういうもんじゃないよ!!」
代わりのきかないものはあるのです。
作者 サン=テグジュペリについて
『星の王子さま』の作者は、サン=テグジュペリ(1900-1944)フランスのリヨンに
生まれます。父は伯爵、母は芸術家という貴族の家系です。5人兄弟の真ん中。時代は
飛行機が発明され、実用化されだした時期でした。12歳のころからアンベリューの飛
行場、21歳の時にはストラスブール飛行場に勤務します。アフリカ便の定期郵便飛行
をしながら、
『南方郵便機』『夜間飛行』
『人間の大地』と冒険活劇小説を執筆します。
後に第二次世界大戦が始まり、アメリカに亡命。レナール・アンド・ヒッチコック社か
ら、子ども向けのクリスマスに向けた作品を書いてくれないかという依頼をうけ執筆し
ました。挿絵もテグジュペリが描いたんです。出版されたのは 1945 年。しかし、彼は
1年前に亡くなってしまいました。戦争中の祖国のために志願して偵察機に乗り、撃墜
されてしまったのです。それから 50 年、1998 年彼の名が刻まれているブレスレットが
漁師の網にかかります。そして、2000 年5月に彼の乗っていたロッキードF-5Bの
機体の残骸がマルセイユ沖で発見されました。
作品の背景
日本では 1953 年(昭和 28)岩波書店から内藤濯氏の翻訳で出版されました。原題は『Le
petit prince』
(小さな王子)
。『星の~』というのは内藤氏の独自訳ですが、これがかえ
ってイメージを膨らませる結果となったのではないでしょうか。
『星の王子さま』には、かなりの部分で作者自身が投影されていることも面白いです。
なぜ飛行士なの?なぜ砂漠に不時着したの?なぜキツネなの?
答えは作者自身の体
験にあります。実際に作者自身がリビア砂漠に不時着した経験をもち、そこでキツネの
フェネックを飼った経験があったようです。だからキツネが出てくるのですね。
また、高飛車な性格のバラがしきりに咳をするシーンがでてきますが、喘息気味だっ
た妻コンスエロ・スンシンを表していると言われています。(性格も?)後にコンスエ
ロ自信も「バラは私のことです。
」と語っています。
そして星を壊しかねない「3本のバオバブ」は、当時フランスにとって脅威であった
ドイツ・イタリア・日本のことを表しているという説もあります。
(
『星の王子さまの世
界』中央公論新社 塚崎幹夫)他にもいろいろあり
ますが、また今度。とにかくみんなに読んでほしい
です。
更なるマニアの世界へ
◎「S’il vous plait……dessine-moi un mouton!」
(スィル ヴ
プレ……デシヌ
モア
ムトン!)
おねがいです……ヒツジの絵を描いて!
王子さまと飛行士の出会いの場面です。
S’il vous plait は目上の人に頼む時などに使う敬語です。
でも dessine は友だちに対する言葉なのです。つまり敬語とタメ口が混ざった言い方。
王子さまの遠慮がないというか無邪気な子供らしさが表現されています。
本当はそのあたりにこだわって訳さなくてはならないんですよね。翻訳者のセンスが
試されます。『星の王子さま』は20人以上の翻訳家によって出版されています。その
ため、翻訳家によって言葉のニュアンスが微妙に違います。比べてみるのも面白いです。
わかりにくい所があったら他の翻訳版を読んでみてもいいでしょう。
◎ 関越自動車道の「寄居PA」は
「星の王子さまパーキングエリア」として
テーマパークみたいになっていますよ。読
んでから行くと、細かいネタに気づいて一
層楽しめます。
↑レストランもあります。
←関連グッズも売っています。
2015 冬にアニメ映画となって公開!
『リトルプリンス 星の王子さまと私』
監督マーク・オズボーン(カンフー・パンダの監督) ワクワク~(^^)
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