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霧島山(新燃岳)の 噴火初期段階における住民意識及び行動調査 1.調査手法 インターネットリサーチパネルを対象としたWEBによるクローズド調査 2.調査地域 環霧島会議に属する市町 宮崎県 (都城市、小林市、えびの市、高原町) 鹿児島県(霧島市、湧水町、曽於市) 3.有効回収数 474サンプル 4.調査期間 平成23年2月5日(金)~2月7日(月) CeMI環境・防災研究所 松尾一郎 ◆ 調査の背景 ~自治体調査から分かったこと~ 実施時期 1月29日~30日 対象自治体 霧島市、都城市、高原町 調査メンバー 藤井敏嗣、新堀賢志、大石温子 1.いずれの自治体も降灰対策に苦慮している。 2.立ち入り規制も含め防災情報の共有が十分でない。 3.火山防災ハザードマップを事前に作成して良かった。 今後の火山活動を踏まえ防災対策に活用できる情報を地 元は要望している。 4.300年ぶりに起こったことで火山そのものやその今後の 見通しも含め情報が少ない、現地には専門家が不在。 5.上記もあって自治体も住民の不安解消に苦慮している。 → さらに住民視点で課題や悩みを知ることが必要 Q. 1月26日からの噴火による生活への影響を聞いた。 0% 20% 40% 60% 80% 100% 多大な影響があった 影響は、あった 全体 25.1 28.7 26.2 16.0 4.0 多少の影響は、あった あまり影響は、無かった まったくない 0% 20% 40% 60% 80% 100% 多大な影響があった 影響は、あった 宮崎県 39.8 40.2 15.2 3.8 1.1 多少の影響は、あった あまり影響は、無かった まったくない 0% 20% 40% 60% 80% 100% 多大な影響があった 影響は、あった 鹿児島県 6.7 14.3 40.0 31.4 7.6 多少の影響は、あった あまり影響は、無かった まったくない 全体 n 全体 多大な影響があった 影響は、あった 多少の影響は、あった あまり影響は、無かった まったくない 474 119 136 124 76 19 宮崎県 % 100.0 25.1 28.7 26.2 16.0 4.0 n 264 105 106 40 10 3 % 100.0 39.8 40.2 15.2 3.8 1.1 鹿児島県 n % 210 100.0 14 6.7 30 14.3 84 40.0 66 31.4 16 7.6 Q. 生活の中で降灰による影響は? 0% 全体 通勤に支障が生じている 通学に支障が生じている 外出が容易に出来ないので買い物などに支障がある 自宅や周りの降灰除去作業が大変だ 灰によって喉や肺などの呼吸器系の障害がある 洗濯物が外に干せない 自営業の売り上げの減少 空気清浄機などの購入による出費の増大 ビニールハウスなどの農業施設の被害 太陽光発電や温水器などのパネルに灰が付着して一時的に使えなく… 牛や豚の飼育に影響が出ている 養鶏に影響が出ている その他(_) 影響はない 20% 40% 60% 80% 30.0 12.2 30.8 47.5 16.7 71.1 6.3 7.4 3.4 9.3 1.3 0.8 13.7 16.7 降灰は、広い範囲で住民の日常生活に影響が出ている ことが分かった。 100% Q. 噴火活動中に危険な状況に遭遇したことは 0% 全体 車を運転中にスリップした 降灰によって息苦しくなった 降灰で家の一部が倒壊しそうになった 噴石が当たりそうになった 空振によるガラス飛散でケガをした、あるいはケガをしそうになった 火山ガスで息苦しくなった 噴石が屋根やトタンを突き破った 乗っている車が降灰で故障したり、噴石で破損したりした その他(具体的に:_) 特にない 20% 20% 空振によるガラス飛散でケガをした、あるいはケガをしそうになった 火山ガスで息苦しくなった 噴石が屋根やトタンを突き破った 乗っている車が降灰で故障したり、噴石で破損したりした その他(具体的に:_) 特にない 100% 40% 60% 80% 100% 25.4 34.5 車を運転中にスリップした 噴石が当たりそうになった 80% 63.3 降灰によって息苦しくなった 降灰で家の一部が倒壊しそうになった 60% 16.2 22.8 0.4 1.3 1.7 2.5 0.4 1.7 7.4 0% 宮崎 県側 40% 0.8 1.5 1.5 3.0 0.8 3.0 9.1 45.5 「降灰による呼吸器系の障害」と「車のスリップ」が多く「噴石 が屋根やトタンを突き破った」と「噴石で車の故障や破損」が、総 計10人ほどとなった。現在の4km規制は当然ながら、4km以上でも噴 石飛散もあることなどの注意喚起が重要である。 Q. 全体 降灰の除灰作業で困っていること 0% 20% 40% 60% 80% 100% 除灰方法がわからない 15.8 どこまで除灰すればいいかわからない 35.7 除灰時の健康被害の有無 54.0 集めた火山灰の処分場所やその方法 41.8 高齢者世帯で除灰作業などの力作業は難しい 27.6 その他(具体的に:_) 8.4 除灰作業による健康への影響や灰の処分方法、さらに 高齢者世帯での除灰作業の大変さが浮き彫りになった。 この解消に向けて、経験のある鹿児島市の助言やボラン ティアとの連携が重要と考える。 Q. 土砂災害への懸念について 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 0.4 20.5 17.3 宮崎県側 54.0 1.7 6.1 土砂災害が発生するのではという危機感はある(どのエリアが危 険そうかも分かるし、どう行動するかもおおよそ理解している) 土砂災害が発生するのではという危機感はある(危険なエリアも分 からないし、どう行動するかも分からない) 土砂災害が発生するのではという危機感はある(しかし自分の住 んでいる地域は、土砂災害に遭うことはないと思っている) 土砂災害への危機感は、なかった その他(具体的に:_) 分からない 全体の96%が土砂災害への危機感を持っている。危険な地域や 行動も分かる人が、20.5%。危険な地域も行動も分からない人 が17.3%。約1/5の人々が自宅が危険なところか、さらにどう行 動すればよいかも分からないようであり、市町を通じた広報 周知が急がれるところである。 1716年享保の噴火に対する意識 Q. 全体 0% 20% 40% 60% 80% 100% かならず起こる 可能性はかなりある 9.9 宮崎県側 48.1 31.9 6.8 可能性は少しある 0.6 2.7 可能性は低い 可能性はない わからない 今後の可能性を聞いたところ享保の噴火と同様なことが①か ならず起こる~③可能性は少しある、と回答を寄せた人が 89.9%となった。広い範囲の人々が歴史的な災害は繰り返され るのではと強く不安に思っていることが分かる。 不安に煽るのではなく、観測データに基づいた正確な情報を 的確に住民に知らしめる仕組みが必要である。 Q. 噴火現象で心配なこと 0% 全体 20% 80% 100% 90.9 38.6 41.6 19.2 32.3 17.1 70.5 16.0 1.7 20% 40% 60% 80% 100% 67.4 噴石の飛散による被害 94.3 降灰による被害 40.2 48.5 火砕流による被害 泥流や土砂災害による被害 20.1 溶岩流による被害 35.2 火山ガスによる被害 20.8 熱風(火災サージ)による被害 72.0 空振による被害 18.9 山体の崩壊による被害 その他(具体的に:_) 60% 62.4 噴石の飛散による被害 降灰による被害 火砕流による被害 泥流や土砂災害による被害 溶岩流による被害 火山ガスによる被害 熱風(火災サージ)による被害 空振による被害 山体の崩壊による被害 その他(具体的に:_) 0% 宮崎県側 40% 1.5 発生する現象で心配なこととは、1位 降灰(90.9%)、2位 空振(70.5%)、3位 噴石(62.4%)、4位 泥流や土砂災害 (41.6%)、5位 火砕流(38.6%)、6位 火山ガス(32.3%)と なった。泥流や土砂災害は、宮崎県側が48.5%と少し高めの結 果となった。 Q. 霧島火山防災マップの活用状況 0% 20% 40% 60% 80% 100% 見やすい場所に掲示している いつでも見られる場所にしまっている 配布されたときに、ざっと目を通しただけ 6.5 1.7 16.5 2.5 38.0 34.8 配布されたが読んでいない 配布されたかどうか覚えていない 全体 知らない 0% 火山灰や噴石など降下火砕物の区域に入っている 火砕流・熱風(火砕サージ)の区域に入っている 火山泥流や土石流の区域に入っている いずれの危険区域にも入っていない わからない 20% 40% 60% 80% 100% 5.3 1.1 1.7 38.4 53.8 噴火後1週間を経った調査であるが、あまり活用されていない 結果となった。静穏期が長い火山であったことや火砕流や噴 石等の影響範囲が、火口から数kmに限定されていることなど がその要因であったかと考える。火山現象単独で配布するこ との難しさを示しているものと考える。 Q. 0% 噴火警報(防災情報)の発表形態について 20% 40% 60% 80% 100% 全体 危険と思われたらただちに警報 を発表する 確実に噴火すると分かってから 警報を発表したほうがよい 78.7 10.1 10.1 1.1 大きな被害が予想される噴火の み警報を発表したほうがよい その他(具体的に:_) 宮崎県側 気象庁の噴火情報に関する発表の仕方について、①危険と思 われたらただちに警報を発表してほしい が78.7%の高い回答 となった。住民の多くは、噴火予知の難しさを理解していて も、危険な状況は、いち早く知りたいとの要望があることが分 かった。 Q. 霧島火山の防災対策について あと るて も 重 要 で n 全体 474 100.0 474 100.0 474 100.0 474 100.0 474 100.0 1.国や自治体の防災対応体制の強化 2.火山砂防や治山などの防災施設の強化・充実 3.避難用道路の強化と充実 4.避難所の住環境の強化(一時避難所も含め) 5.火山の噴火に関する防災情報の提供 0% 噴火活動を予測する観測網の強化と体制の充実 火山砂防等の防災施設の整備・充実 火山防災マップの充実 住民に対する霧島山噴火と対応の説明会の開催 緊急時の対応体制の強化(避難手順の整備や防災無線の設置など) 避難所の住環境の改善 降灰対策 医療・保健対策の充実 中長期避難の場合の支援策の充実 生業での設備投資・運転資金・借入金返済などへの融資制度の充実 直接の被災地域外の周辺観光地や取引業者への支援 その他(具体的に記入:_) 特に望むことはない 20% 40% 重 要 で あ る 319 67.3 227 47.9 215 45.4 258 54.4 333 70.3 60% なあ いま り 重 要 で 143 30.2 216 45.6 222 46.8 190 40.1 137 28.9 11 2.3 28 5.9 34 7.2 25 5.3 4 0.8 80% 重 要 で は な い 1 0.2 3 0.6 3 0.6 1 0.2 0 0.0 100% 59.3 49.8 38.8 宮崎県側 24.1 57.2 62.0 67.7 47.7 52.5 30.4 23.4 0.8 2.5 いずれの対策も8割から9割の方々が、重要であると回答。まだ噴火初期で あることから降灰対策や避難所環境の改善、観測体制や防災施設の強化を 望んでいる回答を選択した方が多く見られる。 Q. 0% 国の支援に対する期待 20% 40% 60% 80% 100% 全体 75.9 火山噴火のような広域な災害に対し地方自治体の対応には限界があり、 有珠山の時のような国の防災機関や専門家などの高度な支援が必要と考 える 現在の県や自治体さらに地方気象台による防災体制で対応可能である 10.5 13.5 わからない 広域に災害が及ぶ火山噴火に対し国の防災機関や専門家に よる高度な支援が必要と回答したのは、全体で75.9%、宮崎側 で83%、鹿児島県側で67.1%であった。 災害に直面している地域ほど 国や専門家による高度な支 援や調整機能に期待していることが理解できる。 Q. 霧島山説明会などへの参加 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 絶対参加する 参加する 4.9 16.0 53.4 14.8 11.0 時間が合えば参加する 参加しない わからない 7割近くが、参加する、時間が合えば参加するとの回答であっ た。地域の危機感や不安感の高さを表していると考える。 正しい見立てに基づき説明が出来る専門家を地域は欲してい る。 総 括 地域にとって300年ぶりの霧島山(新燃岳)の噴火であった。 噴火初期であり自治体も住民の多くも現状と今後を知る術もなく相当の混乱が あった。 また思ったよりも広域に及んで影響が出ていることが分かった。 住民の多くは、不安感や現象への危機感も相当高い結果となっている。 不安感も危機感も現状と今後が見えないことに起因していると思われる。 この解消は、「現状と予想される今後」の共有である。 そのためには、予知連や政府支援チームの専門家が自治体や住民の不安を解消 する「解説」「住民説明会」などの「情報発信」が重要である。 噴火活動の推移は、見えないが火山防災マップと降灰・噴石や泥流・土砂災害 などのリスク情報を正確に伝え、的確な備えを地域で共有することである。 降灰やその対策は、桜島の経験やノウハウを活かすべきである。鹿児島市や垂 水市との自治体連携が重要と考える。 国は、政府支援チームとして現地で活動している。今後は、2県の調整機能や 専門家としての地域の避難支援などに活躍を期待する。 この危機感を防災機関や報道機関が連携・共有し地域の減災に向けて取り組む ことも期待する。