Comments
Description
Transcript
Ⅳ 今後の花き産業振興に向けた基本的な方針と具体的
Ⅳ Ⅳ 今後の花き産業振興に向けた基本的な方針と具体的取組等 今後の花き産業振興に向けた基本的な方針と具体的取組等 33 ニーズに対応した生産・流通・販売 ニーズに対応した生産・流通・販売 (1)品質管理の徹底 (1)品質管理の徹底 ア ア 全ての関係者の努力の必要性 全ての関係者の努力の必要性 ① ① ■ ■消費者の求める切り花の日持ち性を向上させるためには、生産者・ 消費者の求める切り花の日持ち性を向上させるためには、生産者・ 出荷団体、卸売業者・仲卸業者、小売り、輸送業者のそれぞれの段 出荷団体、卸売業者・仲卸業者、小売り、輸送業者のそれぞれの段 階で、清潔な水・容器による水上げ、品目に応じた適切な前処理の実 階で、清潔な水・容器による水上げ、品目に応じた適切な前処理の実 施、温度管理の徹底とそれを可能とするための保冷庫・保冷車等の 施、温度管理の徹底とそれを可能とするための保冷庫・保冷車等の 整備、日持ち性の低い品目における湿式低温流通の実施等を行う必 整備、日持ち性の低い品目における湿式低温流通の実施等を行う必 要がある。 要がある。 ■ ■各段階のいずれかの段階で努力を怠っただけで日持ち性は損なわ 各段階のいずれかの段階で努力を怠っただけで日持ち性は損なわ れ、消費者の満足度を低下させる。 れ、消費者の満足度を低下させる。 ■ ■無購買層・低購買層が6割以上と高く、花きに対して十分な知識 無購買層・低購買層が6割以上と高く、花きに対して十分な知識をを 持っていない消費者が多い中では、一回の失望が花離れそのものを 持っていない消費者が多い中では、一回の失望が花離れそのものを 招きかねない。 招きかねない。 ■ ■花き産業に携わる者全ては、高い意識をもって日持ち性の向上に向 花き産業に携わる者全ては、高い意識をもって日持ち性の向上に向 けた取組を進めるべきである。 けた取組を進めるべきである。 57 ○ ○ 消費者のニーズとして「日持ちする花」という要望が、非常に強い状況が確認 消費者のニーズとして「日持ちする花」という要望が、非常に強い状況が確認 できる。 できる。 調査期間:平成19年6月1日~平成20年5月31日 調査方法:アンケート調査 調査機関:㈳日本生花通信配達協会 調査対象:2,979名(JFTD会員) 調査期間:平成19年6月1日~平成20年5月31日 調査方法:アンケート調査 調査機関:㈳日本生花通信配達協会 調査対象:2,979名(JFTD会員) 58 ○ ○ 切り花のバケット等湿式低温流通(注)量は、年々増加しているが、出荷数量に 切り花のバケット等湿式低温流通(注)量は、年々増加しているが、出荷数量に 占める割合を見ると、湿式低温流通量は全体の7%、再利用可能なバケットも3 占める割合を見ると、湿式低温流通量は全体の7%、再利用可能なバケットも3 %とまだ低い状況にある。 %とまだ低い状況にある。 ○バケット等湿式低温流通量の推移 (平成) 出荷数量に占める割合6.9%(H19) ○再利用可能なタイプのバケットによる湿式低温流通量の推移 (平成) 注)湿式低温流通 ① プラスチック等のバケットに注水し、そのまま輸送するもの、又は、簡易な容器等に注水し、縦箱に入れるなどして輸送するものであり、かつ、 ② 流通時において、常時低温であること、又は、出荷前の予冷や輸送時の冷蔵車、卸売市場における冷蔵庫等により、一時的に低温で流通 しているものとする。 資料:農林水産省花き産業振興室「平成19年切り花のバケット等による湿式低温流通実績」 59 ○ ○ 国産の場合は、積み込み荷降ろしの際に常温にさらされたり、市場においても全 国産の場合は、積み込み荷降ろしの際に常温にさらされたり、市場においても全 館冷房しているところは少ない。保冷していても冷蔵庫から出した時に常温にさら 館冷房しているところは少ない。保冷していても冷蔵庫から出した時に常温にさら されることでコールドチェーンが途切れることがあり、品質への影響を受けやすい。 されることでコールドチェーンが途切れることがあり、品質への影響を受けやすい。 ○ ○ 輸入花きの場合は、卸売市場到着後は国産と同じであるが、日本への輸送期間 輸入花きの場合は、卸売市場到着後は国産と同じであるが、日本への輸送期間 が1週間ほどかかることから、品質を保持することに注力し、生産者から日本の卸 が1週間ほどかかることから、品質を保持することに注力し、生産者から日本の卸 売市場に着くまでコールドチェーンが途切れることのないようにしている。 売市場に着くまでコールドチェーンが途切れることのないようにしている。 ○ ○ また、輸入花きは植物検疫において、検疫有害動植物が発見された場合に、く また、輸入花きは植物検疫において、検疫有害動植物が発見された場合に、く ん蒸が行われることもある。 ん蒸が行われることもある。 ○コールドチェーンの状況 集荷所 国 内 ※常温になる可能性があるところ 収穫後、冷房施 設のない生産者 もいる。 積載・荷降ろし・積み替え時 くん蒸処理時 保管・管理・仕分け時 卸売市場 冷房設備の ない場合もあ り。 空輸時は低温だ がその後の保管 はさまざま。 生産者 収穫後、冷房施設のな い生産者もいるが平均 気温は18℃で年間を通 じて高温にさらされるリ スクが低い。 全館冷房設備では ない場合もあり。 輸入会社 国内空港 生産者 ケニア 花屋店頭まで約1週間 花屋店頭まで約1日~4日 冷房施設のない 場合もあり。 保管、売り場などの 環境はさまざま。 小売店 消費者の用途、管 理なども異なる。 消費者 60 ○ ○ 日持ち日数は品目、温度、輸送、処理など様々な要因によって異なる。 日持ち日数は品目、温度、輸送、処理など様々な要因によって異なる。 ○前処理、温度管理他 湿式・乾式による違い(保持剤使用) 品目・温度による違い 保持温 輪ギク ユリ バラ リンドウ アネモネ 度 10℃ 27.2日 25.0日 17.0日 16.3日 9.5日 20℃ 17.0日 12.3日 8.1日 11.0日 4.5日 28℃ 9.2日 6.8日 4.8日 10.1日 3.3日 ・品目によって日持ち日数が異なる。また低温管理下での日 持ちは10日以上見込めるものが多いが高温では総じて日数 は落ちる。 前処理の効果 輸送形態 湿式 乾式 差 バラ トルコギキョウ 8.2日 3.0日 5.2日 12.5日 7.8日 4.7日 ・乾式輸送は湿式輸送に比べて水分損失が大き く、輸送後の水の再吸収機能(水揚げ)が5日前 後低下する。 輸送温度・時間による違い 水 8.1日 6.8日 4.8日 72h 5.0日 STS 8.7日 15.5日 9.8日 24h 5.8日 差 0.6日 8.7日 5.0日 48h 3.8日 72h 2.2日 24h 4.0日 48h 1.0日 (バラ) ・採花後の経過時間 により、その後の日 持ち日数に影響が ある。 更にその時の 管理温度の違いに より差が出やすい。 10℃付近ではさほ ど経過時間別に見 ても変化は見られな いが、20~30℃の 間では大きく影響が 出る。 72h 0.0日 61 処理方法 温度 バラ カーネーション キンギョソウ 10℃ ・バラのように水だけの処理であっても日持ち日数にあまり 変化は見られない品目もあるが、カーネーション、キンギョ ソウなどエチレンガスが日持ちに作用する比率の高いもの はSTS処理より5~8日持ちを良くすることができる。 20℃ 30℃ 経過時間 日数 24h 5.2日 48h 5.0日 Ⅳ Ⅳ 今後の花き産業振興に向けた基本的な方針と具体的取組等 今後の花き産業振興に向けた基本的な方針と具体的取組等 33 ニーズに対応した生産・流通・販売 ニーズに対応した生産・流通・販売 (1)品質管理の徹底 (1)品質管理の徹底 ア ア 全ての関係者の努力の必要性 全ての関係者の努力の必要性 ② ② ■ ■日持ち性向上に向けた取組の成果を具体的に消費者に示す試 日持ち性向上に向けた取組の成果を具体的に消費者に示す試 みとして、日持ち保証販売がある。 みとして、日持ち保証販売がある。 ■ ■この実施に当たっては、現状、関係者の日持ち性への対応レベ この実施に当たっては、現状、関係者の日持ち性への対応レベ ルに幅があることから、各段階において施設・設備の整備はもちろ ルに幅があることから、各段階において施設・設備の整備はもちろ ん品質管理を適切に行う技術・ノウハウと実践力をもった信頼でき ん品質管理を適切に行う技術・ノウハウと実践力をもった信頼でき る提携先を選択することが重要である。 る提携先を選択することが重要である。 ■ ■それぞれの花の持つ元々の特性や生育状況によって、日持ち性 それぞれの花の持つ元々の特性や生育状況によって、日持ち性 は変わってくるため、日持ち保証販売を行うためには、日持ち試験 は変わってくるため、日持ち保証販売を行うためには、日持ち試験 を実施し、データの検証・蓄積・活用を図る必要がある。 を実施し、データの検証・蓄積・活用を図る必要がある。 ■ ■日持ち性は、消費者の要望の強い事項であることから、研究機 日持ち性は、消費者の要望の強い事項であることから、研究機 関においては今後も向上のための研究を一層進めるとともに、新 関においては今後も向上のための研究を一層進めるとともに、新 たに得られた知見については、各段階に効果的に普及させていく たに得られた知見については、各段階に効果的に普及させていく 必要がある。 62 必要がある。 ○ ○ 一部の生産・出荷者は、有利販売の1つとして、日持ち保証を実施。 一部の生産・出荷者は、有利販売の1つとして、日持ち保証を実施。 ○ 出荷箱に保証マークを印刷したり、産地フェアの一環として小売店と連携して ○ 出荷箱に保証マークを印刷したり、産地フェアの一環として小売店と連携して 実施。 実施。 ○ ○ 海外では、日持ち保証販売は、スーパー等が戦略的に実施。 海外では、日持ち保証販売は、スーパー等が戦略的に実施。 ○日持ち保証販売の実態 ひたちの □ 茨城県の常陸野カーネーション組合では11月から5月 末日までに販売したカーネーションの秀品及び優品に ついて、セリ日から13日間の日持ちを保証。その際、 買参人に水揚げ、室温、後処理等の品質管理方法を 提案している。 □ 長野県のJA上伊那では日持ち保証販売を平成18年度 から実施しており、平成20年度では和歌山県のJAみな べいなみと産地協賛で日持ち保証販売フェアを首都圏の スーパーと連携して実施。購入より7日間鮮度保証して販売。 □ イギリスのテスコ(スーパー)やドイツのブルーム 2000(花屋)は、消費者が購入してから5~7日間 の日持ちを保証 している。 資料:農林水産省花き産業振興室調べ 63 ○ ○ 日持ち試験室のある卸売会社で実際に日持ち試験を実施しているところは少な 日持ち試験室のある卸売会社で実際に日持ち試験を実施しているところは少な く、また、日持ち試験件数の6割以上が外部からの委託となっている。 く、また、日持ち試験件数の6割以上が外部からの委託となっている。 ○日持ち試験実施の目的は、商品の日持ちのPR、品質管理をよりよくするため等 ○日持ち試験実施の目的は、商品の日持ちのPR、品質管理をよりよくするため等 と多様。 と多様。 調査対象147社中、日持ち試験を行っているのは7社 ○平成20年日持ち試験の活用状況調査 札幌花き 大田花き 園芸 実施機関 1 平成20年日持ち試験実施件数 うち受託 56 23 2 自ら日持ち試験を実施する目的(複数回答) ①鮮度保持に積極的な生産地を紹介するため ②日持ちする新品種であることを紹介するため ③日持ちする商品として販売につなげていくため ④日持ちに関する情報収集のため(クレーム対応等) ⑤品質管理の向上のため ⑥その他 3 依頼に応じて日持ち試験を実施している場合の依頼者の目 的(複数回答) ①鮮度保持に積極的な生産地を紹介するため ②日持ちする新品種であることを紹介するため ③日持ちする商品として販売につなげていくため ④日持ちに関する情報収集のため(クレーム対応等) ⑤品質管理の向上のため ⑥把握していない ⑦その他 ○ ○ 19 15 FAJ 228 191 下関合同 TFC東京 なにわ花 鶴見花き 市場 フロリネット 市場 20 16 25 19 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 3 0 6 3 ○ ○ ○ ○ MPS 認証取得 に関する 調査 ○ ○ ○ ○ ○ ○鮮度保 持剤会社 からの依 頼試験 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○切り前 の調整、輸 送形態や 前処理 357 228 2 4 ○ 発色確認 ○ ○ 計 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 5 4 4 1 5 4 3 3 7 3 64 Ⅳ Ⅳ 今後の花き産業振興に向けた基本的な方針と具体的取組等 今後の花き産業振興に向けた基本的な方針と具体的取組等 33 ニーズに対応した生産・流通・販売 ニーズに対応した生産・流通・販売 (1)品質管理の徹底 (1)品質管理の徹底 イ イ 中央卸売市場における商物一致原則の例外規定の活用 中央卸売市場における商物一致原則の例外規定の活用 ① ① ■ ■日持ち性向上の観点からは、生産者(採花)からなるべく短 日持ち性向上の観点からは、生産者(採花)からなるべく短 時間で消費者に商品を届けることが好ましい。特に切り花に 時間で消費者に商品を届けることが好ましい。特に切り花に おいては顕著である。 おいては顕著である。 ■ ■卸売市場法では、中央卸売市場における卸売業者は、現 卸売市場法では、中央卸売市場における卸売業者は、現 物確認による商品の適正な評価を通じた公正な価格形成を 物確認による商品の適正な評価を通じた公正な価格形成を 確保する観点から、市場内にある物品以外については、一定 確保する観点から、市場内にある物品以外については、一定 の例外的な場合を除き、卸売をしてはならない(商物一致)と の例外的な場合を除き、卸売をしてはならない(商物一致)と されている。 されている。 65 Ⅳ Ⅳ 今後の花き産業振興に向けた基本的な方針と具体的取組等 今後の花き産業振興に向けた基本的な方針と具体的取組等 33 ニーズに対応した生産・流通・販売 ニーズに対応した生産・流通・販売 (1)品質管理の徹底 (1)品質管理の徹底 イ イ 中央卸売市場における商物一致原則の例外規定の活用 中央卸売市場における商物一致原則の例外規定の活用 ② ② ■ ■平成16年の卸売市場法の改正により、中央卸売市場の商物一 平成16年の卸売市場法の改正により、中央卸売市場の商物一 致規制が特定の場合(一定の規格を有するため現物を見なくても 致規制が特定の場合(一定の規格を有するため現物を見なくても 適正に取引することが可能であるとして開設者が定める品目につ 適正に取引することが可能であるとして開設者が定める品目につ いて電子商取引を行う場合であって、市場取引委員会の審議を経 いて電子商取引を行う場合であって、市場取引委員会の審議を経 て、開設者の承認を得る等の要件を満たした場合)について緩和さ て、開設者の承認を得る等の要件を満たした場合)について緩和さ れたため、切り花も商物分離取引の対象となり得ることになってお れたため、切り花も商物分離取引の対象となり得ることになってお り、中央卸売市場の取引において、生産者から小売りに直接商品 り、中央卸売市場の取引において、生産者から小売りに直接商品 を届けることが可能となっている。 を届けることが可能となっている。 ■ ■一般消費者のニーズの中で最も多い日持ち性の向上のためには 一般消費者のニーズの中で最も多い日持ち性の向上のためには 物流コスト等の面における効率的な流通に十分配慮しつつ、花き 物流コスト等の面における効率的な流通に十分配慮しつつ、花き 卸売市場の取引の約3割を占め、物流の「大動脈」としての機能を 卸売市場の取引の約3割を占め、物流の「大動脈」としての機能を もつ中央卸売市場において、この仕組みが積極的に導入されるこ もつ中央卸売市場において、この仕組みが積極的に導入されるこ とが待たれる。 66 とが待たれる。 Ⅳ Ⅳ 今後の花き産業振興に向けた基本的な方針と具体的取組等 今後の花き産業振興に向けた基本的な方針と具体的取組等 33 ニーズに対応した生産・流通・販売 ニーズに対応した生産・流通・販売 (1)品質管理の徹底 (1)品質管理の徹底 ウ ウ 卸売市場における取引日の増加 卸売市場における取引日の増加 ■ ■出荷された花きが、できる限り品質の維持された状態 出荷された花きが、できる限り品質の維持された状態 で、消費者の手に渡ることは、消費者利益の向上だけで で、消費者の手に渡ることは、消費者利益の向上だけで なく、商品価値に裏づけされた高値での取引という形で、 なく、商品価値に裏づけされた高値での取引という形で、 生産者、卸売業者、小売りなど幅広い関係者にとっての 生産者、卸売業者、小売りなど幅広い関係者にとっての 利益につながる。 利益につながる。 ■ ■現在、花き卸売市場においては、例えば切り花の取引 現在、花き卸売市場においては、例えば切り花の取引 日が週3日程度となっているところが多いが、とりわけ、日 日が週3日程度となっているところが多いが、とりわけ、日 持ち性の向上や新鮮さ、買参者の需要への即応という観 持ち性の向上や新鮮さ、買参者の需要への即応という観 点から、効率性に十分考慮しつつ、切り花の取引日の増 点から、効率性に十分考慮しつつ、切り花の取引日の増 加を図るべきである。 加を図るべきである。 67