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プリント(p17-22)
【微分方程式 (2009 年度 真貝)】 3. 2 階の微分方程式 17 2 階の微分方程式 3 高階微分方程式の種類 3.1 • 定数係数同次(斉次)2 階線形微分方程式 00 0 y + a y + by = 0 (3.1) これからの説明順に名 前を列挙する. • 定数係数同次(斉次)高階線形微分方程式 y (n) + a1 y (n−1) + · · · + an−1 y 0 + an y = 0 (3.2) • 定数係数非同次(非斉次)2 階線形微分方程式 y 00 + a y 0 + by = Q(x) (3.3) • 変数係数非同次(非斉次)2 階線形微分方程式 y 00 + P1 (x) y 0 + P2 (x)y = Q(x) (3.4) 必要となる数学のまとめ 3.2 3.2.1 1 次独立 • 「ベクトル ~a, ~b が 1 次独立である」とは,~a 6= k~b であること,すなわち,線形結合さ れたベクトル k~a + l~b がそのベクトルの成分の数だけの次数空間(2 成分なら 2 次元空 間)を張ることである. • 「関数 f (x), g(x) が 1 次独立である」とは,f (x) 6= kg(x) であること,すなわち,ロ ンスキー行列式 (3.6) がゼロでないことである. c1~a1 + c2~a2 + · · · + cn~an = 0 c1 f1 (x) + c2 f2 (x) + · · · + cn fn (x) = 0 c1 = c2 = · · · = cn = 0 以外でも,(3.5) が成立 (3.5) ロンスキー行列式,Wronskian 2 つの関数 f (x), g(x) に対して定義される次の行列式 W (f (x), g(x)) をロンスキー行列 式 (Wronskian) という. ¯ ¯ ¯ f (x) g(x) ¯ ¯ W (f (x), g(x)) = det ¯¯ 0 (3.6) f (x) g 0 (x) ¯ • W (f (x), g(x)) 6= 0 である関数の組は, 1 次独立である. これを拡張して,n 個の関数 u1 , u2 , · · · , un に対してもロンスキー行列式が定義される. ¯ ¯ ¯ u1 u2 ··· un ¯ ¯ ¯ ¯ u01 u02 ··· u0n ¯¯ ¯ W (u1 , u2 , · · · , un )(x) = det ¯ (3.7) .. .. .. ¯ .. ¯ ¯ . . . . ¯ (n−1) ¯ (n−1) (n−1) ¯ ¯ u u ··· u 1 「関数の 1 次独立性」は 今まで習っていない内 容かも. ~a1 , ~a2 , · · · , ~an は,1 次独立 f1 , f2 , · · · , fn は,1 次独立 ~a1 , ~a2 , · · · , ~an は,1 次従属 f1 , f2 , · · · , fn は,1 次従属 c1 = c2 = · · · = cn = 0 のときだけ,(3.5) が成立 3.2.2 この章は,2 階の微分方 程式の解き方を説明す るために必要な数学を まとめる. 2 n • 関数 u1 , u2 , · · · , un の組が 1 次独立であるための必要十分な条件は,任意の実数 x に 対して,次式が成り立つこと. W (u1 , u2 , · · · , un )(x) 6= 0 (3.8) Wronskii(1776-1853) 関数の 1 次独立性の判 定方法 【微分方程式 (2009 年度 真貝)】 3. 2 階の微分方程式 • 2 × 2 行列の行列式は, ¯ ¯ a det ¯¯ 11 a21 a12 a22 18 「線形数学」の内容 念のため「行列式」の復 習 ¯ ¯ ¯ = a11 a22 − a12 a21 ¯ • 3 × 3 行列の行列式は,サラスの公式 ¯ ¯ ¯ a11 a12 a13 ¯ ¯ ¯ a11 a22 a33 + a12 a23 a31 + a13 a21 a32 det ¯¯ a21 a22 a23 ¯¯ = −a 13 a22 a31 − a12 a21 a33 − a11 a23 a32 ¯ a31 a32 a33 ¯ このような見た目に覚 えやすい公式は,4 × 4 以上の行列の行列式で は成り立たない. • 一般の n × n 行列 A := (aij ) の行列式の定義は, 1. 各成分の置換の符号 sgn(P ) を用いて, detA = n n ∑ ∑ 元の整列した並び方か ら隣り合う 2 つを偶数 回(奇数回)置き換える ことでできる列を偶置 換(奇置換)という. sgn(P )a1p1 a2p2 · · · anpn i=1 j=1 sgn(P ) は,p1 , p2 , · · · の並び方が偶置換なら +1, 奇置換なら-1 とする記号. 2. 小行列に分解して detA = n ∑ (−1)k+1 a1k detA1k k=1 a1k は,A の 1k 成分.A1k は,A から 1 行目 k 列目を取り除いた行列 3.2.3 Euler の公式 • Taylor 級数展開 f (x) が n 回微分可能であるとする.a を定数,x を任意の数とすると, f (x) = f (a) + ∞ ∑ f (k) (a) k=1 k! 「微積分 I」の内容 テーラー (1685-1731) (x − a)k (3.9) • Maclaurin 展開(x = 0 のまわりでの Taylor 展開) f (x) = f (0) + ∞ ∑ f (k) (0) k=1 ex = k! マ ク ロ ー リ ン (16981746) xk ∞ ∑ x2 x3 xn =1+x+ + + ··· n! 2! 3! n=0 sin x = ∞ ∑ (−1)n 2n+1 x3 x5 x7 x =x− + − + ··· (2n + 1)! 3! 5! 7! n=0 cos x = ∞ ∑ x2 x4 x6 (−1)n 2n x =1− + − + ··· (2n)! 2! 4! 6! n=0 log(1 + x) • θ を実数,i = √ = (3.10) ∞ ∑ (−1)n+1 n x2 x3 x4 x =x− + − + · · · (−1 < x ≤ 1) n 2 3 4 n=0 オイラー (1707-1783) −1 とすると,Maclaurin 展開から Euler の公式が導かれる. eiθ = cos θ + i sin θ (3.11) ナント指数関数と三角 関数が,虚数単位を使っ て結びついた!! 微積分の佳境の一つ 【微分方程式 (2009 年度 真貝)】 3. 2 階の微分方程式 3.3 19 定数係数同次 2 階線形微分方程式 定数係数同次(斉次)2 階線形微分方程式 y 00 + a y 0 + by = 0 3.3.1 (3.1) である. (3.12) すぐ解ける場合 1. y 00 = 0 ならば,積分することにより,一般解は,y = Ax + B . これらの解の特徴を 3 つ挙げよ. 特徴1: 特徴2: 特徴3: 一般の場合を考えても これらが成り立つはず. 2. y 00 + y = 0 の一般解は,y = A cos x + B sin x. 3. y 00 − y = 0 の一般解は,y = Aex + Be−x . 4. y 00 + k 2 y = 0 の一般解は,y = A cos(kx) + B sin(kx). 5. y 00 − k 2 y = 0 の一般解は,y = Aekx + Be−kx . 3.3.2 線形微分方程式の解の特徴 f (x), g(x) が,どちらも (3.12) の解であるならば,それらの 1 次結合である y = Af (x) + Bg(x) 線形なので足しても解 になる,ということ. (3.13) も (3.12) の解である. 3.3.3 同次 2 階線形微分方程式の解 f (x), g(x) が,どちらも (3.12) の解であり,f (x) と g(x) が 1 次独立であるならば,(3.12) の一般解は, y = Af (x) + Bg(x) (3.14) で与えられる. 3.3.4 一般解がこう表せてし まうのでウレシイ. 「1 次独立」は,3.2.1, 3.2.2 参照. 特性方程式 複素数 λ = a + ib をベキにもつ指数関数 y = eλx を考える. 複素数ベキであっても, 微分公式は成り立つ. • y = eλx を (3.12) に代入すると, d λx e dx 2 d λx e dx2 (λ2 + a λ + b)eλx = 0 すなわち,解であるためには,λ は λ2 + a λ + b = 0 (3.15) を満たせばよい. • (3.15) を (3.12) に対する「特性方程式」,(3.15) の解を「特性解(根)」という. • 特性解 λ をベキにもつ指数関数 eλx は,(3.12) の特殊解である. • (3.12) の特殊解 y1 = eλ1 x , y2 = eλ2 x が 1 次独立ならば,(3.12) の一般解は, y = Aeλ1 x + Beλ2 x となる.このようになる 2 組の特殊解を基本解という. (3.16) = λeλx = λ2 eλx Euler の公式 3.2.3 を参 照 【微分方程式 (2009 年度 真貝)】 3. 2 階の微分方程式 3.3.5 20 定数係数同次 2 階線形微分方程式のまとめ 定数係数同次 2 階線形微分方程式 教科書 p40 y 00 + ay 0 + by = 0 特性方程式 λ2 + a λ + b = 0 の判別式によって,次のように一般解が分類される. 1. D > 0 のとき (特性解が異なる 2 実数 λ1 , λ2 (λ1 6= λ2 ) のとき) 一般解は y = c1 eλ1 x + c2 eλ2 x 2. D = 0 のとき (特性解が 1 実数・重解 λ1 のとき) 一般解は y = (c1 + c2 x)eλ1 x 3. D < 0 のとき (特性解が共役な複素数 p ± iq (p, q は実数,q > 0) のとき) 一般解は y = epx (c1 cos qx + c2 sin qx) 3.3.6 初期値問題 • 微分方程式 (3.12) の一般解 y(x) は,2 つの積分定数 c1 , c2 を持つ. • これらの一般解の中で, 「初期条件」 y(x0 ) = α0 , y 0 (x0 ) = α1 (3.17) を満たす解を求める問題を, 「初期値問題」という. • 一般解の中で,初期条件を満たすものは,必ず存在する. • 初期値問題の解は,ただ一つしか存在しない. 「解の一意性」という. 一般解を構成する関数 解の 1 次独立性から. 授業の題材(2 階微分方程式, Part 1) 2.1 (1) Euler の公式 eiθ = cos θ + i sin θ を示せ。 (2) 複素数 λ に対する微分公式 d λx e = λeλx を示せ。 dx 微積 I 教科書 p33 2.2 次の関数の組は 1 次独立か,そうでないか. (a, b は定数とする. ) (1) (eax , ebx ) (2) (eax , xeax ) (3) (sin ax, cos ax) (4) (1, x, x2 ) 2.3 次の微分方程式を解け. 00 (1) y + 9y = 0 (2) y 00 + 2y 0 − 3y = 0 (3) y 00 + 2y 0 + y = 0 (4) y 00 + 2y 0 + 5y = 0 教科書 p41, p49 も解く こと 【微分方程式 (2009 年度 真貝)】 3. 2 階の微分方程式 2.4 ばね定数 k(> 0) のばねが x だけ伸びたときの復元力は −kx である(Hooke の法則). ばねに質量 m のおもりをつけ振動させるとき,次の問いに答えよ.ばね自身の重さは 考えなくて良いものとする. 21 ばねの問題 (1) 摩擦のない水平面上で、ばねにつけたおもりの運動方程式は m d2 x = −kx dt2 となる. i. この方程式の一般解を求めよ. ii. 時刻 t = 0 で,位置 x = 0 にあったおもりが,初速度 v = v0 を与えられたと きの解を求めよ. iii. 時刻 t = 0 で,位置 x = x0 にあったおもりが,静かに固定を放たれたとき解 を求めよ. (2) 鉛直面上でのばねの運動を考える.重力を受けることにより,運動方程式は(上 向きを正として) m d2 x = −kx − mg dt2 となる.この方程式の一般解を求め,振動の中心がどこにあるかを述べよ. 2.5 質量 m のおもりをつけた長さ ` の振り子の周期を考えよう.時刻 t における振り子が 鉛直方向となす角度 θ(t) は,おもりの変位 x と,x = `θ の関係になるので,おもりの d2 x d2 θ 加速度 a は,a = 2 = ` 2 となる.したがって,おもりに働く運動方程式は, dt dt m` 振り子の問題 d2 θ = −mg sin θ dt2 となる.θ が微小であれば,sin θ ≈ θ と近似できるので,次の微分方程式になる. d2 θ g + θ=0 dt2 ` 一般解を求め,運動の周期 T を求めよ. 2.6 ばね定数 k(> 0) のばねが x だけ伸びたときの復元力は −kx である(Hooke の法則). いま,水平面上で運動するが,速度に比例する空気抵抗を受ける場合を考えると,運動 方程式は,γ(> 0) を比例定数として m d2 x dx = −kx − γ dt2 dt となる.この運動の一般解を論じよ. ばねの減衰振動 【微分方程式 (2009 年度 真貝)】 3. 2 階の微分方程式 3.4 22 定数係数同次高階線形微分方程式 定数係数同次高階線形微分方程式 教科書 p51 y (n) + a1 y (n−1) + · · · + an−1 y 0 + an y = 0 解き方: 1. 対応する特性方程式 λn + a1 λn−1 + · · · + an−1 λ + an = 0 (3.18) の n 個の解(特性根)を求める. 2. それぞれの特性根に対応した基本解 yn を,重複度によって次のように構成する. (1) 重複度 l の実数の特性解 α には,l 個の関数 eαx , xeαx , x2 eαx , · · · , xl−1 eαx (2) 重複度 m の虚数の特性解 p ± qi には,2m 個の関数 { epx cos qx, xepx cos qx, · · · , xm−1 epx cos qx epx sin qx, xepx sin qx, · · · , xm−1 epx sin qx 3. 基本解を任意定数を用いて「1 次結合」すれば,一般解 y となる. y = c1 y1 (x) + c2 y2 (x) + · · · + cn yn (x) • 「1 次独立」かどうかは,Wronskian (3.7) を用いた条件 (3.8) で判定される. 授業の題材(2 階微分方程式, Part 2) このプリントは,授業で扱いたい問題を載せています. 各自,計算練習は,教科書の章末問題等で進めてください. 2.7 次の微分方程式を解け. (1) y 000 − y 00 − 4y 0 + 4y = 0 (2) y 000 − 3y 0 + 2y = 0 (3) y 000 + 3y 00 + 3y 0 + y = 0 (4) y 000 − 4y 00 + 5y 0 = 0 以上で「定数係数同次高階微分方程式」まで. 教科書 p53 も解くこと