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総合的な見守りシステムの 構築について 立川市
総合的な見守りシステムの 構築について 立川市 1 もくじ 第1章 2つの死亡事例の経過と検証 羽衣町母子死亡事例の検証(中間報告)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 羽衣町高齢母娘死亡事例の検証(中間報告)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 第2章 個別の見守りシステムの充実に向けた取組み ひとり親家庭等の見守り支援について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 高齢者等への見守り支援について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 第3章 総合的な見守りシステムの構築 総合的な見守りシステムのイメージ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 総合的な見守りシステム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 第4章 資 料 庁内検討組織及び検討経過・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 行政視察報告「北九州市いのちをつなぐネットワーク事業について」 ・・・・・・・・42 立川市障害者虐待防止センターについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65 2 第1章 2つの死亡事例の 経過と検証 1 羽衣町母子死亡事例の検証(中間報告) はじめに 平成 24 年2月 13 日、市内羽衣町のマンションに住む母(45 歳)と男児(4歳)の遺体が発 見されました。司法解剖の結果、母の死因はくも膜下出血、男児の死因は特定できません でしたが、いずれも死後1~2か月程度経っていたことが判明しております。市はこの事 故を重く受け止め、同様の事態の防止に向けて検証する必要があると判断し、関連部署に よる検証会議を設置し、検討を重ねてまいりました。 この報告は、現段階における中間報告となります。 1 事例の概要と経過 (1) 事例の概要 報道によりますと、平成 24 年2月 13 日、ガスがずっと使われていないことを知った マンション管理会社から連絡を受けた親族が警視庁立川署に通報し、署員が施錠された 室内で死亡している2人を発見しました。2月 15 日、司法解剖した結果、母の死因はく も膜下出血とみられることが分かりました。男児の死因は特定できませんでしたが、い ずれの遺体も死後1~2か月程度経っていたことが判明しました。男児の体重は4歳児 平均の約半分の9キロとなっており、テーブルには弁当が、冷蔵庫には食べ物や飲み物 が残っていましたが、胃の中に食べ物はほとんどありませんでした。新築された際に入 居したマンションは3階建で 12 部屋あり、外部からの不審者の侵入を防止するため、 オートロックが施されており、窓はシャッターで閉ざされ、外から部屋の様子をうかが うことはできない状態でした。 2月 27 日、警視庁立川署は遺体について、この部屋に住む母と男児であると確認しま した。 (2) 対応などの経過 日 付 担 当 課 内 容 H22/04/13 福祉保健部 健康推進課 大阪市の保健師より、事前のケース連絡のための電話 があり、依頼の要旨は、心理発達フォローグループの 活動があれば、是非参加したいとの母の希望があると のことでした。後日、ケース連絡資料を送付しますと のことでした。 H22/04/21 子 ど も 家 庭 部 本庁舎窓口において、母が児童扶養手当や児童育成手 子育て推進課 当、子ども手当、ひとり親家庭等医療証、乳幼児医療 証の交付を申請しました。 H22/05 健康推進課 母より電話があり、F病院を受診したところ、療育が 必要だが、F病院では行っておらず、自治体で療育指 導を行っていないか確認してみるように言われたが、 2 医療機関を紹介してほしいとのことでした。そこで、 G病院とH病院を紹介しました。 H22/05/11 子育て推進課 本庁舎窓口において、母が児童育成手当(障害)の支給 (愛の手帳3度)を申請し、育成・障害手当の併給に変 更となりました。 H22/05/14 健康推進課 保健師が母に電話したところ、H病院の予約が5月 20 日に取れたとのことでした。家庭訪問したい旨を伝え ましたが、母は頭痛がひどく、対応できないので、資 料を郵送してほしいとのことでした。 H22/05/18 健康推進課 保健師が母子の住まいを確認するため、立川市の育児 情報の資料を持参し、住まいのポストに投函しまし た。 H22/05/19 子育て推進課 母よりファミリー・サポート・センターに電話があり、 頭痛がひどく明日病院に行きたいが、子は広汎性発達 障害のため預け先がないとのことでした。緊急と判断 し、入会手続が済んでいませんでしたが、対応可能な 援助会員を探しました。17 時過ぎに入会手続のため、 母が来所しました。 子育て推進課 母子がファミリー・サポート・センター事業を利用し ました(利用時間:10 時~16 時 30 分)。当日は、男児 をベビーカーに乗せて来所しました。担当職員が援助 会員宅へ案内した後、母は病院へ出かけました。援助 会員は、男児をおもちゃで遊ばせたり、母が持参した DVDを見せたり、食事を摂らせたりして過ごしまし た。夕方に母が迎えに来た際には、頭痛の原因を調べ るため、病院で検査してきたと教えてくれました。雨 が降っていたため、援助会員のご主人が車で母子を自 宅付近まで送ってくれました。 H22/05/20 保育課 本庁舎窓口において、母が緊急一時保育を申請しまし た。 H22/05/21 健康推進課 保健師が母に電話したところ、H病院の予約は5月 28 日に変更し、F病院からは、他児と一緒に療育を受け てみないかとの連絡があったとのことでした。母の体 調については、CT検査は異常なく、医師からはスト レス反応だと言われたとのことでした。 子 ど も 家 庭 部 母子がA園において緊急一時保育を利用しました(5 保育課 月 26 日までの内3日間:母の検査・治療のため)。 H22/05/28 保育課 母子がB園において緊急一時保育を利用しました(6 月 16 日までの内 12 日間:母の検査・治療のため)。 H22/06/10 子育て推進課 本庁舎窓口において、母が特別児童扶養手当の交付を 申請しました。 3 H22/06/21 子育て推進課 本庁舎窓口において、母が乳幼児医療証の現況届を提 出しました。 H22/06/29 保育課 母子がD園を見学しました。 H22/07/14 保育課 母が保育園の入園を申請しました(C園のみ希望)。 定員に空きがなく、年度内は保留となりました。 H22/07/20 保育課 D園の外来母子通園事業に参加しました。 H22/07/28 子育て推進課 本庁舎窓口において、母が児童育成手当の現況届を提 出しました。その際に、所得証明書の提出をご案内し ました。 H22/08/05 子育て推進課 本庁舎窓口において、母が児童扶養手当の現況届を提 出しました。 H22/08/31 健康推進課 保健師が母に電話し、男児の通院状況の確認をしまし た。医療機関による男児の診断に対する不安を訴えて いました。 H22/10/05 子育て推進課 本庁舎窓口において、母がひとり親家庭等医療証の現 況届を提出しました。 H22/11/09 保育課 D園の外来母子通園事業について、男児が集団の療育 に馴染みにくいため、母が医療機関に相談し、医療機 関の個人療育を中心に行うことになったので、外来母 子通園事業は終了するとの申し出がありました。外来 母子通園事業は、計9回参加しました。 H22/11/25 健康推進課 健康会館窓口において、子宮がん検診を申請しまし た。その際に、保育園の入園申請について相談があり ました。 H22/12/15 保育課 母が、23 年4月入園に向け、申請書を提出しました(第 1希望:B園、第2希望:C園)。 H23/02/10 健康推進課 3歳児健診を受診しました。栄養相談と成長相談を受 けました。「療育に通うことで、安心できる」と話す 一方で、 「母として精一杯やっているのに、 “~してく ださい”や“~した方がよい”と言われることがスト レスでつらい」と話していました。医療機関の療育に つながっていたことから、成長相談について、母は必 要性を感じていないとのことでしたので、フォロー ケースとしての扱いを終了しました。 【当時の療育状況】 ●F病院:H23 年4月から、4~5人集団に通う予定。 ●G病院:作業療法(月に1~2回) ●H病院:言語訓練(2週に1回) H23/02/18 保育課 23 年4月入園はC園に決定し、結果通知を発送しまし た。 H23/03/09 保育課 母子でC園の入園説明会に参加しました。説明が終わ 4 り、帰られる際に、母が園長に「23 年度はF病院やG 病院に通う予定があるので、保育園はキャンセルす る」と話しました。面談は後日の予定でしたので、実 施しませんでした。 H23/03/10 保育課 母が保育園入園辞退届を提出しました。辞退の際に、 「B園へ再申請するかもしれない」と言っていまし た。 H23/05/18 福祉保健部 障害福祉課 母子で本庁舎窓口に来られ、おむつの支給を申請しま した。 H23/05/19 子育て推進課 母より、ファミリー・サポート・センター事業の利用 申込の電話がありました。依頼内容は、今回も母が通 院するため、その間の子どもの預かりとのことでし た。 H23/05/23 保育課 母よりI保育園に、子どもに障害があるが一時保育を 利用できるかとの問合せがあり、園長が不在だったた め、明日の返事を約束しました。翌日電話したところ、 留守だったため、登録が必要なことと実際の利用には 調整が必要なことを留守番電話に録音しました。 子育て推進課 ファミリー・サポート・センター事業の顔合わせを援 助会員宅で行いました。担当職員が昨年の頭痛の件を たずねると、母は「今は大丈夫」と答えていました。 母より、自宅付近の援助会員ではプライバシーが保た れないとの申し出があり、羽衣町以外の援助会員を紹 介しました。 H23/05/24 子育て推進課 母子がファミリー・サポート・センター事業を利用し ました(利用時間:13 時~15 時)。送迎時の母の様子 で特に目立ったところはありませんでした。子どもの 預かりは、公園に連れて行ったり、ぬり絵をしたりと 順調でした。 H23/05/27 子育て推進課 母子がファミリー・サポート・センター事業を利用し ました(利用時間:13 時 10 分~15 時 55 分)。送迎時 の母の様子で特に目立ったところはありませんでし た。子どもの預かりは、おもちゃで遊んだり、お散歩 をしたりと順調でした。 障害福祉課 母子で本庁舎窓口に来られ、重度心身障害者手当の支 給を申請しました。併せて、タクシー・ガソリン券の 交付を申請しました。 子育て推進課 本庁舎窓口において、母が特別児童扶養手当証書の亡 失届を提出しました。併せて、愛の手帳が3度から2 H23/05/31 度に変更したことに伴い、特別児童扶養手当2級から 1級への改定申請書も提出しました。 5 H23/06/16 子育て推進課 郵送により、児童育成手当の現況届が提出されまし た。 H23/06/23 障害福祉課 委託業者が、母子の自宅に7月分のおむつを配達しま した。 H23/06/29 H23/07/04 保育課 E園の一時保育を利用しました。男児が保育園に慣れ るよう、1回目の利用では母に一緒にいていただき、 2回目の利用では母に窓の外で見ていていただき、段 階的に慣らしていく方式を採りました。3回目は7月 20 日を予約していましたが、台風のためにキャンセル となり、これ以降の利用はありませんでした。 H23/07/26 障害福祉課 委託業者が、母子の自宅に8月分のおむつを配達しま した。 H23/08/11 子育て推進課 本庁舎窓口において、母が児童扶養手当とひとり親家 庭等医療証の現況届を提出しました。 H23/08/23 障害福祉課 委託業者が、母子の自宅に9月分のおむつを配達しま した。 H23/08/29 保育課 母より保育課に、一時保育の「慣らし」について苦情 がありました。保育園の入園の再申請については、 「B 園に入れたいが、断られると精神的につらい」と話し ていました。 H23/09/24 保育課 F病院より電話があり、一時保育の受入に関する市の 方針について問合せがありました。また、男児は 24 年4月入園を目指す予定であるとのことでした。 H23/10/04 障害福祉課 母子で本庁舎窓口に来られ、障害児福祉手当の支給を 申請しました。また、委託業者が、母子の自宅に 10 月分のおむつを配達しました。 H23/11/02 保育課 母子がB園を見学しました。 H23/11/07 子育て推進課 郵送により、子ども手当の申請書が届きました。 H23/11/08 障害福祉課 委託業者が、母子の自宅に 11 月分のおむつを配達し ました。 H23/12/07 以前 保育課 保育園入園受付期間の前に、母と思われる方より電話 があり、保育園入園申請の日程や必要書類、受付会場 等を聞かれましたが、受付期間中の申請はありません でした。 H23/12/06 障害福祉課 委託業者が、母子の自宅に 12 月分のおむつを配達し ました。 H24/01/05 障害福祉課 委託業者より電話があり、「母と連絡がとれないため 1月の配達の日程が調整できない」と相談されまし た。 H24/01/10 障害福祉課 地区担当職員が自宅を訪問しチャイムを押しました が、反応がないため、業者に連絡を取ってほしい旨の 6 手紙を集合ポストに投函しました。その時の集合ポス トには、郵便物が詰まっていました。 H24/01/12 ~ H24/01/20 障害福祉課 地区担当職員が母の携帯に電話しましたが、つながり ませんでした。母子の通所先や利用サービスを確認す るため、保育課や子育て推進課、子ども家庭支援セン ター、G病院等に問い合わせしましたが、どちらも最 近の利用はないとのことでした。 H24/01/24 障害福祉課 地区担当職員が市内出張中に自宅に立ち寄ったとこ ろ、ポストの郵便物が減っていることに気づき、チャ イムを押しましたが、反応はありませんでした。母の 携帯電話もつながりませんでした。 H24/02/13 障害福祉課 立川警察署より、母子死亡の連絡が入り、以降、捜査 に協力しました。 2 検証による問題点と課題、今後の方策 この家庭と関係した4つの課における問題点と課題、今後の方策を ① 親の健康状態の把握 ② 課内の情報共有と連携 ③ サービス提供中・終了後のフォロー の3項目について整理しました。 (1) 子育て推進課 母子との関わりは、22 年4月 21 日に本庁舎窓口において、母が児童扶養手当や児童 育成手当(育成)、子ども手当、ひとり親家庭等医療証、乳幼児医療証の交付を申請した ところから始まりました。 以降、22 年5月 11 日には児童育成手当(障害)の支給申請書、同年6月 10 日に特別児 童扶養手当の支給申請書、同年6月 21 日に乳幼児医療証の現況届、同年7月 28 日には 児童育成手当の現況届、同年8月5日には児童扶養手当の現況届、同年 10 月5日には ひとり親家庭等医療証の現況届、23 年5月 31 日には特別児童扶養手当証書の亡失届と 同手当の2級から1級への改定申請書、同年8月 11 日に児童扶養手当とひとり親家庭 等医療証の現況届を、それぞれ本庁舎窓口において提出しています。また、23 年6月6 日には児童育成手当の現況届、同年 11 月7日に子ども手当の申請書を郵送により提出 しています。 また、22 年5月 19 日と翌 23 年5月 24 日・27 日には、母が通院するため、ファミリー・ サポート・センター事業を利用しました。 項 ① 目 問題点・課題 今後の方策 親 の 健 康 状 態 の ファミリー・サポート・セン 乳児や障害の子どもを持つ 把握 ター事業をした 22 年5月と ひとり親や精神的な病気を 23 年5月以外は、母子の状 抱えている方など気になる 況について、把握できていま 親の入会時に、置かれている 7 せんでした。 状況や本人の状態をできる 限り把握し、その内容を記録 します。 ② 課 内 の 情 報 共 有 給付係や子ども家庭相談係 給付係や子ども家庭相談係 と連携 との情報の共有ができてい と情報を共有し、その家庭が ませんでした。 困っていることなどがあれ ば、子ども家庭相談係などの 関係機関につなぎます。 ③ サ ー ビ ス 提 供 最後に利用した 23 年5月の 乳児や障害の子どもを持つ 中・終了後のフォ 時も、母の通院のためであっ ひとり親や精神的な病気を ロー たが、頭痛の件をたずねると 抱えている方など気になる 「今は大丈夫」とのことでし 家庭については、利用が一定 たので、利用後のフォローは 期間なかった場合、自宅に電 特に行いませんでした。 話し現状を確認します。その 際に困っていることなどが あれば、子ども家庭相談係な どの関係機関につなぎます。 (2) 保育課 母子との関わりは、22 年5月 21 日から6月 16 日まで、緊急一時保育を利用したこと から始まりました。同年7月 14 日には、保育園入園を申し込みましたが、定員に空き がなく、年度内は保留となりました。 22 年7月 20 日から 11 月9日にかけては、D園の外来母子通園事業に計9回参加しま したが、母が医療機関に相談し、医療機関の個人療育を中心に行うことになったため、 外来母子通園事業は終了するとの申し出があり終了しました。 22 年 12 月 15 日には、23 年4月入園に向けて申請書が提出され、市は翌 23 年2月 18 日に入園決定通知を発送しましたが、母は、同年3月9日の入園説明会に参加した後、 3月 10 日に入園辞退届を提出しています。 23 年6月から7月にかけては、一時保育を2回利用しました。同年9月 24 日には、 F病院より電話があり、男児は 24 年4月入園を目指す予定であるとのことでした。同 年 12 月上旬には、母と思われる方より電話があり、保育園入園申請の日程や必要書類、 受付会場等を聞かれましたが、受付期間中の申請はありませんでした。 項 ① 目 問題点・課題 今後の方策 親 の 健 康 状 態 の 緊急一時保育以外の場面で 疾病がある方やひとり親家 把握 は、母の健康状態について詳 庭など、フォローが必要と思 しく聴きませんでした。 われる家庭については、その 家庭の状況を把握し、フォ ローに必要な情報を提供す るとともに、関係各課や関係 機関につなげます。 8 ② 課 内 の 情 報 共 有 23 年度 当初 入園決 定の 際 相談の対応や情報の提供を と連携 は、係内で情報共有しました 行った場合は、保育システム が、23 年8月の一時保育の 問合せの際には行われませ んでした。24 年度 1 次申込 みの期間終了後に申請がな かったことを確認しました が、フォローは行いませんで した。 ③ を活用し、具体的な内容等を 履歴に残し、共有できるよう 課内でファイル化を検討し ます。また、必要に応じカン ファレンスも行います。 サ ー ビ ス 提 供 緊急一時保育と一時保育は、 入園辞退や申込み取り下げ、 中・終了後のフォ 利用者が日程を指定するた 急な異動の報告などの場合 ロー め、利用終了後の具体的な フォローは行っていません。 D園の外来母子通園事業終 了後も、他の療育訓練につな がっていたため、特にフォ には、事情を聴き、関係各課 や関係機関につなげます。ま た、緊急一時保育や一時保育 終了後、フォローが必要と思 われる家庭の情報は、保育を ローは行いませんでした。 担当した園から、保育課や関 係各課に報告します。 (3) 障害福祉課 母子との関わりは、23 年5月 18 日に本庁舎窓口において、母がおむつの支給申請書 を提出したことから始まりました。翌月より毎月おむつの配達を開始しましたが、24 年 1月5日におむつ配達の委託業者から、母との連絡がとれないとの相談があり、同年1 月 10 日に地区担当職員が訪問したところ、チャイムに反応がないため、集合ポストに 手紙を投函しました。その際の集合ポストには郵便物が詰まっていました。また、母の 携帯にも電話しましたが、つながりませんでした。同年1月 24 日に地区担当職員が市 内出張中に自宅に立ち寄ったところ、集合ポストの郵便物が減っていることに気づき、 チャイムを押しましたが、反応がありませんでした。また、母の携帯電話もつながりま せんでした。 なお、23 年5月 27 日には、本庁舎窓口において、重度心身障害者手当とタクシー・ ガソリン券の交付申請書を提出しています。 項 目 問題点と課題 今後の方策 ① 親 の 健 康 状 態 の 各種申請を受け付けた時に ひとり親家庭の場合は、各種 把握 は、母の様子に特に変わった の申請時に親の健康状態を ところはなく、健康状態を聴 聴きます。 くことはしませんでした。 ② 課 内 の 情 報 共 有 集合ポストに郵便物等がつ 親との連絡が途絶えた時に と連携 まっていましたが、年末年始 は、直ちに課内で情報を共有 にかけての不在等によるも し、対応を協議します。 のと思い、異変を察知するこ 9 とができず、情報を共有する には至りませんでした。 ③ サ ー ビ ス 提 供 「おむつ」という物品を支給 中・終了後のフォ するサービスのため、緊急連 ロー 絡先の記入は求めていませ んでした。 ひとり親家庭の場合は、所定 の様式を定め、緊急連絡先を 可能な限り多く記入してい ただきます。 (4) 健康推進課 母子との関わりは、22 年4月 13 日に、前住所地である大阪市の保健師による事前の ケース連絡のための電話から始まりました。ケース連絡の要旨は、心理発達フォローグ ループの活動があれば、是非参加したいとの母の希望を伝えることでした。 以降、同年5月に、母より療育訓練を行っている医療機関の紹介を求める電話があり、 G病院とH病院を紹介しました。5月 14 日には保健師が母への電話により、療育訓練 のための受診予約の確認を行いながら、家庭訪問したい旨を伝えましたが、頭痛がひど く対応できないとのことでした。5月 21 日にも母に電話し、男児の受診予約と母の体 調を確認しました。8月 31 日の電話では、母から、医療機関による男児の診断に対す る不安の訴えがありました。 22 年 11 月 25 日に健康会館窓口において、母は子宮がん検診を申請しています。翌 23 年2月 10 日には3歳児健診を受診し、栄養相談と成長相談を受けました。母は療育 訓練に通うことで安心できると話し、医療機関の療育につながっていることなどから、 その後のフォローは行いませんでした。 項 目 問題点と課題 今後の方策 ① 親 の 健 康 状 態 の 母の体調に関して、詳細が聴 乳幼児健診時の問診で、母の 把握 き取れていませんでした。 体調についてもしっかり確 認します。 ② 課 内 の 情 報 共 有 発達障害のケースとして、係 健康管理総合システムを活 と連携 内において情報を共有して 用し、情報の共有を充実しま いました。 す。 ③ サ ー ビ ス 提 供 3歳児健診後の支援につい 3歳児健診後に、他機関につ 中・終了後のフォ ては、医療機関につながって ながっていない方や中断し ロー いたことで、その後のフォ てしまった方については、そ ローは他機関で継続される の後の様子を確認します。 と判断し、その後の様子は確 認しませんでした。 10 3 具体的な方策 整理した問題点と課題、今後の方策をふまえ、次の方策を講じることとしました。 (1) 直ちに講じた方策 ① 同様の事例の有無とその対応 障害福祉課において、障害がある乳幼児を抱えるひとり親家庭を検索し、福祉保健 部や子ども家庭部のサービスにつながっていない家庭を確認したところ、該当する家 庭は1世帯でした。早速、電話により近況を聴き、提供可能なサービスを案内しまし た。 ② 緊急連絡先の把握 障害福祉課の窓口等において、ひとり親家庭の場合に、所定の様式(別紙)を定め、 緊急連絡先を可能な限り多く記入していただくよう改めました。 (2) 直ちに講じるべき方策 ① 一歩踏み込んだ対応 ひとり親家庭で障害児を抱える家庭に対し、窓口などの様々な場面において、現状 等の聴き取りや情報の共有化、万一の場合の対処など、一歩踏み込んだ対応を進めま す。 ② 「同様の事例の有無とその対応」の継続 当面、障害福祉課において行った点検を定期的に継続するとともに、万一の場合に は、関係課と市民生活部生活安全課が連携して対処します。ただし、中長期的に継続 する点検や万一の場合の対処については、その体制も含め、中長期的に取り組むべき 方策として位置付け、検討を進めます。 中長期的に継続する点検や対処のための体制は、その対象の範囲や情報の収集・共 有、対処連携のあり方について、専門家や当事者の意見を聴きつつ、検討を進めます。 (3) 総合的な子育て支援拠点開設(*)までに取り組むべき方策 (*)H24 年 12 月旧庁舎跡施設に開設予定 ◎ 情報の共有化と継続的な点検、緊急事態対処のための体制づくり 情報の共有を進め、継続的な点検と緊急事態に対処するための体制を確立するため、 対象の範囲やそれを決定するプロセス、情報の種類や収集・共有の方法、セキュリティ 対策、持続可能な点検方法、対処のための体制や連携のあり方などについて、専門家 や当事者の意見を十分に聴き、スケジュールを定めて検討する。 (4) 中長期的に取り組むべき方策 ① 地域の見守りシステムの再構築 子ども支援ネットワークや地域包括センター、民生・児童委員制度などの子どもや 高齢者、障害者を見守る既存の仕組みを見直すとともに、安否確認メールや外部(電気、 ガス、水道、新聞・飲料配達)からの情報提供などの新たな取組みも視野に入れ、総合 的な地域見守りシステムを検討します。 11 ② 立川児童相談所や東京都児童福祉審議会の検証結果の反映 今後1~2年の間に行われる立川児童相談所における死亡事例等検証会議や東京都 児童福祉審議会における児童虐待死亡事例等検証部会が行う検証作業に協力し、その 検証結果を今後の方策に可能な限り反映させます。 4 検証経過(関係4課による検証会議) 開催日 検討事項 1 24 年2月 24 日 検証の趣旨・方法・進め方 2 24 年2月 27 日 事例の概要、事実確認 3 24 年2月 29 日 問題点と課題、今後の方策 4 24 年3月2日 同上 5 24 年3月5日 中間報告(案) 6 24 年3月6日 同上 7 24 年3月7日 同上 5 関係4課による検証会議名簿 職 名 子ども家庭部長 福祉保健部長 子ども家庭部子育て推進課長 福祉保健部障害福祉課長 子ども家庭部子育て推進課子ども家庭支援 福祉保健部障害福祉課障害福祉係長 センター係長 福祉保健部障害福祉課主査 子ども家庭部子育て推進課子ども家庭相談 福祉保健部保健医療担当部長 係長 福祉保健部健康推進課長 子ども家庭部保育課長 福祉保健部健康推進課母子保健係長 子ども家庭部保育課保育運営係長 福祉保健部健康推進課主査 12 別紙 緊急連絡先について 市の担当者が連絡を取りたくてもなかなか連絡が取れないときなどのために、緊急の連 絡先をできるだけ多くご記入ください。 記入者氏名 緊急時に下記へ連絡することを承諾します。 緊急連絡先電話番号 電 話 番 号 氏名・職場名等 13 続柄等 羽衣町高齢母娘死亡事例の検証(中間報告) はじめに 平成 24 年 3 月 7 日、民生・児童委員(以下民生委員と表記。)からの相談を受け、安否 確認のため羽衣町の都営住宅を訪問した福祉保健部高齢福祉課職員が、この部屋に住む 90 代女性Aさんと 60 代女性Bさんとみられる遺体を発見しました。 警察の調査によると、死後約1か月程度のこの方々については、3 月 2 日に東京都住宅 供給公社(以下JKK東京と表記。)から、1 週間位連絡が取れない居住者(Aさん、Bさ ん)に対する市からの情報提供の依頼があったものの、介護保険サービスの利用や地域包 括支援センターとの日常的な関わりがなかったことから、住居へ立ち入りをする場合は市 として協力ができるので連絡をしてほしいと伝える以外、情報は提供できませんでした。 市、JKK東京ともに 7 日の民生委員からの相談があるまで、該当世帯が二人暮らしであ ることから急を要する対応が必要な世帯としてとらえておらず、安否確認は進みませんで した。 市はこの事例を重く受け止め、同様の事態の防止に向けて検証する必要があると判断し、 高齢福祉課において検証・検討を重ねてまいりました。 この報告は、これまでの経過をまとめたものです。 1 事例の概要と経過 (1) 事例の概要 平成 24 年 3 月 7 日、 「安否確認が取れない」と民生委員よりはごろも地域包括支援セ ンターに相談があり、高齢福祉課で改めて情報収集したところ、2 月 20 日から水道が未 使用、電気がつきっぱなし、自治会費の未収の情報が得られました。現地を確認したと ころ、宅配便の不在票(代金引換での受取物)がドアに挟まっており、旅行は考えにく いことから緊急性が高いと判断し、警察・消防に出動要請をしました。 消防隊が隣室のベランダより当該世帯のベランダに移動し、施錠されていなかった窓 から侵入し室内の遺体発見に至りました。 (2) 対応などの経過 発見までの経過(立川市対応) 日 時 3月2日(金) 11:45 頃 内 容 高齢福祉課にJKK東京より 1 週間位連絡が取れない居住者について情 報提供の依頼あり。介護保険サービス利用・地域包括支援センターでの 関わり、いずれもなしと回答。併せて地区の民生委員の連絡先を伝える とともに、住居へ立ち入りをする場合は市として協力ができることを伝 え連絡を依頼する。民生委員には留守番電話にメッセージを残す。 14 3月2日(金) 17:00 頃 留守番電話を聞き高齢福祉課に電話連絡をしてきた民生委員に、JKK 東京からの依頼について説明し、関わりが無いことを確認。当該宅の隣 人を知っているので電話で様子を聞いてみるとのこと。 3月3日(土) 動きなし。 3月4日(日) 動きなし。 3月5日(月) 動きなし。 3月6日(火) 動きなし。 3月7日(水) 介護保険課に、はごろも地域包括支援センターから介護サービスの利用 9:00 頃 状況の問い合わせがあるもサービスの利用はなしと回答。 3月7日(水) 介護保険課から高齢福祉課に、はごろも地域包括支援センターより問い 13:00 頃 合わせを受けたとの報告あり。3 月 2 日にJKK東京から問い合わせが あった件と同一人物と判明し、地域包括支援センターに確認したとこ ろ、安否を心配した民生委員からの相談と判明。 高齢福祉課がJKK東京に電話で 2 日以降の対応を確認。安否確認はと れておらず、住居の保証人もすでに死亡しており、その妻とは連絡がと れたが関わることは難しいとのこと。高齢福祉課が保証人の妻と連絡を 取りたい旨説明し、取り次ぎを依頼。 高齢福祉課が保証人の妻に連絡し、今後の関わりについて依頼するも不 可能との回答。 Aさんの安否確認をするために、高齢福祉課が独自に情報収集を開始。 (介護認定情報、医療機関受診状況など) 3月7日(水) 高齢福祉課職員 2 名で現地確認。ドアフォン、ノックでの呼びかけ。ガ 14:30 頃 ス水道メーターの数値を記録。ポスト郵便物確認。ドアポストから臭い の確認。電気の点灯状況の確認、向かい側のアパートからベランダ側の 様子を確認。隣人の方からの情報収集。根拠が十分でないため室内への 立ち入りは行わず帰庁。 3月7日(水) 帰庁後更に情報収集。最終受診した医療機関への照会、東京都水道局へ 16:00 頃 の照会。集めた情報を整理・分析した結果、改めて現地へ訪問する方針 を決定。 3月7日(水) 高齢福祉課からJKK東京に上記経過を説明し、警察・消防への対応依 16:40 頃 頼を判断するために同行依頼したが、JKK東京は「時期尚早」であり 鍵を壊しての安否確認には親族や市等第三者からの依頼が無いと対応 できず、JKKの判断で警察を呼ぶことはしないとの回答のため、市は 単独で現地確認に行くことをJKK東京に伝達。 3月7日(水) 高齢福祉課職員 2 名で現地確認。郵便ポストに 2 通の郵便物、ドアに挟 17:15 頃 まったBさん受取の代金引換宅配便不在票から、高齢の母親と長期旅行 等は考えにくく室内にいる可能性が高いと判断。 3月7日(水) 収集した情報と現地の様子などから、立ち入りによる安否確認の必要が 17:30 頃 あると判断し、高齢福祉課職員が 110 番通報。 15 3月7日(水) 警察官が到着。 17:50 頃 3月7日(水) 高齢福祉課職員が 119 番通報。安否確認であり、玄関鍵が施錠されてい 18:00 頃 る、住まいが7階であることを伝え救急要請を行う。 3月7日(水) 消防・救急隊到着。消防隊が、隣家ベランダから当該世帯のベランダに 18:10 頃 移動し、施錠されていなかったサッシより室内侵入。2 名の死亡が確認 された。高齢福祉課職員が高齢福祉課、JKK東京に死亡確認の一報を いれた。 2 検証による問題点と課題 今回の事例は、介護者が何らかの理由で介護できなくなった時に要介護者自ら助けを求 められず、結果として両者が亡くなったと思われる事例であり、なぜ防げなかったのか、 市は何ができたのか等問題点と課題を整理しました。今まで市が把握した孤立死・孤独死 は独居高齢者等の場合が多く、同一世帯で複数人が死亡する事例はありませんでしたが、 高齢者のみの世帯ではなくても死につながる可能性があることを認識しました。また、市 は約 1 年半前の要介護認定調査時と約 1 年前の要介護認定更新調査時にBさん一人での介 護が大変な状況を把握したのみで、その後Bさんあるいは地域からの相談や情報提供は受 けていませんでした。 この世帯は、自治会等地域とのつながりがあり、安否を気づかう声が近隣からあったに もかかわらず、迅速な対応ができませんでした。このことから、 ① 安否確認への対応の統一、庁内・関係機関との情報共有と連携 ② JKK東京との連携の強化 ③ 地域の高齢者の現状の把握と孤立防止 ④ 市・地域包括支援センターの利用のさらなる周知 の 4 項目を課題として整理しました。 3 具体的な方策 整理した問題点と課題をふまえ、次の方策を講じることとしました。 (1) 直ちに講じた方策 安否確認の相談が入った場合には、人命第一、市民の安全を第一に考え、立川市とし ての判断、対応をとるように徹底。 (2) 直ちに講じるべき方策 ① 安否確認対応シ―ト(仮称)を作成し、確認した情報や判断の根拠を明確化すると ともに記録していく。 ・立川市は「緊急時対応ガイドライン」を参考に対応しているところであるが、さら に安否確認対応シ―ト(仮称)を作成・活用した迅速・正確な確認と、その情報や 16 判断の根拠を明確化し記録していく。 ・迅速・正確な対応のために、関係機関との役割分担や連携を強化する。 ② 介護保険の要介護認定を受けているが、介護サービスを利用していない高齢者等の 実態を把握する必要があると考え、サービス未利用高齢者を抽出して、その方たち の状況を把握する。その結果を分析し、必要な方に対して定期的な見守りや介護サー ビスなどを案内していくとともに、今後の見守りのあり方にも反映させていく。 ・「日常生活の状況調査」の実施 調査方法:調査票を郵送し、回答していただくことにより状況を把握。未提出 の方については、市職員が電話や戸別訪問し、現状把握と地域包括支援センターの 周知を行う。回答者のうち福祉の対応が必要とされる方については、市職員・地域 包括支援センター等が対応。 調査対象者:平成 24 年1月末時点の要介護認定者から各種介護保険サービス利 用者を除いた 1,034 名(平成 24 年3月 16 日現在) スケジュール:平成 24 年3月 28 日(水)調査票発送 4月 12 日(木)提出期限 4月末までに未提出者への電話連絡・戸別訪問等 5月以降調査票の分析による個別対応 回収・対応状況:調査票回収率 73.8% :状況把握数 1,034 件 調査対象者 1,034 件 調査票 回収数 763 件 返戻数 28 件 調査票 未回収数 243 件 調査票未回収者に対する確認状況 地域包括支 援センター確認 115 件 各課資料 確 認 12 件 電話確認 104 件 職員訪問 確 認 12 件 ・調査票未回収のうち、その約 5 割の 127 件は市及び地域包括支援センターとの 関わりがあり、状況を確認することができた。 ・未回収及び回収後の個別対応時には、地域包括支援センターの周知も併せて行っ た。 ・詳細は別紙「日常生活の状況調査報告」参照。 (3) 中長期的に取り組むべき方策 高齢者の「孤立」を防ぐ対策の充実と地域の見守りシステムの再構築。 ゆるやかに見守り・見守られている「個人を尊重し、人と人がつながり、その人らし い生活ができるまち」を目指していくためには、まずご本人自らが普段から隣近所と交 流し、親族や友人と連絡を取り合う、地域に参加すること(自助)、地域でお互い様と 支えあうこと(共助)、行政による様々なサービスや制度の充実(公助)、この 3 つが地 域と連携して取り組んでいくことが大切と考えます。一方で、自ら声を出せない人こそ 心配であり、その人をどのように支援につなげていくのかも課題です。日々の関わりの 中で気づき、発せられた声を地域住民や行政が把握し、適切に行動に移すことができる 仕組み作りが求められています。 命にかかわる安否確認対応から、日々の高齢者の見守りや孤立の防止には、従来の協 17 力機関の枠を広げるとともに、ライフライン事業者からの情報提供などの新たな取組み も視野に入れた、総合的な地域見守りシステムが必要と考えております。2 月におきた 母と障害児の死亡事例も含め、庁内での情報共有と迅速な対応のための体制づくりの検 討を行ってまいります。 なお、JKK東京は、4 月 16日「都営住宅居住者の安否確認に関する対応マニュア ルの見直し等について」を公表し、入室判断の具体的な基準を示すとともに、地元自治 体との連携強化、自治会等との連携強化に取組むとしています。 4 検証経過 1 24 年3月 12 日 第 1 回検討会議 2 3 4 5 6 7 8 9 10 見守り見直し準備会(部課長)へ報告、 未利用者調査対象者抽出を介護保険課に依頼 未利用者調査対象者データ抽出、調査票案検討・作成 JKK東京と今後の連携についての協議・事例経過検証 未利用者調査政策会議で協議 未利用者調査発送 第 2 回検討会議 調査対応について協議 JKK東京と今後の連携についての協議・事例経過検証 JKK東京と今後の連携についての協議・事例経過検証 24 年3月 13 日 24 年3月 13 日 24 年3月 19 日 24 年3月 21 日 24 年3月 27 日 24 年3月 28 日 24 年4月 5日 24 年4月 12 日 24 年6月 1日 問題点と課題、今後の方策について 18 別紙 日常生活の状況調査報告 1 調査目的と実施概要 (1)調査目的 平成 24 年 3 月 7 日、市内都営住宅で高齢母娘の遺体が発見されたケースでは、要介護認定 を受けてはいても、本人の希望により介護保険サービスを利用せず家族による介護が行われて いました。介護する家族が 65 歳未満であり、市が見守り等が必要ととらえていたいわゆる「老 老介護」ではないものの、介護している方が倒れたことにより、介護される方も亡くなられま した。このことから、同居者の有無や状態にかかわらず、要介護認定を受けていながら介護保 険サービスを利用していない高齢者の実態を把握するために行った調査です。 (2) 調査方法・期間 郵送による調査票の配布・回収と、電話確認・戸別訪問等の未回収者対応。調査票は平成 24 年 3 月 28 日発送 4 月 12 日締切、電話確認・戸別訪問等は 4 月 16 日以降 5 月 11 日まで。 (3) 対象者 介護保険の介護認定を受けていながらサービス未利用の 65 歳以上高齢者等。独居・同居を 問わず対象。対象者数は、平成 24 年 1 月末時点(最新)の要介護認定者 6,082 名から各種介 護保険サービス利用者を除いた 1,034 名。ただし、配食サービス事業等介護保険サービス外の 利用者、2 月以降の介護保険サービス利用者が含まれています。 (4) 回収・対応状況 調査票回収率 73.8% 調査対象者 1,034 件 状況把握数 1,034 件 調査票回収数 763 件 返戻数 28 件 調査票未回収数 243 件 調査票未回収者に対する確認状況 地域包括支 援センター確認 115 件 各課資料確認 12 件 電話確認 104 件 職員訪問確認 12 件 (5)回収後の対応 回収結果を分析し、ハイリスク者を抽出し対応。どの程度をハイリスクとするかは、地域包 括支援センターと今後協議し決定。5 月中旬以降地域包括支援センター職員等が訪問等により 対応の予定。あわせて地域包括支援センター等についても周知。 2 調査結果(5/14) (1) 調査票回収状況 回答 返戻 未回収 合計 件 763 28 243 1,034 (2) 把握状況 回答数(調査票・電話等) 地域包括支援センター確認 各課資料 合計 (3) 返戻・未回答者調査状況 地域包括支援センター確認 各課資料 電話 訪問 返戻 12 15 1 未回収 115 12 104 合計 127 27 105 19 件 調査数 0 28 12 243 12 271 件 880 127 27 1,034 (4) 項目別結果 問1:回答者(調査票・電話・訪問) 1 本人 2 ホームヘルパー・ケアマネジャー・その他 3 家族 4 回答者不明(回答者欄空欄) 合計 件 460 23 371 26 880 問2:世帯構成 1 一人世帯 2 高齢者のみ世帯 3 家族と同居 4 その他 無回答 合計 件 180 243 281 43 16 763 問3:外出の有無 件 1 有 542 → 問3-1:外出先(複数回答) 件 2 無 199 1 病院 501 無回答 22 2 自治会活動 20 合計 763 3 老人クラブ 42 4 福祉会館 46 5 友人宅 61 6 親類の家 58 7 散歩 176 8 買い物 280 9 習い事 35 10 その他 98 合計 1,317 問4:近所づきあい 1 助け合える 2 立ち話 3 あいさつ 4 付き合いなし 無回答 合計 問5:相談相手 1 いる 2 いない 無回答 合計 問6:介護サービス等利用状況(複数回答) 件 件 684 → 問5-1:相談先(複数回答) 件 42 1 家族 573 37 2 知人 199 763 3 市役所 57 4 地域包括C 123 5 民生委員 28 6 その他 76 合計 1,056 問7:サービス利用状況(複数回答) 件 1 ホームヘルプ 53 2 デイサービス 67 3 配食サービス 35 4 訪問入浴 9 5 訪問看護 25 6 訪問リハビリ 14 7 その他 26 8 利用なし 679 合計 908 住宅改修 福祉用具貸与・購入 ショートステイ おむつ給付 緊急通報システム 見守りネットワーク 利用していない 合計 208 169 69 38 15 9 350 858 問7-8:サービス未利用理由(複数回答) 件 1 入院中 266 2 サービス利用に至らない状況 217 3 家族介護で十分 173 4 家族以外は介護拒否 50 5 利用料支払いが困難 41 6 予約が取れない 9 7 利用方法がわからない 34 8 その他 101 合計 891 問8:調査票コメント 件 有 無 計 1 2 3 4 5 6 7 件 154 193 246 128 42 763 278 → 「有」対応内訳 485 1 直接連絡対応 763 2 包括連絡依頼 3 連絡不要 合計 件 101 29 148 278 20 「連絡不要」判断理由 件 1 サービス利用中 12 2 入院中 29 3 同居人が介護サービス利用 5 4 生活保護受給 3 5 施設入所中 5 6 対処方法の認識あり 75 7 その他(お礼等) 19 合計 148 様 《日常生活の状況調査》 立川市福祉保健部 高齢福祉課・介護保険課 ■ はじめに…。 問1 このアンケートに回答していただける方はどなたですか。 (○は1つ) 1.ご本人(代筆も含む) 3.家族 2.ホームヘルパー・ケアマネジャーなど 4.その他(具体的に: ) ■ 普段の生活について、おたずねします。 問2 世帯構成について伺います。(○は1つ) 1.一人世帯 2.高齢者のみの世帯 3.家族と同居の世帯 4.その他 問3 定期的に外出をすることがありますか。 1. ある 2.ない 問3で「1.ある」とお答えになった方におたずねします。 主な外出先は、どこですか。 (○はいくつでも) 1.病院 5.友人宅 9.習い事 2.自治会活動 6.親類の家 10.その他( 21 3.老人クラブ 7.散歩 4.福祉会館 8.買い物 ) ■ ご近所づきあいについて、おたずねします。 問4 ご近所づきあいは、どの程度されていますか。 (○は1つ) 1.困ったときには助け合える 2.立ち話をする程度 3.あいさつだけはする程度 4.ほとんど付き合いはない 問5 日頃、困ったことがあった場合に相談のできる相手はいますか。 1.いる 2.いない 問5で「1.いる」とお答えになった方におたずねします。 あなたは、どなたに相談をしますか。(○はいくつでも) 1.家族 3.市役所 5.民生委員 2.知人 4.地域包括支援センター 6.その他( ) ■介護サービス等の利用についておたずねします。 問6 いままでに、下記の福祉制度やサービスを利用したことがありますか。 (○はいくつでも) 1.住宅改修(手すりの設置、段差の解消など) 2.福祉用具の貸与・購入(車いす、特殊寝台など) 3.短期施設入所(ショートステイ) 4.おむつの給付 5.緊急通報システム 6.見守りネットワーク事業 7.何も利用していない 22 問7 現在、下記の介護サービスや福祉サービスを利用していますか。 (○はいくつでも) 1.ホームヘルプ(訪問介護) 2.デイサービス(通所介護) 3.配食サービス 4.訪問入浴 5.訪問看護 6.訪問リハビリ 7.その他( ) 8.何も利用していない 問7で「8.何も利用していない」とお答えになった方におたずねします。 利用していない理由は何ですか。(○はいくつでも) 1.病院に入院中だから 2.サービスを利用するほどの状況ではないから 3.家族などによる介護で十分であるから 4.家族以外の人に介護をしてもらうのはいやだから 5.利用したいが、利用料の支払いが困難であるから 6.利用したいが、事業者または施設が予約でいっぱいであるから 7.利用したいが、サービスの利用方法がわからないから 8.その他( ) ■ お困りごとについて、おたずねします。 問8 現在、生活していく上で困っていることや心配なことはありますか。ま た、市からの連絡が必要な方は、連絡先(電話番号等)をお書きください。 アンケートは以上です。ご協力いただきありがとうございました。 23 この調査票は、 4 月 12日(木)までに 同封の返信用封筒に入れて、ポストに 投函してください。 (切手を貼る必要はありません) 【お問い合わせ先】 立川市福祉保健部高齢福祉課 ☎042-523-2111 24 内線1479 第2章 個別の見守りシステムの 充実に向けた取組み 25 ひとり親家庭等の見守り支援について 本年2月に3件の児童死亡事例が発生し、3件ともひとり親家庭でした。特に、その内 の1件は、母子ともに死亡した孤立死の事例であったことから、市はこの事例を重く受け 止め、関連部署による検証会議を設置し、3月に「羽衣町母子死亡事例の検証(中間報告)」 (2頁参照、以下「中間報告」という)を発表しました。 その後、途切れ・すき間のない子ども支援ネットワークのあり方検討委員会において、 ひとり親家庭等における孤立死等の再発を防止するため、緊急的な取組みを進めるととも に、網羅的かつ継続的なひとり親家庭等の見守り支援のあり方を検討してきました。これ までの取組みと検討結果は以下のとおりです。 今後は、これまでの取組みを踏まえ、生活福祉課を含めた関係6課(子育て推進課、子ど も家庭支援センター(*)、保育課、障害福祉課、生活福祉課、健康推進課)を中心に、網羅 的かつ継続的なひとり親家庭等の見守り支援を推進します。 (*) 本年4月の組織改正により、子ども家庭支援センターが新たな課となりました。 Ⅰ 経 過 1 中間報告における「一歩踏み込んだ対応」の取組み 中間報告においては、直ちに講じるべき方策の1つ目として、窓口などの様々な場面 における「一歩踏み込んだ対応」を掲げています。そこで、庁内を対象としたアンケー ト調査等を行いました。 (1) 「一歩踏み込んだ対応」アンケート調査 中間報告において掲げた、関係4課(子育て推進課、保育課、障害福祉課、健康推進 課)の「問題点・課題及び今後の方策」の進捗状況を集約するとともに、庁内の課長・ 係長に「一歩踏み込んだ対応」についてのアンケート調査を実施しました。 (2) 「一歩踏み込んだ対応」ヒヤリング調査 アンケート調査の結果を踏まえ、ひとり親家庭等との関連性があると思われる5つ の課には、一歩踏み込んだ対応をさらに促すため、ヒヤリング調査を実施しました。 2 中間報告における「同様の事例の有無とその対応」の継続 中間報告においては、直ちに講じるべき方策の2つ目として、「同様の事例の有無と その対応」の継続を掲げています。そこで、現状で対応可能な方法として、児童育成手 当受給者データを活用することにしました。 (1) 孤立傾向のひとり親家庭等のリスト作成 児童育成手当受給者データから乳幼児を養育するひとり親家庭等を抽出し、関係課 の情報と突合し、幼稚園や保育園などの継続的なサービスを利用していない 34 世帯を 特定しました。さらに、関係機関の情報を精査し、親族との同居世帯等を除き、安否 26 確認が必要な 21 世帯のリストを作成しました。 (2) 安否確認 関係5課の職員が分担して、21 世帯を訪問し、15 世帯と面会、残る6世帯は住居の 外観から異変がないことを確認しました。残った6世帯については、現在も手紙や電 話により面会を促す活動を継続しています。 Ⅱ 今後の継続的な見守り支援 中間報告においては、総合的な子育て支援拠点(子ども未来センター)開設までに取り組 むべき方策として、「情報の共有化と継続的な点検、緊急事態対処のための体制づくり」 を掲げています。住民基本台帳のデータから、乳幼児を養育するひとり親家庭等を定期的 に抽出することを基本に、網羅的なリストの作成と更新、継続的な見守り支援等について 検討しました。 1 住民基本台帳からのデータ抽出 児童育成手当制度には所得制限があり、暫定的に行った受給者データからの抽出では、 網羅的なリストにはなりません。そこで、今後の継続的な見守り支援をすき間なく行う ため、住民基本台帳からのデータ抽出と定期的なデータ更新により、乳幼児を養育する ひとり親家庭等の網羅的なリストを作成します。 なお、抽出されるデータは約 400 件、毎月更新されるデータは約 40 件と推計してい ます。抽出後のデータ管理は、子ども家庭支援センターが中心となって行います。 2 網羅的なリストの作成と更新 住民基本台帳から抽出したデータと関係6課の情報を突合し、幼稚園や保育園などの 継続的なサービスを利用していないひとり親家庭等のリストを作成します。また、住民 基本台帳の変動データにより、このリストを毎月更新するとともに、毎月の異動データ は関係6課で共有します。 この孤立傾向のひとり親家庭等は、児童福祉法第 25 条の2(要保護児童対策地域協議 会の設置)における「要支援児童及び保護者」と位置付けます。 3 継続的な見守り支援 ひとり親家庭等は様々な事情を抱えていることに配慮し、関係6課や民生委員・児童 委員など、必要最小限の範囲で情報を共有し、訪問や電話、郵便等の継続的なアプロー チにより、連携して見守り支援します。関係機関が行う継続的なアプローチのコーディ ネートは、子ども家庭支援センターが行います。 (1) データ更新と管理 ◆ 住民基本台帳番号で管理している認可保育所園児情報(保育課)、幼稚園園児情報 27 (子育て推進課)、訪問サービスの利用情報(障害福祉課)については、毎月全件を確 認します。 ◆ 住民基本台帳番号で管理していない認可外保育所園児情報(保育課)、1歳半・3 歳児健診、予防接種の受診情報(健康推進課)、児童育成手当の付帯情報については、 3か月ごとに全件を確認します。 ◆ データ管理と庁内からの見守り情報の集約、関係6課の情報との突合等の作業は、 子ども家庭支援センターがコーディネートします。 (2) 定期的な状況確認と子育て情報の提供 初回の安否等の確認については、関係6課の職員が、各種手続きによる来庁時の面 談や訪問によって行い、それ以降に必要となる、定期的な訪問や郵便等による状況確 認、子育て情報の提供等については、乳幼児や保護者の状況を考慮し、主担当課を決 めて行います。なお、DV 被害者と生保世帯については、生活福祉課女性相談員と地区 担当が対応します。 また、ひとり親家庭等を対象とした育児等の相談会などについては、配慮事項や関 係課の連携なども含め、今後検討します。 (3) 日常的な見守り 日常的な見守りについては、住居の外観等からの見守りを中心に、担当地区の民生 委員・児童委員に協力を依頼します。 4 安否確認 早急に安否確認が必要な事態になった場合は、連絡先不明の通報・相談・安否確認専 用ダイヤルの運用マニュアルに基づき、生活安全課と関係6課が迅速かつ的確に対応し ます。 28 高齢者等への見守り支援について 本年3月に発生した高齢母娘死亡事例においては、介護者が何らかの理由で介護できな くなった時に要介護者が自ら助けを求められず、結果的にお二人の尊い命が失われてしま いました。また、この世帯は自治会等の地域とのつながりがあり、安否を気づかう声が近 隣からあったにもかかわらず、迅速な対応ができませんでした。 この事例の反省を踏まえ、同様の事態を防止するため、高齢福祉課において検証・検討 を重ね、対応を進めてきました。この過程で得た結論は、 「人命第一・市民の安全第一」の 徹底が重要であり、早い段階における気づきを大切にし、迅速に対応することが救命の確 率を高めるということでした。今後は、緊急時の安否確認を最優先に考え、引き続き支援 の充実を進めていきます。 また、過去の事例の分析により、親族や近隣との日常的な関わりや定期的な介護サービ スの利用等がある場合は、高齢者の異変に早期に気づく傾向があるため、「自助」「共助」 「公助」の継続的な啓発を行い、すべての方がお互いを気遣い、ゆるやかに見守るネット ワーク事業を推進します。 Ⅰ 経過 1「人命第一・市民の安全第一」の徹底 高齢福祉課においては、この事例を受け、直ちに検証会議を開催し、事例検証ととも に今後の対策について検討しました。検証会議では、「人命第一・市民の安全第一」の 考えに基づき、安否確認の相談が入った場合には、市としての判断、対応をとることを 確認しました。また、地域包括支援センターや福祉相談センターについても、事務連絡 会や日常業務を通じ、市の考えを伝え徹底しました。 2「安否確認対応シ―ト」の作成 安否確認対応シ―トを作成し、通報内容等を記録・明確化することにより、情報の共 有と客観的な判断、迅速・正確な安否確認に役立てています。 3「緊急時対応ガイドライン」の改定 高齢者虐待対応マニュアルの中にある「緊急時対応ガイドライン」を「地域における 孤立化防止のためのガイドライン」に改め、孤立の防止や通報・相談についてのガイド ラインを示し、民生委員等関係各位に周知しました。 4「日常生活の状況調査」の実施 介護保険の要介護認定を受けていながら、介護サービスを利用していない高齢者等の 29 郵送による実態調査を実施しました。未提出者については電話連絡・戸別訪問等を行い、 対象者全員の現状を把握するとともに、相談窓口や介護サービスなどを案内し、必要な 方には定期的な見守りにつなげました。 5 JKK東京との協定締結 高齢母娘死亡事例の反省から、JKK東京と「安否確認にかかる緊急時対応について の連携・協力に関する協定」を締結し、緊急時の対応を明確にするとともに、連携・協 力体制を強化しました。 Ⅱ 今後の継続的な見守り支援 1 地域支え合いネットワーク事業の充実 「高齢者見守り事業」と「ちょこっとボランティア事業」からなる地域支え合いネッ トワーク事業は、特定の高齢者を個別に見守ることに重点を置いた事業でした。しかし、 高齢社会を背景とした地域から孤立する高齢者等の増加に対応するためには、従来の取 り組みのほか、18 万市民がお互いにゆるやかに見守るネットワークの構築が必要です。 地域住民や事業所等に対して継続的な啓発を行うことにより、地域における気づきを 促し、気づきの目を増やすとともに、気になる人を知らせていただくネットワークを構 築し、地域全体の見守り意識の促進、見守り力の向上を図ります。 2 JKK東京との連携強化 緊急時の対応を迅速・正確に行うため、JKK東京との連絡協議を定期的に開催し、 連携・協力体制の強化を推進します。 3 地域包括支援センター・福祉相談センターの周知 高齢者等が困っていることを気軽に相談できる身近な窓口として、また、地域支え合 いネットワーク事業を推進する中心的な施設として、地域包括支援センター等の機能を 強化し、高齢者等への周知を進めます。さらに「日常生活の健康調査」の未提出者等に 対して個別訪問を行うなど、気になる高齢者へ積極的にアプローチし、問題の早期発見 に努めます。 4 各種サービスの周知 親族や近隣住民等との日常的な関わりと同様に、介護保険などの定期的なサービスの 利用は、高齢者等の状態の変化や異変を察知することに有効であるため、配食サービス などの介護保険外のサービスも含め、市民への広報や介護支援専門員への研修を通して 一層の利用促進に努めます。 30 第3章 総合的な見守りシステム の構築 31 総合的な見守りシステムのイメージ 個別の見守りシステムの充実と連携の強化 (子ども支援ネットワーク、高齢者見守りネットワーク、障害者虐待防止センターetc) 障 害 者 子 ど も 高 齢 者 すき間のない地域見守りシステム 地域の見守りを育む ▽民生委員・児童委員▽ ▽地域包括支援センター▽ ▽地域福祉コーディネーター▽ ▽子ども家庭支援センター▽ ▽障害者虐待防止センター▽ 丁 紡 寧 ぐ に 市民、自治会、事業者、関係機関 etc じ っ く 育 り む 新たな見守り網を紡ぐ △ライフライン事業者等△ △ 医 療 機 関 △ どこが担当か判らない? 連 絡 先 不 明 の 通 報 ・ 相談・安否確認専用ダイヤル キ 確 ャ 実 ッ な チ 地域の見守り情報をキャッチする 庁内における 情報共有の促進 情報を救援・支援につなげる 障害福祉課 高齢福祉課 迅速な対応 子ども家庭 支援センター 32 生活福祉課 健康推進課 その他 総合的な見守りシステム Ⅰ 個別の見守りシステムの充実と連携の強化 本年2月と3月に発生した母子死亡事例及び高齢母娘死亡事例を受け、市はこれまで、 子ども支援ネットワークや高齢者見守りネットワークの充実に取り組んできました。また、 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)の施 行により、障害者虐待防止センターを設置し、障害者虐待の防止と養護者の支援等に関す る施策の促進も開始しました。 今後とも、これらの個別の見守りシステムを充実させ、迅速な対応を徹底するととも に、共通して関わっている困難ケースが放置されないよう、個別の見守りシステム相互の 連携をより一層強化します。 Ⅱ すき間のない地域見守りシステム 社会的なつながりを自ら絶ち、孤立を望む風潮が広がる中においては、個別の見守り システムの充実と連携の強化によってさえも、見守りからこぼれてしまうケースが出てし まう可能性があります。これらのケースを孤立させないためのセーフティーネットとして、 「地域の見守り情報をキャッチする」、「地域の見守りを育む」、「新たな見守り網を紡ぐ」 の3つの柱からなる『すき間のない地域見守りシステム』を構築します。 1 地域の見守り情報をキャッチする 地域の市民による見守り情報は、年齢や家族構成、障害の有無など、さまざまな側面 で複雑なケースが少なくありません。これらの情報は、「どこに相談したら良いか判ら ない」ことから、通報・相談をためらい、放置されている可能性があります。また、窓 口や市内出張などの様々な場面において職員が得る市民の情報は、それが支援を要する ケースであったとしても、個人情報保護の意識が働き、必ずしも庁内において共有され ているとは言えません。 このような状況に対応するため、連絡先不明の通報・相談・安否確認専用ダイヤルを 設けるとともに、一定のルールの基に、庁内における情報共有を促進することにより、 すき間のない情報のキャッチと確実な支援へのつなぎを実現します。 (1) 市役所によるキャッチ(連絡先不明の通報・相談・安否確認専用ダイヤル) どこに通報・相談したら良いか判らない見守り情報の専用電話回線を開設し、情報 を受け付け、該当する担当課につなげます。また、受け付けた情報のみでは、担当課 を判断することができない場合は、 「ケース検討会議」を開催し、要支援ケースか安否 確認ケースかを判断するとともに、主担当課とその後の対応を決定します。さらに、 ケースの緊急度に応じ、 「緊急対応会議」に切り換え、警察・消防等の関係機関に協力 を求めるなど、安否確認を迅速かつ的確に行います。なお、安否確認を要する通報に ついては、休日・夜間も対応します。 33 ① 連絡先不明の通報・相談・安否確認専用ダイヤル ◆ 専用電話回線の設置 一刻を争う安否確認に備え、庁舎内に専用電話回線を新たに設置し、ダイヤル設 置の主旨等を含め、市民や事業者、関係機関等に周知します。 ◆ 受付業務 庁舎管理業務と併せて、民間委託により実施します。 ◆ 休日・夜間の対応 休日・夜間については、安否確認を要する通報に限り、緊急連絡網により担当課 の職員につなぎ、運用マニュアルに基づき、安否を確認します。その他の相談等に ついては、連絡先等を受け付け、休日明け・翌日に対応します。 ② ケース検討会議 受け付けた情報のみでは、担当課を判断することができない場合は、ケース検討会 議を開催します。初回のケース検討会議は、市民生活部生活安全課が主催し、子ども 家庭部と福祉保健部の各課、その他関係課から、各課職員1名が参加します。これに 備え、各課において、参加する担当職員複数名をあらかじめ定めておきます。また、 会議に出席する職員は、会議開催までに、ケースに関する保有情報を調べ、会議にお いて報告します。なお、要支援ケースの主担当となった課は、その後のケース検討会 議を主催し、会議をコーディネートします。 ③ 緊急対応会議 ケース検討会議において、緊急を要すると判断した場合は、会議を「緊急対応会議」 に切り換え、警察・消防等の関係機関に協力を求めるなど、安否確認を迅速かつ的確 に行います。緊急対応会議は、市民生活部生活安全課が主催し、主担当課、関係各課 の職員1名が参加します。 ④ 安否確認と危機管理対応 連絡先不明の通報・相談・安否確認専用ダイヤルの受付やケース検討会議、緊急対 応会議の各段階において、要支援ケースから安否確認ケースに移行した場合は、主担 当となる課が危機情報連絡表を起案し、生活安全課と連携し危機管理に対応します。 ⑤ 運用マニュアルの作成等 収集すべき情報やリスクアセスメント、対応の手順等を運用マニュアルとしてまと め、ケース検討会議に出席する担当職員をはじめとする関係各課の職員や通報先不明 の通報・相談・安否確認専用ダイヤルの受付業務受託者が共有します。 (2) 庁内における情報共有の促進 ケース検討会議や緊急対応会議に参加した職員は、情報の共有に努めるとともに、 速やかに管理職に報告します。 また、一定のルールの下、安否が疑われる市民や直ちに保護が必要な市民、福祉的 な支援を必要としている市民に関し、庁内における情報の共有を進めます。 34 市民、自治会、民生委員・児童委員、関係機関、事業者、etc 市民、自治会、民生・児童委員、関係機関、事業者、etc どこが担当か判らない? ☎☎ 連絡先不明の 総合的な見守り相談ダイヤル ☎ 通報・相談・安否確認専用ダイヤル ☎ Yes 担当課が判断できる? 【生活安全課】 子ども家庭支援センター No ケース検討会議 高齢福祉課 障害福祉課 生活福祉課 緊急対応会議 健康推進課 その他 2 地域の見守りを育む 市民を孤立させないためには、行政だけではなく、地域住民相互のゆるやかな見守り が必要不可欠です。 今後は、地域の福祉的な役割を担っている民生委員・児童委員や地域福祉コーディ ネーター、地域包括支援センター、子ども家庭支援センター、障害者虐待防止センター などを通じ、こうした地域の見守りを育み、広げていく必要があります。 (1) 民生委員・児童委員とのより一層の連携 民生委員・児童委員は、担当地域内の実情を日頃から把握するとともに、高齢者や 障害者、子育て中の保護者など、支援を必要とする市民の身近な相談相手として、行 政などの関係機関と連携して支援し、誰もが安心して暮らせる地域を目指して取り組 んでいます。 地域の見守り・支援の中心的存在である民生委員・児童委員は、支援を必要とする 高齢者などの増加や相談内容の多様化・複雑化などにより、一人ひとりの負担が大き くなっており、担い手の不足も大きな課題となっています。今後は、行政や立川市社 会福祉協議会、地域包括支援センターなどとのより一層の連携によって、民生委員・ 児童委員の負担を軽減するとともに、民生委員・児童委員を中心とした地域における 35 見守り支援を充実する必要があります。 ① 民生委員・児童委員への支援の充実 負担の大きな活動を委員一人が抱え込むことにならないよう、民生委員・児童委員 からの通報や相談を市が確実にキャッチし、担当課や関係機関・団体と連携・協力し て支援にあたるとともに、民生委員・児童委員の活動内容の周知・啓発を通じ、新た な人材の確保に努めます。 ② 民生委員・児童委員への情報提供 民生委員・児童委員がケースに応じた相談や支援を的確・迅速に行えるよう、制度 や仕組み等に関する情報を積極的に提供します。 (2) 地域包括支援センターによるネットワーク強化 市内に6か所設置されている地域包括支援センターは、地域の相談窓口として機能 しており、地域住民や民生委員・児童委員、自治会、事業者等とのネットワークを活 用し、高齢者を中心とした様々な課題の解決に取り組んでいます。 地域から寄せられる相談の中には、高齢者等の安否確認なども多く含まれることか ら、地域における「気づき」を受け止める拠点として、その機能をより一層強化して いきます。また、寄せられた情報を行政や関係機関へ的確につなぎ、課題の早期解決 に向け支援していきます。 (3) 子ども家庭支援センターによる「育み」 子ども家庭支援センターにおいては、児童虐待通告を含む様々な通報・相談が年間 約 300~400 件寄せられており、その通報・相談は、子どもを中心として、障害や高齢 者介護など、様々な課題を抱えた家庭に関するものです。また、子ども支援ネットワー ク(要保護児童対策地域協議会)における6つのブロック会議においては、保育園や幼 稚園、小中学校、児童館、主任児童委員など、地域の関係機関・団体が、様々な課題 を抱えた多くの家庭を見守っています。 今後は、ブロック会議に参加している地域の関係機関・団体とともに、保護や支援 を要するケースの早期発見と状況が変化した見守りケースへの的確な対応を目指し、 様々な課題やリスク要因についての認識を共有し、連携を強化します。また、子ども 未来センター移転後に開設する「子どもに関する総合相談受付」は、多くの様々な通 報・相談が想定されるため、庁内や関係機関との連携によって、より適切な支援につ なげるとともに、地域の見守りを育むため、通報・相談者に対し、支援につなげた結 果を可能な限り報告し、通報・相談者による今後の見守りを引き続きお願いします。 (4) 障害者虐待防止センターによる「育み」 本年 10 月に開設した障害者虐待防止センター(65 頁参照)においては、障害者虐待 に関する通報を受け付けるとともに、委託先の立川市社会福祉協議会と連携し、障害 者虐待の防止や虐待を受けた障害者の保護・自立支援、養護者の支援を行っています。 受け付けている通報・届出のケースには、障害者を抱えた家庭の様々な課題があり、 庁内や東京都、関係機関と連携した支援が求められています。 今後は、庁内や立川市社会福祉協議会、事業所、東京都、関係機関、支援者等との 36 より一層の連携により、様々な課題を抱えた家庭を支援につなげるとともに、周知・ 啓発に努め、地域の見守りを育んでいきます。 (5) 地域福祉コーディネーターによる「育み」 現在、2つの生活圏域に配置されている地域福祉コーディネーターは、立川市第2 次地域福祉計画において、地域住民の参加と協働による「福祉のまちづくりの場」を 支援する者として位置付けられ、5つの役割(①地域の課題を解決するための情報の収 集・提供・共有化、②地域の人材の発掘・育成、③地域の団体・専門機関・地域住民 等のネットワークの形成、④住民の支え合い活動への参加や交流の促進、⑤住民から の相談への対応)を担うことになっています。 また、配置されている地域福祉コーディネーターについては、 「地域住民の意識や主 体性を高めている」、 「地域包括支援センターをはじめ、自治会、民生委員・児童委員、 地域団体、NPO等の各団体間における協働・連携の機会が増加している」との評価 を得ています。 今後は、未配置の4つの生活圏域についても、人材の育成を進めながら、地域福祉 コーディネーターを計画的に配置し、支え合い活動への地域住民の参加や交流を促進 するとともに、そうしたグループの活動を通じた情報の収集・提供・共有化を進め、 市民の社会的な孤立の防止に取り組みます。 (6) 市民への意識啓発 市民を孤立させないためには、地域において、市民が互いに顔の見える関係を作り、 ゆるやかに見守り合うことが重要です。今後は、そのための具体的な方法などを周知 し、意識啓発に取り組むとともに、市内の様々な相談機関の紹介など、より一層の情 報提供に取り組みます。 3 新たな見守り網を紡ぐ 孤立死をはじめ、市民の社会的な孤立を防止するためには、行政による見守りや情報 の共有だけでは限界があることから、民間事業者等への協力要請などに取り組み、新た な見守り網を紡ぎ、広げます。 (1) 民間事業者等への協力要請 民間事業者等への協力要請については、本年7月に、JKK東京と協定を締結し、 安否確認に係る緊急対応について、連携・協力の強化に取り組んでいます。今後は、 電気・ガス・水道などのライフライン事業者、郵便・宅配事業者、新聞販売店、飲料 配達事業者、生協等についても、市民の見守り情報の提供に関する協力を要請し、情 報源の拡充に取り組みます。 (2) 医療機関への協力要請 安否確認が必要な市民の情報の提供について、医療機関に協力を要請します。 37 38 第4章 資 39 料 庁内検討組織及び検討経過 1 庁内検討組織 (1) 総合的な見守りシステム検討委員会 職名 職名 ◎ 副市長 子ども家庭部子ども育成課長 ○ 子ども家庭部長 子ども家庭部保育課長 ○ 福祉保健部長 福祉保健部福祉総務課長 市民生活部長 福祉保健部高齢福祉課長 福祉保健部保健医療担当部長 福祉保健部障害福祉課長 教育委員会事務局教育部長 福祉保健部介護保険課長 市民生活部生活安全課長 福祉保健部健康推進課長 子ども家庭部子育て推進課長 教育委員会事務局教育部学務課長 子ども家庭部子ども家庭支援センター長 ◎:委員長、○:副委員長 (2) 総合的な見守りシステム検討委員会ワーキンググループ 職名 職名 ◎ 子ども家庭部子育て推進課長 福祉保健部福祉総務課地域福祉推進係長 ○ 福祉保健部高齢福祉課長 福祉保健部高齢福祉課高齢者事業係長 子ども家庭部子ども家庭支援センター長 福祉保健部高齢福祉課在宅支援係長 市民生活部生活安全課生活安全係長 福祉保健部高齢福祉課在宅支援係 市民生活部生活安全課主査 福祉保健部障害福祉課障害福祉係長 子ども家庭部子育て推進課 福祉保健部障害福祉課主査 子育て推進係長 福祉保健部生活福祉課保護第三係長 子ども家庭部子育て推進課主査 福祉保健部介護保険課介護認定係長 子ども家庭部子ども家庭支援センター 子ども家庭支援センター係長 福祉保健部健康推進課母子保健係長 子ども家庭部子ども家庭支援センター 子ども家庭相談係長 教育委員会事務局教育部学務課 学務保健係長 子ども家庭部子ども育成課青少年係長 子ども家庭部保育課保育運営係長 40 福祉保健部健康推進課主査 ◎:座長、○:副座長 2 検討経過 総合的な見守りシステム検討委員会 開催日 総合的な見守りシステム検討委員会WG 検討事項 開催日 1 4月 20 日 検討組織体制、スケジュール - - 2 5月 16 日 体系、検討事項、行政視察 検討事項 - 1 5月 24 日 体系、検討事項、行政視察 - 5月 21 日~6月1日:市民の見守りシステムの現状と課題の調査 - 5月 28 日~29 日:福岡県北九州市視察 3 8月 20 日 4 10 月 29 日 視察報告、現状と課題の調査 2 8月 21 日 視察報告、現状と課題の調 結果、総合的な見守りシステ ム(案)、今後のスケジュール 査結果、総合的な見守りシ ステム(案)、今後のスケ ジュール 総合的な見守りシステム (案)、事務局体制、今後のス ケジュール 41 3 10 月 24 日 総合的な見守りシステム (案)、事務局体制、今後の スケジュール 行政視察報告 「北九州市いのちをつなぐネットワーク事業について」 1 経過 (1) 発端 平成 17 年から 19 年にかけて3件の孤立死が発生し、生活保護行政を含めた地域の見 守りシステムのあり方が大きく問われました(49~52 頁参照)。このことを重く受け止め た市長は、生活保護行政検証委員会を設置し、検証と提言を依頼しました。 (2) 生活保護行政検証委員会報告書(48~59 頁参照) 生活保護行政検証委員会報告書においては、「基盤となる「公助」の役割を明確にす るとともに、行政がコーディネーター役として、自助・共助との協働の仕組みを確立し ていく必要がある」とした上で、「行政と地域、市民をあげた合意と協力により、だれ もが安心して生き生きと暮らすことができる社会全体としてのセーフティーネットの 構築が望まれる」と提言しました。 (3) これまでの生活保護行政の総括と今後の方針(60~61 頁参照) ① いのちをつなぐネットワークの構築 ② 検証フォローアップ委員会の設置及び保健福祉オンブズパーソンの創設 ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ 就労自立支援・不正受給防止対策チームの設置 臨床心理士の各福祉事務所への配置 社会福祉専門職の採用など人事異動・人員配置の見直し ホームレスに対する保護の適切な運用 生活保護の相談段階と廃止における丁寧な対応 面接業務手引書及び生活保護事務手引書の改訂 福祉事務所各課との連携及び職員研修の充実 (4) 生活保護行政フォローアップ委員会報告書(62~64 頁参照) ① 生活保護に関する「入口」と「出口」の対応 『生活保護に関する「入口」と「出口」での対応は、概ね改善され、丁寧になった。 今後の課題は、処理の迅速さと自立支援の充実への取組みである。』 ② 組織体制と仕組み 『組織体制と仕組みについては、提言に沿って迅速かつ矢継ぎ早に対応しており、概 ね評価できる。』 ③ 孤独死防止などの地域ネットワーク 『孤独死防止などの地域におけるネットワークが機能するためには、地域の理解と連 携、協力が不可欠である。しかしながら、その取組みは、まだまだ緒に就いたばかり であり、今後の取組み如何である。』 42 2 事業の概要 (1) 体制 ① 保健福祉局地域支援部いのちをつなぐネットワーク推進課 ⅰ) 体制 課長2名、係長3名、主任2名、職員3名、計 10 名 ※課長1名は、東日本大震災避難者支援担当 ⅱ) 所管事項 ◎ いのちをつなぐネットワーク構築の推進 ○ 地域包括支援センターの統括に関すること ○ 区役所における地域福祉推進事業 ○ 災害時要援護者支援事業 ○ 北九州市福祉会館に関すること ○ 民生委員に関すること ○ 社会福祉協議会に関すること ○ ボランティア活動の促進 ○ 地域福祉振興基金に関すること ② 各区保健福祉課いのちをつなぐネットワーク係 ⅰ) 体制 係長2~4名、職員1~2名 ⅱ) 所管事項 ◎ いのちをつなぐネットワーク事業の推進 ○ ○ ○ ○ ○ ○ その他社会援護に関すること 保健福祉の相談、処遇支援及び調整 ○ 市立社会福祉施設に関すること 民生委員及び児童委員に関すること ○ 敬老祝金に関すること 住民の保健福祉活動の支援及び推進 保健・医療・福祉・地域連携推進協議会に関すること 社会福祉協議会やその他の社会福祉団体、社会福祉施設の指導及び育成 (2) 事業の概要 ○ ○ ○ ※ 行 :行政の取組み、 地 :地域の取組み、 民 :関係機関・民間の取組み ① 推進体制の整備(○ 行) 年度 内容 平成 20 年度 市役所に、いのちをつなぐネット 市役所の保健福祉局地域支援部に ワーク推進課の新設 ネットワークの統括として新設 区役所に、いのちをつなぐネット 7つの区役所に計 16 名の担当係 ワーク担当係長を配置 長を配置 平成 23 年度 区役所に、いのちをつなぐネット 区役所の保健福祉部門の統括とし ワーク係を新設 て、区役所内の活動・連携を強化 するために新設 43 ② 地域における事業の周知と声かけ・見守りの推進(○ 行) ⅰ) 事業の周知と相談への対応 各区の担当係長が、民生委員・児童委員協議会や社会福祉協議会など、地域の様々 な会議に出席し、見守りや支え合い いのちをつなぐネットワーク担当係長の研修 への理解を広めるとともに、地域の 担当係長は、地域の方々の生活課題の発見や解決のた 課題の聴き取りや解決のための話し めの話し合いをコーディネートする(コミュニティー 合いをコーディネートしています。 ソーシャルワーカー)役割を担うことになるため、配置 また、個別相談については、民生 後約2か月半にわたり、制度やサービスのガイダンスを 委員・児童委員や行政各部門からが はじめ、様々なコミュニケーションスキルに関する研修 多く、内容は、生活困窮から高齢者 や障害者の福祉サービス、単身高齢 者の安否確認など多岐にわたってい ます。 を実施しました。 その後も必要に応じ、フォローアップ研修を行うとと もに、担当係長会議を定例的に開催しています。 ▼会議への出席 ▼相談者別の件数 回数 民生委員・児童委員協議会 構成比 1,081 72.9% 自治会・町内会 33 2.2% 社会福祉協議会 269 18.1% その他(推進協、医師会ほか) 100 6.7% 1,483 100.0% 合計 ※数字は H22 年度実績 件数 本人 19 2.8% 家族・親族 33 4.9% 305 45.3% 33 4.9% 234 34.8% 49 5.2% 673 100.0% 民生委員・福祉協力員 近隣住民 行政 その他(民間ほか) 合計 ⅱ) ◎ ◎ ◎ 構成比 地域における声かけや見守り体制の支援 民生委員に対する 65 歳以上の高齢者の情報提供 校(地)区社会福祉協議会のふれあいネットワーク事業に対する支援 民生委員の負担軽減にむけた研究 ③ 地域包括支援センター等区役所各部署との一体的な活動(○ 行) 地域包括支援センターや保護課等、区役所保健福祉部門と情報を共有し、相談体制 の強化に努めている。特に、地域包括支援センターとは一体的に活動しており、いの ちをつなぐネットワーク事業の開始後、同センターの相談件数も増加しています。 ④ 他局との連携(○ 行) 保健福祉局以外の局が行っている見守りの取組みと連携しています。 名称 内容 担当局 ふれあい巡回事業 約 33,000 戸の市営住宅における 65 歳 建築都市局 以上の一人暮らし世帯を対象に、12 人 のふれあい巡回員が訪問し、安否の確 44 認や福祉・悩みの相談等を受け、助言 や関係機関の紹介を行っています。 水道料金滞納整理 水道料金滞納整理員が気付いた生活困 窮者に関する情報を提供しています。 水道局 いきいき安心訪問 女性消防団員が、65 歳以上の一人暮ら し世帯を訪問し、火災や事故防止につ いて指導するとともに、必要に応じ、 身の回りのお世話や福祉相談を行って います。 消防局 ⑤ 警察との連携(○ 行) 孤立死や虐待の予防・対応などの事例対応について、警察署と情報を交換し、連携 した活動に努めています。また、区によっては、支援困難事例検討会議に警察署も参 加しています。 ⑥ 保健・医療・福祉・地域連携推進協議会(○ 地) 各区に設置されている保健・医療・福祉・地域連携推進協議会は、地域の生活を支 える医療関係者、地域活動団体、福祉関係団体、行政などが参加し、各区の特性を活 かした健康づくりやイベント、勉強会などを通じて、関係者の連携の充実・強化に努 めています。 ⑦ 地域の支援・見守りのしくみ(○ 地) ⅰ) 民生委員・児童委員 一人暮らしの高齢者などの安否確認や支援活動、高齢者・子どもなどの保健福祉 サービスに関する相談や情報提供、関係行政機関への協力や市民と行政との橋渡しな ど、多岐にわたる活動を行っています。 民生・児童委員の定数 1,530 人→1,560 人(H24 年 10 月~) 相談・支援件数 100,893 件 連絡調整回数 104,579 回 訪問回数 326,198 回 一人当たり平均活動日数 約 150 日 ※数字は平成 22 年度実績 ⅱ) 校(地)区社会福祉協議会におけるふれあいネットワーク事業 区社会福祉協議会が募集(50~100 世帯に1人)している福祉協力員が、校(地)区ご とに、一人暮らしの高齢者など、支援を必要としている世帯を訪問し見守るとともに、 校(地)区におけるニーズ対応チームと協力して、日常生活を支援しています。 ⅲ) 友愛訪問事業 老人クラブ連合会の会員が、独居老人を訪問して安否を確認し、気付いたこと等を 民生委員に相談するなど、地域の見守りネットワークの一翼を担っています。また、 地域の交流の促進や居場所づくりにつながる活動を行っています。 ⅳ) 生活安全パトロール 住民に最も身近な組織として、高齢者の見守りやまちの安全確保のための生活安全 パトロールに取り組んでいます。 45 ⅴ) スクールヘルパー 学校に登録した市民(約 8,000 人)が、子どもの安全対策や悩み相談等の様々な支援 を行っています。 ⑧ いのちをつなぐネットワーク推進会議の開催(○ 民) 地域の関係団体や警察署・医療機関などの関係機関に加え、電気・ガス・郵便、新 聞販売店会、宅配事業者、生協、NPO、ボランティア団体が参加し、課題の共有と 今後の取組みに向けた意見交換を行っています。 ⑨ かかりつけ医・薬剤師(○ 民) 医療などの健康上の問題を気軽に相談でき、適切な情報・保健医療サービスを受け られる「かかりつけ医・薬剤師」は、相談に応じ、ケアマネージャーなどの介護事業 者や区役所と連携した活動も行っています。また、増加している認知症に対し、 「もの わすれ外来」(認知症の外来窓口)なども設け、早期発見・早期対応に取り組んでいま す。 ⑩ 介護・障害に関する事業者の取組み(○ 民) ヘルパーやケアマネージャーなどの介護・障害に関する事業者が、サービスの提供 に加え、対象者や家族の見守り・支援の役割を果たすため、親族や友人、民生委員、 近隣者、地域包括支援センターなどの区役所各部署と連絡を取り合っています。 ⑪ 民間・NPO・ボランティアによる取組み(○ 民) 日頃の業務や活動の中で、命に関わる心配な事態を見つけた場合、区役所の担当部 署やいのちをつなぐネットワーク係、消防署、警察署につなげるなど、市内全域にお いて、民間それぞれの特性に合った取組みが行われています。 3 課題 (1) 行政の取組みの課題 一人暮らしや認知症等の高齢者の増加などに伴って、サービス拒否や生活困窮、虐待、 買物支援、服薬管理など、ニーズが複雑・多様化しており、区役所における保健福祉部 門がより一層連携し、地域を支援することが求められています。 また、地域におけるセーフティーネットの網の目をより細かくしていくためには、地 域との連携に加え、官民を超えた情報の共有や連携に努め、「見つける」・「つなげる」 活動に、より多くの団体や組織が加わることが必要です。 さらに、新設される集合住宅への働きかけや地域ネットワークにおける個人情報の取 扱いなど、具体的な課題も明らかになってきました。 (2) 地域の取組みの課題 自治会未加入者が増加傾向にあるなど、地域住民のつながりが希薄になってきており、 46 支援を必要とする人の把握がますます困難になっています。また、地域によっては、 「見 つける」・「つなげる」・「見守る」を担う住民のなり手不足等があり、地域の見守り・支 援の中心的存在である民生委員・児童委員の負担が大きくなっています。 平成 23 年度に取りまとめた「民生委員の負担軽減に向けた研究会報告書」に基づく、 具体的な取組みが求められています。 (3) 関係機関・民間の取組みの課題 市内全域に広がる日頃の民間活動において、支援を必要とする人を「見つける」 ・ 「つ なげる」ためには、訪問員等の従業員が継続的に認識できるような取組み、どこにつな げるのかを分かりやすく提示するなど、従業員の活動を支援する取組みが必要です。 また、民間・NPO・ボランティアの取組みは、それぞれの業務・活動の特性に合わ せて工夫したものとなっているため、それぞれの工夫や取組みについて、お互いに情報 を提供するなど、相互理解の場を設定する必要があります。 47 北九州市生活保護行政検証委員会報告書の概要 平成 19 年 10 月中間報告(第1~第4) 平成 19 年 12 月最終報告(第5~第6) 第1 生活保護行政の概要 1 生活保護制度のあらまし -省略- 2 北九州市における生活保護行政の経緯と現状 (1) 生活保護行政の経緯 年代 時代背景 生活保護行政の状況 1963(昭和 38)年以前 合併前(旧5市) 1963(昭和 38)年度 全国平均又は低い保護率 合併、石炭産業の斜陽化 全国平均を大幅に上回る保護率 1967(昭和 42)年度 過去最高の保護率 67.2‰に 第1次適正化開始 ○ ケースワーカー増員 ○ 福祉事務所の増設 1974(昭和 49)年 保護率 38.5‰ オイルショック 1979(昭和 54)年 保護率 46‰台へ、暴力団などの 不正受給 第2次適正化開始 ○ 面接要員に専任係長を配置 1984(昭和 59)年 保護率 38.4‰ 現在 保護率 12~13‰台 (2) 被保護者数などの現状(2006(平成 18)年度) 被保護人員 12,711 人、被保護世帯数 10,214 世帯、保護率 12.8‰(全国平均 11.9‰) で、保護率は上昇傾向に転じ始めている。 世帯類型別の構成比は、高齢世帯 66.5%、母子世帯 1.9%、傷病・障害者世帯 27.5% で、高齢世帯が多く、約9割が高齢・病気・障害などの稼働能力がない人たち。 48 第2 事例の検証 1 門司区の事例 (1) 概要 2006(平成 18)年5月に、門司区の市営住宅で一人暮らしのAさん(56 歳)が自宅で亡 くなっているところを発見。検死の結果、死因は冠状動脈硬化に伴ううっ血性心不全で、 死後4か月と判明。 (2) 家族環境や健康状態など Aさんは離婚しており、2人の子ども(長男、次男)とも別居していた。身体障害者手 帳4級(下肢不自由)を持っており、2005(平成 17)年7月には、栄養失調による衰弱状態 となり、民生委員たちにより救急車が呼ばれ、病院に搬送された。同年9月には、電気・ ガス・水道が止められていた。 (3) 福祉事務所の対応の経過 北九州市では、区役所に福祉事務所が設置され、部長級の所長の下、保健福祉課、生 活支援課、保護課の3課が置かれ、生活保護関係は保護課が担当している。 月日 経過 2005(平成 17)年9月 衰弱状態のAさんが次男とともに来所し、本人は 保護課に入院を希望したが、次男の援助が期待で きるため、保護申請に至らず。 2005(平成 17)年 10 月~11 月 地区担当保健師計5回訪問。その後の見守りを民 生委員に依頼。 2005(平成 17)年 12 月 次男の援助が年内で途切れることになるため、A さんと次男が保護申請のために来所するも、長男 が援助できないか話し合うように求められ、申請 に至らず。 2006(平成 18)年5月 近所の住民により、自宅で遺体が発見される。 (4) 福祉事務所の対応の問題点 ① 申請前の相談と意思確認 Aさんは、9月と 12 月の2回にわたり、次男と福祉事務所を訪れ、9月は本人の、 12 月は本人と次男の生活保護の申請意思が示されたにもかかわらず、福祉事務所は、 Aさんがライフラインを止められていることや健康状態を把握していたにもかかわら ず、申請ではなく「相談」扱いにした。 ② 扶養義務履行の可能性を重視 9月の来所時には次男の、12 月の時には長男の扶養義務履行の可能性を重視し、生 活保護申請に至らしめなかった。 ③ 健康状態の把握と危機回避のための措置 10 月~11 月に訪問指導を担当した福祉事務所の地区担当保健師は、「栄養状態が悪 いので、どのような危険な状態になってもおかしくなかった」と述べており、訪問指 導を終結し民生委員に引き継いだ 12 月には、「普通に食事ができず健康を維持できな 49 い状況で、保健師の仕事の限界を超えている」という切迫した報告を、生活支援課の 上司に行っている。福祉事務所は関係課との協議を経ながらも、結果的にAさんを放 置してしまった。 ④ 関係機関の連携と協力 9月の相談の時は、福祉事務所が中心となり、民生委員や次男とも連絡を取り合い、 地区担当保健師の訪問指導や見守りが行われた。 12 月の相談以降、生活支援課は、次男の援助が年内で途切れることや栄養状態に不 安があることを民生委員から聞いていたが、保護課に直接相談するように助言しただ けであり、保護課も、長男の援助の可能性について話し合いを求めただけで、その後 の話し合いの結果を確認することもせず、相互に連携した動きが見られなかった。 また、民生委員は、2006(平成 18)年1月以降、体調を崩してAさんを訪問すること ができなかった。Aさんは、普段から家に閉じこもりがちで、外出することも少なく、 地域住民から孤立していたと考えられる。 2 八幡東区の事例 (1) 概要 2005(平成 17)年1月、介護保険のケアマネージャーが、八幡東区で一人暮らしのBさ ん(68 歳)宅で、玄関で死亡しているBさんを発見。検死の結果、死因は糖尿病による虚 血性心疾患で、死後数日と推定。 (2) 家族環境や健康状態など Bさんは離婚しており、3人の子ども(長男、次男、長女)とも別居していた。過去に、 糖尿病で入院歴があり、左目の視力はなく、右目の視力も 0.2 と訴えていたが、2004(平 成 16)年 12 月の主治医の説明によると、緊急入院して治療を要する状況ではなかった。 なお、2004(平成 16)年5月から、電気と水道は止められていた。 (3) 福祉事務所の対応の経過 月日 経過 1999(平成 11)年 11 月 八幡西区で生活保護を受給。 2003(平成 15)年1月 年金受給と養護老人ホーム入所により、生活保護を廃止。 2003(平成 15)年 11 月 トラブルを起こし、養護老人ホームを退所。転居費用とし て、年金を担保に 1,300 千円余を借金する。 2004(平成 16)年3月 借金を使い果たし、福祉事務所に保護申請したが、申請指 導のために訪れたケースワーカー等を刃物で脅かし現行犯 逮捕され、調査不能により申請が却下される。 2004(平成 16)年5月 生活困窮を理由に再度申請。可否調査中に生活資金の貸付 を2回受けたが、ケースワーカーの生活指導や助言に従わ ず、6月に申請を取り下げ。 2004(平成 16)年 10 月 本人が来所し、養護老人ホームに再入所を希望、それまで の生活費に困窮との相談があったが、6月の申請取り下げ 時と状況の変化がなく、急迫状態と認めず、子どもへの援 助依頼を助言して終了。 50 2004(平成 16)年 11 月 福祉事務所に生活困窮の訴えがあったが、子どもへの援助 依頼と養護老人ホーム入所を助言し、申請に至らず。 2004(平成 16)年 12 月 本人が来所し、子どもへの援助要請がうまくいかないとの 訴えがあったが、連絡していない長女に連絡するように指 導した。 2005(平成 17)年1月 介護保険のケアマネージャーにより、自宅玄関で遺体が発 見される (4) 福祉事務所の対応の検証 ① 申請前の相談における扶養義務履行の依頼 福祉事務所は、Bさんが生活保護の受給歴があり、既に子どもたちが扶養できない ことを確認している上で、2004(平成 16)年 10 月~12 月の相談の際にも、子どもへの 援助依頼を助言し、申請書を交付しなかった。特に、12 月の際には、普段から連絡が とれない長女への援助依頼を助言している。 ② 健康状態の把握 2004(平成 16)年4月と5月の民生委員の意見書において、Bさんは糖尿病のための インスリン投与を受けていることが記載されており、特に5月の意見書には、薬を購 入できないため、いつ倒れてもおかしくない状態であると記載されている。また、福 祉事務所は、2004(平成 16)年 12 月に、Bさんの主治医から、糖尿病の教育的入院の必 要性は認められるが、緊急入院で治療を要する状態ではないとの情報は得ていたが、 Bさんの治療方法や投薬状況を詳細に確認することはしていなかった。 ③ 特異な経緯・性癖への対応 Bさんは、暴力的な言動や性癖が目立っていたため、そのことに対し、反発する職 員もいた。しかし、生活保護法は、無差別平等の原則があり、相談者の過去の言動や 性癖は保護を拒む理由とならない。福祉事務所では、2004(平成 16)年5月の保護申請 受付後から、6月の取り下げまでに、7日も家庭を訪問し生活指導したり、同年 10 月 には、ライフラインが停止している状況の中で、子どもへの援助要請を指導したり、 過剰とも受け取れるような指導・助言を行っている。 福祉事務所は、Bさんの特異な言動や性癖を熟知しており、ソーシャルワーク的な 関係各課の連携のもとに、生活・保健指導を継続すべきであった。 3 小倉北区の事例 (1) 概要 2007(平成 19)年7月に、小倉北区で一人暮らしのCさん(52 歳)が自宅で亡くなって いるところを発見。死因は不明で、死後1か月程度と推定。 (2) 家族環境や健康状態など Cさんは独身で、姉と妹がいたが、姉は別世帯で、妹は行方不明となっている。Cさ んの死亡により、葬祭扶助が適用されている。また、Cさんは、アルコール性肝障害と 糖尿病、高血圧の持病があったが、主治医の指導により飲酒を控えることにより、これ らの病気は回復しつつあった。 51 (3) 福祉事務所の対応の経過 月日 対応 2006(平成 18)年 10 月 持病により、タクシー運転手を辞める。 2006(平成 18)年 12 月 姉とともに来所、生活保護を申請し、保護開始となる。 2007(平成 19)年1月 本人の検診と嘱託医との協議により、 「軽就労可」と判定さ れたことから、仕事を探して自立するよう指導。 2007(平成 19)年2月 主治医の意見から、 「普通就労可」と判断し、より一層の求 職活動を行うよう指導。 2007(平成 19)年3月 訪問不在や電話に出ないことが数日続く。別件で来庁した Cさんに一層熱心に求職活動を行うように指導する一方、 2月に途切れている通院を指導するとともに、Cさんの様 子から、精神科を受診するよう勧めた。 2007(平成 19)年4月 保護費受領のため来庁した際に、早期自立に向け就労を指 導したところ、生活保護の辞退届を提出した。 2007(平成 19)年7月 自宅で遺体が発見される。 (4) 福祉事務所の対応について ① 辞退意思と保護廃止後の生活見通しに関する確認 福祉事務所は、高齢者や病人の受給者の場合には、辞退の意思が示されても、真意 であるか、本当に自立が可能であるかを確認している。しかし、Cさんの場合は、主 治医とのコミュニケーション不足から、普通就労可と判断し、うつ状態を疑いつつも、 第2種自動車運転免許を取得していることから、辞退の申し出を無条件に受け入れて しまった。また、辞退の申し出の際には、就職先や勤務先、収入など、自立して生活 する上での最低条件の見通しさえ、本人に尋ねていない。 ② 精神保健分野からの支援と「生きる」ことへの支援 遺体発見後、自宅からCさんの日記が発見され、その中には、2007(平成 19)年2月 から6月までの日付で、自殺願望の記述があり、精神的に極めて不安定で、「生きる」 ことへの意欲の欠如がうかがえる。面接員やケースワーカーなどの関係職員は、心身 ともに疲れた人間をみる洞察力と感受性を身に着けるとともに、精神保健の専門知識 を持つ要員を確保し、関係職員をサポートする体制が必要であった。 ③ 病状の調査 「病状調査票」は、ケースワーカーが、要保護者の病状を主治医から聞き取って作 成することになっている。しかし、2007(平成 19)年2月の「病状調査票」には、普通 就労可となっているが、主治医の所見は「軽就労可」となっており、食い違っている。 作成された「病状調査票」を主治医が確認する仕組みや福祉事務所の嘱託医によるセ カンドオピニオンの仕組みが必要であった。 ④ 就職指導・自立支援の方法 Cさんのケースは、福祉事務所により「19 年度自立重点ケース」と位置付けられて いたため、2007(平成 19)年1月以降、求職活動を行うよう繰り返し指導が行われてい た。Cさんの日記では、そのことに関する反感をうかがわせる記述があった。ハロー ワーク等への同行訪問や就労支援プログラムなどのきめ細かい支援が必要であった。 52 第3 生活保護行政全般についての考察 1 生活保護行政における問題点 ◎現況(2007(平成 19)年5月) 保護世帯数 保護人員 保護率 生活保護費 1人当たり保護費 ケースワーカー数 1人当たり担当ケース数 10,387 世帯 12,932 人 13.05‰ (以上、2007(平成 19)年4月現在) 28,400,000 千円 (2006(平成 18)年度決算見込み) 2,200 千円 (うち医療費 1,320 千円(60%)) 142 人 (面接員 21 人、地区担当員 121 人) (ケースワーカー1人当たり 200,000 千円) 73 世帯 (厚生労働省基準:80 世帯) 1979(昭和 54)年の第2次適正化に際して、福祉事務所運営方針の策定や係長級の面接 員制度を導入し、不正受給の摘発等に取り組み、市長自らが現場職員を激励してきた。 現在は、これらの制度が、保護件数や保護率を抑え込む「数値目標」の策定や申請前 の相談で受給者を厳しく絞り込む「水際作戦」の基礎になっていると言われている。 2 福祉事務所運営方針と「数値目標」問題 北九州市の福祉事務所では、毎年度の運営方針において、生活保護開始・廃止の実績 と見込みを掲げ、早期自立に向けた指導の徹底を盛り込んでいる。さらに、かつては、開 始・廃止差による目標管理が局内で行われていた記録も報告されている。この流れの中で、 ノルマ化が進み、いわゆる「闇の北九州方式」を生んでいるのではないかと、検証委は指 摘している。 ちなみに、市長は、2007(平成 19)年9月の市議会本会議において、福祉事務所運営方 針から、生活保護開始・廃止の実績と見込みを削除すると表明した。 3 面接業務について 福祉事務所では、面接業務の標準的内容を示すため、 「面接業務手引書」が作成されて いる。同手引書では、導入に始まり、ニーズの確認、保護要件等の説明、保護要件の検討、 申請意思の確認、申請手続の指導の順に説明されている。 検証事例でも指摘しているとおり、明らかに保護要件に該当しないケースは別として、 申請の意思表示があった人には申請書を渡すなどを原則とするよう、検証委は提言してい る。 また、面接員については、すべて、ケースワーカー経験者を配置すべきこと、ケース ワーカーについては、「社会福祉職」などの専門職の配置や異動システムの見直し、女性 職員の増配置を提言している。 53 4 保健分野や民生委員との連携の強化を 面接員やケースワーカーなどの福祉分野の職員と、保健師や精神保健の専門家などの 保健分野の職員との相互理解と連携を進めるため、専門的な見識を有する職員の育成と相 互理解のための研修の充実を提言している。 特に、福祉事務所に対しては、生活困窮者の現状を把握する上で、民生委員との連携 を強化するよう求めている。 また、民生委員の活動がより広く円滑に行えるよう、その活動の重要性や取組みを市 民に周知し、理解していただくとともに、民生委員の活動をサポートできる体制づくりを 提言している。 なお、民生委員を含む地域と福祉事務所の協力体制のあり方については、プライバシー 保護の観点も含め、市民全体で議論を深めるよう提言している。 第4 提言~信頼と安心の生活保護行政に向けて~ 1 「入口」を不当に狭めてはならない 生活保護を受けたく福祉事務所を訪れた人には、申請書を交付すること。申請書交付 前に、扶養義務者などについて詳しく説明を求めたりすることは行き過ぎである。特に、 ライフラインが停止しているような場合には、早急な対応が望まれる。 2 「出口」では本当に本人が自立できるかを注意深く考察する 自立するとして辞退届が出された場合は、「辞退」の意思が本当に本人の真意である か、注意深く考察すること。また、就労先や勤務条件、収入などは、必ず確認すること。 3 面接業務は相談者の身になって行う 面接業務手引書において、保護要件を検討した後に申請意思を確認するなどの手順は、 保護要件がなければ申請できないといった誤解を生じさせるため、早急な検討と改善を。 4 総合的な視点からのソーシャルワークを 福祉事務所を訪れる人は、貧困のほかに、さまざまな課題を重層的に抱えている場合 が多い。福祉事務所の各課は、連携し、それぞれの知識を相互に活用し、総合的な視点 からのソーシャルワークを実現すること。 5 生活や健康に不安を抱えるケースのフォローアップを 生活や健康に不安を抱えるケースについては、福祉事務所が一定の日時をおいて経過 を確認するなど、民生委員や福祉協力員など地域の見守りの仕組みを活用したフォロー 54 アップを行うこと。 6 専門知識と豊かな経験を持つ職員の確保 「社会福祉職」などの専門職の採用や人事異動のあり方の見直しを行い、面接員には ケースワーカー経験者を配置するとともに、女性のケースワーカーを増員すること。 7 精神面で課題を抱えるケースへの対応 心的要因で働く意欲や生きる意思をなくすケースの増加に対応するため、精神保健福 祉センターとの連携に努めるとともに、心理療法士の活用ができるよう、体制づくりに 取り組むこと。 8 研修内容の充実と研修対象の拡大 福祉事務所において、接遇やカウンセリング技法など、職員の研修内容を充実させる とともに、ケースワーカー以外の職種や民生委員などの関係する民間人も対象とした研 修の実施に努めること。 第5 孤独死対策についての考察 ◎ 行政の対応や地域のネットワークに多くの課題 3件の事例については、いずれも生活保護に関連する孤独死であったが、特に門司区 の事例は、遺体が死後4か月に発見されており、行政の対応や地域のネットワークなど 多くの課題が浮かび上がった。 ◎ 高齢福祉施策では対応できない 65 歳未満の孤独死 また、門司区や小倉北区の事例では、50 歳代で孤独死しており、65 歳以上を対象と する従来の高齢福祉施策だけでは対応しきれないことにも注意する必要がある。 ◎ 生活保護行政だけでは対応できない孤独死 一方、2007(平成 19)年4月から半年間における生活保護受給者の孤独死を調査したと ころ、24 件発生していることが判明し、生活保護行政だけでは、孤独死を防止すること はできないことがわかった。 ◎ 一人暮らし・経済的困窮でなくても孤立死に さらに、2006(平成 18)年に発生した母娘の孤立死や夫婦の孤立死は、一人暮らしでな くても、経済的な困窮状態になくても、孤立死に至る場合があることを示している。 1 国における孤独死対策の現状 ◎厚生労働省「孤立死防止推進事業(孤立死ゼロ・プロジェクト)」 2007(平成 19)年度~予算額 170,000 千円 ① 「孤独死ゼロ・プロジェクト推進会議」の設置と一人暮らしでも安心して暮らせる コミュニティづくりに向けた行動計画の策定 55 ② 都道府県・政令市における「孤立死ゼロ・モデル事業」の実施 2 北九州市における孤独死対策の現状 (1) 行政(市)における取り組み状況 ① 民生委員 民生委員は、都道府県知事(政令指定都市においては市長)の推薦により、厚生労働 大臣が任命する非常勤の特別職の地方公務員である。地域住民の生活状況を把握し、 援助を必要とする者への相談や助言、その他の援助を行っている。行政と地域との接 点という重要な役割を担っており、北九州市では概ね定員を充足しており、2006(平成 18)年度末現在で 1,438 名が活動している。 ② ふれあい巡回事業(建築都市局) 約 33,000 戸の市営住宅における 65 歳以上の一人暮らし世帯を対象に、12 人のふれ あい巡回員が訪問し、安否の確認や福祉・悩みの相談等を受け、助言や関係機関の紹 介を行っている。 2006(平成 18)年度の対象者は 6,304 人、同年度延べ訪問回数は 16,441 回。 ③ いきいき安心訪問(消防局) 152 人の女性消防団員が、65 歳以上の一人暮らし世帯を訪問し、火災や事故防止に ついて指導するとともに、必要に応じ、身の回りのお世話や福祉相談を行っている。 年間約 2,600 人を訪問。 ④ 行政情報の集約 ふれあい巡回やいきいき安心訪問などにより、生命の危険や健康上の重大な問題等 を確認した場合の情報を整理・共有するため、区役所の地域支援課が集約する体制を 整備した。2006(平成 18)年度下半期で 11 件、2007(平成 19)年度上半期で 14 件の情報 提供があった。 ⑤ 孤独死を生まない地域づくり 国が創設した孤立死ゼロ・プロジェクトを受け、2007(平成 19)年度の新規事業とし て、孤独死を生まない地域づくり推進事業に取り組んでいる。事業内容は、◎ すべて の民生委員を対象とした孤独死に関するアンケート調査、◎ 孤独死に関するシンポジ ウムの開催による市民意識の高揚、◎ 孤独死対策に関する市民周知のための啓発事業。 (2) 地域(民間)における見守りの状況 ① ふれあいネットワーク事業 校(地)区社会福祉協議会が実施主体となって、高齢者や障害者等の世帯を地域で見 守り・支えあう事業で、3つの「しくみ」で成り立っている。 ※北九州市社会福祉協議会は、7つの区社会福祉協議会と 154 の校(地)区社会福祉 協議会で組織されている。 ⅰ) 見守りのしくみ 概ね 50~100 世帯に1人の福祉協力員を配置し、高齢者世帯等を見守る活動を行っ ている。 ※2011(平成 23)年度末現在の福祉協力員は 6,631 人(女 4,372 人・男 2,259 人)、 対象世帯は 106,189 世帯(福祉協力員1人当たり 16 世帯) 56 ⅱ) 助け合いのしくみ ニーズ対応チームを地域に作り、福祉協力員と協力して、日常生活を支援する活動 を行っている。 ※2011(平成 23)年度末現在のニーズ対応チーム編成地区は 137 地区で、7,982 人が 参加している。年間活動回数は 629,993 回(話し相手 404,266 回、生活情報の提供 105,445 回、ごみ出し 74,726 回、買い物支援 22,920 回、掃除・洗濯 5,822 回、 薬取り 4,496 回、その他 12,318 回) ⅲ) 話し合いのしくみ 校(地)区において、連絡調整会議を1~2か月に1回開催し、社会福祉協議会職員 や地域住民、民生委員、保健師、社会福祉施設職員などが参加して、問題解決の方法 や役割分担などについて話し合っている。 北九州市社会福祉協議会では、2006(平成 18)年5月の門司区の孤独死を契機として、 緊急点検を行い、ふれあいネットワークの対象で 54 世帯、対象外で 24 世帯が「地域 との関わりが薄く気になる世帯」との報告があり、区役所や民生委員などに対応を依 頼した。 また、67 校(地)区で、孤独死の再発防止に向けた話し合いが行われ、◎ 集合住宅 では、地域とのつながりが薄い世帯が多く、状況の把握が難しい、◎情報提供を拒否 するケースが増えており、見守りに必要な情報の共有が難しくなっている、◎ 活動者 が確保できない地域もあり、地元の企業や従事者が支援に参加する方法も模索すべき、 などの意見が出され、北九州市社会福祉協議会は、新たな「絆」づくりを目指した地 域福祉活動の充実に取り組んでいる。 ② 友愛訪問事業など 各校区老人クラブ連合会が、独居老人世帯を中心に訪問し、安否を確認している。 2006(平成 18)年度末現在で、3,427 人の高齢者が活動に参加している。また、ヤクル トなどの飲料販売の際に把握した高齢者や子どもなどの情報を区役所に通報する「街 の安全・安心サポート隊」は、約 20,000 世帯を対象に、約 300 人の販売員が活動して いる。 3 孤独死増加の社会的要因 (1) 孤独死増加の社会的要因 ① 少子高齢化の進展により、一人暮らしや高齢者だけの世帯の増加 ② 失業や離婚などの増加により、家庭の絆の崩壊 ③ 都市化などのより、町内会などの地域コミュニティ力の低下 (2) 孤独死対策の現状と問題点 ① 見守りのための人材確保と制度疲労 地域の見守りとしては、ふれあいネットワーク事業が一定の成果をあげているが、 福祉協力員の確保が困難な校(地)区もあり、自治会に入っていない公団(UR)住宅な どが問題になっている。門司区の事例では、当該の町内会長が福祉協力員の制度を知 らないなど、高齢化などにより、制度疲労をおこしている地域もあることに注意する 57 必要がある。 ② 過剰なプライバシー意識と個人情報保護 市民の過剰なプライバシー意識が、地域の見守り活動を消極的にさせる一つの要因 になっている。また、行政が把握した個人情報は、非公開が原則であり、民間に提供 することができない。守秘義務が課せられている非常勤特別職である民生委員は、社 会福祉協議会に情報提供することはできない。しかし、地域コミュニティ力の低下を 補う方策として、地域活動にあたる団体や個人で情報を共有化することも必要である。 4 孤独死防止のために (1) 社会情勢と自助・共助・公助の役割 かつての社会において可能であった、子育てや高齢者介護などを家族が支える「自 助)」は、核家族化などの世帯構成の変化により困難となり、地域住民相互の関わり合 いの希薄化により、地域の活動による「共助」にも多くを期待することができなくなっ ている。 今回の事例の検証を通じ、既存の地域住民ネットワークには限界があることが示され た。そこで、まず基盤となる「公助」の役割を明確にするとともに、行政がコーディネー ター役として、自助・共助との協働の仕組みを確立していく必要がある。 (2) 孤独死防止に向けた提言 ① 孤独死対策に関する全庁的な連絡調整組織の構築 ② 地域活動において核となる要員の確保 ③ 市民団体やNPO、地域代表などの関係者からなる独自の連絡会議の開設 ⅰ) 孤立しがちな生活困窮者を地域福祉ネットワークにつなぐシステムの検討 ⅱ) プライバシーと見守りの関係に関する検討 ⅲ) 地域や市民との間での役割分担や費用負担に関するコンセンサス (3) 地域福祉ネットワークの充実に向けて 社会的な孤立から生じる絶望感をなくし、自立した生活を取り戻すためには、「プラ イバシーの壁」を超え、地域社会における人と人とのふれあいや人としての生きがいづ くりが必要である。 そのためにも、地域福祉ネットワークの充実に向けて、生涯学習などの生きがいづく りのネットワークや災害避難時の連絡網、医療ネットワークなど、地域の既存ネット ワークの活用も検討する必要がある。 以上のことに配慮し、行政と地域、市民をあげた合意と協力により、だれもが安心し て生き生きと暮らすことができる社会全体としてのセーフティーネットの構築が望ま れる。 第6 今後の保健福祉行政に向けて すべての市民個人の尊厳が守られ、基本的人権が尊重される地域社会を築いていくた めには、生存権を保証する制度としての生活保護制度の精神とその役割について、行政と 市民の理解が必要である。 58 ここまで検証し、提言してきた事項の実施に際しては、一般市民を含めて広く議論を 深め、理解を得る必要がある。また、今後のフォローアップや苦情処理の仕組みを検討す るに際しても、市民に対する情報公開や透明性の確保が必要である。 1 生活保護制度に関するフォローアップ 今回の検証により提言した項目の実施状況を一般市民からも監視できるよう、検証 フォローアップ委員会による確認と公表を行うよう提言する。 2 苦情処理(オンブズパーソン)制度 保健福祉サービスの利用者は、一般的に発言力が弱く、自らの権利を十分に行使でき ない場合が多いため、オンブズパーソン制度は大きな役割を果たすものと期待される。 59 これまでの生活保護行政の総括と今後の方針 平 成 19 年 12 月 25 日 北九州市長 北 橋 健 治 今後の方針 これまでの総括と検証委員会の最終報告書、厚生労働省監査の結果通知を踏まえ、以 下のような方針を策定し、今後の保健福祉行政の指針とする。 ① いのちをつなぐネットワークの構築 市民が家族や地域から孤立し、様々な制度やサービスを受けられない状態で死に至る ことがないよう、“全てのいのちを大切にする”という強い信念の下、行政として地域 を支援する新しい仕組み「いのちをつなぐネットワーク」の構築を平成 20 年度から進 める。 ② 検証フォローアップ委員会の設置及び保健福祉オンブズパーソンの創設 最終報告書に盛り込まれた提言が着実に実行されているか確認し、公表する「(仮称) 北九州市生活保護行政検証フォローアップ委員会」を設置するとともに、保健福祉行政 全般にわたって市民の権利を擁護する「(仮称)北九州市保健福祉オンブズパーソン」の 創設を平成 20 年度から進める。 ③ 就労自立支援・不正受給防止対策チームの設置 「(仮称)就労自立支援・不正受給防止対策チーム」の設置を平成 20 年度から進める。 ④ 臨床心理士の各福祉事務所への配置 精神保健福祉センターと連携し、要保護者への精神的なサポートを担当する「臨床心 理士」の各福祉事務所への配置を平成 20 年度から進める。 ⑤ 社会福祉専門職の採用など人事異動・人員配置の見直し 「(仮称)社会福祉専門職」の採用やこれに関連した人事異動の見直し、面接主査への ケースワーカー経験者の配置、女性ケースワーカーの増員を平成 20 年度から進めると ともに、今後見込まれる生活保護世帯の増加に対しては、適正な人員を配置する。 ⑥ ホームレスに対する保護の適切な運用 ホームレスに対する保護の運用について、平成 15 年7月 31 日付の厚生労働省通知に 60 基づき適切な運用を行う。なお、運用上の問題点については厚生労働省と十分に協議す る。 ⑦ 生活保護の相談段階と廃止における丁寧な対応 生活保護の相談段階と廃止での丁寧な対応については、すでに平成 19 年 10 月 18 日 に通知したが、今後とも、さらなる生活保護制度の適切な運用に努める。 ⑧ 面接業務手引書及び生活保護事務手引書の改訂 「面接業務手引書」及び「生活保護事務手引書」を平成 19 年度内に改訂する。 ⑨ 福祉事務所各課との連携及び職員研修の充実 福祉事務所各課との連携を図り、職員の生活保護制度の研修内容を充実することで、 ソーシャルワークを実効あるものとする。 なお、これらのうち、予算を伴うものについては、今後、議会にもお諮りしたい。 61 生活保護行政フォローアップ委員会報告書 平成 21 年7月 30 日 提言事項の実施状況 1 生活保護に関する「入口」と「出口」の対応 生活保護に関する「入口」と「出口」での対応は、概ね改善され、丁寧になった。今 後の課題は、処理の迅速さと自立支援の充実への取組みである。 対象となる提言 【提言1】 「入口」では、生活保護を受けたいと福祉事務所を訪れた人には、 申請書を交付する。 【提言2】 「出口」では、本当に本人が自立できるか注意深く考察する。ま た、就労先、勤務条件、収入の金額などの確認は不可欠である。 【提言3】面接業務は相談者の身になって行う。 「面接業務手引書」の改善 を求める。 (1) 「入口」と「出口」を改善 平成 19 年3月から、相談室に申請用紙や手続・制度のしおりが常備され、19 年 10 月に保健福祉局長名で、生活保護の相談段階における対応の改善について、各福祉事 務所に通知した。 これにより、 「入口」では、来所者の申請意思を確認した上で申請書を交付すること になり、 「出口」では、就労条件などを慎重に確認し、辞退が本人の意思であるか丁寧 に確かめることになった。 改善後の状況は次のとおり。 18 年度 20 年度 増減 申請件数 2,035 2,889 854 ( 42%) 開始件数 1,806 2,512 706 ( 39%) 廃止件数 1,573 1,158 △415 (△26%) 被保護世帯数 10,214 12,006 1,792 ( 18%) 被保護人数 12,711 15,336 2,625 ( 21%) *被保護世帯・人数は各年度の平均 19 年度 生活保護費予算 20 年度 21 年度 約 295 億円 約 323 億円 約 356 億円 生活保護の「入口」と「出口」においては、申請者の権利が尊重され、丁寧に対応 することは当然であるが、審査等が厳正さを欠き、生活保護受給の決定が緩く・甘く なってはならない。 (2) 自立支援の充実 平成 20 年度に、7つの自立支援プログラムを作成し、21 年度には、本庁と各福祉 62 事務所の実施方針の重点項目に「自立支援」を掲げた。自立支援プログラムにおいて は、件数は少ないながら、徐々に成果が出始めている。 (3) ホームレスに対する保護の運用 平成 20 年度から、15 年7月の厚生労働省通知に基づき、路上からの申請を受ける よう徹底した。その結果、20 年度の申請件数は 207 件となり、その内 40 歳代以下の申 請件数は 63 件となっており、今後の就労支援の取組みに成果が出るよう期待する。 2 組織体制と仕組み 組織体制と仕組みについては、提言に沿って迅速かつ矢継ぎ早に対応しており、概ね 評価できる。 対象となる提言 【提言6】 「社会福祉職」のような専門職員の採用や人事異動のあり方を見 直す。面接員へのケースワーカー経験者の配置と女性ケース ワーカーの増員を求める。 【提言7】精神保健福祉センターとの連携に努め、心理療法士の活用がで きる体制づくりに取り組む。 【提言8】職員研修の充実と保健師や民生委員へも研修の枠を広げる。 【提言 10】「フォローアップ委員会」と「苦情処理制度」の創設が望まれ る。 (1) 組織体制の充実 平成 21 年度現在のケースワーカーは 149 名で、18 年度の 121 名から 28 名増員して いる。1名当たりのケース数は 81.3 世帯で、概ね基準のとおりとなっている。「社会 福祉職」は3名採用し、2名を福祉事務所に配属し、女性ケースワーカーについては、 21 年度には 25 名となり、その割合は 16.8%に上昇した。また、医療・介護扶助適正 化担当係長を本庁に新設した。 さらに、精神保健については、臨床心理士7名を各福祉事務所に配置し、被保護者 の精神面でのファローが進み、精神保健福祉センターとの連携も前進したといえる。 (2) 職員等の研修の拡充 接遇や自立支援プログラムの研修など、職員の研修を充実させるとともに、保健師 や民生委員を研修対象として拡大し実施している。 (3) 北九州市保健福祉オンブズパーソン制度の創設 苦情処理制度については、平成 20 年 11 月に、北九州市保健福祉オンブズパーソン 制度を創設した。20 年度は 26 件の相談が寄せられ、十分機能している。 3 孤独死防止などの地域ネットワーク 孤独死防止などの地域におけるネットワークが機能するためには、地域の理解と連携、 協力が不可欠である。しかしながら、その取組みは、まだまだ緒に就いたばかりであり、 63 今後の取組み如何である。 対象となる提言 【提言9】孤独死防止対策に早急に取り組む。行政と地域、市民をあげた 合意と協力による新しいセーフティーネットの構築が望まれ る。 【提言4】福祉事務所各課の連携を強化し、ソーシャルワークを実効ある ものとする。 【提言5】相談者のその後について、福祉事務所がフォローアップする。 その際、見守りの仕組みが機能するよう民生委員や福祉協力員 との関係を緊密にする。 (1) いのちをつなぐネットワーク担当係長 16 名の配置 平成 20 年度、各福祉事務所に、いのちをつなぐネットワーク担当係長 16 名を配置 し、既存のネットワークの再構築と個別の見守り活動のコーディネーター役として、 1,634 件の連絡調整や解決に関与した。また、「いのちをつなぐネットワーク」をテー マとしたタウンミーティングを全市1回、各区1回ずつの計8回開催した。 (2) 民生委員との連携 平成 20 年度に、民生委員への情報提供として、65 歳以上の高齢者名簿を配布した。 しかし、 「民生委員に対する情報提供が少なすぎる」、 「民生委員のなり手がいない」、 「戸 を開けない高齢者もいる」、「情報が把握できない」などの現実的な悩みも聞かれた。 地域との関わりでは、民生委員の役割が大きいことから、改めて、民生委員との連携 強化を要望したい。 (3) 新たな孤独死事例の発生 委員会審議の過程で、門司区で発生した新たな孤独死が報道された。ライフライン の状況を確認し、相談者の申請意思も確認するなど、提言に沿って対応したとの市の 説明を受けた。 64 立川市障害者虐待防止センターについて ~ 養護者による障害者虐待への対応 ~ 【概要】 養護者による虐待を受けたと思われる障害者を発見した者からの通報 養護者による虐待を受けた障害者からの届出 (1)市町村等の障害者虐待対応窓口(市町村障害者虐待防止センター) 受付(受付記録の作成) (2)対応方針の協議《コアメンバー》 (通報等の内容を詳細に検討) (3)事実確認、訪問調査(安否確認) ※必要に応じて都道府県に相談・報告 (4)ケース会議の開催 (5)立入調査(安否確認) ※警察署長への援助要請 ケース会議の開催 (9)成年後見制 度利用開始の審 判請求 ※成年後見制度 利用支援事業 ( 7) 障 害 者 への支援 (8)養護者 への支援 (6)障害者の保護 やむを得ない事 由による措置 (10)モニタリング・障害者虐待の終結 65 66 67