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各栄養成分と健康影響に関する考え方

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各栄養成分と健康影響に関する考え方
資料2
消費者庁 第2回「栄養成分表示検討会」 全国都市会館
2011/01/31(月) 14:00-1600
各栄養成分と健康影響に関する考え方
~ 食塩、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸を例に
総論
食塩
飽和脂肪酸とトランス脂肪酸
まとめ
~
…2-4
… 5 - 11
… 12 - 13
… 14
東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻 社会予防疫学分野(教授)
佐々木敏(ささきさとし)
URL: http://www.nutrepi.m.u-tokyo.ac.jp/
【栄養成分表示の目的】
人間は食べ物を食べているが、栄養を使い、健康を保っている
、
、
食品
●
調理
料理
人間
(健康・病気)
●
●
● ●
摂取
●
●
吸収
●
●
●
栄養素
「佐々木敏. わかりやすいEBNと栄養疫学.
同文書院. 2005年」から改変引用
排泄
(便)
代謝
●
排泄
(尿)
でも、栄養(栄養素)は見えない。
も 栄養(栄養素)は見えな
食事を通じて健康を守るためには「栄養の可視化」が必要である
2
【食べ物と健康との関連:基本的考え方】
毒性物質と栄養素には、それぞれ異な
る考え方、異なる対処法が必要
栄養素は、(急性の健康障害を除き)緩徐な
健康影響・健康対策を扱う(不足・過
健康影響
健康対策を扱う(不足 過
剰の両方)。
【栄養素を扱う上での注意点】
■結果(健康障害)の発現に時間を要する
■関連の個人差が大きい
■ひとつの食品でも含有量にかなり幅がある
■摂取量の見積もりが困難
■慢性健康障害のひとつ、生活習慣病では原
因はその栄養素以外にも多数ありうる(=影
響または効果を検証しにくい)
■ゼロ(0)摂取を求める意義は乏しい
毒性物質
栄養素
要らない
必要である
主に不足
が問題に
なるもの
急性の健
康障害
主に過剰
が問題に
なるもの
緩除な健康対策
(不足・過剰の両方)
3
http://www.caa.go.jp/foods/index5.html
食塩摂取量と加齢に伴う血圧上昇量
このように食塩を摂取していると歳をとるにつれてこのように血圧は上がっていく
Intersalt study group. BMJ 1988; 297: 319-28.
傾き
1.4
1.2
年齢
1.0
収
収縮期血圧
圧の勾配(m
mmHg/年)
年齢に対す
する調整し
した
血
圧
食塩11g(188mmol)/日摂取による
年間収縮期血圧上昇量はおよそ
0.64mmHg
●
●
0.8
●
●
0.6
0.4
0.2
●
●
●
●
0.0
●●
●
●
● ●● ● ●
●●●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●●
●
●
● ●
● ●●●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
-0.2
50
100
150
200
250
24時間尿中Na排泄量(mmol)
24時間尿中排泄量と加齢に伴う収縮期血圧の上昇量との関連
インターソルトスタディ(世界52か所、1万人で24時間尿中Na排泄量と血圧を測定)
5
X年後の収縮期血圧(mmHg)≒現在の血圧+0.058×X年×食塩摂取量(g/日)
この結果を日本人に適用すると…
収
収縮期血圧
圧(mm
mHg)
170
160
14g/日の場合
150
140
:男性
7g/日の場合
g
130
:女性
120
13歳分の差
110
35
45
52
55
年齢(歳)
65
75
年齢階級別血圧は各年齢階級の平均値:循環器疾患基礎調査(1971年)
あなたはこの30年間で塩を何キロ食べましたか? …という目で見るべき
1日あたり14g=153キロ。 1日あたり7g=77キロ。
6
食塩摂取量(g/日)の分布
25
20
15
ていねいな16日間秤量式食事記録法による
30~69歳の男女95人ずつ
(男性の一部が70歳以上)、長野・大阪・鳥取
女性: 10.6±2.0
高血圧学会
<6g
食事摂取基準
<7.5, <9g
10
男性 12.7±2.4
男性:
±
6g/日の人はいない。
食
食事摂取基準(男性
9g/日未満、女性
7.5g/日未満)はそれ
ぞれ3人ずつ
ぞれ3人ずつ。
5
<1
<2
<3
<4
<5
<6
<7
<8
<9
<<10
<<11
<<12
<<13
<<14
<<15
<<16
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<<18
<<19
<<20
<<21
<<22
<<23
<<24
<<25
0
Okubo, et al. Public Health Nutr 2006; 9: 651-7,
Murakami, et al. Br J Nutr 2008; 99: 639-48 などで用いたデータを解析
全員が食べ過ぎている!
7
このような場合には、population approach(集団への方策)が
適している
Population approach(集団への方策)が適する条件
原因
への
曝露
疾患
両方ともありふれていること
両者 関係が多く 人に成立する と
両者の関係が多くの人に成立すること
■その方策(減塩)によって、ほぼすべての人がその恩恵に浴すること
(性・年齢・遺伝背景などによるちがいがないか少ないこと)
■その方策(減塩)によって、不利益を被る人がほとんどいないこと
■その方策(減塩)が、個人の努力よりも社会の努力によるほうが実施
しやすいこと
■その方策(減塩)に要する経費が安価なこと
減塩による高血圧予防はpopulation approachに適している。
栄養成分表示は、このための不可欠なツール(道具)である。
8
日本人の食塩摂取量は減ってきたのか?
食塩摂取量(全年齢の平均値 g/日)の推移
食塩摂取量(全年齢の平均値、g/日)の推移
3日間または1日間食事記録法による
国民栄養調査・国民健康栄養調査
16 0
16.0
14.0
12 0
12.0
10.0
80
8.0
6.0
40
4.0
2.0
00
0.0
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
通常の食事記録法では食塩摂取量の算出は難しい。食塩摂取量算定を目
的とする特殊な食事記録法または24時間蓄尿を用いたいところ
9
ところが…、薄味にはなっていないみたい
2400
2300
エネルギー摂取量の推移
エネルギ
摂取量の推移
2200
2100
薄味の日米比較
g/日
日*
食
食塩濃度
度(g/10
000kcal)
)
食塩濃度の年次推移
2000
1900
1800
日本
アメリカ
7 6.1 1700
6 1600
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
5.0 5.2 2010
5 4.8 4.0 4 3日間または1日間食事記録法による
国民健康栄養調査
3.9 国民栄養調査
国民栄養調査・
55
5.5 56
5.6 5.3 5.3 5.7 5.5 58
5.8 4.6 3.9 3.8 6.6 6.2 6.0 4.2 4.1 4.1 3.9 4.0 4.0 6.6 3 男性(日本)
2 諦めるか?
1 アメリカは日本より薄味にもかかわらず、減
塩を強力に進めようとしている
0 女性(日本)
男性(USA)
女性(USA)
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
10
社会の努力、本人の努力:どちらが効果的か?
食塩摂取源の日米比較:
総食塩摂取量にしめる割合(平均値の%)
食卓塩
その他, 32%
調味料
類, 68%
食品
NHANES 2003-2006(n=16822, 24
時間
時間思い出し法による)
出 法 よ )
国民健康・栄養調査 2006 (n=9423,
1日間記録法による)
Institute of Medicine (US) Committee on Strategies to
Reduce Sodium Intake. Strategies to Reduce Sodium
I t k iin th
Intake
the U
United
it d St
States.
t
2010
2010: 11-493.
493
調味料=ソース、しょうゆ、塩、マ
ヨネーズ、味噌、その他の調味料
食品・料理の分類方法が異なるため、比較は難しいが…、
■アメリカは 食品生産者に負うところが大きい
■アメリカは、食品生産者に負うところが大きい。
■日本は、食品生産者だけでなく、摂取者が決める部分も大きい。
・・・生産者、消費者(摂取者)双方への認知強化が必要だろう
11
飽和脂肪酸とトランス脂肪酸は心筋梗塞という共通の健康障害をもっている
血清脂質へのトランス型脂肪酸と飽和脂肪酸の影響:どちらが大きいのか?
変化
LDL
L-C/HDL
L-C比の変
介入試験の
まとめ
トランス
脂肪酸
悪い
飽和脂肪酸
良い
総エネルギー摂取量にしめる割合(%E)
Ascherio, et al. N Engl J Med 1999; 340: 1994-8.
(答え)自分が食べている量による:
■飽和脂肪酸摂取量が7%Eのときとトランス脂肪酸摂取量が3%Eのときの影響がほ
ぼ同じなので、「飽和脂肪酸の摂取量:トランス脂肪酸の摂取量が7:3」が境い目
12
なぜ、諸外国の表示は、総脂質だけでなく、○○脂肪酸もあるのか?
全エネルギー(カロリー)の5%を炭水化物から○○脂肪酸に食べかえると
全エネルギー(カロリー)の5%を炭水化物から○○脂肪酸に食べかえると…
たんぱく質
炭水化物
脂質
10.0
(mg/dll変化)
ネ ギ (
リ )
エネルギー(カロリー)
を産生する栄養素
8.0
6.4
6.0
4.0
飽和脂肪酸
(SFA))
(
一価不飽和脂肪酸
(MUFA)
2.0
多価不飽和脂肪酸
多価
飽 脂肪酸
(PUFA)
20
-2.0
0.6
0.0
飽和 一価 多価
-4.0
アルコール
7.6
-3.0
総
コレステロール
飽和 一価 多価
12
-1.2
-2.8
LDL
コレステロール
Mensink, et al. Arteriosclerosis Thrombosis 1992; 12: 911-9.
13
各栄養成分と健康影響に関する考え方
~ 食塩、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸を例に ~
(まとめ)
栄養成分表示とは、
■各種の栄養学研究(特に栄養疫学研究)の成果(社会や消費者のさ
まざまな関連状況を把握するための調査も含む)に基づいて決められ
るべきものである
■食品の健康影響(不足 過剰ともに)を類推するために消費者に
■食品の健康影響(不足・過剰ともに)を類推するために消費者に
与えられる貴重な情報である。国民が自ら健康増進・疾病予防に
励む方法を提供するものである
■「Σ(食品中含有量×自分の食品摂取量)=健康影響」と理解で
きて、初めて意味をもつものである(あればよいというものでは
ない)
■小さな数値の誤りが引き起こす問題は比較的に小さいだろう(大
きな表示の誤り[数値・用い方とも]に注意したい)
■どの栄養素が重要か、広い見地から総合的に考察して、表示の必
要性の有無と優先順位を決めたい
以上
14
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