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肺の生活習慣病 ∼COPDについて∼
肺の生活習慣病 ∼COPDについて∼ 2015年2月7日(土) 鹿児島厚生連病院 看護部 慢性呼吸器疾患看護認定看護師 原田香織 本日の内容 ● なぜ、COPDが注目されているか ● COPDとはどんな病気? ● COPDの治療 ∼息切れをコントロールしながら 病気とともに生活していく方法∼ 国の健康づくり対策の流れ 1978 S53∼ 第1次国民健康づくり対策 健康診査の充実 市町村保健センター等の整備 保健師、栄養士等マンパワーの確保 1988 S63∼ 第2次国民健康づくり対策 ∼アクティブ80ヘルスプラン∼ 2000 運動習慣の普及に重点をおいた対策 (運動指針の策定、健康増進施設の推進等) H15 健康増進法の 施行 H18 医療制度改革 関連法の成立 H20 特定健康診査・ 特定保健指導開始 H12∼ 第3次国民健康づくり対策 ∼21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)∼ 一次予防重視 健康づくり支援のための環境整備 目標等の設定と評価 多様な実施主体による連携のとれた効果的な運動の推進 2013 H25∼ 第4次国民健康づくり対策 ∼健康日本21(第2次)∼ 健康の増進に関する基本的な方向 ① 健康寿命の延伸と健康格差の縮小 生活習慣の改善や社会環境の整備によって達成すべき最終的な目標。 ② 生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(NCD(非感染性 疾患)の予防) がん、循環器疾患、糖尿病、COPDに対処するため、一次予防・重症化予防 に重点を置いた対策を推進。 国際的にもNCD対策は重要。 ③ 社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上 自立した日常生活を営むことを目指し、ライフステージに応じ、「こころの健康」 「次世代の健康」「高齢者の健康」を推進。 ④ 健康を支え、守るための社会環境の整備 時間的・精神的にゆとりある生活の確保が困難な者も含め、社会全体が相互 に支え合いながら健康を守る環境を整備。 ⑤ 栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙、歯・口腔の 健康に関する生活習慣の改善及び社会環境の改善 生活習慣病の予防、社会生活機能の維持及び向上、生活の質の向上の観点 から、各生活習慣の改善を図るとともに、社会環境を改善。 4 4 健康日本21(第2次)の目標設定 の考え方 健康寿命の延伸及び健康格差の縮小の実現 に向けて、生活習慣病の発症予防や重症化 予防を図るとともに、社会生活を営むために 必要な機能の維持及び向上を目指し、これら の目標達成のために、生活習慣の改善及び 社会環境の整備に取り組むことを目標とする。 2.主要な生活習慣病の発症予防と重症化 予防の徹底 我が国の主要な死亡原因であるがん及び 循環器疾患への対策に加え、患者数が増加 傾向にあり、かつ、重大な合併症を引き起 こすおそれのある糖尿病や、死亡原因とし て急速に増加すると予測されるCOPDへ の対策は、国民の健康寿命の延伸を図る上 で重要な課題。 〈具体的な目標〉 目標項目 がん ① 75歳未満のがんの年齢調整死亡率の減少(10万人当たり) ② がん検診の受診率の向上 循環器疾患 ① 脳血管疾患・虚血性心疾患の年齢調整死亡率の減少(10万 人当たり) ② 高血圧の改善(収縮期血圧の平均値の低下) ③ 脂質異常症の減少 ④ メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少 ⑤ 特定健康診査・特定保健指導の実施率の向上 糖尿病 COPD (慢性閉塞性肺疾患) ① 合併症(糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数)の減少 ② 治療継続者の割合の増加 ③ 血糖コントロール指標におけるコントロール不良者の割合の減 少(HbA1cがJDS値8.0%(NGSP値8.4%)以上の者の割合の 減少) ④ 糖尿病有病者の増加の抑制 ⑤ メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少(再掲) ⑥ 特定健康診査・特定保健指導の実施率の向上(再掲) ① COPDの認知度の向上 COPD 健康日本21(第二次) における目標設定 目標項目 COPDを認知している国民の割合の増加 現 状 25%(平成23年) 目 標 80%(平成34年度) 認知度の 向上 ※インターネット調査で次のいずれかを回答した者の 割合 ・「言葉も意味もよく知っていた」 ・「言葉も知っていたし、意味も大体知っていた」 ・「言葉は知っていたが、意味はあまり知らなかった」 ・「言葉は聞いたことがあるが、意味は知らなかっ た」 健康日本21(第一次)では、 メタボリックシンドローム を 認知している国民の割合を 80%にすることを目標に設定 →認知度はH21年で92.7%に (意味まで知っていた人の割合) 8 COPD認知度の推移 • 氷山の一角 にすぎない COPD治療患者数 約22万人(2011年) 日本人の40歳以上のCOPD有病率は8.6%(2011年) 患者数530万人(70歳以上は210万人)と推定。 • 日本における性別にみたCOPDの死因順位 全体 男性 女性 1.悪性新生物 1.悪性新生物 1.悪性新生物 2.心疾患 2.心疾患 2.心疾患 3.肺炎 3.肺炎 3.脳血管疾患 4.脳血管疾患 4.脳血管疾患 4.肺炎 5.老衰 5.不慮の事故 5.老衰 6.不慮の事故 6.自殺 6.不慮の事故 7.自殺 7.老衰 7.腎不全 8.腎不全 8.COPD(13,057人) 8.腎不全 8.自殺 9.COPD(16,443人) 9.腎不全 9.大動脈瘤及び解離 10.大動脈瘤及び解離 10.肝疾患 10.血管性等の認知症 資料:厚生労働省「人口動態統計」2013年 16.COPD(3,612人) 日本におけるCOPDの死亡者数 (1996年∼2013年) • 2013年:16443名 (死亡順位;第9位) (出典:厚生労働省 人口動態統計) • 世界の死因からみるCOPD 別名: 肺の生活習慣病 2020年 世界の死因第3位!!! 世界的にCOPDに 対する取り組みが 急務とされていま す。 • Chonic ObstructivePulmonaryDisease 肺気腫 慢性気管支炎 COPD定義 ・タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入・曝露 することで生じる肺の全身性炎症疾患で、完全に は正常に戻らない気流閉塞を呈する状態 ・気流閉塞は、末梢気道病変と気腫性病変が様々 な割合で複合的に作用する事によって起こり、通 常は進行性である ・臨床的には、徐々に進行する労作時呼吸困難や 慢性の咳・痰を主症状とするが、これらの症状に 乏しいこともある • 健康な人の肺胞 身体に必要な酸素を十分取り込み 二酸化炭素を体外に排出する COPDの人の肺胞 長期の喫煙などによって、肺胞が 壊され、弾力がなくなり、気道が狭く なって二酸化炭素がでにくい。 • 受動喫煙や大気汚染 職業的な塵埃、 化学物質など。。。 COPDの症状 COPDは全身炎症性疾患! • 肺機能検査(スパイロメトリー) 一秒量(FEV1):最初の1秒で 吐き出せる息の量 努力肺活量(FVC):思い切り息 を吸ってから強く吐き出した時 の息の量 (診断)・気管支拡張症薬投与後のスパイロメトリーで FEV1/FVC<70%を満たす事 ・他の気流閉塞をきたし得る疾患を除外すること。 (病期)年齢、性別、体格が同じ日本人の標準に対し 程度の機能が残っているかでⅠ期∼Ⅳ期に分類 レントゲン写真 CT画像 重症度・予後予測の評価 ∼BODEインデックス∼ 重症度の判定、予後予測には病期分類のみで は不十分で、栄養状態、運動耐容能などを加 味した評価が必要。 Body Mass Index Degree of Obstruction Dyspnea Exercise Capacity :栄養状態 :気流閉塞の程度 :息切れの程度 :運動能 BODEインデックス BODEインデックスの点数 0 1 2 3 %FEV1 ≧65 ≧350 6分間歩行距離 (m) MRC息切れ 0∼1 スケール BMI(体重/身長2) >21 50∼64 39∼49 ≦35 250∼349 150∼249 ≦149 2 3 4 ≦21 7点以上の2年生存率は約70%、 3年生存率は約55%、4年生存率は約30% MRCスケール COPDの管理∼ガイドラインより∼ 禁煙 • COPD治療の第一歩は禁煙! 喫煙を続けるかぎり、病気の進行を止めることは できません。まずは、きっぱりとたばこをやめるこ とが重要です。 たばこに対する依存性の強い 人はニコチンパッチやニコチンガムなどのニコチ ン代替療法や、専門医の指導のもと非ニコチン 製剤の飲み薬を使って、禁煙する方法もありま す。 一定の条件を満たせば、禁煙治療は保険 適用の対象となります。 吸入薬 ステロイド β2刺激薬 抗コリン薬 合剤 患者教育と白書に示された患者の要望 ∼在宅呼吸ケア白書2010より∼ 療養・指導に対する要望上位5項目 1 療養生活についてもっと教えてほしい 78% 2 病気が悪化した時の症状を教えてほしい 32% 3 専門外来を作ってほしい 30% 4 呼吸器教室を地域規模で行ってほしい 28% 5 使用できる福祉制度の活用法や窓口につ いて教えてほしい 27% 療養生活についてもっと教えてほしいこと ∼在宅呼吸ケア白書2010∼ 息切れを軽くする 日常生活動作の工夫 感染予防 呼吸訓練 病気の過程 運動 食事・栄養 急な息切れの対処法 (パニックコントロール) 治療効果の見方 日常生活での動作を評価し、理解する! ・何ができないのか? →どの動作を、どの姿勢で、どの位の速さで、どの順 序 で、どのような環境で行うと息切れが生じているのか? ・何が問題か?→筋力?呼吸法?動作要領?環境? ・息切れに対する恐怖から行っていない動作は 無いか? ・どのような練習を行っていけば、何ができるよう になるか? ・できる事とできない事を詳細に把握する 息切れのセルフマネジメント11ヵ条 ①息苦しくなる動作とその理由を理解する ②息切れに慣れる(経験しておく) ③呼吸法を習得する ④呼吸と動作のタイミングを合わせる ⑤パニックコントロールを身につける ⑥負担のかからない動作や要領を工夫する 息切れのセルフマネジメント11ヵ条 ⑦ゆっくりと動作を行う ⑧休憩の取り方を工夫する ⑨計画性を持って余裕のある生活を過ごす ⑩息切れに合わせて住まいを工夫する ⑪低酸素血症が強い時には適切な 酸素療法を行う 呼吸器疾患の患者さんが 息苦しさを自覚する4つの動作 腕を上げる、腕でものを持つ動作 ・肩より高い位置で 物を出し入れ ・肘を高くしてシャンプー ・腕を上にあげて服を 切る、脱ぐ ・洗濯物を高い所に干す (理由) 肩や胸の筋肉を腕を支える為に使うので、その間にそ れらの筋肉を呼吸に使う事ができないため。 呼吸器疾患の患者さんが 息苦しさを自覚する4つの動作 息をこらえる動作 ・重い物を持ち上げる ・排便をする ・会話をする ・食事を飲み込む ・顔を洗う (理由) 呼吸が止まり、呼吸のリズムも乱れるため 呼吸器疾患の患者さんが 息苦しさを自覚する4つの動作 反復して行う動作 ・身体を洗う ・掃除機をかける ・歯を磨く ・ガラスを拭く (理由) 力を入れ続け、だんだん動作のスピードが速くなり、呼 吸のリズムも乱れるため 呼吸器疾患の患者さんが 息苦しさを自覚する4つの動作 前かがみなど、身体を折り曲げる動作 ・前屈みで靴下や ズボンをはく ・足を洗う ・床の上の物をとる ・雑巾がけ (理由) 膨張した肺とお腹に横隔膜が挟まれて動きにくくなるため 呼吸法(口すぼめ呼吸) 息を鼻から吸った後、軽く口をすぼめて時間を長めに かけて(吸うときの約2∼5倍)、口から息を吐く。 普通の呼吸→吸気:呼気比は1:1.2 口すぼめ呼吸→吸気:呼気比は1:2∼5 吸った空気と同じ量の空気 を吐き出す事が重要 口すぼめ呼吸の効果 COPDなどの気管支が狭くなる病気 では、歩行などで呼吸が速くなると、 息を吐いている途中で気管支が つぶれてしまいます。 呼吸をするたびに肺の中には吐き出せない 空気がたまって息苦しくなります。 口をすぼめて息を吐くと、気管支の内側に圧が かかり、呼吸が速くなっても気管支のつぶれを 防ぎながら、吸った空気を効率よく吐き出すこと ができ、息切れを予防することができます。 ポイントは吐く時の歩数を多めに! 自分にあったペースを作っていきましょう。 動作の工夫・変化・効率化 *動作は『ゆっくり』を心がける →スピードを落とす事で単位時間あたりの 仕事量を減少できる *息こらえをせずに、動作と呼吸を合わせる →呼気ではエネルギー消費量が少ないため 動作が楽にできる *息苦しさを助長する動作を避ける *無駄な動作を省く(動作の簡略化) エネルギー調整 *動作を連続的に行わせず、1つの動作の後に は休息を入れる →息苦しくなる前に計画的に休みを取る →息切れを感じたら途中で休憩を入れ、 呼吸を整える *小まめに休憩を入れる *体調の良い時間に合わせて活動する 生活環境の工夫・調整 *周囲環境の整理整頓 *床生活から椅子・ベッド生活へ *動作効率を考慮した酸素・家具などの配置検討 *使用頻度の多い物は近くにまとめる *使用している物の変更 *自助具提供 具体例(食事) ●上肢が挙上されすぎない ような高さの机や椅子に変 える ●安楽に座れる椅子の検 討 ●1口量の調整 ●1回の食事量を少なく・ 回数を多く 具体例(整容・歯磨き・洗面) ●整容は椅子に座って行う ●歯磨きは呼吸法を併せて ゆっくり ●電動歯ブラシの使用 ●腕をなるべく下げる ●洗顔の時は、酸素は外さない ●濡れタオルで拭く ●顔に水をかけるとき息を吐く 具体例(更衣動作) ●椅子に座って行う ●上肢を低くして袖を通す ●足を組んで靴下をはく ●着る前にズボンと下着を 合わせておき一度に履く ●前あきの服や靴ひもの無 い靴の選択 具体例(入浴) ●腕があまり上がらないような長めの洗体タオル ●ナイロンや麻のタオルは水切れが良く絞りやすい ●シャンプーハットの利用 ●手すり、シャワーチェアーの利用 ●バスローブの使用 具体例(排便) ●息止めて無理に力まず、息を吐きながら徐々に 力を入れる ●トイレの中に手すりをつけたり台をおくと、上半 身が安定しやすい(呼吸補助筋が使いやすい) ●便秘の予防、便通のコントロール ●拭き取りがきついので ウォシュレットを使用する 具体例(調理) ●椅子に座りながら行う ●電子レンジなどの有効活用 ●重い鍋は両手で体幹に引き寄せて持つ ●コンロに鍋を置いてから少しずつ水を入れる ●使用頻度の多い物は取り出しやすい場所に置く ●動線の簡略化のための環境調整 ●在宅酸素使用中の方はガスから電気コンロへ変 更 具体例(掃除・洗濯) ●簡易な掃除用具を利用(粘着ローラー・簡易モッ プ) ●計画的に少しずつ分けて行う ●雑巾絞りの際は呼気に合わせる ●物干し竿の位置は低くする ●干す衣類は予めハンガーなどの上に置く ●干す際は洗濯カゴは台などの上に置く ●洗濯ネットを利用し、洗濯機から取り出しやすくす 食事について 食べるのも 命がけなんです。 1)栄養障害の原因 a:タンパク質・エネルギー栄養の不足 b:代謝が亢進している C:摂取エネルギー量の低下 b 代謝亢進状態 ・COPDの患者では安静時エネルギー消費量 (REE)が予測値の120∼140%に増大。 原因:気流制限や肺の過膨張によって呼吸筋 のエネルギー消費量が増えてしまう事が関与 していると考えられています。 ・その他の要因として。。 全身性炎症の関与も重要。TNFなど炎症性サ イトカインが体重減少のあるCOPDの血液中で 増加している事が考えられています。 C 摂取エネルギー量の低下 ・COPD患者は身体活動を維持する為に必要なエネル ギー量を食事でとるのが難しい場合が多いとされま す。 ①気腫優位型COPDではわずかな食事でも腹部膨満が 生じ、平坦化した横隔膜の運動が更に制限されて呼 吸困難が強くなる。 ②咀嚼や嚥下に伴い呼吸リズムが乱れ、食事の動脈 血酸素飽和度が低下する ③食事中に上肢筋を使う動作が呼吸困難を強くする。 その他、レプチンなどの内分泌ホルモン異常関与 食事中の呼吸困難緩和の工夫 食欲不振 ・エネルギーの高い食事から ・可能な限り好きな食物を取り入れる ・食事回数を増やす ・呼吸器疾患と栄養の意義を理解してもらう ・食べられる量を一皿に盛り分ける ・栄養補助食品の利用 すぐに満腹 ・エネルギーの高い食事から ・食事中の水分摂取を控える、炭酸飲料は避ける ・冷たい食事のほうが満腹感が少ない 食事中の呼吸困難緩和の工夫 息切れ ・食事前の十分な休息を取りゆっくりと食べる ・気管支拡張薬の使用、食前の排痰 ・咀嚼中の口すぼめ呼吸、食事中の姿勢、軽い食器 ・食事中の酸素吸入量の検討 疲労感 ・食事前の十分な休息 ・食事の準備に手間をかけない ・食事中の動作の単純化 ・疲労の少ない時間帯にできるだけ食べる 食事中の呼吸困難緩和の工夫 腹満感 ・息切れを緩和して、空気の嚥下を避ける ・少量ずつ回数を増やす ・急いで食べない ・ガスを産生する食物、食材を避ける 便秘 ・適切な運動と繊維質の多い食事 歯周病 ・適切な歯科の治療、口腔ケア 2)目標設定(一例) ・COPD患者では安静時エネルギー消費量 (REE)が健常同年代の1.2∼1.4倍に亢進して おり、エネルギー消費量に見合う十分なエ ネルギーを摂取する為には、 総エネルギー摂取量の目標を実測REEの1.5 倍または予測REEの1.7倍を目標とします COPD患者のREE予測値 男性:(11.5×weight(kg))+952 女性:(14.1×weight(kg))+515 例 )REEが1500kcal、体重50kg男性 の場合の必要エネルギー量 野菜300g 2250kcal 牛乳 1本 肉 60g いも 150g 魚 80g ごはん 250g×3 油脂 40g 果物 200g 卵 1個 大豆製品 120g 3)食事の工夫のポイント ①喫煙は肺機能低下だけでなく、食欲低下因子を含むため、 禁煙にする ②食べられない場合は、6回食などの分食にして1回に食 べる量を減らす ③少量で高エネルギー、高タンパク質の食品を考慮する ④炭酸飲料など、ガスが発生して腹部膨満感を来すものは 避ける ⑤さっぱりした食品も入れる ⑥食事環境を整える ⑦新鮮な食材、うまみ、旬のものを工夫し、好みの食品も 追加する ⑧食べられない時は、栄養補助食品(濃厚流動食)を利用 して、必要量を満たすよう努力する 栄養療法と運動療法の組み合わせ方 体重 (BMI:kg/m2) BMI<19 進行する 体重減少 治療戦略 有 強化栄養療法(経口・経腸) ★補助栄養食品の利用を考慮 運動療法(低負荷) 栄養指導(体重維持を目標) 運動療法(高負荷も可能) 栄養指導(体重増加を目標) 運動療法(低負荷) 栄養療法(体重維持を目標) 運動療法(高負荷も可能) 無 19≦ BMI<22 有 無 22≦BMI 有 無 栄養指導(標準体重を目標) 運動療法 運動療法 Ⅱ、運動療法について 帰ったら、畑が待ってるんで す。自分で作った野菜を食 べるのが生きがいなんです 1)運動療法の目的・効果 臨床症状が 中等症の患者 で最も有効 呼吸困難の軽減、運動耐用能の改善、 健康関連QOLおよびADLの改善 ・すでに薬物療法により症状が軽減している患 者においても、さらに上乗せの改善効果をえる 事ができる(エビデンスA) ・入院回数,入院日数の減少(エビデンスA) ・生存期間の延長(エビデンスB) 得られた効果は、中断により失われてしまうこ とも明らか。いかに継続させるか! 2)運動療法の適応 1)症状のある慢性呼吸器疾患 2)標準治療により病状が安定している 3)呼吸器疾患により機能制限がある 4)呼吸リハビリテーションの施行を妨げる 因子や不安定な合併症・併存症がない 5)年齢制限や肺機能の数値のみによる基準 は定めない どのような健康状態にある患者においても、ほとんどの呼吸器 疾患では運動療法の適応になる。しかし、リハビリをすすめる 上で妨げになったり、運動中の危険性が増大するような合併 症・併存症があれば運動療法の適応にならない。 呼吸器関連疾患における 各介入の推奨レベル 運動療法の進め方 • <運動を始めるにあたり> ・体調が悪い時は無理せず運動を控えましょう。 ・たんが多い方は、たんをきちんと出してから運動しましょう。 ・必要に応じて、運動前に吸入薬を使いましょう。 • • 家庭で運動を行う時の注意点 ややきつい くらいの強度の運動を行いましょう。とぎれ ずに会話ができるくらいがめやすです。 家庭で運動をする時の注意点 ・息切れがしたら休みをとって、落ち着いて呼吸を整えま しょう。休憩をはさみながら、ゆっくりと運動しましょう。 ・息を 吐くとき に体を動かすのがポイントです(呼吸は 吸うとき にエネルギーを消費しますので、 吐くとき に体 を動かすと、楽にできます) 運動中の息切れ対策 ・運動中は呼吸を調整する ・動作を吐くときにあわせる ・目的筋を可能な限り単独で強化する ・各運動の間に深呼吸を1∼2回入れる ・酸素療法を受けている患者では、動作時の 酸素流量を(安静時の1.5∼2倍)で行う ・呼吸困難の状態に合わせて運動量を調整する 姿勢の調節 (上肢で体幹を支持した 前傾姿勢や背もたれ、 歩行器の使用) 風通しの配慮 (うちわや扇風機) 顔面への冷風は三叉 神経を刺激して呼吸 困難を軽減させる ご清聴ありがとうございました