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自動車燃料技術の開発動向(2007/1~6)<燃料・排ガス規制

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自動車燃料技術の開発動向(2007/1~6)<燃料・排ガス規制
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
平成 19 年 7 月 18 日
PISAP ミニレポート 2007-007
自動車燃料技術の開発動向(2007/1~6)
<燃料・排ガス規制>
世界中で自動車燃料の厳しい規制が実施され、また実施が計画されている。この対策と
して、超クリーン自動車燃料プログラムが各国で進行している。本レポートでは、石油系
自動車燃料に限定して、精製設備および排ガス処理技術のアップグレードについて 2007
年 1 月から 6 月までの国別の開発動向をインターネット情報に基づいてまとめた。
1.精製設備のアップグレード
(1)米国
・エンジニアリング会社 Koch Chemical Technology Group の子会社 Koch Partners は独
立系石油会社 Holly Corporation の子会社 Navajo Refining Company のアーテジア
(Artesia)製油所(ニューメキシコ州)から軽油のマイルド水素化分解装置の新設に関す
る業務を請け負った。この装置は Process Dynamics 社からライセンスされた
IsoTherming 水素化分解技術(資料 1)を採用したもので、この技術の特徴は、水素が通常
の水素化処理に比べてはるかに大きい空間速度でリアクターに導入されるため、リアク
ター規模は小さく、
触媒量は少なく、
したがって製造コストが低減化できることである。
2008 年の第 4 四半期に 1.5 万 BPD のプラントを稼働し、その後 3 万 BPD に拡張する予定
である。(資料 2)
・ダラスを本拠地とするエネルギー会社 Hyperion Resources は 80 億ドル投じてサウス
ダコタ州南東端のエルクポイントまたは中西部の数ヶ所の候補地で製油所の新設を計画
していることを明らかにした。1 年以内に場所を選定する予定という。カナダのアルバ
ータ州産のオイルサンド原油を 40 万 BPD 処理し、
低硫黄ガソリンや低硫黄ディーゼル燃
料などを製造する。同製油所は精製副産物である石油コークスの燃焼発電プラントを含
む米国で最も環境を配慮したエネルギーセンターとなる。冷却用水としてミズーリ川の
水を 1 日 1200 万ガロン使用し、最先端技術を取り入れた製油所であり、実現すれば、米
国では 30 年ぶりの製油所の新設となる。(資料 3,4)
(2)カナダ
・石油会社 Irving Oil は米国北東部の市場を対象とする第 2 の製油所をセントジョンに
建設するべく、オタワおよびニューブランズウィック州に環境許可の申請を行った。製
油所の建設コストは 70 億ドル、精製能力は 30 万 BPD、ガソリン、ディーゼル燃料、石
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
油コークス等を製造する。同社は実施可能な最良の環境技術を採用することを確約して
おり、
また製油所の建設が健康・公害面に与える影響について 2 年間の調査を実施する。
(資料 5,6)
(3)フィンランド
・石油会社 Neste Oil はポルヴォー(Porvoo)製油所(20 万 BPD)に 7 億ユーロの投資で、
新しくディーゼル燃料製造ライン(年間約 100 万トンのサルファーフリーディーゼルを
製造)を完成させた。これはシェブロンと ABB Lummus Global の合弁会社 Chevron Lummus
Global(CLG)が開発した LC-FINING(資料 7)と ISOCRACKING (資料 8)の統合技術を採用し
たプラントで、触媒交換時にシャットダウンの必要がなく、そのため製造コストが削減
できる。(資料 9,10)
(4)ドバイ
・Emirates National Oil Company (Enoc)はジェベルアリ(Jebel Ali)製油所(12 万 BPD)
のアップグレードを予定より 1 年遅れの 2008 年第 4 四半期に完成する。
建設費が当初の
5 億ドルから 1~2 億ドル上がったため遅れたという。リフォーマーと水素化処理装置を
加えたアップグレードにより、ハイオクタンリフォーメート 4 万 BPD の生産とサワー又
はスイートコンデンセートの処理が可能となる。(資料 11)
(5)フィリピン
・フィリピン第 2 位の石油会社 Pilipinas Shell はマニラ南方のバタンガス州にあるタ
バンガオ(Tabangao)製油所(11 万BPD)の拡張計画をコストアップ(10~15 億ドル)を理由
に中止して、製油所設備のアップグレード(3.21 億ドル)に切り替えた。Clean Air Act
による燃料油中の硫黄及び芳香族含有量に関する規制強化のためアップグレードが必要
となった。Clean Air Act に合格した後は、輸入原油の依存度を下げるためにバイオ燃
料をブレンドするとしている政府方針に従わなければならない。なお、同国最大の
Petron Corp(18 万 BPD)はすでに製油所のアップグレードに 1 億ドル投資した。
(資料 12)
(6)シンガポール
・シンガポール石油(SPC)とシェブロンの合弁会社 Singapore Refining Co. (SRC)はジ
ュロン島にある製油所の二次装置のアップグレードの EPC 業務を日揮に 8,100 万ドルで
発注した。軽油の超深度脱硫プラントを建設してユーロⅣ規制を満足するディーゼル燃
料を製造するもので、すでにプラントの基本初期設計(FEED)は完了している。今年第 2
四半期に工事を開始し、2009 年 3 月に完成予定となっている。(資料 13,14)
(7)インド
・インド政府は石油製品の増産のため生産技術の改良を石油会社に要請した。特にイン
ド石油天然ガス公社(ONGC)とインド国営石油(IOC)には、
生産量を最適化するための石油
精製技術について報告するよう要請した。石油・天然ガス省は両社の生産設備で採用さ
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
れている精製技術のレベルを評価するために独立したコンサルタントを任命することを
検討中である。(資料 15)
・IOC は 2009 年までにインド西部のハルディア(Haldia)製油所(12 万 BPD)を拡張し、ま
た2011年までにインド東部のパラディプ(Paradip)製油所(30万BPD)の新設を完了する。
ハルディア製油所の拡張は、原油蒸留装置 2 基のうち 1 基の改造及び高硫黄原油を含む
ワイドレンジの原油処理が可能な水素化分解装置の建設である。パラディプ製油所の新
設装置の内訳は流動接触分解装置(7.8 万 BPD)、減圧軽油(VGO)水素化処理装置(10.4 万
BPD)、ディーゼル水素化処理装置(10 万 BPD)、ナフサ水素化処理装置(0.8 万 BPD)、ディ
レードコーカー(8 万 BPD)等となっている。
ほかに IOC のマトゥラー(Mathura)製油所(16
万 BPD)では、高硫黄原油からユーロⅢおよびⅣグレードの燃料油を生産するために、
2008 年初頭までにディーゼル水素化処理装置をVGO 水素化処理装置に変換する予定であ
る。(資料 16)
(8)中国
・シノペックの子会社 Sinopec Hainan Petrochemical は海南省の新設製油所で連続触媒
再生式接触改質(CCR)装置の稼働を開始した。同装置は液体・水素収率が高く、コークス
収率が低くなるよう設計された最先端の UOP・CCR 触媒を使用した「CCR Platforming(商
標)」装置で、UOP としては今回 200 基目の稼働となる。中国では 1985 年に導入されて
以来、現在 27 基以上がライセンスされており、年間 2600 万トン以上の製品が同装置で
生産されている。(資料 17)
・ペトロチャイナの錦州製油所(14 万 BPD)は 2009 年中旬までに低硫黄ガソリン・ディー
ゼル燃料を生産するため、装置のアップグレードに 1.7 億ドルを投資する。同製油所が
処理する原油の 35%は遼河油田の重質高硫黄原油であるため設備のアップグレードが
必要とされる。低硫黄ガソリン製造用に年間 150 万トン規模の水素化処理装置を、低硫
黄ディーゼル製造用に同規模の水素化分解装置を建設し、2008 年末から 2009 年中頃ま
でに生産を開始する。(資料 18)
(9)韓国
・韓国第 2 位の石油会社 GS Caltex(GS Holdings とシェブロンの 50-50 合弁会社)は 3.6
億ドル投じて、ディーゼル水素化脱硫(HDS)装置を建設する計画を明らかにした。韓国南
部の麗水製油所に 2009 年初頭までに、能力 7 万 BPD の HDS 装置を 1 基新設し、現在保有
する 3 基と合わせて 26 万 BPD に増加する。(資料 19)
2.排ガス処理技術のアップグレード
(1)米国
・米国の大手自動車部品メーカーDelphi は世界初の自動車排ガス選択触媒還元脱硝
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(SCR)システム用のアンモニアセンサーを開発した。
アンモニア検知物質を厚膜セラミッ
ク基板上に担持しステンレス製パッケージに納め、排気管中のアンモニアを 0~100ppm
の範囲で直接測定することによってアンモニアの前駆体である尿素の注入量を最適化す
る。2010 年に施行される EPA の排ガス規制によって同センサーの市場は広がると見られ
ている。(資料 20)
・アルゴンヌ国立研究所(ANL)はディーゼル車の排気ガスの NOx 除去用触媒を開発中で、
2~3 年以内に商業化できる見通しである。従来の銅イオン交換型ゼオライト触媒
(Cu-ZSM-5)や類似の触媒は通常の排気ガス温度より高温を要し、また排気ガス中に存在
する水蒸気により性能が低下する。この度開発した新触媒は酸化セリウムをコーティン
グした Cu-ZSM-5 触媒で、同触媒を内臓したセラミック・リアクターをディーゼル車の排
気管内に設置し NOx を窒素に変換する。通常の排気ガス温度で作動し、水蒸気が存在す
る方がより効果的で、NOx を 95~100%除去できるという。(資料 21)
・カリフォルニア州を本拠地とする触媒会社 Nanostellar は、ディーゼルエンジンの排
ガス中の有害物質を市販のディーゼル酸化触媒である白金触媒より最大 40%多く除去で
きる金を用いた NS Gold 触媒(Nanostellar 社商標)を開発した。同社は 2006 年半ばに白
金とパラジウムの合金をベースとした第一世代触媒を開発したが、今回それよりさらに
15~20%性能アップした金を用いた第二世代触媒 NS Gold を発表した。白金価格の約半値
である金を用いることにより触媒価格が大幅に下げられる。(資料 22)
(2)カナダ
・カナダのエネルギー・環境技術開発会社 Thermal Energy International(TEI)は、中
国の華南理工大学(SCUT)と広州で TEI の NOx 除去技術 THERMALONOx(商標)の産業への適
用を 2 年間にわたり研究開発する契約を交わした。広州市科学技術局と広州環境保護局
が支援する。
THERMALONOx プロセスは TEI の実験室テストで模擬煙道ガス中の NOx を 98%
以上除去できることに成功した。今回の目標は広東省の石炭火力発電プラントで実証テ
ストを行うことである。(資料 23,24)
(TT)
(参考資料)
1.http://www.processdyn.com/Diesel.html
2.http://www.ogpe.com/display_article/293247/57/ONART/none/NewPr/Koch-Partners,LP-to-build-mild-hydrocracker-for-Navajo-Refining-Company/
3.http://news.yahoo.com/s/nm/20070614/bs_nm/refinery_hyperion_dc_1
4.http://www.delawareonline.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20070615/BUSINESS/706
150353/1003
5.http://www.boston.com/news/local/maine/articles/2007/01/25/irving_oil_to_apply
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
_for_permits_to_build_giant_refinery/
6.http://www.apegnb.ca/e/news/details.php?id=255
7.http://www.chevron.com/products/prodserv/refiningtechnology/lcfin_7a.shtm
8.http://www.chevron.com/products/prodserv/refiningtechnology/isocracking_2a.sht
m
9.http://www.nesteoil.com/default.asp?path=1;41;540;1259;1260;7439;8400
10.http://www.chevron.com/products/prodserv/refiningtechnology/documents/Neste_M
edia_Release.pdf
11.http://www.tradearabia.com/news/newsdetails.asp?Sn=OGN&artid=125237
12.http://investing.reuters.co.uk/news/articleinvesting.aspx?type=allBreakingNew
s&storyID=2007-06-17T092009Z_01_MAN80244_RTRIDST_0_PHILIPPINES-ENERGY-SHELL.X
ML
13.http://asia.news.yahoo.com/070514/3/31t1s.html
14.http://www.jgc.co.jp/en/01newsinfo/2007/release/20070529.html
15.http://www.upi.com/Energy/Briefing/2007/05/07/india_to_oil_firms_improve_know
how/
16.http://in.news.yahoo.com/070205/137/6bt4b.html
17.http://www.uop.com/pr/releases/PR.200thCCRUnit.pdf
18.http://www.planetark.com/dailynewsstory.cfm/newsid/40792/newsDate/12-Mar-2007
/story.htm
19.http://asia.news.yahoo.com/070413/3/309na.html
20.http://www.dieselnet.com/news/2007/02delphi.php
21.http://www.physorg.com/news97166572.html
22.http://news.thomasnet.com/companystory/516927/rss
23.http://www.pollutiononline.com/content/news/article.asp?DocID={6BF74E32-C78942B6-B4CB-26AC3742C3AF}&Bucket=Current+Headlines
24.http://biz.yahoo.com/cnw/070621/e_thermalengy_chifund.html?.v=1
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