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学習メモ
学習メモ 第8回 現代社会 第 2 部 青年期と自己形成の課題 よりよく生きることを求めて 近代科学の考え方 今回学ぶこと 現代社会は、人間が宇宙の世界に飛び立つことさえ可能に した科学技術の時代ともいえます。では、そもそも、科学技 術はいつごろ、どのように人間社会に誕生したのでしょうか。 今回は、人類に夢の世界を実現させた科学技術とその土台と なった考え方について学んでいきましょう。 講師 大 西 麗 近代科学と機械論的自然観 ▼ 科学的な考え方が人類に芽生えたのは、15 世紀 引き起こしていると考えていたのです。一方、「自 ~ 16 世紀ごろのヨーロッパと考えられています。 然には神の意志などといった精神や目的はなく、単 そのころに登場した科学を「近代科学」といいます。 なる物体の運動よって機械的に引き起こされている では、近代科学の考え方とはどんな考え方なので にすぎない」という考え方を「機械論的自然観」と しょうか。 いいます。 日本人は大昔から、雨、雷、生命の誕生など、自 自然が神の仕業でなく、単なる物体の機械的な運 然のあらゆる現象に神の存在を認め、人間に祟りと 動にすぎないのであれば、人間の力で自然の法則を 恵みをもたらす自然の神をおそれ敬っていました。 解明し、自然の力を利用しようというのが近代科学 それぞれの自然現象は神がある目的のためにわざと の考え方です。 人間中心主義 なぜ近代科学の考え方がヨーロッパで誕生したの でしょうか。それは、15 世紀ごろのヨーロッパで − 15 − 高校講座・学習メモ 現代社会 近代科学の考え方 「人間中心主義」とは、人間は物事を正しく判断 ルネサンスという文化運動が広がり、「人間中心主 義」という考えが芽生えたからだといわれています。 できる能力である「理性」が備わっている、だから、 中世までのヨーロッパ社会は、社会の中心は神、も 人間の理性の力を尊重しようという考え方です。 しくは神の権威をかりた権力者でした。しかし、古 近代科学は、実験から一般法則を見出すベーコン 代ギリシャの古典研究を通じて人間の本性や能力を の「帰納法」と、仮説をたて検証していくというデ 見直そうとするルネサンスをきっかけに、「人間中 カルトの「演繹法」の両方を組み合わせた形で発達 心主義」という考え方が広がっていきました。 しました。 き のうほう えんえきほう 人間中心主義の功績と反省 「神様や権力者の力を借りなくても、人間は理性 地球環境破壊や放射能による環境汚染など現代社会 の力で人生や物事を正しく決めることができる」と に多くの問題をもたらしているのも事実です。科学 考える「人間中心主義」は、近代科学を産み、そし 技術を開発したり利用したりする時には、「人間の て現代を生きる私たちの生活になくてはならないさ ためだけに利用する」という人間中心的な考え方で まざまな科学技術をもたらしました。 はなく、「地球全体の幸せのために利用する」とい 一方で、人間が自然を支配できるという考え方や、 人間のためだけに開発されたさまざまな科学技術が、 う発想が、現代社会を生きる私たちに求められる考 え方ではないでしょうか。 ▼ − 16 − 高校講座・学習メモ