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介護サポーター新テキスト抜粋(1)

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介護サポーター新テキスト抜粋(1)
介護サポーター新テキスト抜粋(1)
4年前介護サポーター養成講座を開講し、全国に220名のインストラクターが
誕生しました。各拠点では900名の方が本講座を受講しました。そして昨年はテ
キストの見直しを行い、従来のホームヘルパー2級3級のテキストに見られないナ
ルクならではの充実した改訂版を出版いたしました。
内容は、緊急時の対応、寝たきりにならないための実技、認知症の対応策と事例
などが詳しく書かれており、介護を必要としている家庭には必要な1冊となってい
ます。
今後はこのテキストを使って、一般市民も参加できる講座を開催していく予定で
す。
章立ては次の通りです。
1章.日本の高齢化とシニア生活・介護支援サポーター創設の意義
2章.介護概論在宅サービスの基本と心得
3章.高齢者の特性の理解
4章.認知症のある人の理解と傾聴
5章.感染症の知識と対応
6章.日常生活の支援
7章.寝たきりにならないための実技(臨床)
8章.車椅子介助の方法
9章.緊急時の対応と応急手当
次回からは、各章ごとに、内容の要約を紹介していきます
介護サポーター新テキスト抜粋(2)
第1章
日本の高齢化とシニア生活介護支援サポーター創設の意義
この章では病気・要介護に陥らない生き方新しい公共への動き介護保険制度の現
状と問題点などを学びます。
我が国の平均寿命は男子が歳、女子が歳で、世界一の長寿国となりました。しか
し一人暮らしの高齢者が急増し、孤独死が大きな社会問題になっています。孤独死
に陥らないためには社会との繋がりを濃くし、ピンピンコロリ(PPK)の生涯を目
指すことが必要です。具体的には常に気持ちを若く保ち、
① 毎日1万歩のウォーキングや体操の実行。
② 腹8分目、減塩の食事、定期検診の受診。
③ 他人や社会のためにボランティア活動をするか、農・魚業などの労働に従事す
ることが大切です。
政府もこれからは少子高齢化が急速に進み、国や自治体の公助に期待できなくな
る。市民が参加し、新しい公共を作り公的福祉制度で救えないところを地域の支え
合いでカバーしていくことが必要だとしています。介護保険の適用を受けていない
人、保険の谷間にある人、社会的に孤立している高齢者に対する生活支援は、新し
い公共が担っていくべきでしょう。具体的には見守り・話し相手・病院への送迎・
買い物などの簡単なサービスですが、それを継続的に行うことで、信頼関係も生ま
れ、孤独死防止に役立つはずです。しかし、今後の介護保険の財政の逼迫などを考
えると、要支援、要介護1、2程度まで分野を広げるべきでしょう。
現在の介護保険制度はドイツの制度を参考にしながら、2000年から実施され
ました。
その特徴は
① 家族による介護から社会による介護へ
② 措置制度から契約制度へ
③ 民間業者の参入で競争原理が作用
④ ケアマネによるケアプランの作成など、すぐれた制度と言われておりますが、
次の改訂では時間巡回訪問制度の財政的維持など大きな問を抱えることになり
ました。それらを国際ボランティア4原則と照らし合わせながら学んでいきま
す。
介護サポーター新テキスト抜粋(3)
第2章
介護概論在宅サービスの基本と心得
この章では介護概論とサービス活動の心得とマナーなどを学びます。
介護概論の中身は介護の歴史、介護の定義、介護の原則などです。
介護という言葉のルーツは、色々な説があります。介助の介と看護の護を組み合わせたもの、と
言うのが一般的です。高齢者や障がい者に対して行う身の回りの世話を介護と呼ぶ場合もあります。
年ほど前までは看護は資格を持つ者が行い、介護は素人が行うという考えでしたが、1987年に
社会福祉士及び介護福祉士法が成立し、介護の専門的従事者に介護福祉士の資格が与えられるよう
になりました。
介護の定義も整理されつつある段階ですが、身体及び精神障がい者に対して、食事や排泄、入浴
などの援助をすることというのが現在の定説です。
食事・排泄・入浴などの行為は、健康であって障がいがなければ、乳幼児以外は誰でも自分でで
きる行為です。ところが障がいを抱えることにより、介助する人がいなければ生活に重大な支障を
きたすか、場合によっては生命の危機に遭遇するかもしれません。極めて切実性の高い行為といえ
ます。
介護の基本原則は、個々の利用者によって異なる生活習慣や価値観を尊重することです。それが
ないと援助を進めていく上での信頼関係が失われます。また利用者の持てる能力に着目して、自分
でできることの喜びを感じられるように支援することが必要です。
支援の心得として次の項目をあげています。
① 丁寧な言葉と態度
② 利用者の立場に立つ
③ 日常生活の中での体調の変化を見逃さない
④ プライバシーの尊重、守秘義務
⑤ 家族、病院などへの連絡は正確迅速に
⑥ チームを組んで支援するときは情報を共有
⑦ 政治・宗教を持ち込まない
⑧ 金銭を扱うときはお金と引き替えに預り書
⑨ 作業の確認と終了時の点検を家族に伝える
来月は第3章高齢者の特性の理解です。
介護サポーター新テキスト抜粋(4)
第3章
高齢者の特性の理解今回は第3章高齢者の特性をご紹介します。
老化により体はどう変化するかということを、イラストを交えて分かりやすく理解できるようにな
っています。
高齢者の身体的特徴
① 頭髪の変化
頭皮が老化し弾力性を失うと、髪を作っている毛母細胞に十分栄養が行き渡らず、毛が細くな
る。
② 脳細胞の減少
脳細胞は1日に万個ずつ死んでいく。認知症患者のを撮ると大脳辺縁に黒い溝の部分があり萎
縮が起きているのが分かる。
③ 水晶体の変質
水晶体(レンズ)が硬くなり弾力を失う。するとピントの調節ができなくなり、老眼になる。
水晶体が白く濁ると白内障。
④ 動脈硬化が進む
血管の壁が硬くなって、血液の通り道が狭くなり、体に様々な障害を引きおこす。
⑤ 骨はもろくなる
骨の量が減少し折れやすくなる。背骨が曲がったり、背が縮んだりする。
⑥ 皮膚は弾力を失う
コラーゲンやエラスチンなどの繊維が、量的にも質的にも変質し、弾力性を失い、しわができ
る。
年齢と共に変わる心と体老年期は自分を完熟させる時期でもあります。できるだけ笑顔、そして何
事にも感動することが大切です。最近、ノーマライゼーションという言葉をよく耳にしますが、こ
の意味は高齢者という社会的弱者も、障害のある人も、ない人も、社会の一員として、互いに尊重
し助け合って地域の中で共に生活するのが当たり前であるという考え方です。
福祉の社会でも利用者支援者は、受ける与えるの関係ではなく、常に平等の関係であるべきです。
私たちも心は広く、視点は高く、頭は低くの精神を忘れることなく、介護の活動に当たりたいと思
います。
介護サポーター新テキスト抜粋(5)
第4章
認知症の理解と傾聴
この章で取り上げるのは認知症です。最初に認知症の医学的な基本問題、次に認知症患者への対応、
傾聴の問題などに理解を深め、最後に認知症の予防と対策を学びます。
最初は認知症の医学的知識です。まず認知症と老化とは違うと言うことを理解しなければなりませ
ん。認知症は脳に異常がある現象です。
老化の問題は先月号で学んだ通りです。我々は加齢と共に体の色々な機能が衰えてきます。しかし
これは異常ではありません。これに対して認知症は脳に異常を生じる状態です。
認知症は主として2つに分かれます。アルツハイマー型と脳血管
障がい型です。人により症状の現れ方が異なります。関連疾患と
してせん妄があります。意味不明の言動を伴う意識障がいです。
認知症状(幻覚、妄想、興奮、不穏)と類似しているので、判別
して対応することが必要です。
認知症は医療だけでは治せません。患者の心の声に耳を傾けるこ
とが治療の原点です。そこで傾聴の問題が出てきます。相手は常
に主人公であることを忘れてはいけません。相手の話に反論や批
判はいけません。相手に寄り添い、問題点を見いだし、解決に努
力することが求められます。
最後に認知症の進行予防と対策について述べられています。発症のリスクを少なくするには正しい
生活習慣と海馬を活性化させることが必要です。進行予防には回想法と音楽療法が有効だとされて
います。
介護サポーター新テキスト抜粋(6)
第5章感染症の知識と対応
この章では感染症の色々な問題について学びます。
一般に高齢者は免疫細胞の衰えにより感染症を発病しやすく、また治りにくく、慢性化する傾向にあります。とくに呼吸器
感染と尿路感染はしばしば起こります。
代表的な感染症として「MRSA」「肝炎」「疥癬(かいせん)」「肺結核」「食中毒」などがあります。
① MRSA
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の略です。黄色ブドウ球菌の中でメシチリンなどの抗生物質が効かなくなった耐性菌で
す。多くの病院で院内感染の1つとして問題になっております
② 肝炎
A型からE型までありますが、A型は急性のみで、D型E型は日本にほとんど症例がありません。
B型C型はどちらも感染し、進行すると慢性肝炎、肝硬変、肝臓ガンになる可能性があるので要注意です。
感染源は血液。ケア時はゴム手袋を使用。訪問前後はうがい手洗いを実行。
③ 疥癬(かいせん)
ダニの一種である疥癬虫(ヒゼンダニ)を通してうつる皮膚病です。小さな赤いブツブツができ、激しいかゆみを伴い
ます。指の間、脇の下、下腹部、陰部など皮膚のやわらかな部分に感染します。ヒゼンダニは50度C以上の温度で死
滅します。
④ 結核
肺結核は過去の病気と思われがちですが、最近患者が増えています。とくに老人性結核が多くなっています。発病して
いる患者が、咳をしたり話しをしたりするとき、無数の菌が空気中に漂い、それを吸うことにより感染します。せき、
痰が治まらないときは受診しましょう。
⑤ 食中毒
次の5種類に大別されます。「腸炎ビブリオ」「ブドウ球菌」「サルモネラ」「0157」。購入時には日付を確かめ
る、寄り道をせずに帰宅し直ぐに冷蔵庫に入れる、手洗いの実施などが予防のポイントです。
介護サポーター新テキスト抜粋(7)
第6章日常生活の支援
この章では、日常的にどのような支援を行えば良いのかを具体的に学びます。
支援に当たっては、できるだけ本人の意志を尊重することが必要です。
「望ましい生活環境」
① 明るく静かで風通しが良く、清潔なところ
② 家族の目が届き、団欒にも参加しやすい所
③ 段差や手すりを改善し、移動の安全を確保
「掃除・清潔保持」
① 清掃中はしっかり換気。本人ができる場合は
手伝ってもらうのが望ましい。
② 台所の清掃は、食品の残りなどに注意する。
③ 浴室のカビ等は塩素系の漂白剤を使う。
④ 布団は週に1回程度陽に干しましょう。
「洗濯・買物・調理」
① 破れ等がある時は利用者に伝えてから洗う。
② 血液、便などが付着している時は先に下洗。
③ 利用者は社会との接点を求めています。買
物などは可能な限り一緒に行きましょう。
④ お金を預かるときは預かり書を渡す。
⑤ 自分の買い物は別の機会にすること。
⑥ 献立はできるだけ利用者に決めてもらう。
⑦ 栄養のバランスを考える。蛋白質、ビタミンA・C、カルシウム、澱粉、脂質など。
⑧ 高齢者の必要カロリーは、男性1250~1550キロカロリー
女性1100~1400が目安です。
⑨ 自分の手拭きとエプロンを持参する。
「食事介助」
① 椅子に深く腰掛け、やや前屈みの姿勢で食事をとります。
② ベッドを上げての食事は体を30度に起こす。
③ まずメニューを伝えましょう。
④ しっかり噛んで呑み込むのを確認するまでは、次の食べ物を運ばないように。
⑤ 誤嚥をしたときは、利用者を前かがみにし、口の中に指を2本入れ、背中をたたく。
「口腔ケア」
① 毎食後うがい、歯磨き、義歯の清掃を行う。
② ケア時にはゴム手袋を着用する。
③ 歯肉は綿棒やガーゼを指に巻き清掃する。
「清拭」
①
入浴ができないときは、清拭が有効です。
②
お湯は50度前後、室温は23度前後を目安に。
介護サポーター新テキスト抜粋(8)
第7章 寝たきりにならないための実技
◎新しい介護の考え方
この章は離床のための実技の勉強です。今までの介護は、ベッドに寝たま
まで介助することでしたが、新しい介護の考え方は、一人一人がその人らし
く生きていくために、まず離床し、ベッドから離れて座ることを大切にしま
す。
しかし残念ながら、いつかは体力が衰えて、両手両足が動かなくなります。
その時は寝たきりの生活になりますが、多くの人は、全身が麻痺するという
ことではなく、体の半分が動かない状態になります。体の半分が動けば必ず
座れます。座れれば、車椅子で移動できます。移動ができれば外出も可能に
なり、生活の範囲が大きく広がります。
◎合意による介護
介護は、まずその人が、日常生活をする上で、何ができて何ができないか
を観察することから始めます。
残存能力を利用して、できることは自分でしてもらいます。できないこと
は、どうすればできるかを知恵を出し合って考えます。それでもできないこ
とは支援者が行います。
支援者が手を抜くのではありません。自分で体を動かすのが大切なのです。
食事、排泄、入浴、移動、脱着などの日常生活の中で、自分でできることが
多くなってくれば、意欲的になり積極性が出てきます。
このような考え方を、介護する人とされる人が良く理解して合意しなけれ
ばなりません。合意による介護を実践すれば、力の余りいらない介護ができ
ると思います。
◎寝たきりにならないための介護方法
①残存能力を最大限に活用する
②健常者の自立動作通りに介助する
③便利な補助具をフルに活用する
④コミュニケーション(合図)を大切にする
介護サポーター新テキスト抜粋(9)
第 8 章 車椅子介助の方法
この章では車いす介助の方法を、イラスト入りでわかりやすく説明します。
足に何らかの障害を持っている人にとっては、車いすは足の代わりです。足だけでなく、心
臓の悪い方も使う場合があります。車いすを使っている人の障害は千差万別です。
「障害を持
っているから」と一まとめに考えるのは誤りです。一人一人の人格を尊重し、プライドを傷つ
けないように注意しましょう。
基本的なことですが、介助の際には身軽な服装にしましょう。常にコミュニケーションを図
り、利用者が安心できる環境作りに心がける必要があります。危険を感じたら遠慮せずに通行
人にでも助けを求めましょう。乗せる前にブレーキの点検、パンク、ボルトのゆるみなどをよ
く見ておきましょう。
「注意すべきこと」
① 道路上のくぼみ、段差、置き石などに注意
② 見通しの悪い交差点、自転車や子供の飛び出しそうな所では安全確認を
③ やむなく車道を通行するときは車に注意
④ 駐車中の車の横を通るときはドアの開閉に注意。
サイドミラーを避けて行動する。
⑤ 看板など道路上に飛び出ている物に注意
⑥ 急な下り坂、段差を下りるとき、溝を渡るとき、砂利道などでは後ろ向きで行動する。
⑦ リフトバスに乗るときも後ろ向きに乗る。
車内では急ブレーキに備えて車いすの前に立つ。
⑧ 駅のプラットホームは、必ず線路と並行に車いすを止め、ブレーキをかける。
⑨ 乗っている人は貴方より前にいます。
何かにぶつかると乗っている人が怪我をします。
⑩ 乗っている人と貴方とは目線が違います。
貴方は大丈夫と思っても、乗っている人は「怖い」と思う場合があります。
⑪ 乗っている人は、貴方以上に車いすの振動、揺れを感じています。
又、貴方以上に夏は暑く、冬は寒く感じています。
⑫ 停車中はしっかりハンドルを握るか、ブレーキをかけましょう。
ハンドルを離すと車が動き出し、大きな事故につながります。
そのほか車いすのたたみ方などがイラスト入りで解説されています。
介護サポーター新テキスト抜粋(10)
第9章
緊急時の対応と応急手当
新テキスト抜粋も今回で最終回となりました。
この章では緊急時の対応と応急手当について学びます。
1.緊急事態が発生した場合の連絡手順
①緊急センターへ連絡。
②何時、誰が、どこで、どういう状況かなどを的確に伝える。
③主治医が分かれば主治医と家族にも連絡。
④支援者は「所属事務所」に連絡。
2.応急手当と救命処置
家庭や職場で出来る手当のことを応急手当といいます。
応急手当で怪我や病気の悪化を防ぐことが出来ます。
最も重篤で緊急を要するのは、心臓が止まった場合です。
こんな場合、そこに居合わせた人が行う手当を救命処置と言います。
3.応急手当を身につける。
交通事故をはじめ急病の内でも、呼吸器や循環器系の一刻を争う
急病人が増加しています。事故や発病直後のより早い段階に、
適切な応急手当が行われ、救命の連鎖が開始されれば、助かる確率が上がります。
救急車が到着するまでの応急手当が、最も大切だと言われています。
ぜひ応急手当の方法を身につけましょう。
4.応急手当がなぜ必要か
心臓や呼吸が止まったり、または多量に出血してから何分で命が失われるか。
①心臓停止後、約3分で50%死亡、
②呼吸停止後、約10分で50%死亡
③多量出血後、約30分で50%死亡
救急車が現場に到着するまでの時間は、全国平均で7・7分と言われています。。
それまでに応急手当が行われるか、否かで助かる命の比率が大きく変わります。
5.応急手当の手順
①呼びかける
軽く肩をたたく
②119番通報とAEDの手配
③気道の確保 呼吸の確認
④人工呼気 胸骨圧迫
(終)
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