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取引額は減少、 しかし市場は依然好調

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取引額は減少、 しかし市場は依然好調
DTZ Research
INVESTMENT MARKET UPDATE
取引額は減少、
しかし市場は依然好調
Japan Q1 2015
24 April 2015

2015 年第 1 四半期の商業不動産取引額(住宅、ホテルを除く)は、前期の 1 兆 3,275
億円から 14%減少の 1 兆 1,473 億円であった。2014 年第 1 四半期の取引額が 1 兆
3,330 億円であったため、前年同期比でも 14%減となった(図 1)。

四半期、年次ベースともに取引額は減少したものの、2015 年第 1 四半期の取引額は第
1 四半期の過去 10 年間の平均を依然 48%上回っており、日本の投資市場が活況であ
ることを示した。

国内投資家による取引が占める割合は全体の 77%と、依然市場を独占しているが、海
外投資家もその割合を増加させている。今期は、大型のクロスボーダー取引が行われ、
東京の優良資産に対する強い投資意欲が示された。

今期は再び「目黒雅叙園」が売買され、市場を賑わせた。当該物件は 2014 年 8 月、ロ
ーンスターから森トラストが取得し、価格は 1,300 億円と言われた。2015 年 1 月、森トラ
ストはラサール インベストメント マネージメント(LIM)に売却、価格は 1,400 億円と報道
されている。LIM はソブリンウェルズファンドとの共同取得と発表しているが、エクイティ
の大半は中国の CIC による出資ではないかと、専ら報じられている。

今期の取引額は前期比で減少したものの、投資市場は引き続き活況に推移している。
不動産価格は前回ピークに比べ、依然低く魅力的であり、金利も安定的に低く、また投
資資金は潤沢で、資金調達も容易と、不動産投資環境は整っている。加えて、不動産市
場では今後の賃料上昇が見込まれており、こうしたことから、今後も投資市場は堅調に
推移するものと予想される。
Contents
取引額
2
投資家種別
2
セクター種別
3
資金の出所
3
主要取引
3
見通し
4
Author
Kayoko Hirao
Head of Japan Research
+81 (0)3 5512 8213
[email protected]
図1
不動産取引額 (単位:10 億円)
4,000
Contacts
Dominic Brown
Head of Asia Pacific Research
+61 (0)2 8243 9999
[email protected]
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
2007
2008
2009
2010
Q1
Q2
2011
Q3
2012
2013
2014
2015
Q4
Source: DTZ Research
www.dtz.com
Investment Market Update
1
Japan Q1 2015
取引額
図2
取引額は減少、しかし市場は依然好調
不動産取引額(単位:10 億円)および第 1 四半期 10 年過去平均
2015 年第 1 四半期の商業不動産取引額(住宅、ホテルを除く)は、
前期に比べ減少したが、市場は引き続き活況に推移した。2015 年
第 1 四半期の取引額は、2014 年第 4 四半期の 1 兆 3,330 億円
から 14%減の 1 兆 1,473 億円であった。2014 年第 4 四半期の取
引額は、第 4 四半期の額としては調査開始以来の最高であったた
め、四半期ベースでの今期の取引額減少は、理解しうることである。
年次比でも、2014 年第 1 四半期が、第 1 四半期としては過去最高
の取引額で、また、第 4 四半期とほぼ同水準の 1 兆 3,333 億円を
記録したことから、同じく 14%の減少となった。いずれと比較しても、
今期の取引額は減少となったが、第 1 四半期の過去 10 年の平均
を 48%上回っており、市場が依然好調であることを示した(図 2)。
1,000 億円を超える大型取引 1 件、また J-REIT も好調だったこと
が、今期の取引額を下支えした。しかし、例年、第 1 四半期には国
内事業会社がバランスシート改善のために保有資産を売却するケ
ースが多く、取引額の上昇が見られるが、今年に関してはそうした
傾向は見られなかった。 むしろ、多くの企業は円安や株価上昇の
恩恵もあり、業績が改善し、資産売却件数の減少につながったとも
考えられる。結果として、今期の取引額は年次比、四半期比とも減
少した。
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1 average
Source: DTZ Research
図3
投資家別取引割合
100%
80%
60%
上場不動産会社が今期はさらにシェアを拡大し、全取引額の 23%
を占め、上場不動産ヴィークルに次ぐ 2 番目の買い手であった。売
り手サイドでは、非上場ファンドや非上場ヴィークルからなる非上場
不動産ヴィークルが、依然最大であったが、これは、REIT を含む
買い手が、しばしば傘下の SPC を通じて物件を取得する、いわゆ
るウェアハウジングの手段を用いていることが、一部起因している
(図 4)。
20%
Quoted Property Vehicle
Public Sector/Government
Institution
Quoted Property Company
Corporate
Other/Unknown
Q1 2015
Q4 2014
Q3 2014
0%
Q2 2014
REIT を中心とした上場不動産ヴィークルが、今期も依然最大の買
い手であった。上場不動産ヴィークルが取引額全体に占める割合
は前期の 30%から、今期は 35%に拡大した(図 3)。第 1 四半期
には 2 件の J-REIT が上場を果たした。ケネディクス商業リート投
資法人は、商業資産を対象としており、上場時の資産は 18 物件、
総額 808 億円であった。ケネディクスは既にそれぞれオフィス、住
宅に特化した REIT を運営しており、本リートが 3 件目となる。その
他、今期上場を果たしたのは、ヘルスケアセクター特化型 J-REIT
の第 2 号となるヘルスケア&メディカル投資法人である。スポンサ
ーは三井住友銀行、NEC キャピタルソリューション、また医療関連
ビジネスを行うシップヘルスケアホールディングスであり、上場時の
資産は 16 物件、総額 236 億円であった。
40%
Q1 2014
REIT が依然トップ、シェアをさらに拡大
Q4 2013
投資家種別
Private Property Vehicle
Private Property Company
Source: DTZ Research
図4
投資家別取引額(取得・売却)2015 年第 1 四半期 (単位:10 億円)
400
200
0
-200
-400
-600
Purchase
Sales
Net position
Source: DTZ Research
www.dtz.com
Investment Market Update
2
Japan Q1 2015
セクター種別
図5
オフィスのシェアは全体の 48%に減少
セクター別取引額 (単位:10 億円)
40%
20%
Office
Industrial
Source: DTZ Research
Q1 2015
Q4 2014
Retail
Office share
資金別取引内訳(国内・海外投資家)
100%
80%
60%
40%
20%
Domestic purchase
Q1 2015
Q4 2014
Q3 2014
Q2 2014
Q1 2014
Q4 2013
0%
大型資産が再び売買に
Foreign purchase
Source: DTZ Research
図7
資金別取引額(取得・売却・国内・海外投資家) (単位:10 億円)
1,200
800
400
0
-400
-800
Domestic purchase
Foreign purchase
Domestic sales
Q1 2015
Q4 2014
Q3 2014
Q2 2014
Q1 2014
-1,200
Q4 2013
その他の大型取引として、東京建物による、自社の出資する SPC
からの資産取得が挙げられる。対象は京橋駅に立地する「東京ガ
ーデンスクエア」の約 46%であり、価格は 951 億円であった。本物
件は 2013 年の竣工、賃貸面積 62,200 ㎡の規模を持ち、ブリヂス
トン等の入居により満室稼働している。東京建物は直接保有により、
バランスシートの適正化および経費削減等を図っていくとしている。
Mixed Use
Other/Unknown
図6
主要取引
今期は再び「目黒雅叙園」が売買され、市場を賑わせた。「目黒雅
叙園」は、37,301 ㎡の広大な敷地に建つ、オフィス、ホテル、店舗、
百段階段等からなる複合施設であり、2014 年 8 月に森トラストが
ローンスターから取得し、価格は約 1,300 億円と報じられた。2015
年 1 月、今度はラサール インベストメント マネージメント(LIM)が、
森トラストから取得したことを発表した。前回の売買から僅か 5 か
月後であるが、今回の価格は 1,400 億円と報じられている。LIM は
ソブリンウェルズファンドと共同で取得しており、一部で CIC と報じ
られている当該ソブリンウェルズファンドが、資金の大半を出資した
とされている。こうした短期間での売買価格上昇は、東京都心部の
優良物件に対する投資家の高い投資意欲を示している。
Q3 2014
0%
Q2 2014
海外投資家がシェアを拡大
今期は他にも、グリーンオーク、ゴールドマン・サックス、フォートレ
ス、パークウェイ・ライフによる物件取得が報じられた。ゴールドマ
ン・サックスは東京駅前の優良オフィス、「グラントウキョウ サウスタ
ワー」の一部を、またグリーンオークは青山のオフィスビルをそれぞ
れ取得した模様である。ヘルスケア資産に特化したシンガポールの
パークウェイ・ライフは、日本でのポートフォリオをさらに拡大させた。
60%
Q1 2014
資金の出所
国内投資家が引き続き市場での取引の大半を占めており、今期の
シェアは 77%であったが、海外投資家のシェアも伸びている。今期
は、海外投資家の東京の中心部における優良資産への投資意欲
の高さを示す大型のクロスボーダー取引が見られた(図 6)。それ
は、グローバルファンドとソブリンウェルズファンドによる大型の複
合施設の取得である。この取引もあり、海外投資家は今期も買い
越しとなった(図 7)。
80%
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
Q4 2013
オフィスが引き続き第 1 四半期も投資対象セクターのトップであっ
たが、前期の 75%から今期は 49%となり、シェアを大幅に減らした。
一方、リテールと複合施設は双方とも前期は 7%であったのに対し、
今期はそれぞれ 18%、19%へとシェアを拡大させた(図 5)。特に、
イオンリートやケネディクス商業リートによる物件取得が、リテール
セクターのシェア拡大を促した。
Foreign sales
Source: DTZ Research
www.dtz.com
Investment Market Update
3
Japan Q1 2015
その一方で、投資対象物件の不足は、一部市場で過熱感を生んで
おり、短期的には利回りには下押し圧力が掛り、価格を押し上げる
だろう。
見通し
市場は引き続き好調に推移
2015 年第 1 四半期の取引額は前期比で減少したものの、投資市
場は依然好調で、このトレンドは年内も続くものと考えている。
不動産価格は全般的には依然魅力的で、金利は低く、安定してい
る。日銀の金融政策もあり、市場には投資資金が溢れ、資金調達
も容易である。米国では金利上昇が予想されているが、日本にお
いては、経済が完全にインフレに転じ、成長が見られるようになるま
で、現在の金融政策が大きく変更になることはないと見られ、短期
的に、金利上昇が起こることは考え辛い。
円安は、引き続き海外投資家の日本市場への参入を促すと考えら
れる。従って、現在の市場は国内投資家が依然独占しているもの
の、今後、海外投資家の動向はさらに活発化し、市場シェアを拡大
させるものと思われる。賃料上昇を伴う市場改善も予想され、海外
投資家はその存在感が増すであろう。
上記のことから、短期的には市場は好調に推移するものと、我々は
予想している。
表1
主要取引
物件名
所在
目黒雅叙園
目黒区
買主
売主
セクター
CIC
森トラスト
オフィス、ホテル
リテール他
ラサール インベストメント
マネージメント
東京スクエアガーデン (46%)
中央区
東京建物
東京建物の SPC
オフィス
青山ビル (95%)
港区
グリーンオーク
三菱地所投資顧問
オフィス
価格(億円)
1,400
(推定)
951
460
(推定)
ゴールドマン・サックスの
SPC
三菱地所の SPC
港区
アクティビア・プロパティーズ
(REIT)
東急不動産の SPC
オフィス
303
イオンモール KYOTO
京都市
イオンリート(REIT)
イオンモール
リテール
214
渋谷桜丘スクエア
渋谷区
国内の SPC
サッポロ不動産
オフィス
170
グラントウキョウ サウスタワー
(11.64%)
千代田区
汐留ビルディング (15%)
オフィス
380
(推定)
Source: DTZ Research
www.dtz.com
Investment Market Update
4
Research
Research
Nigel Almond
Head of Strategy Research
+44 (0)20 3296 2328
[email protected]
Dominic Brown
Head of Asia Pacific Research
+61 (0)2 8243 9999
[email protected]
Japan
Yoshiki Kaneko
CEO, Japan
+81 (0)3 5512 8200
[email protected]
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