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布ナプキンプロジェクトの調査結果

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布ナプキンプロジェクトの調査結果
布ナプキンプロジェクトの調査結果
1. はじめに
布ナプキンプロジェクトは、ウガンダのパリサ県にて 12 歳~17 歳の女子を対象に以
下 2 校の小学校(The Canan Nursery & Junior Academy School と Opadoi P/S in the Agule
County of the Pallisa district)にて行った。
今回のプロジェクト(布ナプキン配布、衛生トレーニング、およびアンケート実施)
は 2015 年 6 月に実施し、4 か月後の 2015 年 10 月にプロジェクトの効果を図るために
追跡調査(アンケート)を実施した。今回のプロジェクトは日本の多くの方からの寄付
により実施することができた。寄付金は、再利用可能な布ナプキン(および下着)購入
費、生理における衛生教育のトレーニング開催費、また配布後の調査費に充てられた。
布ナプキンおよび下着は学校の女子生徒、すでに中退した女子たちへ配布した。寄付金
は上記の活動費に加え、プロジェクト実施前後における女子生徒へのアンケートの集計
やデータ入力などにも充てられた。今回のプロジェクトにおけるインパクト(効果)と
調査結果は以下にて記述している。
2. 背景
布ナプキン配布およびワークショップの実施前に、2015 年 4 月にパリサ県にて学校
を中退する女子たちについて事前調査を行った。多くの女子生徒にとって、両親の経済
力がないために生理用ナプキンを購入することができず、生理用品がないことが中退に
至ってしまう要因になることがわかった。最初の事前調査では、パリサ県の Chair
Person(県知事)、学校の先生、生徒(男女)、コミュニティの長老、生徒の両親など
様々なエリアの人々を対象にインタビューした。発展途上国の多くの地域では、女子の
生理は、初等教育の達成にネガティブな影響を及ぼすことで知られている。清潔な衛生
施設(トイレや手洗い場所)の欠如、学校までの長距離通学、不十分な性教育、生理や
衛生管理などに関する知識の不足、生理用品が購入できないことによる学校の欠席など
が、学校に通う女子生徒が直面する課題となっている。このことが、生理がくる年頃の
1
女子生徒を中退に至らせてしまう。同じ年頃の男子生徒と比べても、女子生徒の中退が
多いことからも推測できる。
教育を受けることは、就職の機会を増やし、女性の能力が低いという偏見をなくすこ
とにも繋がると言われている。上記のような様々な要因により、女子学生の出席率を妨
げ十分な教育を受けることができていないと、将来の展望がとても限定的なものになっ
てしまう。しかしながら、女性の経済的自立を分析する際に、女子生徒のようにまだ生
計を立てるに至らない若い年代の女子については考慮されず、彼女たちが抱える問題の
多くはいつも軽視されてしまう。このような理由から、このプロジェクトは女子生徒の
抱える問題に取り組み、学校に通う女子生徒の生理による負担を減らし、性に関する知
識やジェンダー意識の向上を目的とした。若い世代の女子たちがしっかりとした教育を
享受できる基盤を作ることで、女性のエンパワーメントに繋がると考えている。
3. 分析結果
A. 布ナプキン配布によるウガンダの農村地域の女子たちの負担軽減
日本からの寄付による支援を受け、生理の年頃の女子たちに再利用可能な布ナプキンを
配布し、布ナプキンの使用法および洗い方などの衛生に関する指導をした。支援を受け
た生徒たちの詳細と利点は以下である。
図 1 は、布ナプキンを配布した少女たちの各学年における年齢別の人数である。調査対
象者は生理が始まった女子たちで、調査は小学校(対象学年は P1~P7。ウガンダの小
学校は7年制である)で行われ、図 1 にみられるように、12 歳~16 歳が主な対象とな
っている。
2
図 1: 年齢別 調査対象の人数
35
30
Number
of students
生徒の人数
30
25
30
24
20
19
15
10
5
11
1
7
2
9
10
11
7
1
17
18
0
12
13
14
15
16
年齢
図 2 は、初経を経験した年齢である。女子生徒のうち約 74%は 12 歳~14 歳で初経が始
まり、10%は 12 歳未満から始まっている。また、15 歳~16 歳で経験した生徒は約
16%である。
図2: 初経を経験した年齢別
生徒の割合(%)
35
30.91
30
25
21.82
20.91
20
14.55
15
10
5.45
5
4.55
1.82
0
10
11
12
13
14
年齢
3
15
16
表 1 は学年ごとの支援を受けた生徒数と割合(%)である。ウガンダでは進級試験に合
格すると上のクラスに上がるという仕組みのため、クラスに在籍する生徒の年齢はバラ
バラである。今回調査をした対象生徒(生理になる年齢)のほとんどが P6、続いて P7、
そして P5 と続いている。P4 からは 8 名、P3 からは 1 名だった。ここからわかることは、
初経を経験する生徒の多くが P6、P7 に在籍しているため、上位クラス(P6、P7)の生
徒の中退率が高い理由の一つが生理だと推測できる。
表 1:
各クラス(レベルごと)の生徒数
クラス
生徒数
%
1
0.75
P.4
8
6.02
P.5
34
25.56
P.6
49
36.84
41
30.83
P.3
P.7
低レベル
高レベル
合計%
上のクラス(=初
経の年齢) になる
ほど中退率が高
くなる
100
表 2 は、支援をした少女たちの平均的な生活環境を表している。生徒のうち 70%は自
宅から徒歩 1 時間近くかけて学校に通っており、1 家族に 7 人の子ども、1 日 2 食とい
うのが平均的である。
表 2: 生徒の生活環境
様々な状況
平均
学校の寮にいる割合
30%
学校までかかる時間
57 分
一日の食事の回数
2.1 回
両親と同居している生徒の割合
79%
家族の人数
9名
両親がいない場合、何人と住んでいるか
11 名
同居している子どもの人数
7名
4
図 3 は、両親が存在する生徒の割合である。父親が死亡している生徒の割合は 23%、
母親が死亡している割合は 21%である。この結果から、生徒のほぼ 2 割は片親、もし
くは孤児であると言える。
図 3: 両親の存在有無の割合(%)
79
77
80
60
23
40
21
20
0
Father
父親
Mother
母親
Alive
Dead
生存
死亡
両親がそろっていない生徒が多い中、性教育や生理についてどのように対処したのか質
問した。図 4 は、事前(初経の前)に生理について聞いたことがあるか、どのように対
処するのかを教わったかどうかを示している。89%は生理について聞いたことはあるが、
11%は知らなかったという回答である。また、33%は初経前に生理時の対処法を知らな
かったという回答である。
図4: 初経前に生理について聞いたことがある、また対
処法を教わった生徒の割合(%)
Yes
89
100
67
80
60
40
33
11
20
0
生理について聞いたことがある
対処法について聞いたことがある
5
Never
今回の調査対象の女子生徒たちに、生理について誰と情報共有したかを図 5 で聞いたと
ころ、「母親」からが 68%、「兄弟か姉妹」からが 31%だが、「学校の先生」からは
たった 2%である。学校教育の中に、生理に関する授業がきちんと取り入れられていな
いということが分かる。
図 5: 生理についての情報元による生徒
の割合(%)
68
70
60
50
40
30
20
10
0
31
18
15
2
Mother
母親
Sibling
兄弟姉妹
Teacher
先生
Relative
親戚
Stranger
他人
図 6 では、性教育は必要だと思うかという問いに対し、95%もの生徒が必要と感じてい
るとの結果が出た。
図 6: 性教育は必要ですか?
95
100
80
60
40
5
20
0
Percentage reporting Yes
「はい」と答えた%
Percentage Rreporting
「いいえ」と答えた%
No
6
性教育において何を学びたいかという問いに対し、図 7 では「生理」についてが 67%、
「保健・衛生」が 48%、その他「体の変化」、「性」、「青年期(生活習慣)」につ
いて知りたいとのことだった。
図 7: 性教育で学びたい事項による生徒の割合
(%)
67
70
60
50
40
30
20
10
0
48
29
29
17
生理について
保険・衛生
体の変化
性について
青年期について
図 8 は「生理用ナプキン」というものを知っているかについて、2015 年 6 月に実施し
たプロジェクト前後の変化を調べた。実施前は生理用ナプキンについて知っている生徒
は 75%、実施後の調査では 96%が知っていると答え、21%(75%→96%)の上昇がみ
られた。
図8: 生理用ナプキンを知っている生徒の割合
(%)
96
100
75
80
60
40
20
0
プロジェクト実施前
Before
AfroPAD project
プロジェクト実施後
After
AfroPAD project
7
図 9 において、生理時のナプキン使用についても変化が見られた。プロジェクト実施前
は生理用ナプキンを使用している生徒の割合が 38%だったが、実施後は 60%になった。
したがって、ナプキン使用率が 22%(38%→60%)も上昇した。
図9: 生理中のナプキン使用率(ワークショップ
前後)
60
60
50
38
40
30
20
10
0
Before
AfroPAD project
プロジェクト実施前
After AfroPAD
project
プロジェクト実施後
図 10 で生理用ナプキンを使用していない生徒を対象に理由を聞いたところ、71%が
「生理用ナプキンを買うお金がない」、17%が「生理用ナプキンについて知らない」、
12%のその他では「他の代用品で何とかなるので特に必要ない」と答えた生徒もいる。
図10: 生理用ナプキンを使わない理由による生
徒の割合(%)
その他の理由
Other
reasons
12%
知らない
Ignorance
17%
お金がない
Lack of money
71%
8
図 11 は生理用ナプキンを使用しない生徒たちがどう対処しているのか聞いたところ、
73%が下着、67%はコットンやウール素材のもの、55%は古着、33%はトイレットペー
パーで代用していると回答した。しかし、代用品でも清潔なものを使っていなければ、
感染の危険にさらされる。
図 11: 生理用ナプキンを使用していない生徒の
代用品による生徒の割合(%)
73
80
70
60
50
40
30
20
10
0
67
55
33
%ティッシュやト
using Tissues
イレットペー
(Toilet Paper)
パー(%)
%下着(%)
using Nickers
コットンやウー
%
using Cotton
ル(%)
Wool
% using Old Cloth
古着(%)
図 12 では初めて生理になったときにどんな気持ちになったか聞いたところ、70%近く
が「恥ずかしい」や「イライラした」とのことだった。このような気持ちになるのは、
やはり性教育を受けておらず、さらに同級生にからかわれることからくると推測される。
他には 40%が「病気だと思った」24%が「不安になった」と回答した。
図12: 最初に生理が来たときにどう感じたか
による生徒の割合(%)
日本では生理
になったらお
赤飯でお祝い
しますよね!
71
イライラ
ANNOYED
24
不安
FEAR
39
SICK
病気
69
恥ずかしい
ASHAMED
0
10
20
30
40
Percentage
%
9
50
60
70
80
図 13 は、生理中にからかわれたことがあるかという問いについて、86%が「はい」と
回答した。これだけ多くの女子生徒がからかわれた経験を持っていることから、学校も
社会もいかに性教育が不足しているかが分かる。
100%
図 13: 生 理 中 に か ら かわれ たこ とがあ
る 生徒の 割合( %)
90%
80%
86%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
14%
0%
「はい」
Yes
「いいえ」
No
図 14 では、生理中に誰にからかわれたかを聞いたところ、同じ学校の男子にからかわ
れた女子生徒が 39%いる一方、同じ学校に通う同性である女子にからかわれたことが
ある生徒が 27%もいるのは意外な結果であった。
図 14: 生理中に誰にからかわれたかによる生徒の割合(%)
学校外の男子と女子の両方
Both boys and girls ouside this school
7%
Both Boys 学校内の男子と女子と両方
and Girls in this school
27%
Girls in学校内の女子
this school
27%
39%
Boy in this school
学校内の男子
生理中に学校に通う女子生徒にどのような影響があるのかを調べるために、図 15 で生
理中の欠席率、1 か月間のうち生理で学校を休む日数について質問した。布ナプキン配
10
布前後で調べたところ、布ナプキン配布前(オレンジ)、いわゆる布ナプキンを所持し
ていないときと比べると、布ナプキンの配布後(青)、布ナプキンを所持してからの欠
席率が明らかに減少している。この図からわかることは、例えば布ナプキンを使用して
いない生徒の 68%は 3 日以上も欠席している一方、布ナプキンを所持している生徒で 3
日以上の欠席は 25%しかいない。布ナプキンを所持することにより、生理中に学校を
休まずに行けることが分かり、再利用可能な布ナプキン配布によって、出席率に大きく
効果があったと言える。
図 15: 1か月間の生理中の欠席日数による生徒の割合
(%)
41
50
40
29
30
21
20
20
5
10
13
12
6
4
0
Absent Once
1日休む
Absent
Twice
2日休む
Three
times
3日休む
ナプキン所有し
Those
With PADS
ている生徒
Four
Times
4日休む
Five
and
5日以上休む
Above times
ナプキンを所有して
いない生徒
Those Without Pads
図 16 は、生理中に学校に行かない理由を聞いた。49%は気分が悪い(病気)、34%は
生理中に学校へいくのは恥ずかしい、4%は親から学校に行かなくてよいと言われたと
回答した。
11
図 16: 生理中に欠席した理由による徒の割合(%)
14
その他
Other reasons
4
親に家にいるように言われた
My parents
told me to stay home
I felt ashamed to attend classes when in
生理中に教室に行くのは恥ずかしい
periods
34
49
I felt sick
気分が悪い
0
10
20
30
40
50
図 17 では、生理中に生徒が抱える課題(困難)を調査した。生理中に学校を欠席し、
試験を受けることができなかったことがある生徒は 45%であり、そのうち 89%の生徒
は生理用ナプキンがないことが一番の原因だと答えた。
図 17: 生理中に試験を受けることができなかった、また生
理用ナプキンがないことが影響したと答えた生徒の割合
(%)
89%
100%
80%
60%
45%
40%
20%
0%
Percent that has ever missed Percentage reproting that
生理のために試験を受けれなかった
生理用ナプキンがないことが影響した
exams due to periods
lack
of Sanitary Pads is a
割合(%)
と答えた生徒の割合(%)
problem affecting them
表 3 は、生理用ナプキン配布前後における、生徒の成績結果を表している。英語と数学
(この二科目は成績として数値に表れやすいことで調査対象として選択した)の成績に
よると、生理用ナプキン配布後の学期成績にかなりの上昇がみられる。例えば、1 学期
の女子生徒の平均点は数学が 7.4、英語が 7 だったが、ナプキン配布後の成績はそれぞ
12
れ 4.9 と 4.4 に上昇した。ウガンダの教育のシステムは一番良くて「1」下がって最下位
が「9」となる。従って、成績が「7」から「4」の数字の変化は、成績が非常に上がっ
たことを表している。
表 3: 生理用ナプキン配布前後における成績の平均点
平均点
ナプキン配布前
ナプキン配布後
数学
7.4
4.9
英語
7
4.4
備考: 成績は一番上が 1→9 が最下位となる。
4. 結論
今回の調査結果から、生理用ナプキン配布とプロジェクト実施による効果(インパク
ト)は、生理用ナプキンについての知識の向上、生理用ナプキンの使用率、学校の出席
率、数学と英語の成績の上昇として結果が出た。
この調査から、70%ほどの女子生徒(30%は寮)の置かれている環境の特長は、家族と
一緒に住んでおり、自宅から 1 時間かけて通学している。そのうちの多くは生理用ナプ
キンを買えるだけの余裕がないと答えた。この状況では、生理中にナプキンもない状態
で 1 時間近く歩いて通学することを余儀なくされ、結局は学校を欠席してしまうことに
なる。
今回行った性教育に関する調査では、95%の女子生徒は性教育が必要だと答え、その
うち 67%は生理について正しく学びたいと答えた。また、プロジェクト実施前後でみ
られた変化の一つは調査実施前と比べると、生理用ナプキンについて知ったという生徒
は 22%も上昇した。従って、生理に関する知識や生理用ナプキンの正しい使用法を知
ることが非常に重要であることが分かる。図 9、10、11 を見ても、62%が貧困のため生
理用品を購入できずナプキンを使用していないと回答し、より安いもので代用するため
下着やコットンで代用している。しかし、不衛生なものによる感染の可能性は免れない。
13
そのため、この生理用ナプキン配布後に 22%の生徒がナプキンを使用するようになっ
たのは、そのような感染のリスクの減少に寄与したと言える。
また、多くの生徒が生理になると恥ずかしい思いやイライラすると答えたが、おそら
く同級生にからかわれることが影響していると思われる。86%もの生徒が生理中に同級
生にからかわれたことがあると答え、さらに驚いた結果は、からかうのは男子だけでな
く、女子もいたことだ。男女共に生理に関する正しい知識や意識の向上が必要である。
学校の成績についても、生理中に学校を休み、試験を受けられないことが、成績に大
きく影響することが明らかになった。生理用品配布後には数学や英語の成績が上昇した
ことからも影響の大きさがわかる。
結論として、生理用ナプキンがないために同級生にからかわれたり、不衛生なものを
代用することは、生理中の女子生徒にとって非常に酷な状況であり、学校を欠席したり、
中退してしまう大きな要因である。そのような状況において私たちが行った再利用可能
な布ナプキン配布後、学校の出席率や成績の向上がみられたことはプロジェクトの効果
があったと言える。今回の調査結果により、生理に関する正しい知識や衛生教育が男女
ともに非常に重要であることが明らかになった。
以上
14
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