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1 1 はじめに オーストラリアでは、多くの学校で、保護者 と地域の代表者

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1 1 はじめに オーストラリアでは、多くの学校で、保護者 と地域の代表者
週休2日制。1月末(または2月初め)学期が
訪 問 国:オーストラリア
始ま
研修テーマ:
「学校と地域等の連携」
所属名
氏
1
名
横 山 由佳子
はじめに
オーストラリアでは、多くの学校で、保護者
り、12 月中旬に4学期が終了する。(それぞれ
と地域の代表者が学校経営に参画する制度(学
の学期は約 10 週間)
校審議会制度)を導入し、地域の福祉団体、企
(4)義務教育と学年
業、大学などと“パートナーシップ”と呼ばれ
学齢は6歳から 15 歳の 10 年間が義務教育、
る支援関係を結び大きな教育上の成果を上げて
プレップ(学齢5歳)と呼ばれる小学校への準備
いる。訪問先は、ビクトリア州およびニューサ
学級を義務化している州も多い。10 年生では就
ウスウェールズ州の各教育省、小学校、中等学
業体験システムがあり、進路を含めたキャリア
校6校他、公的教育研究機関(ACER)
、NPO 法人
教育にも熱心である。後期中等教育終了後、高
の教育支援団体等であり、人と人、組織と組織
等教育への進学、技能・継続教育機関、就職す
を結びつけることで子どもたちの成長を多方面
るかを選択する。
から支援する仕組みを構築していた。この先進
(5)教育に関する課題と近年の動向
的な「連携」の実情を調査した。
2
千葉市立蘇我中学校
オーストラリアの歴史から、先住民との関係や
オーストラリアの教育状況(教育制度等)
移民などにより多様な人々を受け入れ、多文化主
(1)カリキュラム
義による教育が実践されている。学校経営は校長
オーストラリアは連邦制度を採用し、初等・
に委ねられており、人事・財務・設備面など校長
中等教育についても各教育省で国が告示する教
の権限は大きい。学校審議会による学校長自身の
育方針にそってフレームワーク(標準規格)を
人選も日本とは大きくシステムが異なっている。
作り、各州・各管轄区の責任により行われてい
1989 年の国家教育指針以後「すべての子ども・若
る
者に等しく質の高い教育を提供する」という理念
① メ ル ボ ル ン ( ビ ク ト リ ア 州 ) で は 、 school
から、ナショナルカリキュラム開発や全国学力調
Council 制度を法制化し、州全ての学校に配置
査の実施など国の権限が増大し、古くからの「柔
し、学校経営・運営を行うことが法的に義務付
軟性」と近年の「統一性」のはざまで揺れ動いて
けられている。
いる。
②シドニー(ニューサウスウエールズ州)では P
3
学校訪問をして
&C を法制化し、保護者と地域が学校の教育活
(1)サンシャインハーベスタ・プライマリースクー
動を支援していくことを狙いとしている。
ル(Sunshine Harvester Primary School)
(2)教科
①学校の概要
芸術・英語・保健体育・外国語・算数・理科・
メルボルン市内から西へ 30 分中央サンシャイン
社会と環境・技術などの教科の他「総合的カリ
地域において 50 年以上ぶりに新設された共学の
キュラム」を取り入れ、特に小学校では複数教
小学校である。6年生まで 411 名(プレスクールに
科統合型の授業が多い。教科書については、各
55 名)の児童が在籍する。児童のうち約 70%は英語
州教育省によって告示された学習指導要領をも
以外を母国語とし、その多くは最近移住してきた
とに各学校がカリキュラムや教材を独自に開発
難民の子どもたちである。
している。
②中間支援団体の役割
(3)学期制
1988 年から恵まれない児童・青尐年の教育を
学期は4学期制(タスマニアは3学期制)で
助けてきたのが、中間支援団体アードック
1
(Ardoch youth foundation)であった。ボラン
ち解けることが難しい状態である。学校に対する
ティアをしたい地域住民や企業などの組織団体
理解を得るために様々な苦労があった。
と、ボランティアの助けを借りたい学校の間に
②ボランティアによる支援
立ち、互いを結びつける存在である。アードッ
年に1回の夕食会。年2回の学校でのコン
クは外部からの寄付金を基に専門のスタッフを
サート、食事も提供。生徒と保護者を交えた
採用し、ボランティアの選考やトレーニング、
面談の実施。食事を共にし、生徒の才能を見
スクリーニングを実施し、必要としている学校
せる場面を作り、学校と地域(保護者)の連携
へ派遣している。派遣されたボランティアには、
を進めてきた。学校内に、スイスファミリー
達成感を味わうことで無償の代償としている。
(中間支援団体)の拠点がある。
また、教育を支援することで社会貢献を希望し
ている企業には資金を提供してもらい、企業と
地域の学校との結びつきを支援している。この
ように、学校現場と地域、企業、ボランティア
を結びつけコーディネートし、支援する組織が
オーストラリアの教育の底上げに大きな力を発
揮していることがわかった。
③地域の自主的なボランティアと学校を結ぶき
っかけ作り
【パンチボウルハイスクールでの説明】
ACER(Australian Council for Educational
4
研修成果の活用
Research)リサーチに基づいた知識・商品を開
歴史的な背景から、多国籍・多民族・多文化、
発し、
より教育に役立てることを目的とした NPO
社会的経済的弱者の多い国であることから、学
民間非営利団体である。ピサの学力テストを行
校・家庭・地域社会の連携・協力は欠かすこと
って有名。2009 年よりスクールズ・ファースト
の出来ないものである。学校と地域の間を取り
で賞を出すことにより、学校と地域社会のパー
持つ、中間支援団体(ACER、NAB、アードックの
トナーシップの構築をさせている。賞の受賞と
ようなファンデーション、スミス財団)が、学
それまでの取組により、生徒の学習成果を上げ、
校と地域社会(保護者・地域のボランティア・地
生徒の福利改善が行われている。学校は、賞金
域の企業)を結びつけ、子どもたちの学力向上、
を得ることで、学校側が行いたいと考える教育
生活向上のきっかけを作っていた。子どもたち
ができ、地域と学校の保護者を巻き込んで、よ
への教育力の必要性が生じ、それが主体的に社
り向上するきっかけを作っていることがわかっ
会貢献する人を育てるボランティア教育になっ
た。2011 年 IMPACT 受賞校である。
ていることがわかった。ビクトリア州の学校評
(2) パ ン チ ボ ウ ル ・ ボ ー イ ズ ハ イ ス ク ー ル
議会は、学校と地域が一体になり学校運営を進
(Punchbowl boys high school)
めている。ニューサウスウエールズ州の P&C は、
①学校の概要
保護者・地域と共同して学校運営に取り組み、
シドニー南西部の人口増加に伴い、1956 年に
地域・家庭・学校の双方向に利益をもたらすシ
設立された男子校である。7年生(中学1年生)
ステムが構築されていた。地域の教育力の活用
から 12 年生(高校3年生)までの 407 名の生徒
は本市においても有効と考える。子どもたちの
が在籍している。在校生の 99%の保護者が非英語
力を向上させるためにも、情報を発信させなが
圏出身者であり、その大部分が、戦争から逃れて
ら、学校支援ボランティアの人材確保・育成を
きた中近東からの移民である。そのため、ほとん
学校と地域の連携の中で維持する仕組みを構築
どの保護者が、言語や低所得の問題を抱える社会
し、地域との連携で互恵性、達成感の構築が必
的経済的弱者でもあり、言語や宗教の違いから打
要である。
2
訪 問 国:イギリス
研修テーマ:学校と地域等の連携
所属名 千葉市立大森小学校
氏
1 はじめに
名
深 田
弘
1996 年教育法により、①同年齢の大部分の子ど
子どもたちの「生きる力」を育むためには、
もに比べ著しい学習上の困難を有する。②学校
学校・地域・家庭等が教育におけるそれぞれの
で通常提供される教育施設の利用を妨げるよ
役割と責任を自覚し、相互に連携・協力に努め
うな障害を有する子ども、と定義されている。
ることが不可欠である。このことから、諸外国
特 殊 教 育 は 主 と し て 特別 教 育 学 校 (special
の学校における社会体験活動や地域・家庭・各
school)で行われるが、1996 年教育法は、特別
種団体等と学校との連携の在り方、行政機関の
な教育ニーズを持つ子どもをできる限り通常
支援体制等の現状や取組を調査した。
の学校に受け入れるよう定めている。
2 イギリスの教育状況(教育制度等)
3 学校訪問をして
イギリスの教育制度は、地域により若干異な
【HAMPTON HILL JUNIOR SCHOOL】
る。同じ国内でもイングランド・スコットラン
①概要
ド・ウェールズ・北アイルランドでそれぞれ特
リッチモンド地域にある7~11 歳の子ど
色ある教育制度が実施されているが、義務教育
もが在籍している初等学校で、地方自治体が
終了時(16 歳)には、全国学力試験-GCSE-を受験
運営費を賄う地域学校である。オフステッド
しなくてはならない。
(教育水準査察局)から「傑出している」と評
初等教育
価されている。
初等教育は5~11 歳の6年間とされており、
②特徴的な取組
多くは6年制の初等学校(primary school)で行
・学び方を重視した充実したカリキュラム
われる。
・自主性を育てる多様な活動
中等教育
・豊富なクラブ活動
中等教育は 11~18 歳の7年間で、最初の5
③考察
年間が義務教育である。中等学校の一般的な形
テーマを設け地理・歴史・科学を合わせた
態は、総合制中等学校(comprehensive school)
クロスカリキュラムや地域と連携してレス
で、初等学校の終了者を原則無試験で受け入れ、
トラン経営や鶏卵販売のような課題に取り
生徒の能力・適性・志望などに応じた教育を提
組むプロジェクト学習を行っている。また、
供している。義務教育後の中等教育においては、
リサイクルやビオトープ作りなど体験を通
大学への進学準備教育や特定の職業のための
した環境教育、海外の学校との交流を行う国
教育・訓練など、生徒の進路に直接対応した
際理解教育など、体験活動も充実している。
多様な教育・訓練が様々な機関・過程で行われ
そして、7割近くの子どもが楽器演奏を学
ている。
び、専門家のボランティアによる個人指導を
特殊教育
受けている。このような多彩な教育活動がで
特殊教育の対象となる子どもは「特別な教育
きるのは、長期的な視点に立った学校経営が
ニーズ」(SEN:Special Educational Needs)を
可能なことと学校長の強いリーダーシップ
持つ子どもと呼ばれる。SEN を持つ児童生徒は、
によるところが大きいと思われる。
3
わる機会を増やしたりするなど、子どもたち
の学力向上の基盤となる家庭の教育力の底
上げに加えて、家庭や地域とのつながりを深
めている。
《楽器演奏の個人レッスン》
【E-ACT BLACKLEY ACADEMY】
①概要
《読み聞かせの授業》
マンチェスター市にある、既存の初等学校
4 研修成果の活用
の建物や設備を活用して 2012 年に開校した
学校で、4~11 歳までの子どもが在籍してい
イギリスの Nursery から College まで、
さらに、
る。改編前は業績が低く、オフステッドの評
特別支援学校や子どもたちが放課後を過ごすため
価では、目標を達成した子どもがわずか5%
の施設(プレイグランド)と幅広い学校や施設を
で、イギリスの中では低いレベルの学校であ
訪問することができた。
った。
「E-ACT」がスポンサーとして学校
いずれの学校においても、学校からの保護者へ
運営をサポートすることになり、アカデミー
の約束事を明記したり、いじめについての誓約書
という名称でスタートしている。
を保護者に提出してもらったりと、保護者と学校
が教育方針を共有していた。
②特徴的な取組
また、卵の販売やレストラン経営などの地域を
・抜本的な組織の改編
・自由度の高いカリキュラム
巻き込んだ体験プログラム、音楽家による演奏指
・地域の教育力向上と地域とのつながりを
導や専門家による芸術活動の指導、保護者ボラン
ティアによる個別の学習支援など様々な協力を得
重視した教育活動の展開
ていた。
③考察
この学校は地方自治体の運営ではなく、慈
家庭や地域と連携を図り、その教育力を生かし
善会社のサポートによって学校を運営して
ながら子どもたちを育てていくことは、千葉市に
いる。このことが、地域との連携において日
おいても大きな課題である。地域や家庭の方々と
本の学校制度とは違う。改編の一つとして、
上手に連携を図り、子どもたちの実態に合わせた
新しい校長を迎え、半数ほどの教員が入れ替
支援を得るために、情報発信等を通して学校の門
わっている。教職員は学校長の示す目標の達
戸を広くし、保護者や地域の方が学校に関わりや
成に向けた実践を重ねているが、果敢に挑戦
すい環境をつくっていきたい。また、様々な活動
する教師をさらに集め、より飛躍することを
への支援をお願いできるような学校ボランティア
当面の課題としている。改編後は平均を大き
の組織づくりや学年・学級とのコーディネートを
く下回っていた子どもたちの学力が国の設
行っていきたい。そして、一方的に支援を求める
定するレベルにまで向上した。また、失業率
だけではなく、学校から地域に対してできること
が高いという地域の課題に対して、地域や保
を探したり、要望を聞いたりしながら積極的に協
護者を対象とした教育活動を定期的に行っ
力していくことで地域とのつながりを深めていき
たり、ボランティアとして保護者が学校に関
たい。
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