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資料7 - 経済産業省

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資料7 - 経済産業省
資料7
総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会
電力システム改革小委員会 第 11 回制度設計WG
法的分離に伴う従業員の人事管理等に対する意見
平成 26 年 12 月 24 日
全国電力関連産業労働組合総連合
法的分離に伴う従業員の人事管理に対する弊組織の考え方は、本WGの第9回会合に
おきましてご意見申し上げたとおりであります。
その上で、本日のWG資料として事務局より新たにご提示いただいた「従業員の人事
管理制限の必要性(立法事実)
」
「人事管理規制の合理性」を中心に、勤労者保護の観点
から、ご意見申し上げます。
記
1.従業員の人事管理制限の必要性(立法事実)について
(1)事務局資料 11 頁全体を通じて、次期通常国会への上程が目指されている電気事
業法改正による法的分離を行う以前の、即ち、現行体制の下での内容・事象が記載
されていますが、今般の電力システム改革に伴う送配電部門の分社化(法的分離)
によってこれまで以上に強い中立性確保策が講じられる中にあって、こうした現行
体制下における事象等が、法的分離以降においてもなお、従業員の人事管理の制限
が必要、とする立法事実足り得るのか、疑問です。
(2)立法事実に係る事務局案に対する弊組織の基本認識は、上記(1)のとおりです
が、その他、記載内容を見ても、
「一般送配電事業者の従業員が、グループ会社の
従業員の地位に就いている等の場合、
(中略)送配電事業の中立性を害する恐れが
存在する」
「一般送配電事業に従事する従業員については、一般送配電事業者の中
立性確保の観点から、
(中略)発電・小売事業との兼職を制限することなどの一定
の制限が必要ではないか」などとありますように(
「等」
「など」が具体的に何を指
しているのかは明らかではありませんが)
、一般送配電事業者の従業員の兼職禁止
の必要性が提起されているような印象を受け、クーリング期間設定の必要性までを
含めた立法事実としては、説得力に欠けるのではないかと考えます。
(3)
「実際、一般送配電事業に関する日常業務については、全てについて取締役等が
決定している訳ではなく、現場の判断で実施されている部分もあるため、一般送配
電事業者の従業員が中立性を害する行為を行う恐れがある」とありますが、
「現場
判断で実施されている日常業務」とは具体的に何を指し、何ゆえ一般送配電事業者
の従業員が中立性を害する恐れがあるのか、明らかにされていません。
そもそも、あらゆる企業において、事業に関する日常業務の全てを取締役等が決
定していることなどあり得ず、そうした通常の民間企業でもあり得る一般論として
記載されているとするなら、こうした送配電部門に働く従業員の「悪意の存在」を
前提にするかのような論理展開は、立法事実としては、抽象的で粗雑ではないかと
考えます。
2.人事管理規制の合理性について
(1)事務局資料 12 頁では、提案内容は、
「企業による従業員の人事管理に関する一定
の規律を設けるもの、すなわち、一般送配電事業者やそのグループ会社である発
電・小売事業者が、一定の業務に従事している者や従事していた者をその人事管理
権に基づき一定の業務に従事させることを制限するものであり、直接職業選択の自
由(憲法 22 条 1 項)を制約するものではない」
「違反した場合であっても、事業者
に対する業務改善命令や罰則の適用を行うこととなる」などとされています。
ここで言う「人事管理権」がいわゆる私企業の人事権を指すとすれば、労働者の
地位の変動や処遇に関する使用者の決定権限を意味する人事権は、労働契約に基づ
く権利であり、人事権に制限を加えることは、労働契約内容を制約することにつな
がり、例えば、異動の希望を出してもそれを叶えることができないなど、働く者の
権利を制約し、直接的ではなくとも、ひいては、当該労働者の職業選択の自由を制
約する恐れがあるのではないか、さらには、当該労働者の自己決定権を制約し幸福
追求権(憲法第 13 条)の問題が生じる恐れ、あるいは職業能力開発機会を制約す
る恐れがあるのではないかと懸念します。
(参照:
「民法講義Ⅰ 総則」山本敬三(有斐閣)
)
(2)第9回WGでも申し上げたとおり、公正競争上の必要性から行為規制の妥当性を
論じるにあたっては、取締役等のような事業の意思決定を行う利益代表者と、それ
に該当しない従業員とを明確に区別して行うべきと考えます。
今般の送配電部門の法的分離によって、これまで以上に強い中立性確保策が講じ
られるものと認識しますが、法的分離に係る法改正の法益が損なわれることのない
よう、仮にある一定の行為規制が必要であるとするなら、その範囲は、企業の利益
代表者など事業の意思決定に関わる者に限定されるべきであり、その意味で、今般
の事務局案は、勤労者保護の観点で、過剰な規制ではないかと考えます。
事務局資料 12 頁のとおり、今般の規制に係る詳細な内容は、今後のガイドライ
ン等に係るご論議によるとのことでありますが、その際は、これまで申し上げたご
意見を斟酌いただくなど、是非とも、労働者の権利保障に十分配意いただきますよ
う、切にお願い申し上げます。
-2-
(3)事務局資料全般を通じ、
「一定の」
「に関与する」
「影響を与えうる」
「恐れがある」
「など」
「等」のように、まだまだ定義や解釈が曖昧な文言、表現も少なくありま
せん。立法作業である以上、用語については定義や解釈が明確で一義的でなくては
ならないと考えますし、多くの従業員を投網的に規制対象範囲とするような行政裁
量による拡張解釈がなされないよう、具体的・客観的なご議論をお願いいたします。
なお、資料 15 頁にあるとおり、事務局としては、一般送配電事業者からのグル
ープ会社への転籍・在籍出向如何を問わず、
「当該規制は一般送配電事業者の従業
員の職業選択の自由を制約するものであるため、この点も踏まえた検討が必要。
」
と認識されているものと理解しています。
(4)従業員に対するクーリング期間の設定に対する弊組織の考え方は、その期間の長
さによらず、これまで申し上げてきたとおりであります。
その上で、事務局資料 15 頁では、例示的表現ではありますが、クーリング期間
を「例えば2年間」とされています。
この点、既に平成 19 年改正によって廃止されている国家公務員の再就職に係る
規制との比較には妥当性がないと考える旨は、第9回WGでも申し上げたとおりで
ありますが、加えて、送配電事業の中立性確保とは論点の本質は異なるものの、
「職
業選択の自由」との整合の観点での「期間の有効性」という切り口で考えれば、
「競
業避止義務期間の有効性」に係る判例が1つの参考になるのではないかと考えます。
この「競業避止義務期間の有効性」について、事務局である経済産業省ご自身が
実施された委託調査結果に基づき、
「近年は、2年の期間について否定的に捉えて
いる判例が見られる」と経済産業省ホームページでご紹介されていることと、例示
とはいえ、今般の事務局案で「例えば2年間」としていることは、果たして整合的
なのかどうか、明らかにしていただきたいと考えます。
(参照:経済産業省「営業秘密管理指針」
「参考資料6 競業避止義務契約の有効性」
)
3.さいごに
弊組織としては、本日の論点である法的分離や小売全面自由化等の電力システム改
革全般について、それが真に中長期的な国益や国民利益につながることを切に願うも
のでありますし、改革後の環境下で私どもとしても精一杯努めてまいる所存ですが、
いかなる改革であろうと、そこで働く者の憲法上の権利は保護・保障されなければな
らないと考えます。
今般の従業員に対する規制の是非に関しても、公正競争のための中立性確保の必要
性は当然としても、労働者の憲法上の権利とを比較すると、圧倒的に後者の必要性が
大きく、前者は、後者を阻害しない範囲でのみ認められるべきと考えます。
-3-
その他、私ども電力労働者は、労働関係調整法における公益事業規制に服しながら、
民間労働者として唯一、憲法で保障される労働基本権の1つである団体行動権の制限
を受けています。紛れもない民間労働者でありますので、当然ながら、公務員の人事
院勧告制度のような代償措置も講じられていません。
この点、改正電気事業法案に係る国会審議を通じ、自由な競争の促進を第一義とす
る電力システム改革の趣旨と整合性を図る観点から、私ども電力労働者の労働基本権
の在り方に関する検討が、ようやく所管省である厚生労働省において進められるとこ
ろとなりましたが、当該ご検討の場におきましては、
「電力安定供給確保のためには、
電力労働者の団体行動権を制約してもやむを得ない」といった乱暴な論議も散見され
るのが実情です。
申すまでもなく、実りある電力システム改革は、私ども電力労働者の権利制約によ
ってではなく、エネルギー政策の所管箇所である経済産業省の責任の下、当WGの皆
様方の真摯なご議論に基づく制度設計によって成し遂げられるべきものと考えます。
私ども電力関連産業で働く者も国民であり、生活者、消費者であります。
今般の従業員の人事管理規制に係る論点も含め、弊組織としては、本来的に保障
されるべき労働者の権利を蔑ろにするような改革は、受け入れがたいということは
明確にさせていただきたいと考えます。
以 上
-4-
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