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2015年度A日程入試 2015年度A日程入試 刑法

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2015年度A日程入試 2015年度A日程入試 刑法
2015年度A日程入試 刑法
【出題趣旨・解説】
問1
(1) 偶 然 防 衛 を 素 材 に 正 当 防 衛 の 基 本 的 要 件 で あ る「 防 衛 の 意 思 」の 要 否 を 問 う 問 題 。
正 当 防 衛 が 成 立 す る た め の 主 観 的 要 件 ( い わ ゆ る 主 観 的 正 当 化 要 素 ) と し て 、「 防
衛の意思」が必要か否かが問題
と な る 。偶 然 防 衛 、す な わ ち 、た ま た ま 客 観 的 正 当 防 衛 の 結 果 が 生 じ た と い う 場 合
( 例 え ば 、X が Y を 射 殺 し た と こ ろ 、実 は そ の 際 た ま た ま Y も X を 殺 そ う と と し て
X を 銃 で 狙 っ て い た 場 合 で あ っ て 、X が 一 瞬 早 く 自 己 の 生 命 を 防 衛 し 得 た と い ケ ー
ス)について、防衛の意思不要説に立つと正当防衛が成立することになる。他方、
防 衛 の 意 思 必 要 説 に 立 つ と 、こ の 場 合 正 当 防 衛 は 認 め ら れ な い こ と に な る 。防 衛 の
意 思 は 、 刑 法 36 条 1 項 の 、 防 衛 す る 「 た め 」 の 文 理 解 釈 か ら も 、 ま た 偶 然 防 衛 を
正当防衛から排除する趣旨からも肯定するのが多数説・判例の立場である。
(2) 傷 害 罪 の 基 本 概 念 を 問 う 問 題
傷害の意義につき、
①人の生理的機能に障害を与えることとする生理的機能障害説、
②人の身体の完全性を侵害することとする完全性侵害説
③両説の折衷説
などがみられるが、判例は生理的機能障害説に立っているものといわれている。
最近の最高裁も、睡眠薬を摂取させることにより相当長時間意識障害の症状を生
じさせた場合に、
「 健 康 状 態 を 不 良 に 変 更 し 、生 活 機 能 の 障 害 を 惹 起 し た 」と し て 傷 害
罪 を 認 め た 例 ( 最 決 平 24・ 1 ・ 30) や い わ ゆ る PTSD の よ う な 精 神 的 障 害 に つ い
て も「 精 神 的 機 能 の 障 害 を 惹 起 し た 」と し て 傷 害 罪 を 認 め て お り( 最 決 24・7・24)、
①説にしたがった判断を示している。
問2
い わ ゆ る 具 体 的 事 実 の 錯 誤( と く に 方 法 の 錯 誤 )の 処 理 を め ぐ る 法 定 的 符 合 説 の 問
題点を問うた事例問題。
①法定的符合説(構成要件的符合説)の展開
犯罪事実は構成要件として刑法上類型化されているから、
原則として構成要件に該当する事実を認識していれば、故意責任を問うことが
できる。したがって、認識した内容と発生した事実とが構成要件の範囲内で符合
していれば故意が認められるとすべきである。
②故意の個数の問題の処理
このように考えると、つぎに、認識を超えた数の客体に犯罪結果を発生させた場
合の処理が問題となる。この点、故意の個数を問題にし、認識の数しか故意犯を
成 立 さ せ な い 見 解 が あ る( 一 故 意 説 )。し か し 、こ の 見 解 は 、複 数 結 果 が 発 生 し た
場合、どこに故意を認めるかの基準が明らかでなく、妥当でない。
したがって、故意は構成要件の範囲内で抽象化されていると解することができ
るから、その認定において故意の個数は問題とならない。現に結果が発生した数
だ け 故 意 犯 が 成 立 す る と 考 え ら れ る( 数 故 意 説 )。ま た 、こ の よ う に 考 え る と 、意
図せざる結果について故意責任を問うことになるかにみえる。しかし、1個の行
為 に よ り 数 個 の 犯 罪 が 成 立 し た 場 合 、 観 念 的 競 合 ( 54 条 1 項 ) と し て 処 理 さ れ 、
刑の不均衡は生じない。
な お 、判 例 は 数 故 意 説 を 採 用 し て お り 、実 務 的 に は 最 判 昭 和 53・ 7・28 の 判 例
により決着が付けられたといえる。
【採点講評】
多くの答案で基本的な論点の把握はできているものの、それに答える際の解釈およ
び理由づけについては正確性に欠けるものが多く見受けられた。
なお、いっそう基本概念の精確な理解に努められたい。
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