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HPLC法(PDF:573KB)

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HPLC法(PDF:573KB)
うんしゅうみかんのβ-クリプトキサンチン測定手順書
1.適用範囲
この手順書は、うんしゅうみかん(Citrus unshiu Marc.)に適用する。
2.測定方法の概要
粉砕した試料にエタノールを加えて抽出し、抽出物を水酸化カリウムでけん化する。け
ん化後の溶液にヘキサン及び酢酸エチルを加えて不けん化物を抽出した後、紫外可視吸光
光度検出器付き高速液体クロマトグラフ(以下、「HPLC」という。)を用いてβ-クリプ
トキサンチン(以下、「BCR」という。)を測定する。
3.注意事項
(a) 試薬を取り扱う際には、適切な個人用保護具(保護手袋、保護メガネ、有機ガス
用マスク、保護面等)を着用し、操作はよく換気された場所で行う。
(b) エタノール、2-プロパノール、n-ヘキサン及び酢酸エチルは、引火性が高いため、
火気に注意する。
(c) クロロホルムは、環境有害性があるため、屋外環境に放出しない。
(d) 水酸化カリウム溶液が皮膚等に付着した場合は、直ちに多量の水で洗い流す。
(e) 測定により生じる廃液は、法令の規定に基づき適切に処分する。
4.器具及び装置
試験に用いる器具及び装置は、次のとおりとする。
4.1
器具
(a) 全量ピペット:JIS R 3505 に規定するクラス A のもの又はそれと同等以上の精度
をもつもので、呼び容量 0.5 mL、1 mL、2 mL、2.5 mL、5 mL 及び 10 mL のもの。
上端にピペッターを取り付けて使用する。
(b) 全量フラスコ:JIS R 3505 に規定するクラス A のもの又はそれと同等以上の精度
をもつもので、呼び容量 5 mL、10 mL、20 mL、25 mL、50 mL 及び 100 mL のもの。
(c) メスシリンダー:JIS R 3505 に規定するクラス A のもので、使用する溶液等の容
量に応じた適切な容量のもの。
(d) 駒込ピペット:容量 1 mL ~ 10 mL 程度のもの。上端にシリコンスポイトを取り
付けて使用する。
(e) メスピペット:JIS R 3505 に規定する呼び容量 5 mL、10 mL、20 mL 又は 25 mL
のもの。上端にピペッターを取り付けて使用する。
(f) ピストン式ピペット:JIS K 0970 に規定する公称容量 1000 μL、2000 μL、5000 μL、
10000 μL 又は 20000 μL のもの。使用する溶液等に耐性のある材質のチップを使用す
る。
- 1 -
(g) パスツールピペット:容量 1.5 mL 程度のもの。上端にシリコンスポイトを取り付
けて使用する。
(h) ピペッター:全量ピペット及びメスピペットの上端に取り付けて、エタノール、
ヘキサン等の吸引及び排出を行うことができるもの。
(i) シリコンスポイト:駒込ピペット及びパスツールピペットの上端に取り付けて、
溶液の吸引及び排出を行うことができるもの。
(j) ビーカー:JIS R 3503 に規定する容量 50 mL ~ 1000 mL のもので、使用する溶液
等に応じた適切な容量のもの。
(k) 蓋付き瓶:本体はガラス製又はポリプロピレン製等の保存する溶液に適した材質
のもので、保存する溶液の量に適した容量のもの。蓋のパッキンは、PTFE 製等の保
存する溶液に対する耐性が高いもの。
(l) 遠心管(遠沈管):容量 50 mL 程度のガラス製のもので底部が丸底のもの、かつ、
共栓又はねじ口の蓋(以下、「共栓等」という。)により栓ができるもの。50 mL の溶
媒等を入れたときに、液面と共栓等の間に 10 mL 程度の余裕があるもの。原則として、
透明のもの。使用前に漏れがないことを確認する。ねじ口の蓋を用いる場合は、PTF
E 製等の有機溶剤及び強塩基性の溶液に耐性のある材質のパッキンを取り付けたもの。
褐色のものを用いる場合は内容物の視認性が低いため、注意して操作を行う。
(m) 遠心管立て:遠心管を立てることができるもの。
(n) なす形フラスコ:JIS R 3503 に規定する容量 100 mL の共通すり合わせなす形フラ
スコ等で、使用するロータリーエバポレーターに装着可能な口径のもの、かつ、減圧
濃縮に利用可能なもの。
(o) ディスポーザブルシリンジ:容量 2 mL 又は 5 mL で、ポリプロピレン製又はエタ
ノールに耐性のある樹脂製のもの。メンブランフィルターに取り付けて使用すること
ができるもの。
(p) メンブランフィルター:フィルターが有機溶剤系の溶液のろ過に適した PTFE 製の
もので、孔径が 0.20 µm 以下のもの。かつ、フィルターとハウジングが一体であり、
ハウジングの材質が有機溶剤に耐性のあるもの。ディスポーザブルシリンジを取り付
けて使用する。(例:ADVANTEC 製 DISMIC 13JP020AN、13HP020AN 等)
(q) バイアル:使用する HPLC に適合したもので、不活性処理済のもの又は不活性処
理済のインサートバイアルを入れたもの。蓋のセプタムは、HPLC の試料導入部に用
いられているニードル等に適合したもので PTFE 製又は PTFE でコーティングされた
もの。
(r) 薬さじ:使用に適した大きさで、清浄な薬さじ又はスパチュラ。
(s) 薬包紙:パラフィン製のもの。
(t) 秤量皿:ポリプロピレン製等のもの。
(u) 撹拌子:PTFE 製のもの。
(v) ガラス棒:ガラス又は使用する溶液等に耐性のある材質のもので、溶液等を撹拌
するために十分な長さで清浄なもの。
(w) カラム(HPLC 用):内径 4.6 mm、長さ 150 mm のステンレス管に、粒径 3 μm ~
5 μm のオクタデシルシリル基(C18)を化学的に結合したシリカゲルを充塡したもの。
- 2 -
(x) 保護カラム(HPLC 用):使用する場合は、測定に用いるカラムと同じ充塡剤を充
塡したもの。
(y) 吸収セル:光路長が 1 cm で、石英製又は 452 nm で高い透過性を持ち石油エーテ
ルに侵されない材質からなるもの。蓋付きのものが望ましい。
(z) 水槽:遠心管立てが入る大きさで、水道水を入れて遠心管を冷却できるもの。
4.2
装置
(a) 高速液体クロマトグラフ(HPLC):JIS K 0124 に規定するもので、送液ポンプ、脱
気装置、カラム槽(カラムオーブン)、紫外可視吸光光度検出器(455 nm の吸光度を
測定可能なもの)及びデータ処理装置を備えているもの。
(b) 分光光度計:JIS K 0115 に規定する分光光度計又は光電光度計で光路長が 1 cm の
吸収セルを固定できる吸収セルホルダーを備え、452 nm における吸光度を測定でき
るもの。
(c) 電子天びん:0.1 mg の桁まで量ることができるもので、ひょう量が 200 g より大
きいもの。
(d) 振とう器:遠心管を垂直往復振とうすることができるもの。
(e) 恒温水槽:70 ℃に温度設定が可能なもので、遠心管立てが入る大きさのもの。
(f) 遠心器(遠心分離器):遠心管を取り付けることができ、相対遠心加速度 400 × g
で遠心分離ができるもの。
(g) 遠心管用天びん:遠心管の質量が、使用する遠心器における質量差の許容範囲
(メーカーにより用語が異なる。「許容インバランス量」「アンバランス許容範囲」
等)内であることを量ることができるもの。
(h) ロータリーエバポレーター:ヘキサン、酢酸エチル、エタノール等の溶媒を減圧
留去できるもの。
(i) マグネティックスターラー:撹拌子を用いて撹拌したときに、必要な量の試薬を
十分撹拌する性能を有するもの。撹拌子を用いて使用する。
(j) 超音波洗浄器:試験に適したもの。
(k) ボルテックスミキサー:バイアル中の溶液の撹拌が可能なもの。
5.水及び試薬
試験に用いる試薬は、次のとおりとする。
(a) β-クリプトキサンチン:メーカー等により純度が 99.7 %以上であることが確認
されているもの。
(b) エタノール:JIS K8101 に規定する特級又は同等以上の品質のもの。
(c) ピロガロール:JIS K8780 に規定する特級又は同等以上の品質のもの。
(d) 硫酸ナトリウム:JIS K8987 に規定する特級又は同等以上の品質のもの。
(e) 水酸化カリウム:JIS K8574 に規定する特級又は同等以上の品質のもの。
(f) 水:JIS K0557 に規定する A3 以上の品質を有するもの。
(g) 塩化ナトリウム:JIS K8150 に規定する特級又は同等以上の品質のもの。
- 3 -
(h) n-ヘキサン:JIS K8848 に規定する特級又は同等以上の品質のもの。
(i) 酢酸エチル:JIS K8361 に規定する特級又は同等以上の品質のもの。
(j) 2-プロパノール:JIS K8839 に規定する特級又は同等以上の品質のもの。
(k) メタノール:高速液体クロマトグラフ用のもの。
(l) クロロホルム:高速液体クロマトグラフ用のもの。
(m) パルミチン酸アスコルビル:97.0 %以上の純度のもの。
(n) 石油エーテル:JIS K8593 に規定する特級又は同等以上の品質のもの。
(o) 窒素:99.5 %以上の純度のもの。
6.試薬の調製
試薬の調製は、次のとおり行う。なお、各試薬の調製量は必要に応じて変更してもよい。
6.1
30 g/L ピロガロール溶液(エタノール溶液)の調製
(a) ピロガロール 15 g を 500 mL のビーカーに量り取る。
(b) エタノール 300 mL 程度を(a)のビーカーに加え、マグネティックスターラー又は
ガラス棒(以下、「マグネティックスターラー等」という。)で混合して、ピロガロー
ルを溶解する。
(c) (b)の溶液を 500 mL のメスシリンダーに全量移す。
(d) ビーカーに残った溶液をエタノール 10 mL ~ 20 mL で数回メスシリンダーに洗い
込む。
(e) エタノールを(d)のメスシリンダーに加え、メスシリンダーの目盛りで 500 mL に
定容する。
(f) (e)の溶液を 500 mL のビーカーに移し、マグネティックスターラー等で混合する。
(1)
(g) (f)の溶液を蓋付き瓶に保存する 。
(1) 長期間保存したものは、茶褐色に変色する。変色したものは使用しない。
6.2
60 %(質量分率)水酸化カリウム溶液(水溶液)の調製
(a) 水酸化カリウム 30 g を 100 mL のビーカーに量り取る。
(b) 水 40 mL 程度を(a)のビーカーに加える。(刺激性のガスが発生するので、ドラフ
ト内等の換気のよい場所で作業を行う。)
(c) (b)のビーカーを氷水中に置き、ガラス棒等で混合して、水酸化カリウムを溶解す
る。
(d) 溶解後、室温まで冷却して、(c)の溶液を 50 mL のメスシリンダーに全量移す。
(e) ビーカーに残った溶液を水 2 mL 程度で数回メスシリンダーに洗い込む。
(f) 水を(e)のメスシリンダーに加え、メスシリンダーの目盛りで 50 mL に定容する。
(g) (f)の溶液を 100 mL のビーカーに移し、マグネティックスターラー等で混合する。
(h) (g)の溶液を蓋付き瓶に保存する。
6.3
1 %(質量分率)塩化ナトリウム溶液(水溶液)の調製
- 4 -
(a) 塩化ナトリウム 10 g を 500 mL のビーカーに量り取る。
(b) 水 300 mL 程度を(a)のビーカーに加え、マグネティックスターラー等で混合して、
塩化ナトリウムを溶解する。
(c) (b)の溶液を 1000 mL のメスシリンダーに全量移す。
(d) ビーカーに残った溶液を水 10 mL ~ 20 mL で数回メスシリンダーに洗い込む。
(e) 水を(d)のメスシリンダーに加え、メスシリンダーの目盛りで 1000 mL に定容する。
(f) (e)の溶液を 1000 mL のビーカーに移し、マグネティックスターラー等で混合する。
(g) (f)の溶液を蓋付き瓶に保存する。
6.4
10 %(体積分率)酢酸エチル含有 n-ヘキサンの調製
(a) n-ヘキサン 900 mL を 1000 mL のメスシリンダーを用いて量り取る。
(b) (a)の n-ヘキサンを 1000 mL 容以上の蓋付き瓶に全量移す。
(c) 酢酸エチル 100 mL を 100 mL のメスシリンダーを用いて量り取る。
(d) (c)の酢酸エチルを(b)の蓋付き瓶に全量移して混合し、保存する。
6.5
4 %(体積分率)クロロホルム含有メタノール(50 μg/mL パルミチン酸アスコルビ
ル含有)の調製
(a) パルミチン酸アスコルビル 0.05 g を 500 又は 1000 mL のビーカーに量り取る。
(b) メタノール 300 mL 程度を(a)のビーカーに加え、マグネティックスターラー等で
混合して、パルミチン酸アスコルビルを溶解する。
(c) (b)の溶液を 1000 mL のメスシリンダーに全量移す。
(d) ビーカーに残った溶液をメタノール 10 mL ~ 20 mL で数回メスシリンダーに洗い
込む。
(e) メタノールを(d)のメスシリンダーに、960 mL の目盛りまで加える。
(f) (e)の溶液を 1000 mL のビーカーに全量移す。
(g) クロロホルム 40 mL を 50 mL のメスシリンダーを用いて量り取る。
(h) (g)のクロロホルムを(f)のビーカーに全量移し、マグネティックスターラー等で混
合する。
(i) (h)の混液を蓋付き瓶に保存する。
7.試料の調製
試料を外果皮を除去した後、ホモジナイザー等を用いて粉砕する。粉砕した試料は,速
やかに試験に供する。
8.試料の保存
調製した試料を試験実施まで保存する場合は、調製後速やかにガラス製の密栓容器に入
れ、-20 ℃以下で保存する。保存した試料は調製後、2 ヶ月以内に試験に供する。
9.測定手順
9.1
標準溶液の調製
- 5 -
9.1.1
BCR 標準原液の調製
(a) 使用する BCR 標準品の量に応じて、BCR の濃度が 10 μg/mL 程度となる量(BCR
標準品を 1 mg 使用する場合は 100 mL)の石油エーテルをメスシリンダーを用いて量
り取る。
(b) (a)のメスシリンダーから 1 mL 程度の石油エーテルをパスツールピペット又は 1
mL の駒込ピペット(以下、「パスツールピペット等」という。)を用いて BCR 標準品
が入ったアンプル等に加え、溶解する
(2)
。
(c) 溶液をビーカーに移す。
(d) アンプル等に残った溶液を(a)の石油エーテル 1 mL 程度を用いて(c)のビーカーに
洗い込む。
(e) 石油エーテルに着色が見られなくなるまで、(d)を繰り返す。
(f) 残りの石油エーテルを(c)のビーカーに入れる。
(g) (f)の溶液を蓋付き瓶に移す。これを BCR 標準原液とする。
(h) BCR 標準原液は、-30 ℃ ~ -20 ℃で保存する。
(2) BCR 標準品が入った容器が、使用する石油エーテルを上回る容量の場合は、(b)~(f)に替えて、使
用する石油エーテル全量を BCR 標準品が入った容器に加え、溶解してもよい。このとき、容器がガ
ラス製蓋付き瓶等の BCR 標準溶液の保存に適したものである場合は、その容器を用いて保存しても
よい。
9.1.2
吸光度測定用標準溶液の調製
(a) BCR 標準原液
スコ
(4)
(3)
(4)
2 mL を全量ピペット を用いて正確に採取し、10 mL の全量フラ
に排出する。
(b) 石油エーテルを(a)の全量フラスコに標線まで加えて定容し、振り混ぜて混合する。
これを吸光度測定用標準溶液とする。
(3) 保存していた BCR 標準原液を用いる場合は、常温となるまで静置し、振り混ぜて均一とした後、調
製に用いる。このとき不溶物がある場合は、メンブランフィルターを用いてろ過した後、調製に用
いる。またその場合、9.1.2 及び 9.1.4 は同一のろ液から調製を行う。
(4) 適宜、使用する全量ピペット及び全量フラスコを変更してもよい。このとき、吸光度測定用標準溶
液の BCR 濃度が 2 μg/mL 程度となるような容量のものを用いる。
9.1.3
吸光度の測定と BCR 標準原液の濃度の算出
(5)
(a) 分光光度計の電源をあらかじめ入れておき、装置の説明書等に従い、装置を安定
化させておく。
(b) 測定波長を 452 nm に設定する。
(c) 対照液として石油エーテルを入れた吸収セルを分光光度計の光路に置き、吸光度
を 0 に合わせる。
(d) 吸光度測定用標準溶液を入れた吸収セルを分光光度計の光路に置き、吸光度を測
定する。
- 6 -
対照液と吸光度測定用標準溶液を同一の吸収セルを用いて測定する場合は、吸光度
測定用標準溶液で吸収セルの内壁を十分共洗いした後、吸光度測定用標準溶液を入れ
る。
対照液と吸光度測定用標準溶液を異なる吸収セルを用いて測定する場合は、光学的
特性が同等であることが保証されたものを用いる。
(e) 次式により BCR 標準原液の濃度を求める。
標準原液の BCR 濃度(μg/mL)= A × 10000 / 2386 × V2 / V1
A:吸光度測定用標準溶液の 452 nm における吸光度(石油エーテル、1 cm セ
ル)
2386:濃度 1 %、光路長 1 cm における BCR の吸光係数
V1:9.1.2 において使用した全量ピペットの容量(mL)
V2:9.1.2 において使用した全量フラスコの容量(mL)
(5) 9.1.2、9.1.3 及び 9.1.4 は同日に行うこと。
9.1.4
HPLC 用標準溶液の調製
9.1.4.1
(5)(6)(7)
HPLC 用標準溶液①(2 μg/mL 相当)の調製
(a) BCR 標準原液 1 mL を全量ピペットを用いて正確に量り取り、なす形フラスコに
排出する。
(b) 窒素を(a)の BCR 標準原液に穏やかに吹き付け、石油エーテルを揮発させる。
(c) 1 mL 程度のエタノールをパスツールピペット等を用いて(b)のなす形フラスコに
内壁を洗いながら入れる。
(d) なす形フラスコを穏やかに振り混ぜ、BCR を溶解させる。不溶物がある場合は、
超音波洗浄器を用いて 10 秒間程度超音波をかけて溶解させる。
(e) (d)の溶液をパスツールピペットを用いて 5 mL の全量フラスコに移す。
(f) (c)~(e)を 3 ~ 4 回繰り返す。
(g) エタノールを(e)の全量フラスコに標線まで加えて定容し、振り混ぜて混合する。
(h) (g)の溶液をメンブランフィルターを用いてろ過し、バイアルに入れる。これを H
PLC 用標準溶液①とする。
(i) 次式により、HPLC 用標準溶液①の濃度を求める。
HPLC 用標準溶液①の BCR 濃度(μg/mL)=標準原液の BCR 濃度(μg/mL) × 使用した
全量ピペットの容量/ 5
9.1.4.2
HPLC 用標準溶液②(1 μg/mL 相当)、HPLC 用標準溶液③(0.5 μg/mL 相当)及
び HPLC 用標準溶液④(0.25 μg/mL 相当)の調製
(a) 下表の第1欄の HPLC 用標準溶液に応じて第2欄の容量の全量ピペット及び第3
欄の容量の全量フラスコを用いて、9.1.4.1 と同様に溶液を調製する。
(b) 次式により、HPLC 用標準溶液の濃度を求める。
- 7 -
HPLC 用標準溶液の BCR 濃度(μg/mL)=標準原液の BCR 濃度(μg/mL) × 使用した全
量ピペットの容量/使用した全量フラスコの容量
第1欄
第2欄
第3欄
HPLC 用標準溶液
全量ピペットの容量
全量フラスコの容量
(mL)
(mL)
①(2 μg/mL 相当)
1
5
②(1 μg/mL 相当)
1
10
③(0.5 μg/mL 相当)
0.5
10
④(0.25 μg/mL 相当)
0.5
20
(6) BCR は光や酸素によって変化しやすい。必要に応じて使用する全量ピペット及び全量フラスコを変
更してもよい。このとき、それぞれの HPLC 用標準溶液の BCR 濃度が上表の第1欄の濃度となるよう
な容量のものを用いる。
(7) 調製した当日に HPLC による測定を行わない場合は、-30 ℃ ~-20 ℃で保存する。保存した HPLC
用標準溶液は、測定日に室温に戻す。このとき、不溶物が析出していた場合は、ボルテックスミキ
サー等を用いて混合し、必要に応じて超音波洗浄器を用いて不溶物を溶解させた後、メンブランフ
ィルターを用いてろ過し、測定を行う。
9.2
試験溶液の調製
9.2.1
試料採取
(a) 遠心管をビーカー又は遠心管立てに立て、電子天びんに載せ、風袋引きをするか、
又は風袋を 0.1 mg の桁まで記録する。
(b) 試料を採取する前に、よく混ぜる。
(c) 薬さじを使用して試料約 2 g を(a)の遠心管に量り取る。試料採取の際は、試料が
遠心管の口や首に付着しないように注意する。
(d) 電子天びんの指示値を 0.1 mg の桁まで読み取り、記録する。
9.2.2
抽出
(a) 30 g/L ピロガロール溶液 15 mL をメスシリンダー、メスピペット又はピストン式
ピペット(以下、「メスシリンダー等」という。)を用いて量り取り、9.2.1(c)の遠心管
に加える。
(b) 硫酸ナトリウム 10 g を薬包紙又は秤量皿等に量り取り、(a)の遠心管に加える。
(c) (b)の遠心管に共栓等をして、振とう器で 5 分間激しく振とうする。
(d) 30 g/L ピロガロール溶液を(c)の遠心管に必要に応じて加えて、遠心分離の際に対
となる組ごとに遠心管用天びんを用いて、質量差を遠心器の許容範囲内とする。
(e) 遠心器で相対遠心加速度 400 × g(回転半径 16 cm の場合、1500 rpm)程度で 5
分間遠心分離を行う。
(f) (e)の遠心管を遠心管立てに静置し、上澄み液をパスツールピペットを用いて、50
mL の全量フラスコに移す。可能な限り上澄み液を回収する。
- 8 -
(g) 30 g/L ピロガロール溶液 15 mL をメスシリンダー等を用いて量り取り、(f)の遠心
管に加える。(c)~(f)と同様に抽出を行い、上澄み液は(f)の全量フラスコに合わせる。
(h) (g)の操作を更に 1 回行う
(8)
。
(i) 30 g/L ピロガロール溶液を(f)の全量フラスコに標線まで加えて定容し、振り混ぜ
て混合する。
(8) 合計3回の抽出操作を行う。
9.2.3
けん化
(a) 9.2.2(i)の全量フラスコから抽出液 10 mL を全量ピペットを用いて正確に量り取り、
遠心管(9.2.2 で用いたものとは別のもの)に排出する。
(b) 60 %(質量分率)水酸化カリウム溶液 1 mL を駒込ピペット、メスピペット又はピ
ストン式ピペットを用いて(a)の遠心管に加え、共栓等をした後、共栓等に内容液が
付着しないように穏やかに振り混ぜ、混合する。
(c) (b)の遠心管
(9)
を遠心管立てに立て、70 ℃に設定した恒温水槽に入れ、5 分程度お
きに遠心管を振り混ぜながら、30 分間加熱する。
(d) (c)の遠心管を水道水を入れた水槽に入れて、室温まで冷却する。
(9) 共栓遠心管を用いる場合は内圧の上昇により栓が外れないようにするため、ジョイントクリップ、
フッ素シールテープ等で共栓を固定する。
9.2.4
不けん化物の回収
(a) 1 %(質量分率)塩化ナトリウム溶液 20 mL、2-プロパノール 5 mL 及び 10 %(体
積分率)酢酸エチル含有 n-ヘキサン 12 mL を、メスシリンダー等を用いて量り取り、
9.2.3(d)の遠心管に加え、共栓等をする。
(b) (a)の遠心管の底に沈殿が固まっていないことを確認し、固まっている場合は手で
振り混ぜる。遠心管を振とう器を用いて 5 分間激しく振とうする。
(c) 1 %(質量分率)塩化ナトリウム溶液を(b)の遠心管に必要に応じて加えて、遠心
分離の際に対となる組ごとに遠心管用天びんを用いて、質量差を遠心器の許容範囲内
とする。
(d) 遠心器で相対遠心加速度 400 × g(回転半径 16 cm の場合、1500 rpm)程度で 5
分間遠心分離を行う。
(e) (d)の遠心管を遠心管立てに静置し、上層をパスツールピペットを用いて、なす形
フラスコに移す。可能な限り上層を回収する。
(f) 10 %(体積分率)酢酸エチル含有 n-ヘキサン 12 mL をメスシリンダー等を用いて
量り取り、(e)の遠心管に加える。(b)~(e)と同様に抽出を行い、上層は(e)のなす形
フラスコに合わせる。
(g) (f)の操作を更に 1 回行う
(10)
。
(h) (e)のなす形フラスコの有機溶媒を、ロータリーエバポレーターを用いて 40 ℃以
下でほとんど減圧留去した後、窒素を穏やかに吹き付け乾固させる。
- 9 -
(10) 合計3回の抽出操作を行う。
9.2.5
HPLC 注入用試料溶液の調製
(a) エタノール 1 mL 程度をパスツールピペット等を用いて 9.2.4(h)のなす形フラスコ
に内壁を洗いながら入れる。
(b) なす形フラスコを穏やかに振り混ぜ、内容物を溶解させる。不溶物がある場合は、
超音波洗浄器を用いて 10 秒間程度超音波をかけて溶解させる。
(c) (b)の溶液をパスツールピペットを用いて 5 mL の全量フラスコに移す。
(d) (a)~(c)を 3 ~ 4 回繰り返す。
(e) エタノールを(c)の全量フラスコに標線まで加えて定容し、振り混ぜて混合する。
(f) (e)の溶液をメンブランフィルターを用いてろ過し、バイアルに入れる。これを H
PLC 注入用試料溶液とする。
HPLC 注入用試料溶液は原則として、調製した当日に HPLC による測定を行う。
当日に測定を行うことができない場合は、-30 ℃~-20 ℃で保存し、1週間以内に
HPLC による測定を行う。保存した HPLC 注入用試料溶液は、測定日に室温に戻す。
このとき、不溶物が析出していた場合は、ボルテックスミキサー等を用いて混合し、
必要に応じて超音波洗浄器を用いて 10 秒間程度超音波をかけて溶解させる。その後、
メンブランフィルターを用いてろ過した後、HPLC による測定を行う。
9.3
高速液体クロマトグラフ(HPLC)による測定
9.3.1
測定条件の設定
HPLC の取扱説明書に従い、以下の測定条件を設定する。
測定条件
(11)(12)
(a) カラム(HPLC 用):4.2 において指定したもの
(13)
(b) 保護カラム(HPLC 用):4.3 において指定したもの
(c) 溶離液:4 %(体積分率)クロロホルム含有メタノール(50 μg/mL パルミチン酸
アスコルビル含有)
(d) カラム温度:40 ℃
(e) 測定波長:455 nm
(f) 流量:1.5 mL/min
(g) 注入量:20 µL
(11) 冷却機能を持つ自動試料導入装置を使用する場合、設定温度は 20 ℃とする。
(12) 1回の分析時間は、β-カロテンが十分に溶出する時間とする。補足1を参照のこと。
(13) 補足2を参照のこと。
9.3.2
HPLC の性能確認
測定は、以下の項目について確認した後に行う。
- 10 -
(a) ベースラインの安定性
設定した測定条件で作動させたとき、ベースラインの変動が測定に支障がないこと
を確認する。
(b) 定量限界
HPLC 用標準溶液④を測定したとき、BCR のシグナルが、ノイズの 10 倍以上であ
ることを確認する。
ノイズ:ピークの前後におけるベースラインの、ピーク半値幅の 20 倍の間におけ
る出力信号の最大値と最小値の差の振れ幅の 1/2 をノイズとする。
シグナル:ノイズの最大値と最小値との中間をベースラインとし、ベースラインか
らピークトップまでの高さをシグナルとする。JIS K 0124 を参照。
9.3.3
測定
(a) HPLC 用標準溶液の測定
HPLC 用標準溶液①~④を HPLC に注入し、得られたクロマトグラムについて、デ
ータ処理装置により積分を行う。
データ処理装置の自動積分機能等によりピーク面積を求める場合は、濃度等により
ベースラインの引き方やピークの切り方等が異なることがあるため、クロマトグラム
の拡大機能等を用いて積分が適切に行われていることを確認する。積分が適切に行わ
れていない場合は、手動により修正する。
ピークが複数みられる又はショルダーピークがみられる等、複数の成分が確認され
た場合は、それらのピーク面積を合算し BCR のピーク面積とする。
(b) 検量線の作成
9.1.4 において求めた濃度を横軸(x)に、(a)において求めた HPLC 用標準溶液のピ
ーク面積を縦軸(y)にして、原点を含めない直線回帰の検量線(y = a + bx)を作成
する。
作成した検量線の直線性を目視により確認するとともに、相関係数(R)が 0.990
以上である場合は適切な検量線であると判断し、試料溶液の濃度の算出に用いる。
(c) HPLC 注入用試料溶液の定量
(a)の HPLC 用標準溶液の測定と連続して HPLC 注入用試料溶液を HPLC に注入し、
得られたクロマトグラムについてデータ処理装置により積分を行い、BCR のピーク
面積を求める。(a)の HPLC 用標準溶液と同様に、積分が適切に行われていることを
確認し、必要に応じて修正する
(14)
。
HPLC 用標準溶液の BCR のピークと保持時間が一致するピークを BCR と同定し、
ピーク面積を求める。HPLC 用標準溶液において複数の成分が確認された場合は、そ
れらのピークと保持時間が一致するピークの面積を合算し、BCR のピーク面積とす
る。
BCR のピークに試料由来の夾雑ピークが近接している場合は、次のとおりとする。
二つのピークの大きさがほぼ等しい場合、ピークの谷から時間軸に下ろした垂線に
よってベースライン上のピークを二つに分割し、ピーク面積を求める。
大きなピークのテーリング又はリーディングに重なった小さなピークの場合、ピー
- 11 -
クの谷と大きなピークの裾とを結ぶ接線上の部分をピーク面積とする。JIS K 0124 を
参照。
(b)で作成した検量線を用いて HPLC 注入用試料溶液の BCR 濃度(μg/mL)を求め
る。
このとき、HPLC 注入用試料溶液の BCR 濃度が、HPLC 標準溶液①の BCR 濃度を
超えた場合は、全量ピペット及び全量フラスコを用いて HPLC 注入用試料溶液を HPL
C 標準溶液①の濃度以下となるように希釈し、再度(a)、(b)及び HPLC 注入用試料溶
液の測定を行う。
HPLC 注入用試料溶液の BCR 濃度が、HPLC 標準溶液④の BCR 濃度未満であった
場合は、全量ピペット及び全量フラスコを用いて 9.1.4.1 と同様に、HPLC 注入用試料
溶液の BCR 濃度未満となる濃度の HPLC 標準溶液を調製し、HPLC 用標準溶液①~
④及び新たに調製した標準溶液を用いて(a)、(b)と同様に標準溶液の測定、検量線の
作成を行い、再度 HPLC 注入用試料溶液を測定する。
(14) 補足3を参照のこと。
10.計算
次式により、試料中の BCR 含有量(mg/100 g)を算出する。
C × 5 × 5 × 100
試料中のβ-クリプトキサンチン含有量(mg/100 g)=
1000 × W
C:9.3.3(c)で求めた HPLC 注入用試料溶液の BCR 濃度(μg/mL)
W:試料採取量(g)
計算はパソコンや電卓を用いて行い、数値を計算途中で丸めない。測定値は有効数字の
桁数 4 桁目まで求め、その求めた 4 桁目について四捨五入し、有効数字の桁数 3 桁に丸め
る。
11.日本工業規格引用
本手順書において引用された規格は、その最新版(追補を含む)を適用する。
JIS K 0115
吸光光度分析通則
JIS K 0124
高速液体クロマトグラフィー通則
JIS K 0557
用水・排水の試験に用いる水
JIS K 0970
ピストン式ピペット
JIS K 8101
エタノール(99.5)(試薬)
JIS K 8150
塩化ナトリウム(試薬)
JIS K 8361
酢酸エチル(試薬)
JIS K 8574
水酸化カリウム(試薬)
- 12 -
JIS K 8593
石油エーテル(試薬)
JIS K 8780
ピロガロール(試薬)
JIS K 8839
2-プロパノール(試薬)
JIS K 8848
ヘキサン(試薬)
JIS K 8987
硫酸ナトリウム(試薬)
JIS R 3503
化学分析用ガラス器具
JIS R 3505
ガラス製体積計
共同試験用試料の調製方法
共同試験用試料には市販のうんしゅうみかんを用いた。カロテノイドは光、酸素、試料
に含まれる酵素等により分解されることがあるため、外果皮を除去した試料 150 ~ 200 g
に、試料質量の 10 %のピロガロールを抗酸化剤として加えて、ホモジナイザー((株)日
本精機製作所 エクセルオートホモジナイザー)を用いて 12000 rpm で 10 分間、粉砕した
ものを共同試験用試料とした。各試験室は、試験実施まで配付された共同試験用試料を-2
0 ℃以下で保存した。
共同試験結果
うんしゅうみかん中のβ-クリプトキサンチン
試料
A
B
C
D
E
参加試験室数
11
11
11
11
11
有効試験室数
10
9
9
9
10
平均値(mg/100 g)
0.473
0.675
1.02
1.37
2.34
併行標準偏差
(Sr , %)
0.012
0.013
0.032
0.057
0.050
室間再現標準偏差
(SR , %)
0.067
0.061
0.10
0.13
0.26
併行相対標準偏差
(RSDr , % )
2.6
2.0
3.1
4.2
2.1
室間再現相対標準偏差
(RSDR , % )
14
9.0
9.9
9.6
11
HorRat
1.1
0.75
0.88
0.89
1.1
報文:
熊谷雅孝,門倉雅史,水田賢司,田中真澄,生駒吉識,鈴木忠直,安井明美,ウンシュウ
ミカン中のβ-クリプトキサンチン測定法の室間共同試験による妥当性確認,日本食品科
学工学会誌,63(10), 450-454(2016).
- 13 -
試料の安定性
うんしゅうみかん中のβ-クリプトキサンチンの試料調製後の冷凍保存における安定性
について確認を行った。うんしゅうみかんの外皮を除去した後、ホモジナイザー((株)
日本精機製作所 エクセルオートホモジナイザー)を用いて 12000 rpm で 10 分間粉砕した
ものを、-20 ℃で保存し、試料として用いた。その結果、少なくとも 2 か月間、β-クリ
プトキサンチンの濃度に変化は生じないことを確認した。
測定方法の適用濃度範囲
うんしゅうみかん中の BCR 濃度が 2.8 mg/100 g の試料を用いて、併行精度及び中間精
度を求めた。その結果、RSDr は 0.7 %であり、一般的な化学分析法と比較して十分に小さ
かった。また、中間相対標準偏差(RSDI)は 1.2 %であり、RSDr との比(RSDI / RSDr =
1.6)が判定基準(1.5 ≦ RSDI / RSDr ≦ 2.0)を満たしたため、一般的な化学分析法とし
て妥当な値であることが示唆された。このことから、BCR 濃度が 2.8 mg/100 g の試料を測
定する場合においても、本測定方法の精度は化学分析法として妥当であると考えられるた
め、適用濃度範囲を 2.8 mg/100 g まで拡張することができると考えられた。
- 14 -
補足1
参考として、以下に2種類のカラムにおけるβ-クリプトキサンチン及びβ-カロテン
標準溶液のクロマトグラム例を示す。
標準溶液のクロマトグラム例1:STR ODS-II(信和化工社製)
標準溶液のクロマトグラム例2:TSKgel ODS 120A(東ソー社製)
- 15 -
補足2
参考として、以下にカラムの例及びうんしゅうみかんのクロマトグラム例を示す。
・カラム(HPLC 用)の例
Puresil C18 (Waters 社製)
Mightysil RP-18GP(関東化学製)
Inertsil ODS-3 (GLScience 社製)
Wakopak navi C18-5 (和光純薬工業製)
・うんしゅうみかんのクロマトグラム例
- 16 -
補足3
参考として、以下にうんしゅうみかんのクロマトグラムの修正例を示す。
- 17 -
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