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第 15 講 仏 教

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第 15 講 仏 教
基礎からわかる倫理
第 15 講 仏 教 仏教の成立
ゴータマ・シッダルタ(シャカ族の王子として生まれ恵まれた環境で育つ)
→ 四門出遊のエピソード
①王城の東の門から出たとき「人は皆老いる」と言う老人に出会う
②王城の南の門から出たとき「人は皆病む」と言う病人に出会う
③王城の西の門から出たとき「死者の葬列」を目撃する
→ 人は老・病・死から逃れられないと知る
④王城の北の門から出たとき「修行に励む修行者」を見て出家を決意する
→ 出家して厳しい修行をするも悟りを得られず
→ 中道(快楽と苦行の両極端を避ける)が重要だと知る=苦行は否定
→ ブッダガヤの菩提樹の下で坐禅瞑想して悟りを得る=仏陀(覚者)となる
(仏陀ブッダ=普遍的な審理を悟った人 → 悟りを得れば解脱できる)
→ 修行仲間に対して初の説法(初転法輪) → 80 歳で入滅
→ 原始仏教(仏陀ブッダ入滅後の約1世紀をさす)
仏教の内容
真理に目覚めることで、誰もが悟りを開き仏陀ブッダになることができる
*四法印
仏陀が悟った人生の普遍的な真理(他の思想と仏教を区別する特徴)
①一切皆苦
この世のすべての現象は苦である(人生のすべては苦しみである)
②諸行無常
この世のすべての現象は法(ダルマ)に従い絶えず変化・消滅する
③諸法無我
この世のすべての事物には永遠不滅の実体(不変の自己)はない
(ウパニシャッドで説く「我アートマン=永遠不滅の自己の本体」は存在しない)
→①や②の無明(無理解)から煩悩(欲望)が生じ苦の原因となる
④涅槃寂静
苦悩の消えた自由で心静かな平安の境地が続く状態
→ダルマ(法)を理解し我執(自己に執着する心)を断つ
涅槃(ニルヴァーナ)
91
煩悩の炎が消えた安らかな状態
第 15 講 仏教
*三毒
とん
じん
ち
3つの煩悩(欲望)=貪(むさぼり)・瞋(怒り)・癡(愚かさ)
*縁起の法
すべてのものは相互に寄り合って成立し無条件にそれ自体では存在しない
この世のすべてのものは独立した実体ではなく、互いに支え合う相互依存の関係にある
すべてのものは何らかの原因があり、他のものを条件として存在している。よって、それ
が生じた原因・条件を滅すれば、消滅して悟りを開くことができる。
「これあるに縁りてかれあり、これ生ずるに縁りてかれ生ず。
これなきに縁りてこれなし、これ滅するに縁りてかれ滅す。」
他者に楽しみを与え(慈マイトリー)、苦しみを取り除く(悲カルナー)こと
慈悲の心は一切衆生(悩み苦しむすべてのもの・人間や動植物)に向けられるべき
→身分制を批判「人は行為によってバラモンにもシュードラにもなる」
*四諦
縁起の法に基づく4つの実践的な真理(諦は真理という意味)
く たい
①苦諦
人生は苦しみに他ならないという真理
→四苦八苦(生・老・病・死 + 愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦)
じっ たい
②集諦
めっ たい
③滅諦
どう たい
④道諦
苦の原因は心の煩悩(欲望)の集積であるという真理
煩悩が消え苦が消滅したところに安らぎの境地(涅槃寂静)がある真理
涅槃に到達するための道を示す真理
→具体的な修行法が八正道=中道の具体的な実践内容
(正見・正思・正語・正業・正命・正精進・正念・正定)
*五戒(在家信者の戒)
ふせっしょう
ふちゅうとう
ふじゃいん
ふ も う ご
ふおんじゅ
不殺生戒・不偸盗戒・不邪淫戒・不妄語戒・不飲酒戒
苦の実情 苦の原因 苦の克服 苦の消滅
四苦
八苦
無明
中道
我執
煩悩
涅槃
寂静
実践
苦 諦 集 諦 道 諦 滅 諦 92
基礎からわかる倫理
以下に示す文章の に当てはまる語句を選べ。[2005・センター・本試験] 仏教でいう「慢」は,物事へのとらわれに基づく煩悩の一つであり,己を他者よりも優れて
いると妄想して他人に対して誇りたがる心の驕(おご)りである。その根本には,諸存在の無
常性に気づかない があるとされる。 ① 無 記 ② 無 心 ③ 無 明 ④ 無 我 苦についてのブッダの思想の説明として最も適当なものを、次の①∼④のうちから一つ選
べ。[2012・センター・本試験] ① 苦の原因は、自分が何であるかを知らないという点にある。だから、苦をなくすために
は、世界の事物を存在させる原因や条件を超越したものが自分の本質であると正しく認
識しなければならない。 ② 苦の原因は、自分でないものを誤って自分と思い込むところにある。だから、苦をなく
すためには、存在するともしないとも言えない不可知なものこそが真の自分であると正
しく認識しなければならない。 ③ 苦の原因は、自分でないものを誤って自分と思い込むところにある。だから、苦をなく
すためには、他の事物の存在を可能にする根源的な精神こそが真の自分であると正しく
認識しなければならない。 ④ 苦の原因は、自分が何であるかを知らないという点にある。だから、苦をなくすために
は、自分と呼ばれるものは恒常不変の実体ではなく、変化してやまないものであると正
しく認識しなければならない。 93
第 15 講 仏教
人生の苦に関して、ブッダの考え方として最も適当なものを、次の①∼④のうちから一つ
選べ。[2011・センター・本試験] ① 輪廻などのあらゆる苦悩は、苦・集・滅・道の四諦を始めとする煩悩にまどわされて、
苦の原因に気付かずにいることに由来している ② 自己の固有の本質が不変であることを正しく理解せずに、永遠の快楽や不死に執着して
しまうために、無知から生ずる様々な苦がある。 ③ 苦の根本原因は業であり、この世界を貫く常住不変の真理を洞察し、それを理解するこ
とによって、一切の苦から解放されることが可能となる。 ④ あらゆるものと同様に、苦は一定の条件や原因によって生じるものであるから、苦から
の解放にはそれらの条件や原因をなくすことが必要である。 以下に示す文章の に当てはまる語句を選べ。[2008・センター・本試験] 輪廻を前提とする古代インド思想においては,現世における境遇の善し悪しは,前世での
自らの業(カルマ)に起因すると考えられている。しかしこのことは逆に,現世での業が来世
での運命を切り開いていくことをも意味する。それだけではなく,苦しみの多い輪廻それ自
体からの解放も,自らが実践する修行を通じて可能になるとされていた。 例えば初期仏教では,輪廻に伴う苦しみの原因を分析し,かつ平安の境地である涅槃に到
達するための実践を説く が教えの中心をなしている。 ① 三 密 ② 四 諦 ③ 五 蘊 ④ 六 道 94
基礎からわかる倫理
ブッダの教えをまとめた四諦の各々についての説明として最も適当なものを,次の①∼④
のうちから一つ選べ。[2010・センター・本試験] ① 苦諦:自分の欲するままにならない苦は,努力で克服するのではなく,人生は苦である
と諦(あきら)めることで,心の平安を得られるということ ② 集諦:あらゆる存在は,因と縁が集まって生ずるから,実体のない我に固執せず,他者
に功徳を施すことで救いが得られるということ ③ 滅諦:滅は,もともと制するという意味であるが,欲望を無理に抑えようとせず,煩悩
がおのずから滅することに任せよということ ④ 道諦:快楽にふけることや苦行に専念するという両極端に近づくことなく,正しい修行
の道を実践することが肝要であるということ ブッダが説いた「四諦」(四聖諦)のそれぞれについての説明として最も適当なものを,次
の①∼④のうちから一つ選べ。[2003・センター・本試験] ① 「苦諦」とは,苦を引き起こす原因として,無知,欲望,執着といったもろもろの心の
煩悩があるという真理である。 ② 「集諦」とは,理想の境地に至るためには,八正道の正しい修行法に集中すべきである
という真理である。 ③ 「滅諦」とは,煩悩を完全に滅することで,もはや苦が起きることのない平安の境地に
達するという真理である。 ④ 「道諦」とは,あらゆる事物が存在し変化していくには,必ず依拠すべき道理があると
いう真理である。 95
第 15 講 仏教
ブッダの教えとして最も適当なものを,次の①∼④のうちから一つ選べ。 [2009・センター・本試験] ① 心を入れ替えて自分を低くし,子どものように無垢(むく)な心となって天の国に入れ。 ② 社会的規範としての礼儀を身につけ,自らを律して道徳的人格を完成させよ。 ③ 不殺生などの道徳的戒めを守り,出家して無所有を徹底し恒常不変の創造神を直観せよ。 ④ 無常・無我の真理を悟り,この世への執着を捨てて心の平静を実現して安らえ。 ブッダの説いた教えに関する記述として最も適当なものを,次の①∼④のうちから一つ選
べ。[2001・センター・本試験] ① 自己の存在は,他の存在に紛れこんで見失われがちなものであるから,自己が唯一無二
で代替不可能なものであることに目覚めよと説いた。 ② 自己の存在は,他の存在と競合し合っているものであるから,最終的にはその競合に打
ち勝つこと以外に安定は得られないと説いた。 ③ 自己の存在は,他の存在とともに,ある根源者によって司られているものであるから,
その根源者と一体化するところに安楽があると説いた。 ④ 自己の存在は,他の存在同様,それ自体として独立に存在するものではないから,自己
への執着を捨て去るところに苦からの解放があると説いた。 ブッダの解脱観の記述として最も適当なものを,次の①∼④のうちから一つ選べ。 [2007・センター・本試験] ① 人は,苦の原因を認識し執着から離れることによって解脱できる。 ② 人は,自分の中に永遠的要素を見出すことによって解脱できる。 ③ 人は,身体的な苦行を積み重ねることによって解脱できる。 96
基礎からわかる倫理
④ 人は,不可知なるものの存在を認めることによって解脱できる。 仏教の考え方の記述として最も適当なものを,次の①∼④のうちから一つ選べ。 [2005・センター・本試験] ① この世のすべてのものは一定の原因や条件に依存して生起するが,その不変の本質はそ
れらの原因や条件を超越している。絶えず変化する現象にばかり心を奪われ執着すると
ころに,迷妄が生まれる。 ② この世のすべてのものは一定の原因や条件に依存して生起するから,独立不変のものは
存在しない。にもかかわらず,自己や自己の所有物を変わらない実体と考え執着すると
ころに,迷妄が生まれる。 ③ この世のすべてのものは様々な原因や条件に依存して生起するが,それらは根源的な涅
槃の世界の影に過ぎない。その真実を理解せず,自己や自己の所有物を実在と誤認する
ところに,迷妄が生じる。 ④ この世のすべてのものは様々な原因や条件に依存して生起するから,元来知によっては
捉えることができない。変化する存在に身を委ねようとせず,知を求め続けようとする
ところに,迷妄が生じる。 97
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