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第3講 欲求と適応

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第3講 欲求と適応
基礎からわかる倫理
第3講 欲求と適応
1・欲求と適応
*一次的欲求(生理的)…呼吸・睡眠・飲食・性欲など人間の生命維持のための欲求
*二次的欲求(社会的)…愛情や集団への帰属、自己の尊重、自己実現などを求める
*適応…社会環境や自然環境との間に調和的関係をつくり自分の欲求を満足させる
*欲求不満(フラストレーション)…欲求が満たされず心の緊張状態や不安、いらだち
*葛藤(コンフリクト)…相反する欲求が対立し板挟みとなる
やまあらしのジレンマ
→接近・接近型(考古学もしたい、医学の勉強もしたい)
他者との距離によって
→接近・回避型(ケーキを食べたいけど、太りたくない)
生じる人間関係の葛藤
→回避・回避型(宿題はしたくないけど、先生に叱られるのも嫌)
*神経症(ノイローゼ)…欲求不満や葛藤など、心の苦しみが原因となって身体に
さまざまな障害があらわれる。
*アンビバレンス(相反感情)…同一対象に愛と憎しみなど正反対の感情を同時に持つ
*耐性(トレランス)…欲求不満の苦しみに耐える自我の強さ
2・自己実現の欲求
マズロー(アメリカの心理学者)の欲求の階層
[マズローの欲求の階層構造説]
→人間は欲求の健全な充足により成長する
→成長とともに欲求の質が変化し自己実現を果たす
生理的欲求(一次的欲求)から
精神的欲求(二次的欲求)へ
⑤自己実現の欲求
↑
④承認・自尊心の欲求
↑
⑤自己実現の欲求(自分の可能性を実現したい)
④他者による承認・自尊心の欲求(認められたい)
③集団への所属・愛情に満ちた関係の欲求(愛されたい)
②身体の安全の欲求(安全でいたい)
①呼吸・睡眠・飲食・性など生理的欲求(生きたい)
3・欲求不満(フラストレーション)への対応
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③所属・愛情への欲求
↑
②安全の欲求
↑
①生理的欲求
第3講
欲求と適応
●合理的解決…合理的な方法で解決・多くは無意識の領域に抑圧され防衛機能として働く
●攻撃(近道反応)…怒りをあらわにして原因となった人・物に対し暴力をふるう
●防衛機制 ←
フロイト(オーストリアの精神医学者)
欲求不満(フラストレーション)から生まれる不安・緊張から自我を守る
(防衛機制を体系化したのはフロイトの娘アンナ=フロイト)
①抑
圧…好ましくない欲求を無意識のうちに押さえつける
(恐怖の体験で記憶が無くなる・嫌な体験を心の奥底に封じ込める)
②合理化…もっともらしい理屈・理由をつけて自分の行動(失敗)を正当化する
(試験の成績が悪かったのは、自分ではなく問題が悪かったからだ)
③同一視…能力のある他人の長所と自分を重ね合わせ自分のものと思い込む
(友人が東大に合格したことを自分のこととして喜ぶ)
(アニメの主人公のファッションをまねる)
④投影(投射)…自分の短所(感情)を相手に投げかける(なすりつける・責任転嫁)
(自分が相手を嫌いなのは、相手が自分を嫌っているからだ)
⑤反動形成…抑圧した欲求と反対の行動を誇張する
(好きな異性に対して、わざと冷たく接する)
⑥逃
避…苦しい現実に立ち向かわず空想の世界(白昼夢)などに逃げ込む
(嫌なことから、とにかく逃げてしまいたい)
⑦退
行…幼児返りして精神的に甘える
(弟ができた兄が、わざと幼い行動を取り親の関心を引く)
⑧代償(補償)…代わりのもの(似たもの)で欲求を満たす
(ペットが飼えない子どもが、ぬいぐるみで欲求を満たす)
(運動が苦手なので、勉強をがんばって認められようとする)
⑨昇
華…本能的な欲求を社会的・文化的価値の高いものに振り向ける
(満たされない性的欲求を、勉強やスポーツなどで発散する)
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基礎からわかる倫理
次に示す葛藤の4類型A~Dにふさわしいものを、下に示す日常生活での葛藤場面ア~エ
の中からそれぞれ記号で選びなさい。[2011・センター・本試験・改]
かな
A 接近―接近の葛藤:叶えたいと思う複数の対象が同時に存在し、すべてを
叶えることはできない場合に起こる葛藤
B 回避―回避の葛藤:避けたいと思う複数の対象が同時に存在し、すべてを
避けることはできない場合に起こる葛藤
C 接近―回避の葛藤:一つの対象に叶えたい要素と避けたい要素が併存している
場合に起こる葛藤
D 二重接近―回避の葛藤:二つの対象が同時に存在し、そのおのおのに叶えたい
要素と避けたい要素とが併存する場合の葛藤
ア ひそかに思いを寄せていた人と友人が結婚することになり、スピーチを頼まれて
断りたいが、友人に不審がられそうで、断るに断れず悩んでいる。
イ 第一志望の学部はあるが遠隔地のため親が反対するA大学と、地元にあるが第一
志望の学部がないB大学と、どちらを受験しようか悩んでいる。
ウ 雇用条件が良くて安定した会社の入社試験と、もともと入りたかった劇団のオー
ディションと、どちらを受けるべきか悩んでいる。
エ あこがれの先輩がいるクラブに入部しようと思っていたが、練習がとても厳しく
時間も長いと聞き、入部すべきかどうか悩んでいる。
葛藤が生じるのは,複数の互いに相容れない欲求が等しい強さで同時に生じている場合で
ある。葛藤の基本的な型には,
(A)接近したい二つの欲求対象の狭間で生じる葛藤,
(B)回避したい二つの欲求対象の狭間で生じる葛藤,
(C)一つの対象に対して接近と回避の相反する欲求が生じる葛藤の三つがある。
A~Cの葛藤に当てはまるものを、次のア~ウに示す具体例からそれぞれ選びなさい。
[2006・センター・追試験・改]
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第3講
欲求と適応
ア
体重が気になる甘党のMさんは,友達のくれたケーキを食べようかどうか迷っている。
イ
運動好きのNさんは野球部と卓球部から入部を誘われ,どちらにするか迷っている。
ウ
歯痛で困っているOさんは治療が怖いため,歯医者に行くかどうか迷っている。
相容れない動機の板挟みとなるとき悩みが生じることがある。次の動機の対立A~Dにふ
さわしいものを,具体例ア~エの中からそれぞれ記号で選びなさい。
[2007・センター・本試験・改]
A
自立 対 依存
B 親密 対 孤独
C
協力 対 競争
D 衝動的表出 対
ア
親友の身の上話を聞いているうちについ感情的になり,途中で席を立ってしまったが,
道徳的基準
終わりまで冷静に聞く必要があったと後から考え,悩む。
イ
昼休みに友人の話の輪に加わり仲良くしたいと思うが,一人で好きな本を読みながら
リラックスしたいとも思い,悩む。
ウ
難しい数学の問題が宿題に出て,独力で解くのが望ましいとは思うが,勉強ができる
友人に答えを聞く方が簡単であるとも思い,悩む。
エ
テストの直前に,自分が苦労してまとめたノートを見せてくれとライバル関係にある
友人に頼まれて,断ろうかどうかを考え,悩む。
ズローは,生理的欲求,安全欲求,所属と愛情の欲求,自尊欲求,そして最高位にある自
己実現欲求の順で欲求が階層をなし,低次の欲求が満たされてはじめて高次の欲求が生じる
と考えた。下に示す文章中の
1
に入れるのにふさわしい欲求のうち最も低次なものとし
て適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
[2007・センター・追試験・改]
①
安 全
② 所属と愛情
③
自 尊
④ 自己実現
近年,
「ハラスメント」という枠組みで,異性間,クラスや同学年の仲間同士,先輩・後輩
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基礎からわかる倫理
の間などでも生じる人間関係の深刻な問題を捉えようとする考え方がある。ハラスメントを
受けると,人に対する信頼感の喪失,意欲の喪失,感情への悪影響,注意集中能力や思考能
力の低下などが生じる。これは,マズローの欲求階層説における
1
の欲求が脅かされた
状況である。
次の図はマズローが欲求の階層的構造に着目して提唱した理論の内容を表している。図に
示されているマズローの理論では、下位にある欲求が満たされて初めて、その上位にある欲
求が喚起される。この理論から言えることとして最も適当なものを①~④のうちから一つ選
べ。[2010・センター・追試験]
図 マズローによる欲求の階層
自己実現への欲求
他者からの尊敬への欲求、自尊への欲求
所属・愛情への欲求
安全への欲求
生理的欲求
(マズロー『動機づけとパーソナリティ』に基づき作成)
①
安全が確保されていないような状況であっても、自己実現への欲求を高める
ということは十分に可能である。
②
愛情に満たされた関係性のなかで生きていたいという欲求は、飢えや渇きを満た
したいという欲求と同じくらい基本的な欲求である。
③
自尊の感情を高めるように他者に働きかければ、所属・愛情への欲求や、安全へ
の欲求、生理的欲求も同時に満たされる。
④
周りの人たちから認められたいという気持ちが満たされることは、自己実現への
欲求の基礎となっている。
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第3講
欲求と適応
防衛機制の種類とその説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
[2010・センター・本試験]
①
抑 圧:自身で認め難い自らの観念や欲求が,自分には無いかのように思い込ん
でいること
②
投 影:身近な他者が抱いている欲求を,あたかも自分自身のものとして映しだ
すこと
③
代 償:攻撃性や性的な衝動などの欲求を,社会的に価値ある活動への欲求に転
化すること
④
合理化:合理的な判断によって,適切な問題解決に向けて自分自身を導いていく
こと
理想が実現できないときに葛藤や不満が生じる。それらから心を守ろうとする無意識的な
働きとして防衛機制というものがある。
そのうち,合理化と昇華の例として最も適当なものを,次の①~⑥のうちからそれぞれ一
つずつ選べ。[2005・センター・本試験]
①
留学することをあきらめたAさんは,「グローバル化が進んでいるので,留学なんて
どんどん意味がなくなってくるよ」と言っている。
②
自分に対する先輩からの扱いを不満に感じているBさんは,厳しく後輩を指導する同級
生を見て強い怒りを感じる。
③
人から批判されるのではないかとびくびくしているCさんは,いつも大きな声で攻撃的
なしゃべり方をしている。
④
就職活動がうまくいっていない大学生のDさんは,3~4歳のころに大好きだった絵本
を繰り返して眺めている。
⑤
小さいころに深刻ないじめにあっていたEさんは,しかし現在そのことをまったく覚え
ていない。
⑥
失恋した高校生のFさんは,広く社会に関心を向けて,ボランティア活動に打ち込んだ。
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基礎からわかる倫理
葛藤に対して自我を守るための心理学的な防衛機制(防衛反応)の一つである「反動形成」
の例として最も適当なものを,次の①~⑤のうちから一つ選べ。
[2003・センター・本試験]
①
臆病な人が強気な態度をとったりむやみに威張ったりする。
②
大人がまるで小さい子どものように泣いたり叫んだりする。
③
強い偏見の持ち主が,他人が偏見をもっていると非難する。
④
アニメの主人公に強くあこがれ,行動や服装のまねをする。
⑤
実力がなくて試合に負けたのに,体調が悪かったせいだと思う。
異文化の中で生活する人は様々な不安やストレスを感じることがある。このような不安や
ストレスから自我を守るためのメカニズムである防衛機制(防衛反応)についての記述とし
て最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。[1999・センター・追試験]
①
仕事の関係で海外に赴任したAさんは,早く日本に帰りたいという欲求を無意識の世界
に閉じ込め,日本のニュースにも関心を示さず,仕事に打ち込んだ。このように,自分
にとって受け入れ難い観念や欲望を意識から追い出し,無意識の中に閉じ込めておこう
とすることを「抑圧」という。
②
仕事の関係で日本に赴任して来たBさんは,自分の不注意から大きなミスを犯してしま
ったが,これは日本の国の制度が整っていないためだと思った。このように,自己の欠
点や失敗を他人や制度のせいにするなど,もっともらしい理由をつけることを「代償」
という。
③
日本語を学びたいと思い日本に留学したCさんは,勉強があまりうまく進まなかったた
め,自分の部屋に閉じこもって自国語のラジオ放送を聞きふけった。このように,欲求
が満たされないとき,その問題を解決しようとせず,自分の中に閉じこもってしまうこ
とを「退行」という。
④
外国に留学したDさんは,心の奥ではその国の文化や習慣に反発を感じていたが,その
国の文化を積極的に日本に紹介した。このように,憎悪など意識にのぼらせておくこと
が望ましくない感情を抑えるために,愛情などその反対のものをことさら強調すること
を「合理化」という。
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第3講
欲求と適応
自己理解の手がかりとなるA~Dの用語にふさわしいものを、具体例ア~エの中から、そ
れぞれ選びなさい。[2011・センター・本試験・改]
A 自己実現
B
自我意識
C
自己愛
D
自我同一性
ア 私は子どものころ、自分は家業に全く向いていないと思っていたけれど、仕方な
しに手伝い始めた家業にいつの間にか打ち込むようになっていた。最近ではそれ
が自分に向いているのではないかと感じ始めている。
イ 私と接した人はみんな私を好きになるようだ。しかし、私が友人たちのように簡
単に恋人を作ったりしないのは、私に釣り合うような相手が身近にいるとは思え
ず、自分を大切にしたいからだ。
ウ 私は内気で気の利かない人間だと思っているが、友人からは思慮深くて信頼でき
る人だと言われた。友人の意見をきっかけに、私という人間について改めて考え
るようになった。
エ 私は、大学病院の看護師として勤務しているが、将来は医療の恩恵を受けにくい
離島や発展途上国で働きたいと考えている。そのために、現地で求められる看護
技術や知識についても、もっと研鑽を積んでゆきたい。
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