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人道主義(ヒューマニズム)

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人道主義(ヒューマニズム)
第3章
西洋思想
人道主義(ヒューマニズム)
シュヴァイツァー
ゲーテの自然観に共感・アフリカで医療活動やキリスト教伝道
「アフリカの聖者」とよばれる・
『文化と倫理』
『水と原生林のはざまで』ノーベル平和
賞
生命への畏敬
生きようとする意志、生きること、命あるものすべてに価値がある。「自分は生きよ
うとする生命に取り囲まれた、生きようとする生命である。」しかし人間は生きるため
に他の生命を傷つけ、殺さなければならない。この葛藤と、他の生命に対する罪責を負
い続ける自覚こそが大切である。
ゲーテ(ドイツの詩人)の自然観
機械論的自然観に基づく自然科学の急速な発達に疑問をもった。(自然科学そのもの
は否定せず、自然のすべてを数量化できると考える自然科学の傾向に対して批判的であ
った。)
・自然とは単なる物質ではなく、人間の生命とつながりあっている「生きた自然」であ
る
1
第 36 講
人道主義(ヒューマニズム)
マザー=テレサ
カトリックの修道女してインドに派遣される・ノーベル平和賞を受賞。「貧しい人び
との中でももっとも貧しい人たち」に奉仕せよという内なる声を聞いたといわれる
神の愛・隣人愛
インドの貧民街(スラム)で奉仕活動
(1) 「死を待つ人の家」
「孤児の家」などをつくる
(2) 「今日のもっとも重い病気は、レブラでも結核でもなく、人から愛されていない、
誰からも見棄てられていると感じることなのです」
ガンディー
インド独立運動の指導者・「ひとつのインド」を唱えるも熱狂的なヒンドゥー教徒の
青年に暗殺される
1.非暴力主義
真理(正しいこと)を実現するためには、それにふさわしい正しい手段を取ることで、
相手の良心に訴えかける。
非暴力・不服従運動・塩の行進(塩税法への反対運動を 400 ㎞の行進で表現)
2.サティヤーグラハ(真理把持)
宇宙の根源的真理を把握し民族解放を実践
2
第3章
西洋思想
3.アヒンサー(不殺生)
すべての生物を同胞とみなし肉食禁止・戦争放棄 仏教・ジャイナ教も参照
4.ブラフマチャリヤー(自己浄化)
欲望・喜怒哀楽を統制し禁欲と浄化をはかる
5.スワラージ(自治独立)・スワデージ(国産品愛用)
独立運動のスローガン
キング牧師
黒人解放運動の指導者・非暴力主義・「私には夢がある」・ノーベル平和賞
(1) バス=ボイコット運動(人種隔離に抗議)→公民権運動の盛り上がり
(2) 仕事と自由のための大行進(人種を超えた人々が参加)
(3) 「私には夢がある」のスピーチ
I have a dream that my four little children will one day live in a nation where they
will not be judged by the color of their skin but by the content of their character.
私には夢がある。私の四人の幼い子ども達が、いつの日か肌の色ではなく人格そのもの
によって評価される国に住めるようになるという夢です。
3
第 36 講
人道主義(ヒューマニズム)
トルストイ
(1) 『戦争と平和』
・非暴力主義とキリスト教隣人愛
(2) ガンディー・ロマン=ロラン(フランス・戦闘的ヒューマニズム)
(3) 日本の白樺派などに影響
宮沢賢治
「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」
チャップリン
喜劇俳優・映画監督『モダンタイムス』では、工場で働く工員が機械に翻弄(ほんろ
う)される様子を風刺し、機械文明に対する批判を表現した。
4
第3章
西洋思想
「生命への畏敬」を道徳の根本原理とし、人間の生命ばかりかあらゆる生物の生命を守れ
と説いた思想家として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
[2007・センター・本試験]
①
シュヴァイツァー
②
ルソー
③
キルケゴール
④
サルトル
近代以降の宗教論に関する記述として適当でないものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
[2002・センター・本試験]
①
シュヴァイツァーは、伝統的なキリスト教的倫理思想を人間中心主義であると批判し
「生命への畏敬」を提唱したが、同時にそれは伝統的な宗教を超える新しい宗教の創出
となった。
②
ニーチェは、強者を否定し弱者を讃(たた)えるキリスト教の道徳は強者に対する弱者
のルサンチマン(怨み)から生まれたものであり、それに代わる新しい価値を創造しなけ
ればならないと説いた。
③
キルケゴールは、当時のデンマークでも影響力のあったヘーゲル哲学を批判しつつ、
本来的な自己とは神の前に立つ単独者としてのみ可能になると主張した。
④
ユングは、個人的無意識と集合的(普遍的)無意識とを区別し、宗教的象徴は集合的(普
遍的)無意識の中に存在する元型が意識によってイメージとして把握されたものである
とした。
5
第 36 講
人道主義(ヒューマニズム)
近代以降、科学技術的な知とは異なる知を示した思想家がいる。彼らについての記述とし
て適当でないものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①
[2000・センター・本試験・改]
モンテーニュは、懐疑論的な立場から、偏見や独断を排して不断に自己省察を行うこ
とで、人間性の真実を深く探究した。
②
パスカルは、順序正しく推論を行う「繊細の精神」に対し、直観的で感性的な「幾何
学的精神」の重要性を説いた。
③
ヤスパースは、ともに本来の自己をめざす者同士の実存的交わりを「愛しながらの戦
い」と呼び、これを有神論的実存主義の原則とした。
④
シュヴァイツァーは、科学技術による自然支配が生命の軽視をもたらしたことを批判
し、倫理の原理として「生命への畏敬」を唱えた。
シュヴァイツァーの説明として、正しいものを次の①~⑤のうちから一つ選べ。
[2006・センター・本試験・改]
①
誰にとっても成り立つような普遍的で客観的な真理ではなく、自分にとっての真理、
すなわち自らがそれのために生き、また死にたいと願うような主体的真理を追求した。
②
日常的な道具は使用目的があらかじめ定められており、本質が現実の存在に先立って
いるが、現実の存在が本質に先立つ人間は、自らつくるところ以外の何ものでもないと
考えた。
③
宇宙はそれ以上分割できない究極的要素から構成されているが、この要素は非物体的
なもので、それら無数の要素が神の摂理のもとであらかじめ調和していると主張した。
④
人が罪を赦(ゆる)され、神によって正しい者と認められるには、外面的善行は不要で
あり、聖書に書かれた神の言葉を導きとする、内面的な信仰のみが必要だと主張した。
⑤
生命は神に通じる神秘的なものであるから、人間を含むすべての生命に対して愛と畏
敬の念をもつべきであり、そのことによって倫理の根本原理が与えられると考えた。
6
第3章
西洋思想
次のア~ウはそれぞれ誰の思想であるか。以下の①~⑪のうちからそれぞれ一つ選べ。
[2004・センター・本試験・改]
ア
人間は、死や苦しみなど、自分の力ではどうすることもできない状況に直面したとき
に、その不安と絶望を越えて、超越者に出会い、しかも他の実存との「愛しながらの戦
い」によって連帯することで、真の実存に目覚める。
イ
人間も生物であり、生きるために他の生き物を傷つけざるをえない。しかし、倫理的
な存在として、人間はすべての生命ある存在を愛さなければならない。この葛藤の中で
各人の責任において行動を決定するのである。
ウ
人間は、身体的存在としては、圧倒的に優勢な字宙に比べ、きわめて無力で卑小であ
る。だが、人間は理性的存在であり、自分が死ぬことを知っている。考え、知ることに
よって人間は偉大である。
7
①
サルトル
②
ガンディー
③
エラスムス
④
⑤
パスカル
⑥
キルケゴール
⑦
シュヴァイツァー ⑧
ガンディー
⑨
ピコ・デラ・ミランドラ
⑩
サルトル
ヤスパース
⑪
ヘーゲル
第 36 講
人道主義(ヒューマニズム)
キリスト教における隣人愛の「隣人」とはどんな人を指しているのか。次のマザー・テレ
サの言葉を読み、最もよく合致するものを、以下の①~④のうちから一つ選べ。
[2002・センター・本試験]
この世の中で、私たちがたんなる数ではないと思うことは、すばらしいことです。私たち
は神ご自身の子どもです。インド、日本、アメリカ、ヨーロッパに住む人も、そして世界の
どの地域に住む人びとも、みな、私の兄弟、私の姉妹なのです。あのとてもさみしそうな人、
とても貧しい人、とてもかわいそうな人、そしてとても偉い人も、私の姉妹、私の兄弟です。
……神はすぐそこにおられます。どこ?
貧しい人びとのなかに、私の家族の母、兄、妹、
夫や妻のなかに。そこにいらっしゃるのです。
(マザー・テレサ『生命(いのち)あるすべてのものに』)
①
同じ神を信じ、互いの利益をはかり合う宗教的な共同体のメンバー。
②
血縁でつながった家族や親族、あるいは同一の民族に属する人間。
③
恵まれた人たちからの経済的な助けを必要とする社会的弱者。
④
様々な状況において出会い、神の愛のもとで共に生きる人間。
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第3章
西洋思想
ガンディーはインドの伝統思想を現代的な視点から捉(とら)え直した。彼の考え方につい
ての記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
[2001・センター・本試験・改]
①
過去に目をつぶる者は、現在のことも正しく見ようとしない者である。非人道的な行
為を心に刻もうとしない者は、将来再びそうした危険に陥りやすい。
②
労働者が生産手段を共有するという目標は、議会制民主主義を通じては実現不可能で
あり、それを実現するには、職業革命家が武装蜂起して国家を資本家階級から奪い取ら
なければならない。
③
真理を把握し実現するための闘いにおいては、一切の生命を同胞と見なして、あらゆ
る暴力に反対するとともに、自分の生命を投げ出してでも他者に最大の利益を提供しな
ければならない。
④
戦争は人間の人格を破壊し、自由を奪い去るものであるから、自由な諸国家の連合体
を形成することによって永久的な平和を確立することが、人間の目指すべき理想である。
ガンディーの非暴力主義に関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一
つ選べ。[2003・センター・追試験]
①
暴力を振りかざす者に対して、一切の対抗暴力を用いることなく、黙って彼らに服従
することによって、精神的な勝利を収めることができる。
②
非暴力運動は、核兵器をもたなかった時代のイギリスに対しては有効であったが、今
後は核抑止力のもとでのアヒンサーを追求する必要がある。
③
暴力を用いずに、しかし決して相手に屈伏することなく、非協力を貫き通すことによ
って、相手の良心に訴え相手を変えていかなければならない。
④
非暴力という手段は、勇敢な者たちばかりでなく、臆病な者たちにも実行可能なので、
抵抗活動を大衆運動として拡大していくために不可欠である。
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第 36 講
人道主義(ヒューマニズム)
次の文章は、ある演説の一部である。その演説を行った人物を、以下の①~⑥のうちから
[2005・センター・本試験]
一つ選べ。
わたしには夢がある。それは、いつの日か、わたしの四人の小さな子どもたちが、肌の色
によってではなく、人格そのものによって評価される国に生きられるようになることだ。
わたしには夢がある!
①
ガンディー
②
孫 文
⑤
キング牧師
⑥
毛沢東
③
シュヴァイツァー ④
マザー=テレサ
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