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Untitled - World Bank
第5章 地域別展望 一人あたり国内総生産(GDP)指標 1991 ∼ 2001 年 アフリカ地域 東アジア・大洋州地域 200 200 150 182 150 100 82 アフリカ地域 84 東アジア・大洋州地域 89 南アジア地域 93 ヨーロッパ・中央アジア地域 98 100 100 100 100 50 50 0 0 2001 1991 世界銀行の地域区分、現地事務所及び融資適格国 2001 1991 南アジア地域 ヨーロッパ・中央アジア地域 ラテンアメリカ・カリブ海地域 103 中東・北アフリカ地域 108 200 200 142 150 150 100 100 100 50 50 0 100 93 1991 2001 0 1991 2001 ラテンアメリカ・カリブ海地域 200 中東・北アフリカ地域 200 150 150 100 114 100 100 100 50 50 0 108 染者の数字は、2001 年 12 月現在における UNAIDS に よる推定値です。またこれらの数字は、UNAIDS の地 域に関する定義に基づいたものですが、この定義は世銀 が使用しているものとはやや異なります。詳細について 0 1991 2001 この章の「ファクト・シート」に示されているエイズ感 1991 2001 は、次のホームページをご覧ください。 www.unaids.org 出典:「世界開発指標」のデータベース 世界銀行の地域区分、 現地事務所及び 融資適格国 世界銀行は現在、世界の およそ 100ヶ所に現地事 務所を置き活動していま す。借入国に事務所を開 設することによって、世 Mexico 界銀行は、借入国をより 良く理解し、借入国とよ Guatemala El Salvador (東アジア・大洋州地域の一部) ラテンアメリカ・ カリブ海地域 つ借入国に一層迅速にサ Kiribati Samoa できます。ポートフォリ Haiti Nicaragua Costa Rica り一層密接に協力し、か ービスを提供することが Belize Jamaica Honduras Panama R.B. de Venezuela Guyana Suriname Colombia 2002年度新規融資承認総額 IBRD:41億8,810万ドル IDA:1億7,780万ドル プロジェクトのポートフォリオ:224億ドル Ecuador Brazil Peru Tonga Bolivia Fiji オの4分の3は、ワシン Paraguay トン DC の本部ではなく、 Dominican Republic 国別担当局長が管理して Antigua and Barbuda St. Kitts and Nevis います。現在は、職員全 Dominica St. Lucia St. Vincent and the Grenadines 体の約30%が現地事務所 Grenada で活動しています。 Trinidad and Tobago R.B. de Venezuela IBRD融 資 のみの適格国 IBRD及びIDA融資の適格国 IDA融資のみの適格国 融資が行なわれたことがないIDA融資適格国 世銀現地事務所 国別担当局長が駐在する現地事務所 Uruguay Chile Argentina IBRD 31362 AUGUST 2001 中東・ 北アフリカ地域 ヨーロッパ・ 中央アジア地域 2002年度新規融資承認総額 IBRD:4億5,180万ドル IDA:1億270万ドル プロジェクトのポートフォリオ:54億ドル 2002年度新規融資承認総額 IBRD:48億9,470万ドル IDA:6億2,890万ドル プロジェクトのポートフォリオ:160億ドル Estonia Russian Latvia Lithuania Fed. Poland Belarus Russian Federation Ukraine Moldova Kazakhstan Mongolia Romania Bulgaria Georgia Azerbaijan Armenia Turkey Syrian A.R. Lebanon Tunisia Morocco Uzbekistan Kyrgyz Rep. Tajikistan Turkmenistan Islamic Rep. of Iran Iraq Jordan Pakistan Algeria Nepal Arab Rep. of Egypt Bhutan India Mali Senegal The Gambia Guinea-Bissau Guinea Sierra Leone Liberia Niger Burkina Faso Eritrea Chad Myanmar Benin Central African Republic Rwanda Dem.Rep.of Congo Namibia Poland Czech Republic Ukraine Slovak Republic Hungary Slovenia Croatia Bosnia and Herzegovina Romania F.R. of Yugoslavia Bulgaria Albania FYR Macedonia Maldives Kiribati Seychelles Burundi Comoros Indonesia Solomon Islands Vanuatu 南アジア地域 Mozambique Madagascar Mauritius Botswana South Africa Papua New Guinea Malawi Zambia Zimbabwe Marshall Islands Kenya Tanzania Angola Federated States of Micronesia Palau Malaysia Somalia Congo Philippines Sri Lanka Ethiopia Uganda Gabon Vietnam Cambodia Djibouti Cameroon Togo Equatorial Guinea São Tomé and Príncipe Lao P.D.R. Thailand Rep. of Yemen Sudan Nigeria Côte Ghana d’Ivoire 2002年度新規融資承認総額 IBRD:9億8,240万ドル IDA:7億9,120万ドル プロジェクトのポートフォリオ:259億ドル Bangladesh Mauritania Cape Verde 東アジア・ 大洋州地域 Rep.of Korea China Afghanistan Swaziland Lesotho Fiji 2002年度新規融資承認総額 IBRD:8億9,300万ドル IDA:26億1,540万ドル プロジェクトのポートフォリオ:172億ドル アフリカ地域 2002年度新規融資承認総額 IBRD:4,180万ドル IDA:37億5,160万ドル プロジェクトのポートフォリオ:153億ドル この地図は2001年度末現在の次の事象を反映したものです: アフガニスタンは2002年度より再びIDA融資の適格国になり ました。 123頁の世銀事務所に関する表及び131頁の世銀融資適格国 に関する表を参照してください。 第5章 地域別展望 83 世銀融資適格国: アンゴラ ウガンダ エチオピア エリトリア ガーナ ガボン カメルーン ガンビア ギニア ギニアビサウ ケープベルデ ケニア コートジボワール コモロ コンゴ共和国 コンゴ民主共和国 サントメ・ プリンシペ ザンビア シエラレオネ ジンバブエ スーダン スワジランド セーシェル 赤道ギニア セネガル ソマリア タンザニア チャド 中央アフリカ共和国 トーゴ ナイジェリア ナミビア ニジェール ブルキナファソ ブルンジ ベナン ボツワナ マダガスカル マラウイ マリ 南アフリカ モーリシャス モーリタニア モザンビーク リベリア ルワンダ レソト 84 アフリカ地域 アフリカ地域には活気が生まれています。ア フリカ地域の人々と指導者は、開発アジェンダ に対する取り組み姿勢をますます強めていま す。世界経済が困難な状況にあったにも関わら ず、アフリカ地域の2002年度の経済成長率は平 均約 3%に達しました。改革アジェンダを着実 に実施し、安定性と公正なガバナンスを実現 し、かつ優れた経済政策を行った国々は、平均 4%の経済成長率を達成しました。この経済成長 率でも、2015 年までに貧しい人々の数を半減す るというミレニアム開発目標(MDGs)の達成に 必要な 7%には依然として及びません。ガバナ ンス問題は、引き続きアフリカ地域の多くの国 を悩ませました。また一部の主要国の政治・経 済状況がなかなか好転しないか、全く好転しな いため、同地域に対する投資家の姿勢も慎重に なっています。アフリカ地域がMDGs を達成で きる可能性は不透明ですが、見通しは一様では ありません。小学校就学率の上昇により、教育 に関する見通しは改善しました。しかし、保 健・医療セクターでは、このような進展は見ら れません。エイズの拡散は、経済成長と所得に 悪影響を与えているだけでなく、平均寿命の延 びを反転させる恐れもあります。 世界経済の減速は、アフリカ地域の発展にも 悪影響を与えました。一部の国は、特に非伝統 産品―園芸作物など―に関して、その輸出 市場の成長率の鈍化に直面しました。銅生産国 のザンビアや西アフリカ地域の綿花生産国など の非石油輸出国では、状況は特に深刻でした。 先進国における農業補助金も、一部の産品の価 格を歪め、かつ低下させ、途上国の農家が貧困 から抜け出す可能性を制約しました。このよう な状況により、輸出品目の多様化の必要性が一 段と明確になりました。一部の国々は、この輸 出品目の多様化によって、経済ショックを緩和 することができました。アフリカ地域に対する 世界銀行年次報告書 2002 援助流入額は減少しており、過去10年間では一 人あたり援助流入額は約 40%減少しました。し かし、最近のモンテレー合意により、このよう な傾向は良い方向に転換すると考えられます。 アフリカ大陸の主要な地域では、平和と安定 に向けて大きな進展が見られました。エチオピ アとエリトリアの和平プロセスは徐々に進展し ており、アフリカ大陸の中で最も貧しいこれら の地域にも開発の可能性が生まれました。「ア フリカの五大湖」地域では、コンゴの安定化に 向けたプロセスがかなり進展していて、過去10 年間にわたって混乱と紛争が続いていた同国 は、同地域の成長のエンジンになる可能性があ ります。シエラレオネは、恒久的な平和に向か って着実に前進しています。アンゴラでは、政 府と反政府勢力の間で和平協定が調印済みであ るため、アフリカ地域で最も長く続いた内戦は 終了するものと思われます。過去 10 年間では、 同地域の紛争によって、経済成長率は1∼2% ポイント程度低下した可能性があります。 世銀の援助 2002 年度には、アフリカ地域に対する国際開 発協会(IDA)の融資実行額は大幅に増加し、 過去 10 年間で最高の 26 億ドルに達しました。 同年度における IDA の融資承認額は 37 億ドル となっています。この増額は、アフリカ地域に おける対プロジェクトポートフォリオの管理が 改善したことと、アフリカ地域における大半の 国々の政策環境が大幅に改善したことを受けて 行われたものです。 IDA の総融資額の 50%をアフリカ地域に振り 向けるという目標がありますので、このような 増額は今後数年間継続することが見込まれま す。新規融資の承認は、構造調整融資と投資融 資の両方の形態で行われました。IDAの第12次 増資(IDA-12) (2000 ∼ 02 年度)においては、構 造調整融資は IDA-11 の水準にとどまりました アフリカ地域のファクト・シート が、投資融資の増加率は 60%を超える見通しで す。融資実行額は、2001 年度の 22 億 5,000 万ドル の水準から徐々に増加していくものと見込まれま す。 さらに地域社会や草の根レベルの組織に直接資 金を供与し、地域全体の問題に取り組み、かつ世 銀が援助したプロジェクトの一部にグラントの供 与を受けるための新たな手法が開発されました。 貧困削減戦略文書(PRSP)に関しては、プログラ ム融資を通じて資金供与が行われる割合が高まり ました。この割合は、IDA-11では6%であったのに 対し、IDA-12 では総融資額の22%に達する見込み です。また世銀から援助を受けたプロジェクトの 質もかなり改善しました。2000年度に終了したプ ロジェクトの64%は、業務評価局(OED)から「満 足できる」との評価を受けましたが、この割合は 過去10 年間では最高のものでした。1997 年度にお いて、 「問題がある」と判断されたプロジェクトと コミットメントの割合はそれぞれ 40%と 42%でし たが、現在では、それぞれ 15%と 17%にまで改善 しています。 援助の効果を高めるため、借入国に対するIDA 融資の配分には、政策と制度の質を反映させてい ます。その結果、ブルキナファソ、ガーナ、マリ、 モザンビーク、セネガル、タンザニア及びウガン ダなどの一部の国々に対する援助額は増加しまし た。また世銀は紛争または政治不安から脱却した コンゴ、コートジボワール、エリトリア及びエチ オピアに対する融資を再開しました。 世銀は重債務貧困国(HIPC)イニシアティブを 通じて、アフリカ諸国が最大限の債務救済を受け られるよう努力すると共に、貧困削減のために資 金が効果的に使用されるよう努力しました。この イニシアティブにより、26ヶ国(このうち22ヶ国 がアフリカ地域)が、全債権国から総額 410 億ド ルの債務救済を受けました。その結果、これらの 国々の債務残高は約 3 分の 2 減少し、社会的支出 が年間約8億 3,000 万ドル増加しました。 地域の優先事項 アフリカ地域に関する世銀の戦略は、MDGs の 達成率を加速することです。この戦略目標は、 「アフリカ開発のための新パートナーシップ (NEPAD)」フレームワークに参加するアフリカ 諸国の元首が承認した目標に合致しています。ま たこの戦略目標は、2000年の画期的な研究「アフ リカは21世紀に生き残れるか」に明記されている 内容にも合致しています。 (囲み5.1を参照) 。この 研究は、次の 4 つを重点分野に指定しています。 総人口: 7 億人 人口増加率: 2.3% 平均寿命: 47 歳 乳幼児死亡率(1,000 人あたり): 91 若い女性の非識字率: 27% 2001 年の一人あたり国民総所得(GNI): 470 ドル エイズ感染者数: 2,850 万人 注:平均寿命、乳幼児死亡率(1,000 人あたり)及び若い女性の非識字率は、2000 年 の「世界開発指標」データベース、その他の指標は 2001 年の同データベース。 現在は、国民総生産(GNP)の代わりに、国民総所得(GNI)が使用されています。 2002 年度の 新規融資承認総額 IBRD : 4,180 万ドル IDA : 37 億 5,160 万ドル 2002 年度の 融資実行総額 IBRD : 8,730 万ドル IDA : 25 億 6,390 万ドル 2002 年 6 月 30 日現在において実施中の プロジェクトのポートフォリオ: 153 億ドル 配管は、基本的サービスのアクセス改善のために重要です。ザンビア では、IDA から融資を受けた支線道路プロジェクトに基づいて、配管 敷設工事が行われています。 a)ガバナンスの改善と紛争の解決。 b)アフリカ地域の膨大な人的資源の開発。 c)生産の多様化と競争力の強化。 d)援助依存度の引き下げと債務の削減、及びド ナーとのパートナーシップの強化。 世銀は紛争後の支援、キャパシティ・ビルディン グ、伝染病対策の支援、債務救済、アフリカの産 品の市場拡大及び地域統合をはじめ、地域の重要 優先事項に引き続き力を注いでいます。 第5章 地域別展望 85 囲み 5.1 アフリカ地域の開発のためのパートナーシップ アフリカ地域内部でも、ドナーの間でも、次のようなコン が議論されました。まだ新しい動きではありますが、NEPAD センサスが強まっています。すなわち、政府、民間セクター は、アフリカの民族に自らの開発戦略に率先して責任を担わ 及びシビルソサエティの間、並びにアフリカ地域の国々とド せるための重要な一歩を踏み出しました。 ナーの間での権限と責任の再配分が必要だということです。 開発に関するこのような新たなアプローチは、PRSP プロセ NEPAD は、国レベルで実施されてきた PRSP の多くの原則 を基礎にしています。過去 2 年間では、 39 ヶ国が暫定的な スと NEPAD の基礎になっています。 PRSP を作成し、8 ヶ国が正式な PRSP を作成しました。すで NEPAD は、貧困削減に対するアフリカ地域のアプローチ を拡大しました。2001 年 7 月にアフリカ諸国の元首が採択し にいくつかの重要な教訓が得られました。第 1 に、PRSP アプ た独自のフレームワークは、成果を上げる一次的責任はアフ 程度行われているかということは各国で異なりますが、PRSP リカ地域の各国政府とその国民にあることを認めています。 プロセスは、開放性、透明性及び参加が何故必要なのかを明 ローチの原則は急速に根付いています。効果的な参加がどの また同フレームワークは、開発を推進する上でのガバナンス、 確にしました。第 2 に、シビルソサエティの努力により、多 参加、市場拡大及び民間セクターのイニシアティブの重要性 くの場合、PRSP の内容が改善されました。特に、社会的疎 を強調しています。21 ヶ国の代表者が参加した 2002 年 3 月 外や不公平なガバナンスの問題に関心が集まりました。32 の の会議では、8 つの行動基準案が策定されると共に、アフリ 低所得国の予算を分析した結果、正式な PRSP を作成した国 カ地域の各国による相互評価制度が確立されました。2002 では、1999 年から 2001 年にかけて基本的な社会事業に対す 年 4 月の会議では、開発への民間セクター資金の活用の問題 る歳出が大幅に増加していることが分かりました。 実な施策を講じている国々を支援するものです。 コンゴは、経済の安定化、及びエイズなどの緊急 の問題への取り組みに対する支援として、5,000 万 ドルのグラントの供与を受けました。また世銀は 紛争復興問題への取り組みを改善するために業務 進行表を作成しました。 貧しい人々に対するエンパワーメント 依然として、アフリカの人々の多くは安全な飲料水を利用することが できません。これは、ガーナの水汲み場の女性を写したものです。 世銀はアフリカ地域ではキャパシティ・ビルデ ィングと制度の強化のための活動を支援していま す。世銀はハラレのアフリカ・キャパシティ・ビ ルディング財団を通じて支援を行っています。世 銀はこの財団に対して、その活動を支援するため に複数年分として1 億5,000 万ドルの融資を行うこ とを承認しています。さらに世銀はアフリカ地域 の専門家の間での知識と経験の共有を推進してい ます。 投資環境の構築 世銀は IDA-12 に基づくグラント・ファシリテ ィを活用して、紛争から抜け出したアフリカ諸国 に対する支援を拡大しました。このグラント・フ ァシリティは、社会的・経済的な回復に向けて着 86 世界銀行年次報告書 2002 グローバルレベルの優先事項 伝染病 保健問題―特にエイズなどの伝染病―は、 アフリカ地域の開発において大きな問題となって 図 5.1 アフリカ地域: IBRD と IDA のテーマ別の融資額、2002 年度 総融資額 38 億ドルに占める割合 環境・天然資源管理 4% 農村開発 9% 経済政策 4% 図 5.2 アフリカ地域: IBRD と IDA のセクター別の融資額、2002 年度 総融資額 38 億ドルに占める割合 給水・衛生・治水 3% 農業・漁業・林業 6% 運輸 13% 公共セクター運営 22% 法律・司法・行政 24% 都市開発 7% エネルギー・鉱業 13% 法規 1% 人的開発 19% 社会開発・ジェンダー・参加 9% 社会的保護・リスク管理 3% 情報・通信 1% 産業・貿易 7% 金融・ 民間セクター開発 21% 教育 12% 保健・その他社会事業 16% 金融 5% 貿易・統合 1% います。世銀はアフリカ地域におけるエイズとの 闘いのために10億ドルの融資を行うことを承認し ました。そして、16ヶ国に対し、5億5,250 万ドル の融資が承認されました。他の15 ヶ国でも、プロ ジェクトの作成が進められています。エイズの拡 散が続いているために、アフリカ地域の平均寿命 の延びが帳消しになりつつあります。エイズによ って、すでに1,800 万人を超えるアフリカ人が死亡 しています。2002 年度には、世銀はより多くの 国々と、より多くの地域エイズ・プログラムに支 援を行いました。また世銀は初めて、複数国によ るエイズ・イニシアティブを支援しました。この イニシアティブは、コートジボワール、ガーナ、 トーゴ、ベナン及びナイジェリアを通過するアビ ジャン=ラゴス回廊などの交通ルートを対象にし ています。世銀は「オンコセルカ症抑制プログラ ム」や「マラリア撲滅キャンペーン」などの地域 プログラムにも支援を行っています。 貿易と統合 アフリカの地域統合は、投資家と企業家により 大きな機会を提供できる大規模経済地域の創出の ための 1 つのアプローチと考えられています。世 銀は統合市場を創出するための活動、及び地域共 通の問題に取り組むための協力強化を目的とした イニシアティブ―「ナイル川流域イニシアティ ブ」など―を支援しています。2002 年度には、 IDAから融資を受けた「西アフリカ経済・通貨同 盟」の決済システムを改善するための 940 万ドル のプロジェクトや東アフリカ地域の 500 万ドルの 貿易促進プロジェクトが稼動しました。 世銀はドーハ閣僚会議を踏まえた一層公平な貿 易システムを擁護すると共に、先進国に対して、 アフリカ地域の産品に対する市場開放度を段階的 に高めるよう強く要請しています。また世銀はア フリカ諸国に対し、貿易交渉に関連する技術支援 を提供しました。 第5章 地域別展望 87 表 5.1 アフリカ地域に対するテーマ別、セクター別融資、1993 ∼ 2002 年度 (単位 100 万ドル) 1993–97 1998–99 (年平均) (年平均) テーマ別 経済政策 公共セクター運営 法 規 金融・民間セクター開発 貿易・統合 社会的保護・リスク管理 社会開発・ジェンダー・参加 人的開発 都市開発 農村開発 環境・天然資源管理 テーマ別総額 セクター別 農業・漁業・林業 法律・司法・行政 情報・通信 教 育 金 融 保健・医療・その他社会事業 産業・貿易 エネルギー・鉱業 運 輸 給水・衛生・治水 セクター別総額 2000 2001 2002 165.9 317.6 42.1 564.6 158.4 67.4 145.9 256.3 319.1 237.9 201.0 165.0 291.7 21.0 509.0 120.5 117.2 167.6 267.7 253.8 393.6 156.0 78.2 495.3 26.7 466.7 53.7 140.5 210.5 208.5 154.9 151.8 172.4 138.5 429.6 34.0 625.8 261.5 376.4 491.8 399.4 206.1 296.3 110.0 138.7 851.9 22.5 780.7 46.4 98.3 347.4 739.0 279.6 329.2 159.9 2,476.0 2,463.2 2,159.1 3,369.6 3,793.5 164.1 551.4 19.2 223.5 172.0 240.1 317.1 269.3 376.1 143.1 170.0 610.9 36.7 304.4 53.7 273.6 94.3 244.0 533.5 142.0 111.5 834.9 17.3 189.8 121.7 183.1 104.7 176.3 263.9 155.9 212.0 880.8 21.1 209.5 200.1 889.9 170.6 198.0 229.8 357.8 210.4 906.9 33.8 472.6 192.8 616.6 266.7 490.3 491.1 112.2 2,476.0 2,463.2 2,159.1 3,369.6 3,793.5 62.3 2,413.7 31.2 2,432.0 97.6 2,061.5 0.0 3,369.6 41.8 3,751.6 うち、 IBRD融資額 IDA融資額 注:新たなテーマ・セクター分類システム(68 テーマ、57 セクター)に従って、融資を 11 の主要テーマと 10 の主要セクターに分けて示した。 「アフリカ地域に対する複数国エイ 30 頁の表 2.2 を参照。端数を四捨五入したため、合計額が合わないことがある。2002 年度においては、 ズ・プログラム」のフェーズⅠ(2001 年度に 5 億ドルが承認された)とフェーズⅡ(2002 年度に 5 億ドルが承認された)に基づいて、世銀は 9 件のプロジェクト(IDA の新規融資承認総額: 2 億 6,230 万ドル)を承認した。 88 世界銀行年次報告書 2002 世銀融資適格国: 東アジア・大洋州地域 2001年には、東アジア・大洋州地域は世界経 済の減速による大きな影響を受け、前年に 7% を超えていた経済成長率は 5%未満に低下しま した。しかし2002 年初めには、同地域の経済は 急速かつ力強く回復しています。これは米国な どの主要輸出市場の回復が予想以上に順調であ ることと、地域の民間消費支出が堅調であるこ とによるものです。輸出と内需の増加に支えら れたバランスの取れた景気回復が見込まれま す。インドネシア、フィリピン及びタイにおけ る政権交代によって、政府の機能が強化され、 国民の信頼が高まったことで、これらの国々の 政治情勢は安定化しました。中国では力強い経 済成長が続いていることを受けて、2002 年の最 初の数ヶ月間で輸入は約 10%増加しました。中 国は、地域各国にとって大きな輸出市場となっ ています。世界貿易機関(WTO)加盟による 好影響、制度改革プログラムの積極的な実施、 及び中国が地域における貿易と投資の重要セン ターになりつつあることなどの要因を考慮する と、中国経済の見通しは明るいと思われます。 2001年の世界経済の減速は、東アジア・大洋 州地域の貧しい人々にはほとんど影響を与えま せんでした。その理由は、経済成長率が大きく 低下した国は、元々貧困率が低い国だからで す。地域の大半の貧しい人々が集中している中 国及びその他の移行経済国では、経済成長率が 高水準に維持されたために、所得格差の拡大は 起こりませんでした。しかし、1990 年代半ば以 降の貧困削減率が長期的に低下している問題に 対処するため、かつ東アジア地域の各国が MDGs を達成できる可能性を維持するために は、地域の持続可能な景気回復が不可欠です。 該借入国の貧困削減を支援することです。戦略 的な提携やパートナーシップは、このアプロー チの有効性を高める上で大きな役割を果たして います。2002年度には、世銀は政策助言サービ スや技術支援に加えて、約27 のプロジェクトを 対象として、約18億ドルの新規融資を承認しま した。世銀援助の戦略上の重点は、投資環境の 構築、公共セクターのガバナンスの改善、貧し い人々への投資とこれらの人々のエンパワーメ ント、及び環境保護に置かれています(囲み5.2 を参照) 。 東アジア・大洋州地域を担当する職員の約半 数及びすべての国別担当局長は現地に駐在して おり、同地域の援助の有効性が高水準に保たれ ています。世銀は従来に増して借入国の地方自 治体レベルでの援助を重視しています。この手 法により、国レベルでの改革の浸透率が高まり インドネシア 大韓民国 カンボジア キリバス サモア ソロモン諸島 タイ 中国 トンガ バヌアツ パプアニューギニア パラオ フィジー フィリピン ベトナム マーシャル諸島 マレーシア ミクロネシア連邦 ミャンマー モンゴル ラオス人民共和国 この項では、東ティモー ルについても報告する。 囲み 5.2 東アジアにおける、地域レベル、国レベル 及び地方レベルでの貧困削減戦略 カンボジア、東ティモール、ラオス、インドネシ ア、モンゴル及びベトナムでは、国が責任を持つ PRSP を作成するプログラムが進められています。各 国政府は、参加型の貧困状況評価、シビルソサエテ ィとの協議、及びドナー・パートナーとの調整を活 用して包括的戦略を主導的に策定します。これらの 国々の PRSP チームは、最近、相互の経験を共有する ことを目的として、世銀、アジア開発銀行 UNDP が ハノイで共催した会議に出席しました。フォローア ップ・セッションでは、ジェンダー問題を貧困削減 戦略に統合することに関する相互の経験の共有が行 われました。ベトナムでは、地方自治体と地域社会 が、世銀と英国の国際開発省( DfID )の支援を得 て、独自の目標と MDGs を達成するためのアクショ 世銀の援助 世銀の主目的の 1 つは、借入国の開発ニーズ を重視した国別援助戦略(CAS)を活用して、当 ン・プランを主導的に策定しています。モンゴルと ラオスでは、世銀は貧困削減に対する予算措置を強 化することを目的として、公共支出、財政管理及び 調達について評価作業を行っています。 第5章 地域別展望 89 東アジア・大洋州地域のファクト・シート 総人口: 18 億人 人口増加率: 1% 平均寿命: 69 歳 乳幼児死亡率(1,000 人あたり): 36 若い女性の非識字率: 4% 2001 年の一人あたり国民総所得(GNI): 900 ドル エイズ感染者数: 100 万人 注:平均寿命、乳幼児死亡率(1,000 人あたり)及び若い女性の非識字率は、2000 年 の「世界開発指標」データベース、その他の指標は 2001 年の同データベース。 現在は、国民総生産(GNP)の代わりに、国民総所得(GNI)が使用されています。 2002 年度の 新規融資承認総額 IBRD : 9 億 8,240 万ドル IDA : 7 億 9,120 万ドル 2002 年度の 融資実行総額 IBRD : 28 億 4,640 万ドル IDA : 7 億 4,510 万ドル 2002 年 6 月 30 日現在において実施中の プロジェクトのポートフォリオ: 259 億ドル 進める必要があります。世銀はモンゴルを対象と して法律改正融資を準備している他、ベトナムを はじめとする多くの国を対象として法律関連ニー ズの評価作業を行っています。中国に対し世銀は 金融セクター改革、中小企業(SME)への金融サー ビスの提供、国債市場の開発、及び証券市場規制 ―中国の世界貿易機関(WTO)加盟により、 この改革が緊急に求められている―などに関す る技術支援を提供しています。 東アジア・大洋州地域の競争力の向上とハイテ ク問題への対処を支援するため、世銀は情報イン フラ、技術革新・適合及び技能開発を対象として 融資を行っています。世銀はグローバルな「ディ ベロップメント・マーケットプレイス」― NGO、 企業及び政府による、競争促進と革新のための独 創的なパートナーシップ―の一環として、各国 の「イノベーション・デイ」を支援しています。 タイでは、世銀は農村部での情報サービスの利用 機会を拡大して、都市部と農村部の間のデジタ ル・ディバイドを是正することを目指した16 の案 件に対して融資を行っています。新たな報告書で は、韓国で実施された本格的な改革と、これが公 共政策に与えた影響を分析しています。世銀は低 所得地域の住民の市場利用機会を改善する方法を 探究することを目的として、カンボジア、中国の 未開発地域、ラオス、モンゴル及びベトナムの輸 送・物流ネットワークの評価作業を実施しまし た。 公共サービスとガバナンスの改善 中国の寧夏回族自治区の学校で、少女が学んでいるところです。この 村は、「チンバ山脈貧困削減プロジェクト」―中国政府が基礎教育の 質と就学率を改善するのを支援するもの―の対象になっています。 ます。また世銀がこの手法を採用したのは、地方 自治体が自らの責任で管轄地域内でのサービスの 提供と資金調達を行う傾向が強まっていることを 考慮した上でのことです。フィリピン政府の歳出 の 40%、タイ政府の歳出の 35%(2006 年目標)、 及びインドネシア政府の歳出の 25%は、地方自治 体を経由して行われていると推定されます。 投資環境の構築 国内企業を活性化し、民間セクター資金の流入 額を拡大するためには、投資環境の改善を一段と 90 世界銀行年次報告書 2002 ガバナンスに関しては、世銀は権限委譲、地方 自治体のためのキャパシティ・ビルディング、公 共セクターの透明性と説明責任の改善、及びプロ ジェクトの設計と実施に際しての関係者の参加推 進に重点を置いています。中国とインドネシアで は、地方自治体による公共支出に対する評価作業 が行われています。タイでは、「ガバナンス改善 のための国別開発パートナーシップ」を通じて、 行政サービスを改善し、政府の意思決定プロセス を強化し、かつ説明責任と透明性を改善すること を目指した同国政府の施策を支援しています。 中国では世銀は政府と協力して、不正や汚職を 防止する対策を導入するなど、財政省の競争入札 ガイドラインの改定に取り組んでいます。また世 銀は、世銀プロジェクトに関する安全対策を講 じ、かつ新たな入札法の中に新たな調達手続を規 定することによって、調達の透明性の改善を支援 しています。新たな調達フレームワークに従って、 官僚とプロジェクト担当者にトレーニングが行わ 図 5.3 東アジア・大洋州地域: IBRD と IDA のテーマ別の融資額、2002 年度 総融資額 18 億ドルに占める割合 図 5.4 東アジア・大洋州地域: IBRD と IDA のセクター別の融資額、2002 年度 総融資額 18 億ドルに占める割合 経済政策 1%未満 農業・漁業・林業 9% 公共セクター運営 7% 給水・衛生・治水 2% 環境・天然資源管理 6% 法規 1% 運輸 30% 情報・通信 1% 農村開発 20% 都市開発 4% 人的開発 13% 社会開発・ジェンダー・参加 10% 法律・司法・行政 6% 教育 8% 金融・ 民間セクター開発 29% 金融 12% 貿易・統合 2% 社会的保護・リスク管理 8% れました。世銀は新たなガイドラインが実施され た後に、調達後検査を約30回実施しました。また 世銀はバンコク、ジャカルタ、マニラ及びシンガ ポールにおいて、「グローバル遠隔研修ネットワ ーク」を活用して、政府とシビルソサエティの関 係者を対象とした汚職防止アプローチに関するワ ークショップを開催しました。 東ティモールを対象とした「地域社会への権限 付与と地方自治体のガバナンスに関するプロジェ クト」では、400 の村落開発協議会が設立されま した。このプロジェクトは、800 を超える小規模 プロジェクトに資金を拠出しています。ベトナム では、2002 年度には、次の 2 つの案件に関する国 際開発協会(IDA)融資協定書が承認されました。 ①979 の貧しい地域社会の貧困削減を推進するた めの地域社会主導の参加型プロジェクト。 ②農村部の道路と市場、灌漑・給水、及び基礎的 な教育と保健・医療に投資を行い、かつ地域社 会の開発に必要な資金を融資することによって 340 万人の貧しい人々を支援する地域社会主導 の参加型プロジェクト。 この 2 つのプロジェクトは、貧しい人々と地域社 会のニーズを反映して策定されたものです。 脆弱性の緩和、 及び貧しい人々への経済成長の配分 世銀の戦略は、セーフティネットの支援や危機 的状況の評価から、家計が社会的リスクを管理す るのを支援し、かつ貧しい人々が経済成長の便益 を享受できるよう、社会政策フレームワークを重 視する方向に変化しました。社会的プログラム は、効率性、透明性及び有効性を改善するため エネルギー・鉱業 18% 保健・ その他社会事業 14% 産業・貿易 1% に、地域社会に対するエンパワーメントアプロー チ並びに需要立脚型アプローチを重視していま す。中国では、世銀は英国政府の国際援助機関の イギリス国際開発省(DfID)と画期的なパートナ ーシップを組んで、中国が国民全体の 90%以上を 対象として直接観察治療短期コース(DOTS)を 実施し、かつ 200 万人の患者を治療することによ って、結核(TB)に関する同国の目標を 2005 年 までに達成するのを支援するための TB 抑制プロ ジェクトに対する融資を開始しました。 世銀は特に貧しい地域に対しても支援を行って います。インドネシアでは東部の未開発地域の道 路状況を改善するために、地域輸送プロジェクト が東部の島々の15地域を対象として実施されてい ます。ベトナムでは「農村電化プロジェクト」は、 32の地域と671の地域社会―このうちの3 分の1 は最も貧しい地域に指定されている―に居住す る 200 万人に電力を供給することを目指していま す。中国では、特に貧しい地域の 1 つである寧夏 に、知識共有を図るために「グローバル遠隔研修 センター」が開設されました。 環境保護 世銀はカンボジア、ラオス及びベトナムにおい て、貧困と環境の関連性についての研究に資金を 提供しています。世銀は地球環境ファシリティー (GEF)とのパートナーシップに基づいて、パプ アニューギニアの森林保全プロジェクトに融資を 行っています。東アジア・大洋州地域における主 要国の人口の半数が都市部に居住しているため に、都市部の大気と水質の汚染は極めて深刻な問 題になっています。世銀は環境インフラに対する 第5章 地域別展望 91 表 5.2 東アジア・大洋州地域に対するテーマ別、セクター別融資、1993 ∼ 2002 年度 (単位 100 万ドル) 1993–97 1998–99 (年平均) (年平均) 2000 2001 2002 テーマ別 経済政策 公共セクター運営 法 規 金融・民間セクター開発 貿易・統合 社会的保護・リスク管理 社会開発・ジェンダー・参加 人的開発 都市開発 農村開発 環境・天然資源管理 40.6 239.9 85.2 1,476.8 193.3 165.0 163.1 420.9 702.9 851.6 1,177.6 280.0 543.1 19.2 4,441.8 333.2 708.4 273.5 406.1 900.8 855.6 932.4 0.0 556.2 9.3 627.6 36.2 55.2 72.1 81.1 230.6 430.3 880.4 0.0 65.1 3.8 310.9 40.0 239.4 248.0 52.6 433.1 341.6 399.3 4.8 127.4 20.3 512.8 43.3 136.6 173.0 226.4 63.6 363.1 102.3 テーマ別総額 5,516.8 9,694.2 2,979.1 2,133.8 1,773.6 セクター別 農業・漁業・林業 法律・司法・行政 情報・通信 教 育 金 融 保健・医療・その他社会事業 産業・貿易 エネルギー・鉱業 運 輸 給水・衛生・治水 472.4 398.9 150.9 426.4 253.2 248.3 274.2 1,502.5 1,162.8 627.1 803.8 1,066.5 51.9 411.6 3,180.8 581.6 1,569.8 517.0 1,133.3 377.9 118.4 590.3 20.0 84.4 36.3 118.4 28.8 640.5 584.4 757.7 109.7 255.3 12.5 14.8 89.6 217.3 151.8 142.2 729.7 410.8 151.2 115.2 11.1 134.6 219.2 243.8 9.4 314.5 540.2 34.4 セクター別総額 5,516.8 9,694.2 2,979.1 2,133.8 1,773.6 4,389.6 1,127.3 8,800.9 893.3 2,495.3 483.8 1,136.1 997.7 982.4 791.2 うち、 IBRD融資額 IDA融資額 注:新たなテーマ・セクター分類システム(68 テーマ、57 セクター)に従って、融資を 11 の主要テーマと 10 の主要セクターに分けて示した。 30 頁の表 2.2 を参照。端数を四捨五入したため、合計額が合わないことがある。 投資と政策助言サービスを通じて、これらの問題 に取り組んでいます。衛生分野では、世銀は独立 した上下水処理会社の設立、及び上下水料金と汚 染課徴金の設定を支援しています。この上下水料 金と汚染課徴金は、排水を削減し、かつこの事業 の持続可能性を確保するために、操業と保守に必 要な資金を調達するのが目的です。世銀が支援す る汚染対策投資は、その大半が水質汚染の軽減に 92 世界銀行年次報告書 2002 向けられています。また世銀は農村開発と土地管 理を支援しています。2002 年度に承認されたカン ボジアの土地管理プロジェクトは、同国政府が土 地関連の政策と規制を策定し、かつ所有権確定プ ログラムを確立するのを支援するものです。この プログラムに基づいて、約 100 万人が土地所有権 証書を入手することが見込まれています。 世銀融資適格国: 南アジア地域 南アジア地域は、政治、宗教、民族及び言語 の面で大きな多様性を抱えています。人口14 億 人を有する同地域は、貧しい人々の数が世界で 最も多いことに加えて、女性に関する指標な ど、一部の人的開発指標が最も悪くなっていま す。同地域の経済と社会の発展は、世界全体に とって、かつミレニアム開発目標(MDGs)の 達成にとって重要です。同地域全体の経済成長 率は、過去 10 年間では約 5 ∼ 6%、2001 年では 5.4%と、かなり高い水準にあります。しかし、 この経済成長率は、同地域の潜在成長率を下回 っています。同地域の 8 ヶ国のそれぞれの経済 成長率は大きく異なっています。これら 8 ヶ国 は、経済の競争力を高め、かつ世界経済との統 合を推進することによって経済成長率と人的資 源開発を加速すると共に、特に貧しい人々に対 する保健・医療と教育サービスの提供を拡大す るという共通の課題を抱えています。 2002年度においても、南アジア地域は、アフ ガニスタンの開放、インドとパキスタンの緊張 関係の悪化、及び和平プロセスの開始が見込ま れることによるスリランカの平和回復の期待な ど、様々な出来事による影響を受けました。バ ングラデシュでは、総選挙で新政権が誕生しま した。これは、選挙民が変革と公正な政府を強 く求めた結果であると解釈されています。ネパ ールでは、毛沢東主義を標榜する反政府ゲリラ が当初の対話による解決の期待を打ち砕く行動 に出た結果、同国に対する外国からの投資に悪 影響が生じました。 南アジア地域では、同地域の貧困の状況につ いて盛んに議論が行われています(囲み5.3 を参 照)。貧困の割合は、1980 年代半ばには各国で 40%を超えていましたが、現在では、インドで 25%程度、バングラデシュ、ネパール及びパキ スタンで 30%強にまで低下したと推定されてい ます。しかし、ネパールとパキスタンでは、過 去10年間、貧困率の停滞もしくは上昇を示す兆 候もあります。また、貧困との闘いでは、保 健・医療と教育に関する指標も重要です。南ア ジア地域では、女性―特に不利な状況におか れている女性―に関するこれらの指標は低水 準にとどまっています。 囲み 5.3 アフガニスタン インド スリランカ ネパール パキスタン バングラデシュ ブータン モルディブ 貧困削減 インドには、世界中の貧しい人々の 3 分の 1 が集中 しています。したがって、人口が 10 億人を超えるイ ンドにおいて貧困を削減することは、世界的にも重要 な課題です。インドに対する世銀の現在の CAS では、 経済成長を可能にする環境の整備、並びに、貧しい 人々に便益を与えるための援助―保健・医療、教育、 農村開発、及び貧しい人々の経済的機会の拡大など― の両方が重視されています。 現在、貧しい人々に便益を与えるための援助の内容 を決定することを目的として、貧困分析プログラムが 実施されています。同プログラムには、国・州レベル での貧困評価、及び社会事業の利用状況と貧困水準の 変化を調査するための技術支援が含まれています。 2002 年 1 月、インドの計画委員会と世銀は、インド 内外の専門家を集めて、貧困の測定方法及び家計調査 で収集する情報の精度を改善する方法を議論しまし た。インド政府は世銀に対し、インドの国家統計委員 会が同国の統計システムの近代化に関して行った様々 な提言を実施に移すためのプロジェクトの策定の支援 を要請しました。 第5章 地域別展望 93 南アジア地域のファクト・シート 総人口: 14 億人 人口増加率: 1.8% 平均寿命: 62 歳 乳幼児死亡率(1,000 人当たり): 73 若い女性の非識字率: 40% 2001 年の一人当たり国民総所得(GNI): 450 ドル HIV/エイズ感染者数: 560 万人 注:平均寿命、乳幼児死亡率(1,000 人当たり)及び若い女性の非識字率は、2000 年 の「世界開発指標」データベース、その他の指標は 2001 年の同データベース。 現在は、国民総生産(GNP)の代わりに、国民総所得(GNI)が使用されています。 2002 年度の 新規融資承認総額 IBRD : 8 億 9,300 万ドル IDA : 26 億 1,540 万ドル 2002 年度の 融資実行総額 IBRD : 9 億 870 万ドル IDA : 24 億 8,360 万ドル 2002 年 6 月 30 日現在において実施中の プロジェクトのポートフォリオ: 172 億ドル カでは、世銀のプログラムは政策対話を重視した ものとなりました。 アフガニスタンが紛争国から融資対象国に転換 したことを受けて、世銀職員は集中的に同国に対 する援助に取り組みました(囲み5.4 を参照) 。 インドに対する融資は、すべてのセクターにお いて分析作業に基づいて行われています。2002年 度には、世銀は輸送・保健セクターに関する報告 書を提出し、これに基づいて、国・州当局との間 で協議が行われました。難しい課題を抱えている 電力セクターの改革では、オリッサ州などの経験 と国際的な経験が活用されました。 パキスタンは、包括的な改革プログラムを実施 してから 3 年目に入りました。このプログラムは、 低迷する経済活動を活性化し、かつ同国の制度に 対する信頼性を回復することを目的としています。 投資環境の構築 2002 年 6 月に承認された「アフガニスタン緊急教育復興・開発プロジ ェクト」は、学習と技能開発に関する全国的な計画を重視しています。 世銀の援助 世銀は、南アジア地域に関しては、財政再建・ 民営化・貿易自由化及び金融改革、公的機関の透 明性・有効性及び説明責任の改善、貧しい人々に 対するサービスの拡大の支援など持続可能な改革 に対する援助に引き続き重点を置きました。 世銀融資は、報告書、ワークショップ、政策覚書 及び政策対話などの形態で行われる広範な分析プ ログラムに基づいて行われています。 2002年度の融資額は35 億ドルに上りました。世 銀融資は、農業、保健・医療、教育及びインフラ などの分野における改革と投資の推進に対して集 中的に行われました。バングラデシュとスリラン 94 世界銀行年次報告書 2002 南アジア地域に関しては、世銀は、健全な投資 環境を構築することに高い優先順位を置いていま す。インドとパキスタンでは、企業を対象として 投資環境調査が行われました。この調査により、 投資家の立場からみた民間投資上の主要な制約が 明らかになりました。パキスタン及びインドの州 政府(カルナタカ州とアンドラプラデシュ州)に 対する構造調整融資は、財政の持続可能性の回 復、公共支出管理の改革、及び公的資金の使用と 社会事業の実施の際の効率性を高めるための政府 機能全体の改善などを推進する政策改革を支援す るものでした。 世銀は、経済の生産性の改善、及び貧しい人々の 市場利用機会の改善とこれらの人々への基礎的サ ービスの提供を通じて貧困を削減するためには、 道路の建設は大変重要であると考えています。イ ンドとネパールのインフラプロジェクトでは、輸 送・通信コストを削減する上で絶対的に必要な投 資が行なわれています。インドでは、3 つのプロ ジェクト―ケララ州輸送プロジェクト(IBRD:2 億 5,500 万ドル)、ミゾラム州道路輸送プロジェク ト (IDA:6,000 万ドル)、ムンバイ都市輸送プロジ ェクト(IBRD : 4 億 6,300 万ドル、IDA : 7,900 万 ドル)―が実施されています。ネパールでは、電 気通信セクター改革プロジェクト(2,260 万ドル) が実施されています。インドの場合、輸送セクター 報告書は、世銀が現在の幹線道路支援策と今後の 施策を策定するための基礎になっています。 南アジア地域では、電力セクターの改革が特に 重要です。ほとんどすべての国々(特に、バングラ デシュ、インド及びパキスタン)では、電力セクタ ーに対する補助金が財政不均衡の最大の原因とな っています。国・州レベルでの財政の均衡を回復 し、かつ絶対的に必要なインフラ投資と社会事業 に資金を振り向けるためには、電力セクター補助 金の削減が極めて重要です。また、電力供給が不安 定であることは、民間セクターによる投資と事業 にとって大きな制約となっているだけでなく、農 村部の雇用と発展の可能性を引き下げています。 パキスタンでは、規模が大きくなった新たな世 銀プログラムは、分析・助言サービス、対話及び 融資(2002 年度は 8 億ドルで、この中には金融セ クターに対する 3 億ドルの融資が含まれている) を通じて、制度改革を支援しています。この制度 改革では、財務管理、権限委譲、税制改革、中央 銀行の再編及び汚職防止に重点が置かれていま す。これらの課題はすべて、パキスタンによる貧 困削減戦略の今後 3 年間の実施を支援する CAS (2002年6月に世銀理事会に提出された)の中に明 記されているものです。 囲み 5.4 移行期のアフガニスタン タリバン政権が崩壊し、国連の仲介でアフガニスタン 暫定行政機構が樹立された後、最も緊急に必要とされた のは、持続可能な安全保障の仕組みの構築、及びアフガ ニスタンの女性及び男性を経済・社会の再開発プロセス に組み込むことでした。 2001 年 11 月、イスラマバードにおいて、世銀、その パートナー、UNDP 及びアジア開発銀行の共催で、アフ ガニスタン復興準備会議が開かれました。この会議によ り、東京で開催される国際ドナー会議の準備として、合 同暫定ニーズ調査を早急に実施するための合意が成立し ました。この国際ドナー会議では、戦争で荒廃したアフ ガニスタンの復興資金として、すべてのドナーが 45 億 ドルを超える資金を供与することが決定されました。そ の後、世銀理事会は、アフガニスタンの復興は何よりも まず、アフガニスタン人自らの手で行われるべきである との指導原則に従って、4 つの緊急プロジェクトを承認 しました。この 4 つのプロジェクトは、流入する資金を 透明性と説明責任を持って管理すること、教育やインフ 貧しい人々のエンパワーメント 南アジアに関しては、分析・助言サービスと融 資を通じて、貧しい人々へのエンパワーメントを 推進することが重要な目標になっています。バン グラデシュ、インド及びパキスタンで実施された 貧困状況調査によって、最近の貧困の傾向とその 理由に対する理解が高まっています。インドで は、世銀の今後の援助は保健報告書の指摘事項に 基づいて決定されることになります。まず手始め に、ラジャスタン州に対する「保健制度開発プロ ジェクト」が準備されています。 地域社会の組織化、貧しい人々の経済機会の拡 大、及び社会事業とインフラを貧しい人々が利用 する機会の拡大を支援するため、世銀は、インド では次のような地域社会主導型プロジェクトに融 資を行いました。「カルナタカ州溜池管理プロジ ェクト」(IDA : 9,900 万ドル)、「ラジャスタン州 給水セクター再編プロジェクト」(IDA : 1 億 4,000万ドル) 、 「ウッタルプラデシュ州給水セクタ ー再編プロジェクト」(IDA : 1 億 4,920 万ドル)、 「第 2 次カルナタカ州農村給水・衛生プロジェク ト」 (IDA:1億5,160万ドル)。 教育分野では、2002 年 3 月に承認された IDA 融 資(1 億 2,090 万ドル)の第 2 段階の援助を受けた 奨学金給付プログラムによって、バングラデシュ の少女の就学率が改善しています。またアフガニ スタンでは、女性と少女(特に戦争未亡人や読み 書きのできない若い女性など、機会に恵まれない グループが中心)を対象とした技能開発プログラ ラの迅速な改善のための様々な活動、及び地域社会の参 加などに対する支援に重点を置いたものでした。 IDA は、グラントとして、合計 1 億ドルの援助を行い ました。世銀による援助再開は、2002 年 4 月 4 日に理事 会で承認された「移行支援戦略」に基づいて行われまし た。また、世銀は、「アフガニスタン復興基金」も管理 しています。2002 年 4 月、ドナーと国際機関はカブー ルで会議(アフガニスタンの財務省が議長を務めた)を 開き、アフガニスタン暫定行政機構の「国家開発フレー ムワーク」と 2002 年度予算に必要な資金額などを討議 しました。 ムに対して、1,500 万ドルのグラントが供与されて います。 パキスタンでは、過去 5 年間、貧困状況調査と 政府の暫定的な I-PRSP によって、貧困削減のた めの戦略的優先事項に対する重点的な取り組みが 行われました。貧困状況調査は、1990年代の貧困 の傾向を明らかにしました。また、パキスタンの 暫定的な I-PRSP は、世銀理事会から、貧困削減計 画の模範になるものであるとして賞賛されました。 第5章 地域別展望 95 グローバル・レベルの優先事項:伝染病 インドでは、保健分野では水に関連した病気が大きな問題になってい ます。女性と子供にとっては、毎日の水汲みは辛く、時間もかかる労働 です。2002 年度には、IDA は、インドの給水セクターの 4 プロジェクト に対し、総額 4 億 5,000 万ドルの無利子融資を行いました。 図 5.5 南アジア地域: IBRD と IDA のテーマ別の 融資額、2002 年度 総額 35 億ドルに占める割合 環境・天然資源管理 8% 経済政策 7% 図 5.6 南アジア地域: IBRD と IDA のセクター別の 融資額、2002 年度 総額 35 億ドルに占める割合 給水・衛生・治水 4% 公共セクター運営 19% 農村開発 12% 南アジア地域のエイズ感染者は420万人で、感染 率は低いものの、大きなリスクが残されています。 南アジア地域の各政府は、早期の対応(インドは 1992 年に開始)が有効であることを認識し、予防、 リスクの高い年齢層の保健意識の高揚、感染率の 低下、及び(やや躊躇が見られるものの)治療に重 点を置いて、国民の保健に関する政策を立案して います。世銀は、分析・助言サービスと融資によっ て上記のプロセスを支援しています。現在実施中 の HIV/エイズ対策プロジェクトに対する融資は、 3 億2,670 万ドルに上っています。また、パキスタン とスリランカに対しては、新たなプロジェクトが 提案されています。現在では、南アジア地域のネパ ールとアフガニスタンを除くすべての国々は、強 固な国家プログラムを確立しています。ネパール では、国家プログラムの実施規模は小さく、資金も 不十分です。アフガニスタンでは、これから状況を 調査する必要があります。世銀から援助を受けた HIV/エイズ対策プロジェクトは、インドとバング ラデシュの2ヶ国で実施されています。インドでは 世銀から 1 億 9,100 万ドルの融資を受けて、 「第 2 次 全国エイズ抑制プロジェクト」が実施されており、 バングラデシュでは、IDA から 4,000 万ドル、英国 の DfID から 1,000 万ドルの融資を受けて、 「HIV/ エイズ予防プロジェクト」が実施されています。 パキスタンでは、世銀から一定の援助を受け て、1989年以降、小規模な「全国エイズ抑制プロ グラム」を実施しています。現在、同国政府は、 エイズの深刻性が増大していることを認識し、 「全国エイズ戦略フレームワーク」に基づいて上 記のプログラムを拡大しています。2002 年度に は、世銀の分析に基づいてプロジェクトの作成が 進められました。スリランカ政府も、同様の方法 でプログラムを作成しています。 農業・漁業・林業 9% 法律・司法・行政 18% 運輸 22% 情報・通信 1%未満 法規 2% 金融・ 民間セクター開発 11% 都市開発 22% 人的開発 1% 96 教育 3% エネルギー・ 鉱業 14% 金融 9% 貿易・統合 2% 社会的保護・リスク管理 5% 社会開発・ジェンダー・参加 12% 世界銀行年次報告書 2002 保健・その他社会事業 8% 産業・貿易 13% 表 5.3 南アジア地域に対するテーマ別、セクター別融資、1993 ∼ 2002 年度 (単位: 100 万ドル) 1993–97 1998–99 (年平均) (年平均) テーマ別 経済政策 公共セクター運営 法 規 金融・民間セクター開発 貿易・統合 社会的保護・リスク管理 社会開発・ジェンダー・参加 人的開発 都市開発 農村開発 環境・天然資源管理 テーマ別総額 セクター別 農業・漁業・林業 法律・司法・行政 情報・通信 教 育 金 融 保健・その他社会事業 産業・貿易 エネルギー・鉱業 運 輸 給水・衛生・治水 セクター別総額 2000 2001 2002 45.2 40.0 33.5 735.4 25.6 166.1 360.1 385.3 181.6 354.6 419.7 85.3 254.9 89.1 639.2 84.5 162.8 328.9 627.5 297.1 377.0 266.8 35.2 212.7 56.5 265.4 29.4 168.0 261.5 276.2 300.7 426.1 80.8 47.4 261.0 36.1 865.9 398.3 118.4 240.5 124.8 186.8 379.5 587.8 232.5 678.0 59.3 381.6 70.0 164.0 414.2 30.2 766.2 417.2 295.2 2,747.2 3,213.2 2,112.4 3,246.6 3,508.4 305.2 247.9 4.7 280.8 205.3 489.5 173.1 482.5 269.4 288.9 534.4 436.3 35.3 385.1 168.2 589.3 68.3 545.9 354.1 96.4 65.0 407.0 54.6 171.4 46.0 393.3 85.3 277.8 590.6 21.4 116.1 377.4 17.7 206.4 209.7 188.1 34.0 746.2 1,294.3 56.8 328.1 632.5 12.4 95.9 310.0 278.7 443.1 504.8 758.1 144.9 2,747.2 3,213.3 2,112.4 3,246.5 3,508.4 998.4 1,748.8 1,034.0 2,179.3 934.3 1,178.1 2,035.0 1,211.5 893.0 2,615.4 うち、 IBRD融資額 IDA融資額 注:新たなテーマ・セクター分類システム(68 テーマ、57 セクター)に従って、融資を 11 の主要テーマと 10 の主要セクターに分けて示した。 30 頁の表 2.2 を参照。端数を四捨五入したため、合計額が合わないことがある。 第5章 地域別展望 97 世銀融資適格国: アゼルバイジャン アルバニア アルメニア ウクライナ ウズベキスタン エストニア カザフスタン キルギス共和国 クロアチア グルジア スロバキア共和国 スロベニア タジキスタン チェコ共和国 トルクメニスタン トルコ ハンガリー ブルガリア ベラルーシ ボスニア・ ヘルツェゴビナ ポーランド マケドニア旧ユーゴ スラビア共和国 モルドバ ユーゴスラビア連邦 共和国 ラトビア リトアニア ルーマニア ロシア連邦 ※この項では、ユー ゴスラビア連邦共 和国のコソボ自治 州についても報告 する。 ヨーロッパ・中央アジア地域 2001 年のヨーロッパ・中央アジア地域では、 トルコとマケドニアを除くすべての国々がプラ スの経済成長率を達成しました。予想以上に長 かった「移行期不況」をようやく脱却したロシ アとウクライナでは、経済成長率がそれぞれ5% と 9.1%に達しました。独立国家共同体(CIS) の加盟国全体の経済成長率は 6.6%でした。中 央・東部ヨーロッパ地域全体の平均経済成長率 は、3.5%となりました。しかし、トルコでは、 改革に対する市場の対応が予想以上に遅れたこ とで、経済成長率は−6.5%になりました。 このように広い範囲で経済が成長したにも関 わらず、ヨーロッパ・中央アジア地域は、一人 当たり国民総所得(GNI)の点でも、世界経済 への統合の点でも、極めて多様です。一人当た り GNI は、スロベニアの 10,070 ドルから、タジ キスタンの 170 ドルまで様々です。各国の貧困 率は、現在は経済成長が続いた結果として総じ て低下したとはいっても、人口の 5%未満から 50%超までのバラツキがあります。多くの国々 ―特に中央ヨーロッパ地域の諸国とバルト諸 国―は、欧州連合(EU)への統合や世界経 済への統合、及び世銀融資適格国からの卒業に 向かって確固とした歩みを進めていますが、そ の他の国々は長期に及ぶ緊張と、地理上の制約 に悩まされています。 世銀の援助 ヨーロッパ・中央アジア地域の多様性は、世 銀の援助プログラムの内容にも反映されていま す。EU への加盟を希望している先行国との関 係が急速に変化していることに対処するため、 世銀は、これらの先行国に対する援助を段階的 に調整し、優先順位を付けるためのパートナー シップ・フレームワークとして、「中央・東ヨ ーロッパの地域 EU 加盟希望国に対する世銀グ 98 世界銀行年次報告書 2002 ループの援助に関するフレームワーク案」を策 定しました。南東ヨーロッパ地域に関しては、 世銀の地域戦略は、紛争後の安定化と復興に対 する援助から、構造改革と制度の構築に対する 援助へと変化してきました。ユーゴスラビア連 邦共和国では、世銀融資適格国の地位が回復さ れたことを受けて、構造調整融資と投資融資が 順調に行われています。コソボ自治州に対する 世銀の紛争復興援助プログラムは、継続されて います。IDA 融資適格国である CIS 加盟 7 ヶ国 ―アルメニア、アゼルバイジャン、グルジア、 キルギス、モルドバ、タジキスタン及びウズベ キスタン(CIS-7 と称されている)―は、二国 間ドナー、近隣諸国及び 4 国際金融機関(世銀、 IMF、欧州復興開発銀行(EBRD)及びアジア開 発銀行(ADB) )と共に、開発・改革努力を強化 し、かつ、国際社会の参加を拡大することによ って経済成長と貧困削減を加速することを目的 とした国際協力イニシアティブを確立しまし た。トルコとウクライナに対する世銀援助の必 要性は高まってはいますが、ヨーロッパ・中央 アジア地域の主要国の改革がかなり進展してい ることを受けて、世銀はロシアに対する分析・ 助言サービスを強化しています。 2002 年度においても、ヨーロッパ・中央アジ ア地域に対する世銀援助は、投資、政策改革、 移行経済と紛争から抜け出した国々が持続的な 経済成長と貧困削減を実現できるようにするた めの制度構築、及び危機に見舞われたトルコに 対する構造改革プログラムの加速(囲み 5.5 を 参照)に重点を置いて行われました。同年度の 融資(4 件の特別融資を含む)は、55 億ドルに 達しました(IDA が 6 億ドル、IBRD が 49 億ド ル)。ヨーロッパ・中央アジア地域に対しては、 総額3,100 万ドルの7 件の新規プロジェクトが承 認されたことで、GEFのポートフォリオは大幅 に増加しました。融資以外では、いくつかの主 な作業が完了しました。これらは、ヨーロッ パ・中央アジア地域の移行経済国の経験に関す ヨーロッパ・中央アジア地域のファクト・シート る報告書、移行期の経済がジェンダーに与える影 響の地域的調査、及び EU への加盟が EU 加盟希 望国の財政に与える可能性のある影響についての 分析です。 投資環境の構築 ヨーロッパ・中央アジア地域の大半の国々は、 所得水準や物理的・人的資本の点で、相対的に恵 まれています。経済成長と貧困削減に対する最も 深刻な制約は、経済に関する意思決定のフレーム ワークを歪めている政策と制度によるものです。 これは、ビジネス環境の比較評価にも現れていま す。つまり、ヨーロッパ・中央アジア地域の国々 の比較評価は、総じて低水準にあります。世銀 は、マクロ経済の安定性の維持、法律改正及びコー ポレート・ガバナンスの改善、公益事業の規制と 価格設定などのセクター別改革、及び労働・金融 市場の機能の強化、産業再編成とインフラ構築の ための選択的投資、などの体系的改革を支援する ことによって、政策と制度に関わる制約に取り組 んでいます。実際に成果が上がっているかどうか を確認するため、世銀は、EBRD や「ビジネス環 境・企業業績調査」と協力して、ビジネス環境の 変化を追跡する系統的なビジネス環境調査に必要 な資金を融資しています。この調査は、国レベル (ボスニア・ヘルツェゴビナ、モルドバ、ロシア及 びウクライナ)と地域レベルで行われています。 総人口: 5 億人 人口増加率: 0.1% 平均寿命: 69 歳 乳幼児死亡率(1,000 人当たり): 20 若い女性の非識字率: 1% 2001 年の一人当たり国民総所得(GNI): 1,960 ドル エイズ感染者数: 100 万人 注:平均寿命、乳幼児死亡率(1,000 人当たり)及び若い女性の非識字率は、2000 年 の「世界開発指標」データベース、その他の指標は 2001 年の同データベース。 現在は、国民総生産(GNP)の代わりに、国民総所得(GNI)が使用されています。 2002 年度の 新規融資承認総額 IBRD : 48 億 9,470 万ドル IDA : 6 億 2,890 万ドル 2002 年度の 融資実行総額 IBRD : 33 億 9,390 万ドル IDA : 4 億 2,980 万ドル 2002 年 6 月 30 日現在において実施中の プロジェクトのポートフォリオ: 160 億ドル 公共セクターのガバナンスの改善 ヨーロッパ・中央アジア地域の国々(特に CIS 加盟国)は、ガバナンス指標の点でも相対的に低 水準にあります。公共セクターのパフォーマンス を改善するため、世銀は、ロシア、ウクライナ及 び中央・南東ヨーロッパ地域を対象として、権限 委譲を通じ、発言権、透明性及び説明責任を強化 するための改革を支援しました。世銀は、アルバ ニアとマケドニアを対象として、行政サービス提 供分野における参加と競争を強化するための改 革、及び歳出調査を行って成果を確認できるよう にするためのデータ活用に関する改革を支援しま した。世銀は、カザフスタン、ロシア及びウクラ イナを対象として、税制・関税改革を通じて行政 機関の機能の強化を支援した他、アルバニアとア ゼルバイジャンを対象として、国レベルの財政責 任調査を通じて行政機関の機能の強化を支援しま した。世銀は、ロシアとウクライナでは、電子政 府を可能にする新規技術(政府の機能を改善する 目的で情報・通信技術を活用するもの)の採用を ウズベキスタンでは、農村事業支援プロジェクトの下で、生活を農業 に依存している女性達を対象とした現実的な農地拡大事業が行われて います。 推進しました。また、世銀は、アルメニア、ボス ニア・ヘルツェゴビナ、カザフスタン、キルギス、 ルーマニア及びスロバキアを対象として、汚職防 止プログラムを支援しました。 貧しい人々のエンパワーメント ヨーロッパ・中央アジア地域の大半の国々で は、エンパワーメントには特に難しい側面があり ます。同地域では、発言権と説明責任に関する伝 統や制度が、まだ未完成だからです。投資環境と 公共セクター運営の改善のための世銀援助は、権 第5章 地域別展望 99 囲み 5.5 貧しい人々が経済危機を乗り越えるのを 支援するためのトルコの 「社会的リスク緩和プロジェクト」 2001 年には、世銀の 5 億ドルの混合型融資のうちの 1 億ドルの緊急融資を活用して、トルコは、2001 年 2 月 の経済危機で困窮した 160 万人の貧しい人々を支援する ことができました。一人当たり約 35 ドルの現金・現物 援助が、 100 万人を超える貧しい児童に提供されまし た。この資金は、衣服、教科書及び書籍などの費用を現 金で賄えるようにするためのものでした。この援助の目 的は貧しい家庭を支援することにありましたが、さらに 重要な目的は児童が学校に通えなくなるのを防止するこ とでした。この援助により、約 10 万人の児童の脱落を を活用して、PRSP の作成を支援しています。ボ スニア・ヘルツェゴビナやユーゴスラビア連邦共 和国などの紛争復興国、及び経済が危機状態にあ るトルコでは、貧困削減融資は貧しい人々のリス ク管理能力の改善を重視して行われました。新た に行われる多くの援助活動では、参加型手法で経 済的・社会的リスクに対処するために、地域社会 主導型の開発アプローチが活用される予定です。 たとえば、ブルガリア、マケドニア、ルーマニア、 タジキスタン及びウクライナを対象としたマルチ セクター社会基金がその一例です。このような援 助活動では、長期間失業状態にある人々や少数民 族の持続的貧困に対する取り組みを重視する姿勢 を強めています。 阻止することができました。 宗教関連の祝祭期間中は、経済危機で困窮した 40 万 の貧しい家庭に対し、食糧支援が行われました。危機の です。 伝染病との闘い ヨーロッパ・中央アジア地域のエイズ感染者 は、過去 10 年間で劇的に増加し、100 万人になり ました。うち4 分の1 の人々は、過去3 年間で感染 したものです。結核(TB)患者も増加しています。 毎年、約 25 万人が TB に感染していますが、この うちの多くの人々は多剤耐性 TB の患者です。世 銀は、エイズと TB の関連性を考慮し、ヨーロッ パ・中央アジア地域を対象として、独立型プロジ ェクトの策定を支援するために技術・資金援助を 行っています。この独立型プロジェクトは、ベラ ルーシ、モルドバ、ロシア及びウクライナの伝染 病に取り組むことを狙いとしています。また、世 銀は、同地域内の他の国でも、保健セクター・プ ロジェクトに基づく TB ・エイズ対策を支援して います。 限付与に関する分野にも大きな影響を与えていま す。世銀は、貧困削減戦略文書(PRSP)の作成に 様々な関係者を参加させることを重視することに よって、エンパワーメントを推進しています。 2002年度には、アゼルバイジャン、ボスニア・ヘ ルツェゴビナ及びキルギスの 3 ヶ国が暫定的な IPRSP を作成しました。さらに、アルバニアは、 ヨーロッパ・中央アジア地域では初めて、正式 PRSP を作成しました。合計 9 ヶ国が、暫定的な IPRSPまたは正式PRSPのいずれかを作成したこと になります(http://poverty.worldbank.org を参 照) 。世銀は、各国の事情を反映させた様々な手法 環境保護 1990 年代後半から開始された地球環境ファシリ ティ(GEF)の援助を受けてロシアで行われてい たロシアのオゾン層破壊物質の使用の段階的廃止 のための活動は終了しました。クロアチア、ルー マニア及びウクライナのプロジェクトも、世銀に よる GEF ポートフォリオに加わり、ロシアでは、 森林プロジェクトも開始されました。また、ブル ガリアの環境の状態を改善するための効果的な官 民パートナーシップの構築、アルバニアとトルコ における積年の環境問題への取り組み、セルビア 共和国、ユーゴスラビア連邦共和国及びウクライ ナにおける拡大環境保全のための経済的手法の活 用と公的資金の管理、EU加盟希望国によるEUの 環境基準の遵守の費用効果的戦略策定に対しても 支援を行いました。 深刻さを考慮すると、これらの貧しい家庭の大半に対し ては、今年一杯、支援を継続する必要があります。ま た、これらの家庭は、物資より、現金の援助を必要とし ています。 さらに、厳しい冬に石炭ストーブで暖を取ることがで きるようにするために、20 万の極貧家庭に対して、現金 と現物による援助が行われました。 これらの活動を通じて、次の教訓が得られました。そ れは、トルコの社会的セーフティネットの強化・改善を 優先事項にしなければならないということです。最も重 要なのは、同国の人口の 8% を占める最貧層の人々に対 し、基礎的ニーズと現金需要を満たすための社会的支援 として、条件付き現金移転を行うことです。この条件と は、援助を受ける家庭がその子供達を学校に通わせ、学 齢前の子供に定期的に健康診断を受けさせるということ 100 グローバル・レベルの優先事項 世界銀行年次報告書 2002 図 5.7 ヨーロッパ・中央アジア地域: IBRD と IDA のテーマ別の融資額、2002 年度 総額 55 億ドルに占める割合 都市開発 1% 人的開発 3% 社会開発・ジェンダー・ 参加 3% 図 5.8 ヨーロッパ・中央アジア地域: IBRD と IDA のセクター別の融資額、2002 年度 総額 55 億ドルに占める割合 農村開発 6% 給水・衛生・治水 2% 環境・天然資源管理 3% 経済政策 12% 運輸 1% 農業・漁業・林業 9% エネルギー・鉱業 4% 産業・貿易 10% 社会的保護・ リスク管理 7% 貿易・統合1% 公共 セクター運営 24% 法規 2% 金融・民間セクター開発 40% 保健・ その他社会事業 9% 法律・司法・行政 39% 金融 23% 情報・通信 1%未満 教育 2% 貿易と統合に対する支援 ヨーロッパ・中央アジア地域の多くの国々で は、協力を行う余地が大きく残されています。ヨ ーロッパ・中央アジアプログラムは、欧州委員会 と共に、運輸、環境、エネルギー及び知識集約型 経済に関する戦略をはじめとする多くの分野にお いて EU 加盟希望国に支援を行っています。南東 ヨーロッパ地域にあって、EU 加盟を希望してい ない国々に対しては、5 ヶ国調査をはじめとする 貿易問題の分析、地域進捗状況報告書の作成、及 び技術支援が行われました。CIS-7 諸国に対して は、貿易、運輸及び電気通信に関する調査が実施 されました。ロシアとウクライナを対象とした世 銀の貿易統合支援では、WTO 加盟を目標とした 技術支援に重点が置かれています。 情報・知識の改善 世銀は、EU 加盟希望国の公共・民間セクター が知識・技術を一層効果的に活用することを通じ て、これらの国々が国際競争力を高めるための戦 略を策定できるよう支援するために、これらの 国々との間で対話を開始しました。これらの国々 が採用したアプローチによって得られる教訓と経 験は、ヨーロッパ・中央アジア地域全体に活用す ることが可能です。世銀は、グローバル・ディベ ロップメント・ラーニング・ネットワーク(GDLN) を構築するための広範なプログラムを開始しまし た。2002年度には、前年度にウクライナに開設さ れた遠隔研修センターの他に、4 つのセンターが GDLN に接続されました(トルコに 2 つ、ロシア とユーゴスラビア連邦共和国にそれぞれ1つ) 。ヨ ーロッパ・中央アジア地域の 8 ヶ国では、10 ∼ 12 のセンターの建設工事が始まりました。 国際金融システム 世銀は、「金融セクター審査プログラム」に積 極的に参画しました。2002 年度には、クロアチア、 グルジア及びラトビアに関する審査が完了しまし た。また、2003 年度から2004 年度の完了を目指し て、ブルガリア、キルギス、リトアニア、ロシア、 スロバキア及びウクライナの 6 ヶ国を対象とした 審査が開始されました。この審査に含まれている 基準・規定の評価の一環として、現在、マネーロ ンダリング(資金洗浄)と対テロリスト資金支援 に対処するための法的・制度的フレームワークに 関する調査も行われています。また、世銀は、世 界銀行研究所(WBI)と協力して、マネーロンダリ ング(資金洗浄)と対テロリスト資金支援の根絶 問題に関する第 1 回地域対話―ヨーロッパ・中 央アジア地域の5ヶ国が対象―を共催しました。 第5章 地域別展望 101 表 5.4 ヨーロッパ・中央アジア地域に対するテーマ別、セクター別融資、1993 ∼ 2002 年度 (単位: 100 万ドル) 1993–97 1998–99 (年平均) (年平均) 2000 2001 2002 テーマ別 経済政策 公共セクター運営 法 規 金融・民間セクター開発 貿易・統合 社会的保護・リスク管理 社会開発・ジェンダー・参加 人的開発 都市開発 農村開発 環境・天然資源管理 328.5 384.8 67.5 1,769.1 319.9 247.1 42.9 177.9 287.8 269.7 374.9 723.2 547.7 80.1 1,908.0 91.6 575.6 126.9 217.6 248.9 331.5 404.3 98.6 227.8 160.2 890.7 143.5 530.1 43.6 278.9 153.6 213.4 301.7 127.4 95.6 77.4 1,074.0 138.4 381.2 65.1 51.1 383.9 137.6 161.3 636.1 1,313.7 106.6 2,210.8 32.5 363.9 188.8 138.3 65.4 309.9 157.5 テーマ別総額 4,270.2 5,255.1 3,042.2 2,693.1 5,523.6 237.5 774.8 55.3 70.7 461.7 306.9 835.7 889.6 496.2 141.6 114.5 1,568.5 4.5 299.2 484.0 359.7 817.4 849.2 533.1 225.0 317.8 796.4 151.9 22.7 176.6 277.8 604.7 398.6 207.1 88.5 139.0 445.2 8.7 62.5 803.6 281.9 296.5 336.6 118.3 200.7 470.4 2,170.9 9.6 83.2 1,295.9 524.7 552.1 218.0 67.1 131.7 4,270.2 5,255.2 3,042.1 2,693.1 5,523.6 3,907.6 362.6 4,406.3 848.9 2,733.0 309.1 2,154.0 539.0 4,894.7 628.9 セクター別 農業・漁業・林業 法律・司法・行政 情報・通信 教 育 金 融 保健・その他社会事業 産業・貿易 エネルギー・鉱業 運 輸 給水・衛生・治水 セクター別総額 うち、 IBRD融資額 IDA融資額 注:新たなテーマ・セクター分類システム(68 テーマ、57 セクター)に従って、融資を 11 の主要テーマと 10 の主要セクターに分けて示し た。30頁の表2.2を参照。端数を四捨五入したため、合計額が合わないことがある。 102 世界銀行年次報告書 2002 世銀融資適格国: ラテンアメリカ・カリブ海地域 ラテンアメリカ・カリブ海地域の経済は、1998 年から99年にかけてアジア地域とロシアで発生 した危機によるショックから回復しましたが、 この回復は長くは続きませんでした。同地域の 年間国内総生産(GDP)成長率は、1999 年の 0.1%から 2000 年の 3.9%に増加した後、2001 年 には0.4%に減速しました。世界経済の低迷、 アル ゼンチン経済の急激な縮小、及びブラジルと中 央アメリカ地域の旱魃の影響により、2002年の GDP成長率はやや減少すると見込まれています。 世界貿易の成長率の鈍化と輸出製品価格の低 下により、ラテンアメリカ・カリブ海地域の輸 出収入の増加率は、2000 年の19%から2001 年に は1.4%に急減しました。石油輸出国の貿易黒字 は減少しましたが、同地域の非石油輸出国の貿 易収支は改善しました。これは、GDP成長率が 鈍化したために、輸入が減少したことによるも のです。総じて、同地域の貿易黒字は 170 億ド ル増加しました。しかし、観光収入と送金が減 少したために、経常収支赤字額は50億ドル増加 しました。 1999年のデータによると、ラテンアメリカ・ カリブ海地域では、1 日 1 ドル未満で生活する 人々の割合が 1990 年の 16.8%から 1999 年には 15.1%に減少しましたので、同地域では、ミレニ アム開発目標(MDGs)の達成に向かって進展が 見られたことになります。2001 年には、特に中央 アメリカ地域とカリブ海諸国で一人当たりGDP 成長率が低下したため、前記の減少分の一部は おそらく消滅したと思われます。中央アメリカ 地域とカリブ海諸国は、旱魃、コーヒー価格の 低下、2001 年 9 月 11 日に米国で発生した同時多 発テロによる旅行者の減少、及び米国の景気後 退に起因する外貨送金額の減少で悪影響を受け ました。一人当たりGDP成長率の傾向から推定 すると、貧困率は2002 年には上昇する可能性が ありますが、2003 年には若干減少すると思われ ます。貧困率の上昇幅は、アルゼンチン及びそ の危機の影響を受けた近隣諸国で最も大きくな ると予想されます。 世銀の援助 2002 年度においては、ラテンアメリカ・カリ ブ海地域に対する世銀の戦略は貧困との闘いを 重視したものとなりましたが、これ以外にも、 アルゼンチンの経済危機、カリブ海諸国への旅 行者の減少、及び2001 年初めにエルサルバドル で 2 度発生した地震後の復興などの事象に起因 する緊急の社会的ニーズに対処するための緊急 融資も行われました。2001 年 9 月 11 日に米国で 発生した同時多発テロ以降、航空機を利用する 旅行者が減少したジャマイカと東カリブ海諸国 機構に対して、世銀は、社会的プログラムの維 持と空港警備の強化のために、それぞれ 7,500 万ドルと 2,090 万ドルの融資を行いました。エ ルサルバドルに対する世銀の新たな援助戦略 は、2001年の地震発生後の復興が開始された時 期に策定されました。したがって、この地震で 病院と保健施設が深刻な被害を受けたことで低 下していた保健サービスの回復を支援するため に、1 億 4,260 万ドルの融資が追加されました。 ラテンアメリカ・カリブ海地域においても、世 銀は伝染病の撲滅に向けた取り組みを強化し、 バルバドス、ブラジル、ドミニカ共和国及びジ ャマイカのエイズ予防・治療プログラムを援助 しました。 2001 年に経済状態が悪化したアルゼンチンに 対しては、世銀は、市場が経済の先行きを悲観 している状況を同国政府が打開するのを支援す るために4億ドルの構造調整融資を行いました。 しかし、同年末、同国政府は、経済・政治危機 を踏まえて、経済政策などを急激に変更しまし た。この事態を受けて、世銀は、金融セクター、 企業債務の再編成、公益事業の料金の再交渉、 及び地方自治体の財政などの分野に関して助言 第5章 地域別展望 アルゼンチン アンティグア・ バーブーダ ウルグアイ エクアドル エルサルバドル ガイアナ グアテマラ グレナダ コスタリカ コロンビア ジャマイカ スリナム セントクリストファー・ ネーヴィス セントビンセント およびグレナディー ン諸島 セントルシア チリ トリニダード・ トバゴ ドミニカ国 ドミニカ共和国 ニカラグア ハイチ パナマ パラグアイ ブラジル ベネズエラ・ ボリバル共和国 ベリーズ ペルー ホンジュラス ボリビア メキシコ 103 ラテンアメリカ・カリブ海地域のファクト・シート 総人口: 5 億人 人口増加率: 1.5% 平均寿命: 70 歳 乳幼児死亡率(1,000 人当たり): 29 若い女性の非識字率: 6% 2001 年の一人当たり国民総所得(GNI): 3,560 ドル エイズ感染者数: 190 万人 注:平均寿命、乳幼児死亡率(1,000 人当たり)及び若い女性の非識字率は、2000 年 の「世界開発指標」データベース、その他の指標は 2001 年の同データベース。 現在は、国民総生産(GNP)の代わりに、国民総所得(GNI)が使用されています。 2002 年度の 新規融資承認総額 IBRD : 41 億 8,810 万ドル IDA : 1 億 7,780 万ドル 2002 年度の 融資実行総額 IBRD : 35 億 510 万ドル IDA : 2 億 7,250 万ドル 2002 年 6 月 30 日現在において実施中の プロジェクトのポートフォリオ: 224 億ドル た。この社会的プログラムでは、ワクチン、母親 と子供に対する保健医療、血液銀行、一般人を対 象とした保健医療、エイズ用医薬品、無償での食 事の提供、及び被害の大きな学校に対する教育資 材の提供などが行われました。さらに、社会的保 護プログラムも開始され、扶養家族を抱えている 失業者に対する所得補助、及び多くの貧しい家庭 のニーズに対処するための支援が行われました。 ラテンアメリカ・カリブ海地域では、総人口 5 億 1,000 万人のうちの約 1 億 7,000 万人が 1 日 2 ドル 未満で生活しています。このうちの 7,000 万人は、 1 日1 ドル未満で生活しています。世銀は、その融 資と分析を通じて、投資環境を改善すると共に、 人々のエンパワーメント、地方自治体と地域社会 に権限を委譲する努力を行っている各国を支援し ています。特に、世銀は、同地域に関しては、教 育、金融セクターの強化、社会的保護、制度改革 とガバナンス、疎外されているグループのエンパ ワーメントとこれらのグループの参加促進、及び 環境の持続可能性に重点を置いています。 2002年度には、世銀は、農村地域の生産性を引 き上げるために、小規模企業、農業インプット及 び農地管理を支援するプロジェクトに対する融資 を承認しました。また、低所得地域社会に対する 基礎的な教育・保健サービスを拡大するための支 援、及び政府が政策改革とインフラ投資を行う場 合にその財政の均衡を図れるようにするための支 援も行われました。 投資環境の構築 世銀が延べ 11,000km を超える道路の建設を支援したことで、ペルー のシエラでも貧困率が低下しました。シエラの農村社会は孤立から脱 却し、小規模な道路保守会社が 4,700 人分の雇用を創出しました。 サービスと技術支援を行うと共に、実施中の社会 セクター・プログラムに対する融資の中から 1 億 ドルを緊急の社会的プログラムに振り向けまし 104 世界銀行年次報告書 2002 投資は、経済成長を加速するために極めて重要 です。ラテンアメリカ・カリブ海地域は、給水、 下水、道路、電力及び輸送に関するシステムを構 築するために、今後 5 年間、毎年約 700 億ドル― 2000 年の外国からの直接投資総額に匹敵―の資 金を必要としています。このインフラ・ニーズは、 同地域の急速な人口増加に伴って増加していま す。現在、同地域の総人口の 75%が生活している 都市部も拡大しており、そこに居住する貧しい 人々の数も増加しています。このようなニーズを 踏まえ、世銀は、総工費が 80 億ドルに上る 82 の インフラ・プロジェクトに融資を行っています。 現在、これらのプロジェクトでは、建設作業が進 められています。貧しい人々に生活に必要なサー ビスを妥当な価格で提供できるようにするために は、健全な規制フレームワークの下での民間セク ターの参加も必要です。コロンビアでは、世銀 は、カリブ海沿岸地域の市営給水事業を改革し、 貧しい人々にも給水サービスを提供するために必 要となる民間セクター投資を可能にするための支 援として、4,000 万ドルの融資を行いました。この 戦略は、1995年にカルタヘナで開始され、成果を 上げた一連のプロジェクトの経験を活かしたもの です。当時行われたプロジェクトにより、約50の 給水会社がコロンビア北部のいくつかの大都市で 給水サービスを開始し、利用者から高く評価され ました。 政府が効率的で、汚職がない場合に投資家が安 心するという事実を踏まえ、世銀は、チリ、グア テマラ、メキシコ、ニカラグア及びパナマとの間 でパートナーシップを構築しました。これらのパ ートナーシップは、財務管理手法の近代化、手続 の簡素化につながる政府のオンライン調達手法の 開発、及び公平性と透明性の改善を目指したもの です。これらのパートナーシップは、総じて、ア ルゼンチン、コロンビア及びメキシコを対象とし た財政改革と権限委譲に対する世銀の支援、並び にエルサルバドルとグアテマラを対象とした司法 改革に対する世銀の支援を補完するものとなって います。また、これらのパートナーシップは、ラ テンアメリカ・カリブ海地域の経済の国際競争力 を高める上で重要な、新たな知識と情報技術の共 有にも役立っています。 貧しい人々のエンパワーメント 世銀は、ブラジル北東部の 9 州及びミナスジェ ライス州と協力し、権限委譲を受けた地域社会主 導のアプローチを活用して農村部の貧困を撲滅す る活動を展開しています。2002 年には、世銀は、 農村地域のグループにマッチング・グラント(あ る活動を行うグループの資金と同額の資金を政府 が提供するもの)を提供することを目的としたセ ルジペ州のプロジェクトを承認しました。このマ ッチング・グラントは、雇用を創出し、かつ約 52,000 の家庭の健康と福利の増進を目的とした約 1,000の小規模プロジェクトに資金を提供するもの です。この社会的投資アプローチは、貧しい家庭 に対し、給水、保健医療及び農業相談などのサー ビスの提供、及び社会資本の拡大を図るもので す。このアプローチはまた、地域社会自らがプロ ジェクトを選定して、実施できるようにするもの です。コロンビア、エクアドル、ホンジュラス、 ニカラグア及びパラグアイでも、同様の地域開発 プロジェクトが進められています。さらに、アマ ゾン地域でも行われる予定となっています。 貧しい人々のエンパワーメントに関しては、ラ テンアメリカ・カリブ海地域の先住民(そのうち の約 80%の人々は極貧状態の下で生活している) エクアドルのアマゾン地域で生活しているこれらの先住民(Achuar 族)は、 「先住民・アフリカ系エクアドル人開発プロジェクト」に参加 しています。世銀融資を受けた同プロジェクトは、4,000 を超える地 域社会に資金を供給し、土地保有制度の確立、農業インプット、小口金 融スキーム、及び学校や保健医療施設の建設を促進しています。 及びアフリカ系住民が過半数を占める地域社会を 対象としたイニシアティブが実施されています。 ブラジル、エクアドル及びペルーでは、世銀は、 先住民社会が共有地使用権を登録し、環境の持続 可能性を高めることができる土地管理法の活用を 推進し、かつプロジェクト管理能力の向上を支援 することに的を絞ったプロジェクトを支援してい ます。 所有権を認定することは、あらゆる民族の貧し い人々がその経済状態を改善する上で重要な条件 となるものです。世銀は、コロンビアのイニシア ティブを支援しました。このイニシアティブによ り、太平洋沿岸のチョコ地域に位置するアフリカ 系コロンビア人社会の58 の地域評議会は、彼らが 狩猟、漁業及び伝統的農業のために利用している 約 240 万ヘクタールの熱帯林の所有権を獲得しま した。世銀は、ボリビア、エルサルバドル、グア テマラ、ホンジュラス、ニカラグア及びパナマを はじめ、10 ヶ国の土地所有権認定イニシアティブ を支援しました。 世銀は、このような草の根・地域社会重視型ア プローチの重要な要素として、特に農村、環境、 保健、教育及び社会的保護などのセクターでは、 融資/助言サービス・プロジェクトの策定にあた ってシビルソサエティの参加を推奨しています。 また、司法改革やインフラに関するプロジェクト 第5章 地域別展望 105 囲み 5.6 天然資源の輸出は知識集約型経済の下での雇用につながる 世銀の報告書は、ラテンアメリカ・カリブ海地域の国々が知 オーストラリア、カナダ、フィンランド及び一部のラテンア 識集約型経済の下で質の高い雇用を創出しようとする場合に メリカ諸国の経験を例に挙げて、同報告書は、重要なことは は天然資源がそのための資産となる、と述べています。 「天然 「何を」生産するかではなく「どのように」生産するかである 資源から知識集約型経済へ―貿易と雇用の質」と題された世 と主張しています。他の重要な要素は、イノベーションを行 銀の報告書は、多くの一次産品の価格が最近低迷し、同地域 う高水準の人的資本と知識ネットワーク、及び外国技術の採 の雇用の質と失業率に多少の暗雲が生じているにも関わらず、 用です。同報告書は、ラテンアメリカ・カリブ海地域の各国 「豊富な天然資源が賦存しているので、生産性をさらに向上さ は、貿易自由化に向けた努力を行い、かつ人的資本と技術革 せる技術を積極的に追求し、かつ採用することによって、経済 新ネットワークを開発すべきであって、決して「天然資源と 成長率を確実に加速することが可能となる」と述べています。 いう財産に背を向けてはならない」との提言を行っています。 図 5.9 ラテンアメリカ・カリブ海地域: IBRD と IDA のテーマ別の融資額、2002 年度 総額 44 億ドルに占める割合 図 5.10 ラテンアメリカ・カリブ海地域: IBRD と IDA のセクター別の融資額、2002 年度 総額 44 億ドルに占める割合 環境・天然資源管理 4% 農村開発 4% 給水・衛生・治水 1% 経済政策 9% 運輸 11% 都市開発 6% 公共セクター 運営 27% 人的開発 13% 農業・漁業・林業 2% 法律・司法・行政 30% エネルギー・鉱業 10% 産業・貿易 1% 社会開発・ ジェンダー・参加 6% 法規 1%未満 保健・ その他社会事業 15% 情報・通信 1%未満 教育 13% 社会的保護・リスク管理 7% 金融・民間セクター開発 22% 金融 17% 貿易・統合 2% でも、シビルソサエティが参加する割合が高まっ ています。新たなフレームワーク(www.world bank.org/laccs を参照)に基づいて、ラテンアメ リカ・カリブ海地域も、世銀プロジェクトに関す る情報の地域社会への提供を通じ、地域社会がそ の影響を評価できるようにするために、世銀の構 造調整融資及びプログラム融資の検討作業にシビ ルソサエティが参加しています。たとえばペルー 106 世界銀行年次報告書 2002 では、世銀は、社会的プログラム、歳出及び統計 に関する情報を住民に提供する政府の活動を支援 しています。政府によるこの活動の目的は、地 方・国レベルでのサービスと予算の作成作業に住 民が参加すること、及び行政サービスを審査する 住民の能力を高めることにあります(囲み5.6 を参 照) 。 表 5.5 ラテンアメリカ・カリブ海地域に対するテーマ別、セクター別融資、1993 ∼ 2002 年度 (単位: 100 万ドル) 1993–97 1998–99 (年平均) (年平均) 2000 2001 2002 テーマ別 経済政策 公共セクター運営 法 規 金融・民間セクター開発 貿易・統合 社会的保護・リスク管理 社会開発・ジェンダー・参加 人的開発 都市開発 農村開発 環境・天然資源管理 437.3 505.2 70.0 1,295.4 121.7 415.2 253.4 565.9 480.3 462.6 588.1 694.0 825.2 94.1 1,626.9 144.6 1,002.4 359.1 786.9 576.9 613.3 164.8 587.6 519.9 111.7 1,056.1 160.7 901.2 141.5 157.7 53.3 103.0 270.8 570.1 1,099.7 202.2 985.4 218.3 530.0 371.7 471.2 202.0 580.8 68.8 391.0 1,182.8 15.5 965.4 83.9 310.4 248.9 560.4 251.9 168.3 187.4 テーマ別総額 5,195.2 6,888.3 4,063.5 5,300.1 4,365.8 セクター別 農業・漁業・林業 法律・司法・行政 情報・通信 教 育 金 融 保健・その他社会事業 産業・貿易 エネルギー・鉱業 運 輸 給水・衛生・治水 285.3 1,101.3 20.6 601.4 708.2 514.6 154.9 254.5 988.1 566.3 326.4 2,208.9 17.2 659.8 1,089.5 1,150.5 204.2 98.1 875.6 258.0 104.1 1,787.8 28.7 62.8 1,195.1 360.2 165.3 79.3 11.6 268.7 72.3 1,722.9 97.8 529.1 950.5 904.7 38.3 107.6 650.3 226.6 85.0 1,299.5 16.5 560.4 734.1 660.5 51.4 445.6 463.1 49.8 セクター別総額 5,195.2 6,888.3 4,063.5 5,300.1 4,365.8 4,897.2 297.9 6,406.4 481.9 3,898.1 165.4 4,806.7 493.4 4,188.1 177.8 うち、 IBRD融資額 IDA融資額 注:新たなテーマ・セクター分類システム(68 テーマ、57 セクター)に従って、融資を 11 の主要テーマと 10 の主要セクターに分けて示した。 30 頁の表 2.2 を参照。端数を四捨五入したため、合計額が合わないことがある。2002 年度においては、 「カリブ海地域複数国エイズ予防・ 抑制プロジェクト」 (2001 年度に 1 億 5,500 万ドルを承認済み)に基づいて、IBRD は、ジャマイカのプロジェクトに対して、新たに 1,500万ドルの融資を行うことを承認しました。 第5章 地域別展望 107 世銀融資適格国: アルジェリア イエメン共和国 イラク イラン・ イスラム共和国 エジプト・ アラブ共和国 シリア・ アラブ共和国 ジブチ チュニジア モロッコ ヨルダン レバノン ※この部では、ヨル ダン川西岸・ガザ 地区についても報 告する 中東・北アフリカ地域 中東・北アフリカ地域は、2001 年 9 月 11 日に 米国で発生した同時多発テロで深刻な影響を受 け、同地域の主要な貿易相手であるヨーロッパ 地域に対する輸出が大幅に減少しました。さら に、中東地域で紛争が継続していることで、投 資家のリスク認識が強まり、すでに減少してい る同地域への海外からの直接投資がさらに減少 しています。2001年においては、経済成長率は 3.1%(2000年は4.2%)に低下しました。石油輸 出国の経済成長率は、さらに低下しました (3.6%から2.5%へ) 。輸出製品を多角化している 国々では、経済成長率の低下は穏やかなものに とどまりました(0.5%ポイント) 。 中東・北アフリカ地域では、持続的で高水準 の経済成長率が実現できなくなったことで、同 地域の最大の課題―急速に増加する労働力に 十分な雇用機会を提供すること―の達成が一 段と困難なものになりました。同地域では、1 日 1 ドル未満で生活している人々は総人口比で 2.3%に過ぎませんが、貧困が重要な問題である ことに変わりなく、1日2ドル未満で生活する人 は総人口の約30 %に及びます。 世銀の援助 同地域に関しては、世銀の最大の目標は、投 資環境の構築、雇用創出及び持続可能な経済成 長の実現などのペースを加速すること、並び に、貧しい人々へのエンパワーメントにより、 開発プロセスの中で人的資産として活用するこ とです。2002 年度には、世銀は、特にアルジェ リア、エジプト、イラン、ヨルダン、レバノン、 シリア及びヨルダン川西岸・ガザ地区におい て、経済成長を実現するための主要な資源と障 害を明らかにするための活動に力点を置きまし た(囲み 5.7 を参照)。民間セクターが主要な雇 用創出源になりつつあることを踏まえ、世銀 108 世界銀行年次報告書 2002 は、同地域の投資環境の改善に貢献しました。 アルジェリア及びイエメンの金融セクター、チ ュニジアの貿易競争力、アルジェリアの民間セ クター開発、ヨルダン川西岸・ガザ地区及びイ エメンの情報技術強化のためのプロジェクト及 び助言サービスなどがその事例です。 公共セクターとガバナンスに関して問題が多い ことは、経済成長を加速する上での深刻な障害 になっています。2002 年度においては、世銀 は、アルジェリア、ジブチ、ヨルダン及びモロ ッコにおいては公共支出の効率性と公共セクタ ー運営の改善に重点を置き、アルジェリア、ヨ ルダン、チュニジア及びイエメンでは権限委譲 に重点を置きました。 ジブチ、エジプト、イラン及びイエメンを対 象とした貧困状況調査、並びに、レバノン、モ ロッコ及び地域全体を対象とした社会的保護の 状況の分析により、貧困と社会的疎外に関する 問題点の理解を深めることができました。モロ ッコでは、プロセスを対象とした「経済・セク 囲み 5.7 ヨルダン川西岸・ガザ地区 ―紛争の影響を受けた地域への支援 ヨルダン川西岸・ガザ地区では、中央機関が給料以 外の業務コストを負担できなくなっていることを踏ま えて、「緊急サービス支援プロジェクト」を通じて、 悪化した教育、保健及び社会福祉に対する取り組みが 行われています。同プロジェクトは、主な社会サービ スを遂行する機関と市町村を対象としたもので、これ らの機関・市町村が現在の紛争で最も深刻な影響を受 けている人々を支援できるようにすることを目指した ものです。最近終了した「緊急対応プログラム」で は、地域社会密着型で、労働集約的な小規模プロジェ クトを通じて働く機会を提供することによって、増大 する失業率と貧困に対する取り組みが行われました。 これらのプログラムでは、多額のドナー資金も活用さ れました。 中東・北アフリカ地域のファクト・シート ター調査」が行われていますが、この調査では、 起用された200 を超えるシビルソサエティ組織が、 開発プロセスに参加する場合に直面する問題点を 積極的に明らかにすると共に、これらの問題に取 り組んでいます。ジブチ、エジプト、イラン、ヨ ルダン、レバノン、モロッコ、イエメン及び地域 全体における教育・保健システムを改善するため に現在実施されている活動の中には、貧しい人々 を保護するための重要な対策も含まれています。 世銀は、地域の統合及び地域の世界経済との統合 によってもたらされる様々な影響を分析し、かつ 助言サービスを行うことを目的として、一連の調 査を開始しました。 地域の目標を達成するため、中東・北アフリカ 地域は、戦略作成段階と実施段階において、パー トナーシップの構築、知識共有及び広報活動を強 化しています。地域全体では、アフリカ開発銀行 及びイスラム開発銀行との間で調整が行われてい ます。「ルクセンブルク・プロセス」に基づいて、 EU、ヨーロッパ投資銀行、IMF 及び中東・北ア フリカ地域局の間で、年 2 回、調整会議が開かれ ています。ドナーの参加がきわめて重要なヨルダ ン川西岸・ガザ地区では、13の二国間・多国間機 関が、世銀とパレスチナ人の技術専門家と協力し て包括的な「緊急調査」を実施しています。世銀 が管理している「パレスチナ経済援助・協力拡大 ファシリティ」では、緊急雇用プログラムに関し て5ドナーから2,600 万ドルの資金支援を受けまし た。テーマ別では、「地中海環境技術支援プログ ラム」、「地域給水イニシアティブ」及び「文化遺 産」などのパートナーシップが、持続可能な開発 に対する世銀援助を活用しています(囲み5.8を参 照) 。世銀とEUが共同で資金を拠出している「地 中海のインフラ構築に民間セクターを参加させる ことに関するEU ・世銀プログラム」 (本部ブリュ ッセル)は、借入国において重要な民間セクター 改革とインフラ改革を推進しています。公共セク ター運営に対する取り組みは、「マグレブ公共調 達近代化イニシアティブ」に基づいて行われてい ます(www.worldbank.org/menaを参照) 。 知識共有のための活動においては、中東・北ア フリカ地域は、互いに合意した中期的な成果を基 準として域内の国々を支援するために、融資を伴 わないプログラム手法を試験的に実施していま す。この新たな手法では、診断、トレーニング及び 研修などの活動が行われます。この手法は、中東・ 北アフリカ地域が直面する問題に関して世銀が継 続的に関与する手段として、域内の国々が融資以 外の手段を必要としていることに応えるもので す。現在では、グローバル・ディベロップメント・ 総人口: 3 億人 人口増加率: 2% 平均寿命: 68 歳 乳幼児死亡率(1,000 人当たり): 43 若い女性の非識字率: 24% 2001 年の一人当たり国民総所得(GNI): 2,000 ドル エイズ感染者数: 50 万人 注:平均寿命、乳幼児死亡率(1,000 人当たり)及び若い女性の非識字率は、2000 年 の「世界開発指標」データベース、その他の指標は 2001 年の同データベース。 現在は、国民総生産(GNP)の代わりに、国民総所得(GNI)が使用されています。 2002 年度の 新規融資承認総額 IBRD : 4 億 5,180 万ドル IDA : 1 億 270 万ドル 2002 年度の 融資実行総額 IBRD : 5 億 1,460 万ドル IDA : 1 億 1,700 万ドル 2002 年 6 月 30 日現在において実施中の プロジェクトのポートフォリオ: 54 億ドル イエメンの農村地域では、女性達が、 「社会基金」のメンバーと共にサ ブ・プロジェクトの内容を決定するためにフォーカス・グループ会議 を開いています。 ラーニング・ネットワーク(GDLN)は、ヨルダンの アンマンとエジプトのカイロに設立されている計 2 ヶ所の遠隔研修センターに加えて、サウジアラ ビアとクウェートのパートナーの下にも設立され ています。バーレーン、イラン、オマーン、アラブ 首長国連邦及びイエメンにおいても、新たなパー トナーシップを構築するための作業が行われてい ます。また、ヨルダン、モロッコ及びヨルダン川西 岸・ガザ地区では、「ディベロップメント・ゲー トウェイ」に関する作業が行われています。 前記の目標は、「有償技術支援プログラム」に 基づく需要立脚型プロセスを通じて達成されつつ あります。世銀融資適格国ではない域内諸国との 第5章 地域別展望 109 囲み 5.8 環境パートナーシップと研修 ―普通の人々による活動 「乾燥地帯の管理に関する地域イニシアティブ」に基づ いて、世銀は、パートナー(エジプト、イスラエル、ヨ ルダン、パレスチナ自治政府及びチュニジア)が、生産 性の向上と辺境地の生活水準の改善を目的として、天然 資源の持続可能な管理に関して、技術協力関係を構築し、 かつノウハウを共有するのを支援しています。チュニジ アのガベス地域では、同イニシアティブは、若い農民に 対して、辺地のディッサに定住し、ガベス・プラントで 処理された排水を使用して灌漑農業を始めることを奨励 しています。同イニシアティブは、この活動を通じて雇 用を創出すると同時に、天然資源を保全することを目指 しています。ヨルダン(ワディ・ムジブ地域)では、新 たな貯水施設は 3 年続いた深刻な旱魃を乗り切ることがで きました。その結果、この技術を他の地域に適用する計 画が進められています。貯水を作るための土手は、サボ テンを植えることにより強化されました。この技法はチ ュニジアから学んだものです。農家は、このサボテンを 採取し、家畜の飼料や収入源として利用します。エジプ ト北東部のワディ・ウム・アシュタン集水地では、現地 のベドウィン(遊牧民)の協力を得て、改良型飼料を得 るための種子収集プログラムが広い範囲で行われた他、 簡素な貯水技法が活用されました。その結果、年間平均 降雨量が 150mm に過ぎない不毛地であったこの地域は、 生産性の高い農地に生まれ変わりました。 間で従来から行われている技術支援パートナーシ ップの一環としてのこの非融資サービスには、多 角化戦略、人的資源開発、民間セクター開発、及 び公共セクター改革などがあります。技術支援と しては、技術・政策助言、キャパシティ・ビルデ ィング、プロジェクトの設計・実施、及びコンセ ンサスの形成などが行われました。ほとんどの場 合、この技術支援は必要に応じて行われました が、援助受入国が責任を負う包括的技術支援フレ ームワークの色彩が強まりました。サウジアラビ アは、従来から一貫して世銀の技術支援を受けて います。クウェートも、毎年実施される「技術協 力プログラム」を開始しました。クウェートに対 しては、世銀は、投資環境、雇用創出、民間セク ターの参加、及びインフラ・セクターの改革など について助言サービスを行っています。 110 世界銀行年次報告書 2002 投資環境の構築 投資環境と雇用の改善、及び持続可能な開発の 可能性の強化については引き続き重点が置かれて います。中東・北アフリカ地域のほとんどの国々 は、投資環境を改善するマクロ経済政策の実施面 でかなり進展しました。しかし、過度の規制と官 僚的形式主義の改善、税金・関税・投資制度の改 善、金融・労働市場の効率的な機能の確保、及び 質の高いインフラを特に中小企業(SME)などが 安価な料金で利用できる機会の拡大などは、依然 として大きな課題として残されています。 モロッコでは「投資環境調査」に基づいて新規 企業の参入と成長を促進するための施策が決定さ れました。チュニジアでは、世銀と同国政府の合 同プログラムである“Fonds d’Accés aux Marchés d’Exportation (FAMEX)”が、民間企業に輸出マ ーケティングなどの分野で支援を行っています。 2001 年に限っても、同プログラムは 100 を超える 新たな輸出企業に支援を行いました。(モロッコ とチュニジアの他)アルジェリアのSMEによる市 場と情報の利用機会を拡大するために、世銀は最 近、SME 交流プログラムを開始しました。このプ ログラムは、地中海の両岸の商工会議所を結び付 けるものです。現在、ヨルダンは民営化プログラ ムを実施していますが、これは域内で最大の成果 を上げています。この民営化プログラムに基づい て民営化された企業は、GDPの約12%の売上を記 録し、6,000人を超える雇用を創出し、通信料金の 引き下げという形で消費者に便益を提供し、かつ 電話の設置までの待ち時間を短縮しています。さ らに運輸セクターでは、利用できるバスの台数が 増加して、利用者数も増加しました。この民営化 プログラムは、世銀グループが「ヨルダン民営化 プログラム」を支援する米国国際開発庁の信託基 金を管理するパートナーシップに基づいて行われ ています。 貧しい人々のエンパワーメント 2002 年度には、世銀援助を受けた多くのイニシ アティブは、貧しい人々と脆弱な人々のエンパワ ーメントに貢献しました。中でも最も顕著なのは 「社会基金プログラム」です。アルジェリアでは、 劣悪な環境にある多くの「スラム」(社会サービ スの提供がなく、治安の悪いバラック地区)を対 象として28の社会事業センターを建設するプログ ラムによって、これらのスラム地区に、テロの犠 牲者のための心理的、精神医学的及び肉体的なリ ハビリ、学校を退学した子供達に対する支援、保 よう説得する上で重要な役割を果たしています。 イエメンで最近実施された「保健支援プロジェク ト」は、中東・北アフリカ地域における保健セク ターの問題に対する世銀の多面的アプローチの好 例です。このイエメンのプロジェクトは、8 つの地 域(総人口: 150 万人弱)の母親と子供に対して 高水準の様々な保健サービスを提供することで、 サービス改善を図るものです。また、同プロジェ クトは、マラリアなどの風土病を撲滅するための 公衆衛生プログラムも推進し、さらに、限られた 資金を効果的に配分し、効率的に使用するために、 保健システムの管理も改善することが見込まれま す。 グローバル・レベルの優先事項 イエメンでは、地域社会との契約で伝統的な貯水施設が建造されてい ます。 伝染病 エジプトでは、世銀は、 「全国住血吸虫病抑制プ ログラム(NSCP)」の拡大を支援すると共に、科 学研究能力と公衆衛生プログラムの強化のための 健・医療と教育に対する両親の意識を高めるため 技術支援を行いました。現在、NSCP は、エジプ のプログラム、社会的権利に関する情報、予防注 トの農村部の全人口(約3,500 万人)を対象として 射、若者を対象としたスポーツ活動、文化プログ います。モロッコでは、世銀は、 「基礎的保健プロ ラム、などの様々なサービスが提供されました。 ジェクト」に基づいて、「TB 抑制・予防注射拡大 イエメンとエジプトでは、社会基金は、地域社 プログラム」を支援しました。その結果、設備能 会、政府の省庁及びNGOの間で効果的なパートナ 力が増強され、権限委譲も行われました。TB に関 ーシップを構築し、かつこれら関係者に対するキ しては、患者発見率と治療率は共に 90%に達して ャパシティ・ビルディングを通じて、 「地域社会が おり、治療失敗率は 1%未満となっています。1 歳 参加するという文化」を創造しています。エンパ 未満の幼児に対する DPT3(ジフテリア、百日咳 ワーメントは、父兄協議会、保健協議会及び給水 及び破傷風の混合ワクチン)と麻疹ワクチンの接 利用者協議会などの地域組織に対しても行われて 種率は、それぞれ 92%と 90%となっています。都 います。サブプロジェクトの対象分野は、教育・ 市部と農村部では、それほど大きな差異はありま 保健サービス、革新的な貯水プロジェクト、環境 せん。同プロジェクトに基づいて、世銀はモロッ 対策、小口融資、雇用創出及び観光に直接影響を コの全国エイズ対策プランの策定を支援しました。 与え、地域社会に所得をもたらす文化遺産保全対 このプランは、2001 年秋に開かれた全国ワークシ 策に及んでいます。イエメンでは、これらの活動 ョップの際に同国政府から承認されました。 から直接便益を受けた人が 460 万人、間接的に便 中東・北アフリカ地域の各国は、GDP の 5%を 益を受けた人が約 100 万人となっています。エジ 超える資金を保健システムに投入しています。し プトでは、女児の小学校就学率を引き上げること かし、保健に関する成果は、あまり芳しくない場 も、世銀援助を受けた教育・社会基金プログラム 合が多くみられます。その理由は、保健システム の主目標の1つになっています。 「エジプト教育強 が、組織、質及び効率性に関する深刻な問題を抱 化プロジェクト(EEP) 」に基づいて、孤立した貧 えているためです。エジプト、イラン、ヨルダン、 しい地域社会に学校が新設され、就学率が上昇し、 モロッコ及びチュニジアでは、世銀は、プロジェ 過密教育が緩和されました。この EEP に基づい クト及びシステム全体の改革を中心とした助言サ て、200 を超える地域意識向上キャンペーンが行 ービスを通じて、これらの国々を支援しています。 われ、かつ不利な状況に置かれている 22,000 人を 超える子供達に支援が行われた結果、女子に対す 貿易と統合 る教育を要求する両親が増加しました。NGO、地 中東・北アフリカ地域の世界経済との統合のペ 域社会の指導者(女性を含む)及び宗教指導者は、 ースが遅いことを踏まえ、世銀は、融資・非融資 両親に対し、子供達、特に女児を学校に通わせる サービスを通じて、同地域の世界経済との統合を 第5章 地域別展望 111 図 5.11 中東・北アフリカ地域: IBRD と IDA のテー マ別の融資額、2002 年度 総額 6 億ドルに占める割合 図 5.12 中東・北アフリカ地域: IBRD と IDA のセク ター別の融資額、2002 年度 総額 6 億ドルに占める割合 環境・天然資源管理 4% 農村開発 3% 都市開発 10% 人的開発 11% 農業・漁業・林業 1% 経済政策 1% 法律・司法・行政 13% 公共セクター 運営 17% 法規 9% 社会開発・ジェンダー・ 参加 2% 給水・衛生・治水 13% 運輸 13% 情報・通信 13% エネルギー・鉱業 1%未満 教育 7% 産業・貿易 13% 社会的保護・リスク管理 2% 金融・民間セクター開発 37% 保健・その他社会事業 8% 金融 20% 貿易・統合 4% 積極的に支援しています。現在、ヨルダン、モロ ッコ及びチュニジアでは、通関手続が簡素化され ていますので、これらのプログラムの成果が上が っていると言えます。「経済競争力を高めるため の構造調整融資」に基づいて、チュニジアの輸出 業者は、従来の最大 6 ヶ月以内ではなく、30 日以 内に税還付を受けています。ヨルダン当局は、 2001 年 5 月、輸出業者を中心とする企業に「初の 世界的なビジネス環境」を提供することになる 「アカバ特別経済区域」の運営を開始しました。 この経済地域に関しては、世銀は「経済再編・開 発融資」として資金援助を行いました。世銀の技 術支援も受けて、ヨルダンは、2000 年 1 月以降、 ヨルダン・テレコム、空港免税店及びヨルダン・ フライト・ケータリング・カンパニーを対象とし た民営化プログラムを加速しています。その結 112 世界銀行年次報告書 2002 果、外国からの投資も流入し、明らかに顧客に便 益が生じています。モロッコでは、世銀の「政策 改革融資」を受けて、公共セクター改革の一環と して本格的な税関改革が開始されました。その結 果、通関の平均待ち時間は、2 日から1 日弱に減少 しました。 国際金融システム 2002 年度には、世銀は国際金融インフラを強化 するために、モロッコ対象は作成中、チュニジア 対象は完了した「金融セクター審査ペーパー」、 エジプトを対象とした「国別財政責任調査」、エ ジプトとモロッコを対象とした会計と監査に関す る ROSC の支援を強化しました。また、モロッコ を対象としたコーポレート・ガバナンスに関する ROSCは完了しました。 表 5.6 中東・北アフリカ地域に対するテーマ別、セクター別融資、1993 ∼ 2002 年度 (単位: 100 万ドル) 1993–97 1998–99 (年平均) (年平均) テーマ別 経済政策 公共セクター運営 法 規 金融・民間セクター開発 貿易・統合 社会的保護・リスク管理 社会開発・ジェンダー・参加 人的開発 都市開発 農村開発 環境・天然資源管理 テーマ別総額 セクター別 農業・漁業・林業 法律・司法・行政 情報・通信 教 育 金 融 保健・その他社会事業 産業・貿易 エネルギー・鉱業 運 輸 給水・衛生・治水 セクター別総額 2000 2001 2002 50.5 79.5 16.1 350.4 28.3 68.3 69.0 94.0 140.8 214.3 204.1 5.2 89.8 59.5 361.1 38.8 87.4 64.5 179.0 125.9 175.3 94.2 0.0 130.6 9.3 61.8 3.0 100.0 71.6 187.9 143.5 89.2 123.3 11.9 102.6 56.5 78.8 3.4 5.6 52.5 35.7 46.7 86.4 27.5 5.0 93.3 49.1 204.1 24.8 11.0 13.4 61.9 55.8 14.5 21.7 1,305.2 1,280.8 920.0 507.5 554.5 234.8 127.4 11.0 97.2 161.8 98.2 170.9 82.2 146.5 175.3 147.9 236.0 33.8 94.2 190.8 159.8 168.6 56.8 81.7 110.9 120.6 108.9 1.3 197.1 5.3 158.9 47.9 0.0 59.6 220.5 46.5 161.5 59.2 72.3 0.0 39.3 27.0 0.0 82.8 19.0 2.9 74.7 69.9 38.0 110.5 41.7 71.7 1.3 70.9 73.1 1,305.2 1,280.8 920.0 507.5 554.5 1,155.7 149.5 955.5 325.3 760.3 159.8 355.2 152.3 451.8 102.7 うち、 IBRD融資額 IDA融資額 注:新たなテーマ・セクター分類システム(68テーマ、57セクター)に従って、融資を11の主要テーマと10の主要セクターに分けて示した。 30 頁の表 2.2を参照。端数を四捨五入したため、合計額が合わないことがある。 第5章 地域別展望 113