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2011 年銅先物価格の動向展望 年銅先物価格の動向展望 年

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2011 年銅先物価格の動向展望 年銅先物価格の動向展望 年
東岳証券株式会社
2011 年銅先物価格の動向展望
2011 年 3 月 1 日
2010 年を顧みると、銅先物価格の動向は大きく 2 段階に分けられる。第 1 段階は、2
回高値を試してから下落し、おおむねレンジ内での調整を描いた。第 2 段階は、7 月初め
に 2 月につけた安値を下に突破した後、力強く上伸し、9 月末には前期調整レンジの高値
364.65 セント/ポンドを突破し、その後は急激に上昇して過去最高値を次々に更新した。
11 月は若干調整段階に入ったが、下半期は概ね一本調子の上昇となった。2010 年 12
月 31 日、銅先物は 445.05 セント/ポンドで終了し、終値としては過去最高値となった。
次は、ファンダメンタルとテクニカル面で 2011 年銅先物の価格動向を予測して見よう。
一、銅先物価格に影響するファンダメンタルズ要因
1、銅需要
銅需要と言えば、中国が挙げられる。当面、中国は世界最大の銅消費国でありながら、
*当社の提供したすべての資料は信頼できると判明した情報に基づいて作成されていますが、その正確性、安全性を保証するものでは
ありません。投資などのご利用に際しては、お客様ご自身の判断でお願いいたします。
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主要生産国でもあるが、国内生産量は需要の 4 分の 1 程度しかない。中国の銅需要が
世界全体に占める割合は 37%程度で、主に電気設備、空調と自動車の 3 領域に使われ
ている。
図 1:世界主要国(地域)の精錬銅消費比例
:世界主要国(地域)の精錬銅消費比例
図 2:中国銅消費
:中国銅消費構成
:中国銅消費構成
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電気設備の点から見ると、国家電網公司は、第 12 次 5 カ年計画(2011-2015 年)で
はスマートグリッドの全面的な建設段階で、投資額は約 2 兆人民元になるとし、超高圧送
電線プロジェクト及び都市部と農村部の電力網建設を主要な任務としており、総投資額
は 2010 年より 15%増加した。第 12 次 5 カ年計画期間には、交流超高圧変電所を 48
ヶ所、送電線 3.8 万キロメートルを新しく取り付け、総額 2,800 億人民元を超えるほか、直
流変電所 12 ヶ所、送電線 1.6 万キロメートルを取り付け、投資額は 2,200 億人民元にな
る見込みである。また、超高圧変電所への投資額は 5,000 億人民元を超えるもので、将
来 5 年間の複合成長率は 36%に達する見通しである。1,000mm²のケーブルで計算すれ
ば、高圧と超高圧ケーブルの新増により精銅需要は約 48 万トンに達する見込みである。
空調業界は、輸出と国内需要を成長の主な牽引役としている。人民元切り上げ圧力
及び海外貿易保護主義などは空調の輸出を抑制しているが、家電下郷(農村への家電
普及)、内需刺激策などで、2011 年の空調生産は安定した成長を保持する見込みであ
る。
自動車業界を見ると、2003 年 3 月に実施された「自動車産業調整振興計画」の支援
で、年間自動車販売台数は 1,364.48 万台に昇り、世界トップの自動車市場となった。さ
らに、2010 年には 1,806.19 万台を記録し、過去最高を更新した。しかし、2011 年初め、
小排気量車購入税優遇政策が廃止され、「汽車下郷(農村への自動車普及)」優遇政
策も終了されたことで、中国自動車業界への懸念の声が上がっているものの、一人当たり
の国内総生産(GDP)の上昇や都市化率の高まりに伴い、中国における自動車保有台
数の増加は依然成長の余地が多々あると思われる。また、2011 年に入り、中国政府が不
動産市場の過熱抑制策を実施したため、一部の不動産購入者は資金を自動車市場に
移す可能性が高いと見られ、2011 年の中国自動車市場は速い成長ペースを維持すると
思われる。
また、金属製品関連の新しいデリバティブも銅需要の増加につながる。2010 年 12 月 10
日、英 ETF セキュリティーズは銅などの非鉄金属資産を裏づけとする ETPs(上場取引型
金融商品)を世界に先駆けて証券取引所に上場した。そのうち、銅保有量は 18.5 万トン
となる。2010 年 10 月中旬、ETF セキュリティーズと同時に JP モルガンやブラックロックも非
鉄金属関連の ETPs の上場を申し込み、銅保有量はそれぞれ 6 万トン、12 万トンとなった。
全世界先物取引所の銅在庫総量約 60 万トンのうち、この三つの会社の銅 ETPs が合計
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40 万トンをも占めることから、2011 年の銅需給は一層ひっ迫すると考えられる。
中国と違い、欧米先進国の銅需要は建設業に集中している。
図 3:米国銅消費構成
:米国銅消費構成
住宅着工件数と建設許可件数は最も重要な住宅関連指標として注目され、国民住
宅または公共建築を中心に調査して発表している。下図を見ると、2007 年は金融危機の
衝撃を受け米住宅市場は大きく低迷し、2009 年 4 月は底打ちし、その後は持ち直し始め
たものの、今までも力強い回復が見られていない。米住宅市場の堅調な反発は労働市場
の好転、消費意欲の増強に依存度が高いため、2011 年の米住宅市場における銅需要に
は慎重な見方となっている。
図 4:米国住宅着工件数
:米国住宅着工件数と
:米国住宅着工件数と建設許可件数(単位:万戸)
建設許可件数(単位:万戸)
参考資料:米国商務省
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欧州は依然としてソブリン債危機から脱出できておらず、財政緊縮の影響で欧州当該
国がインフラストラクチャ事業への支出を大幅に減少させていることから、銅需要の増加に
つながらない見通しである。
2.銅供給
下図から見れば、2004 年から今まで、世界の銅精鉱埋蔵量はほとんど変化しなかった。
そのうえ埋蔵国の上位 5 カ国は 65%も占める。採鉱困難度の増加及び労働力価格の上
昇などで採掘に係る限界費用も増加することから、銅精鉱生産量の大幅な伸びはないと
思われる。銅鉱石の品位は過去 13 年間 70%超低下し、現在では、チリなどのごく少数の
国が 3.0%以上になっており、そのほかはほとんど 1.0%以下になっている。今後は銅鉱石の
品位は更に低下すると見られる。湿式精錬法は世界的な規模で推進しているにもかかわ
らず、特許制限及び原鉱の質などに影響されて、生産量の増加は難しい状況である。最
近、国際銅研究会(ICSG)が発表したレポートによると、銅鉱石の供給量は 2011 年まで
は大きく増加しない見通しで、2011 年は 1.85%しか伸びず、過去 10 年間の世界平均伸
び率 2.8%を大幅に下回ることが明らかにされた。
図 5:世界
:世界銅鉱主要生産国シェア
:世界銅鉱主要生産国シェア(単位:万トン)
銅鉱主要生産国シェア(単位:万トン)
参考資料:USGS
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上述したように、2011 年の世界銅需要は引き続き増加する一方、供給の伸びは緩慢
になり、需給ひっ迫は必然であるため、銅相場は押し上げられる見通しが強まる。
下の一覧表は著名な関係機関の銅需給ギャップに関する調査結果である。対象にな
る 7 つの機関のうちで 2010 年は供給不足と見るのは 6 つとなり、バークレイズが見ているギ
ャップは 45.5 万トンと、最大である。2011 年の予想を出した 4 つの機関は軒並み供給不
足を予想しており、バークレイズはまた、2010 年の 45.5 万トンから 78.2 万トンに拡大し、最
大のギャップを予想している。
表 1:世界著名機関純銅需給ギャップ予想
:世界著名機関純銅需給ギャップ予想 (単位:千トン)
年度
バークレイズ MATIXIS 世界金属統計局 国際銅研究会 CRU 安泰科 マンフィナンシャル
2008
187
144
363
226
141
111
165
2009
456
-84
338
166
1096
970
179
2010
-455
-100
-112
-356
-123
250
-370
2011
-782
-145
--
-436
--
--
-350
3、流動性
IMF から発表された最新の世界経済見通しによると、金融危機以降、欧米などの先
進国の景気回復ペースが以前より弱く、今後の景気回復は緩やかなものとなるだろう。各
種指標から見ると、景気回復は続けているものの、各国と各地域の経済指標は不安定と
された。主要な経済指標の景気先行指標となる PMI 製造業は 2009 年末からおおむね
保ち合い展開となり、分岐点 50 の上方で維持しているものの、毎月の結果は安定してい
ない。
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図 6:米国、ユーロ圏、英国 PMI 製造業
参考資料:ISM、Markit
図 7:米国非農業部門雇用者数変化(単位:千人)
:米国非農業部門雇用者数変化(単位:千人)
参考資料:米国労働省
米雇用市場の低迷を背景に、米連邦準備制度理事会(FRB)は 6,000 億ドルの量的
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金融緩和策第 2 弾(QE2)を打ち出した。QE2 とは、FRB が国債を追加で買い入れること
を通じて、市場に流動性を注入することである。QE2 の実施により、国債価格の高まりによ
ってローコストの融資の効果を達すると同時に、ドルの値下がりにつながり、貿易赤字構造
を緩和することができる。もっとも重要な事は、FRB は体系的に市場へ流動性を注入でき
ることである。2010 年 12 月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合の結果から見ると、
今後は量的緩和第 3 弾が打ち出される可能性は排除できないが、ドルの流出により、世
界的な流動性に余裕が出る可能性が高い。
図 8:米国
:米国量的金融緩
:米国量的金融緩和第
量的金融緩和第 1 弾期間のドルと銅先物の値動き
米国が量的金融緩和策を継続しているため、2011 年は世界流動性に比較的余裕の
ある状態が続くだろう。一方、ドルの供給過多がドルの下振れリスクを高めるため、ドル建て
の銅先物は押し上げられる。一方、欧米などの先進国の景気回復が比較的にぜい弱で
あることから、実体経済への投資魅力が低下し、量的金融緩和策による流動性は新興
国市場と大口商品市場に流入する傾向がある。これも銅先物の買い材料となるだろう。
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二、テクニカル分析の見通し
銅先物の週足から見ると、価格は 2008 年 5 月から 2008 年 12 月までの間に 70.54%
暴落した。その後は驚くべき勢いで上昇した。2010 年 4 月中旬から 6 月初めまでの調整
展開は今回上昇トレンドのコンティニュエーションと見られており、即ち上値の最小ターゲット
はポンドあたり 501.60 セント付近と予想されている。だが、価格は当面 2006 年 5 月と 2008
年につけた高値(398.20 セントと 425.80 セント)を突破してからは、絶えず史上最高値を更
新したことから、上方はレジスタンス無しの真空地帯となっている。テクニカル指標では、
2009 年 6 月以来、MACD(12,26,9)の MACD とシグナルはほぼゼロラインの上方で推
移しているほか、RSI(14)は売られ過ぎゾーンに入ることがなかった。これらも銅先物が上昇
する証拠となっている。銅価格は今年の 4-5 月に上値の最小ターゲットとなる 501.60 セント
を達すると予想されており、その後は大きな調整に見舞われるが、長期的な上昇トレンドは
変わらないと思われる。2011 年の下半期、銅価格は続伸する見通しであり、中期のターゲ
ットは 800.00 セントに設定したい。
以上、2011 年には銅需給ギャップの拡大と充分な流動性は引き続き銅相場を押し上
げる見込みである。
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