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景気左右するIT市場、需要構造変化で調整深刻化は回避

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景気左右するIT市場、需要構造変化で調整深刻化は回避
第 40 号
公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2010年11月5日公表
景気左右するIT市場、需要構造変化で調整深刻化は回避
― 新興国需要と新最終製品の登場が救世主も、日本は地盤低下の恐れ ―
短期予測班 鹿庭 雄介、片平 幸伸
<監修>短期予測班主査:竹内 淳一郎
▼ ポイント ▼
9
景気の大底からの回復局面で堅調に推移したが、足もと需給軟化から調整局面入り
9
需要の裾野拡大を背景に、過去 2 回の調整局面とはやや異なる側面
9
日本企業は海外勢との競争に劣位するリスク、生き残りへ製品差別化戦略が必要
(図 1)鉱工業生産指数
8.0
6.0
(2005年=100)
(前期比%)
踊り場②
ITバブル
110
105
踊り場①
4.0
100
2.0
95
0.0
-2.0
-4.0
その他
電気機械類
鉱工業生産(前期比)
鉱工業生産(水準、右目盛)
-6.0
90
85
(四半期)
80
75
99:1
00:1
01:1
02:1
03:1
04:1
05:1
06:1
07:1
08:1
09:1
10:1 10:3
(注)電気機械類は、電気機械工業、情報通信機械工業、電子部品・デバイス工業(以下、電デバ)を合算したもの。
(資料)経済産業省『鉱工業指数』
【 はじめに ~本稿の問題意識~ 】
(1)景気展開を見定める上での注目点
表 1 輸出・生産・企業マインド
(季調済前期比、前月比%、原計数 D.I. %p)
景気が微妙な段階に差し掛かっている。2009
年春に大底を打ち、景気が持ち直してくる局面
では、相互に関係する 3 つの需要がけん引役と
なった。①中国特需、②政府の補助金や減税策
に刺激された耐久消費財(車や薄型 TV)需要
および、③多機能携帯電話など情報(IT)関連
財需要であった。残念ながら、それら需要に続
く形で、自律的かつ持続的な需要が派生してこ
10/1Q
2Q
3Q
7月
8月
9月
10 月
実質輸出
5.2
9.6
▲0.4
2.4
▲4.2
▲0.0
n.a.
鉱工業生産
7.0
1.5
▲1.9
▲0.2
▲0.5
▲1.9
▲3.6
業況判断
4.7
15.3
16.7
19
22
9
10
なかった。このため、上記 3 つの需要に翳りが
(注)
鉱工業の 10 月は予測指数。
業況判断は QUICK
短観(製造業の足もと判断)。四半期は単純平均。
みられた途端に、輸出や生産が頭打ちとなって
(資料)日本銀行、経済産業省、QUICK
いる(表 1)。これに、折からの円高が加わっ
て、企業や家計心理は、幾分後退している。
日銀は、円高を契機として景気の回復基調が
途切れることを未然に防止する観点から、「包
括緩和」と称する追加的な金融緩和措置を決め
た。政府も、
「円高・デフレ対応のための緊急
http://www.jcer.or.jp/
経済百葉箱 2010.11.5
日本経済研究センター
総合経済対策」として、公共事業の契約前倒し
ている。個別業界のうち、IT 分野を取り上げ
を含め総額約 5 兆円の補正予算の成立を急い
る背景には、次のような問題意識がある。
でいる。
IT 関連財の需給動向は、景気の短期的な綾
今後の景気を展望していく上では、幾つかの
を見通す上で、近年その重要性を増している。
重要な論点がある。日経センターの短期予測班
ミレニアム前からの米国のドットコム・バブル
では、次回の経済予測(SA144、11 月下旬公表
後のバブル崩壊という流れでは、まさに IT 関
予定)に向け、精力的に作業を進めている。今
連財市場がわが国の景気循環の骨格を形成し
回の予測に当たっては、3 つの局面に分け分析
た。続いて、02 年初にはじまる景気拡大局面
している。
(以下、「出島景気」)において、わが国は 2
第一は、足もとから 2010 年前半にかけての
度の「踊り場」を経験した。その何れもが、IT
局面。景気が後退に向かうのか、足踏み状態に
関連の在庫・生産調整と密接にリンクしている
止まるのか、を見極めることが求められる。そ
(冒頭の図 1)。「出島景気」は、2 度の「踊り
の際には、生産調整の深度を見極めることが、
場」を乗り越えたことで、「いざなぎ景気」を
ポイントとなる。一般には、自動車の生産調整
超える戦後最長の景気拡大が実現した。現下の
への関心が強いが、本稿が取り上げる IT 関連
局面を、こうした経験に照らして、どのように
財分野は同等ないしそれ以上に、重要なセクタ
捉えればよいか。
ーとして位置付けるべきと考える(この点は、
前述のとおり、足もとの生産調整についての
多くの関心は、自動車業界に向けられている。
後述)。
第二は、11 年度一杯までの景気展開のレビ
エコカー補助金の打ち切りに伴い、自動車需要
ューである。SA143 では、中国の景気再加速を
の減少が生産調整をもたらしていることに着
1
背景とする対中輸出の持ち直しを機に 、景気
は 11 年央辺りから、再び緩やかな回復に復す
目したものである。それ自体に、異論はない。
るとの見方を示した。現時点でも、基本的な見
予期せぬ需要の下振れが契機となる。補助金の
方は変えていない。ただ、中国依存が強まる中、
中止に伴う自動車需要の振幅は、全く予見でき
そこに“死角”はないか。円高のもたらす影響
なかったことであろうか。かねて、自動車業界
と併せ、虚心坦懐に分析することが必要となる。
の需要見通しは、正確なことで定評がある 。
むしろ、いつもながら需要の変動を予見できな
第三は、今回初めて予測する 12 年度の内外
景気の姿である。その際の重要な論点は、外需
ただ、往々にして、景気の短期的循環の多くは、
2
いのが、本稿で取り上げる IT 分野である。
のうち米国景気をどう想定するかにある。11
何故、IT 分野は需要の変動が見極め難いの
年は概ね「勝負あった」感があるが、12 年に
だろうか。一つには、電子部品・デバイスなど
ついても、潜在成長率(2%台後半)並み、な
は、自動車に比べ、生産工程の川上に位置する
いしはそれを下回る成長に甘んじるかどうか。
という特性に起因している。また、莫大な研究
また、内需では、景気の回復が緩慢ながらも長
開発費、設備投資を要する中で、その回収は短
期化する中で、04 年度頃からみられたような
期間かつ大規模に図ることが求められている。
内需回復に繋がるかどうか、への関心も強い。
ただ、その商機は限られているため、どうして
もメーカー側は、ここぞと言う時に供給過多に
(2)何故、IT 分野の分析が必要とされるか
陥りやすい。加えて、業界には数多くの企業が
本稿は、IT 関連財市場の動向に焦点を当て
乱立しており、業界内ですら需給に関する正確
な情報が掴み切れてない。国境を越えて水平分
1
興味のある方は、経済百葉箱第 35 号「中国景
気の減速をどうみるか:警戒?楽観?-当局が
「想定した」過熱の抑制後、2012 年の共産党大
会に向け景気は再加速」を参照下さい。
業が進んでいることも、情勢の把握を難しくし
ている。
2
この点は、別稿での検討を予定している。
http://www.jcer.or.jp/
-2-
経済百葉箱 2010.11.5
日本経済研究センター
川下に位置するセットメーカーは、部品不足
のキマンダが 09 年 1 月に経営破綻に陥った。
に伴うボトルネックを回避するため、時に実需
また、わが国でも、09 年 6 月にエルピーダメ
を超える発注を多数の部品メーカーに出す。こ
モリが、改正産活法の認定を受けるところまで、
れに応じ、目一杯増産した後、何らかの要因で
経営悪化が一時、進んだ。
需要が後退すれば、仮需は大量のキャンセルへ
しかしながら、景気が大底から反転してくる
と変わってしまう。その結果、広い範囲に亘っ
過程では、IT 関連分野が全体のけん引役を担
て、生産調整に陥るケースが、2000 年代に入
ってきた。一例を挙げると、生産指数に占める
って、何回かこの業界ではみられている。
ウエートが 2 割弱程度でありながら、電気機械
本稿の結論を先取りすると、IT 関連財分野
類の生産全体への寄与は相応に大きかった(前
では、一時的に調整局面を迎えるが、深刻な生
掲図 1)。ほぼ同時期に、わが国のみならずグ
産・在庫調整には陥らないとみている。ただ、
ローバルに IT 関連財需要が急回復した。この
なかなか見通し難い業界だけに、予断をもつこ
点 を 、 米 国 の 半 導 体 工 業 会 ( SIA <
となく、月々のデータを点検していく必要があ
Semiconductor Industry Association>)が集計す
ることは言うまでもない。
る世界の半導体売上高(3 ヵ月移動平均値)で
確認すると、足もとでは既に「出島景気」のピ
【 IT 関連財分野の現状 】
ーク時を上回る水準にまで達している(図 2)。
IT 関連財産業は、その代表格である半導体
売上高統計は名目値であり、価格下落圧力が強
をはじめ様々な最終製品で広く利用される。そ
い半導体分野で、ここまで短期間で既往ピーク
れゆえに、リーマン・ショック以降の広範かつ
の売上高を超えたことは、特筆に値する。
グローバル規模での需要減少を受け、業況は大
幅に悪化した(表 2)。
(図 2)世界半導体売上高
表 2 業況判断(大企業)
300
(億ドル、3ヶ月移動平均)
(原計数 D.I. %p)
製造業
08/6 月
9月
12 月
09/3 月
6月
9月
12 月
10/3 月
6月
9月
12 月
5
▲3
▲24
▲58
▲48
▲33
▲24
▲14
1
8
▲1
自動車
15
5
▲41
▲92
▲79
▲49
▲21
▲2
18
32
▲6
250
3
電気機械
3
▲9
▲37
▲69
▲52
▲33
▲17
▲12
6
14
5
200
150
100
(月次)
50
95/01
98/01
(資料)SIA
01/01
04/01
07/01
10/01
10/08
半導体売上高を地域別にみると、アジア・太
平洋地域(除く日本)での回復が顕著であり、
この先についても、業界は同地域を中心に、強
(注)10/12 月は予測。
気の見通しを立てている(次頁図 3)。
(資料)日本銀行『全国企業短期経済観測調査』
こうした IT 関連財市場の V 字回復を支えた
個別企業をみても、独のメモリーチップ大手
背景には、次にみるような最終製品の需要回復
があったとみている。
3
短観では、依然として「電気機械」という括り
となっている。このため、鉱工業生産指数などで
示される電子部品・デバイス、情報通信機械、電
気機械といった区別での分析が出来ない。
第一は、多くの国で一斉に景気刺激策が採用
される中、耐久消費財の購買を補助する政策が
http://www.jcer.or.jp/
-3-
経済百葉箱 2010.11.5
日本経済研究センター
(図 3)世界の半導体需要予測
3,500
3,000
(図 4)IT 最終製品の世界需要予測
(億ドル)
250
アジア・太平洋
米国
欧州
(2009年=100)
226
スマートフォン
日本
200
193
パソコン
2,500
154
2,000
150
1,500
100
161
145
128
115 113
1,000
50
500
0
0
09
10
11
(資料)IDC、矢野経済研究所
99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
(資料)WSTS日本協議会
(暦年)
相次いで採用された。典型的には、自動車や薄
型 TV などであるが、言うまでもなく、これら
には多数の電子部品が採用されている。
12
13
(暦年)
【 世界的な需給バランスの軟化 】
以上のように、景気対策による需要喚起、ス
マートフォンの登場、世界同時不況下で見送ら
第二は、新型多機能携帯電話(スマートフォ
れた pent-up demand の顕現化などから、IT 関
ン)の登場とその急速な普及である(図 4)。
連財市場は、10 年前半にかけて活況を呈して
需要が落ち込む局面で、こうした画期的な新製
きた。
品が登場し、かつ消費者に支持されたことは、
業界にとってまさに「干天の慈雨」であった。
スマートフォンの場合、部品点数が質量共に多
く、また需要が携帯電話からの買い替えだけで
なく、追加購入(=買い増し)として引き出し
た点も大きい。
もっとも、最近になって、世界的にみて IT
関連財市場は変調を来たしてきている。主だっ
た国・地域の生産動向をみても、頭打ち傾向が
はっきりしている。図 5 でみるように、電子機
器の生産指数は、日韓台、米国および EU 何れ
の地域も、直近のピークから生産水準が頭打ち
第三は、新規 OS 効果によるパソコン(PC)
ないし低下している。
買い替え創出効果が薄れて久しいが、09 年 10
(図 5)各国の IT 関連の生産指数比較
月に発売が開始された Windows7 は好評で、PC
4
。本邦のパ
の買い替えを促進した (前掲図 4)
ソコン市場についてみれば、景気後退局面で見
140
送った企業の PC 更新投資が堅調に推移してい
120
るほか、景気対策の一環として、学校への PC
100
導入が進められたことで(いわゆるスクール・
ニューディール政策)、10 年は二桁を超える出
5
荷増が見込まれている 。
(リーマンショック以前の最大値=100)
80
60
40
日本
韓国
台湾
米国
EU
(注)1.白丸はリーマンショック後の最小値。黒三角はリーマン
ショック後の最大値。白ひし形は直近値。
2.各国の生産指数の分類は必ずしも同じものではない。
4
業界関係者によると、DRAM の用途別消費量
では、PC と PC 周辺機器の合計で 85%を超える。
5
IDC ジャパンが先日公表したクライアント PC
市場予測に関するニュースリリースによると、10
年の国内 PC 出荷台数は前年比 12.4%増となり、
調査開始以来初の 1,500 万台を超えることが見込
まれている(09 年は 5.7%減)。
(資料)CEIC Data Company Ltd.
(1)自動車
こうした変調の背後にある需要動向を整理
すると、各国の異例の耐久財購買刺激策は順次
打ち切りに向かっており、足もとでは、需要“先
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-4-
経済百葉箱 2010.11.5
日本経済研究センター
喰い”の反動減に直面している。自動車の販売
(図 6)中国での IT 関連製品の生産
台数をみると、いち早く補助政策を打ち切った
欧州で販売減が続いている。中でも、ドイツで
は駆け込み需要とその後の落ち込みが大きい。
(前年比%)
200
150
中国についても、支援対象車種の絞込みを進め
る過程で、増加テンポが縮小した。わが国では、
100
補助金政策が打ち切られたことで、8 月には著
50
増した後、9-10 月には反動減が見られている。
0
表 3 自動車販売台数
-50
10/09
07/01 07/07 08/01 08/07 09/01 09/07 10/01 10/07
(資料)CEIC Data Company Ltd.
(月次)
(原計数前年比%)
08 年
09 年
10 年
09/4Q
10/1Q
2Q
3Q
6月
7月
8月
9月
10 月
日本
▲5.2
▲5.7
27.3
35.0
40.8
28.1
15.3
21.0
15.5
49.0
▲5.4
▲28.8
EU27
▲11.0
1.9
▲4.3
17.9
9.2
▲7.8
▲13.7
▲ 6.9
▲18.6
▲12.9
▲ 9.6
n.a.
うち
独
▲1.8
23.2
▲27.5
13.6
▲22.8
▲33.0
▲25.0
▲32.3
▲30.2
▲27.0
▲17.8
n.a.
≈
コンピューター
半導体集積回路
カラーテレビ
中国
7.1
52.9
36.9
87.5
77.1
26.2
17.4
19.5
13.6
18.7
19.3
n.a.
(図 7)液晶パネル価格
500
(ドル/枚)
32型
37型
42型
450
400
350
300
250
200
150
08/02
09/02
10/02
(注)液晶パネル価格は、国内大口需要家向けを使用。
(資料)日本経済新聞社
10/10
(週次)
(注)10 年は 1-9 月。日本は除く軽自動車ベース。
これを受けてか、中国と最も密接な結びつき
( 資 料 ) ACEA ( Association des Constructeurs
Européens d’Automobiles)、日本自動車販売協会連
合会、CEIC
がある台湾の電子製品受注でもブレーキが掛
自動車は年々、電子部品の搭載点数が増加し
IT 関連財市場では、グローバルに在庫調整局
ている。このため、自動車の生産調整は電子部
かってきた(図 8)。こうした動きをみる限り、
面を迎えていることは、ほぼ間違いない。
品・デバイス業界にも一定の影響が及ぶことに
(図 8)台湾の電子製品海外受注高
なる。
3,000
(2)家電
中国では、家電・通信機器などの分野で生産
2,500
の増加テンポが幾分鈍化している。例えば、カ
2,000
ラーTV は、7 月に 18 ヵ月振りで前年の生産水
1,500
準を割り込んだ(図 6)。これには、農村部で
1,000
の普及策の条件を一部厳格化するといった施
500
策に伴い、需要が幾分抑えられたことなどが影
響している。加えて、需要の拡大を当て込んで
の過度な増産による在庫積み上がりも影響し
(季調値、100万ドル)
米国
中国(香港含む)
欧州
日本
0
00/01
02/01
04/01
(資料)CEIC Data Company Ltd.
(月次)
06/01
08/01
10/09
10/01
ている。TV に関係の深い液晶パネルの価格も、
ここにきて再び軟化傾向にある(図 7)。
http://www.jcer.or.jp/
-5-
経済百葉箱 2010.11.5
日本経済研究センター
(3)パソコン、携帯電話市場
(図 9)最近の DRAM 市況
6
パソコンの世界販売動向についてみると 、
10/3Q は、引き続き前年比 2 桁増とはなったも
3.5
(ドル/個)
のの、米国での新学期需要が低調に推移したこ
3.0
とを主因に、事前予想を 3%程度下振れた。た
だ、企業の更新需要が下支えする市場構造は続
2.5
いている。
小口1G(DDR3型)
2.0
携帯電話市場についてみると、引き続きスマ
ートフォンへの需要拡大を主因に、堅調な伸び
1.5
09/08
09/12
(資料)日本経済新聞社
が続いている。徐々にスマートフォンは通信手
段の中核としての認知が拡がっており、暫くの
間、拡大が続くとの見方が多い。
表4
パソコン
▲ 5.8
14.4
15.2
15.6
17.3
10.8
10/03
10/06
10/10
【 わが国 IT 関連業種の現状 】
PC、携帯の世界市場動向
09 年
10 年
09/4Q
10/1Q
2Q
3Q
(週次)
上記のようなグローバルレベルでの需要変
(前年比%)
調を受けて、本邦 IT 関連業界でも、在庫が顕
携帯電話
▲5.2
16.7
11.3
21.7
14.5
14.6
著に増加、生産調整局面入りしている(表 5)。
実現率および予測修正率はマイナスとなるな
ど、生産計画もこのところ下振れている(表 6)。
表5
IT 関連業種の生産動向
(季調済、前月比%、前期比%)
(注)10 年は 1-9 月。
10/1Q
2Q
3Q
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
(資料)IDC Press Release から筆者加工。
(4)DRAM 価格
この間、半導体メモリーの DRAM の取引価
格も夏場以降、ジリ安が続き、足もとでもなお
下落基調に歯止めが掛からない(図 9)。既述
のとおり、需要に一服感が窺われる中で、リー
マン・ショック以降、新規の設備投資を手控え
電気機械
10.9
1.4
1.6
0.2
▲0.6
3.5
▲2.6
▲0.7
1.0
情報通信
2.7
▲7.3
2.4
▲2.1
▲0.9
1.1
6.5
▲4.4
▲7.3
電デバ
8.4
▲0.6
▲4.7
▲4.2
▲0.2
▲0.3
▲5.0
▲4.6
4.6
てきた半導体メーカーの新規増産投資がここ
(注)10 月、11 月は予測指数。
にきて稼動し始め、歩留まりの向上もみられて
(資料)経済産業省『鉱工業指数』
(表 6 も同じ)
いる模様。その結果、供給圧力が増している。
表6
一方で、上述のように最終製品の需要は鈍化し
IT 関連業種の実現率、予測修正率
(単位:%)
ている。このため、DRAM の需給バランスが
崩れ、価格が下落基調を辿っている。
6
ここでの記述は、主に IDC が四半期毎に公表
するプレス・リリースや Bloomberg のアナリスト
分析によっている。
6月
7月
8月
9月
10 月
電気機械
A
B
▲2.3 ▲1.5
0.4 ▲2.3
▲2.2 ▲3.4
▲1.1 ▲1.0
▲2.9 ▲3.6
情報通信
A
B
2.4
0.0
▲0.1 ▲1.8
2.4 ▲1.6
0.6
5.8
▲2.9
2.3
電デバ
A
B
2.4
1.0
▲4.5
▲5.7
6.3
5.3
▲0.6
0.1
▲2.8 ▲10.3
(注)A は実現率、B は予測修正率を示す。
http://www.jcer.or.jp/
-6-
経済百葉箱 2010.11.5
日本経済研究センター
電子部品・デバイスに絞って在庫循環を確認
(1-1) 韓国・台湾の生産・出荷・在庫
すると(図 10)、この 7-9 月期に 45 度線を下
韓国・台湾の電デバの動向は、わが国に若干
から上に切っていることが確認される。すなわ
先行する傾向にある。そこで、両国の出荷・在
ち、出荷に比べ在庫積み上がりのペースが速い
庫バランスを確認する。韓国では、在庫の伸び
ことを示しており、「意図せざる」在庫積み上
率が出荷を上回る状況が続いている。ただ、03
がり局面に差し掛かっている。
年や 05 年の生産調整局面に比べれば、出荷の
この先 10-12 月にかけて、どのように進展す
伸びが引き続き堅調に推移している点で、直近
るか。出荷が大きく崩れなければ、現状の生産
の状況は異なる。また、8 月以降、需給が改善
調整で在庫が減少に向かう。この場合、在庫循
に向かいつつある点も、朗報である(図 11)。
環上は再び 45 度線の方向に向かい、軽度な在
台湾では、長く出荷超が続いてきたが、足も
庫調整で終える公算が大きくなる。逆に、出荷
とでは、出荷よりも在庫の伸びが大きくなって
が更に下振れれば、過去の経験値からみて、生
きている(同図)。受注生産が中心のため在庫
産調整が長引く可能性が強まる。これこそ、本
が積み上がりにくい台湾で、在庫が増加してい
稿の主題に相当する。何とも、予測が難しい業
ることは気懸かりではある。しかしながら、こ
界であることは既に指摘した。筆者らなりに、
れも現段階で深刻な状況には見えない。
幾つかの視点を提供したい。
(図 11)韓国、台湾の出荷在庫バランス
(図 10)電デバの在庫循環図
(出荷の前年比-在庫の前年比、%ポイント)
200
60
(在庫前年比%)
出荷
在庫
韓国(半導体)
100
10年7-9月期
40
0
20
-100
0
(月次)
-200
00/01
150
-20
-40
-60
-40
-20
0
20
40
60
80
(出荷前年比%)
100
(注)1.期間は02年1-3月期から10年7-9月期。
2.▲は、02年10-12月期から03年4-6月期、
■は04年10-12月期から05年7-9月期の踊り場を示す。
3.点線は45度線を表す。
(資料)経済産業省『鉱工業指数』
02/01
出荷
04/01
在庫
06/01
08/01
10/09
10/01
台湾(電子部品)
50
0
-50
(月次)
-100
00/01
【 グローバル IT 市場の点検 】
景気を見通す上で重要な IT 関連財市場を見
02/01
04/01
06/01
08/01
10/08
10/01
(資料)CEIC Data Company Ltd.
定めていく手法は、確立されているとは言えな
い。極端なことを言えば、コモディテイー市場
続いて、両国の出荷・在庫バランスと生産の
の先行きを予測することが難しいことと同様
関係を点検する。韓国では、出荷・在庫バラン
である。伝統的には、次のような 3 つ―韓国と
スが崩れつつある中でも、足もとの生産は底堅
台湾の IT 産業のフォロー、価格情報および直
く推移している(次頁図 12)。額面どおりに受
近の決算情報の活用―をフォローしつつ、業界
け取れば、企業が先行きの出荷に強気ないしは
予測やアナリスト分析などから総合的に判断
期待していることになる。一方、台湾では出
することが多い。この場合、どうしても判断は
荷・在庫バランスに沿って、生産調整が行われ
遅れがちとなる。
ている(同図)。楽観視は許さないが、過剰な
在庫調整へ陥るリスクは低いとも言える。
http://www.jcer.or.jp/
-7-
経済百葉箱 2010.11.5
日本経済研究センター
(図 12)韓台の出荷在庫バランスと生産動向
(1-2)米国の出荷・在庫
(出荷の前年比-在庫の前年比、%ポイント)
200
参考までに、米国の IT 関連財の動向を確認
出荷・在庫バランス改善
しておこう。コンピュータ製品については、幾
100
分出荷の勢いに翳りが見えるが、在庫とのバラ
ンスでみて、とくに問題視する局面ではない
0
(図 14)。出荷状況を前期比で確認しても、川
-100
上の半導体や電子部品、川下のコンピュータ製
韓国(出荷・在庫バランス、半導体)
(月次)
韓国(生産指数、半導体)
-200
00/01
150
02/01
04/01
06/01
08/01
品の何れも、底堅く推移している(図 15)。
10/01
10/09
(図 14)コンピュータ製品の在庫循環図
出荷・在庫バランス改善
100
40
50
30
0
20
-50
-100
02/01
04/01
06/01
(月次)
08/01
10年7-9月期
10
台湾(出荷・在庫バランス、電子部品)
台湾(生産指数、電子部品)
-150
00/01
(在庫前年比%)
0
10/09
10/01
-10
(資料)CEIC Data Company Ltd.
-20
(四半期)
-30
-30
-20
(資料)FRB
図 13 では、韓台の出荷・在庫バランスとわ
-10
0
10
20
(出荷前年比%)
が国生産動向との関係を整理している。確かに、
わが国生産は、数四半期遅行しつつ似通った動
きを示す。当面、生産調整は避け難いようには
(図 15)米国 IT 関連財の出荷
映る。韓国の需給バランス悪化に歯止めが掛か
っている中、その持続性に注目が集まる
15
10
(図 13)韓台の出荷・在庫バランスと日本の生産
(季調済前期比、%)
リーマン・
ショック
ドットコム・
バブル崩壊
(出荷の前年比-在庫の前年比、%)
10
0
0
-10
-10
(前年比%)
100
出荷・在庫バランス改善
電子部品
コンピュータ製品
半導体(右目盛)
-15
-20
-25
100
50
0
20
5
-5
200
30
-20
-30
-40
-50
98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10
(注)電子部品と半導体の直近3Qは7-8月平均。
(四半期)
(資料)FRB
(2)DRAM 価格
0
DRAM 価格からは、足もとの需給軟化の
-100
-50
韓国(半導体)
もっとも、採算ラインをなお超えており、かな
台湾(電子部品)
りのピッチで下落した従来の調整時期と比べ
日本(電デバ生産、右目盛)
-200
99/01
-100
02/01
05/01
(資料)経済産業省『鉱工業指数』
CEIC Data Company Ltd.
シグナルが読み取れる(前掲図 9、次頁図 16)。
08/01
10/09
て、大きな変調を来たしているとまでは言えな
い。これまた、楽観は許さないが、過去の生産・
(月次)
在庫調整局面と類似してはいても、幾分、様相
が異なるようにも見える。
http://www.jcer.or.jp/
-8-
経済百葉箱 2010.11.5
日本経済研究センター
(図 16)「踊り場」局面と DRAM 価格
(ドル/個)
(図 17)米国 IT 企業の営業損益
(季調値、2005年=100)
8.0
(億ドル)
210
160
鉱工業指数(日本) 電子部品・デバイス工業(右目盛)
DRAM 256M
6.0
DRAM 16M
140
170
DRAM 128M
アップル
インテル
IBM
TI
120
100
DRAM 1G
4.0
130
2.0
90
80
60
40
DRAM 512M
20
0.0
50
10/10
98/01
00/01
02/01
04/01
06/01
08/01
10/01
(注)鉱工業指数は10年9月まで。DRAM価格は香港市場の取引価格。 (月次)
(資料)経済産業省『鉱工業指数』、日本経済新聞社
0
05:3
06:3
(資料)Bloomberg
07:3
08:3
09:3
10:3
(四半期)
(3)直近の主要企業の見通し
直近の米国 IT 企業の 7-9 月期決算を確認し
ておこう。「勝ち組」筆頭のアップルは売上高
が四半期ベースで過去最高を記録し、前年同期
比で営業利益が 48%もの増益となった。マイ
クロソフトによると、個人の PC 市場に勢いは
ないものの、法人需要はなお堅調に推移してい
る。米国経済の情勢が、映し出されていると言
えよう。半導体メーカーではインテルが、売上
高が四半期ベースで過去最高を記録し、57%の
増益となった。テキサス・インスツルメンツ
(TI)も 59%の増益を記録するなど、全体と
【需要の地域、製品の拡がりが緩衝材に】
以上から総合的に判断すると、IT 関連財市
場は、ここにきて勢いに翳りがみられ、在庫増、
生産抑制というフェーズに差し掛かっている
ことは見て取れる。しかしながら、これまで繰
り返されてきた深い調整局面とは、幾分異なる
様相も垣間見える。
その背景には、IT 関連産業を取り巻く最終
需要の構造―新興国需要の昂進―に変化が生
じていることが考えられる。
(1) 新興国需要の昂進
して良好な決算となった(図 17)
韓台企業についてみると、まず韓国でサムス
先進国の PC 市場は、OS ソフトの更新時期
ンは半導体部門の利益が過去最高となった。も
に合わせ、5-6 年ごとの周期が繰り返されてき
っとも、TV 事業などでは、価格下落傾向を受
た。4 年毎に開催されるワールドカップやオリ
け、収益が悪化してきている。半導体メモリー
ンピックといったイベントも、PC のほかビデ
世界 2 位のハイニックス電子でも、過去最高益
オカメラや薄型 TV など家電製品の販売を後
を記録した。台湾では世界最大の半導体受託生
押しした。これら周期の前後で、どうしても需
産会社である TSMC が過去最高益を達成、同 2
要に大きな振幅が生じ、これがシリコンサイク
位の UMC は出荷量で過去最高を更新した。な
ルの一要因となってきた。既に普及率が高く、
お、韓台勢は、先行きについて先進国での緩慢
更新需要が中心の市場構造では、どうしてもこ
な景気回復や、DRAM、液晶パネルの価格下落
うしたシクリカルな動きを伴うことになる。
などを指摘し、これまでに比べ慎重な見方に傾
いている。
もっとも、最近では、最終製品への需要は中
国をはじめとする新興国がけん引している。こ
れらの国々では、製品市場が普及段階にあるた
め、先進国でみられるような買い替えサイクル
に伴う需要の振幅は小さい。新興国においては、
高成長が続く下で、中間所得層が着実に増えて
いる。また、技術革新を通じた製品価格の低下、
通信技術の進歩に伴い、PC およびインターネ
http://www.jcer.or.jp/
-9-
経済百葉箱 2010.11.5
日本経済研究センター
ット利用の需要は大きく拡大している(図 18、
せている。その拠り所としては、地域的な需要
19)。こうした新興国需要は、先進国中心の市
や最終製品の拡がりを指摘した。ただ、これと
場構造の下でのシリコンサイクルを均す役割
て説得的なものではなく、予断を持たずに月々
が期待される。
のデータをみていく必要があろう。
その上で、仮に IT 財市場が拡大を続けるに
(図 18)日米中のパソコン需要
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
しても、本邦メーカーが海外勢との競争に負け
(2005年=100)
るというダウンサイドリスクは残る。最後に、
この点に言及しておく。
中国市場での電気機械のシェアは、近年、韓
国や台湾に喰われている(図 20)。確かに、韓
日本
米国
中国
国の対中輸出は、目覚ましい(図 21)。
(暦年)
(図 20)電気機械の中国向け輸出シェア
98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10
(注)2010年は、日本・米国は9月まで、中国は8月までを暦年換算。
(資料)JEITA、CEIC Data Company Ltd.
100
台湾
80
60
(図 19)中国の耐久消費財保有数(都市部)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
(100世帯あたりの保有数)
(同左)
コンピュータ
携帯電話(右目盛)
99:1
01:1
(資料)CEIC Data
03:1
05:1
07:1
日本
40
20
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
韓国
0
95
00
05
08
(注)10年は1-9月合計で試算。
(資料)CEIC Data Company Ltd.
09
10
(暦年)
(図 21)韓国の電子部品輸出先
09:1 10:3
2,500
(四半期)
2,000
(2) 製品需要の拡がり
(季調値、100万ドル)
中国
台湾
米国
日本
1,500
かつては PC、さらには携帯電話市場に依存し
ていた IT 業界の裾野は着実に拡がっている。
1,000
500
一つには自動車市場が挙げられる。スマートフ
ォンやタブレット端末といった、新たな最終製
0
00/01
02/01
04/01
06/01
(資料)CEIC Data Company Ltd.
品も登場し、消費者の支持を受けている。IDC
08/01
10/01
10/09
(月次)
では、2010 年のタブレット出荷台数が 760 万
台に達し、2014 年にはさらに 4,600 万台規模以
上にまで成長するという予測を発表している。
円高が日本企業に強烈な向かい風ともなっ
ているのは、事実であろう(次頁図 22)。とく
に、DRMA などでは、製品自体の差別化が難
【 地盤沈下の目立つわが国 IT 業界】
以上のように、足もとの IT 関連財市場の生
産調整は当面、続くにしても、過去の局面に比
べ軽微に止まるのではないかとの期待を持た
しく、わが国が値段競争で不利に立たされるこ
とは否めない。しかしながら、価格競争力だけ
ではなく、スマートフォンに代表される新分野
への参入でも、海外勢に遅れを取っている(図
http://www.jcer.or.jp/
- 10 -
経済百葉箱 2010.11.5
日本経済研究センター
23)。スマートフォンや米アップルの多機能携
たように、この業界だけは「足が速く」、実勢
帯端末「iPad」で使われる中小型液晶パネル市
を掴むことが難しい。因みに、白川総裁の直近
場は、韓国・台湾メーカーに追い上げられ、国
の記者会見でも、過度な悲観的見方を否定して
7
9
内メーカーの工場の閉鎖が続いている 。
いる 。今回示したロジック―新興国需要と製
品需要の拡がり―は、立場の違うエコノミスト
(図 22)対ドル、対ウォンレート
1600
1500
ドル/ウォン
1400
からみれば、
「最も陥りやすい間違いロジック」
(ドル/円)
(ドル/ウォン)
ドル/円(右目盛)
160
なのかもしれない。景気が微妙な時期に差し掛
150
かっているだけに、この分野については、下振
140
れリスクを注視していく必要があろう。
1300
130
1200
120
1100
110
を持って、グローバル競争に勝ち抜いていくの
1000
100
か。本稿の分析範囲を超えたテーマではあるが、
900
90
技術力に磨きをかけること、総合戦略から「選
800
00/01
02/01
(資料)bloomberg
80
択と集中」を進めること、消費者ニーズを的確
04/01
06/01
08/01
IT 関連産業が中期的にどのような経営戦略
10/10
10/01
(日次)
にキャッチするないし、消費者需要を自ら引き
出すことなどが求められているのであろう。ま
た、価格競争に陥ることなく、製品差別化を進
(図 23)スマートフォンの国内出荷台数シェア
ソニー・エリクソン
4.3%
める戦略も有効であろう。
(鹿庭雄介、研究生、住友信託銀行より出向)
サムスン(韓)
1.3%
(片平幸伸、研究生、大同生命保険より出向)
RIM(加)
4.3%
東芝
6.8%
<BOX:IT の先行きを株価に聞いてみる>
HTC(台湾)
11.1%
IT 分野の先行きを理屈で予測しようという
のが、本文でのアプローチであった。もっとも、
過去からの“伝統技術”の予測力は、この分野
アップル(米)
72.2%
ではさほど高くない。そこで、市場の期待や予
(資料)(株) MM総研 [ 東京・港 ]
測が集約される株価に聞いてみようという発
【 終わりに 】
想を試してみた。具体的には、わが国の電子部
当センターの短期予測班では、3 月の時点で
市場での「踊り場」懸念に懐疑的な見方を示す
品・デバイスの生産動向と似通った動きをする
株価をあれこれ調べてみた。
8
まず、台湾の代表的な株価指数である台湾加
ペーパーを作成した 。半年が経過し、IT 関連
財市場は、その当時の見立てよりは、落ち込み
権指数をみると、電デバの生産に若干先行性を
が大きい。その意味で、本稿で示した分析にも
有しているように見える(次頁図 24)。これは、
大いなる不確実性を孕んでいる。冒頭にも記し
全くの偶然だろうか。台湾は電子部品関連産業
7
9
東芝モバイルディスプレイはシンガポール工
場を台湾企業に売却、国内でも姫路工場で 2 ライ
ンを閉鎖している。また、シャープは三重県と奈
良県の不採算ラインの一部を閉鎖、セイコーエプ
ソンも来年 3 月に鳥取工場を閉鎖する様子。
8
経済百葉箱第 28 号「日本経済、
『踊り場』入り
回避の理由-良好な輸出環境、世界的な IT 分野
の堅調持続がピンチを救う」を参照下さい。
(景気見通しの下方修正の要因の 1 つは)
「今
年の春から夏に掛けて大きく増加した情報関連
財について、在庫調整の動きが生じていることで
す。この情報関連財の在庫調整については、いく
つかのデータに即して点検してみますと、大きな
影響を今後ももたらすとは思っていませんが、足
もとの下方修正の要因の 1 つになっていると思
います」と述べている。
http://www.jcer.or.jp/
- 11 -
経済百葉箱 2010.11.5
日本経済研究センター
のシェアが高く、かつ受託生産を中心としてい
るため、株価が電子部品需給の微妙な変化を先
取りしているのかもしれない。現状、加権指数
の動きから、電デバ生産がどんどん低下してい
くようには見えない。
(図 24)台湾加権指数と電デバ(生産)
180
160
(2005年1月=100)
台湾加権指数
電デバ
140
120
100
80
(月次)
60
05/01
06/01
07/01
08/01
09/01
(資料)経済産業省『鉱工業指数』、Bloomberg
10/0110/10
続いて、個別銘柄では、日本電産の株価と並
べてみたところ、最近になって一致性が見えな
くもない(図 25)。ただの偶然なのか、錯覚な
のか。読者からのご意見・ご批判があれば、お
寄せ下さい。
(図 25)日本電産の株価と電デバ(生産)
250
200
(1999年10月=100)
日電産
電デバ
150
100
50
(月次)
0
99/10
01/10
03/10
05/10
07/10
(資料)経済産業省『鉱工業指数』、QUICK
10/10
09/10
http://www.jcer.or.jp/
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