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胆嚢捻転症
症 例 呈 示 『胆 嚢 捻 転 症』 社会医療法人財団 白十字会 白十字病院 臨床検査技術部 政所 久美子 症例:79歳、女性 病歴:2016.10.8から腹痛あり 10.12 症状消失しない為前医受診 右季肋部~下腹部の緊満、圧痛あり、 炎症反応上昇を認める. CTにて結石を伴う胆嚢炎を認めた為、 手術目的にて紹介受診. 胆嚢ドレナージを予定されていたが、超音波 検査にて捻転を疑った為、ドレナージは中止 となり、翌日手術する事となった。 理学的所見:右季肋部~右下腹部にかけて膨満、 その部位に熱感と圧痛あり、発熱なし 検査データ 項目 TP ALB BUN CRE Na K Cl 血糖 AST(GOT) ALT(GPT) LDH T-Bil D-Bil ALP γGTP CHE T-CHO AMY 結果値 単位 7.4 g/dL 3.4 g/dL 73.5 mg/dL 1.16 mg/dL 135 mEq/L 3.9 mEq/L 96 mEq/L 105 mg/dL 28 IU/dL 18 IU/dL 335 IU/dL 3.5 mg/dL 1.1 mg/dL 185 IU/dL 7 IU/dL 151 IU/L 148 mg/dL 47 mg/dL 項目 WBC RBC Hb Ht MCV MCH MCHC Plt Neut Lym Mono Eosin Baso 結果値 単位 15.43 ×10³/μL 3.30 ×10³/μL 10.8 g/dL 31.7 % 96.1 fL 32.7 pg 34.1 g/dL 19.0 ×103/μL 85.5 % 5.9 % 8.2 % 0.2 % 0.2 % CRP 16.29 mg/dL PT(%) PT(INR) APTT 100.8 % 1.00 48.9 秒 超音波 画像 超音波 画像 超音波 画像 超音波 画像 ドプラ 超音波 所見 胆嚢:サイズ13.3×4.5㎝と腫大を認め、右下腹部付近まで 観察されます。 胆嚢壁は14㎜と肥厚を認め、内部に低エコー域が見られ ます。 胆嚢動脈の血流は全く観察されません。圧痛を認めます。 内腔に明らかな結石や胆泥は認められません。 エコー上、急性胆嚢炎が疑われます。 頸部が同心円状に観察され、胆嚢動脈の血流が全く 観察されない為、エコー上では、捻転による無石胆嚢炎を 疑いますが、他の検査ではいかがでしょうか? 総胆管:左側臥位にてφ22㎜、右側臥位にてφ9㎜と変化します。 CT 単純 C T 造影 C T 3D CT所見 • 胆嚢の拡張著明です。総胆管、主膵管の拡張も見ら れます。 • 肝内胆管の拡張の度合いと乖離が見られるようで、元 来総胆管嚢腫等あるかもしれませんが、乳頭部腫瘍の 除外望まれます。(CT上腫瘍としての認識は困難で す) • 胆嚢内に結石/胆泥示唆される高吸収域見られます。 • 胆嚢壁の肥厚はさほど見られない様です。 • 周囲の浮腫性変化や腹水は見られません。 MRCP MRI 所見 • 胆嚢拡張、胆嚢壁の顕著な肥厚を認めます。 肥厚した壁が、T1で高信号を呈しています。 • 胆嚢壁の造影効果は皆無 • USで捻転を疑われている事を考えると、捻転に よる虚血→壁内出血がおきたと考えられます。 • 拡張胆嚢とそれ以外の乖離を有意とすべきで、 遊離胆嚢であることから、やはり捻転を疑います。 (捻転部の様子は判然としませんが…) 術中 写真 術中 写真 手術所見 • 腹腔鏡的胆嚢摘出術予定 →右下腹部は腹壁と大網の癒着が高度であり、 腹腔内操作は困難と判断し、開腹に移行した。 肋骨弓下に約15㎝の皮切を置き開腹した。 胆嚢は壁が黒茶色に変色し、壁は菲薄化していた。 胆嚢は大網と疎に癒着していた。鈍的に胆嚢周囲を 剥離した。胆嚢は胆嚢床との癒着がほぼなかった。 胆嚢頸部は360度反時計回りに捻じれており、 胆嚢捻転症と診断した。 割面 病理所見 胆嚢管付近には既存の壁構造が僅かに見られますが、 胆嚢頸部~底部の全体でびまん性の強い出血と凝固壊死 により、壁構造が消失orGhost化しています。 漿膜面には厚く膜状に多量のフィブリン析出と高度の好中 球浸潤がみられます。 捻転による急性出血性梗塞として矛盾はしません。 悪性所見はありません。 追加のスライド 急性胆嚢炎の重症度判定基準 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2013より 重 症:①黄疸:ビリルビン >5mg/dL ②重篤な局所合併症:胆汁性腹膜炎、胆嚢周囲膿瘍、肝膿瘍 ③胆嚢捻転症、気腫性、壊疽性、化膿性 中等症:①高度の炎症反応 (白血球 >14000/㎜3またはCRP>10mg/dL) ②胆嚢周囲液体貯留 ③胆嚢壁の高度炎症変化:胆嚢壁不整像、高度の胆嚢壁肥厚 軽 症:重症、中等症の基準を満たさないもの 追加のスライド 急性胆嚢炎の診療指針 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2013より ①急性胆嚢炎では、原則として胆嚢摘出術を前提とした 初期治療(全身状態の改善)を行う ②黄疸例や全身状態の不良な症例では一時的なドレナージも考慮する ③重篤な局所合併症(胆汁性腹膜炎、胆嚢周囲膿瘍、肝膿瘍)を 伴った症例、あるいは胆嚢捻転症、気腫性胆嚢炎、壊疽性胆嚢炎、 化膿性胆嚢炎では、全身状態の管理を十分にしつつ緊急手術を行う ④中等症では初期治療とともに迅速手術(腹腔鏡下胆嚢摘出術が 望ましい)や胆嚢ドレナージの適応を検討する ⑤軽症でも初期治療に反応しない例では手術(腹腔鏡下胆嚢摘出術が 望ましい)や胆嚢ドレナージの適応を検討する