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電力ケーブルの現場劣化診断のための部分放電 測定の階層化手法の提案

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電力ケーブルの現場劣化診断のための部分放電 測定の階層化手法の提案
電力中央研究所報告
電 力 輸 送
電力ケーブルの現場劣化診断のための部分放電
測定の階層化手法の提案
キーワード:部分放電,劣化診断,電力ケーブル,位置標定
背
報告書番号:H14017
景
電力ケーブルの高経年化が進行する中,その寿命を最大限活用するために部分放電
(PD)(注 1)の検出による劣化診断が着目されている。近年,種々の PD 測定装置が商用化
されているが,測定周波数の選定,ノイズ識別,センサの選定や取付などの技術的課題
や操作の煩雑さがその導入・展開を妨げている。一方,当所は従来から電力各社のケー
ブル終端接続箱等を対象に PD 測定を行い,ノウハウを得てきた。今回これを整理し,
診断精度と作業容易性,作業量のバランスの取れた PD 測定法を確立する見通しを得た。
目
的
これまで当所が現場測定で得たノウハウを基に,電力ケーブルに対する PD 測定を系
統立てて階層化することで,全体的な測定作業量を低減させつつ測定信頼性を確保でき
る現場測定技術と劣化診断法を提案する。
主な成果
PD 測定の内容,精度,作業量,機材コスト等を検討した上で,劣化診断手法を以下
に示す 3 段階に階層化し,具体的な手法や検討課題を整理した。
1. 第 1 段階測定(概略測定)による診断
PD 発生可能性の確認を目的とするものである。設備巡視員による測定も想定し,ク
ランプ式高周波 CT(注 2)とデジタルオシロスコープでの測定とした(注 3) (図 1)。当所によ
る OF ケーブル接続箱等への測定で,8~9 割が本段階に相当する測定で PD 発生が無い
と判断できることを確認した。
2. 第 2 段階測定(信号源探査測定)による診断
測定された信号の発生源が接続箱等の内部にあることの確認を目的とするものであ
る。複数のアンテナでの信号測定等による信号源標定法の適用性を,現場測定や撤去接
続箱の PD 試験等を通して検証した(図 2)。
3. 第 3 段階測定(劣化測定)による診断
接続箱等の劣化状況の判定と寿命予測を目的とするものである。本段階の確立には,
劣化メカニズムの解明や,PD の開始から絶縁破壊までの期間や PD 特性の推移の把握が
必要である。当所では OF ケーブルや CV ケーブル接続箱を対象にモデルで実験を進め
ており(OF ケーブルを模擬した油浸紙積層絶縁系での例:図 3[1]),今後一層の検討を進
める。
注 1: PD は絶縁破壊の前兆現象である局所的な電離現象である。微小なパルス性の電流や振動を発生さ
せることから,これに起因するパルス性電流や電磁波,超音波などの各種現象を検出対象とするこ
とで PD の発生が確認できる。
注 2: ケーブル接続箱の接地線を取り外す等の電気回路に対する作業が不要で,PD によるパルス性電流信
号を確度高く測定できる手法。当所では主に,穴径 31mm,周波数帯域 120kHz~600MHz のものを
使用しており,実験室レベルでは数 pC の感度が得られる。
注 3: パソコンでの制御により,デジタルオシロスコープの設定などの技術は不要とできる。
3,000 ケーブル終端
接地線
試 料:油 浸 紙 積 層 絶 縁
系 (125µm 厚 の 絶 縁
紙を 8 枚積層,うち
3 枚に貫通孔あり)
部分放電
部分放電 電荷量 [pC]
2,000 部分放電センサ
(高周波CT)
印加電圧波形
1,000 0 0
90
180
270
印加電圧ゼロクロス付
近にてパルス性の信号
が発生している。
→ ボ イ ド 性 の PD と 判
定可能。
360
‐1,000 ‐2,000 ‐3,000 位相[°]
(a) OF ケーブル終端部での
高周波 CT の設置状況
(b) モデル電極での
測定結果例
図1
高周波 CT の設置状況と測定結果例
アンテナ1
パルス性電磁波の
発生源
実測例
オシロスコープのch1へ
mV
60
40
20
0
-20
-40
アンテナ4
電磁波の放射・伝搬
オシロスコープのch4へ
アンテナ1
mV
20
0
-20
-40
-60
アンテナ2
mV
40
0
-20
-40
オシロスコープのch3へ
オシロスコープのch2へ
20
アンテナ2
アンテナ3
アンテナ3
-10
-5
0
5
10
15
図2
ns
信号源からの電磁波
をアンテナによりサブ
ナ ノ 秒 オ ー ダ で 測 定
し ,到 達 時 間 差 法 で 信
号源を標定する。
信号源が測定対象部
位の外部にあると判定
で き れ ば ,そ の 信 号 は
絶 縁 劣 化 に 起 因 す る PD
で は な い と 判 定 で き
る。
.
20
複数のアンテナでの到達時間差法による信号源標定法のイメージ
60,000
12
正極性PDの発生頻度
50,000
10
40,000
8
30,000
6
20,000
4
10,000
0
最大放電電荷量(正極性PD)
0
48
96
144
192
240
288
336
384
80,000
16
70,000
14
60,000
12
発生頻度
50,000
10
40,000
8
30,000
6
最大放電電荷量
20,000
2
10,000
0
0
4
PD発生頻度[パルス/サイクル]
14
PD最大放電電荷量[pC]
16
70,000
PD発生頻度[パルス/サイクル]
PD最大放電電荷量[pC]
拡大
80,000
2
372
経過時間[時間]
374
376
0
経過時間[時間]
拡大
0.4
1
0.2
0.8
0.2
0.8
0
0.6
0
0.6
-0.2
0.4
-0.2
0.4
-0.4
0.2
-0.4
0.2
歪度(正極性PD)
-0.6
0
歪度(負極性PD)
-0.8
歪度(正極性PD)
0.6
1
歪度(負極性PD)
1.2
歪度(正極性PD)
-0.6
-0.2
-0.8
-1
-0.4
-1
-1.2
-0.6
-1.2
0
48
96
144
192
240
288
336
384
経過時間[時間]
図3
1.2
歪度(正極性PD)
0
歪度(負極性PD)
0.6
0.4
-0.2
歪度(負極性PD)
-0.4
372
374
376
-0.6
試料:油浸紙積層絶縁系
(125µm 厚 の 絶 縁 紙 を
8 枚積層,うち 3 枚に
貫通孔あり)
上 : 正 極 性 PD の 発 生 頻
度と最大放電電荷量
の推移
下 : 正 ・ 負 極 性 PD の 印
加電圧位相-放電電
荷 量 (φ-q パ タ ー ン )
に お け る 歪 度 (パ タ
ーンの中心軸に対す
る対称性を数値化し
たもの。)
絶縁破壊直前になると,
発生頻度や最大放電電
荷量が急増し,歪度が大
きく変化する。
→PD の 連 続 測 定 に よ り
この変化を検出可能。
経過時間[時間]
OF ケーブル絶縁体を模擬した油浸紙絶縁系での PD 特性の推移の一例
関連研究報告書
[1]岩下,他:「OF ケーブル油浸紙-絶縁油複合絶縁系の部分放電基礎特性」
,電力中央
研究所 研究報告 H13014 (2014)
研究担当者
髙橋 俊裕(電力技術研究所 高電圧・絶縁領域)
問い合わせ先
電力中央研究所 電力技術研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 046-856-2121(代) E-mail : [email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。
[非売品・無断転載を禁じる]
© 2015
CRIEPI
平成27年7月発行
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