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アンケートから読み解く海外事業展開動向~2011年度
国際協力銀行の広報誌 JBIC TODAY S P O T L I G H T January 〒100-8144 東京都千代田区大手町1丁目4番1号 JBIC TODAY(ジェービック トゥデ イ )2012 年 1月号 Vol.11 11 竣工式典の様子 2012 Vol. サウジアラビアで、 石化プラント用 鋳鋼製品工場が竣工 製造工場外観 クボタ 素形材事業部 素形材開発部、JBIC 産業ファイナンス部門 西日本オフィスに聞く 2011 年 11月16日、 サウジアラビア (東部州ダンマン市) で、 日本 企 業と現 地 企 業 の 合 弁 企 業であるKubota Saudi Arabia Company, LLC(以下 KSC) の製造工場の竣工 式が行われました。 この工場では石油化学プラントに欠かせ ない耐熱鋳鋼製のチューブが製造されており、工場の建設 に当たってJBIC は、民間金融機関との協調融資を行って います。工場は竣工式に先立つ 2011 年 2月に稼動を開始 し、 サウジアラビア国内のみならず、他の中東諸国や北アフ リカ、欧州向けの製品供給拠点としての役割が期待されて います。 の関係者が出席しました。JBIC の金森邦泰調査役は、 「日本の『も のづくり』拠点に対するサウジアラビア側の期待の大きさを感じまし た」 と振り返ります。 欧州や北アフリカ向けの生産拠点に ダンマン第 2 工業団地に建設されたこの工場では、原材料を溶 解する高周波炉、回転する円筒金型に溶湯(溶融させた金属) を流 してチューブをつくる遠心力鋳造設備、 さらに、内面加工、組立・溶 接設備などを備え、石油化学プラント用の反応管を一貫生産してい ます。 サウジアラビアへの日本の製造業企業の進出例は少なく、 「先行 事例として、他の日本企業からアドバイスを求められることもしばし Development Companyとの合 弁 企 業で、2009 年 12月、同 国 ば」 と富田課長は話します。2011 年 10月には品質マネジメントの 東部州ダンマン市に設立されました。 その後、石油化学プラント用の 国際規格 ISO9001を取得、今後も高品質部品製造を進めるほ 耐熱鋳鋼チューブ 「反応管」 の製造工場の建設が進められ、2011 か、中東のみならず、 この工場から欧州や北アフリカ向けへの製品 年 2月に生産を開始、以後順調に操業を続けています。 の輸出も具体的に進められています。 「石化プラントでは、1,000℃前後に加熱した反応管の中に原料 金森調査役は 「サウジアラビアは、 日本にとって最大の原油供 のナフサやエタンを通すことで熱分解を行い、 エチレンやプロピレン 給国であり、輸入原油の約 3 割を供給する重要なパートナー国で などを製造します。 このため反応管は、石化プラントには欠かせない す。JBICは、本件のように日本とサウジアラビア両国の経済関係の 重要な設備となっています」 と、 クボタ素形材事業部素形材開発部 深化・発展にも資す の富田雅之技術課長は説明します。 る形で、今後も日本 クボタは、 この反応管の分野で世界トップクラスのシェアを有して の産業の国際競争 います。 これまで日本(大阪府枚方市、三重県鳥羽市)、 カナダ、中 力 の 維 持・向 上 に 国に生産拠点を展開してきました。KSCは、豊富な原油、 ガス埋蔵 つながるビジネスを 量を背景に石油化学産業の成長が著しいサウジアラビアに生産拠 一層支援していきた 点を設立し、中東市場のみならず北アフリカや欧州市場にも販売す いと考えています」 と ることを目的に設立されました。 語っています。 一方、 サウジアラビアでは、豊富に産出される原料を背景に、石 クボタの富田課長(右) と金森調査役 KSC への融資 業を振興し、付加価値の高い製品づくりと雇用創出に力を注ぐサウ JBIC は、2010 年 3 月に、クボタとサウジアラビア王国法人 Tharawat の進んだ技術を学べる機会として、 このプロジェクトは期待を集めて Development Companyとの合弁企業Kubota Saudi Arabia Company, (クボタ51%、Tharawat Development Company LLC(以下KSC) 49%出資)に対し、1,020万ドル限度(JBIC融資分)の貸付契約に調印しまし います。 た。本融資は (株)三井住友銀行との協調融資です。 ジアラビア側にとっても、長期的な雇用促進につながるほか、 日本 2011 年 11月16日には現地で竣工式が行われ、 日本側関係者 やパートナー企業に加え、現地の州政府や取引先企業からも多数 本融資は、KSCが同国東部州ダンマン市に建設した石油化学プラント用チュ ーブの製造工場建設に必要な資金として利用されています。 表紙 万国旗(©PHOTO KISHIMOTO/amanaimages) 国際協力銀行では、 本誌を季刊で発行しています。 URL: http://www.jbic.go.jp 油化学工業の増強が強力に推進されています。石油化学関連産 2012年1月発行 KSCは、 (株) クボタとサウジアラビアの 投 資 会 社 Tharawat Tel. 03-5218-3100 国際協力銀行 企画・管理部門 国際経営企画部 報道課 サウジアラビア側からも寄せられる期待 2012 January 特集 特集 アンケートから読み解く 海外事業展開動向 エネルギー資源の安定確保 2011 年度 2 「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」 国民生活・経済活動を支えるために わが社の海外物語 わが社の海外物語 SpotlightSpotlight 電動小型車両を中国 部品メーカーから世界的 ・江蘇省で本格生産サウジアラ JBIC出資の ビアで、 石化プラント用 株式会社 筑水キャニコム(福岡県うきは市) メガネフレームメーカーへ 鋳鋼製品工場が竣工 シンガポールの発電会社 株式会社シャルマン (福井県鯖江市) Q H uarterly LNG プロジェクトの権益取得と LNG 輸入に貢献 グローバル規模で環境関連投資を支 援 円高対応緊急ファシリティの下、豪州と パプアニューギニアのプロジェクトを支援 JBIC は、2011 年 11 月 14 日、豪 州 の LNG 豪州のプロジェクトは九州電力が LNG プロ 2011.10 ∼ 2011.12 プロジェクトを対象として九州電力(株)の豪 計 画です。また、パプアニューギニアのプロ 国際協力銀行(JBIC)は、日本の 州 現 地 法 人と 4 億 42 万 8 , 000ドル 限 度 の ジェクトは、丸紅と JX 開発が LNG プロジェク ンド、バングラデシュ、ネパール、スリランカ) 資による地域開発金融機関) との間で、 ( 株) 政策金融機関である株式会社日 貸付契約を締結したほか、パプアニューギニ トの権益を一部取得するもので、生産される のクリーンエネルギー事業を投資対象とする みずほコーポレート銀行との協調融資による 本政策金融公庫の国際部門です。 アの LNG プロジェクトを対 象として、11 月 LNG の約 5 割が日本に供給される予定です。 「 South Asia Clean Energy Fund, L.P. 」 総額 1 億ドル( JBIC 融資分 6 , 000 万ドル)限 への出資契約書に調印しました。 ( 出資予定額 度の貸付契約を締結しました。民間金融機関 ジェクトの権益を取得するもので、同社は年間 調達量の約 2 割に相当する LNG を引き取る 中米統合銀行と地球環境保全に資する 貸付契約調印 JBIC は、2011 年 12 月 1 日、中 米 経 済 統 合銀行(中米諸国を中心とする 12 カ国の出 て、輸 出 金 融、輸 入 金 融、投 資 金 14 日に丸紅(株)と 1 億 7 , 199 万ドル、12 月 (JX 開 発)の 豪 9 日に JX 日 鉱 日 石 開 発(株) 州現地法人と 2 億 6,300 万ドルの貸付契約を 融、事業開発等金融、保証、 ブリッ 締結しました。いずれも民間金融機関との協 ジローン、 出資、調査などの業務を 調 融 資 で、JBIC 600 億 円(JBIC 融 資 分)の 貸 付 契 約に調 印 ける機器製造・サービス提供を含む)を投資 となり、日本の先進環境技術が中米諸国など 行っています。 の「円高対応緊急 しました。本融資は、民間金融機関との協調融 対象とするプライベート・エクイティ・ファンド に普及する一助となることも期待されます。 ファシリティ」の 資です。 で、地球環境保全業務(通称「 GREEN」)の下 JBIC は、これまで中米経済統合銀行に対 下で資源・エネル 東日本大震災と原子力発電所事故の影響 での初の出資案件です。 して、日本からの輸出や現地インフラ事業に 日本と国際経済社会の健全な発 展、国 民 生 活 の 向 上 を 使 命とし JBIC の主要業務 資源 海外における資源開 発、 取得の促進 nformation 2011.10 ∼ 2011.12 南アジアのクリーンエネルギー事業を対 象とするファンドへの出資を通じて地球 環境保全に貢献 JBIC は、2011 年 12 月 6 日、南アジア(イ ighlights I PNG LNG プロジェクトに随伴 ガスを供給するゴベ油田処理施設 (オイルサーチ社提供) LNG 輸入資金を融資 2,000 万ドル) の融資部分は JBIC が保証を供与します。 JBIC は、2011 年 11 月 22 日、九 州 電 力 当ファンドは、南アジアの再生可能エネル 本 資 金 は、中 米 諸 国 で の 再 生 可 能エネル (株) との 間 で LNG の 輸 入 資 金として 総 額 ギー事業、省エネ事業など (これらの分野にお ギーを対象とした環境関連事業への融資資金 ギーの確保・開発 で、電力の安定供給のために天然ガスの重要 当ファンドへの出資を通じて、温室効果ガス 対する融資を通じて緊密な協力関係を築い を 促 進 する案 件 性が増している中、本融資は LNG 調達支援を の削減に寄与し、地球環境の保全に貢献する てきました。本融資は両機関の連携を一層深 となります。 通じて日本の電力の安定供給に貢献します。 ことが期待されます。 めるものとなります。 動画「インフラ支援編」、 「環境ビ ジネス編」 を公開 JBIC の業務を動画でわかりやす く紹介する WEB コーナー「映像で 知 る JBIC」に、 「イ ン フ ラ 支 援 編」 「環境ビジネス編」を公開しました。 ぜひご覧ください。 「映像で知る JBIC」 http://www.jbic.go.jp/ja/about/video /index.html 海外ビジネス支援 日本の産業の国際 競争力の維持、向上 船舶輸出と海外事業展開を支援 投資促進、インフラ整備、 資源開発などの政策対話 環境 地 球 環 境 保 全 を目 的とする海外での事 業の促進 バイヤーズ・クレジットにより、大型クルー ズ客船の輸出を支援 JBIC は、2011 年 11 月 8 日、世界最大のク ルーズ客船会社の英国法人 Carnival plc、パ ナマ共 和 国 法 人 Carnival Corporation(総 日本の金融機関 3 行との間で M&A クレ ジットラインを設定 JBIC は 2011 年 10 月 5 日、 (株)三菱東京 銀 行、 (株) 三 井 住 友 銀 行、 (株)み ず ほ UFJ コーポレート銀行の各行との間で、M&A クレ メキシコで第 1 回政策対話年次会合開催 JBIC は、2011 年 11 月 29 日、メキシコシ 称「カ ー ニ バ ル 社」)と、船 舶 輸 出 バ イ ヤ ー ジットライン設定のための一般協定をそれぞ づく、日本企業のメキシコ向け投資などの促 インドネシアではインフラ開発の促進が喫 貿易・海外投資移動相談室 ズ・クレジットの 貸 付 契 約を 2 件 締 結しまし れ締 結しました。クレジットラインの 設 定 枠 進、金融支援などに関する初の年次会合で、 緊の課題となっていますが、2010 年 8 月の JBIC で は、貿 易・海 外 投 資 の た。いずれも(株)みずほコーポレート銀行な は、3 行の総額で 430 億ドル限度となります。 第 1 回 年 次 会 合 で の 意 見 交 換 以 降、日本 企 ナレッジ提供 どとの協調融資です。この資金は、三菱重工 このクレジットラインは、 「円 高 対 応 緊 急 JBIC 経営責任者の渡辺博史、メキシコ政府 のミード大蔵大臣など双方から約 20 名が出 業の投資および技術を組み込んだインドネ 国際金融の知見・ノ ウハウ、現地事情の 情報提供 業(株)長 崎 造 船 所が建 造する 12 万 5 , 000 ファシリティ」の一環として設定するものであ 席し、協議を行いました。 シア初 の 高 効 率 石 炭 火 力 発 電 所、中 小ガス 総トンの 大 型クル ーズ客 船 計 2 隻 の 購 入に り、2012 年 9 月末までの時限措置として、現 田開発などで具体的な進展がありました。 充てられます。 在の急激な円高の進行に対応し、日本企業に 今 回も、JBIC 経 営 責 任 者 の 渡 辺 博 史、イ 本融資は、他国造船所との厳しい競争環境 よる海外における M&A を促進することを目 ンドネシア政 府 のアグス財 務 大 臣など関 係 におかれている日本の造船業の国際競争力 的としています。JBIC は、本クレジットライン 者 約 50 名 が の維持・向上に寄与し、中堅・中小企業をはじ の下、海外での M&A に必要な日本企業の外 出 席し、協 力 め関 連 企 業 の 雇 用 貨資金を民間金融機関に対して迅速かつ機 関係の深化 を 含 め 地 域 経 済に 動的に供給することで、日本企業の海外での に向けて議 大 きな 役 割 を 果 た 事業拡大や新たな事業展開を支援し、日本の 論が行われ す 造 船 業 の 支 援に 産業の国際競争力の維持・向上につながるこ ました。 つながります。 とを企図しています。 国際金融社会への 貢献 国際金融秩序の混 乱への対処 JBIC の知的貢献 詳しい内容は JBIC WEB サイト をご覧ください。 www.jbic.go.jp/ja/special クルーズ客船(イメージ) 02 JBIC TODAY JANUARY 2012 ティーで、メキシコ政府と政策対話第 1 回年 インドネシアで 財 務 政 策 対 話 第 2 回 年 次会合開催 JBIC は、2011 年 10 月 24 日、ジャカルタ 次会合を開催しました。2011 年 2 月のメキシ で、インドネシア政府と財務政策対話第 2 回 コの大蔵省、貿易投資促進機関との合意に基 年次会合を開催しました。 第一回政策対話年次会合の様子(於メキシコ) スピーチを行う JBIC 経営責任者 渡辺 手 続きや、長 期 資 金 の 調 達 方 法 などに関する移動相談室を開催 しています。 ●盛 岡 ●東 京 ●仙 台 ●横浜 ●太田(群馬) ●名古屋 開催時期・場所につきましては JBIC WEB サイト http://www.jbic.go.jp/ja/ investment/consultation/index.html をご覧いただくか、 新技術・産業ファイナンス部 第 3 ユニット 電話:03 - 5218 - 3579 まで お問い合わせください。 JBIC TODAY JANUARY 2012 03 Q H uarterly LNG プロジェクトの権益取得と LNG 輸入に貢献 グローバル規模で環境関連投資を支 援 円高対応緊急ファシリティの下、豪州と パプアニューギニアのプロジェクトを支援 JBIC は、2011 年 11 月 14 日、豪 州 の LNG 豪州のプロジェクトは九州電力が LNG プロ 2011.10 ∼ 2011.12 プロジェクトを対象として九州電力(株)の豪 計 画です。また、パプアニューギニアのプロ 国際協力銀行(JBIC)は、日本の 州 現 地 法 人と 4 億 42 万 8 , 000ドル 限 度 の ジェクトは、丸紅と JX 開発が LNG プロジェク ンド、バングラデシュ、ネパール、スリランカ) 資による地域開発金融機関) との間で、 ( 株) 政策金融機関である株式会社日 貸付契約を締結したほか、パプアニューギニ トの権益を一部取得するもので、生産される のクリーンエネルギー事業を投資対象とする みずほコーポレート銀行との協調融資による 本政策金融公庫の国際部門です。 アの LNG プロジェクトを対 象として、11 月 LNG の約 5 割が日本に供給される予定です。 「 South Asia Clean Energy Fund, L.P. 」 総額 1 億ドル( JBIC 融資分 6 , 000 万ドル)限 への出資契約書に調印しました。 ( 出資予定額 度の貸付契約を締結しました。民間金融機関 ジェクトの権益を取得するもので、同社は年間 調達量の約 2 割に相当する LNG を引き取る 中米統合銀行と地球環境保全に資する 貸付契約調印 JBIC は、2011 年 12 月 1 日、中 米 経 済 統 合銀行(中米諸国を中心とする 12 カ国の出 て、輸 出 金 融、輸 入 金 融、投 資 金 14 日に丸紅(株)と 1 億 7 , 199 万ドル、12 月 (JX 開 発)の 豪 9 日に JX 日 鉱 日 石 開 発(株) 州現地法人と 2 億 6,300 万ドルの貸付契約を 融、事業開発等金融、保証、 ブリッ 締結しました。いずれも民間金融機関との協 ジローン、 出資、調査などの業務を 調 融 資 で、JBIC 600 億 円(JBIC 融 資 分)の 貸 付 契 約に調 印 ける機器製造・サービス提供を含む)を投資 となり、日本の先進環境技術が中米諸国など 行っています。 の「円高対応緊急 しました。本融資は、民間金融機関との協調融 対象とするプライベート・エクイティ・ファンド に普及する一助となることも期待されます。 ファシリティ」の 資です。 で、地球環境保全業務(通称「 GREEN」)の下 JBIC は、これまで中米経済統合銀行に対 下で資源・エネル 東日本大震災と原子力発電所事故の影響 での初の出資案件です。 して、日本からの輸出や現地インフラ事業に 日本と国際経済社会の健全な発 展、国 民 生 活 の 向 上 を 使 命とし JBIC の主要業務 資源 海外における資源開 発、 取得の促進 nformation 2011.10 ∼ 2011.12 南アジアのクリーンエネルギー事業を対 象とするファンドへの出資を通じて地球 環境保全に貢献 JBIC は、2011 年 12 月 6 日、南アジア(イ ighlights I PNG LNG プロジェクトに随伴 ガスを供給するゴベ油田処理施設 (オイルサーチ社提供) LNG 輸入資金を融資 2,000 万ドル) の融資部分は JBIC が保証を供与します。 JBIC は、2011 年 11 月 22 日、九 州 電 力 当ファンドは、南アジアの再生可能エネル 本 資 金 は、中 米 諸 国 で の 再 生 可 能エネル (株) との 間 で LNG の 輸 入 資 金として 総 額 ギー事業、省エネ事業など (これらの分野にお ギーを対象とした環境関連事業への融資資金 ギーの確保・開発 で、電力の安定供給のために天然ガスの重要 当ファンドへの出資を通じて、温室効果ガス 対する融資を通じて緊密な協力関係を築い を 促 進 する案 件 性が増している中、本融資は LNG 調達支援を の削減に寄与し、地球環境の保全に貢献する てきました。本融資は両機関の連携を一層深 となります。 通じて日本の電力の安定供給に貢献します。 ことが期待されます。 めるものとなります。 動画「インフラ支援編」、 「環境ビ ジネス編」 を公開 JBIC の業務を動画でわかりやす く紹介する WEB コーナー「映像で 知 る JBIC」に、 「イ ン フ ラ 支 援 編」 「環境ビジネス編」を公開しました。 ぜひご覧ください。 「映像で知る JBIC」 http://www.jbic.go.jp/ja/about/video /index.html 海外ビジネス支援 日本の産業の国際 競争力の維持、向上 船舶輸出と海外事業展開を支援 投資促進、インフラ整備、 資源開発などの政策対話 環境 地 球 環 境 保 全 を目 的とする海外での事 業の促進 バイヤーズ・クレジットにより、大型クルー ズ客船の輸出を支援 JBIC は、2011 年 11 月 8 日、世界最大のク ルーズ客船会社の英国法人 Carnival plc、パ ナマ共 和 国 法 人 Carnival Corporation(総 日本の金融機関 3 行との間で M&A クレ ジットラインを設定 JBIC は 2011 年 10 月 5 日、 (株)三菱東京 銀 行、 (株) 三 井 住 友 銀 行、 (株)み ず ほ UFJ コーポレート銀行の各行との間で、M&A クレ メキシコで第 1 回政策対話年次会合開催 JBIC は、2011 年 11 月 29 日、メキシコシ 称「カ ー ニ バ ル 社」)と、船 舶 輸 出 バ イ ヤ ー ジットライン設定のための一般協定をそれぞ づく、日本企業のメキシコ向け投資などの促 インドネシアではインフラ開発の促進が喫 貿易・海外投資移動相談室 ズ・クレジットの 貸 付 契 約を 2 件 締 結しまし れ締 結しました。クレジットラインの 設 定 枠 進、金融支援などに関する初の年次会合で、 緊の課題となっていますが、2010 年 8 月の JBIC で は、貿 易・海 外 投 資 の た。いずれも(株)みずほコーポレート銀行な は、3 行の総額で 430 億ドル限度となります。 第 1 回 年 次 会 合 で の 意 見 交 換 以 降、日本 企 ナレッジ提供 どとの協調融資です。この資金は、三菱重工 このクレジットラインは、 「円 高 対 応 緊 急 JBIC 経営責任者の渡辺博史、メキシコ政府 のミード大蔵大臣など双方から約 20 名が出 業の投資および技術を組み込んだインドネ 国際金融の知見・ノ ウハウ、現地事情の 情報提供 業(株)長 崎 造 船 所が建 造する 12 万 5 , 000 ファシリティ」の一環として設定するものであ 席し、協議を行いました。 シア初 の 高 効 率 石 炭 火 力 発 電 所、中 小ガス 総トンの 大 型クル ーズ客 船 計 2 隻 の 購 入に り、2012 年 9 月末までの時限措置として、現 田開発などで具体的な進展がありました。 充てられます。 在の急激な円高の進行に対応し、日本企業に 今 回も、JBIC 経 営 責 任 者 の 渡 辺 博 史、イ 本融資は、他国造船所との厳しい競争環境 よる海外における M&A を促進することを目 ンドネシア政 府 のアグス財 務 大 臣など関 係 におかれている日本の造船業の国際競争力 的としています。JBIC は、本クレジットライン 者 約 50 名 が の維持・向上に寄与し、中堅・中小企業をはじ の下、海外での M&A に必要な日本企業の外 出 席し、協 力 め関 連 企 業 の 雇 用 貨資金を民間金融機関に対して迅速かつ機 関係の深化 を 含 め 地 域 経 済に 動的に供給することで、日本企業の海外での に向けて議 大 きな 役 割 を 果 た 事業拡大や新たな事業展開を支援し、日本の 論が行われ す 造 船 業 の 支 援に 産業の国際競争力の維持・向上につながるこ ました。 つながります。 とを企図しています。 国際金融社会への 貢献 国際金融秩序の混 乱への対処 JBIC の知的貢献 詳しい内容は JBIC WEB サイト をご覧ください。 www.jbic.go.jp/ja/special クルーズ客船(イメージ) 02 JBIC TODAY JANUARY 2012 ティーで、メキシコ政府と政策対話第 1 回年 インドネシアで 財 務 政 策 対 話 第 2 回 年 次会合開催 JBIC は、2011 年 10 月 24 日、ジャカルタ 次会合を開催しました。2011 年 2 月のメキシ で、インドネシア政府と財務政策対話第 2 回 コの大蔵省、貿易投資促進機関との合意に基 年次会合を開催しました。 第一回政策対話年次会合の様子(於メキシコ) スピーチを行う JBIC 経営責任者 渡辺 手 続きや、長 期 資 金 の 調 達 方 法 などに関する移動相談室を開催 しています。 ●盛 岡 ●東 京 ●仙 台 ●横浜 ●太田(群馬) ●名古屋 開催時期・場所につきましては JBIC WEB サイト http://www.jbic.go.jp/ja/ investment/consultation/index.html をご覧いただくか、 新技術・産業ファイナンス部 第 3 ユニット 電話:03 - 5218 - 3579 まで お問い合わせください。 JBIC TODAY JANUARY 2012 03 特集 アンケートから読み解く 海外事業展開動向 ― 2011 年度「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」― 2011 年 12 月、国際協力銀行(JBIC) は、 「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告 −2011 年度 海外 直接投資アンケート結果−」 を公表しました。 この調査は、海外事業を行っている日本の製造業企業の海外事業展開の現 況や課題、今後の展望を把握する目的で 1989 年から実施しているもので、今回で 23 回目となります。 日本の製造業は、中堅・中小企業を含めて海外事業の強化を加速しており、海外市場の急速な成長を取り込むため、今 後も一段と海外事業の拡大傾向は続くと見込まれています。今回のアンケートの結果においても、海外事業を強化すると 回答した企業が過去最高の 87.2% となり、 日本企業の海外事業の強化姿勢が鮮明となりました。 また、2010 年度の海 外事業の実績に対する評価では、 タイ、 インドネシアをはじめ ASEAN 諸国などで事業が堅調に推移している状況が窺 え、事業展開先として企業が有望と考える国については、中国、 インドに続いてインドネシアなどの ASEAN 諸国や、 ブラ ジルなどの注目度が高まっています(注)。 このほか今回のアンケートでは、東日本大震災の影響と、 インフラの海外展開に 対する製造業企業の視点についてもアンケートを実施しました。 アンケートから窺える日本企業の海外事業展開の動向を、 さまざまな切り口で紹介します。 (注)今回の調査は、2011 年秋以降のタイの洪水被害拡大前に実施されており、洪水の影響は含まれていない点にご留意ください。 1. 成長機会獲得のために海外へ 業種別回答企業数 紙・パルプ・木材 1.0% 輸送機(自動車を除く)1.8% その他 8.6% 石油・ゴム製品 2.3% 鉄鋼 2.5% と自動車が 90%を超えて高い水準となりました。 また、精密 ● 回答企業全体 機械も前期比 16.4ポイント増の88.6%と全業種の中で最 海外事業の強化姿勢 アンケートでは、今後 3 年程度の中期的事業展開見通 電機・電子 17.1% 100% しを、国内事業と海外事業のそれぞれについて調査して 窯業・土石製品 2.7% (595) (611) (611) (594) (586) 1.0% 0.7% 2.0% 0.7% 0.2% 16.8% 20.1% 32.2% 16.5% 12.6% 80% 非鉄金属 3.0% います。今回の調査では、 回答企業のうち海外事業を 「強 金属製品 3.3% 繊維 5.1% 回答企業数 精密機械 6.0% 自動車 16.1% 603社 食料品 5.6% 化・拡大」すると回答した企業数は87.2% (前年比 4.4ポイ ント増) に上り、 アンケート開始以来の最高水準を記録しま 化学 15.9% 一般機械 9.0% ると回答しており、高い水準を示しています。一方、国内事 業見通しは、震災の影響もあり62.0%に当たる361 社が JBIC TODAY JANUARY 2012 しつつ、 さらなる成長機会獲得のために海外事業を強化 60% んどの業種で 「強化・拡大」姿勢を強めており、特に、化学 海外売上高・収益に対する高評価 る評価の高さも、今後の積極的な海外事業強化姿勢につ ながっています。 40% 82.2% 79.2% 65.8% 82.8% 87.2% 20% 0% 2010 年度の海外生産比率は33.3%(前年比 2.3ポイン ト増) 、海外売上高比率は34.7%(前年比 0.5ポイント増) 2007 年度 2008 年度 強化・拡大する 2009 年度 2010 年度 現状程度を維持する 2011 年度 縮小・撤退する する企業の姿勢が浮き彫りとなりました。 海外についての事業強化姿勢を業種別で見ると、 ほと も伸び率が高くなりました。 海外事業に関する直近の売上高・収益の実績に対す した。 中堅・中小企業においても78.5%が 「強化・拡大」す 「現状程度を維持する」 と回答しており、国内事業を維持 調査対象:原則として海外現地法人を3社以上 (うち生産拠点1社以上) 有する製造 業企業。 回答企業:2011年7月に977社に調査票を送付。10月までに603社(回答率 61.7%) が回答 (このうちの一部で、 企業訪問、電話ヒアリングを実施) 主な内容:「中期的事業展開見通し」 「海外事業展開実績評価」 「有望事業展開先 国」 「東日本大震災後のサプライチェーンについて」 「インフラの海外展開 について」 04 中期的(今後3年程度)海外事業 展開見通し で、 いずれも過去最高を記録し、2011 年度もさらに高まる ことが見込まれます。2010 年度の売上高・収益の実績に 対する満足度(5 段階評価した単純平均) を見ると、金融 危機の影響を受けた2008 年度の売上高 2.34、収益 2.28 (注1) 「海外事業」の定義:海外拠点での製造、販売、研究開発などの活動に加えて、各社が取り組む 生産の外部委託、調達などを含む。 (注2) 棒グラフの上の ( ) 内の数は、 「 中期的 (今後3年程度) な海外事業にかかる見通し」について 回答した企業数。 から、2010 年度はそれぞれ 2.85、2.75と順調に回復してい ます。中でもアジア諸 国における事 業 の 満 足 度 が 向 JBIC TODAY JANUARY 2012 05 特集 アンケートから読み解く 海外事業展開動向 ― 2011 年度「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」― 2011 年 12 月、国際協力銀行(JBIC) は、 「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告 −2011 年度 海外 直接投資アンケート結果−」 を公表しました。 この調査は、海外事業を行っている日本の製造業企業の海外事業展開の現 況や課題、今後の展望を把握する目的で 1989 年から実施しているもので、今回で 23 回目となります。 日本の製造業は、中堅・中小企業を含めて海外事業の強化を加速しており、海外市場の急速な成長を取り込むため、今 後も一段と海外事業の拡大傾向は続くと見込まれています。今回のアンケートの結果においても、海外事業を強化すると 回答した企業が過去最高の 87.2% となり、 日本企業の海外事業の強化姿勢が鮮明となりました。 また、2010 年度の海 外事業の実績に対する評価では、 タイ、 インドネシアをはじめ ASEAN 諸国などで事業が堅調に推移している状況が窺 え、事業展開先として企業が有望と考える国については、中国、 インドに続いてインドネシアなどの ASEAN 諸国や、 ブラ ジルなどの注目度が高まっています(注)。 このほか今回のアンケートでは、東日本大震災の影響と、 インフラの海外展開に 対する製造業企業の視点についてもアンケートを実施しました。 アンケートから窺える日本企業の海外事業展開の動向を、 さまざまな切り口で紹介します。 (注)今回の調査は、2011 年秋以降のタイの洪水被害拡大前に実施されており、洪水の影響は含まれていない点にご留意ください。 1. 成長機会獲得のために海外へ 業種別回答企業数 紙・パルプ・木材 1.0% 輸送機(自動車を除く)1.8% その他 8.6% 石油・ゴム製品 2.3% 鉄鋼 2.5% と自動車が 90%を超えて高い水準となりました。 また、精密 ● 回答企業全体 機械も前期比 16.4ポイント増の88.6%と全業種の中で最 海外事業の強化姿勢 アンケートでは、今後 3 年程度の中期的事業展開見通 電機・電子 17.1% 100% しを、国内事業と海外事業のそれぞれについて調査して 窯業・土石製品 2.7% (595) (611) (611) (594) (586) 1.0% 0.7% 2.0% 0.7% 0.2% 16.8% 20.1% 32.2% 16.5% 12.6% 80% 非鉄金属 3.0% います。今回の調査では、 回答企業のうち海外事業を 「強 金属製品 3.3% 繊維 5.1% 回答企業数 精密機械 6.0% 自動車 16.1% 603社 食料品 5.6% 化・拡大」すると回答した企業数は87.2% (前年比 4.4ポイ ント増) に上り、 アンケート開始以来の最高水準を記録しま 化学 15.9% 一般機械 9.0% ると回答しており、高い水準を示しています。一方、国内事 業見通しは、震災の影響もあり62.0%に当たる361 社が JBIC TODAY JANUARY 2012 しつつ、 さらなる成長機会獲得のために海外事業を強化 60% んどの業種で 「強化・拡大」姿勢を強めており、特に、化学 海外売上高・収益に対する高評価 る評価の高さも、今後の積極的な海外事業強化姿勢につ ながっています。 40% 82.2% 79.2% 65.8% 82.8% 87.2% 20% 0% 2010 年度の海外生産比率は33.3%(前年比 2.3ポイン ト増) 、海外売上高比率は34.7%(前年比 0.5ポイント増) 2007 年度 2008 年度 強化・拡大する 2009 年度 2010 年度 現状程度を維持する 2011 年度 縮小・撤退する する企業の姿勢が浮き彫りとなりました。 海外についての事業強化姿勢を業種別で見ると、 ほと も伸び率が高くなりました。 海外事業に関する直近の売上高・収益の実績に対す した。 中堅・中小企業においても78.5%が 「強化・拡大」す 「現状程度を維持する」 と回答しており、国内事業を維持 調査対象:原則として海外現地法人を3社以上 (うち生産拠点1社以上) 有する製造 業企業。 回答企業:2011年7月に977社に調査票を送付。10月までに603社(回答率 61.7%) が回答 (このうちの一部で、 企業訪問、電話ヒアリングを実施) 主な内容:「中期的事業展開見通し」 「海外事業展開実績評価」 「有望事業展開先 国」 「東日本大震災後のサプライチェーンについて」 「インフラの海外展開 について」 04 中期的(今後3年程度)海外事業 展開見通し で、 いずれも過去最高を記録し、2011 年度もさらに高まる ことが見込まれます。2010 年度の売上高・収益の実績に 対する満足度(5 段階評価した単純平均) を見ると、金融 危機の影響を受けた2008 年度の売上高 2.34、収益 2.28 (注1) 「海外事業」の定義:海外拠点での製造、販売、研究開発などの活動に加えて、各社が取り組む 生産の外部委託、調達などを含む。 (注2) 棒グラフの上の ( ) 内の数は、 「 中期的 (今後3年程度) な海外事業にかかる見通し」について 回答した企業数。 から、2010 年度はそれぞれ 2.85、2.75と順調に回復してい ます。中でもアジア諸 国における事 業 の 満 足 度 が 向 JBIC TODAY JANUARY 2012 05 特集 アンケートから読み解く海外事業展開動向 ― 2011年度「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」― 上しており、国・地域別では、 タイでの事業について 「やや したが、今回のアンケートではタイ、 インドネシア、 ブラジル す。 なお、 タイについては回答企業の半数近くが生産拠 国が 12 社と続き、以降はインドやブラジル、 タイなどの新興 満足」 「満足」 と回答した企業が約 4 割に達しています。 ま が躍進し、 これらの国々への企業の期待の大きさが窺え 点を有しており、2011 年秋以降の洪水被害拡大の悪影 国で計 43 社を占めており、 ここでも新興国で事業強化を た、 「日本より収益率が高い国・地域」 でも、 タイが 37.9%と る結果となりました。 響については引き続き注意が必要です。 図る企業の姿が目立っています。 中国の34.1%を抑えて1 位に挙げられ、3 位にインドネシア 中国の有望度について細かく見てみると、得票率は その他アジアの新興国やメキシコ、 トルコも得票率は概 の26.9%と続きました。 72.8% (前年比 4.5ポイント減) と、前年からやや減少してい ね上昇し、市場の需要拡大が期待される新興国への企 こうした高い満足度の理由として、ASEAN5カ国に るものの、依然高い水準を示しています。有望理由として 業の関心が一層高まっています。 さらに、今回のアンケート ついては 「該当する地域・国での販売活動が順調である は、現地マーケットの成長性、現地マーケットの規模、安価 ではカンボジアが 16 位に浮上しています。有望理由には こと」 を挙げた割合が 81.3% で 1 位となっており、中でも な労働力、組み立てメーカーへの供給拠点としての立 「安価な労働力」が最も多く挙げられており、ASEAN 周 今回のアンケートでは、2011 年 3月の東日本大震災が インドネシア (85.7%)、マレーシア (85.3%)、 タイ (83.9%) に 地、産業集積がある点などが挙げられています。 ただ、 中 辺国も今後の生産拠点として注目されつつある状況が示 製造業企業のサプライチェーンに与える影響について おいて高くなっています。2 位の理由としては 「該当する 国での賃金コストの上昇から、有望理由としての 「安価な されました。 調査していますが、回答企業の 7 割を超える企業が部 地 域・国 からの 輸 出 が 順 調であること」が 挙 げられ、 労働力」 を挙げる割合は年々低下しており、 また、課題とし ASEAN5カ国が域内・外への供給拠点として活用されて て 「労働コストの上昇」 (74.0%) を挙げる割合も増加して 進む事業の具体化 済全体に深刻な影響が広がったことが垣間見える結果 いることを裏付けています。 また、 中国についても 「販売活 います。 また、 「法制の運用が不透明」 (59.9%) を課題とし 中期的な有望国を回答した企業に対しては、投票した となりました。 動が順調であること」が 80%を超えており、 「生産設備の稼 て挙げる割合も増えており、 中央政府と地方政府の法規 国での事業計画の有無についても質問しています。投票 より詳細には、回答企業の約半数に上る277 社は、被 働本格化」 が年々低下していることから、現地での生産活 解釈や運用の相違、法制の頻繁な変更などが指摘され した国で具体的な事業計画を有している企業の割合を 災地域に工場を保有しており、震災によって多くの企業が 動が軌道に乗った企業が増えているものと思われます。 ています。 見ると、 タイは53.3% (88 社) に上りました。 これはタイでの 大きな影響を受けました。実際に工場が被害を受けた218 売上高と収益の満足度を業種別に見ると、鉄鋼、石油・ インドの得票率も、前年比 1.9ポイント減の58.6%となりま 事業展開が単なる期待先行でなく、具体化していることを 社のうち、65.1% は製品供給に支障が生じたと回答して ゴム製品、 自動車など自動車関連業界において満足度が した。有望理由として9 割以上の企業が 「現地マーケット 示しています。 こうした動きは、 ブラジルやインドネシアでも います。 こうした工場の約半数は、国内の他の自社グルー 高い結果となりました。 また、回答社数の多い電機・電子、 の今後の成長性」 を挙げており、 インド市場への期待の大 目立ち、両国で具体的な事業計画を持つ企業数は、 この プ工場からの供給によって製品供給をカバーしました。 化学、 自動車の満足度を地域別に見るとASEAN5、 中で きさが示される一方、課題として 「インフラが未整備」 「他社 5 年間で3 倍以上にも上っています。 直接被災した企業のほかにも、多くの企業が影響を受 もタイ、 インドネシアで満足度が高く出ました。特に、 自動車 との激しい競争」 「法制の運用が不透明」 といった点の割 このほか、M&A の取組みも増加しています。今回の調 けています。全回答企業 603 社のうち87.9%に上る530 社 での評価が高く、両国現地市場の成長と、 それに伴う事 合が高くなっています。 また、現在インドに拠点を持ってい 査でM&A の取組みを強化していると回答した企業の数 が何らかの影響を受けたと回答し、 中でも部品・材料の調 業の堅調な推移が窺えます。 ない企業からの回答では、 「治安・社会情勢が不安」 「徴 は70 社となり、円高の進行を背景に前回の 36 社から倍 達面での影響を挙げた企業の割合が最も多く、422 社 このように、企業の海外売上高と収益の満足度は、 税システムが複雑」 などが上位に挙げられました。 増しました。M&A の実施地域は北米が 15 社、EU15カ (79.6%) に上りました。 これら企業のうち、5 割(212 社) は 2008 年秋以降の金融危機を背景とする業績の落ち込み 国ごとに有望と回答した社数を見ると、 インドネシアが前 から、 アジア諸国を中心として順調に改善しており、 こうし 年比 38 社増、 タイが同 30 社増、 ブラジルが同 18 社増とな た実績が旺盛な海外事業の強化姿勢を導いている状況 り、得票率もそれぞれ大きく伸びています。 インドネシアに が今回の調査から読み取れます。 ついては、有望理由として 「現地マーケットの今後の成長 3. 東日本大震災後のサプライチェーン 7 割超の企業で部品調達に影響 品調達に影響を受けたことが明らかになるなど、 日本経 中期的(今後3年程度)有望事業展開先国・地域の推移 1992年度 回答社数 158 得票率 (%) 2001年度 回答社数 401 得票率 (%) 2011年度 回答社数 507 得票率 (%) 1位 中国 84 53.2 1位 中国 327 81.5 1位 中国 369 72.8 2位 インドネシア 57 36.1 2位 米国 127 31.7 2位 インド 297 58.6 3位 米国 52 32.9 3位 タイ 99 24.7 3位 タイ 165 32.5 で市場としての ASEAN の注目度が急速に高まっている 4位 タイ 33 20.9 4位 インドネシア 56 14.0 4位 ベトナム 159 31.4 状況が示されました。中でも、 タイについては、現地マー 5位 マレーシア 29 18.4 5位 インド 52 13.0 145 28.6 新興国市場への注目の高まり ケットの成長への期待が大きいのと同時に、生産拠点とし 6位 ベトナム 25 15.8 6位 ベトナム 48 12.0 本アンケートでは毎年、 日本企業が今後有望と考える ての評価もASEAN の中でも高く、特に 「第三国輸出拠 7位 ドイツ 15 9.5 7位 台湾 44 11.0 7位 ロシア 63 12.4 8位 シンガポール 11 7.0 8位 韓国 33 8.2 8位 米国 50 9.9 事業展開先国・地域について調査しています。中期的 点として」有望であると回答する企業の割合が 3 割以上 9位 英国 10 6.3 9位 マレーシア 32 8.0 9位 マレーシア 39 7.7 (今後 3 年程度) に有望な国・地域として、 中国は調査開 に上っているのが特徴です。 また、 ブラジルも 「現地マー 9 5.7 10位 シンガポール 24 6.0 10位 台湾 35 6.9 始以来 1 位を続けており、 インドも7 年連続で2 位となりま ケットの今後の成長性」 を9 割以上の企業が挙げていま 性」 を挙げる割合が増加し、81.6%に上り、 日本企業の間 2. 日本企業が考える有望地域 10位 台湾 5位 ブラジル インドネシア インド (注)1992 年度調査結果は、中期的有望事業投資先国・地域として回答のあった 1 ∼ 3 位を集計したもの。 06 JBIC TODAY JANUARY 2012 JBIC TODAY JANUARY 2012 07 特集 アンケートから読み解く海外事業展開動向 ― 2011年度「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」― 上しており、国・地域別では、 タイでの事業について 「やや したが、今回のアンケートではタイ、 インドネシア、 ブラジル す。 なお、 タイについては回答企業の半数近くが生産拠 国が 12 社と続き、以降はインドやブラジル、 タイなどの新興 満足」 「満足」 と回答した企業が約 4 割に達しています。 ま が躍進し、 これらの国々への企業の期待の大きさが窺え 点を有しており、2011 年秋以降の洪水被害拡大の悪影 国で計 43 社を占めており、 ここでも新興国で事業強化を た、 「日本より収益率が高い国・地域」 でも、 タイが 37.9%と る結果となりました。 響については引き続き注意が必要です。 図る企業の姿が目立っています。 中国の34.1%を抑えて1 位に挙げられ、3 位にインドネシア 中国の有望度について細かく見てみると、得票率は その他アジアの新興国やメキシコ、 トルコも得票率は概 の26.9%と続きました。 72.8% (前年比 4.5ポイント減) と、前年からやや減少してい ね上昇し、市場の需要拡大が期待される新興国への企 こうした高い満足度の理由として、ASEAN5カ国に るものの、依然高い水準を示しています。有望理由として 業の関心が一層高まっています。 さらに、今回のアンケート ついては 「該当する地域・国での販売活動が順調である は、現地マーケットの成長性、現地マーケットの規模、安価 ではカンボジアが 16 位に浮上しています。有望理由には こと」 を挙げた割合が 81.3% で 1 位となっており、中でも な労働力、組み立てメーカーへの供給拠点としての立 「安価な労働力」が最も多く挙げられており、ASEAN 周 今回のアンケートでは、2011 年 3月の東日本大震災が インドネシア (85.7%)、マレーシア (85.3%)、 タイ (83.9%) に 地、産業集積がある点などが挙げられています。 ただ、 中 辺国も今後の生産拠点として注目されつつある状況が示 製造業企業のサプライチェーンに与える影響について おいて高くなっています。2 位の理由としては 「該当する 国での賃金コストの上昇から、有望理由としての 「安価な されました。 調査していますが、回答企業の 7 割を超える企業が部 地 域・国 からの 輸 出 が 順 調であること」が 挙 げられ、 労働力」 を挙げる割合は年々低下しており、 また、課題とし ASEAN5カ国が域内・外への供給拠点として活用されて て 「労働コストの上昇」 (74.0%) を挙げる割合も増加して 進む事業の具体化 済全体に深刻な影響が広がったことが垣間見える結果 いることを裏付けています。 また、 中国についても 「販売活 います。 また、 「法制の運用が不透明」 (59.9%) を課題とし 中期的な有望国を回答した企業に対しては、投票した となりました。 動が順調であること」が 80%を超えており、 「生産設備の稼 て挙げる割合も増えており、 中央政府と地方政府の法規 国での事業計画の有無についても質問しています。投票 より詳細には、回答企業の約半数に上る277 社は、被 働本格化」 が年々低下していることから、現地での生産活 解釈や運用の相違、法制の頻繁な変更などが指摘され した国で具体的な事業計画を有している企業の割合を 災地域に工場を保有しており、震災によって多くの企業が 動が軌道に乗った企業が増えているものと思われます。 ています。 見ると、 タイは53.3% (88 社) に上りました。 これはタイでの 大きな影響を受けました。実際に工場が被害を受けた218 売上高と収益の満足度を業種別に見ると、鉄鋼、石油・ インドの得票率も、前年比 1.9ポイント減の58.6%となりま 事業展開が単なる期待先行でなく、具体化していることを 社のうち、65.1% は製品供給に支障が生じたと回答して ゴム製品、 自動車など自動車関連業界において満足度が した。有望理由として9 割以上の企業が 「現地マーケット 示しています。 こうした動きは、 ブラジルやインドネシアでも います。 こうした工場の約半数は、国内の他の自社グルー 高い結果となりました。 また、回答社数の多い電機・電子、 の今後の成長性」 を挙げており、 インド市場への期待の大 目立ち、両国で具体的な事業計画を持つ企業数は、 この プ工場からの供給によって製品供給をカバーしました。 化学、 自動車の満足度を地域別に見るとASEAN5、 中で きさが示される一方、課題として 「インフラが未整備」 「他社 5 年間で3 倍以上にも上っています。 直接被災した企業のほかにも、多くの企業が影響を受 もタイ、 インドネシアで満足度が高く出ました。特に、 自動車 との激しい競争」 「法制の運用が不透明」 といった点の割 このほか、M&A の取組みも増加しています。今回の調 けています。全回答企業 603 社のうち87.9%に上る530 社 での評価が高く、両国現地市場の成長と、 それに伴う事 合が高くなっています。 また、現在インドに拠点を持ってい 査でM&A の取組みを強化していると回答した企業の数 が何らかの影響を受けたと回答し、 中でも部品・材料の調 業の堅調な推移が窺えます。 ない企業からの回答では、 「治安・社会情勢が不安」 「徴 は70 社となり、円高の進行を背景に前回の 36 社から倍 達面での影響を挙げた企業の割合が最も多く、422 社 このように、企業の海外売上高と収益の満足度は、 税システムが複雑」 などが上位に挙げられました。 増しました。M&A の実施地域は北米が 15 社、EU15カ (79.6%) に上りました。 これら企業のうち、5 割(212 社) は 2008 年秋以降の金融危機を背景とする業績の落ち込み 国ごとに有望と回答した社数を見ると、 インドネシアが前 から、 アジア諸国を中心として順調に改善しており、 こうし 年比 38 社増、 タイが同 30 社増、 ブラジルが同 18 社増とな た実績が旺盛な海外事業の強化姿勢を導いている状況 り、得票率もそれぞれ大きく伸びています。 インドネシアに が今回の調査から読み取れます。 ついては、有望理由として 「現地マーケットの今後の成長 3. 東日本大震災後のサプライチェーン 7 割超の企業で部品調達に影響 品調達に影響を受けたことが明らかになるなど、 日本経 中期的(今後3年程度)有望事業展開先国・地域の推移 1992年度 回答社数 158 得票率 (%) 2001年度 回答社数 401 得票率 (%) 2011年度 回答社数 507 得票率 (%) 1位 中国 84 53.2 1位 中国 327 81.5 1位 中国 369 72.8 2位 インドネシア 57 36.1 2位 米国 127 31.7 2位 インド 297 58.6 3位 米国 52 32.9 3位 タイ 99 24.7 3位 タイ 165 32.5 で市場としての ASEAN の注目度が急速に高まっている 4位 タイ 33 20.9 4位 インドネシア 56 14.0 4位 ベトナム 159 31.4 状況が示されました。中でも、 タイについては、現地マー 5位 マレーシア 29 18.4 5位 インド 52 13.0 145 28.6 新興国市場への注目の高まり ケットの成長への期待が大きいのと同時に、生産拠点とし 6位 ベトナム 25 15.8 6位 ベトナム 48 12.0 本アンケートでは毎年、 日本企業が今後有望と考える ての評価もASEAN の中でも高く、特に 「第三国輸出拠 7位 ドイツ 15 9.5 7位 台湾 44 11.0 7位 ロシア 63 12.4 8位 シンガポール 11 7.0 8位 韓国 33 8.2 8位 米国 50 9.9 事業展開先国・地域について調査しています。中期的 点として」有望であると回答する企業の割合が 3 割以上 9位 英国 10 6.3 9位 マレーシア 32 8.0 9位 マレーシア 39 7.7 (今後 3 年程度) に有望な国・地域として、 中国は調査開 に上っているのが特徴です。 また、 ブラジルも 「現地マー 9 5.7 10位 シンガポール 24 6.0 10位 台湾 35 6.9 始以来 1 位を続けており、 インドも7 年連続で2 位となりま ケットの今後の成長性」 を9 割以上の企業が挙げていま 性」 を挙げる割合が増加し、81.6%に上り、 日本企業の間 2. 日本企業が考える有望地域 10位 台湾 5位 ブラジル インドネシア インド (注)1992 年度調査結果は、中期的有望事業投資先国・地域として回答のあった 1 ∼ 3 位を集計したもの。 06 JBIC TODAY JANUARY 2012 JBIC TODAY JANUARY 2012 07 特集 アンケートから読み解く海外事業展開動向 ― 2011年度「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」― 調達先を変更せず、4 割強(191 社) が日系他社から調達 効率的な電力運用を行うスマートグリッド、省エネ都市を目 して対応。外資系から代替調達を実施した企業は2 割 指すスマートコミュニティ、再生可能エネルギーなど環境 (95 社) にとどまり、多くの企業が自身や協力企業の力に 関連分野が注目されています。 Opinion 日本企業とグローバリゼーション よって対処しました。部品・材料の調達面での影響のほか 一方、商機と捉えている企業の 4 割(76 社) は、未だ部 兵庫県立大学経営学部 准教授 には、国 内 販 売 量 の 減 少(71.9%)、物 流 面 での 影 響 材の輸出を含めインフラの海外展開に参入はしていない 立本 博文 氏 (65.8%) と続いています。 と回答し、既参入済企業も、多くは部品・機器販売が中心 震災を契機として、企業の部品・材料調達に対する問 となっています。新規参入する上での課題としては、 「信 題意識は高まりました。震災を契機とするリスク対応につ 頼できる現地パートナーの確保」 「現地ニーズへの適合」 いては、 「部 品・材 料 の 調 達 先 の 複 数 化」 と 「サプライ 「コスト競争力」 が挙げられており、 中でも現地パートナー オピニオン 東京大学先端科学技術研究センター助手、東京大学経済学部 COE ものづくり経営研究センター助教授、立命館大学イノ ベーションマネジメント研究センター客員研究員を経て、09 年 4 月より兵庫県立大学経営学部准教授。東京大学先端科学 技術研究センター客員研究員、東京大学大学院経済学研究科経営教育研究センター特任研究員も兼任。10 年 9 月∼ 11 年 8月MIT Sloan school of management 内 Center for digital businessにて客員研究員。専門は国際経営論、 技術経営論、競争戦略論。 日本企業はグローバリゼーションの恩恵を受けてきた。潜 は、サプライチェーンの現地化が、競争戦略の焦点となる。 チェーン全体像の把握」 が顕著な取組みとして挙げられ の確保が最も大きな課題として認識されています。 また、 在的には、世界の中で最も恩恵を受けることが出来る可 新興国へ海外直接投資を行った後、激化する市場に応じ ています。 参入済み企業にとっては、 「コスト競争力の確保」 「現地 能性も持っている。国内の成長率が伸び悩んでいる現在 て、よりコスト競争力のあるサプライチェーンの構築が重要 また、福島第一原子力発電所の事故に伴う電力供給 ニーズへの適合」 などの課題が共通して挙げられました。 でも、海外への輸出と直接投資によって日本企業は成長を になる。現在、一緒に進出した日本部品企業ではなく、 の制約についても企業は深刻に受け止めています。2011 こうした点から、参入前は信頼できるパートナーを確保す 続けていくことが出来る。今後は、 グローバリゼーションをもっ 現地部品企業への選手交代が進んでいる。より正確に言 年夏の電力供給制約下でも中期的な事業展開見通しを ること、参入後はコスト競争力を確保することが、製造業 と積極的に活用することが、企業成長のための基本的戦 えば、コスト競争力のある企業と、そうでない企業との選 変更しなかった企業は、回答企業の約 7 割(434 社) でし によるインフラの海外展開をさらに進めるに当たって最も 略となる。 別が厳しくなっているのである。単に海外直接投資をして グローバリゼーションは、基本的には「良い」 ものであり、 コストを下げるという段階ではなく、海外直接投資を前提 たが、今後電力供給制約が深刻化・長期化した場合に 強く意識されていることが窺えます。 活用していくべきものである。ところが事業の現場では、 に新興国市場で能力構築を行ってコスト競争力をつけると は、2 割弱(113 社) の企業が事業展開見通しを修正する JBICはこれらの調査結果も踏まえ、国際的にも厳しい 手放しに喜んでばかりもいられない状況に直面している。 いう段階に現在来ているのである。「すりあわせ」型の製 可能性を指摘し、 そのほとんどが国内事業の縮小を示唆 競争環境にさらされている日本企業の海外事業展開の たとえば日本企業は先端的な技術を多く開発したが、それ 品分野では、この傾向がますます強くなると考えられる。 した結果となりました。 支援や各国・地域の投資環境改善に向けた現地政府当 らのイノベーションから十分に収益を得た例は少なかった。 一方、IT やデジタル家電といった「組合せ」型の製品分 局や関係機関との対話などを、引き続き積極的に行って 多くのエレクトロニクス分野で、当初は日本企業のグローバ 野では、こういったサプライチェーンの構築だけでは足りず、 4. インフラの海外展開−製造業の視点から いく所存です。 ル市場シェアは高かったが、短期間の内にシェアを失い、 ビジネス・モデルの構築が最重要となる。「組合せ」型の 新興国企業にその座を明け渡すことになった。 この傾向は、 製品では、付加価値が貯まりやすい部品と、付加価値が 再生可能エネルギー、水、鉄道に関心 インフラの海外展開の関心分野 エレクトロニクス産業から非エレクトロニクス産業に広がって 貯まりにくい部品の差が大きい。どの領域を自社が行い、 いるように見える。グローバリゼーションは市場の拡大を意 どの領域を他社に任せるのか、という大きな戦略を持つ必 味するが、同時に、競争の激化も意味するのである。 要があるのだ。多くの場合、他社の候補となるのは新興 このような状況の中で、どのようにグローバリゼーションを 国の新しい企業であり、彼らをパートナーとしたビジネス・ インフラの海外展開の関心分野 近年、個別の機器・設備の輸出にとどまらず、運営・管 1位 太陽光発電 2位 回答社数 得票率 (社) (注) 118 37.7% 下水(その他汚水処理施設および工業下水含む) 71 22.7% 3位 スマートグリッド 70 22.4% 経営戦略として活用したら良いのかについて多くの研究が モデルを構築することが重要となる。このように「組合せ型」 今回のアンケートでは、 インフラの海外展開を 「商機で 4位 高速鉄道 65 20.8% なされている。技術経営の研究では、産業特性によって の分野では、分業をどのように行うのかについて戦略を持 ある」 と回答した企業は、全回答企業の 31.8%(192 社) で 5位 上水 (工業用水含む) 61 19.5% 経営戦略が大きく異なるのではないかと考えている。部品 つことがが求められる。市場で競争する前の段階から競 した。分野別では、太陽光発電など再生可能エネルギー 6位 都市鉄道等 (地下鉄、貨物列車など含む) 60 19.2% 間の相互依存性が強い「すりあわせ」型の製品分野と、 争が始まっているのである。このため企業内のスタッフ機 7位 道路・橋梁 55 17.6% 相互依存性が弱い「組合せ」型の分野とでは、グローバリ 能(参謀本部的機能)が非常に重要になる。 8位 スマートコミュニティ ・エコタウン 43 13.7% ゼーションの活用方法が異なると言うのだ。両者が異なる 最後に。グローバリゼーションは企業にとって成長機会を 8位 風力発電 43 13.7% 41 13.1% 根本理由は、製品に使われている技術の伝播速度にある。 与えてくれる「良い」 ものである。しかし、それは、事業条 理まで含めた統合的なシステムとして提供するパッケージ 型インフラの海外展開が注目されています。 関連、水ビジネス、鉄道システムなどに関心が集まり、業種 別では、要素部品の期待から電機・電子が高い関心を示 しています。 こうした分野の有望展開先国・地域には、 中国、 インド、 ベトナム、 インドネシア、 タイ、 ブラジルなど、旺盛なインフラ 10位 高度情報通信ネットワーク (注) 得票率は、当該インフラの海外展開分野への回答社数を313社 (インフラの海外展開について 「商機だと思う」 「どちらかといえば商機だと思う」 「どちらともいえない」 「どちらかといえば商機だと思 わない」 に回答した企業数) にて除したもの。 「すりあわせ」の製品では技術の伝播速度は遅いが、「組 件を整え、自らの組織を変革し、しっかりとした経営戦略 合せ」の製品では技術伝播速度が速い。ここから2 つの を持った企業のみに該当することである。グローバリゼー 産業の経営戦略に大きな違いが出てくる。その要点を述 ションは、全ての消費者に対して「良い」 ものであるが、全 需要が期待される新興国に人気が集まりました。先進国 べると次の様になる。 ての企業にとって「良い」 ものではない。きちんとした対応 の中では米国が有望視されていて、特に、ITを活用して 自動車や二輪車のような「すりあわせ」型の製品分野で を行った企業にとってのみ、「良い」 ものなのである。 08 JBIC TODAY JANUARY 2012 JBIC TODAY JANUARY 2012 09 特集 アンケートから読み解く海外事業展開動向 ― 2011年度「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」― 調達先を変更せず、4 割強(191 社) が日系他社から調達 効率的な電力運用を行うスマートグリッド、省エネ都市を目 して対応。外資系から代替調達を実施した企業は2 割 指すスマートコミュニティ、再生可能エネルギーなど環境 (95 社) にとどまり、多くの企業が自身や協力企業の力に 関連分野が注目されています。 Opinion 日本企業とグローバリゼーション よって対処しました。部品・材料の調達面での影響のほか 一方、商機と捉えている企業の 4 割(76 社) は、未だ部 兵庫県立大学経営学部 准教授 には、国 内 販 売 量 の 減 少(71.9%)、物 流 面 での 影 響 材の輸出を含めインフラの海外展開に参入はしていない 立本 博文 氏 (65.8%) と続いています。 と回答し、既参入済企業も、多くは部品・機器販売が中心 震災を契機として、企業の部品・材料調達に対する問 となっています。新規参入する上での課題としては、 「信 題意識は高まりました。震災を契機とするリスク対応につ 頼できる現地パートナーの確保」 「現地ニーズへの適合」 いては、 「部 品・材 料 の 調 達 先 の 複 数 化」 と 「サプライ 「コスト競争力」 が挙げられており、 中でも現地パートナー オピニオン 東京大学先端科学技術研究センター助手、東京大学経済学部 COE ものづくり経営研究センター助教授、立命館大学イノ ベーションマネジメント研究センター客員研究員を経て、09 年 4 月より兵庫県立大学経営学部准教授。東京大学先端科学 技術研究センター客員研究員、東京大学大学院経済学研究科経営教育研究センター特任研究員も兼任。10 年 9 月∼ 11 年 8月MIT Sloan school of management 内 Center for digital businessにて客員研究員。専門は国際経営論、 技術経営論、競争戦略論。 日本企業はグローバリゼーションの恩恵を受けてきた。潜 は、サプライチェーンの現地化が、競争戦略の焦点となる。 チェーン全体像の把握」 が顕著な取組みとして挙げられ の確保が最も大きな課題として認識されています。 また、 在的には、世界の中で最も恩恵を受けることが出来る可 新興国へ海外直接投資を行った後、激化する市場に応じ ています。 参入済み企業にとっては、 「コスト競争力の確保」 「現地 能性も持っている。国内の成長率が伸び悩んでいる現在 て、よりコスト競争力のあるサプライチェーンの構築が重要 また、福島第一原子力発電所の事故に伴う電力供給 ニーズへの適合」 などの課題が共通して挙げられました。 でも、海外への輸出と直接投資によって日本企業は成長を になる。現在、一緒に進出した日本部品企業ではなく、 の制約についても企業は深刻に受け止めています。2011 こうした点から、参入前は信頼できるパートナーを確保す 続けていくことが出来る。今後は、 グローバリゼーションをもっ 現地部品企業への選手交代が進んでいる。より正確に言 年夏の電力供給制約下でも中期的な事業展開見通しを ること、参入後はコスト競争力を確保することが、製造業 と積極的に活用することが、企業成長のための基本的戦 えば、コスト競争力のある企業と、そうでない企業との選 変更しなかった企業は、回答企業の約 7 割(434 社) でし によるインフラの海外展開をさらに進めるに当たって最も 略となる。 別が厳しくなっているのである。単に海外直接投資をして グローバリゼーションは、基本的には「良い」 ものであり、 コストを下げるという段階ではなく、海外直接投資を前提 たが、今後電力供給制約が深刻化・長期化した場合に 強く意識されていることが窺えます。 活用していくべきものである。ところが事業の現場では、 に新興国市場で能力構築を行ってコスト競争力をつけると は、2 割弱(113 社) の企業が事業展開見通しを修正する JBICはこれらの調査結果も踏まえ、国際的にも厳しい 手放しに喜んでばかりもいられない状況に直面している。 いう段階に現在来ているのである。「すりあわせ」型の製 可能性を指摘し、 そのほとんどが国内事業の縮小を示唆 競争環境にさらされている日本企業の海外事業展開の たとえば日本企業は先端的な技術を多く開発したが、それ 品分野では、この傾向がますます強くなると考えられる。 した結果となりました。 支援や各国・地域の投資環境改善に向けた現地政府当 らのイノベーションから十分に収益を得た例は少なかった。 一方、IT やデジタル家電といった「組合せ」型の製品分 局や関係機関との対話などを、引き続き積極的に行って 多くのエレクトロニクス分野で、当初は日本企業のグローバ 野では、こういったサプライチェーンの構築だけでは足りず、 4. インフラの海外展開−製造業の視点から いく所存です。 ル市場シェアは高かったが、短期間の内にシェアを失い、 ビジネス・モデルの構築が最重要となる。「組合せ」型の 新興国企業にその座を明け渡すことになった。 この傾向は、 製品では、付加価値が貯まりやすい部品と、付加価値が 再生可能エネルギー、水、鉄道に関心 インフラの海外展開の関心分野 エレクトロニクス産業から非エレクトロニクス産業に広がって 貯まりにくい部品の差が大きい。どの領域を自社が行い、 いるように見える。グローバリゼーションは市場の拡大を意 どの領域を他社に任せるのか、という大きな戦略を持つ必 味するが、同時に、競争の激化も意味するのである。 要があるのだ。多くの場合、他社の候補となるのは新興 このような状況の中で、どのようにグローバリゼーションを 国の新しい企業であり、彼らをパートナーとしたビジネス・ インフラの海外展開の関心分野 近年、個別の機器・設備の輸出にとどまらず、運営・管 1位 太陽光発電 2位 回答社数 得票率 (社) (注) 118 37.7% 下水(その他汚水処理施設および工業下水含む) 71 22.7% 3位 スマートグリッド 70 22.4% 経営戦略として活用したら良いのかについて多くの研究が モデルを構築することが重要となる。このように「組合せ型」 今回のアンケートでは、 インフラの海外展開を 「商機で 4位 高速鉄道 65 20.8% なされている。技術経営の研究では、産業特性によって の分野では、分業をどのように行うのかについて戦略を持 ある」 と回答した企業は、全回答企業の 31.8%(192 社) で 5位 上水 (工業用水含む) 61 19.5% 経営戦略が大きく異なるのではないかと考えている。部品 つことがが求められる。市場で競争する前の段階から競 した。分野別では、太陽光発電など再生可能エネルギー 6位 都市鉄道等 (地下鉄、貨物列車など含む) 60 19.2% 間の相互依存性が強い「すりあわせ」型の製品分野と、 争が始まっているのである。このため企業内のスタッフ機 7位 道路・橋梁 55 17.6% 相互依存性が弱い「組合せ」型の分野とでは、グローバリ 能(参謀本部的機能)が非常に重要になる。 8位 スマートコミュニティ ・エコタウン 43 13.7% ゼーションの活用方法が異なると言うのだ。両者が異なる 最後に。グローバリゼーションは企業にとって成長機会を 8位 風力発電 43 13.7% 41 13.1% 根本理由は、製品に使われている技術の伝播速度にある。 与えてくれる「良い」 ものである。しかし、それは、事業条 理まで含めた統合的なシステムとして提供するパッケージ 型インフラの海外展開が注目されています。 関連、水ビジネス、鉄道システムなどに関心が集まり、業種 別では、要素部品の期待から電機・電子が高い関心を示 しています。 こうした分野の有望展開先国・地域には、 中国、 インド、 ベトナム、 インドネシア、 タイ、 ブラジルなど、旺盛なインフラ 10位 高度情報通信ネットワーク (注) 得票率は、当該インフラの海外展開分野への回答社数を313社 (インフラの海外展開について 「商機だと思う」 「どちらかといえば商機だと思う」 「どちらともいえない」 「どちらかといえば商機だと思 わない」 に回答した企業数) にて除したもの。 「すりあわせ」の製品では技術の伝播速度は遅いが、「組 件を整え、自らの組織を変革し、しっかりとした経営戦略 合せ」の製品では技術伝播速度が速い。ここから2 つの を持った企業のみに該当することである。グローバリゼー 産業の経営戦略に大きな違いが出てくる。その要点を述 ションは、全ての消費者に対して「良い」 ものであるが、全 需要が期待される新興国に人気が集まりました。先進国 べると次の様になる。 ての企業にとって「良い」 ものではない。きちんとした対応 の中では米国が有望視されていて、特に、ITを活用して 自動車や二輪車のような「すりあわせ」型の製品分野で を行った企業にとってのみ、「良い」 ものなのである。 08 JBIC TODAY JANUARY 2012 JBIC TODAY JANUARY 2012 09 わが社の海外物語 株式会社シャルマン (福井県鯖江市) 部品メーカーから世界的メガネフレームメーカーへ アジア向けの販売で海外向け事業をスタート 『一つの国に一つの代理店』 という方針の下、 まずシンガ 世界のメガネフレームメーカートップ 5に入る日本メーカー ポールやタイに販路を開きました。 アジア人は顔の形が日本 首位の株式会社シャルマン、その源流はメガネの枠と弦を 人と似ていますし、高温多湿の気候でも耐久性に優れてい つなぐ小さなリベット部品の製造でした。 るのが日本製品の特徴です。 こうした点がアジアでも評価さ メガネフレームは福井県鯖江市の地場産業で、最盛期に れました。1982 年には米国・ニューヨークに現地販売会社 は1,000 社を超える関連企業があったといいます。 その中に を設立し、その後もドイツ、 フランス、香港などに販売網を拡 新たな素材、加工技術も開発 商品開発でも、本社(福井県)、東京、 ミラノ、パリ、 ニュー あって、 シャルマンは、 フレームに使われる素材がプラスチッ 大していきました」 (堀川会長) シャルマンの海外事業拡大の背景には、当社の高い技 ヨーク、香港にデザイナー25名を配し、 テレビ会議システム クから金属に転換する大きな変化をとらえて部品メーカーか ファッション性の高いメガネフレームは、 それぞれの地域に 術力・商品開発力があります。その象徴が新素材「エクセ を使ってリアルタイムで企画・デザインを進めています。その ら転換。250 工程にも及ぶ加工技術を磨き、1975 年からは自 即したマーケティングと地域によって異なる流行を取り入れ レンスチタン」。 メガネフレームに最適な材料を開発するた 斬新・秀麗な商品力によって、数多くの世界的ブランドから 社一貫生産によるメガネフレームの販売を開始しました。 たデザイン開発が重要です。 シャルマンは若手社員を世界 め、東北大学金属材料研究所と8 年にわたる共同研究を も製品の委託生産や、 ライセンス生産を求められています。 「部品メーカーとしてスタートした企業なので、完成品とし に派遣しているほか、現地採用を積極的に進めました。そ 進めて新素材を開発しました。 このほか、大阪大学接合 同社の海外売上比率は約 75%に上っており、エクセレ てのメガネフレームの販売ルートがありません。そこで直接 の結果、 グローバル感覚豊かな人材が育ち、いまやグルー 科学研究所とも精緻な接合技術(微細レーザ接合) を共 ンスチタンなど高級品主体の国内生産と、 ボリュームゾー 販売を始めましたが、その結果、お店やお客様の声を直に プ全体の全社員の 6 分の 5 が外国人となっています。 用化しています。 同開発し、2009 年から実用化しています。 ン向け商品主体の中国工場の連携で最適生産を図って 中国広広東省東莞市の工場外観 います。 伺うことで商品開発にフィードバックさせることができました」 と堀川馨会長は振り返ります。 中国に製造拠点を設立 「中国の工場は新興国のボリュームゾーン向け商品が 1980 年には、海外への輸出も開始しました。 「世界を巡 同社は、海外事業の拡大に合わせて、1990 年代から海 主体です。 このうち厦門の工場は台湾企業との合弁で設 り、世界中の人々に商品をお届けしたいという私の 『好奇 外生産を開始しています。 立しましたが、 コストの積み上げによって商品価格を設定 心』から始めたことです。代理店同士の競合を防ぐために 「きっかけは 1985 年のプラザ合意による円高です。当初、 してきた当社に対し、市場に受け入れられる価格を予め 香港で小規模な生産を試み、 その後 1991 年に、広東省東莞 想定して生産するという合弁相手の発想に刺激を受けま した。新興国で受け入れられる価格でありつつ、当社の高 市に現地生産拠点を設けました。小さなレンタル工場でした が、 ここでも製販一体にこだわりました。土埃が舞い、雨で ne Art CHARMANT Line (ラインアートシャルマン)女性向け い技術力によって高品質が維持された製品づくりに、今後 も取り組んでいくつもりです」 と堀川会長は語っています。 ぬかるむ道路、不安定な電力事情などインフラ面で苦労し ましたが、 日本で培った全ての部品の生産を手がけるノウハ O U T L I N E ウをそっくり移植し、販売・輸出も自社で行ったことで、初年 度から黒字を出しました」 と堀川会長。 この実績をもとに、1993 年に約 40,000㎡の用地を確保し て工場を増強。 この際には JBIC の前身である日本輸出入 rt CHARMANT(ラインアートシャルマン) Line Art 男性向け 社 名 株式会社 シャルマン 本 社 福井県鯖江市川去町 6 - 1 代 表 者 銀行が支援しています。 代表取締役会長 堀川 馨 代表取締役社長 宮地 正雄 設 「その後の増強でもサポートしていただくなど、JBICとは 20 年近くに及ぶ付き合いとなります。当社が海外事業を拡 立 1968 年 資 本 金 6 億 1 , 752 万円 売 上 高 大させるに当たっては、JBICをはじめ、 さまざまな関係者に 217 億円( 2010 年度) 従 業 員 3 , 706 名( 2010 年 12 月現在) サポートしてもらいました。輸出、海外販売会社設立、海外 事業内容 メガネフレーム、 サングラスの商品企画・デザイン・ 生産拠点の設立の際も、先達からアドバイスをいただき、経 験豊富なコーディネーターにも恵まれました」 と堀川会長は 製造および販売 MENS MARK (メンズマーク) 工 場 海外拠点 福井県鯖江市、中国広東省東莞市、福建省厦門市 米国、欧州、中国、中東に販売拠点 語ります。 堀川 馨 代表取締役会長 10 JBIC TODAY JANUARY 2012 JBIC TODAY JANUARY 2012 11 わが社の海外物語 株式会社シャルマン (福井県鯖江市) 部品メーカーから世界的メガネフレームメーカーへ アジア向けの販売で海外向け事業をスタート 『一つの国に一つの代理店』 という方針の下、 まずシンガ 世界のメガネフレームメーカートップ 5に入る日本メーカー ポールやタイに販路を開きました。 アジア人は顔の形が日本 首位の株式会社シャルマン、その源流はメガネの枠と弦を 人と似ていますし、高温多湿の気候でも耐久性に優れてい つなぐ小さなリベット部品の製造でした。 るのが日本製品の特徴です。 こうした点がアジアでも評価さ メガネフレームは福井県鯖江市の地場産業で、最盛期に れました。1982 年には米国・ニューヨークに現地販売会社 は1,000 社を超える関連企業があったといいます。 その中に を設立し、その後もドイツ、 フランス、香港などに販売網を拡 新たな素材、加工技術も開発 商品開発でも、本社(福井県)、東京、 ミラノ、パリ、 ニュー あって、 シャルマンは、 フレームに使われる素材がプラスチッ 大していきました」 (堀川会長) シャルマンの海外事業拡大の背景には、当社の高い技 ヨーク、香港にデザイナー25名を配し、 テレビ会議システム クから金属に転換する大きな変化をとらえて部品メーカーか ファッション性の高いメガネフレームは、 それぞれの地域に 術力・商品開発力があります。その象徴が新素材「エクセ を使ってリアルタイムで企画・デザインを進めています。その ら転換。250 工程にも及ぶ加工技術を磨き、1975 年からは自 即したマーケティングと地域によって異なる流行を取り入れ レンスチタン」。 メガネフレームに最適な材料を開発するた 斬新・秀麗な商品力によって、数多くの世界的ブランドから 社一貫生産によるメガネフレームの販売を開始しました。 たデザイン開発が重要です。 シャルマンは若手社員を世界 め、東北大学金属材料研究所と8 年にわたる共同研究を も製品の委託生産や、 ライセンス生産を求められています。 「部品メーカーとしてスタートした企業なので、完成品とし に派遣しているほか、現地採用を積極的に進めました。そ 進めて新素材を開発しました。 このほか、大阪大学接合 同社の海外売上比率は約 75%に上っており、エクセレ てのメガネフレームの販売ルートがありません。そこで直接 の結果、 グローバル感覚豊かな人材が育ち、いまやグルー 科学研究所とも精緻な接合技術(微細レーザ接合) を共 ンスチタンなど高級品主体の国内生産と、 ボリュームゾー 販売を始めましたが、その結果、お店やお客様の声を直に プ全体の全社員の 6 分の 5 が外国人となっています。 用化しています。 同開発し、2009 年から実用化しています。 ン向け商品主体の中国工場の連携で最適生産を図って 中国広広東省東莞市の工場外観 います。 伺うことで商品開発にフィードバックさせることができました」 と堀川馨会長は振り返ります。 中国に製造拠点を設立 「中国の工場は新興国のボリュームゾーン向け商品が 1980 年には、海外への輸出も開始しました。 「世界を巡 同社は、海外事業の拡大に合わせて、1990 年代から海 主体です。 このうち厦門の工場は台湾企業との合弁で設 り、世界中の人々に商品をお届けしたいという私の 『好奇 外生産を開始しています。 立しましたが、 コストの積み上げによって商品価格を設定 心』から始めたことです。代理店同士の競合を防ぐために 「きっかけは 1985 年のプラザ合意による円高です。当初、 してきた当社に対し、市場に受け入れられる価格を予め 香港で小規模な生産を試み、 その後 1991 年に、広東省東莞 想定して生産するという合弁相手の発想に刺激を受けま した。新興国で受け入れられる価格でありつつ、当社の高 市に現地生産拠点を設けました。小さなレンタル工場でした が、 ここでも製販一体にこだわりました。土埃が舞い、雨で ne Art CHARMANT Line (ラインアートシャルマン)女性向け い技術力によって高品質が維持された製品づくりに、今後 も取り組んでいくつもりです」 と堀川会長は語っています。 ぬかるむ道路、不安定な電力事情などインフラ面で苦労し ましたが、 日本で培った全ての部品の生産を手がけるノウハ O U T L I N E ウをそっくり移植し、販売・輸出も自社で行ったことで、初年 度から黒字を出しました」 と堀川会長。 この実績をもとに、1993 年に約 40,000㎡の用地を確保し て工場を増強。 この際には JBIC の前身である日本輸出入 rt CHARMANT(ラインアートシャルマン) Line Art 男性向け 社 名 株式会社 シャルマン 本 社 福井県鯖江市川去町 6 - 1 代 表 者 銀行が支援しています。 代表取締役会長 堀川 馨 代表取締役社長 宮地 正雄 設 「その後の増強でもサポートしていただくなど、JBICとは 20 年近くに及ぶ付き合いとなります。当社が海外事業を拡 立 1968 年 資 本 金 6 億 1 , 752 万円 売 上 高 大させるに当たっては、JBICをはじめ、 さまざまな関係者に 217 億円( 2010 年度) 従 業 員 3 , 706 名( 2010 年 12 月現在) サポートしてもらいました。輸出、海外販売会社設立、海外 事業内容 メガネフレーム、 サングラスの商品企画・デザイン・ 生産拠点の設立の際も、先達からアドバイスをいただき、経 験豊富なコーディネーターにも恵まれました」 と堀川会長は 製造および販売 MENS MARK (メンズマーク) 工 場 海外拠点 福井県鯖江市、中国広東省東莞市、福建省厦門市 米国、欧州、中国、中東に販売拠点 語ります。 堀川 馨 代表取締役会長 10 JBIC TODAY JANUARY 2012 JBIC TODAY JANUARY 2012 11 国際協力銀行の広報誌 JBIC TODAY S P O T L I G H T January 〒100-8144 東京都千代田区大手町1丁目4番1号 JBIC TODAY(ジェービック トゥデ イ )2012 年 1月号 Vol.11 11 竣工式典の様子 2012 Vol. サウジアラビアで、 石化プラント用 鋳鋼製品工場が竣工 製造工場外観 クボタ 素形材事業部 素形材開発部、JBIC 産業ファイナンス部門 西日本オフィスに聞く 2011 年 11月16日、 サウジアラビア (東部州ダンマン市) で、 日本 企 業と現 地 企 業 の 合 弁 企 業であるKubota Saudi Arabia Company, LLC(以下 KSC) の製造工場の竣工 式が行われました。 この工場では石油化学プラントに欠かせ ない耐熱鋳鋼製のチューブが製造されており、工場の建設 に当たってJBIC は、民間金融機関との協調融資を行って います。工場は竣工式に先立つ 2011 年 2月に稼動を開始 し、 サウジアラビア国内のみならず、他の中東諸国や北アフ リカ、欧州向けの製品供給拠点としての役割が期待されて います。 の関係者が出席しました。JBIC の金森邦泰調査役は、 「日本の『も のづくり』拠点に対するサウジアラビア側の期待の大きさを感じまし た」 と振り返ります。 欧州や北アフリカ向けの生産拠点に ダンマン第 2 工業団地に建設されたこの工場では、原材料を溶 解する高周波炉、回転する円筒金型に溶湯(溶融させた金属) を流 してチューブをつくる遠心力鋳造設備、 さらに、内面加工、組立・溶 接設備などを備え、石油化学プラント用の反応管を一貫生産してい ます。 サウジアラビアへの日本の製造業企業の進出例は少なく、 「先行 事例として、他の日本企業からアドバイスを求められることもしばし Development Companyとの合 弁 企 業で、2009 年 12月、同 国 ば」 と富田課長は話します。2011 年 10月には品質マネジメントの 東部州ダンマン市に設立されました。 その後、石油化学プラント用の 国際規格 ISO9001を取得、今後も高品質部品製造を進めるほ 耐熱鋳鋼チューブ 「反応管」 の製造工場の建設が進められ、2011 か、中東のみならず、 この工場から欧州や北アフリカ向けへの製品 年 2月に生産を開始、以後順調に操業を続けています。 の輸出も具体的に進められています。 「石化プラントでは、1,000℃前後に加熱した反応管の中に原料 金森調査役は 「サウジアラビアは、 日本にとって最大の原油供 のナフサやエタンを通すことで熱分解を行い、 エチレンやプロピレン 給国であり、輸入原油の約 3 割を供給する重要なパートナー国で などを製造します。 このため反応管は、石化プラントには欠かせない す。JBICは、本件のように日本とサウジアラビア両国の経済関係の 重要な設備となっています」 と、 クボタ素形材事業部素形材開発部 深化・発展にも資す の富田雅之技術課長は説明します。 る形で、今後も日本 クボタは、 この反応管の分野で世界トップクラスのシェアを有して の産業の国際競争 います。 これまで日本(大阪府枚方市、三重県鳥羽市)、 カナダ、中 力 の 維 持・向 上 に 国に生産拠点を展開してきました。KSCは、豊富な原油、 ガス埋蔵 つながるビジネスを 量を背景に石油化学産業の成長が著しいサウジアラビアに生産拠 一層支援していきた 点を設立し、中東市場のみならず北アフリカや欧州市場にも販売す いと考えています」 と ることを目的に設立されました。 語っています。 一方、 サウジアラビアでは、豊富に産出される原料を背景に、石 クボタの富田課長(右) と金森調査役 KSC への融資 業を振興し、付加価値の高い製品づくりと雇用創出に力を注ぐサウ JBIC は、2010 年 3 月に、クボタとサウジアラビア王国法人 Tharawat の進んだ技術を学べる機会として、 このプロジェクトは期待を集めて Development Companyとの合弁企業Kubota Saudi Arabia Company, (クボタ51%、Tharawat Development Company LLC(以下KSC) 49%出資)に対し、1,020万ドル限度(JBIC融資分)の貸付契約に調印しまし います。 た。本融資は (株)三井住友銀行との協調融資です。 ジアラビア側にとっても、長期的な雇用促進につながるほか、 日本 2011 年 11月16日には現地で竣工式が行われ、 日本側関係者 やパートナー企業に加え、現地の州政府や取引先企業からも多数 本融資は、KSCが同国東部州ダンマン市に建設した石油化学プラント用チュ ーブの製造工場建設に必要な資金として利用されています。 表紙 万国旗(©PHOTO KISHIMOTO/amanaimages) 国際協力銀行では、 本誌を季刊で発行しています。 URL: http://www.jbic.go.jp 油化学工業の増強が強力に推進されています。石油化学関連産 2012年1月発行 KSCは、 (株) クボタとサウジアラビアの 投 資 会 社 Tharawat Tel. 03-5218-3100 国際協力銀行 企画・管理部門 国際経営企画部 報道課 サウジアラビア側からも寄せられる期待 2012 January 特集 特集 アンケートから読み解く 海外事業展開動向 エネルギー資源の安定確保 2011 年度 2 「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」 国民生活・経済活動を支えるために わが社の海外物語 わが社の海外物語 SpotlightSpotlight 電動小型車両を中国 部品メーカーから世界的 ・江蘇省で本格生産サウジアラ JBIC出資の ビアで、 石化プラント用 株式会社 筑水キャニコム(福岡県うきは市) メガネフレームメーカーへ 鋳鋼製品工場が竣工 シンガポールの発電会社 株式会社シャルマン (福井県鯖江市)