...

プロテイナーゼインヒビターのX線解析

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

プロテイナーゼインヒビターのX線解析
I
特
集 ●プロテイナーゼインヒビター研究の新しい動きプロテイナーゼインヒビターの
X線 解 析 され た イ ン ヒ ビ ター の 立 体 構 造 の 比 較 か ら, 次 の点 が 明 ら か に さ れ た 。(1)イ ン
ヒ ビ タ ー の主 接 触 領 域 の コ ンホ メー シ ョン の類 似 性 は,
そ の 種 類 に よ らず 非 常 に高 い 。(2)
一 方, そ の二 次 接 触 領 域 の構 造 は 多様 で あ る。(3)イ ン ヒビ タ ー が プ ロテ イ ナ ー ゼ と複 合 体
Database Center for Life Science Online Service
を形 成 して も,
そ の主 接 触 領 域 の コンホ メ ー シ ョ ンは 二 次 接 触 領 域 と の間 の相 互作 用 に よ
り安 定 に保 持 さ れ て い る。 こ の た め,
線 解析 の結 果 を基 に,
複 合 体 は 反 応 中間 体 の 状 態 の ま ま で 変 化 しな い 。X
イ ン ヒ ビ タ ー の二 次接 触 領 域 が 果 た して い る 重 要 な 役 割 につ い て 述
べる。
は じめ に
プ ロ テ イナ ー ゼ の構 造 研 究 と とも に, そ の
種 々の イ ン ヒ ビ タ ーの 結 晶解 析 に よ る構 造 研 究 も よ く行
一 もプ ロテ イ ナ ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー との 比 較 と い うこ とで
と りあ げ た 。
な わ れ て きた 。 い わ ゆ る, イ ン ヒ ビタ ー単 独 の, ま た,
そ の プ ロテ イナ ー ゼ との複 合 体 の結 晶 につ い て の解 析 が
.
Kunitz
イ ン ヒビ タ ー
これ に あた る。
プロ テ イナ ー ゼ は一 般 に結 晶性 が よ く, 高 分 解 能 の解
析 が 行 な わ れ て い る こ とが 多 い が, イ ン ヒ ビ ター単 独 で
1. ウ シ 塩 基 性 膵 臓 ト リ プ シ ン イ ン ヒ ビ タ ー
BPTIは
Kunitz
は結 晶 性 が 悪 く, 高 分 解 能 解 析 が む ず か しい もの も 多
6500,
い。 ところ が, プ ロテ イナ ーゼ との 複 合 体 結 晶 を つ く る
ー であ る
と, 見 か け の分 子 量 が 大 き く複 難 に な るが, 結 晶 性 は よ
体 の 構 造 は Huber
くな り, 高 分 解 能 の解 析 が 可 能 にな る も の もあ る。 複 合
BPTI
体 結 晶 の解 析 は機 能 につ い ての 知 見 が 得 られ るだ け でな
ア ミ ノ 酸58残
基 か ら な る ト リ プ シ ン イン ヒビ タ
。BPTI鉛
よ びBPTIと
(0.15nm)^<1,2)>,
BPTI-ト
リ プ シ ノ ー ゲ ン複 合 体
に 有利 な こ とで あ る。
ンA複
Streptomycesサ ブチ リシ ン イ ン ヒ ビ ター (SSI)
につ
扱 わ な い。 こ こ で は Kunitz
型 のBPTI,
の オ ボ ム コイ ドイ ン ヒ ぐタ ー, PSTI,
ター, そ して Bowman-Birk
STI, Kazai 型
ポ テ トイ ン ヒ ビ
型 の イ ン ヒ ビタ ー の構 造 に
つ い て解 説 す る。 なお, あ る種 の ア ミラ ー ゼ イ ン ヒ ビタ
Atsuo
Suzuki,
Takashi
Yamane,
Tamaichi
Ashida.
リ プ シ ン複 合 体(0.19
ン ヒ ド ロ ト リ プ シ ン複 合 体^<4)>,
BPTI-ト
く, 高 分 解 能 解 析 を可 能 に して くれ る とい う点 で も非 常
い て はす で に多 くの解 説 が な され て い る の で, こ こ で は
プ ロ テ イ ナー ゼ の 複 合
の グ ル ー プ に よ り精 力 的 に 研 究 さ れ,
nm)^<3)>, BPTI-ア
合体
(BPTI)
に よ り 最 初 に 単 離 され た分 子量
(0.19nm)^<5)>,
(0.25nm)^<6)>の
BPTI-カ
リ ク レイ
結 晶 構 造 が 決 定 され てい る。
か っ こ の 中 は分 解 能 を 示 して い る。
BPTI分
nm,
示 す よ う に 洋 梨 形 で,
球 の 部 分 の 直 径 は1.9nmで
要 素 は2本
とC末
子 は 図1に
あ る。分 子 の二 次 構 造
鎖 逆 平 行 β シ ー ト (16∼24お
端 の αヘ
(reactive
site)
リ ッ ク ス (47∼52)
はLys15で,
長 さ2.9
よ び29∼35)
であ る。 反 応 部 位
分 子 の 頭 部 に 位 置 し, 表
名 古 屋 大 学 工 学 部応 用 化 学 科 (〒464名
古 屋 市 千 種 区 不老 町)
[Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Nagoya University, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya 464,
Japan]
X-ray Structure Analyses of Proteinase Inhibitors
Key【インヒビターの立体構造】【
word
主接触領域 の相 同性】 【
二次接触領域の役割】
929
12
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 34
No. 8
(1989)
触 領 域 の コ ンホ メ ー シ ョン を安 定
に保 持 す る重 要 な 役 割 を 果 た して
い る こ とか ら, そ の機 能 に 着 目 し
て, 保 持 領 域 (support region)
と
よぶ ほ うが 適 して い る よ うに 思 わ
れ る。 プ ロテ イナ ーゼ と二 次 接 触
領 域 の間 の相 互 作 用 は, ト リプ シ
ン との複 合 体 に お け る よ りも, カ
リ ク レイ ン との 間 の ほ うが よ り緊
密 であ る。 これ は, BPTI-ト
リプ
シ ン複 合 体 中 で はBPTIと
ト リ
プ シ ンを結 び つ け る8個 の 水分 子
が 存在 して い る の に対 して, BPTI
と カ リク レイ ンの 間 に は そ の よ う
Database Center for Life Science Online Service
な 水分 子 が 見 い だ さ れ て い な い こ
と と対応 して い るの か も し れ な
い。
図1.
BPTIのC^α
黒 丸 は ジ ス ル フ ィ ド結 合 を 表 わ して い る。0.25nm分
れ た 精 密 化 前 の モ デ ル で あ る。
結 ぼれ
外側 の
ル ー プ 中,
反 応 部 位 を 含 む13∼18の
プ シ ン と 直 接 接 触 す る こ と か ら,
contact
region)
セ グ メ ン トは ト リ
主 接触 領 域
も カ リ ク レイ ン と
の複 合 体 形 成 時 に お い て も よい一
た2本
お い て,
主 鎖 の コ ンホ メー シ ョ
ンは, BPTIで
解 能 の構 造 解 析 よ り得 ら
面 に 露 出 し て い る 。 分 子 上 部 はCys14-Cys38で
の ル ー プ よ りな っ て い る 。 図1に
BPTIの
分 子 モ デ ル^<1)>
(primary
致 が み ら れ る。 主 接 触 領 域 は プ ロ テ イ ナ ー ゼ と結 合 し て
も,
元 の コ ンホ メ ー シ ョ ンが わ ず か に 変 化 す る に す ぎ な
い 。 一 方,
プ ロテ イ ナ ー ゼ の構 造 に関 して は複 合 体 形 成
に よ る 若 干 の 変 化 が み られ る 。BPTIと
と よぼれ て い る。 イ ン ヒ ビタ ー の主 接
触 領 域 が プ ロ テ イ ナ ー ゼ の 活 性 部 位 近 傍 に 入 り込 み,
そ
た め にSer195O^γ
は0.1nm移
の接 触 を 避 け る
動 す る 。 一 方, His57の
イ ミダ ゾ ー ル 環 は 回 転 し, わ ず か に 移 動 す る 。 そ の 結
の 間 に 働 く 相 互 作 用 に よ り, 安 定 な 複 合 体 が 形 成 さ れ る
果,
わ け で あ る 。 主 接 触 領 域 に 接 す る34∼39の
が 形 成 さ れ る 。 こ の 水 素 結 合 はSer1950γ
は,
二 次 接 触 領 域 (secondary
contact
セ グメン ト
region)
と よぼれ
め に,
プ ロテ イ ナ ー ゼ の 間 の相 互 作 用 を理 解 す るた
BPTI-カ
リ ク レ イ ンA複
合 体 中 で の形 成 に関 与 し
とHis57N^<ε2>の
間 に0.29nmの
水素結合
の コンポメー
シ ョ ン の 自 由 度 を 限 定 す る 効 果 を も っ て い る 。His57
N^<δ1>とAsp102側
て い る。
BPTIと
Ser195O^γ
さ ら に,
が,
鎖 の 水 素 結 合 の 様 式 も若 干 変 化 す る 。
分 子 表 面 に あ る 親 水 性 の 活 性部 位 近 傍 の 残 基
イ ン ヒ ビ タ ー と の 複 合 体 の 形 成 に よ り,
よ り疎 水 性
て い る 両 分 子 の 主 鎖 セ グ メ ン トの 相 対 配 置 の 模 式 図 を 図
の環 境 に置 か れ る こ とに よ る水 素 結合 様 式 の変 化 も見 ら
2に 示 す6図
分 子 間 の相 互 作 用 に関
れ る 。Ser195O^γ
主接触領域 はカ リクレ
で 非 結 合 接 触 で あ る 。 さ ら に, 他 の3種
で 明 らか な よ う に,
与 す る 残 基 数 は 少 な い 。BPTIの
イ ン の2つ
41)
の セ グ メ ン ト(Ser214-Gly216,
Phe40-Gln
と 逆 平 行 β シ ー ト型 水 素 結 合 を 形 成 して い る 。 こ の
相 互 作 用 の 様 式 は,
BPTIと
トリプ シ ンあ るい は ト リプ
とLys15
(P_1) C'間
(scissile peptide
bond)
の カ ル ボ キ シ ル炭 素
ン 複 合 体 中 に お け るBPTIの
つ い て は,
二次接触領域
を 形 成 し て い る ほ か に,
(34∼39)
と水 素 結 合
(P_1C') の
Bowman-Birk
と保持領域 の役 割 に
イ ン ヒ ビ タ ー (BBI)
の項 で
述 べ る。
ジ ス ル フ ィ ド結 合 や 水 素 結 合 に
よ り主 接 触 領 域 の コ ン ポ メ ー シ ョ ン を 保 持 して い る 。 こ
2.
の よ う に,
ダ イ ズ に 含 ま れ る イ ン ヒ ビ タ ー に は,
930
トリ
有 意 な ピ ラ ミ ッ ド化 も 観 測 さ れ て い る 。 イ ン ヒ ビ タ ー と
プロ テ イ ナ ー ゼ と の 間 の 相 互 作 用
側 鎖 が ト リ プ シ ン のTyr99O^η
のBPTIと
プ シ ン 類 の 複 合 体 中 で 見 い だ さ れ た 切 断 ペ プ チ ド結 合
シ ノ ー ゲ ン複 合 体 中 にお い て も 同様 であ る。 カ リク レイ
は, Arg39の
の 距 離 は0.25nm
イ ン ヒビ タ ー に お い て こ の セ グ メ ン トは 主 接
ダ イ ズ Kunitz
ト リプ シ ン イ ン ヒ ビ タ ー
Kunitzト
(STI)
リプ
Database Center for Life Science Online Service
プ ロテ イ ナ ー ゼ イ ン ヒ ビ ター のX線
図2.
解析
13
BPTI
(黒 線) と カ リク レイ ン (白 線) の 相 互 作 用 の 模 式 図^<6)>
BPTIの
ア ミノ酸 配 列 番 号 に は900加
え て あ る。
図3.
STIの
立 体 構 造^<7)>
黒 く塗 りつ ぶ した セ グ メ ン トが トリプ シ ン と相 互 作 用 し てい る。 矢 印 は 切 断 結 合 を 表 わ して
い る 。116∼122は
不 明 瞭 な セ グ メン トで あ る。
シ ンイ ン ヒ ビタ ー
(STI)
ー が 知 ら れ て い る 。STIは
分 子 量20,100の
と Bowman-Birk
ア ミ ノ酸181残
イ ン ヒ ビ タ ー で,
イ ン ヒ ビタ
塗 りつ ぶ した セ グ メ ン トが ト リプ シ ン と相 互 作 用 して い
基 か らな る
る。STIとBPTIの
イ ン ヒ ビタ ー と して
間 に は ア ミノ酸 配 列 の相 同性 は な
い が, 主 接 触 領 域 の コ ンホ メ ー シ ョ ンに よ い一 致 が み ら
は 比 較 的 大 き な 蛋 白 質 で あ る。 そ の 反 応 部 位 はArg63
れ,
で,
は ト リプ シ ン と 複 合体 を 形 成 す る際 に,
2本
の ジ ス ル フ ィ ド結 合 を も っ て い る。STI-ト
シ ン複 合 体 の 結 晶 構 造 解 析
らか に さ れ たSTIの
ぼ 球 形 で,
は ね じれ た
い 。2本
(0.26nm分
立 体 構 造 を 図3に
直 径3.5nmの
β シ ー ト型 で,
離 能)
リプ
に よ り明
ト リプ シ ン との 相 互 作 用 の様 式 も 同 じで あ る。STI
の ペ プチ ド結 合 が 切 断 され, Arg63
Arg63-Ile64
(P_1) C'は 四面 体 型
示 す^<7)>。STIは ほ
構 造 とな って い る。 これ は, 主 接 触 領 域 とイ ン ヒ ビタ ー
大 きさ で あ る。そ の二 次 構 造
の他 の部 分 との 間 に ほ とん ど相 互 作 用 が 見 られ な い こ と
αヘ リ ッ クスを 含 ん でい な
の ジ ス ル フ ィ ド結 合 は 分 子 の 表 面 上 に あ る が,
主 接 触 領 域 と は か な り離 れ て い る 。 図3に
お い て,
黒 く
に よ るた め か も しれ な い 。BPTIや
後 述 の イ ン ヒ ビタ ー
に お い て は, P_1C'の ピ ラ ミッ ド型 構 造 へ の 変 化 は起 こ
っ て も, STIの
よ うに 四 面 体 型 構 造 を とる例 は な い。
931
14
蛋 白 質
II.
1.
Kazal
核 酸
酵 素
Vol. 34
No. 8
(1989)
イ ン ヒ ビ ター
オ ボ ム コイ ド (ovomucoid)
鳥類 の 卵 白中 に も 多 数 の イ ンヒ ビ タ ーが 含 まれ て い
る。 そ の主 要 な も の は強 い セ リン プ ロ テ イ ナ ーゼ 阻 害 機
能 を 有 す る糖 蛋 白質 イ ン ヒ ビタ ー,
オボムコイ ドで あ
る。 オ ボ ム コ イ ドは, 膵 臓 分 泌 Kazal
ビター (PSTI)
トリプ シ ンイ ン ヒ
と相 同 な 構 造 の ドメ イ ンが3個 鎖 状 に
つ な が った 多 重 機 能 イ ン ヒ ビタ ー で あ る。オ ボ ム コ イ ド
の反 応 部 位 は互 い に独 立 して い る の で, オ ボ ム コ イ ド1
分 子 は3分 子 ま で の プ ロテ イ ナ ー ゼ を結 合 阻 害 で き る。
そ の 特 異 性 は起 源 に よ り多 様 で あ る。 オ ボ ム コイ ドの第
2ド メ イ ンと第3ド
鎖 を,
リボ ンは α ヘ リ ック スを 表 わ して い る。
メイ ンを結 ぶ コネ クシ ョ ンペ プ チ ド
は 容 易 に加 水 分 解 され, 第3ド
Database Center for Life Science Online Service
図4.
OMJPQ3の
二 次 構 造 の模 式 図^<8)>
小 さい 矢 印 は 反 応 部 位 を 示 して い る 。大 きい 矢 印 は β
メイ ン
的 堅 い と考 え られ る。 一 方, 主 接 触 領 域 は, 若 干 異 な る
に 分 か れ る。 これ らの ドメイ ンは それ ぞれ 独 立 に活 性 を
メ イン と1∼2ド
プ ロテ イ ナ ーゼ の基 質 結 合 部 位 に適 合 で き る程 度 の 柔 軟
保 っ て い る。 第3ド
性 を有 して い る。
メイ ンの糖 化 は部 分 的 で, 精 製 に よ
り糖 鎖 の付 い て い る ドメイ ン と付 い て い な い ドメイ ンに
オ ボ ム コイ ド第3ド
メ イ ンの ア ミノ酸 配 列 の相 同 性 は
分 離 され る。 両 者 の 阻 害能 力 は 同 じで あ る。 一 般 に糖 蛋
高 く, そ の置 換 は反 応 部 位 近 傍 に集 中 して い る。OMSV
白質 の結 晶化 は, 糖 質 の 自由度 の 大 き さ, 親 水 性 の 高
P3は
さ, 不 均 一 性 な どの た め に 困難 で あ る。 この た め に, 結
晶 構 造 解 析 さ れ た もの は糖 鎖 を 含 ま な い 第3ド
メイ ンに
サ ブ チ リシ ンに 特 異 性 を示 し, OMTKY3は
キモ
トリプ シ ン, エ ラ ス タ ーゼ に 特 異 性 を 示 す が, そ の 差 は
反 応 部 位P_1が,
Met
(OMSVP3)
か らLeu
(OMTKY
関 した も の で あ る。 現在 ま で に, ウ ズ ラの 第3ド
メイ ン
3) に置 換 され て い る にす ぎ な い。 こ の よ うな 相 同 性 の
(OMJPQ3,
0.19nm分
解 能)^<8)>,
キ ジ の 第3ド
メイ ン
高 さ を反 映 し, 第3ド
(OMSVP3,
0.15nm分
解 能)^<9)>,
複 合 体 と して 七面 鳥 の
第3ド
メ イ ン (OMTKY3)
とSGPB^<*1> (0.18nm分
能)^<10)>,
お よびOMTKY3と
解
キ モ トリプ シ ン(0.18nm
分 解 能)^<11)>の
結 晶構 造 が 決 定 され て い る。
OMJPQ3の
Cys38,
反 応 部 位 はLys18で,
Cys16-Cys35の
され て い る。 第3ド
Cys8-
間 に ジ ス ル フ ィ ド結 合 が 形 成
メ イ ンの二 次 構 造 は3本 鎖 逆 平 行 β
シ ー トと αヘ リ ッ クスか ら構 成 され,
で き る。 主 接 触 領 域 (13∼21)
のOMTKY3の
構 造 は, OMJPQ3やOMSVP3の
構
造 と よ く一 致 し, 複 合 体 を 形成 して もほ とん ど構 造 が変
化 しな い こ とを 示 して い る。 しか し, プ ロテ イナ ー ゼ の
二 次 構 造 の模 式 図 を 図4に 示 す。56残 基
か らな るOMJPQ3の
メイ ンは 種 が 異 な って も立 体 構 造
に大 きな差 は見 られ な い。 プ ロテ イ ナ ー ゼ との複 合 体 中
β_1β_2α
β_3と 記 述
の コ ンホ メー シ ョ ンは,
活 性 部 位 近 傍 の 接 触 領 域 に お い て は, His57N^<ε2>と
Ser195O^γ の 間 に 強 い 水 素 結 合 が形 成 され るな ど, 小 さ
いが 有 意 な コ ン ボ メ ー シ ョン の変 化 が み られ る。複 合 体
中 のOMTKY3の
切 断 ペ プチ ド結 合 は平 面 か ら有 意 に
ゆ が ん で い な い。Lys15
は, SGPBと
(P_1) C'とSer195O^γ
の複 合 体 中 で は0.27nm,
間距 離
キ モ ト リプ シ ン
保 持 領 域 (31∼36)
か らの水 素 結 合 に よ り保 持 され て い
との複 合 体 中 で は0.295nmで,
る。 中 で も Kazal
イ ン ヒ ビタ ー で非 常 に保 存 性 の高 い
に は短 い非 結 合 性 相 互 作 用 しか 存 在 して いな い。
Asn33が
主 接 触 領 域 と保 持 領 域 間 の ス ペ ー サ ー と して,
主 接 触 領 域 の構 造保 持 上 非 常 に重 要 な 役 割 を果 た して い
る。Asn33の
190と
側鎖 は, 反 応 部 位 前 後 のPro170,
Asp
水 素 結 合 を 形 成 し,反 応 部 位 の コ ンホ メ ー シ ョン
を 固定 して い る。 さ らにAsn36Nと
る こ とに よ り, Cys35の
水 素結 合 を 形成 す
配 向 を も規 定 して い る。保 持 領
域 は β_2鎖の末 端 と αヘ リ ヅ クス の先 端 に含 まれ, 比 較
*1 Streptomyces griseus protease
932
Ser195O^γ とP_1C'の 間
B
2.
膵 臓 分泌
Kazal
ト リプ シ ン イ ン ヒ ビ タ ー
(PSTI)
56残 基 か らな るPSTIの
反 応 部 位 はArg18で,
の ジス ル フ ィ ド結 合 を 含 ん で い る。IPSTIと
ー ゲ ン との複 合体 の 結 晶 構造 か ら
, PSTIの
求 め られ て い る^<12)>。
図5に,
PSTIとOMJPQ3の
3本
トリプ シ ノ
立体構造 が
分子
プ ロ テ イ ナ ーゼ イ ン ヒ ビタ ー のX線
図5.
PSTI
構 造 の比 較 を示 す 。 オ ボ ム コ イ ド第3ド
ノ酸 配 列 の 相 同 性 の低 いN末 端15残
とOMJPQ3
メイ ン との ア ミ
15
(白 線) の 立 体 構 造 の 比 較^<12)>
域 の コ ンホ メー シ ョ ンが 同 じで あ る こ とか ら, 両 イ ンヒ
基 と αヘ リッ クス
ビタ ー の プ ロテ イ ナ ー ゼ に対 す る 阻 害 機 構 は同 じと考 え
セ グ メ ン トを 除 き, 立 体 構
て よい で あ ろ う。 こ の こ とは, 哺 乳 類 の ト リプ シ ン族 と
造 の類 似 性 は非 常 に 高 い。 イ ン ヒ ビタ ー の機 能 に関 係 す
微 生 物 由来 のサ ブ チ リシ ン族 は, ア ミノ酸 配 列 も立 体 構
る主 接 触 領 域, 保 持 領 域 の コ ンホ メー シ ョ ンは 非 常 に
造 も異 な っ て い る に もか か わ らず, 基 質 結 合 様 式 は共 通
よ く一 致 して い る。PSTIのAsn33は
で あ り, 加 水 分 解 機 構 も 同 じで あ るこ とを 示 して い る。
か ら β_3鎖へ続 く40∼49の
Database Center for Life Science Online Service
(黒 線)
解析
第3ド
メ イ ンのAsn33と
オ ボ ム コイ ド
同 じ く 主 接 触 領 域 と保 持 領
III.
域 と を固 定 す るス ペ ー サ ー と して 作用 して い る。Ser
195O^γ…Arg18
(P_1)C'間 距 離 は0.268nmで
る。 しか し, P_1C, P_1C',P_2N平 面 か らのP_1Oの
ずれ は
そ う大 き くな く, P_1C'は 完 全 な四 面 体 構 造
に は な っ てい な い。P_1C'の この よ うな 状態 は, 切 断 ペ プ
チ ド結 合 が ほ ぼ 平面 構 造 で あ るオ ボ ム コイ ド第3ド
ンと は異 な っ てい るが, BPTIと
中 にお け るBPTIの
ンヒ
ビタ ー
, 短 い非 結
合 性 相 互 作 用 が 働 き, P_1C'の 構 造 は ピ ラ ミッ ド型 で あ
0.027nmと
Bowman-Birkイ
メイ
ト リプ シ ン類 の複 合 体
反 応 部 位 で見 いだ され た 状 況 と同
じで あ る。
Bowman-Birk
イ ン ヒビ ター (以 後 , BBIと 略 す) は
マ メ科 の 種 予 中 に広 く見 い だ さ れ る イ ン ヒ ビタ ー で,
Bowman
に よ って初 め て ダ イ ズ中 に 見 いだ さ れ, Birk
らに よっ て そ の諸 性 質 が 研 究 さ れ た た め, こ の名 が つ け
られ て い る。 この型 の イ ン ヒ ビ タ ー は 分 子 量 が7000∼
9000程
度 と 比 較 的 低 分 子 量 な が ら, プ ロテ イ ナ ーゼ と
結 合 す る反 応 部 位 を2つ も っ て お り, 同時 に2分 子 の プ
ロテ イ ナ ー ゼ を阻 害 す る能 力 を もつ , いわ ゆ る双 頭 型 の
イ ン ヒ ビ ター で あ る。
3.
Kazal
Kazalイ
と,
イ ン ヒ ビ タ ー とSSIと
の相同性
ン ヒ ビ タ ー の 反 応 部 位 の コ ンホ
同 じ ト リ プ シ ン 族 を 阻 害 す る Kunitz
図6に,
メー シ ョ ン
こ の型 の イ ン ヒビ タ ー の例 ど して, ピー ナ ツ
か ら抽 出 され たA-IIと
よぼ れ るBBIの
ア ミノ酸 配 列
イ ン ヒ ビタ ー
を示 す 。 この 図 で は, BBIす べ て に お い て 保 存 され て い
顕 著 な相 同性 を示 す 。 興 味 あ
る7本 の ジス ル フ ィ ド結 合 に よ り, 2つ の相 同 性 の あ る
イ ン ヒ ビタ ー で 見 い だ さ れ た 反 応 部 位
ドメイ ンが 形成 され て い る様 子 を模 式 的 に 描 い て あ る。
に 対 す る 主 鎖 の β_1β_2α
の 折 れ た た み と ジ ス ル フ ィ ド結
図6の 左側 の ジ ス ル フ ィ ド結 合 で 作 られ た ペ プ チ ド鎖 の
合 の トポ ロ ジ ー と 同 じ も の が,
放 線 菌 起 源 のSSIに
ル ー プI, II,
存 在 す る こ と で あ る。SSIと,
同 じ放 線 菌 起 源 の プ ラ ス
の コ ンホ メ ー シ ョ ン と は,
る の は,
Kazal
も
ミ ン を 阻 害 す る プ ラ ス ミ ノ ス ト レ プ チ ン (plasminostre
ptin;
PSN)^<13)>, お よ びOMJPQ3の
主 接 触 領 域 と保 持
領 域 の 構 造 は 非 常 に よ く 一 致 し て い る^<8,13)>。
遺伝的 に よ
く保 存 さ れ て い るAsn残
SSIで
を 占 め,
は99位,
PSNで
基
(OMJPQ3で
は95位)
は33位,
も 相 対 的 に 同 じ位 置
主 接 触 領 域 の コ ンホ メ ー シ ョ ン を 固 定 し て い
る 。 こ の よ う に, Kazal
イ ン ヒ ビ タ ー とSSIの
主接触領
IIIからな る領 域 が ドメ イ ン1,
右側 のル
ー プI' , II', III'か らな る 領 域 が ドメ イ ン2と よば れ て
お り, 2つ の ドメイ ン間 に は ア ミノ酸 配 列 の相 同性 が 見
い だ さ れ て い る。 この こ とは, BBIが 遺 伝 子 の重 複 に よ
る分 子 進 化 の産 物 で あ るこ とを示 唆 す る も の で あ る。
構 造 解 析 はBBI単
独 の もの と して は ピー
ナ ツ由 来 の イ ン ヒ ビタ ーA-IIに
BBIのX線
つ い て 行 な わ れ てお り,
プ ロテ イ ナ ー ゼ と複 合 体 をつ くっ た 状態 で の解 析 例 と し
て は,
ト リプ シ ン と1 : 1で 結 合 した ア ズキ 由 来 の イ ン
933
16
蛋 白 質
核 酸
酵 素
図6.
A-IIの
Vol. 34
Database Center for Life Science Online Service
(1989)
一 次 構 造 の模 式 図
太 い 線 は ジス ル フ ィ ド結 合 を, 矢 印 は2つ
図7.
No. 8
A-IIのC^α
の反 応 部 位 を 表 わ して い る。
分 子 モ デ ル
太 い 線 は ジス ル フ ィ ド結 合 を, 矢 印 は 反 応 部 位 を 表 わ して い る 。
ヒ ビタ ーAB-Iの
BBIに
解 析 例 が あ る。 しか しなが ら, 同 一 の
お い て, 単 独 の状 態 とプ ロテ イ ナ ーゼ と複 合 体 を
体 構 造 に お い て も相 同 な ドメイ ン構 造 を と って い る (図
に お い て左 と右)。 そ して,
この ドメ イ ンが 互 い に反 対
つ くった 状 態 の両 方 につ い て解 析 に成 功 した 例 は報 告 さ
方 向 を 向い て い るた め, A-II分
れ てお らず, 今 後 の研 究 課 題 とな って い る。
を軸 とす る近 似 的 な 分 子 内2回 軸 が 存 在 す る。 な お, こ
こ こ で は, A-IIとAB-I-ト
リプ シ ン複 合 体 の両 結 晶
立 体 構 造 は, 電 子 密 度 が 異 常 に低 く解 釈 のつ
か な いN末 端 の8残 基 とC末 端 の2残 基 を除 く60残
につ い て 明 らか に され た^<14)>。
図7にA-IIの
ル を示 す 。A-IIは,
伸 びた 分 子 の 両 端 に2つ
nm離
基
α炭 素 モ デ
一 方 向 に長 く伸 び た 形 を してお り,
そ の大 き さ は約4×2×2nmで
ドメイ ン構造 は, 次 に述 べ るAB-Iの
あ る。 そ して, こ の長 く
の 反 応 部 位 (図矢 印) が3.4
れ て 突 き出 て い る。 こ の よ うに2つ
の反 応 部 位 が
イ ン構 造 がBBIに
A-IIの2つ
一 般 的 な も の で あ る と予 想 され る。
の ドメイ ンの 間 に は, 疎 水 性 の ア ミノ酸
残 基 が は さみ 込 まれ,
る。 またA-IIで
小 さな 疎 水 性 の 核 を つ く って い
は, 図 の 方 向 か らみ た と きに は裏 側 に
相 当す る 面 だ け に 疎 水 性 の 残 基 が い くつ か 突 き出 て い
る。 通 常, 蛋 白質 の分 子の 表 面 に は, 疎 水 性 の 残 基 が 突
き 出 て は い な い。 そ こで, これ ら の残 基 が 分 子 の 機 能 上
離 れ て い るた め に, こ の イ ン ヒビ タ ー は, 1分 子 で 同時
何 らか の働 き を も って い る と 予 想 され るが,
に2分 子 の プ ロテ ィ ナ ー ゼ を 阻害 で き る の で あ る。A-II
A-IIはこ
をつ くっ て い る こ と か ら,
も た な い。 こ の こ とか ら, A-IIの
A-IIが2量
構 造 は お も に7本 の
ジ ス ル フ ィ ド結 合 に よ り保 持 され て い る と考 え られ る。
ア ミノ酸 配 列 に相 同 性 の あ る2つ の ドメイ ン領 域 は, 立
結晶中 で
の面 ど う しで2つ の 分 子 が 接 しあ って2量 体
は, αヘ リ ッ クスや βシ ー トとい った 特 定 の二 次 構 造 を
934
ドメ イ
ン構 造 とも 明 らか な 相 同性 が あ るた め, こ の よ うな ドメ
構 造 につ い て順 に述 べ る。
A-IIの
のA-IIの
子 に は, 図 の 中 央 付近
これ ら の疎 水 性 の 残 基 は,
体 を構 成 す る とき に分 子 ど う しを 「
接着」
す る働 き を して い る と考 え られ る。
一方
, AB-I-ト リ プ シ ン複 合 体 の構 造 解 析 にお い て
プロ テ イー
図8.
AB-I-ト
ゼ イ ン ヒ ビ タ ーのX線
解析
17
リプ シ ン結 合 領 域 の 分 子 モ デル
阻 害 活 性 ル ー プ (ル ー プI)
の分 子 モ デ ル
Database Center for Life Science Online Service
黒 塗 の 原 子 が ト リプ シ ンの 活 性 中 心 の, 白 抜 き の 原 子 がAB-Iの
で あ る。 点 線 は 水 素 結 合 を 表 わ してい る。
図9.
イ ン ヒビ タ ー の阻 害 活 性 領 域 付 近 の構 造 の比 較
(左) AB-I-ト リプ シ ン複 合 体, 中央PSTI-ト
リプ シ ノー ゲ ン複 合 体, (右) BPTI-ト
リプ シ ン複 合 体 。 黒 塗 の原 子 は
トリプ シン (ト リプ シ ノ ー ゲ ン) の結 合 領 域 の主 鎖 の分 子 モ デ ル で あ る 。 イン ヒ ビタ ー は, そ れ ぞ 乳 対 応 す る トリプ シ ン
結 合 領 域 の モ デ ル で, 主 接 触 領 域 と二 次接 触 領 域 だ け は 側 鎖 まで 描 い て あ る。 点 線 は 主 接 触 領 域 と二 次 接 触 領 域 の間 に 働
く水 素 結 合 を 表 わ して い る 。
は, AB-Iの
トリプ シ ン結 合 ドメイ ンで あ る ドメ イ ン1
の 基 質 に お い て切 断 を 受 け る結 合, す なわ ち, 切 断 結 合
の構 造 と, そ の トリプ シ ン との相 互 作 用 の様 子 が 明 らか
に 相 当 す る。 図8か
とな っ た^<15)>。
この複 合 体 で は, AB-Iと
トリプ シ ンは,
質 認識ポ ケ ッ トに深 く入 り込 ん で い る様 子 が わ か る。 ま
反 応 部 位 と トリプ シ ンの 活性 中心 付 近 とい う,
た, 切 断結 合 の カ ル ボ ニ ル炭 素 は, こ の図 の上 方 か ら接
AB-Iの
ら, Lys26の
側 鎖 は トリプ シ ンの基
非 常 に 限 られ た 領 域 で相 互 作 用 して い る にす ぎ な い。 図
近 して い る ト リプ シ ンの 活 性 中 心 のSer195のO^γ
8は,
撃 を受 け て お り, O^γ とカ ル ボ ニ ル の 炭 素 間 の 距 離 は
そ の相 互 作 用 の様 子 を 描 い た も の で あ る。
AB-Iで
は, Lys26のC末
端 側 のペ プ チ ド結 合 が 通 常
0.23nmと,
の攻
フ ァ ンデ ル ワー ル ス結 合 距 離 と共 有 結 合 距
935
18
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 34
No. 8
(1989)
離 の 中 間 の値 とな っ て い る。 しか しなが ら, カ ル ボ ニ ル
基 の 平 面 性 は保 た れ てお り, また, ペ プ チ ド結 合 の切 断
も起 きて い な い。 以 上 の事 実 か ら, AB-I-ト
リプ シ ン複
合 体 は, ペ プ チ ド結 合 の切 断 の起 こ る前 の ミカ エ リス型
の 中 間 体 に相 当す る も の と考 え られ る。
本 来 の基 質 で は, こ の 中間 体 の状 態 か ら切 断結 合 付 近
の 主 鎖 の コ ンボ メー シ ョ ンの変 化 が起 こ り, ペ プ チ ド結
合 の切 断 が起 こ る の で あ るか ら, イ ン ヒ ビ ター で は, こ
の 変 化 を くい止 め る何 らか の機 構 が あ る もの と予 想 で き
る。 そ こ で, イ ン ヒ ビ ター の切 断 結 合 付 近 の 構造 を詳 し
く調 べ て み る と,
ト リプ シ ン と 直 接 相 互 作用 を して い
る, いわ ゆ る主 接 触 領 域 (Cys24∼Met28)
ー シ ョンを , Pro29で
Cys32ま
の コ ンホ メ
折 り返 した あ とのPro30か
ら
で の領 域, す なわ ち二 次 接 触 領 域 が, 何 本 か の
水 素 結 合 やCys24とCys32の間
Database Center for Life Science Online Service
リボ ンは α ヘ リ ッ クス を 表 わ して い る。
Met59で
この よ うな 構 造 は, 他 の型 の イ ンヒ ビタ ー と プ ロ テ イ
ナ ーゼ と の複 合 体 の構 造 中 に も見 られ る。図9は,
AB-I-
ト リプ シ ン複 合 体 の切 断 結 合 付 近 の構 造 を, PSTIと
リプ シ ノ ー ゲ ンと の複 合 体, お よびBPTIと
ト
トリプ シ ン
と の複 合 体 のそ れ と比 較 した も の で あ る。3つ
Pro-Pro
を,
の ジ スル フ ィ ド結 合 に
よ り堅 固 な もの に して い る こ とが わ か った 。
比 較 す る と, AB-Iで
図10.
ポ テ トイ ン ヒビ ターCI-2の
二 次 構 造 の 模 式 図^<15)>
小 さ い 矢 印 は 反 応 部 位 を 示 して い る。 大 きい 矢 印 は β鎖
の構 造 を
は 主 接 触 領 域 と二 次 接 触 領 域 が
で折 り返 して 直 接 連 結 して い るが, 他 の も の で
あ る。CI-2の
す 。N末 端18残
二 次 構 造 の模 式 図 を図10に
基 はArg18位
示
で切 断 され, 結 晶 中 に
は含 まれ て い な い。 分 子 は くさび 形 で2.8×2.7×1.9
nmの
大 き さで あ る。 一 部 不 完 全 な4本 鎖 β シ ー ト構 造
が 分 子 の 中心 に あ り, そ の下 側 に αヘ リ ッ クスが 位 置 し
て い る。 分 子 上 部 の くさ び形 の 先 を 主 接 触 領 域(Gly
54-Ile63)
が 占 め て い る。 ほ とん どの イ ン ヒ ビタ ー は反
応 部 位 の近 くに ジ ス ル フ ィ ド結 合 を も っ て い るが, CI-2
は, こ の2つ の間 に 酵 素-イ ン ヒ ビタ ー の接 触 に 直 接 か
は分 子 中 に ジス ル フ ィ ド結 合 を 含 ん で い な い。 しか しな
か わ りの な い, か な り長 い ペ プ チ ド鎖 が入 っ て い る とい
が ら, β シー ト中 のArg65,
う違 い あ る。 しか しな が ら, ト リプ シ ンあ るい は トリプ
合 の両 側 に 位 置 す る残 基 と静 電 的相 互作 用 あ る い は 水素
シ ノ ー ゲ ン と直 接 接 触 して い る主 接 触 領 域 の構 造 は よ く
結 合 を 形成 す る こ とに よ りプ ロテ イナ ー ゼ の 加 水分 解 に
一 致 して お り, そ の 背 後 に あ る二 次 接 触 領 域 が ジス ル フ
よ り新 た に 生 じ る両 末 端 の 拡 散 の抑 制 な ど, ジ ス ル フ ィ
ィ ド結 合 や 水 素 結 合 に よ り主 接 触 領 域 を 支 え て い る とい
ド結 合 に 相 当 す る役 割 も果 た して い る と考 え られ る。 さ
Arg67の
側 鎖 は, 切 断 結
う構 造 に も共通 性 のあ る こ とが 明 らか とな った 。 以 上 の
らに, Arg65お
こ とか ら, 二 次 接 触 領 域 が 主 接 触 領 域 を 支 え る こ の よ う
で 相 互 作 用 し, そ の コ ンホ メ ー シ ョンを 安 定 に 保 持 して
な 構 造 上 の 特 徴 が, イ ン ヒ ビ タ ー の プ ロ テ イナ ーゼ 阻 害
い る。 と くに, Arg65が
機 構 に と って一 般 に 重 要 で あ る と考 え られ る。
よびArg67の
と同 等 の役 割 をCI-2に
す る必 要 が あ る。CI-2は
IV.
ポ テ トI/IIイ
ンヒ ビ ター
Kazal
側鎖 は 主 接触 領 域 との 間
イ ンヒ ビ タ ーのAsn33
お い て 果 た して い る こ とに 注 目
サ ブチ リシ ン と複 合 体 を 形 成
して も, そ の分 子 構 造 に は プ ロ テ イ ナ ーゼ と相 互 作 用 し
て い る主 接 触 領 域 を含 め ほ とん ど変 化 が 見 られ な い。 し
ポ テ トや そ の類 縁 植 物 も プ ロテ イ ナ ー ゼ イ ン ヒビ タ ー
か し, 複 合 体 を形 成 す る こ と に よ り主 接 触 領 域 の 熱 振 動
を 豊 富 に含 ん で い る。 そ の 中 で性 質 が よ く理 解 され て い
因 子 は有 意 に低 下 して い る。 こ の こ とは, 複 合 体 中 で の
る も の に ポ テ トIイ ン ヒビ タ ーが あ る。 こ の イ ン ヒ ビタ
主 接 触 領 域 の柔 軟 性 は も とのCI-2の
ー は ジ ス ル フ ィ ド結 合 を1本
す る大 麦 (badey
タ ー2
seed) か らの キ モ ト リプ シ ンイ ン ヒビ
(CI-2)^<16)>お
よびCI-2と
(subtilisin Novo)
CI-2は83残
936
しか 含 ま な い。 こ の族 に属
サ ブ チ リシ ン ・ノボ
複 合 体^<17)>が
結 晶構 造 解 析 さ れ て い る。
基 か らな り, 分 子 量は9250,
反応部位 は
場 合 と比 べ て減 少
し, プ ロテ イ ナ ー ゼ との相 互 作 用 に よ り分 子 の 中心 の骨
格 程 度 に ま で 堅 くな った こ とを示 して い る。
ポ テ トIIイ ン ヒ ビ ター はポ テ トIイ ン ヒビ タ ー に比 べ
は るか に 複雑 で, そ の 構 造 と機能 の解 明 は今 後 の課 題 と
な って い る。
プ ロテ イ ナ ー ゼ イ ン ヒ ビタ ー のX線
図11.
19
α ア ミラ ーゼ イ ン ヒ ビタ ーHoe-467Aの
立 体 構造^<18)>
側 鎖 も含 め, ボ ール アン ドス テ ィ ック モデ ル で表 わ して あ る。 こ こで の黒
Trp18-Arg19-Tyr20は
Database Center for Life Science Online Service
解析
丸 は 窒 素 原 子 を 示 して い る 。大 き い 白丸 は ジ ス ル フ ィ ド結 合 を 表 わ して い る。
お わ りに
V.
以 上, イ ン ヒ ビ タ ー にお い て プ ロテ イ ナ ー
ゼ の活 性 部 位 と直 接 相 互 作 用 す る主 接 触 領 域 の コ ンボ メ
α ア ミラ ー ゼ イ ンヒ ビ ター
ー シ ョ シの安 定 化 に果 た す 保 持 領 域 (二次 接 触 領 域) の
セ リ ン プ ロ テ イ ナ ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー の ほ か に,
αア ミ
役 割 につ い て述 べ て きた 。 イ レ ヒビ タ ー の 生 体 内 での 役
ラ ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー の 構 造 も 知 ら れ て い る 。 図11に,
割 につ い て は まだ 不 明確 な 点 も多 い。 しか し, そ の結 晶
構 造 解 析 の行 なわ れ た 放 線 菌 由来 の αア ミラ ーゼ イ ンヒ
構 造 解 析 に よ りイ ン ヒ ビタ ー のみ な らず プ ロテ イ ナ ーゼ
ビ タ ーHoe-467Aの
二 次 構 造 の 模 式 図 を 示 す^<18)>。
図12
に 見 ら れ る よ う に, Hoe-467Aは3本
が2つ
組 み 合 わ さ っ た βバ レ ル 構 造 を し て い る 。 図 中 で
は,
に,
の逆 平 行 βシ ー ト
β鎖I
VI
(11∼17),
(64∼73),
る 。Hoe-467Aと
較 か ら,
II
III
(19-26),
(30-37),
同 族 の Haim
Trp18-Arg19-Tyr20が
V
IV
(51∼57)
(40∼49)
が手前
が 奥にあ
II の ア ミノ 酸 配 列 の 比
プ ロテ イ ナ ー ゼ イ ン
ヒ ビ タ ー の 反 応 部 位 に 相 当 し,
αア ミラー ゼ との複 合 体
の 形 成 に 関 与 す る と推 定 さ れ て い る 。 反 応 部 位 は β鎖I
とIIの
VIの
プ に よ り保 持 さ れ て い る 。 ジ ス ル フ ィ ド結 合 は
Cys27,
Cys35-Cys73間
に 形 成 さ れ,
き て い る。 と ころ で, あ る種 の 穀物 ragi grain か ら単 離
され た αア ミラー ゼ イ ン ヒビ ターI-1は,
トリプ シ ンの
阻 害能 力 もも っ て い る こ とが示 さ れ た^<19)>。I-1は
分子量
9000程
度 の小 さ い蛋 白質 で あ るが, I-1と
の 複 合 体, I-1と
に, I-1と
αア ミラ ー ゼ
トリプ シ ン の 複 合 体 を 形 成 す る ほ か
αア ミラー ゼ お よび ト リプ シ ン の三 体 複 合 体
も形成 す る こ とか ら, 適 当 に 離 れ た αア ミラー ゼ 阻 害 部
位 と ト リプ シ ン阻 害 部 位 を もつ 双 頭 型 で あ る と推 定 さ れ
中に
る。 α ア ミラ ーゼ か プ ロ テ イナ ーゼ の ど ち らか を 阻 害 す
間のルー
る元 の イ ン ヒビ タ ーが 遺 伝 子 の 重 複 に よ り 双 頭 型 とな
Cys11-
り, 後 に 一 方 の ドメ イ ンが 異 な る機 能 を獲 得 した の か も
間 の 折 り返 し部 分 で あ る β タ ー ン (17∼20)
位 置 して い る 。 こ の 反 応 部 位 は β鎖V,
に関 して も機 能 や 分 子 進 化 につ い て の 理 解 が 高 め られ て
反 応 部 位 とは か
しれ な い 。I-1は
まだ 構 造 解 析 さ れ て い な い が, そ の構
な り離 れ て い る 点 が プ ロ テ イ ナ ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー と は 異
造 情 報 は イ ン ヒ ビ タ ー の機 能 と役 割 を考 え る うえ で, 重
な っ て い る 。 こ れ は,
大 な 知 見 を与 え る と思 わ れ る。
α ア ミラ ーゼ に よ って は この イ ン
ヒビ タ ー は 加 水 分 解 さ れ な い こ と に 対 応 し て い る の か も
しれ な い 。Hoe-467Aと
解 析 が 進 め ら れ て お り,
文
αア ミラー ゼ との 複合 体 の 構 造
献
α ア ミラ ーゼ イ ン ヒ ビ タ ー の機
能 の詳 細 な解 明 のた め に 今 後 の進 展 が 待 た れ る。
1)
2)
Huber, R., Kukla, D., Ruehlmann, A., Epp, O.,
Formanek, H.: Naturwissenschaften,
57, 389392 (1970)
Deisenhofer, J., Steigemann, W.: Acta Crystallogr.,
937
20
3)
4)
5)
6)
7)
8)
9)
Database Center for Life Science Online Service
10)
11)
12)
13)
14)
938
蛋 白 質
核 酸
酵 素
B 31, 238-250 (1975)
Huber, R., Kukla, D., Bode, W., Schwager,
P., Bartels, K., Deisenhofer, J., Steigemann,
W.: J. Mol. Biol., 89, 73-101 (1974)
Huber, R., Bode, W., Kukla, D., Kohl, W.,
Ryan, C. A.: Biophys.
Struct. Mechan., 1,
189-201 (1975)
Bode, W., Schwager, P., Huber, R.: J. Mol.
Biol., 118, 99-112 (1978)
Chen, Z., Bode, W.: J. Mol. Biol., 164, 283311 (1983)
Sweet, R. M., Wright, H. T., Janin, J., Cho
thia,C. H., Blow, D. M.: Biochemistry,
13,
4212-4228 (1974)
Papamokos, E., Weber, E., Bode, W., Huber,
R.: J. Mol. Biol., 158, 515-537 (1982)
Bode, W., Epp, O., Huber, R., Laskowski, M.
Jr., Ardelt, W.: Eur. J. Biochem., 147, 387395 (1985)
Read, R. J., Fujinaga, M., Sielecki, A. R., Ja
mes,M. N. G.: Biochemistry,
22, 4420-4433
(1983)
Fujinaga, M., Sielecki, A. R., Read, R. J.,
Ardelt, W., Laskowski, M. Jr., James, M. N.
G.: J. Mol. Biol., 195, 397-418 (1987)
Bolognesi, M., Gatti, G., Menegatti, E., Guar
neri,M., Marquart, M., Papamokos, E., Huber,
R.: J. Mol. Biol., 162, 839-868 (1982)
Kamiya, N., Mstsushima, M., Sugino, H.:
Bull. Chem. Soc. Jpn., 57, 2075-2081 (1984)
Suzuki, A., Tsunogae, Y., Tanaka, I., Yama
ne,T., Ashida, T., Norioka, S., Hara, S., Ike
naka,T.: J. Biochem., 101, 267-274 (1987)
Vol. 34
15)
16)
17)
18)
19)
No. 8
(1989)
Tsunogae, Y., Tanaka, I., Yamane, T., Kikka
wa,J., Ashida, T., Ishikawa, C., Watanabe, K.,
Nakamura, S., Takahashi, K.: J. Biochem.,
100, 1637-1646 (1986)
McPhalen, C. A., James, M. N. G.: Biochemis
try,26,
261-269 (1987)
McPhalen, C. A., Svendsen, I., Jonassen, I.,
James, M. N. G.: Proc. Natl.
Acad.
Sci.
USA, 82, 7242-7246 (1985)
Pflugrath, J. W., Wiegand, G., Huber, R.: J.
Mol. Biol., 189, 383-386 (1986)
Shivaraj, B., Pattabiraman,
T. N.: Biochem.
J., 193, 29-36 (1981)
Fly UP