Comments
Description
Transcript
プロテイナーゼインヒビターのX線解析
I 特 集 ●プロテイナーゼインヒビター研究の新しい動きプロテイナーゼインヒビターの X線 解 析 され た イ ン ヒ ビ ター の 立 体 構 造 の 比 較 か ら, 次 の点 が 明 ら か に さ れ た 。(1)イ ン ヒ ビ タ ー の主 接 触 領 域 の コ ンホ メー シ ョン の類 似 性 は, そ の 種 類 に よ らず 非 常 に高 い 。(2) 一 方, そ の二 次 接 触 領 域 の構 造 は 多様 で あ る。(3)イ ン ヒビ タ ー が プ ロテ イ ナ ー ゼ と複 合 体 Database Center for Life Science Online Service を形 成 して も, そ の主 接 触 領 域 の コンホ メ ー シ ョ ンは 二 次 接 触 領 域 と の間 の相 互作 用 に よ り安 定 に保 持 さ れ て い る。 こ の た め, 線 解析 の結 果 を基 に, 複 合 体 は 反 応 中間 体 の 状 態 の ま ま で 変 化 しな い 。X イ ン ヒ ビ タ ー の二 次接 触 領 域 が 果 た して い る 重 要 な 役 割 につ い て 述 べる。 は じめ に プ ロ テ イナ ー ゼ の構 造 研 究 と とも に, そ の 種 々の イ ン ヒ ビ タ ーの 結 晶解 析 に よ る構 造 研 究 も よ く行 一 もプ ロテ イ ナ ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー との 比 較 と い うこ とで と りあ げ た 。 な わ れ て きた 。 い わ ゆ る, イ ン ヒ ビタ ー単 独 の, ま た, そ の プ ロテ イナ ー ゼ との複 合 体 の結 晶 につ い て の解 析 が . Kunitz イ ン ヒビ タ ー これ に あた る。 プロ テ イナ ー ゼ は一 般 に結 晶性 が よ く, 高 分 解 能 の解 析 が 行 な わ れ て い る こ とが 多 い が, イ ン ヒ ビ ター単 独 で 1. ウ シ 塩 基 性 膵 臓 ト リ プ シ ン イ ン ヒ ビ タ ー BPTIは Kunitz は結 晶 性 が 悪 く, 高 分 解 能 解 析 が む ず か しい もの も 多 6500, い。 ところ が, プ ロテ イナ ーゼ との 複 合 体 結 晶 を つ く る ー であ る と, 見 か け の分 子 量 が 大 き く複 難 に な るが, 結 晶 性 は よ 体 の 構 造 は Huber くな り, 高 分 解 能 の解 析 が 可 能 にな る も の もあ る。 複 合 BPTI 体 結 晶 の解 析 は機 能 につ い ての 知 見 が 得 られ るだ け でな ア ミ ノ 酸58残 基 か ら な る ト リ プ シ ン イン ヒビ タ 。BPTI鉛 よ びBPTIと (0.15nm)^<1,2)>, BPTI-ト リ プ シ ノ ー ゲ ン複 合 体 に 有利 な こ とで あ る。 ンA複 Streptomycesサ ブチ リシ ン イ ン ヒ ビ ター (SSI) につ 扱 わ な い。 こ こ で は Kunitz 型 のBPTI, の オ ボ ム コイ ドイ ン ヒ ぐタ ー, PSTI, ター, そ して Bowman-Birk STI, Kazai 型 ポ テ トイ ン ヒ ビ 型 の イ ン ヒ ビタ ー の構 造 に つ い て解 説 す る。 なお, あ る種 の ア ミラ ー ゼ イ ン ヒ ビタ Atsuo Suzuki, Takashi Yamane, Tamaichi Ashida. リ プ シ ン複 合 体(0.19 ン ヒ ド ロ ト リ プ シ ン複 合 体^<4)>, BPTI-ト く, 高 分 解 能 解 析 を可 能 に して くれ る とい う点 で も非 常 い て はす で に多 くの解 説 が な され て い る の で, こ こ で は プ ロ テ イ ナー ゼ の 複 合 の グ ル ー プ に よ り精 力 的 に 研 究 さ れ, nm)^<3)>, BPTI-ア 合体 (BPTI) に よ り 最 初 に 単 離 され た分 子量 (0.19nm)^<5)>, (0.25nm)^<6)>の BPTI-カ リ ク レイ 結 晶 構 造 が 決 定 され てい る。 か っ こ の 中 は分 解 能 を 示 して い る。 BPTI分 nm, 示 す よ う に 洋 梨 形 で, 球 の 部 分 の 直 径 は1.9nmで 要 素 は2本 とC末 子 は 図1に あ る。分 子 の二 次 構 造 鎖 逆 平 行 β シ ー ト (16∼24お 端 の αヘ (reactive site) リ ッ ク ス (47∼52) はLys15で, 長 さ2.9 よ び29∼35) であ る。 反 応 部 位 分 子 の 頭 部 に 位 置 し, 表 名 古 屋 大 学 工 学 部応 用 化 学 科 (〒464名 古 屋 市 千 種 区 不老 町) [Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Nagoya University, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya 464, Japan] X-ray Structure Analyses of Proteinase Inhibitors Key【インヒビターの立体構造】【 word 主接触領域 の相 同性】 【 二次接触領域の役割】 929 12 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol. 34 No. 8 (1989) 触 領 域 の コ ンホ メ ー シ ョン を安 定 に保 持 す る重 要 な 役 割 を 果 た して い る こ とか ら, そ の機 能 に 着 目 し て, 保 持 領 域 (support region) と よぶ ほ うが 適 して い る よ うに 思 わ れ る。 プ ロテ イナ ーゼ と二 次 接 触 領 域 の間 の相 互 作 用 は, ト リプ シ ン との複 合 体 に お け る よ りも, カ リ ク レイ ン との 間 の ほ うが よ り緊 密 であ る。 これ は, BPTI-ト リプ シ ン複 合 体 中 で はBPTIと ト リ プ シ ンを結 び つ け る8個 の 水分 子 が 存在 して い る の に対 して, BPTI と カ リク レイ ンの 間 に は そ の よ う Database Center for Life Science Online Service な 水分 子 が 見 い だ さ れ て い な い こ と と対応 して い るの か も し れ な い。 図1. BPTIのC^α 黒 丸 は ジ ス ル フ ィ ド結 合 を 表 わ して い る。0.25nm分 れ た 精 密 化 前 の モ デ ル で あ る。 結 ぼれ 外側 の ル ー プ 中, 反 応 部 位 を 含 む13∼18の プ シ ン と 直 接 接 触 す る こ と か ら, contact region) セ グ メ ン トは ト リ 主 接触 領 域 も カ リ ク レイ ン と の複 合 体 形 成 時 に お い て も よい一 た2本 お い て, 主 鎖 の コ ンホ メー シ ョ ンは, BPTIで 解 能 の構 造 解 析 よ り得 ら 面 に 露 出 し て い る 。 分 子 上 部 はCys14-Cys38で の ル ー プ よ りな っ て い る 。 図1に BPTIの 分 子 モ デ ル^<1)> (primary 致 が み ら れ る。 主 接 触 領 域 は プ ロ テ イ ナ ー ゼ と結 合 し て も, 元 の コ ンホ メ ー シ ョ ンが わ ず か に 変 化 す る に す ぎ な い 。 一 方, プ ロテ イ ナ ー ゼ の構 造 に関 して は複 合 体 形 成 に よ る 若 干 の 変 化 が み られ る 。BPTIと と よぼれ て い る。 イ ン ヒ ビタ ー の主 接 触 領 域 が プ ロ テ イ ナ ー ゼ の 活 性 部 位 近 傍 に 入 り込 み, そ た め にSer195O^γ は0.1nm移 の接 触 を 避 け る 動 す る 。 一 方, His57の イ ミダ ゾ ー ル 環 は 回 転 し, わ ず か に 移 動 す る 。 そ の 結 の 間 に 働 く 相 互 作 用 に よ り, 安 定 な 複 合 体 が 形 成 さ れ る 果, わ け で あ る 。 主 接 触 領 域 に 接 す る34∼39の が 形 成 さ れ る 。 こ の 水 素 結 合 はSer1950γ は, 二 次 接 触 領 域 (secondary contact セ グメン ト region) と よぼれ め に, プ ロテ イ ナ ー ゼ の 間 の相 互 作 用 を理 解 す るた BPTI-カ リ ク レ イ ンA複 合 体 中 で の形 成 に関 与 し とHis57N^<ε2>の 間 に0.29nmの 水素結合 の コンポメー シ ョ ン の 自 由 度 を 限 定 す る 効 果 を も っ て い る 。His57 N^<δ1>とAsp102側 て い る。 BPTIと Ser195O^γ さ ら に, が, 鎖 の 水 素 結 合 の 様 式 も若 干 変 化 す る 。 分 子 表 面 に あ る 親 水 性 の 活 性部 位 近 傍 の 残 基 イ ン ヒ ビ タ ー と の 複 合 体 の 形 成 に よ り, よ り疎 水 性 て い る 両 分 子 の 主 鎖 セ グ メ ン トの 相 対 配 置 の 模 式 図 を 図 の環 境 に置 か れ る こ とに よ る水 素 結合 様 式 の変 化 も見 ら 2に 示 す6図 分 子 間 の相 互 作 用 に関 れ る 。Ser195O^γ 主接触領域 はカ リクレ で 非 結 合 接 触 で あ る 。 さ ら に, 他 の3種 で 明 らか な よ う に, 与 す る 残 基 数 は 少 な い 。BPTIの イ ン の2つ 41) の セ グ メ ン ト(Ser214-Gly216, Phe40-Gln と 逆 平 行 β シ ー ト型 水 素 結 合 を 形 成 して い る 。 こ の 相 互 作 用 の 様 式 は, BPTIと トリプ シ ンあ るい は ト リプ とLys15 (P_1) C'間 (scissile peptide bond) の カ ル ボ キ シ ル炭 素 ン 複 合 体 中 に お け るBPTIの つ い て は, 二次接触領域 を 形 成 し て い る ほ か に, (34∼39) と水 素 結 合 (P_1C') の Bowman-Birk と保持領域 の役 割 に イ ン ヒ ビ タ ー (BBI) の項 で 述 べ る。 ジ ス ル フ ィ ド結 合 や 水 素 結 合 に よ り主 接 触 領 域 の コ ン ポ メ ー シ ョ ン を 保 持 して い る 。 こ 2. の よ う に, ダ イ ズ に 含 ま れ る イ ン ヒ ビ タ ー に は, 930 トリ 有 意 な ピ ラ ミ ッ ド化 も 観 測 さ れ て い る 。 イ ン ヒ ビ タ ー と プロ テ イ ナ ー ゼ と の 間 の 相 互 作 用 側 鎖 が ト リ プ シ ン のTyr99O^η のBPTIと プ シ ン 類 の 複 合 体 中 で 見 い だ さ れ た 切 断 ペ プ チ ド結 合 シ ノ ー ゲ ン複 合 体 中 にお い て も 同様 であ る。 カ リク レイ は, Arg39の の 距 離 は0.25nm イ ン ヒビ タ ー に お い て こ の セ グ メ ン トは 主 接 ダ イ ズ Kunitz ト リプ シ ン イ ン ヒ ビ タ ー Kunitzト (STI) リプ Database Center for Life Science Online Service プ ロテ イ ナ ー ゼ イ ン ヒ ビ ター のX線 図2. 解析 13 BPTI (黒 線) と カ リク レイ ン (白 線) の 相 互 作 用 の 模 式 図^<6)> BPTIの ア ミノ酸 配 列 番 号 に は900加 え て あ る。 図3. STIの 立 体 構 造^<7)> 黒 く塗 りつ ぶ した セ グ メ ン トが トリプ シ ン と相 互 作 用 し てい る。 矢 印 は 切 断 結 合 を 表 わ して い る 。116∼122は 不 明 瞭 な セ グ メン トで あ る。 シ ンイ ン ヒ ビタ ー (STI) ー が 知 ら れ て い る 。STIは 分 子 量20,100の と Bowman-Birk ア ミ ノ酸181残 イ ン ヒ ビ タ ー で, イ ン ヒ ビタ 塗 りつ ぶ した セ グ メ ン トが ト リプ シ ン と相 互 作 用 して い 基 か らな る る。STIとBPTIの イ ン ヒ ビタ ー と して 間 に は ア ミノ酸 配 列 の相 同性 は な い が, 主 接 触 領 域 の コ ンホ メ ー シ ョ ンに よ い一 致 が み ら は 比 較 的 大 き な 蛋 白 質 で あ る。 そ の 反 応 部 位 はArg63 れ, で, は ト リプ シ ン と 複 合体 を 形 成 す る際 に, 2本 の ジ ス ル フ ィ ド結 合 を も っ て い る。STI-ト シ ン複 合 体 の 結 晶 構 造 解 析 らか に さ れ たSTIの ぼ 球 形 で, は ね じれ た い 。2本 (0.26nm分 立 体 構 造 を 図3に 直 径3.5nmの β シ ー ト型 で, 離 能) リプ に よ り明 ト リプ シ ン との 相 互 作 用 の様 式 も 同 じで あ る。STI の ペ プチ ド結 合 が 切 断 され, Arg63 Arg63-Ile64 (P_1) C'は 四面 体 型 示 す^<7)>。STIは ほ 構 造 とな って い る。 これ は, 主 接 触 領 域 とイ ン ヒ ビタ ー 大 きさ で あ る。そ の二 次 構 造 の他 の部 分 との 間 に ほ とん ど相 互 作 用 が 見 られ な い こ と αヘ リ ッ クスを 含 ん でい な の ジ ス ル フ ィ ド結 合 は 分 子 の 表 面 上 に あ る が, 主 接 触 領 域 と は か な り離 れ て い る 。 図3に お い て, 黒 く に よ るた め か も しれ な い 。BPTIや 後 述 の イ ン ヒ ビタ ー に お い て は, P_1C'の ピ ラ ミッ ド型 構 造 へ の 変 化 は起 こ っ て も, STIの よ うに 四 面 体 型 構 造 を とる例 は な い。 931 14 蛋 白 質 II. 1. Kazal 核 酸 酵 素 Vol. 34 No. 8 (1989) イ ン ヒ ビ ター オ ボ ム コイ ド (ovomucoid) 鳥類 の 卵 白中 に も 多 数 の イ ンヒ ビ タ ーが 含 まれ て い る。 そ の主 要 な も の は強 い セ リン プ ロ テ イ ナ ーゼ 阻 害 機 能 を 有 す る糖 蛋 白質 イ ン ヒ ビタ ー, オボムコイ ドで あ る。 オ ボ ム コ イ ドは, 膵 臓 分 泌 Kazal ビター (PSTI) トリプ シ ンイ ン ヒ と相 同 な 構 造 の ドメ イ ンが3個 鎖 状 に つ な が った 多 重 機 能 イ ン ヒ ビタ ー で あ る。オ ボ ム コ イ ド の反 応 部 位 は互 い に独 立 して い る の で, オ ボ ム コ イ ド1 分 子 は3分 子 ま で の プ ロテ イ ナ ー ゼ を結 合 阻 害 で き る。 そ の 特 異 性 は起 源 に よ り多 様 で あ る。 オ ボ ム コイ ドの第 2ド メ イ ンと第3ド 鎖 を, リボ ンは α ヘ リ ック スを 表 わ して い る。 メイ ンを結 ぶ コネ クシ ョ ンペ プ チ ド は 容 易 に加 水 分 解 され, 第3ド Database Center for Life Science Online Service 図4. OMJPQ3の 二 次 構 造 の模 式 図^<8)> 小 さい 矢 印 は 反 応 部 位 を 示 して い る 。大 きい 矢 印 は β メイ ン 的 堅 い と考 え られ る。 一 方, 主 接 触 領 域 は, 若 干 異 な る に 分 か れ る。 これ らの ドメイ ンは それ ぞれ 独 立 に活 性 を メ イン と1∼2ド プ ロテ イ ナ ーゼ の基 質 結 合 部 位 に適 合 で き る程 度 の 柔 軟 保 っ て い る。 第3ド 性 を有 して い る。 メイ ンの糖 化 は部 分 的 で, 精 製 に よ り糖 鎖 の付 い て い る ドメイ ン と付 い て い な い ドメイ ンに オ ボ ム コイ ド第3ド メ イ ンの ア ミノ酸 配 列 の相 同 性 は 分 離 され る。 両 者 の 阻 害能 力 は 同 じで あ る。 一 般 に糖 蛋 高 く, そ の置 換 は反 応 部 位 近 傍 に集 中 して い る。OMSV 白質 の結 晶化 は, 糖 質 の 自由度 の 大 き さ, 親 水 性 の 高 P3は さ, 不 均 一 性 な どの た め に 困難 で あ る。 この た め に, 結 晶 構 造 解 析 さ れ た もの は糖 鎖 を 含 ま な い 第3ド メイ ンに サ ブ チ リシ ンに 特 異 性 を示 し, OMTKY3は キモ トリプ シ ン, エ ラ ス タ ーゼ に 特 異 性 を 示 す が, そ の 差 は 反 応 部 位P_1が, Met (OMSVP3) か らLeu (OMTKY 関 した も の で あ る。 現在 ま で に, ウ ズ ラの 第3ド メイ ン 3) に置 換 され て い る にす ぎ な い。 こ の よ うな 相 同 性 の (OMJPQ3, 0.19nm分 解 能)^<8)>, キ ジ の 第3ド メイ ン 高 さ を反 映 し, 第3ド (OMSVP3, 0.15nm分 解 能)^<9)>, 複 合 体 と して 七面 鳥 の 第3ド メ イ ン (OMTKY3) とSGPB^<*1> (0.18nm分 能)^<10)>, お よびOMTKY3と 解 キ モ トリプ シ ン(0.18nm 分 解 能)^<11)>の 結 晶構 造 が 決 定 され て い る。 OMJPQ3の Cys38, 反 応 部 位 はLys18で, Cys16-Cys35の され て い る。 第3ド Cys8- 間 に ジ ス ル フ ィ ド結 合 が 形 成 メ イ ンの二 次 構 造 は3本 鎖 逆 平 行 β シ ー トと αヘ リ ッ クスか ら構 成 され, で き る。 主 接 触 領 域 (13∼21) のOMTKY3の 構 造 は, OMJPQ3やOMSVP3の 構 造 と よ く一 致 し, 複 合 体 を 形成 して もほ とん ど構 造 が変 化 しな い こ とを 示 して い る。 しか し, プ ロテ イナ ー ゼ の 二 次 構 造 の模 式 図 を 図4に 示 す。56残 基 か らな るOMJPQ3の メイ ンは 種 が 異 な って も立 体 構 造 に大 きな差 は見 られ な い。 プ ロテ イ ナ ー ゼ との複 合 体 中 β_1β_2α β_3と 記 述 の コ ンホ メー シ ョ ンは, 活 性 部 位 近 傍 の 接 触 領 域 に お い て は, His57N^<ε2>と Ser195O^γ の 間 に 強 い 水 素 結 合 が形 成 され るな ど, 小 さ いが 有 意 な コ ン ボ メ ー シ ョン の変 化 が み られ る。複 合 体 中 のOMTKY3の 切 断 ペ プチ ド結 合 は平 面 か ら有 意 に ゆ が ん で い な い。Lys15 は, SGPBと (P_1) C'とSer195O^γ の複 合 体 中 で は0.27nm, 間距 離 キ モ ト リプ シ ン 保 持 領 域 (31∼36) か らの水 素 結 合 に よ り保 持 され て い との複 合 体 中 で は0.295nmで, る。 中 で も Kazal イ ン ヒ ビタ ー で非 常 に保 存 性 の高 い に は短 い非 結 合 性 相 互 作 用 しか 存 在 して いな い。 Asn33が 主 接 触 領 域 と保 持 領 域 間 の ス ペ ー サ ー と して, 主 接 触 領 域 の構 造保 持 上 非 常 に重 要 な 役 割 を果 た して い る。Asn33の 190と 側鎖 は, 反 応 部 位 前 後 のPro170, Asp 水 素 結 合 を 形 成 し,反 応 部 位 の コ ンホ メ ー シ ョン を 固定 して い る。 さ らにAsn36Nと る こ とに よ り, Cys35の 水 素結 合 を 形成 す 配 向 を も規 定 して い る。保 持 領 域 は β_2鎖の末 端 と αヘ リ ヅ クス の先 端 に含 まれ, 比 較 *1 Streptomyces griseus protease 932 Ser195O^γ とP_1C'の 間 B 2. 膵 臓 分泌 Kazal ト リプ シ ン イ ン ヒ ビ タ ー (PSTI) 56残 基 か らな るPSTIの 反 応 部 位 はArg18で, の ジス ル フ ィ ド結 合 を 含 ん で い る。IPSTIと ー ゲ ン との複 合体 の 結 晶 構造 か ら , PSTIの 求 め られ て い る^<12)>。 図5に, PSTIとOMJPQ3の 3本 トリプ シ ノ 立体構造 が 分子 プ ロ テ イ ナ ーゼ イ ン ヒ ビタ ー のX線 図5. PSTI 構 造 の比 較 を示 す 。 オ ボ ム コ イ ド第3ド ノ酸 配 列 の 相 同 性 の低 いN末 端15残 とOMJPQ3 メイ ン との ア ミ 15 (白 線) の 立 体 構 造 の 比 較^<12)> 域 の コ ンホ メー シ ョ ンが 同 じで あ る こ とか ら, 両 イ ンヒ 基 と αヘ リッ クス ビタ ー の プ ロテ イ ナ ー ゼ に対 す る 阻 害 機 構 は同 じと考 え セ グ メ ン トを 除 き, 立 体 構 て よい で あ ろ う。 こ の こ とは, 哺 乳 類 の ト リプ シ ン族 と 造 の類 似 性 は非 常 に 高 い。 イ ン ヒ ビタ ー の機 能 に関 係 す 微 生 物 由来 のサ ブ チ リシ ン族 は, ア ミノ酸 配 列 も立 体 構 る主 接 触 領 域, 保 持 領 域 の コ ンホ メー シ ョ ンは 非 常 に 造 も異 な っ て い る に もか か わ らず, 基 質 結 合 様 式 は共 通 よ く一 致 して い る。PSTIのAsn33は で あ り, 加 水 分 解 機 構 も 同 じで あ るこ とを 示 して い る。 か ら β_3鎖へ続 く40∼49の Database Center for Life Science Online Service (黒 線) 解析 第3ド メ イ ンのAsn33と オ ボ ム コイ ド 同 じ く 主 接 触 領 域 と保 持 領 III. 域 と を固 定 す るス ペ ー サ ー と して 作用 して い る。Ser 195O^γ…Arg18 (P_1)C'間 距 離 は0.268nmで る。 しか し, P_1C, P_1C',P_2N平 面 か らのP_1Oの ずれ は そ う大 き くな く, P_1C'は 完 全 な四 面 体 構 造 に は な っ てい な い。P_1C'の この よ うな 状態 は, 切 断 ペ プ チ ド結 合 が ほ ぼ 平面 構 造 で あ るオ ボ ム コイ ド第3ド ンと は異 な っ てい るが, BPTIと 中 にお け るBPTIの ンヒ ビタ ー , 短 い非 結 合 性 相 互 作 用 が 働 き, P_1C'の 構 造 は ピ ラ ミッ ド型 で あ 0.027nmと Bowman-Birkイ メイ ト リプ シ ン類 の複 合 体 反 応 部 位 で見 いだ され た 状 況 と同 じで あ る。 Bowman-Birk イ ン ヒビ ター (以 後 , BBIと 略 す) は マ メ科 の 種 予 中 に広 く見 い だ さ れ る イ ン ヒ ビタ ー で, Bowman に よ って初 め て ダ イ ズ中 に 見 いだ さ れ, Birk らに よっ て そ の諸 性 質 が 研 究 さ れ た た め, こ の名 が つ け られ て い る。 この型 の イ ン ヒ ビ タ ー は 分 子 量 が7000∼ 9000程 度 と 比 較 的 低 分 子 量 な が ら, プ ロテ イ ナ ーゼ と 結 合 す る反 応 部 位 を2つ も っ て お り, 同時 に2分 子 の プ ロテ イ ナ ー ゼ を阻 害 す る能 力 を もつ , いわ ゆ る双 頭 型 の イ ン ヒ ビ ター で あ る。 3. Kazal Kazalイ と, イ ン ヒ ビ タ ー とSSIと の相同性 ン ヒ ビ タ ー の 反 応 部 位 の コ ンホ 同 じ ト リ プ シ ン 族 を 阻 害 す る Kunitz 図6に, メー シ ョ ン こ の型 の イ ン ヒビ タ ー の例 ど して, ピー ナ ツ か ら抽 出 され たA-IIと よぼ れ るBBIの ア ミノ酸 配 列 イ ン ヒ ビタ ー を示 す 。 この 図 で は, BBIす べ て に お い て 保 存 され て い 顕 著 な相 同性 を示 す 。 興 味 あ る7本 の ジス ル フ ィ ド結 合 に よ り, 2つ の相 同 性 の あ る イ ン ヒ ビタ ー で 見 い だ さ れ た 反 応 部 位 ドメイ ンが 形成 され て い る様 子 を模 式 的 に 描 い て あ る。 に 対 す る 主 鎖 の β_1β_2α の 折 れ た た み と ジ ス ル フ ィ ド結 図6の 左側 の ジ ス ル フ ィ ド結 合 で 作 られ た ペ プ チ ド鎖 の 合 の トポ ロ ジ ー と 同 じ も の が, 放 線 菌 起 源 のSSIに ル ー プI, II, 存 在 す る こ と で あ る。SSIと, 同 じ放 線 菌 起 源 の プ ラ ス の コ ンホ メ ー シ ョ ン と は, る の は, Kazal も ミ ン を 阻 害 す る プ ラ ス ミ ノ ス ト レ プ チ ン (plasminostre ptin; PSN)^<13)>, お よ びOMJPQ3の 主 接 触 領 域 と保 持 領 域 の 構 造 は 非 常 に よ く 一 致 し て い る^<8,13)>。 遺伝的 に よ く保 存 さ れ て い るAsn残 SSIで を 占 め, は99位, PSNで 基 (OMJPQ3で は95位) は33位, も 相 対 的 に 同 じ位 置 主 接 触 領 域 の コ ンホ メ ー シ ョ ン を 固 定 し て い る 。 こ の よ う に, Kazal イ ン ヒ ビ タ ー とSSIの 主接触領 IIIからな る領 域 が ドメ イ ン1, 右側 のル ー プI' , II', III'か らな る 領 域 が ドメ イ ン2と よば れ て お り, 2つ の ドメイ ン間 に は ア ミノ酸 配 列 の相 同性 が 見 い だ さ れ て い る。 この こ とは, BBIが 遺 伝 子 の重 複 に よ る分 子 進 化 の産 物 で あ るこ とを示 唆 す る も の で あ る。 構 造 解 析 はBBI単 独 の もの と して は ピー ナ ツ由 来 の イ ン ヒ ビタ ーA-IIに BBIのX線 つ い て 行 な わ れ てお り, プ ロテ イ ナ ー ゼ と複 合 体 をつ くっ た 状態 で の解 析 例 と し て は, ト リプ シ ン と1 : 1で 結 合 した ア ズキ 由 来 の イ ン 933 16 蛋 白 質 核 酸 酵 素 図6. A-IIの Vol. 34 Database Center for Life Science Online Service (1989) 一 次 構 造 の模 式 図 太 い 線 は ジス ル フ ィ ド結 合 を, 矢 印 は2つ 図7. No. 8 A-IIのC^α の反 応 部 位 を 表 わ して い る。 分 子 モ デ ル 太 い 線 は ジス ル フ ィ ド結 合 を, 矢 印 は 反 応 部 位 を 表 わ して い る 。 ヒ ビタ ーAB-Iの BBIに 解 析 例 が あ る。 しか しなが ら, 同 一 の お い て, 単 独 の状 態 とプ ロテ イ ナ ーゼ と複 合 体 を 体 構 造 に お い て も相 同 な ドメイ ン構 造 を と って い る (図 に お い て左 と右)。 そ して, この ドメ イ ンが 互 い に反 対 つ くった 状 態 の両 方 につ い て解 析 に成 功 した 例 は報 告 さ 方 向 を 向い て い るた め, A-II分 れ てお らず, 今 後 の研 究 課 題 とな って い る。 を軸 とす る近 似 的 な 分 子 内2回 軸 が 存 在 す る。 な お, こ こ こ で は, A-IIとAB-I-ト リプ シ ン複 合 体 の両 結 晶 立 体 構 造 は, 電 子 密 度 が 異 常 に低 く解 釈 のつ か な いN末 端 の8残 基 とC末 端 の2残 基 を除 く60残 につ い て 明 らか に され た^<14)>。 図7にA-IIの ル を示 す 。A-IIは, 伸 びた 分 子 の 両 端 に2つ nm離 基 α炭 素 モ デ 一 方 向 に長 く伸 び た 形 を してお り, そ の大 き さ は約4×2×2nmで ドメイ ン構造 は, 次 に述 べ るAB-Iの あ る。 そ して, こ の長 く の 反 応 部 位 (図矢 印) が3.4 れ て 突 き出 て い る。 こ の よ うに2つ の反 応 部 位 が イ ン構 造 がBBIに A-IIの2つ 一 般 的 な も の で あ る と予 想 され る。 の ドメイ ンの 間 に は, 疎 水 性 の ア ミノ酸 残 基 が は さみ 込 まれ, る。 またA-IIで 小 さな 疎 水 性 の 核 を つ く って い は, 図 の 方 向 か らみ た と きに は裏 側 に 相 当す る 面 だ け に 疎 水 性 の 残 基 が い くつ か 突 き出 て い る。 通 常, 蛋 白質 の分 子の 表 面 に は, 疎 水 性 の 残 基 が 突 き 出 て は い な い。 そ こで, これ ら の残 基 が 分 子 の 機 能 上 離 れ て い るた め に, こ の イ ン ヒビ タ ー は, 1分 子 で 同時 何 らか の働 き を も って い る と 予 想 され るが, に2分 子 の プ ロテ ィ ナ ー ゼ を 阻害 で き る の で あ る。A-II A-IIはこ をつ くっ て い る こ と か ら, も た な い。 こ の こ とか ら, A-IIの A-IIが2量 構 造 は お も に7本 の ジ ス ル フ ィ ド結 合 に よ り保 持 され て い る と考 え られ る。 ア ミノ酸 配 列 に相 同 性 の あ る2つ の ドメイ ン領 域 は, 立 結晶中 で の面 ど う しで2つ の 分 子 が 接 しあ って2量 体 は, αヘ リ ッ クスや βシ ー トとい った 特 定 の二 次 構 造 を 934 ドメ イ ン構 造 とも 明 らか な 相 同性 が あ るた め, こ の よ うな ドメ 構 造 につ い て順 に述 べ る。 A-IIの のA-IIの 子 に は, 図 の 中 央 付近 これ ら の疎 水 性 の 残 基 は, 体 を構 成 す る とき に分 子 ど う しを 「 接着」 す る働 き を して い る と考 え られ る。 一方 , AB-I-ト リ プ シ ン複 合 体 の構 造 解 析 にお い て プロ テ イー 図8. AB-I-ト ゼ イ ン ヒ ビ タ ーのX線 解析 17 リプ シ ン結 合 領 域 の 分 子 モ デル 阻 害 活 性 ル ー プ (ル ー プI) の分 子 モ デ ル Database Center for Life Science Online Service 黒 塗 の 原 子 が ト リプ シ ンの 活 性 中 心 の, 白 抜 き の 原 子 がAB-Iの で あ る。 点 線 は 水 素 結 合 を 表 わ してい る。 図9. イ ン ヒビ タ ー の阻 害 活 性 領 域 付 近 の構 造 の比 較 (左) AB-I-ト リプ シ ン複 合 体, 中央PSTI-ト リプ シ ノー ゲ ン複 合 体, (右) BPTI-ト リプ シ ン複 合 体 。 黒 塗 の原 子 は トリプ シン (ト リプ シ ノ ー ゲ ン) の結 合 領 域 の主 鎖 の分 子 モ デ ル で あ る 。 イン ヒ ビタ ー は, そ れ ぞ 乳 対 応 す る トリプ シ ン 結 合 領 域 の モ デ ル で, 主 接 触 領 域 と二 次接 触 領 域 だ け は 側 鎖 まで 描 い て あ る。 点 線 は 主 接 触 領 域 と二 次 接 触 領 域 の間 に 働 く水 素 結 合 を 表 わ して い る 。 は, AB-Iの トリプ シ ン結 合 ドメイ ンで あ る ドメ イ ン1 の 基 質 に お い て切 断 を 受 け る結 合, す なわ ち, 切 断 結 合 の構 造 と, そ の トリプ シ ン との相 互 作 用 の様 子 が 明 らか に 相 当 す る。 図8か とな っ た^<15)>。 この複 合 体 で は, AB-Iと トリプ シ ンは, 質 認識ポ ケ ッ トに深 く入 り込 ん で い る様 子 が わ か る。 ま 反 応 部 位 と トリプ シ ンの 活性 中心 付 近 とい う, た, 切 断結 合 の カ ル ボ ニ ル炭 素 は, こ の図 の上 方 か ら接 AB-Iの ら, Lys26の 側 鎖 は トリプ シ ンの基 非 常 に 限 られ た 領 域 で相 互 作 用 して い る にす ぎ な い。 図 近 して い る ト リプ シ ンの 活 性 中 心 のSer195のO^γ 8は, 撃 を受 け て お り, O^γ とカ ル ボ ニ ル の 炭 素 間 の 距 離 は そ の相 互 作 用 の様 子 を 描 い た も の で あ る。 AB-Iで は, Lys26のC末 端 側 のペ プ チ ド結 合 が 通 常 0.23nmと, の攻 フ ァ ンデ ル ワー ル ス結 合 距 離 と共 有 結 合 距 935 18 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol. 34 No. 8 (1989) 離 の 中 間 の値 とな っ て い る。 しか しなが ら, カ ル ボ ニ ル 基 の 平 面 性 は保 た れ てお り, また, ペ プ チ ド結 合 の切 断 も起 きて い な い。 以 上 の事 実 か ら, AB-I-ト リプ シ ン複 合 体 は, ペ プ チ ド結 合 の切 断 の起 こ る前 の ミカ エ リス型 の 中 間 体 に相 当す る も の と考 え られ る。 本 来 の基 質 で は, こ の 中間 体 の状 態 か ら切 断結 合 付 近 の 主 鎖 の コ ンボ メー シ ョ ンの変 化 が起 こ り, ペ プ チ ド結 合 の切 断 が起 こ る の で あ るか ら, イ ン ヒ ビ ター で は, こ の 変 化 を くい止 め る何 らか の機 構 が あ る もの と予 想 で き る。 そ こ で, イ ン ヒ ビ ター の切 断 結 合 付 近 の 構造 を詳 し く調 べ て み る と, ト リプ シ ン と 直 接 相 互 作用 を して い る, いわ ゆ る主 接 触 領 域 (Cys24∼Met28) ー シ ョンを , Pro29で Cys32ま の コ ンホ メ 折 り返 した あ とのPro30か ら で の領 域, す なわ ち二 次 接 触 領 域 が, 何 本 か の 水 素 結 合 やCys24とCys32の間 Database Center for Life Science Online Service リボ ンは α ヘ リ ッ クス を 表 わ して い る。 Met59で この よ うな 構 造 は, 他 の型 の イ ンヒ ビタ ー と プ ロ テ イ ナ ーゼ と の複 合 体 の構 造 中 に も見 られ る。図9は, AB-I- ト リプ シ ン複 合 体 の切 断 結 合 付 近 の構 造 を, PSTIと リプ シ ノ ー ゲ ンと の複 合 体, お よびBPTIと ト トリプ シ ン と の複 合 体 のそ れ と比 較 した も の で あ る。3つ Pro-Pro を, の ジ スル フ ィ ド結 合 に よ り堅 固 な もの に して い る こ とが わ か った 。 比 較 す る と, AB-Iで 図10. ポ テ トイ ン ヒビ ターCI-2の 二 次 構 造 の 模 式 図^<15)> 小 さ い 矢 印 は 反 応 部 位 を 示 して い る。 大 きい 矢 印 は β鎖 の構 造 を は 主 接 触 領 域 と二 次 接 触 領 域 が で折 り返 して 直 接 連 結 して い るが, 他 の も の で あ る。CI-2の す 。N末 端18残 二 次 構 造 の模 式 図 を図10に 基 はArg18位 示 で切 断 され, 結 晶 中 に は含 まれ て い な い。 分 子 は くさび 形 で2.8×2.7×1.9 nmの 大 き さで あ る。 一 部 不 完 全 な4本 鎖 β シ ー ト構 造 が 分 子 の 中心 に あ り, そ の下 側 に αヘ リ ッ クスが 位 置 し て い る。 分 子 上 部 の くさ び形 の 先 を 主 接 触 領 域(Gly 54-Ile63) が 占 め て い る。 ほ とん どの イ ン ヒ ビタ ー は反 応 部 位 の近 くに ジ ス ル フ ィ ド結 合 を も っ て い るが, CI-2 は, こ の2つ の間 に 酵 素-イ ン ヒ ビタ ー の接 触 に 直 接 か は分 子 中 に ジス ル フ ィ ド結 合 を 含 ん で い な い。 しか しな か わ りの な い, か な り長 い ペ プ チ ド鎖 が入 っ て い る とい が ら, β シー ト中 のArg65, う違 い あ る。 しか しな が ら, ト リプ シ ンあ るい は トリプ 合 の両 側 に 位 置 す る残 基 と静 電 的相 互作 用 あ る い は 水素 シ ノ ー ゲ ン と直 接 接 触 して い る主 接 触 領 域 の構 造 は よ く 結 合 を 形成 す る こ とに よ りプ ロテ イナ ー ゼ の 加 水分 解 に 一 致 して お り, そ の 背 後 に あ る二 次 接 触 領 域 が ジス ル フ よ り新 た に 生 じ る両 末 端 の 拡 散 の抑 制 な ど, ジ ス ル フ ィ ィ ド結 合 や 水 素 結 合 に よ り主 接 触 領 域 を 支 え て い る とい ド結 合 に 相 当 す る役 割 も果 た して い る と考 え られ る。 さ Arg67の 側 鎖 は, 切 断 結 う構 造 に も共通 性 のあ る こ とが 明 らか とな った 。 以 上 の らに, Arg65お こ とか ら, 二 次 接 触 領 域 が 主 接 触 領 域 を 支 え る こ の よ う で 相 互 作 用 し, そ の コ ンホ メ ー シ ョンを 安 定 に 保 持 して な 構 造 上 の 特 徴 が, イ ン ヒ ビ タ ー の プ ロ テ イナ ーゼ 阻 害 い る。 と くに, Arg65が 機 構 に と って一 般 に 重 要 で あ る と考 え られ る。 よびArg67の と同 等 の役 割 をCI-2に す る必 要 が あ る。CI-2は IV. ポ テ トI/IIイ ンヒ ビ ター Kazal 側鎖 は 主 接触 領 域 との 間 イ ンヒ ビ タ ーのAsn33 お い て 果 た して い る こ とに 注 目 サ ブチ リシ ン と複 合 体 を 形 成 して も, そ の分 子 構 造 に は プ ロ テ イ ナ ーゼ と相 互 作 用 し て い る主 接 触 領 域 を含 め ほ とん ど変 化 が 見 られ な い。 し ポ テ トや そ の類 縁 植 物 も プ ロテ イ ナ ー ゼ イ ン ヒビ タ ー か し, 複 合 体 を形 成 す る こ と に よ り主 接 触 領 域 の 熱 振 動 を 豊 富 に含 ん で い る。 そ の 中 で性 質 が よ く理 解 され て い 因 子 は有 意 に低 下 して い る。 こ の こ とは, 複 合 体 中 で の る も の に ポ テ トIイ ン ヒビ タ ーが あ る。 こ の イ ン ヒ ビタ 主 接 触 領 域 の柔 軟 性 は も とのCI-2の ー は ジ ス ル フ ィ ド結 合 を1本 す る大 麦 (badey タ ー2 seed) か らの キ モ ト リプ シ ンイ ン ヒビ (CI-2)^<16)>お よびCI-2と (subtilisin Novo) CI-2は83残 936 しか 含 ま な い。 こ の族 に属 サ ブ チ リシ ン ・ノボ 複 合 体^<17)>が 結 晶構 造 解 析 さ れ て い る。 基 か らな り, 分 子 量は9250, 反応部位 は 場 合 と比 べ て減 少 し, プ ロテ イ ナ ー ゼ との相 互 作 用 に よ り分 子 の 中心 の骨 格 程 度 に ま で 堅 くな った こ とを示 して い る。 ポ テ トIIイ ン ヒ ビ ター はポ テ トIイ ン ヒビ タ ー に比 べ は るか に 複雑 で, そ の 構 造 と機能 の解 明 は今 後 の課 題 と な って い る。 プ ロテ イ ナ ー ゼ イ ン ヒ ビタ ー のX線 図11. 19 α ア ミラ ーゼ イ ン ヒ ビタ ーHoe-467Aの 立 体 構造^<18)> 側 鎖 も含 め, ボ ール アン ドス テ ィ ック モデ ル で表 わ して あ る。 こ こで の黒 Trp18-Arg19-Tyr20は Database Center for Life Science Online Service 解析 丸 は 窒 素 原 子 を 示 して い る 。大 き い 白丸 は ジ ス ル フ ィ ド結 合 を 表 わ して い る。 お わ りに V. 以 上, イ ン ヒ ビ タ ー にお い て プ ロテ イ ナ ー ゼ の活 性 部 位 と直 接 相 互 作 用 す る主 接 触 領 域 の コ ンボ メ α ア ミラ ー ゼ イ ンヒ ビ ター ー シ ョ シの安 定 化 に果 た す 保 持 領 域 (二次 接 触 領 域) の セ リ ン プ ロ テ イ ナ ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー の ほ か に, αア ミ 役 割 につ い て述 べ て きた 。 イ レ ヒビ タ ー の 生 体 内 での 役 ラ ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー の 構 造 も 知 ら れ て い る 。 図11に, 割 につ い て は まだ 不 明確 な 点 も多 い。 しか し, そ の結 晶 構 造 解 析 の行 なわ れ た 放 線 菌 由来 の αア ミラ ーゼ イ ンヒ 構 造 解 析 に よ りイ ン ヒ ビタ ー のみ な らず プ ロテ イ ナ ーゼ ビ タ ーHoe-467Aの 二 次 構 造 の 模 式 図 を 示 す^<18)>。 図12 に 見 ら れ る よ う に, Hoe-467Aは3本 が2つ 組 み 合 わ さ っ た βバ レ ル 構 造 を し て い る 。 図 中 で は, に, の逆 平 行 βシ ー ト β鎖I VI (11∼17), (64∼73), る 。Hoe-467Aと 較 か ら, II III (19-26), (30-37), 同 族 の Haim Trp18-Arg19-Tyr20が V IV (51∼57) (40∼49) が手前 が 奥にあ II の ア ミノ 酸 配 列 の 比 プ ロテ イ ナ ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー の 反 応 部 位 に 相 当 し, αア ミラー ゼ との複 合 体 の 形 成 に 関 与 す る と推 定 さ れ て い る 。 反 応 部 位 は β鎖I とIIの VIの プ に よ り保 持 さ れ て い る 。 ジ ス ル フ ィ ド結 合 は Cys27, Cys35-Cys73間 に 形 成 さ れ, き て い る。 と ころ で, あ る種 の 穀物 ragi grain か ら単 離 され た αア ミラー ゼ イ ン ヒビ ターI-1は, トリプ シ ンの 阻 害能 力 もも っ て い る こ とが示 さ れ た^<19)>。I-1は 分子量 9000程 度 の小 さ い蛋 白質 で あ るが, I-1と の 複 合 体, I-1と に, I-1と αア ミラ ー ゼ トリプ シ ン の 複 合 体 を 形 成 す る ほ か αア ミラー ゼ お よび ト リプ シ ン の三 体 複 合 体 も形成 す る こ とか ら, 適 当 に 離 れ た αア ミラー ゼ 阻 害 部 位 と ト リプ シ ン阻 害 部 位 を もつ 双 頭 型 で あ る と推 定 さ れ 中に る。 α ア ミラ ーゼ か プ ロ テ イナ ーゼ の ど ち らか を 阻 害 す 間のルー る元 の イ ン ヒビ タ ーが 遺 伝 子 の 重 複 に よ り 双 頭 型 とな Cys11- り, 後 に 一 方 の ドメ イ ンが 異 な る機 能 を獲 得 した の か も 間 の 折 り返 し部 分 で あ る β タ ー ン (17∼20) 位 置 して い る 。 こ の 反 応 部 位 は β鎖V, に関 して も機 能 や 分 子 進 化 につ い て の 理 解 が 高 め られ て 反 応 部 位 とは か しれ な い 。I-1は まだ 構 造 解 析 さ れ て い な い が, そ の構 な り離 れ て い る 点 が プ ロ テ イ ナ ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー と は 異 造 情 報 は イ ン ヒ ビ タ ー の機 能 と役 割 を考 え る うえ で, 重 な っ て い る 。 こ れ は, 大 な 知 見 を与 え る と思 わ れ る。 α ア ミラ ーゼ に よ って は この イ ン ヒビ タ ー は 加 水 分 解 さ れ な い こ と に 対 応 し て い る の か も しれ な い 。Hoe-467Aと 解 析 が 進 め ら れ て お り, 文 αア ミラー ゼ との 複合 体 の 構 造 献 α ア ミラ ーゼ イ ン ヒ ビ タ ー の機 能 の詳 細 な解 明 のた め に 今 後 の進 展 が 待 た れ る。 1) 2) Huber, R., Kukla, D., Ruehlmann, A., Epp, O., Formanek, H.: Naturwissenschaften, 57, 389392 (1970) Deisenhofer, J., Steigemann, W.: Acta Crystallogr., 937 20 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9) Database Center for Life Science Online Service 10) 11) 12) 13) 14) 938 蛋 白 質 核 酸 酵 素 B 31, 238-250 (1975) Huber, R., Kukla, D., Bode, W., Schwager, P., Bartels, K., Deisenhofer, J., Steigemann, W.: J. Mol. Biol., 89, 73-101 (1974) Huber, R., Bode, W., Kukla, D., Kohl, W., Ryan, C. A.: Biophys. Struct. Mechan., 1, 189-201 (1975) Bode, W., Schwager, P., Huber, R.: J. Mol. Biol., 118, 99-112 (1978) Chen, Z., Bode, W.: J. Mol. Biol., 164, 283311 (1983) Sweet, R. M., Wright, H. T., Janin, J., Cho thia,C. H., Blow, D. M.: Biochemistry, 13, 4212-4228 (1974) Papamokos, E., Weber, E., Bode, W., Huber, R.: J. Mol. Biol., 158, 515-537 (1982) Bode, W., Epp, O., Huber, R., Laskowski, M. Jr., Ardelt, W.: Eur. J. Biochem., 147, 387395 (1985) Read, R. J., Fujinaga, M., Sielecki, A. R., Ja mes,M. N. G.: Biochemistry, 22, 4420-4433 (1983) Fujinaga, M., Sielecki, A. R., Read, R. J., Ardelt, W., Laskowski, M. Jr., James, M. N. G.: J. Mol. Biol., 195, 397-418 (1987) Bolognesi, M., Gatti, G., Menegatti, E., Guar neri,M., Marquart, M., Papamokos, E., Huber, R.: J. Mol. Biol., 162, 839-868 (1982) Kamiya, N., Mstsushima, M., Sugino, H.: Bull. Chem. Soc. Jpn., 57, 2075-2081 (1984) Suzuki, A., Tsunogae, Y., Tanaka, I., Yama ne,T., Ashida, T., Norioka, S., Hara, S., Ike naka,T.: J. Biochem., 101, 267-274 (1987) Vol. 34 15) 16) 17) 18) 19) No. 8 (1989) Tsunogae, Y., Tanaka, I., Yamane, T., Kikka wa,J., Ashida, T., Ishikawa, C., Watanabe, K., Nakamura, S., Takahashi, K.: J. Biochem., 100, 1637-1646 (1986) McPhalen, C. A., James, M. N. G.: Biochemis try,26, 261-269 (1987) McPhalen, C. A., Svendsen, I., Jonassen, I., James, M. N. G.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 7242-7246 (1985) Pflugrath, J. W., Wiegand, G., Huber, R.: J. Mol. Biol., 189, 383-386 (1986) Shivaraj, B., Pattabiraman, T. N.: Biochem. J., 193, 29-36 (1981)