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OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 香川大学農学部学術報告 第30巻 第63号113∼116,1978 113 ノダルミ(Pねiycarya strobih7Cea SIEB.et Zucc.)の 葉に含まれる生物活性物質(その2) 近 藤 昭 BIOLOGICALLY ACTIVE SUBSTANCES FROM THE LEAVES OF Ph7tyCa7:ya St7VbihlCeaSIE王∋.et Zucc.(PARTⅡ) Akir・a KoNDO In a pr・eVious study,Weisolated fr・Om theleaves ofPla秒CalyaStrObilacea SIEB.et Zucc. three biologically active substances,tentatively named as SubstancesI,ⅡandⅢ.Prese of substanceIViIltheleaves was also suggested. Each of these substances was toxic to fishes arldinhibitory to the gr・OWth of plants and microor’ganjsms.This paper・repOrtS the isolation of one mor・e Substance whichis active only to plants. Theleaves(10kg fresh weight)were extracted with methanoland the extr・act WaS parti− tionedwith ethyl、acetate and water・.The ethylacetate soluble fr・aCtion(152.5g)which Showed strIOnginhibitory activity to the growth of rIice seedling$WaS fractionated by column and pr’eparative thinlayer・Chr・OmatOgr’aphy successively,and fina11y3mg of colorless needle crIyStals(MW178,mp.140−141℃)wer・e Obtained from n−hexane and ethylacetate. Thissubstancecompietelyinhibited the growth ofrice seedlingsat300pg/ml,When tested just after ger・mination,but did not affect the gr・OWth of Bacillus subtilis atl,000pg/mi. ノグルミの生薬から生物活性を有する物質工,軋Ⅱを単離同定し,これらの活性物質はいずれも魚毒性,抗菌性, 植物生長阻寄性を同時に有していることについては前報(1)で報告したが,更に植物生長阻害性だけを有する活性物質Ⅴ を単離した。 ノグルミの生業10kgをメタノ・−ルで抽出濃縮し,この濃縮液を酢酸エチルと水で分配させると,強い植物生長阻害 性は酢酸エチル層へ移行した.この酢酸エチル可溶物(152。5g)をカラムクロマトグラフィー・で楷製し,更に分取 TLC,再結晶法により活性物質Ⅴ(3mg)を単離したぃ 活性物質Ⅴは無色の針状結晶で,融点は140−141℃を示し, 分子盈は178であった. イネ幼常に対する植物生長阻嘗試験では300〟g/mlで完全に生長を阻害した. 序 クルミ科の植物,クロクルミ,かニクルミ等は魚毒であり,卓た他の植物の生育を阻写する性質がある(2,3).これら の作用を有する物質としてエグロンが単離同定されている(4,5).著者等はクルミ科ノグルミ属の植物であるノグルミの 生業から魚毒性,抗菌性,植物生長阻害性を有する物質としてⅠ,Ⅱ,Ⅱを単離同定し,これらについては前報(1)で報 告したが,更に植物生長阻害性を有する活性物質Ⅴを単離した. 植物生長阻害性はイネ幼苗に対する生長阻害効果を指標として活性物質を単離した. 材料および方法 ノグルミの生薬10kg(岡山県吉永町の山中で8月に採取)をメタノ・−ルで数週間室温で抽出した.抽出物を減圧濃 OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 香川大学農学部学術報告 昭 近 藤 114 O u∈三〇〇 ﹂OqE⊃u喜幸呂左 〓∈Ol−一等○︶ ▲ざ0︻ ▲ざ〇一 Q ︵○空事dO−¢ ざめ ︵ 0﹂ト 寸 ︸ ¢−ヱ¢旨一き一山 ‖ OUONU¢血ご○冨宣訪 ーu¢∈d〇一ぎ名0∈;・ト.∈○芯﹂〇一石言冒墓石 ■¢冒墓石 O¶○〓⋮S M ● N 0﹂卜 ︰く u∈三〇UロuO思量巳ぎー○∈O﹂る U ⋮凸 ごの∴り巴−OUロ£¢≡⋮OuON亡¢mご各口芝云S 0−ニ00 ∴ トH−︰日.臼.H 三三○呂 l倉−u ▲ざ 芝OP ¢;00−¶ちロ ○芯≡S ごOUDエー﹄≧・亡巨○−OLO≡0︶ 盲∈昏芯>名芸nOP 二のの J−D−○呂︼主l山・〇u男呈・亡︶の寸の 的 U﹂ト MN uO;OP亡 ﹂ ○∈杓 N U﹂ト ● ¢−≡−○ ︻き一山ざの ▲ざ∽ ¢−写−○椚三ヱ父岩 ¢N −Oq∈n⊂ 〓∈0−∫膏︶一 ] l A ;ゆ;d言辞の.〇−毛呂−吉山・ぎ¢Nu又〓一望品 ゞVの uヱー○ロ﹂L ︵○支008き一山・〇u買○干亡〓のご0遥 〓∈〇一∫8皇 LOq∈コu ¢−〇三〇¢−ゥーgO−倉㌫ ¢言−8ワニざ由 O−ロー¢ひく一合−u ○−Dn芯 の.Nのlこ呂と×U 亡∈三〇〇 ▲ざの u∈三〇U⊥ ¢−雲父岩−倉−山 く ○−写■〇〇−ヱ¢呂き一山 ¢−写lO ボON.¢ちコl∞少−○芯苫き一山ボの1ど写−○¢−富0︻二合志二ざ〇一 uO;UO一山 .OUDNぢ.再巴S買選登玉:き買富家琶童更意芯選宣言者?選言眉==営凛qnS葛2ヨpむgJhぎ焉lOのl・T・加⋮h ︵盲〇二号D O ︶ L¢ q ∈ コ u の的 ○−ヨ一む○−葛冨 三 − リ ;≡山 t宣−山 ど≡一〇〇 − ヱ ¢ U O 空言ら■¢ど ヱ g D ︵ひ OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 欝30巻 常63号(1978) ノグルミの某に含まれる生物活性物質 115 縮後,酢酸エチルと水で分配すると強い活性は軍酢酸エチル層へ移行した.この酢酸エチル抽出物(1525g)もケイ 政一セライト朗5(1:2)カラムクロマトグラフイ・−で,ベンゼンー酢酸エチルの溶媒系を用いて酢酸エチルの濃度を 段階的に5%ずつ増加させて溶出分画すると,活性物質はベンゼン区分,5%酢酸エチル区分,10%酢酸エチル区分に 溶出した.この10%酢酸エチル溶出区分を更にカラムクロマトグラフイ−,TLC,再結晶法で精製し,活性物質Ⅴ(3 mg)を単離した. 活性物質の溶出区分と活性物質Ⅴの精製方法をFig‖1に示した. バイオアッセイ 抗菌試験,植物生長阻害試験は前報(ユ,6,7)の方法で行った. 試薬および装置 ケイ酸はM封1incf・Odt社製を,シリカゲルはE小MeI・Ck社製を用いた.・セライト弘5は兼官水で充分に水洗後,メ タノールとアセトンで各3回ずつ洗浄し,130℃で12‡1‡・乾燥したものを使用した. 融点はホットステージを用いて測定し,補正は行わなかった.赤外スぺクトルはKBI・錠剤法により,日立EM−2G 塾赤外分光光度計で測定した.紫外スぺクトルはエタノール溶液として,日立鎚0塾自記分光光度計で測定した.マス スぺクトルは日本電子.JEOL−TMS一心300型質盈分析装置で直接導入法により測定した. 実験結果および考察 活性物質Ⅴは無色の針状結晶で,140−141℃の融点を示し,紫外部の吸収スぺクトルは211nm(∂1.13×104), 229nm(ど1い27×104),301nm($h.e2彷×104),313nm(∂2.57×104)に極大吸収を示した.マススぺクトルは mん178が分子イオンであった.mスぺクトルはFigい2に示した u〇一SSIEむUudJ︶ ︺uむUJむd 3500 2500 1900 】600 1300 1000 700 400 Wave number(cm ̄1) Fig.2.RSpectrumofActiveSubstanCe V 活性物質ⅤのTLC(シリカゲル)のⅢ値は,0.52(ベンゼンー酢酸エチル,4:1),0亜(ベンゼンーメタノー ル,9:1),015(クロロホルムーエーテル,弟:1)であった.活性物質Ⅴの構造については現在研究中である. OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 116 近 藤 香川大学農学部学術報告 昭 Tablel”PlantGrowthInhibitoryEffectofActiveSubstance V Concentr・ation pg/m1 20 a) 40 60 80 100 150 200 96、3 96“0 95.5 944′ 93.0 b) 100−1 98.0 96.7 94‖5 920 250 300 350 89.9 68.4 788 47‖2 0 0 4618 10.7 0 0 a):Elongationofsecondleafsheath(%) b):Freshweightofroot(%) 活性物質Ⅴのイネ幼苗生長阻害作用はTめIelに示す如く,300pg/mlで某鞘および根の生長を完全に阻害した 抗菌試験ではβαCオJJ〝55〝ゐgオJ才5に対して1,000〟g/mlで抗菌力を示さなかった. 前報(1)で報告した活性物質工,Ⅱ,Ⅱはいずれも殺魚性,抗菌性,植物生長阻害性を同時に有していたが,活性物質 Ⅴは植物生長阻害性だけしか示さず,どのような構造を有す−る物質であるのか大変興味ある問題である. 種々ど教示,御指導をいただいた岡山大学農学部農芸化学科河啓一・儀博士に深謝致します. 引 用 文 献 (1)近藤 昭,河津一・儀:香大農学報,29,197 (1977). (2)MASSEY,A.B一:PhyioPaihoZpgy,15,773 (1925). (5)THOMSON,RH・:Natural1yoccuringquin0− nes,221,London,AcademicPressInc=(1970) (6)OGAWA,Y・:PlaniandαllPhysioz・, 227(1963). (3)ScHNEIDERHAN,FJ.:Zbid・,17,529(1927)巾 (7)KATSUMI,Ml,OGAWA,Yt,:KOSHIMIZU, (4)DAVIS,E.Fい:Amer.f Boi.,15,620(1928) K:Boi.MagTokyo,81,491(1968). (1978年5月31日 受理)