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Masan。ri G。ー, Atsushi HASEGAWA, Keik。 K。ーWA and
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 香川大学農学部学術報告 第33巻 第2号109∼118,1982 貴花ルピナスの生長および開花特性 五井正憲,長谷川 暗,小岩桂子,庵原 遜 GROWTH AND FLOWERING OFLupinuslutens MasanoriGoI,Atsushi王IASEGAWA,Keiko KoIWAand YuzuruIHARA S11mmary The growth and floweringbehaviors ofLupinuslulens L.cv.‘Gold Rush,wereinvestigated to ob− tain some fundamentalinformations for the culture ofit.The result$Were aS fbllows. 1”Theplantsgrew andfloweredbothunderlongdaysandundershortdays. 2.,Duringlow temperature treatment to the plants with five expandedleaves,the growth and floweringwereinhibitedu However,When they werereturned to the greenhouse afterthe treatment, they grew and flowered norma11y. 8.Theplants gTeW and flowerednormally atthe temperaturesof150and200C,but were apt to die or bear abnormalinflorescencesat250Cunder naturallong days. 括 要 黄花ルピナスの栽培のための基礎的知見を得るため,品種‘ゴールド・ラッシュ,を用いて,1973年から1974年 にかけて実験し,以下の結果を得た 1‖ 黄花ルピナスは,短日下でも長日下でも,同様に.生長・開花した 2け 生長期における低温は,本種の生長を抑制したが,その後の生長・開花には何の影響も及ばさなかった 3,本種は,150∼200Cでは正常に生長し開花に到ったが,250Cでほ枯死しやすくまた開花異常を生じた Ⅰ 緒 嘗 ルピナス属には多くの種があり,それらのほとんどは北アメリカ大陸に.,−・部は南アフリカと地中海沿岸地方に・ 分布している園芸的にほ,花が美しい数種,すなわち,ルピナス・ユ・レガンス(ム叩塩花髄8p祝わ¢βββ形¢βBENT壬Ⅰ Var.めgα花ββ),傘咲きルピナス(ん.鬼石γ紬≠鵬L..),ルピナス・/、−トウニギ・−(ん」九椚知喝磁1INDlん),ラッセル ・ルピナス(んpo如廟ヱ祝8肋ささeZヱHoRで.),黄花ルピナス(ん如e花きL.)など,一年草花井として扱われる亀 が重要である(2・8・4) 従来,ルピナスは,園芸的には切花または花壇用花井として用いられてきたが(2−5),近年でほラッセル種の鉢花 が消費者の人気を得ているい‘ これらのルピナスは,しかし,自然栽培でも開花異常をおこすことがあり,施設等を利用する生産のために・は, いくつかの基礎的問題を解決しておく必要がある. これまでのところ,園芸的立場からのルピナスの研究としては,わずかに,Postが生長のために・100C以上が 必要であることと花芽形成のために特定の日長・温度を必要としないことを示した例(1・2)があるにすぎず,開花問 題に関するまとまった報告は見当らない.そこで,花斉としてのルピナス栽培のために.必要な基礎的知見を得るた め,実験を計画した‖ ここに報告する黄花ルピナスは,ヨ・−ロッパ南部原産の早生種で,暖地では冬から春にかけて切花として栽培さ れている(5)い OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 110 香川大学農学部学術報告 第33巻 第2号(1982) Ⅰ 材料および方法 1973年秋軋種苗会社より購入した黄花ルピナス‘ゴ・−ルド・ラッシュ.’の種子を,実験計画に・あわせて,無病の 肥沃な用土で箱(30emx60emxllcm)に播種し,子葉展開後9em黒色ビニ1−ル・ポットに定植して実験に用 いた.日長処理のための短日は,自然短日(11月から3月までの実験)または日の出後11時間の自然光(3月8日 以後の実験)とし,長日はそれぞれの実験で短日+2時間光中断(午後11時∼午前1時,白熱灯100∼200lux)と した 実験期間中,表土が乾いた時に潅水し,2週間ごとに,マラソソ乳剤(2,000倍)とマンネブダイセソ水和剤 (500倍)を撒布したまた肥料としては,少盈の油かすを元肥とし,ほぼ2週間ごとに僅友液肥2号(500倍) を施した Ⅲ 実験結果および考察 1い 異なる日長下における生長・開花(実験1) ビニーリレハウス内(最高気温230J∼250C,最低気温120∼150C)で,1973年11月6日に播種し,同14日に定植し た首を,10鉢ずつ6区に分け,長日連続(A),本葉10枚まで長日とし後短日(B),本葉5枚まで長日とし後短日 (C),短日連続(D),本葉10枚まで短日後長日(B),本葉5枚まで短日後長日(F)の処理を行い,生長・開花に おける日長反応を調べた,なお,定植後日長転換までに・,日長による英数の差はなかった. 1974年には,自然気温が高くなり日長が長くなる時期に.おける日長反応を調べるため,3月8日に播種し,前実 験に準じて処理を行ったなお,4月10日以後は無暖房としたので,ハウス内の最低気温がやや低下したが,100C 以下にはならなかった 以上の2回の実験結果はほぼ−激したので,ここでは最初の実験について述べる,乗数,茎長で生長を表わした 時,苗の初期生長と開花終了時の茎長には日長に.よる差は認められなかった しかし,発らい時の茎長は,本葉5 枚∼10枚期の長日処理中こよって長くなる傾向があっ釆∴ 開花調査の結果でほ,本葉5枚以後長日下に置かれた個体がやや早く開花した以外,開花率( 開花株 蚕蘇 ×100) 到花日数(播種から開花までの日数),着花節位に.ほ,日長による差がはとんど認められなかった(第1表,第1 2図).花穂長ほ,発らい期以後長日に置かれた個体で長くなる債向があった(第3図) 以上の結果,黄花ルピナスほ日長にはとんど反応せ ず生長・開花すると考えられ,基本的には日長反応に. おける中性植物と言える… このノ島は,Postの記述(1・2〉 と−・致するい 第1表 日長が開花町及ぼす影響 区乱 闘花率b 100 100 100 100 90 3 5 6 9 5 9 7 8 8 8 8 7 A B C D E F 100% 到花日数e a.A:長日連続,B:長日36日後短日, C:長日15日後短日,D:短日連続, E:短日36日後長日,F:短日15日後長日 b.全個体に対する開花個体の割合 e.播撞日から開花までの日数 A B C D E F 処 理 区 第1図 日長が着花節位に及ぼす影響 OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 五井正憲,長谷川 暗,小岩桂子,庵原 遜‥貰花ルピナスの生長と開花 第2図 日長が開花に及ばす影響 日長:左より 長日連続,短日15日後長日,短日36日後長日, 長日15日後短日,長日36日後短日,短日連続 A B C D E F 処 理 区 第3図l]長が花穂長に及ばす影響 2 ■苗の低温遭遇と生長・開花(実験2) 黄花ルピナスが冬から春にかけて開花することは,本種が開花のために低温の影響を受けている可能性を示して いる そこで,実験1の秋の実験と同じ材料を,短日と長日下で,本葉5枚時より48日間(11月30日∼1月17日) 自然温度に遭わせ,再びビニ1−ル/、ウスに戻して同一日長下で栽培した その結果,すべての区のすべての個体が開花した。到花日数は,無低温短日区68日,同長日区で63日であったの に対し,低温処理短日区.107日,同長日区109日であったすなわち,低温処理された個体は,ほは低温期間に相当 する期間だけ遅れて開花したことになる 着花節位は処理による差がなかった(第2表)なお,この実験でも, 日長による開花の差ほ認められなかった Post(1)によれば,ルt=1ナスの生長は4◇C前後でほとんど停止し,100C以上で正常である本実験の結果も,低 111 OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 112 香川大学償学部学術報告 第33巻 第2号(1982) 第2表 低湿処理が生長と開花乾及はす影響 処 理 開花率b 到花日数e 着花節位 花穂長 低温期間 日長乱 e 3 1 7 m 0 1 0 ﹁⊥ ︻∂1 5 1 0 2 2 1 4 4 1 0 7 6 0 4 1 9 00 1 4 l 6 1 S 100 3 100 100 S 100% ︼L 0 48 T山 0日 48 0 6 a.低温処理(短日)期間を除くL‥長日,S‥短日 b.全個体に対する開花した個体の割合 C播種から開花までの日数 0 温期間中ほ生長がきわめて遅かったこれらのことから,低温処 理区の個体の開花の遅れほ,単に低温下における生長の遅れによ るものであると考えられる 以上の結果から,黄花ルピナスの開花に対して,低温は本質的 には何の影響も及ぼさないと考えられる 3生育温度と生長・開花(実験3) 以上に述べた実験において,黄花ルピナスの生長ほ,冬季の自 然温度で著しく抑制されるが,それが後の生長に質的影響を及ぼ すことはなか、つた−・方,秋根え草花ほ一・般に耐暑性が弱いこと から,ルピナスについてもこの点の検討が必要であるそこで, 栽培温度と生長・開花との関係を調べるため,1974年5月2日に 播種し,同8日に鉢上げ後,ただちにファイトトロソの自然光 (長日)150,200,250C室に10株ずつ搬入した その結果,150ぉよび200Cではすべての個体が正常に開花し たのに対し,250Cでは40%が枯死した(第4,5図)また,着 花節位や開花期にほ温度による差がほとんどなか、つたが,開花率 15 および花稔長は,250C区で著しく低下した(第6図)この結果 は,黄花ルピナスが耐暑性のきわめて弱い花升であることを示し ていると同時に,開花のために何らの低温要求を示さないことを 20 25 温 度(OC) 第4図 温度が生長と開花に及ばす影響 1974年5月2日に播種,5月8日より フ・7イトトロソ自然日長室で温度処理 実証している 第5図 温度が生長と開花に及ばす影響 左より2株ずつ150,200,25◇Cで処理 OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 五井正憲,長谷川 陀,小岩桂子,庵原 遜:黄花ルピナスの生長と開花 15 20 温 118 25 度(OC) 第6図 温度が開花に及ぼす影響 Ⅳ 結 以上の結果から,黄花ルピナスほ耐寒性は強いが耐暑性は弱く,涼温でのみ正常に生長し開花に到ること,また, 開花に閲し,特定の日長要求や低温要求を示さないことが明らかとなった.このような特性は,秋植草花としては むしろ例外的で,わずかにキンセンカ(1〉に例が求められる程度である 実用的に見た場合,本種は,きわめて栽培し易い花井であり,高温回避さえできれば,どの時期に.でも栽培する ことができる.ただし,冬季には150C樫度の保温がなければ開花が遅れるであろう 文 献 1”Post,K.:Effect ofdaylengthand tempera− 3.塚本洋太郎編:花井園芸講座Ⅰ,175−178,東京, 朝倉(1958). CrOpS,CornellUniv.Agr。Exp.Sta.Bull.,4日 塚本洋太郎:原色園芸植物園鑑Ⅰ,77−80,大阪, (787),1−70(1942). 保育社(1969)“ 2.Post,K.:Florist Crop Production and Mar− 5安田 勲:草花栽培の実際,177−180,東京,養賢 ture ongrowthandfloweringOfsomeflorist− keting;634−635,New York,OrangeJudd. (1949) 堂(1952)l (1981年11月30日受理)