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マクロ経済のストックーフロー分析と富効果
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE Title マクロ経済のストックーフロー分析と富効果 Author(s) 児玉, 元平 Citation 経営と経済, 56(1), pp.1-42; 1976 Issue Date 1976-06-30 URL http://hdl.handle.net/10069/27991 Right This document is downloaded at: 2017-03-31T12:03:51Z http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp マクロ経済のストックーフロー分析と富効果 マクロ経済のストックーフロー 分析と富効果 児玉元平 1 貯蓄と富との関係に関するメッツラーの先駆的業績以来1),マクロ経済分 析のモデルに富保有変化の効果を積極的に導入の傾向が顕著となりつつあ る。富効果または資産効果とよばれるものがそれである。もっとも,富が消 費者の行動になんらかの形で影響をあたえるという認誠は,既に早くアダム ・スミスにまでさかのぼることができるし2),また,マーシャルも財に対す る需要の決定要因として,貨幣の実質昌と実物的富の昌をあげている3)。し かし,富効果を今日のような形で考察されるようになったのはケインズの一 般理論以後である。バーバラーは,つぎのように述べている。「ケインズ効 果,ピグー効果,或いはもっと一般的に富貯蓄関係の理論は,われわれの分 析道具の内容を豊富にしたことは疑問のないことである。これは,主として 「一般理論」にあたえられた刺戟によるものである。ケインズは,古典派経 済学者をして彼等の理論を再考せしめ,再論述せしめ,洗練せしめたのであ る4)。」 通常,富効果には二つの側面が区別される。価格誘発的富効果(price− induced wealth effect)と利子誘発的富効果(interest−induced wealth effect)である5)。前者についてハ,バラpはつぎのような説明をあたえて いる。物価の低落によって,「これらの貨幣退蔵の量は増大するであろう。 それは,物価の下落によって実質購買力で測ってますます早く増加 するであろう。これらの退蔵は実質富のみならず実質所得に関連しても増大 するであろう。……流動的資産が富のかなり大きな比率にまで達した後に は,流動性にたいする欲求は終局的にみたされ,ひとびとは彼等の退蔵の増