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薄膜工学:7 月 7 日の補足説明
薄膜工学:7 月 7 日の補足説明 垂直入射 垂直入射の場合には,cos θ1 = cos θ0 = cos θ2 = 1 である から,空気 → 薄膜間(0 → 1),薄膜 → 基板(0 → 1)間で θ0 θ0 n0 = 1 の反射率は, r1 t1’ r1 = -r1 t1 n0 − n1 n0 + n1 , r2 = n1 − n2 n1 + n2 (10) となる. ,垂直入射の場合には,空気 → 薄膜間,薄膜 → 基板 n1 θ1 間での透過率は, r2 t1 = t2 n2 2n0 n0 + n1 , t01 = 2n1 n0 + n1 , t2 = 2n1 n1 + n2 (11) となる. θ2 n0 = 1 エネルギー反射率,エネルギー透過率 θ0 エネルギー反射率は,振幅反射率の 2 乗として, R = |r|2 = rr (12) で与えられ,エネルギー透過率 T は反射の残りであるから 境界面での反射率と透過率 T=1−R 教科書 152 頁 (4.16) の式は空気の屈折率 n0 を 1 としてい るが,n0 ままで記述すると, n0 sin θ0 = n1 sin θ1 = n2 sin θ2 で与えられる.なお,垂直入射の場合で示すが, ( (1) T=1−R=1− 教科書 152 頁 (4.17),(4.18) の式を変形すると, r1,s r1,p r2,s r2,p sin(θ0 − θ1 ) sin θ0 cos θ1 − cos θ0 sin θ1 =− =− sin(θ0 + θ1 ) sin θ0 cos θ1 + cos θ0 sin θ1 n1 /n0 · sin θ1 cos θ1 − cos θ0 sin θ1 =− n1 /n0 · sin θ1 cos θ1 + cos θ0 sin θ1 n1 cos θ1 − n0 cos θ0 =− n1 cos θ1 + n0 cos θ0 n0 cos θ0 − n1 cos θ1 = n0 cos θ0 + n1 cos θ1 n1 cos θ0 − n0 cos θ1 tan(θ0 − θ1 ) = =+ tan(θ0 + θ1 ) n1 cos θ0 + n0 cos θ1 sin(θ1 − θ2 ) n1 cos θ1 − n2 cos θ2 =− = sin(θ1 + θ2 ) n1 cos θ1 + n2 cos θ2 tan(θ1 − θ2 ) n2 cos θ1 − n1 cos θ2 =+ = tan(θ1 + θ2 ) n2 cos θ1 + n1 cos θ2 ( = (5) (14) (15) (16) (17) また,エネルギー反射率 R,透過率 T は R = |r|2 , である.これら rs,p , ts,p はフレネル係数と呼ばれる. また,一般に光の進行を逆転させた場合を r0 , t0 で表すと, r = r = 1 − tt n1 n1 = |t|2 · 6 |t|2 = n0 n0 透過率は s, p 偏光によらず同じ形式に表現できる. ni p 偏光 cos θi Yi = n cos θ s 偏光 i i √ √ Y0 − Y1 n0 cos θ0 2 Y0 Y1 t= r= · Y0 + Y1 , n1 cos θ1 Y0 + Y1 (4) (7) (8) 0 4n0 n1 (n0 + n1 )2 光学アドミタンス Y を以下のように定義すると,反射率と (3) t1,p 02 · = 光学アドミタンス (2) (6) 2 )2 )2 (屈折率 n の逆数に比例)を用いて補正しなければならない. t1,s = r0 = −r 2n0 n0 + n1 n0 − n1 n0 + n1 であり,T と |t|2 は等しくならない.媒質中の光の伝搬速度 と記述できる.また, (振幅)透過率は,0 → 1 について, 2n0 cos θ0 2 cos θ0 sin θ1 = sin(θ0 + θ1 ) n0 cos θ0 + n1 cos θ1 t1,s 2n0 cos θ0 = = cos(θ0 − θ1 ) n0 cos θ1 + n1 cos θ0 (13) (9) 1 T=1−R= n1 cos θ1 2 |t| 6= |t|2 n0 cos θ0 (18) 多重反射 あり,m を正整数として, r0 = −r,r2 + tt0 = 1 であることに注意して,多重反射を 考慮した反射率 R および透過率 T は, 2δ = 4πn1 d cos θ1 = mπ λ ∴ λ= 4n1 d cos θ1 m 例えば図 1 では,極値を示す波長は, R = r1 + t1 r2 t01 e−2iδ + t1 r2 (r10 r2 )t01 e−4iδ = = = T = 4 × 1.8 × 300 cos(arcsin(sin(π/3)/1.8)) 2m ] 1894 [ = 1894, 947, 631, 473, 379, 316, · · · = m λm = + t1 r2 (r10 r2 )2 t01 e−6iδ + · · · (19) ∞ ( ) ∑ k r1 + t1 r2 t01 e−2iδ r10 r2 e−2iδ k=0 t1 r2 t01 e−2iδ r1 − r1 r10 r2 e−2iδ + t1 r2 t01 e−2iδ r1 + = 1 − r10 r2 e−2iδ 1 − r10 r2 e−2iδ r1 + r2 e−2iδ r1 + r2 e−2iδ (r12 + t1 t01 ) = (20) −2iδ 1 + r1 r2 e 1 + r1 r2 e−2iδ t1 t2 e−iδ + t1 (r2 r10 )t2 e−3iδ + t1 (r2 r10 )2 t2 e−5iδ + · · · + t1 (r2 r10 )k t2 e−(2k+1)iδ + · · · ∞ ( )k ∑ = t1 t2 e−iδ r2 r10 e−2iδ となっている. 振動・波動と複素数表示 2 つの実数 x, y を内部情報として持つ複素数 z = x + iy は, いわば 1 つの記号で 2 つの量を扱うことができる便利な表現 (21) である. 虚数単位 : i2 = −1 k=0 −iδ = (25) 複素共役 : z̃ = x − iy t1 t2 e t1 t2 e−iδ = 1 − r2 r10 e−2iδ 1 + r1 r2 e−2iδ (22) 絶対値 : abs(z) = |z| = x2 + y 2 = y 偏角 : arg(z) = arctan x [ ] z + z̃ 実数部 : Re z = x = 2 [ ] z − z̃ 虚数部 : Im z = x = 2i 2 光線の干渉 多重反射ではなく,薄膜表面の反射光と薄膜– 基板界面で 1 回反射した光の 2 本の光線だけによる干渉を計 算する.すなわち,式 (19),(21) の右辺第 2 項までの和を取 れば,r1 , r2 が実数の場合, Rd = r1 + t1 r2 t01 e−2iδ = r1 + r2 (1 − r12 )e−2iδ √ √ (26) z z̃ (27) (28) (29) (30) 複素数は,偏角 θ = arg(z) と絶対値 |z| を用いて,極形式に (23) 表すことができる. fd Rd = Rd R = r12 + r22 (1 − r12 )2 + 2r1 r2 (1 − r12 ) cos 2δ z = |z|eiθ (24) (31) この表記は,オイラーの公式 例えば,空気,薄膜,基板の屈折率を n0 = 1, n1 = 1.8, n2 = 1.5 とし,厚さ d = 300 nm の薄膜に対する s 偏光のエネル ギー反射率を,入射角 60 °,波長 λ = 300 ∼ 800 nm の範囲 で求めた結果を図 1 に示す. eiθ = cos θ + i sin θ (32) と組み合わさると,振動・波動現象の記述において極めて有 用なものとなる. nf = 1.8, d = 300 nm, ns = 1.5, θ = 60 o 単一の振動数を持つ振動・波動現象は,三角関数 エネルギー反射率 0.25 I(t, x) = A cos(ωt − kx + φ0 ) 0.2 (33) で表される.関数を特定するには,振幅 A と位相差 −kx + φ0 0.15 を定めることが必要である.ところが,三角関数は位相差が 関数の中に入っており,それだけを単独に取り扱うことが難 0.1 しい.このことが計算を困難にしている.一方,複素数の極 0.05 0 300 形式表示では 400 500 600 700 0 ) iωt Aei(ωt−kx+φ0 ) = A e|i(kx−φ {z } e 800 波長 (34) 位相情報 = A cos(ωt − kx + φ0 ) + iA sin(ωt − kx + φ0 ) 図 1 多重反射ではなく,2 本の光線だけを考慮した単層膜のエネ ルギー反射率の波長依存性 (35) であるから,位相情報が独立して扱えるようにみえる.ただ し,実際の三角関数を得るには,実数部を取り出す必要があ なお,反射率が極値を取る条件は明らかに cos 2δ = ±1 で り,煩雑な計算となる場合がある. 2 和の計算 積の計算 エネルギー(平均値)は振幅の 2 乗 A2 を計算すればよい. 振動数が共通である二つの波動 f1 , f2 の和は,三角関数の 合成の公式を用いて, 時間依存性を含めて,積を計算すると, ? f? + f f? [ ] [ ] f ? + ff 1 2 f1 f2 = Re f1? Re f2? = 1 · 2 2 2 ?f ?f ? ? f? ? f ? f ? + ff 1 f2 + f1 f2 + f1 f2 = 1 2 4 [ ? ?] [ ] ? Re f1 f2 + Re f1? ff 2 = 2 [ ? ?] 6= Re f1 f2 f1 + f2 = A1 cos (ωt − α1 ) + A2 cos (ωt − α2 ) (36) = A cos (ωt − δ) (37) P = A1 cos α1 + A2 cos α2 , (38) Q = A1 sin α1 + A2 sin α2 √ Q A = P 2 + Q2 , tan δ = P (39) (40) (50) (51) (52) であるから,極形式複素数表示でも表現が簡素にならない. と計算できるが,実は途中で cos(ωt − α1 ) = cos ωt cos α1 + なお,(51) の分子第 1 項は e2iωt の時間依存性,第 2 項は時 sin ωt sin α1 のように一旦分解する計算が含まれ,煩雑であ る.一方,極形式複素数表示では,同じ計算が 間依存しない定数となる. f1? + f2? (41) = A1 e−iα1 eiωt + A2 e−iα2 eiωt ) ( = A1 e−iα1 + A2 e−iα2 eiωt (42) 指数関数を複素数 z = x + iy に拡張して (43) −iδ iωt = Ae 減衰振動 e eiz = ei(x+iy) = eix ei (44) A1 e + A2 e (53) (54) の極形式複素数表示は,複素振動数 ω ∗ = ω + iλ を定義して, −iδ = Ae (45) f ? = Ae−iα eiω を解かねばならず,暗算とはいかない.無論,値は式 (40) と = Ae る複素関数 Ae−iα eiωt の記号表記であり,以下の関係にある. [ ] Re f1? + f2? = f1 + f2 ∗ t = Ae−iα ei(ω+iλ)t (55) −λt −iα iωt 同じである.なお f ? は三角関数 f = A cos(ωt − α) に対応す [ ] Re f ? = f, = eix e−y f = Ae−λt cos(ωt − α) 振幅 A と位相 δ を具体的に算出するには, −iα2 y が成立することを認めると,時間的に減衰する振動 と (43) の如く,和を取る算法が簡潔に表現される.もっとも, −iα1 2 e e (56) と定めることができる.空間的に減衰する波動を表現する場 合には,減衰定数を波数 k に虚数部として加えて,複素数の (46) 波数を導入すればよい. 多重反射の和の計算においては,反射を繰り返す毎に位相 差が増え,以下の値を計算しなけれなならない. ∞ ∑ 時間微分 三角関数の時間微分と極形式複素数表示の時間微分が正し Ak cos(ωt − 2δk) く対応していることは以下のように確かめられる. k=0 = cos(ωt) + A cos(ωt−2δ) + A2 cos(ωt−4δ) + · · · (47) f = A cos(ωt − α) 直ぐには手がつけられないが,極形式複素数表示を用いると, ∞ ∑ (Ae−2iδ )k eiωt = eiωt lim N →∞ k=0 N ∑ (48) (59) ? (60) 2 i(ωt−α) f = Ae k=0 −2iδ N +1 1 1 − (Ae ) = eiωt 1 − Ae−2iδ 1 − Ae−2iδ [ ] ] [ ] [ e ∴ Re = Re Be−i eiωt = Re Bei(ωt−) −2iδ 1 − Ae cos(ωt − ) (49) = B cos(ωt − ) = √ 1 + A2 − 2A cos 2δ [ ] A sin 2δ tan = 1 − A cos 2δ = eiωt lim (58) f¨ = −ω A cos(ωt − α) = −ω f 2 (Ae−2iδ )k (57) f˙ = −ωA sin(ωt − α) f˙? = iωAe N →∞ iωt i(ωt−α) (61) (62) f¨? = −ω 2 Aei(ωt−α) = −ω 2 f ? [ ] [ ] Re f˙? = Re iωA(cos(ωt − α) + i sin(ωt − α)) [ ] = Re iωA(cos(ωt − α) − ωA sin(ωt − α)) = −ωA sin(ωt − α) ] [ ] [ ] [ Re f¨? = Re − ω 2 f ? = −ω 2 Re f ? = −ω 2 A cos(ωt − α) と計算が進む. 3 (63) (64) 例題 1 (減衰振動) 減衰振動の運動方程式 ẍ + 2λẋ + ω 2 x = 0 の解を極形式複素数表示を用いて求めなさい.ただし,ω > λ とする. [解] 解の極形式複素数表示を x? = Aei(ω ∗ t−α) と仮定すると,運動方程式は, − ω ∗2 x? + 2iω ∗ λx? + ω 2 x? = 0 ⇒ − ω ∗2 + 2iλω ∗ + ω 2 = 0 √ √ ⇒ ω ∗ = iλ ± (iλ)2 + ω 2 = ± ω 2 − λ2 + iλ √ ∴ x? = Aei(± ω 2 −λ2 +iλ)t−α) √ = Ae−λt ei(± ω 2 −λ2 t−α) よって, √ [ ] x(t) = Re x? = Ae−λt cos(± ω 2 − λ2 t − α) 例題 2 (強制振動の複素数表示解法) 減衰振動系におけ る,外力 cos pt による強制振動 ẍ + 2λẋ + ω 2 x = cos pt の定常解 A cos(pt − α) を,極形式複素数表示を用いて求め なさい. [解] 想定する定常解のおよび外力の極形式複素数表示は x? = Aei(pt−α) , p? = eipt であるから,運動方程式を解いて, ẍ? + 2λẋ? + ω 2 x? = eipt ( ) ⇒ Aei(pt−α) −p2 + 2ipλ + ω 2 = eipt ⇒ Ae−iα (ω 2 − p2 + 2ipλ) = 1 1 =z ∴ Ae−iα = 2 ω − p2 + 2ipλ したがって, √ A = |z| = 1 (ω 2 − p2 )2 + (2pλ)2 α = arg(z) = arctan 2pλ ω 2 − p2 4