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佐藤 友信

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佐藤 友信
だんぶり長者になろう!
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8 成長と貢献と新たな価値の創造をめざす
2014
2014.0
.08
コミュニティ・デザイナー 佐 藤 友 信
1 1)
062 『千と千尋の・・・』(1
自分の「ミッション・ステートメント」を探していると、世の中にはいい言葉、美しい言葉、自分を力づけ励まして
くれる言葉、理想や憧れや夢をかき立ててくれる言葉などが無数にあることに気づきます。私たちは普段そん
な言葉を見つけても、いちいちメモしたり掲示したりしませんが、それを意図的に行い、ノートでも手帳でも掲示
でもして、毎日あるいは時々でも目にしていると状況は少しずつ変化してきます。多くの自己啓発書には、それ
を朝と夜寝る前に必ず読むといいとあります。
さらにそれを声に出して読むとなおいいようです。声に出すとそれはアファーメーションとなります。アファーメ
ーションについては別の機会に書きますが、ここでは自分自身に繰り返し語りかける有効な言葉と言っておき
ましょう。昔から祈りの言葉や唱え文句として行われてきたことですが、強力な願いや祈りの言葉は、時には願
望の実現や苦境からの脱出などに効果を発揮することがあります。今では深層心理学の発達によって、それ
が潜在意識のはたらきであることがわかっています。
その仕組みは分らなくても、よい言葉、好きな言葉、聞いても使ってもうれしくなるような言葉をたくさんもって
いて、自分にも身近な人にも、あるいはたまたま触れ合う人にでもどんどん使うといいのです。人に対して使う
言葉は自分にも返ってくるそうですから、汚い言葉やののしり言葉、人を傷つけたり不快にさせる言葉は、相手
と同時に自分をも傷つけるのです。なぜなら潜在意識は主語を理解しないからです。ですから「お前は馬鹿だ」
とよく言う人は、「おれは馬鹿だ」と自分に繰り返し言っているのと同じで、それが潜在意識に届いたときには本
当に馬鹿なマネをしてしまうのです。
ちょうどいい機会なので「アイデンティティ」のことを少し書いてみたいと思います。映画『千と千尋の神隠し』
で、千尋は異世界に入り込むと「千尋」という名を奪われ、「千」と呼ばれるようになります。この名前の変換は
千尋のキャラクターを次第に奪い、千のキャラクターに変えていくのです。おそらく千尋の名前のままでは、あ
のような大活躍はできなかったに違いありません。こちらの世界での名前を奪われたことで、逆に異世界に早く
順応できたのだと考えられます。
NHK の朝の連続ドラマ『花子とアン』で、翻訳家村岡花子さんはもともと「ハナ」という名前であったことがわか
りました。ハナは子供のときから「ハナコと呼んでくりょ」と言い続け、ついに「花子」の名前を獲得するのです。
村岡さんは明らかに「花子」という名前に自分の理想像を重ねて見ていたのです。村岡さんは「花子」という名
にふさわしいと考えていたアイデンティティを、名前と一緒に獲得していったものと思われます。そして、自分を
迷わず「花子」と呼んでくれた人を伴侶とすることさえできるのです。まさに、アイデンティティの力は恐るべきも
のなのです。
偶然かも知れませんが、私が朝ドラと並行して浸っていた宮澤賢治の周辺にも同じようなことを見つけまし
た。詩『永訣の朝』や『青森挽歌』で賢治は妹を「とし子」と呼んでいますが、妹の実名は「トシ」でした。おそらくト
シさんも「とし子」と呼ばれるのを喜んだのでしょう。賢治が生前の妹をどう呼んでいたかはわかりませんが、別
れの詩に妹の喜ぶ名前を使ったのは間違いないでしょう。
最近は収束した観がありますが、明治から大正・昭和・平成にかけての実に長い間、女の子の名前に「子」を
つけるのが流行った理由が察せられて面白いと思います。名前は「私は○○である」「私=○○」という強力な
アイデンティティですから、親や教師や上司がどんなに軽い気持ちであろうと、子供や生徒や部下に「お前は馬
鹿じゃないのか」などと言うことは危険きわまりないのです。相手が「自分は馬鹿である」と信じてしまうと、その
言葉や名前のように行動してしまうからです。しかしよいことに使えば、実はこれほど人を高めてくれるアイテム
もないのです。(続)
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