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日本に適応した新しいガスパイプライン建設方法

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日本に適応した新しいガスパイプライン建設方法
日本に適応した新しいガスパイプライン建設方法
−高速道利用のクイック工法でコストは1/3に!−
と ま べ ち
まさとし
苫米地 正敏
mtoma@mmm-keio. net
苫米地技術事務所代表
日本国内の天然ガス幹線パイプラインは先進国の中で最も未整備である。このため,日本で
は,環境負荷が低く日本近隣に膨大な埋蔵量のある天然ガスの利用度が,先進国の中で最低水
準になっている。その大きな原因が,国内の幹線パイプライン建設コストがこれまで非常に高
かったことである。最近,このコストを下げるために規制緩和が進められると同時に,クイッ
ク工法という建設工法の技術革新が実現化してきた。特に既存の高速道路を利用してこの工法
を採用できれば,建設コストは劇的に下げられる可能性があり,日本でも本格的な天然ガス時
代が到来する可能性が出てくる。
1.ガスパイプラインの沿革と米国事情
送に替わり石油輸送の主役となった。
石油と同時に天然ガスも発見されたが,気体
であり適切な輸送手段がなく,現地で無駄に燃
(1)沿革
英国の産業革命は石炭をエネルギー源として
やしたり街灯照明に細々と利用したりしてい
推進されたが,米国発展の原動力は,石油・天
増大させるにつれ,天然ガスはその代替として
然ガスの発見とその利用にあったと言われてい
都市ガス用,発電用,産業用等の民生用需要を
た。戦時下,石油が軍事用燃料としての価値を
る。1859年,ペンシルベニア州タイタスビル
増加させ,1945年以降大規模な高圧天然ガスパ
(Titusville, Penn.)で大量の石油が発見された
イプラインの建設が全米に広まった。
米国外におけるパイプライン輸送は,米英系
のを契機に,いわゆる石油時代が開幕した。
石油は当初木樽(barrel,バレル)詰めの馬
車輸送であった(石油の単位が“バレル”とさ
れた由来)が,長距離にわたり安全・効率的に
石油会社の進出に伴い,カナダ,中近東,中南
米,ロシアの産油地に普及し,1960年代のオラ
ンダ,北海,北アフリカでの天然ガス開発,更
運ぶためにパイプライン(pipeline)という新
しい液体の輸送手段が米国で発明された。鋼管
にはロシアのウラル,西シベリアから東欧圏諸
(steel pipe)をねじや溶接でつなぎ,目的地ま
長距離・高圧ガスパイプラインが欧州諸国に縦
で敷設(lining)し,ポンプで圧送する石油の
国を縦断し西欧諸国への天然ガス輸出のため,
横に建設された。
大量輸送システムである。
19世紀に米国の大陸横断鉄道建設に貢献した
鉄鋼製造・防食・溶接・土木建設等の技術がパ
(2)米国事情
米国のパイプライン敷設は,鉄道建設と同様
イプライン建設にも効果的に用いられた。20世
紀初頭に発見されたテキサス,オクラホマの大
に民間資本主導で行われた。連邦・州政府の関
油田から東部諸州,五大湖地方の人口密集地ま
規制に限られ,経済原則が優先されることにな
で2,000kmを超える長距離石油パイプラインが
相次いで建設され,貨車・タンカー・バージ輸
る。
石油/天然ガス レビュー ’04/1・3
与は設備安全面,第三者との紛争防止面からの
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総延長距離数千kmにも及ぶ帯状の用地,い
わば石油の道は,地主と永年借地契約を結び占
位で契約・発注される。工事の受注者は,請負
用権を取得する方法で確保した。なお,この帯
状の占用権はライト・オブ・ウェイ(Right of
者(engineering-contractor)と呼ばれ,契約
した価格,期間,条件で施工する義務が発生し,
Way, R.O.W)と呼ばれる。用地幅は,工事施
工・維持管理に必要な余地も含めて決定され,
工事施工の全責任を負う(turn-key contract)
。
パイプラインの規模が拡大するにつれ施工方法
通常20m前後である。パイプラインは,気温に
よる伸縮を最小にし,更に第三者による人為的
の効率化が要求され,これに応える形でスプレ
な災害を防ぐため,この用地内に埋設される。
状占用地(R.O.W)内の一般埋設部を対象にし
完成後(供用中)は,周囲に有刺鉄線等でフェ
た日進1−2マイル(1.6−3.2km)の高速施工
法である。このためにパイプライン敷設専用の
ンス囲いをして部外者の侵入や家畜,野生動物
の迷い込みを防止した。
建設工事は,工事の効率化(工期短縮・工事
費低減)を図るため,50−100kmの大規模な単
ッド工法(Spread Method)が開発された。帯
建設機械が開発され,鉄道建設で確立された機
械化手法が応用されている。
ガスパイプラインシステム中河川,鉄道,道
表1 スプレッド工法施工フロー
作業名
作業内容
1 整地・伐採
・ブルドーザー(bulldozer)での用地内の樹木の伐採・移設,除草,
(Grading)
不陸整斉の実施
2 鋼管配列・曲げ加工
・トレーラー(trailer truck)による鋼管搬入,クレーンによる配列
(Stringing & Bending) (12m 鋼管または 24m 二本継ぎ溶接鋼管)
・敷設場所の屈曲・起伏に合わせた水圧ベンダー(hydraulic
bending machine)による曲げ加工
3 掘削
・ロータリー掘削機(rotary trenching machine)での溝連続掘削
(Trenching)
・掘削土の溝横への仮置き(埋設土への活用)
4 溶接
・サイドブームトラクター(side-boom tractor)と内面水圧式クラ
(Girth-welding)
ンプ(internal hydraulic clump)での開先芯だし(fitting)作業
・セルローズ系溶接棒による高速被覆アーク溶接(manual shieldarc welding)(API Std. 1104)
5 検査
・全溶接部の外観・寸法検査及び管内自走式装置(self-propelled
(Inspection)
equipment)によるⅩ線(x-ray)検査
6 塗覆装
・サイドブームトラクター搭載の自動塗覆装装置(coat-and-wrap machine)
(Coating & Wrapping) による長尺パイプライン外面への連続アスファルトジュート巻き
またはプラスチックテープ巻き施工
7 吊り下ろし
・サポートローラー(cradle)つきサイドブームトラクター複数台
(Lowering-in)
使用によるパイプラインの掘削構内への S 字連続吊り下ろし作業
8 埋め戻し
・ブルドーザー,バックホウ(backhoe)での連続埋め戻し・締固
(Backfilling)
め作業
・盛り土による自然圧密の促進
9 水圧試験
・最高使用圧力の 1.5 倍での水圧耐圧試験(1時間保持),1.1 倍での
(Hydraulic test)
気圧漏洩試験(24 時間保持)
の実施(パイプライン全長埋設完了後)
10 清掃
・傾斜地安定化のための水溶種苗等の緑地化対策
(Cleaning)
・第三者・動物の侵入防止用として,R.O.W 用地境界沿いに2 m 高
さの有刺鉄線フェンスの設置
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路横断等の特殊部は地中部を推進するか専用橋
を設置することで横断される。これら特殊施工
2.我が国ガスパイプラインの発展の
経緯とその課題
部とスプレッド工法で施工された一般埋設部
は,タイ・イン(tie-in)と呼ばれる特殊地下
溶接で接合される。また,災害防止のため,パ
(1)発展の経緯
我が国では,戦前より石炭が国産エネルギーの
イプラインには数kmから十数kmごとに緊急遮
主体として都市ガス原料,発電用燃料に利用され
断弁(emergency shutdown valve)が設置さ
てきた。戦後,中東からの石油輸入によってエネ
れるが,ガス放散設備(gas blowout facility)
ルギー事情は一変するが,天然ガスは新潟,秋田,
や清掃用・水圧試験用ピグランチャー(pig
千葉にわずかに産出するだけであり,長年地域的
launcher)と併せ,バルブ基地(valve station)
な需要に対応するのにとどまっていた。
として管理される。
パイプラインは,天然ガスの輸送手段
1963年,国内初の天然ガスパイプラインが新
潟のガス田から東京の都市ガス工場まで敷設さ
(transportation)であると同時に高圧貯蔵手段
れた。総延長305kmにわたり長野,群馬,埼玉
(tank or holder-storage)としても機能してお
り,使用される鋼管外径は年々大口径化し,現
を経由して鋼管外径355mmで建設され,パイ
プライン沿線各地にも都市ガス原料を供給し
在56in.(1,422.0mm)まで製造・施工が可能と
た。ルートは急峻な山岳・渓谷地帯が多く,冬
なっている。
また大規模パイプラインの操業管理は,
季降雪時も作業されたため,機械化施工上極め
SCADA(supervisory control and data acquisition)
1965年には,液化天然ガス(LNG)の輸入
が始まり,本格的な高圧天然ガスパイプライン
Systemにより総合的になされている。
て困難な工事であった。
建設が計画された。大都市圏の都市ガス会社,
(3)スプレッド工法
米国で開発されたスプレッド工法は,平坦な
電力会社が,供給区域の拡大・整備,供給効率
国土に敷設するに適したものであり,彼地で普
1990年代に入り,新潟県岩船沖の国産天然ガ
スを東新潟港の精製基地から山形県,宮城県を
及した。
表1にスプレッド工法の標準施工フローを示
化を目指したのが契機であった。
経由して仙台の天然ガス火力発電所まで輸送す
す。十分な準備作業と無駄を省いた流れ作業的
る国土横断ガスパイプラインが計画された。総
な施工法で効率化が図られている。専用建機と
延長260kmにわたり,鋼管径508mmで敷設さ
れた我が国最大規模の天然ガスパイプラインで
して,rotary trenching machine, side-boom
tractor, field bending machineが機能的に活用
される。作業者は技能分野別に専門化され,配
ある。建設工事費の低減,建設工期の短縮を最
管芯だし工(fitter)と初層溶接士(stringer
の技術課題がダイナミックに実施された。その
welder)は,敷設作業能率全体を左右する要
として最高の技能が要求され,見返りに高報酬
一つが,“クイックパイプライン工法(QPL工
法)”である。まさに日本の国土に適応した狭
で処遇されている。
風雨による敷設作業の中断は,工事費に及ぼ
小道路での高速施工法である(詳細は,第3節
す影響が大きく,天候不順の冬季は避けて,春
験,工法の実証試験を通じ,我が国での長距離
から秋までの6−8カ月間に作業を集中する。
ガスパイプライン建設における,工学的,経済
その間は休日とてなく約10時間の日照中従事す
ることになり,作業環境は想像以上に厳しい。
的な実現可能性を示唆するシステムである。ま
作業者にはその技能に加え,強靭な体力が要求
Systemによる操業管理も導入されている。
重要命題として,ルート選定と並行して,幾多
に後述する)。数年にわたる専用建機の開発実
たこのパイプラインには最新のSCADA
最も,2000年末の現状で,我が国での高圧パ
される。
イプライン(1MPa以上)の総延長は4,700km程
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度であり,米国の40万km強に及ぶべくもない。
⑥申請認可手続き
パイプライン建設には多くの規制があり,
(2)敷設用地に関する課題
我が国は,地形特性や行政規制により,米国
各種申請許認可手続きの大半は1−2年も
の期間を要する。主な規正法は次のとおり
と比較して用地確保に幾つもの固有の障害があ
である。
(ア)道路占用:道路法,地滑り等防止法
る。以下に公共用地及び民有地の順で個条する。
①道路占用
公道下にパイプライン施設を敷設するとき
(イ)河川横過:河川法
(ウ)国立公園内敷設:自然公園法
(エ)農振除外・農地転用:農業振興地域の
の最大の課題は,道路法による他埋設物と
整備に関する法律,農地法
の埋設位置調整であり,困難を極める。
②地滑り区域通過
地震が多発する我が火山国は,地滑り地区
(オ)保安林解除:森林法
が多く,これを全く回避することは不可能
⑦民有地取得
民有地の計画的な取得は,交渉の相手が土
である。二次災害の予防も含めた特別の対
地を愛着する生身の人間であり,土地の権
策工事(地滑り抑止工,地滑り検知システ
利関係が複雑なことから容易ではない。と
ムの設置,遮断弁を備えた複数ラインの設
きに,パイプラインルートさえも変更を余
置等)を施さざるを得ない。
儀なくされる。
③道路トンネル内敷設
道路トンネル内へのガスパイプラインの設
置は,通行車両の安全上禁止されているた
(3)工事施工上の課題
前述固有の障害は,施工上にも色濃く反映さ
め,ルートは迂回し,ラインを大幅に延長
れる。例えば在来工法(表2参照)によって代
せざるを得ない。パイプライン専用トンネ
表的用地である道路に施工するとする。前述の
ルの設置が現実的な解決法であるが,これ
埋設物調整等に,更に道路交通法規制(注)が
とて相当の費用を要す。なお,専用トンネ
加わり,作業日あたり24m施工が限界となる。
ルは,長距離・曲線掘進可能なマイクロト
スプレッド工法の日進2−3kmとは比較すべ
ンネリング技術により効率化が可能である。
くもない。
そこで,在来工法(バックホウ(油圧式掘削
④河川横過
河川を横断する方法には,河床をくぐる河
機),レッカー車,ダンプトラック等の汎用機
川下越しと河を跨ぐ専用橋とがある。前者
械による)を凌ぐ,我が国固有の新しい工法の
は欧米では許容されるが,我が国ではほと
開発が急がれたゆえんである。
んどの地方自治体は禁止する。後者は,河
川法が適用され,主要な公共施設に認定さ
注:道路交通法上の規制
公道に埋設敷設する場合,所轄の警察署に管理され
れると,規制が強まり不必要に橋を大型化
せざるを得ない。そのため建設費の増大,
るが,都市部では最小限次のような条件が課される。
①1車線交互通行の確保
工期の延長を余儀なくされる。
⑤道路橋添架
道路橋にガスパイプラインを設置するとき
②施工占用範囲50m以内
③交通整理員の配置
は,地方自治体の橋梁添架基準によるが,
④午前9時から午後5時までの施工
古い橋梁は設計荷重上から不許可とされる
⑤夜間通行開放または防護策・夜間灯設置
事例が多い。新設橋梁への添架は,パイプ
⑥近隣駐車場への出入路確保
ライン構造が,橋梁に悪影響を与えない限
⑦工事開始前の住民・関係者への事前説明会開催
り認められるが,添架位置について条件が
並びに同意書の取得
つくことがある。
なお,商店街では夜間施工,農村では農繁期中
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表2 在来工法施工フロー
作業名
1 舗装切断
2 地下埋設物調査
3 施工区間の明示
4 鋼管搬入
5 掘削
6 吊り下ろし
7 溶接・検査・塗覆装
8 埋め戻し
9 仮復旧
作業内容
・ロータリーカッターにて掘削溝幅両側を切断
・道路出来型図のチェック,試験掘り確認
・防護柵・カラーコーンでの作業範囲(50m)明示
・作業安全施工のための交通誘導員の配置(2−3人)
・12m 塗覆装鋼管の特殊トラックでの搬入,レッカー車での仮置き
作業
・油圧式掘削機(バックホウ)による溝掘削
・簡易鋼矢板での土留め工,二段支保工の設置
・レッカー車または三叉(四叉)での鋼管吊り上げ,土木作業者に
よる二段切梁盛替えを伴う
・溶接士2名による手溶接被覆アーク溶接施工(鋼管水平固定,裏波,
全姿勢溶接− JIS N-2P 資格)
・(代案として)MAG 自動溶接機と油圧式インナークランプによる
自動溶接での高能率・高品質溶接施工
・目視,寸法,二重壁 X 線査による全溶接部の非破壊検査の実施
・ポリエチレン収縮チューブによる溶接部防食施工
・4 t 側転ダンプトラックによる土砂搬入・投入
・手動ランマー,水締め併用での締固め施工
・アスファルト舗装による工事期間対応の仮復旧の施工
断,住宅街では日祭日中止が更に許可条件となる
ことがある。
(2)開発コンセプト
QPL工法の開発の最大目的を,施工能率の大
幅改善による工期短縮,工事費の縮減とし,コ
3.クイックパイプライン工法(QPL
工法)
ンセプトを次のように規定した。
①主に公道下埋設
②1車線内施工を可能とする専用敷設機械の
(1)開発の意義
米国で開発実用化されたスプレッド工法は,
開発
彼地の広大な国土に最適の高速施工法であり,
③作業者の労働災害を防止する仮設装置の開発
④風雨による作業中断を避けられる全天候型
農地,牧草地,森林に十分な占用用地(R.O.W)
が確保できて初めて可能となる。狭隘な公道主
⑤防音・防塵対策による作業環境の改善
施工
体に埋設せざるを得ない我が国では採用し難い
工法である。
在来の施工法を抜本的に改善した我が国固有
の工法を開発し,工期の短縮,建設費の大幅な
低減を図らねばならない。その要請に応えるも
のが,日本式スプレッド工法とも称しうるクイ
(3)開発建機・仮設装置
QPL工法に用いる専用敷設機械・仮設装置の
性能概要を表3に,主役である連続溝掘削機の
模式図を図1に示す。
在来工法の施工阻害要因を分析した結果に基
ックパイプライン工法(QPL工法)である。
新潟―仙台間ガスパイプラインでの実証試験
いて,各機械・装置の性能を定め,約2年にわ
により工学的,経済的な実用性が確認された。
ものである。
中でも,連続溝掘削機及び多層締固め機は,
順を追って紹介しよう。
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たり試作・実験を積み重ねて改良・実用化した
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表3 QPL工法開発建機性能一覧
1
機械名称
連続溝掘削機
2
自動矢板打ち機
3
予備切梁装着装置
4
簡易自動切梁装置
5
パイプ敷設クレーン
6
パイプ工作車
7
パイプ吊り下ろし
クレーン
8
多層締固め機
9
土砂供給機
10
表層締固め機
特長概要
・道路曲線 20mR まで,掘削溝断面の連続掘削,ダンプトラッ
クへの連続積み込みの出来る建設機械
・可動降下式スラッターコンベア(掘削)と左右旋回式ベル
トコンベア(積み込み)の全油圧駆動による高速化
・油圧駆動クローラータイアによる接地圧軽減(自走式)
・簡易鋼矢板2枚同時のチャッキング・搬送・バイブロ圧入
まで自動化された建設機械
・矢板アーム,トロリー,リーダーデリック,起振機の油圧
シーケンス制御による高速化
・油圧駆動クローラータイアによる接地圧低減(自走式)
・水圧ジャッキ式予備切梁の自動搬送・装着と鋼矢板の仮押
さえによる掘削溝の崩落防止装置(自動矢板打ち機に搭載)
・水圧ジャッキ装着機,搬送用レールの油圧シーケンス制御
による無人化
・折半可能な水圧ジャッキ式切梁2組を保持具で一体化した
装置(耐蝕・軽量アルミ製,重量 70kg)
・パイプライン自重による圧力逃し弁の作動自動化(安全保
護筒つき)
・路肩仮置き鋼管の掘削溝直上への吊り上げ・移送・設置を
可能とする建設機械(定置横移送及び自走縦移送可能)
・クランプ・クランプリフター2対,アウトリガー・ブーム
2対,スイングタイア1組の油圧によるシーケンス操作
・油圧駆動4輪タイア(自走式)
・風雨時の溶接作業を可能とする全天候型工作車
・溶接関連設備の搭載並びに防爆型照明・空調排気装置によ
る作業環境の改善
・油圧駆動4輪タイア(自走式)
・パイプラインの弾性ひずみ内 S 字型連続吊り下ろし可能な
建設機械
・3 t 電動チェーンブロック・トロリーによる吊り下げ調整
・油圧駆動ゴムクローラータイア(自走式)
・埋め戻し土砂の連続投入による圧密・締固め可能な建設機械
・上方二連式ベルトコンベアと2台の3連バイブロ・コンパ
クター式締固め機(油圧式)による高速・高性能化
・油圧駆動式ゴムクローラータイア(自走式)
・多層締固め機に埋め戻し土砂を連続供給する建設機械
・可動式 10 t 土砂受けホッパー,固定型2連スラッターコンベ
ア,可動式2連前方ベルトコンベア(油圧式)による高速
化
・油圧駆動クローラータイア(自走式)
・路盤材締固めの高性能施工可能な建設機械
・2連バイブロ・コンパクターによる微調整施工(油圧式)
・油圧駆動4輪タイア(自走式)
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図
図1
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図 11
図 12
石油/天然ガス レビュー ’04/1・3
図1 連続溝掘削機概要図
①エンジン ②動力分配機 ③バッテリー ④スラッターコンベア ⑤放出コンベア ⑥キャタピラ
⑦スラッターコンベア上下用油圧シリンダ ⑧スラッターコンベア伸縮用油圧シリンダ ⑨放出コンベア上下用旋回ウインチ
⑩スラッターコンベアケース
国情に適応した独自の機械であり,工法の眼目
(片側2車線道路)の確保
である。
(5)実証試験
実際のパイプライン施工現場で3回の実証試
(4)QPL工法の標準施工フロー
QPL工法の標準施工フローを表4に,建機帯
列図を図2に示す。各建機・装置の施工配置状
験を行った。表5に施工状況の概要を示す。
実証試験の目的は,開発建機の性能・耐久性
況を図3−図12に示した。
機械化を中心とする本工法を効果的に発揮さ
の確認,QPL工法のシステム整合性の確認及び
せるために次のように施工環境を整えた。
①施工現場至近場所に資機材,土砂,建機・
施工能率データの取得・分析の3点である。
開発建機の性能・耐久性については下記の諸
点が確認できた。
装置の仮置きが可能な作業ヤードの確保
・連続溝掘削機の掘削能力(毎分1m以上
②1車線占用延長300m以上の許可取得
③資機材を仮置き出来る掘削溝横スペース
(8時間で480m))は,土砂搬出能力(10t
ダンプ),土留め支保工設置能力(自動矢
(路肩等)の確保
④交互通行(2車線道路)または徐行通行
板打ち機)により掘削能率が制限される。
・パイプ敷設クレーンは,鋼管の定点横移動
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表4 QPL工法標準施工フロー
作業名
1 作業ヤード設置
2 地下埋設物調査
3 作業区間の明示
4 舗装切断
5 塗覆装鋼管等の搬入・
積み下ろし
6 舗装盤撤去・搬出
7 溝掘削・掘削土搬出
8 矢板打ち・
予備切梁設置
9 支保工設置・
予備切梁撤去
10 鋼管移送
11 溶接・検査・塗覆装
12 吊り下し
13 埋め戻し・締固め
路盤工
舗装
作業内容
・鋼管類・掘削/埋め戻し土砂・仮設資材・建設機械等の置
き場,管加工場,管理事務所,工事関係者駐車場の設置
・既設埋設物の調査,移設可否の検討・交渉の実施
・警告信号,交通誘導員の配置
・カラーコーン等での作業区間の明示
・ロータリーカッターでの掘削幅両側の切断
・工場塗覆装鋼管の搬入,レッカー車による積み下ろし
・簡易切梁装置,軽量鋼矢板カセットの搬入・積み下ろし
・舗装の切断,10 t ダンプトラックにより舗装ガラ搬出
・連続溝掘削機のスラッターコンベアーによる掘削,ゴムベ
ルトコンベアによる 10 t ダンプトラックへの積み込み
・自動矢板打ち機による簡易鋼矢板二枚の同時打設,予備切
梁の施工
・連続溝掘削機との近接作業による溝壁崩落防止
・手作業での簡易自動切梁装置(70kg)の設置
・支保工設置後,手作業による予備切梁の撤去
・パイプ敷設クレーン固定作業での鋼管の掘削溝上管台への
横移送
・パイプ敷設クレーン自走による鋼管の縦移送
・パイプ敷設クレーンとパイプ工作車(1号車)による掘削
溝上での芯だし・TIG 初層溶接作業の施工
・パイプ工作車(2号車)による自動 MAG 溶接作業の施工
・目視,寸法,二重壁Ⅹ線検査の全溶接部の非破壊検査の実施
・ポリエチレン収縮チューブによる溶接部防食施工
・複数台のパイプ吊り下しクレーンによる鋼管の弾性たわみ性
を利用したパイプライン一端よりの S 字形状連続吊り下ろし
・パイプライン自重による一段目水圧ジャッキの自動折半と
手動復帰,二段目水圧ジャッキの自動折半と手動復帰の反
復施工
・多層締固め機 1 号機,2号機,土砂供給機連携による土砂埋
め戻し・締固め
・4 t ダンプトラックと表層締固め機による路盤工施工
図
図1
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図 12
や自走縦移動に期待通りの施工能力を発揮
・パイプ吊り下ろしクレーンは,簡易自動切
し,溶接時鋼管芯だし作業の能率向上にも
梁との併用でパイプライン吊り下ろし作業
寄与する。
・パイプ工作車により風雨中断がなくなり,
の安全性と作業能率を向上させる。
・多層締固め機と土砂供給機との組み合わせ
作業工程が計画通りに遂行できる。室内作
作業により,埋め戻し・締固め作業は安全
業スペースも十分あり,照明・強制換気に
かつ高能率に施工できる。パイプライン周
より作業環境が改善する。
囲の土砂は,2台の締固め機の3連バイブ
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石油/天然ガス レビュー ’04/1・3
石油/天然ガス レビュー ’
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図2 クイックパイプライン工法(QPL工法)建機帯列図
ろ
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図3 連続溝掘削機施工配置状況
図4 自動矢板打ち機施工配置状況
図5 簡易自動切梁設置状況
図6 パイプ敷設クレーン配置状況
(アウトリガー張り出し時)
図7 パイプ敷設クレーン配置状況
(スイングタイア上昇時)
図8 パイプ工作車配置状況
図9 パイプ吊り下ろしクレーン配置状況
(鋼管吊り下ろし作業中)
図10 多層締固め機配置状況
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石油/天然ガス レビュー ’04/1・3
図11 土砂供給機配置状況
図12 表層締固め機作業状況
ロ・コンパクターの締固めにより経時圧密
ら仮舗装までの2作業区間に分離施工でき
沈下をほとんど発生させない。
・表層締固め機により簡易鋼矢板引き抜き後
る。
・ぞれぞれの作業区間について300m規模の
工事施工範囲を設定し,通行車両への影響
に路盤材の締固めができるため,十分な成
果が得られる。工事終了後の経時圧密沈下
を最小化できる。
がほとんど発生しないため,本舗装の早期
・10tダンプトラックによる土砂の搬入・搬
出能力が,全体の工事能率に影響する最大
施工が可能となる。
・走行機構,動力装置,運転装置は汎用建機
の要素である。
・作業ヤードの利便性と広さが,施工能率向
で十分な実績のある部品を応用したため,
偶発の故障は発生せず,計画的な保守点検
上に在来工法以上に重要である。
で対応できた。
表6に取得された施工試験データの要約を示
システム整合性については次の諸点が確認で
きた。
・作業は掘削作業からパイプライン吊り下し
作業まで,並びに埋め戻し・締固め作業か
す。作業者のQPL工法習熟につれ顕著な能率向
上が見られた。データを補足して次に特記する
が,能率が向上するといっても,日進120mに
とどまり,公道敷設での限界が暗示される。
表5 実証試験状況概要
道路種別
場所
道路形状
第1回
広域農道
新潟県新発田市,黒川村
緩やかな屈曲の2車線
果樹園沿いの丘陵地
路肩幅十分あり
交通量
少ない 農作業車中心
土質
砂質土 一部玉石あり
切土,盛土が交互
掘削溝底以下
道路管理用のみ
500m
地下水位
地下埋設物
占用延長
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04/1・3
第2回
町道
山形県川西町
狭い2車線
農地・水田に隣接した緩
やかな傾斜の屈曲地
路肩幅わずか
少ない 町民生活用・農
作業用車両中心
粘土質シルト
第3回
市道
北海道恵庭市
直線平坦な2車線
水田地帯で民家・工場なし
並行水路上に仮設ステー
ジ設置可
少ない 農作業車中心
-1.5m
上水道,NTT ケーブル
300m
-1.8m
潅漑用配水管
500m
― 80 ―
ローム質粘土
・地下埋設物回避による掘削延長の分断は,
QPL工法適用の利点を大幅に減じた。
・占用延長は,各作業に必要な長さから
表8に試算結果を要約して示す。日進24m施工
の在来工法に対し,便益は,日進48mのときは2
300m工区2カ所が常に確保されねばなら
割強,日進120mのときは5割弱と,施工能率の
向上に応じ著しく高まる。開発建機損料の工事
ないことが判明した。
費にしめる比率が低下することが主因である。
・第3回実証試験の実作業日24日間の中で同
日施工による最高記録として,掘削96m,
吊り下ろし144m,埋め戻し120mが得られ
4.国土幹線ガスパイプライン網構築
の提言
た。
・一般道路施工でも日進120mの施工計画は
十分達成可能と判断された。
(1)国土幹線ガスパイプライン建設の意義
地球環境の保全維持のため炭酸ガス排出を抑
制する動きが世界的に加速しつつある現在,ク
(6)QPL工法のコスト便益
実証試験の結果を踏まえ,在来工法との工事
費比較を試みた。標準施工フローを在来工法で
は表2,QPL工法では表3によることとし,表
7の前提条件を試算の基礎とした(土木工事費,
リーンな天然ガスの利用拡大は当面の最適の選
択である。
しかるに我が国においては,列島中央を急峻
な山地が縦断する地形や前述の固有の障害もあ
配管工事費の直接費合計の比較とし,鋼管費,
って,パイプライン敷設は4,700kmにとどまり,
普及には程遠い現状にある。公道敷設を前提と
溶接・検査・塗覆装費は試算対象外とした)
。
する限りは,これら障害を克服できず,また
表6 実証試験施工結果要約
施工場所
第1回
新潟県新発田市
工区延長(m)
1,115
施工日数(日)
95
平均施工能率(m)
11.16
作業別施工能率
最高
平均
掘削作業(m)
47.0
15.32
溶接作業(m)
44
34.87
埋め戻し作業(m)
65.0
26.97
最長吊り下ろし長(m)
66
第2回 山形県川西市
1期
2期
927
939
29
30
32.6
31.2
最高
平均
最高
平均
85
40.3
70
42.7
44
25.3
55
38.5
115
52.6
115
49.2
140
150
第3回
北海道恵庭市
1,162
24
48.4
最高
平均
105
68.5
84
49.2
146
77.5
168
表7 実証試験 コスト試算前提条件
施工許可延長(m)
工区延長(m)
施工能率(m /日)
作業日数(日)
作業者日当(円/日)
リース建機単価(円/日)
開発建機類損料(円/日)
在来工法
50
1000
24
42
平成 7 年北海道実勢単価
平成 7 年北海道実勢単価
―
― 81 ―
QPL 工法
300
1000
60
48
120
17
21
8
平成 7 年北海道実勢単価
平成 7 年北海道実勢単価
433,831 円/日
耐用年数7年
年間供用日数 220 日
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表8 実証試験 コスト試算結果
工法区分
施工能率(m /日)
工区延長(m)
延作業日数(日)
直接工事費(千円)
(%)
開発建機損料(千円)
(%)
工事費合計(千円)
(%)
在来工法
24
1,000
42
41,585
100
―
―
41,585
100
PQL 工法
60
1,000
17
25,142
60.5
2,562
6.2
27,704
66.7
48
1,000
21
29,195
70.2
3,165
7.6
32,360
77.8
120
1,000
9
19,105
45.9
1,205
2.9
20,310
48.8
QPL工法であっても日進120mの施工高に過ぎ
①日本道路公団の高速有料道路は,全国の住
ない。
都市部のみならず農村,漁村,山村にまで低
民可住地を機能的に連絡している
②従来需要家への卸(おろし)供給のほか,
廉な天然ガスを供給するためには,全国の可住
高速道路沿いの新規ガス需要の開発が可能
地を隈なく網羅する国土幹線ガスパイプライン
となる
の構築が喫緊の課題である。
③新たな用地取得費が不要である
④道路建設記録が整備されているので,事前
そこで,障害を抜本的に解決し,QPL工法が
高速施工性を遺憾なく発揮できる,新たな敷設
環境調査の重複が避けられる
⑤片側2車線以上のため1車線を工事用に占
用地の創出,すなわち,総延長9,000kmに及ぶ高
速有料道路の活用を提言する。これにより,国
用しても自動車通行が可能である
⑥広い路肩が工事用資機材仮置きに有効利用
土幹線網の早期構築が現実化し,動脈が血液を
人体の四肢に供給するがごとく,クリーンなエ
ネルギーを全国に普及することが期待できる。
できる
⑦他埋設物がないため工事の連続施工ができ
(2)公共用地の多目的利用
我が国の代表的な公共用地,公道(国道,市
⑧工事施工中の安全管理が計画的にできる
⑨パイプラインの操業管理システムが高度化
町村道),河川用地の利用は,前述の地形上の
問題や固有の障害により建設コストは上昇する
できる
⑩自然災害,人為災害への対応が迅速にでき
上,工期は長期化する。
しかるに高速有料道路は,地形上の問題は生
る
⑪埋設設置されるため自動車通行という本来
る
ぜず,固有の障害もない。自動車通行のみを目
の目的に支障が出ない
的にするものであり,下水道等の埋設物はなく,
⑫環境アセスメントが簡便化できる
河川横過に見られる自然環境との調整や民有地
取得の交渉も不要である。QPL工法の採用によ
り施工能率は更に飛躍し,建設コスト・工期は
著しく低減・短縮することになる。高速道路と
(3)高速道路におけるQPL工法の真価
QPL工法は,本来このような敷設環境に最適
な工法として開発されたものであり,施工能率
いう貴重な国有財産を単一目的にとどめること
は日進300−500mを期待でき,工期は大幅に短
なく,クリーンエネルギーの普及のために活用
縮する。
一方,建設コストは,在来工法の最速のケー
すべきである。
高速道路活用の意義は,下記のように整理し
うる。
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ス(日進24m)との比較だけでも約3分の1に
減少する(注)
。
― 82 ―
更に地滑り,河川横断,民有地取得の要素,
5.まとめ
特殊部構造物のプレファブ施工による効率化が
加わればパイプライン全体として飛躍的な工事
人間のエネルギー利用は,薪炭利用の長い歴
史時間の後に石炭が登場し,石油に主力が移り,
費低減となる。
今,炭酸ガス排出抑制による地球環境の保全か
注:在来工法との比較は,試算前提条件は表9のと
らクリーンな天然ガスの活用が喫緊の課題とな
おり,鋼管外径は,高速道路1車線幅(3,500mm)
内 敷 設 を 原 則 と し て , 2 4 i n . ( 6 0 9 . 6 m m ), 3 0 i n .
ってきている。
天然ガスは,パイプライン輸送が唯一の経済
(762.0mm) ,40in.(1,016.0mm)
,56in.(1,422.0mm)
的な輸送手段といえる。米国で発明されたスプ
の4種類とした。試算結果を表10に要約する。
レッド工法は,数千kmに及ぶ長距離パイプラ
インの施工に最適な工法で,世界的な標準工法
として位置付けられている。
表9 高速道路敷設時 QPL工法コスト試算前提条件
鋼管外径 in.(mm)
工区延長(km)
初層溶接時間(分/カ所)
鋼管埋設深さ(土被り)(m)
土砂搬送量(m3 /日)
施工能率(m /日)
溶接カ所数(個)
開発建機損料(万円/日)
24(609.6)
20
30
1.2
1200
480
40
46.3
30(762.0)
20
30
1.2
1200
480
40
57.8
40(1,016.0)
20
30
1.2
1200
312
26
77.1
56(1,422.0)
20
60
1.2
1200
240
20
108.0
表10 高速道路敷設時 コスト試算結果
鋼管外径
in.(mm)
工法区分
施工能率
(m /日)
工区延長
(km)
延作業日数
(日)
直接工事費
(百万円)
(%)
開発建機損料
(百万円)
(%)
工事費合計
(百万円)
(%)
24(609.6)
30(762.0)
40(1,016.0)
56(1,422.0)
在来
24
QPL
480
在来
24
QPL
480
在来
24
QPL
312
在来
24
QPL
240
20
20
20
20
20
20
20
20
833
42
833
42
833
64
833
83
717.9
203.6
809.7
224.6
974.5
286.6
1,268.9
366.2
100
28.4
19.3
100
30.2
24.1
100
29.4
49.4
100
28.8
90.0
717.9
2.7
222.9
100
22.0
809.7
3.0
248.7
100
33.2
― 83 ―
974.5
5.1
336.0
1,268.9
7.1
456.2
100
34.5
100
35.9
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我が国のような可住地の少ない急峻な地形の
国土では,公道を主なパイプライン路線とせざ
トとして推進すべきテーマとして提言する。
目を移して,活発化しつつあるロシアのサハ
るを得なかった。国県市道等の幹線道路に種々
リン,東シベリアでの石油・天然ガスの開発に,
の制約条件の下で施工するのでは経済的なガス
狭小ルート対応,全天候型のQPL工法のコンセ
プトが適用されれば,アクセスの限定された永
パイプラインを完成させることはできない。狭
隘な場所を前提とした高速施工法であるQPL工
法が高速道路用地に適用された場合,経済性は
久凍土地帯であっても,幹線道路・鉄道用地に
飛躍し,工期は大幅に短縮しうる。
この工法により全国の高速道路網にパイプラ
で経済性に優れたガスパイプラインの急速施工
インが敷設されれば,我が国土に最も適した理
21世紀中庸には水素エネルギー社会の出現が
予測されている現在,水素ガス輸送にも転用で
想的な国土幹線ガスパイプライン網を実現でき
併設する形で,環境破壊を抑制しつつ,高品質
が実現可能となろう。
るのである。
先進国の中で天然ガス利用が最も少ない我が
きる国土幹線天然ガスパイプライン網の建設
国において,21世紀初頭を飾る国家プロジェク
く期待している。
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は,健康で夢のある日本社会の基礎となると強
― 84 ―
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