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韓国政府,国家エネルギー基本計画を発表 - JOGMEC 石油・天然ガス

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韓国政府,国家エネルギー基本計画を発表 - JOGMEC 石油・天然ガス
約する方針であるとしている。一方で,本プロ
へのロシア企業の関与はむしろ活発化する傾向
ジェクトでLukoilとコンソーシアムを組む
にある。
Zarubezneft,Machinoimportの2社は,プロジ
ェクトにとどまることをイラク側から許されて
いるという。Zarubezneftは北部のSaddam,
(4)イラクによる「Lukoil外し」か
以上を総合すると,イラクは依然としてロシ
Bai Hassan油田での45坑井に対する掘削サービ
ス契約をイラク側と締結し,既に掘削要員がイ
ア企業を上流開発での主要なパートナーと位置
ラクに派遣され必要資機材も供給されていると
っていないと判断される。今回の行動の真意は,
伝えられ,MachinoimportもOil-for-Food計画
に基づくイラク原油の販売先企業として名前を
米国,イラク双方との協調関係の維持を図るた
連ねるなど,Lukoilと違い両社とも実質的な業
務を遂行している点がイラクに評価されたもの
ぶりの姿勢を示したものというよりは,むしろ,
と見られる。
けるLukoil 1社を狙い撃ちにした「Lukoil外
し」の動きと見ることができよう。さらに,イ
付けており,両国関係の見直しを図る意図は持
め微妙な対応を取るロシア政府への抗議やゆさ
フセイン政権として看過できない行動を取り続
ラク上流分野に関与する他の海外企業に対し,
(3)新規案件でロシア企業参画の報道
さらに,最近の報道では,Western Desert
フセイン政権の意に反する行動(例えば,契約
Block4の開発請負先としてロシアの建設エン
作業の凍結・遅延,「フセイン後」をにらんだ
ジ会社Stroitransgasとの契約が決まったこと
ロビー活動等)を行った場合はロシア企業とい
や,TotalFinaElf(旧Total)が優先交渉権を得
えども断固たる処置を取るとの警告のメッセー
ているといわれるNahr Umar油田の開発に
ジをイラク側が発したものとも解釈できよう。
(担当:猪原 渉)
Rosneft,Zarubezneftの2社が共同で参加を検
討中であると伝えられるなど,イラク上流分野
韓国政府,国家エネルギー基本計画を発表
画では,2002年9月に産・学の専門家150人余
1.
「国家エネルギー基本計画」
りが参加して作成された『2010エネルギービジ
ョン:エネルギー政策方針と戦略』を基に,関
韓国政府は12月10日,2011年まで 10年間の
韓国エネルギー産業の政策方針を盛り込んだ
連部局の意見を集約のうえ2002年から2011年ま
での基本計画をまとめている。
「第二次国家エネルギー基本計画」を審議, 確定
したと発表した。
「国家エネルギー基本計画」はエネルギー利
2.今回発表された第二次国家エネルギー基本
計画の概要
用合理化法第4条の規定により,5年ごとに策
定されるものであり,国民経済の健全な発展に
韓国政府は本計画の中で,エネルギー総消費
必要なエネルギーの需給安定, エネルギー消費
量(2001年198.41百万TOE)は,年平均3.5%の
による環境破壊要因の最小化, エネルギー利用
の合理化及びエネルギー技術開発促進のため,
増加を見込み,2011年には280百万TOEに達す
ると予測したうえで,次の四つの政策方針を掲
今後10年間の政策目標と推進戦略をまとめ,各
種エネルギー関連計画の方向性を示すものであ
げている。
(1)将来に向けた発展的なエネルギーシステム
る。
今回発表された第二次国家エネルギー基本計
(2)市場機能活性化で競争力のあるエネルギー
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の構築
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産業の育成
① 環境親和型エネルギーシステム構築
(3)エネルギー技術強国,エネルギー技術輸出
強国
現在総エネルギー消費の50%を占める石油依
存度を2011年まで45%に縮小する.
(4)対外開放型システムによる北東アジアのエ
ネルギー分野における主導的な役割
太陽光,風力等の代替エネルギーは5%増加
させる。このため,太陽発電住宅3万戸の普及
以下にそれぞれの主な戦略を記す。
および100ヶ所の代替エネルギーモデル地域造
成事業を実施する。また,エネルギーの節約と
利用効率性向上のための努力を継続的に推進す
(1)将来に向けた発展的なエネルギーシステム
の構築
ることとし,エネルギー低消費型経済構造の構
築を実現する。
【参考1】韓国のエネルギー別構成比
出所:韓国エネルギー経済研究院
【参考2】
韓国の2001年のGDPはOECD加盟国中10位,一人当たりGDPは同じく24位であるのに対し,
エネルギー総消費量は同第7位である。特に石油消費量は米国,日本,ドイツに次いでOECD加
盟国中第4位,一人当たりの石油消費量では日本(11位)を上まわる7位である(資料:韓国統
計庁)ため,エネルギー利用の効率化の必要性が指摘されている。
② 安定的なエネルギー供給基盤の構築
原油供給源の多角化のため,韓国内大陸棚開
“自主供給率”((注)総供給量に占める韓国が
発事業及び海外での開発事業を継続的に推進す
めざす。さらに,天然ガス貯蔵施設や埠頭設備
開発に関わった部分の割合と推察。)の達成を
るほか,中東産油国との資源外交を強化する。
を建設していくほか,2010年までに新たに9基
また,カスピ海油田などの資源開発事業にも積
の原子力発電所(現在18基が稼動)の建設を完
極参加して行き,石油10%,天然ガス30%の
了する。
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【参考3】韓国の原油輸入国
出所:韓国エネルギー経済研究院
22.1%
29.7%
5.3%
1.1%
7.5%
2.3%
9.4%
14.9%
1.5%
6.2%
【参考4】コビクタガス田プロジェクト
韓国産業資源省は,第二次国家エネルギー基本計画の発表に関連して,1月20日よりソウル
で開催されるコビクタガス田開発プロジェクトの第4次調整交渉がまとまれば,2003年上期の
うちに契約を締結し,下期にはパイプライン工事に取り掛かることができ,2008年から年間
700万tの天然ガスを導入できる見通しであると説明している。
コビクタガス田プロジェクトが計画どおり進んだ場合の年間700万tという韓国への輸入量は,
現在の国内の年間消費量(1,600万トン)の半分に近い規模であり,上記の“自主供給率”は,
2011年には需要増を見込んでも30%にまで増加するものと見込まれている。
(2)市場機能活性化で競争力のあるエネルギー
産業の育成
①電力産業の構造改編
電力産業の構造改編を推進するため,韓国電
民営化を進める。さらに,2009年以降には,小
売部門まで完全競争体制を導入する計画である。
なお,送電部門については分割・民営化後も
KEPCOが継続管理する。
力公社(KEPCO)を, )発電子会社の民営化,
)配電部門の分割・民営化,と段階的に分割
② ガス産業の構造改編
ガス産業の構造改編については,まず,ガス
【参考5】KEPCOの民営化の状況
KEPCOは2000年12月に国会を通過した民営化法案に基づき,2001年4月に発電部門が火力発電
5社と原子力(及び水力)発電1社の計6社に分割された。このうち,原子力発電を除く火力発電
5社が民営化対象とされており,第1段として5社のうち南東発電所の売却が決定されている。
計画では,KEPCO保有の南東発電株式の34%(投資家の希望により最大51%まで)を売却対
象とし,2002年12月に入札締め切り,3月頃には契約締結を行う予定である。
南東発電の発電能力は7,165MW,2001年の当期純利益は1,661億ウォンであり,火力5社の中
では最も財務状況が良好であったことも最初の売却対象に選定された理由であると思われる。
他の4社の売却時期については南東発電の売却状況を見ながら順次決定されるが,2005年まで
には売却を終える計画である。
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産業構造改編関連法案の早期成立をめざす。
具体的な改編計画では,韓国ガス公社
(KOGAS)の,
)輸入・卸売部門を分離し
て3社に分割し, )3社のうち,2社を売
却・民営化し,残り1社の売却時期については
また,この第一次エネルギー価格構造改編が
完了する予定である2006年6月までに,環境・
公正競争・税収・産業波及効果などの多様な政
策目的を勘案した包括的なエネルギー価格構造
改編案をまとめ,全面改編を実施する。
別に決定する。プラント部門については分割後
もKOGASが管理するが,保有する設備の共同
利用制度の導入を検討する。 )地域独占であ
④その他
石炭については現在11ある炭鉱のうち3∼4
ヶ所を自主廃坑に誘導し,2005年からは年間
る小売部門については卸売り部門への競争体制
300万t程度で需給バランスを保つよう誘導す
導入の状況をみながら段階的に競争原理を導入
る。また,一般鉱物分野では,有煙炭, ウラン,
する。
銅鉱, 亜鉛鉱などを主要戦略鉱物として海外開
③エネルギー価格体制の改編
合理的なエネルギー価格システムを構築する
発に乗り出す。
石油の流通に関しては,小規模業者の統廃合
ため,効率性の観点からエネルギー市場を見直
により流通業者の大型化,流通構造の単純化を
し,エネルギー産業のバランスの取れた発展基
誘導するとともに,事業者専用カードによる電
盤をつくる。
まず,電力・ガス・地域暖房等の価格構造を,
子決済制度の拡大を検討するなど取引の健全化
を図る。
生産原価を反映する体制に段階的に改編する。
【参考6】KOGASの民営化の状況
2002年10月末,国会産業資源委員会に「韓国ガス公社法改正案」,「都市ガス事業法改正案」
及び「エネルギー委員会法制定案」の三つのガス産業構造改編に関する法案が提出されたが,
審議保留とされ,通常国会を通過することができなかった。産業資源委員会によると「追加検
討の必要がある」との理由から法案審査小委員会での議論すらされなかったという。法案が通
過できなかった理由としては,長期輸入契約の継承などの点で補完策が不十分であるという説
明がなされているものの,KOGASの労組が「法案が通過した場合,全面ストに突入する」と
宣言していたこともあることから,12月の大統領選挙を控え,政界が票を意識して問題を先送
りしたのではないかとの見方もなされている。
このため,ガス産業構造改編は事実上次期政権に持ち越されることとなったが,野党ハンナ
ラ党は党の公式見解としてこれらガス改編法案への反対を表明しており,世論にも金大中政権
の民営化が性急過ぎるとの批判もある。また,12月19日に投開票が行われた第16代大統領選挙
で,労働運動を支援していた盧武鉉氏が当選したことから,民営化スケジュールは緩やかなも
のになる可能性もある。いずれにせよ,KOGAS民営化の具体案が確定するのは,2003年2月
25日に予定されている次期大統領就任以降になると思われる。
【参考7】事業者専用カード
韓国の酒類・穀類の流通業界においては,決済の迅速化と透明化等を図る目的で,事業者間
で電子決済制度を促進させるための事業者専用クレジットカードが導入されており,使用に対
しては税額控除等のインセンティブが与えられている。
石油の流通においてもこれらを参考に電子決済制度の拡大を図るものと思われる。
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(3)エネルギー技術強国,エネルギー技術輸出
強国に浮上
官・産・学共同研究体制を構築し,シナジー
を三大重点開発分野として2004年まで重点的に
研究開発を行う。
効果を向上させる。また,代替エネルギー技術
さらにKEPCOの国内における電力事業の経験
を活かし,東南アジア国家の電力事業に積極進
開発強化のため,太陽光・風力・燃料電池分野
出するなどエネルギー技術・設備の輸出を図る。
【参考8】技術輸出
韓国産業資源省は2002年11月,ベトナムが行う原子力発電導入に対する協力を行う旨の覚書
をベトナム政府と交わしている。これは,2017年を目処にベトナムに国産の原子力発電所を稼
動させるために必要な長期政策の策定・技術開発・人材育成等に関し,韓国原子力研究所・
KEPCO・斗山重工業などが支援を行うという内容のものである。
韓国政府はこれにより,ベトナム原子力発電市場進出における有利な地位を獲得するととも
に,韓国企業の輸出基盤を強化する計画である。
(4)対外開放型システムにより北東アジアのエ
ネルギー協力プログラムを検討する。今後検討
が考えられている方案としては,韓国の在庫無
ネルギー分野における主導的な役割
IEAの協力を得て韓国エネルギー政策に対す
る検討を周期的に行い政策効果の極大化を図る
煙炭と石炭産業余剰設備を南北協力の次元で支
とともに,エネルギー技術分野で先進国との協
る情報交流協力の方案,北朝鮮内経済開放地域
力関係を拡大する。また、APEC地域協力等を推
進して,開放型エネルギーシステムの基盤を構
のエネルギー供給設備を拡充支援する方案, 北
朝鮮地域海洋エネルギー共同開発方案,南北統
築する。
さらに,南北統一に備え,北朝鮮に対するエ
合型石油システムを構築する方案などあり,多
援する方案,北朝鮮領内大陸棚油田探査に対す
様な協力プロジェクトを模索する方針である。
【参考9】対北朝鮮協力
次期大統領に民主党の盧武鉉氏が当選したことで,基本的には金大中政権の太陽政策は継続
されるものと見られるが,現政権の北朝鮮政策には批判も多いため,方針に対する修正の可能
性もある。
北朝鮮の原油開発に関しては,入手されている情報は断片的であり,埋蔵量も経済性も不明
である。KNOCは国会に対する報告の中で,北朝鮮における開発について,経済協力の一環と
しての参加可能性を調査していくとしている。
(担当:石井 徹)
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