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NLNGは第6トレイン建設も検討, 仕向け地条項撤廃に
ロジェクトでBPとマーケティング共同事業会 社を設立したほか,現在入札実施中のGassi Touil統合ガス開発プロジェクトにおいてはガ スのマーケティングを外資側の契約範囲に含む との条件としている。 外国企業6社のうち5社がガス売買に関するLOIの 当事者にもなっていることから,開発契約にお いて参加企業に対し一定量のガスの引き取りを 義務付けている可能性があると考えられる。 ガス売買契約の締結促進のため,マーケティ また,新規建設案件であるMedgazパイプライ ングをプロジェクト参加企業の範囲とする方式 ンプロジェクトにおいては,LOI段階であるとは いえ,建設決定に必要な数量のガス販売につい が定着するかどうかが,今後のアルジェリアの て既に合意に達している。同プロジェクト参加 ガス開発促進の鍵となってくるものと思われる。 (担当:猪原 渉) ナイジェリア:政府はガス産業に注力 −NLNGは第6トレイン建設も検討, 仕向け地条項撤廃によりマーケット確保へ 10億ドル/年から50億ドル/年に増加させる」と 発表した。ナイジェリアのガス残存埋蔵量は 1.ガス輸出収入を現行の2倍へ 158tcf(約半分の83tcfが随伴ガス) ,現在,天然 天然ガス戦略セミナー」において,Funsho ガス生産量(3.5bcf/d)の約50%(約1.7bcf/d) がフレア処理されいる*。石油省はフレア処理 Kupolokunエネルギー問題担当大統領補佐官 されているガスの経済的損失は$25億ドル/年に 2002年12月12日に開催された「ナイジェリア は,「政府は2010年迄にガス輸出収入を現行の *残りの50%のうち約20%は最圧入,約30%は商業利用。 表1 NLNG計画概要 参加企業(権益比率):NNPC*(49.0%) ,RD/Shell(25.6%) ,TotalFinaElf(15.0%) ,Agip(10.4%) ― 61 ― 石油/天然ガス レビュー ’03・3 なるとしており,政府は以前からフレア処理さ れているガスの貨幣化を検討していた。政府は, この目標を,Nigeria LNG(NLNG)計画(表 NLNGが同条項の削除を決定した背景には, ①ガス輸出収入の増加希望,②NLNG計画の第 4,5トレイン拡張に係る販売先の確保希望, 1参照)と,現在計画されている3つのLNGプ ロジェクト(表2参照)の立上げにより達成さ を挙げることができる。また,欧州最大の天然 せることを希望しており,ガス輸出収入を増加 け地条項及び長期Take-or-Pay契約の撤廃を巡 させることで,政府予算を石油に大きく依存し ている現在の体質から脱したい意向であると思 ってECに対して反発している状況で,ナイジ ェリアが単独で廃止を決定したことは,アルジ われる。同国は,政府収入の80%,輸出収入の ェリアやロシア等の他の産ガス国と比べ欧州へ 90~95%,外貨収入の90%以上を石油に依存し の輸送距離で不利な立場にあるナイジェリア ており,OPEC生産枠による輸出量の増減が政 が,ECの主張を受け入れることによって,販 売先の優先確保,ガス輸出量拡大を狙った動き 府予算に多大な影響をもたらしている。2001年 11月のOPEC生産枠(178.7万b/d)決定により, ガスサプライヤーであるアルジェリアが,仕向 2002年第1四半期の原油収入は30億ドル(前年 と見ることができる。ECのMario Montiコミッ ショナーは「今回の解決によってナイジェリア 同期比△50%)と大幅に落ち込こみ,この結果, は,市場の競争ルールを破ることなく欧州での 政府は2002年度の予算配分修正を余儀なくさ ガス販売利益を維持することができる」とコメ れ,JVへの支払金額が30%カットされる等の影 ントしている。 響が出た。 さらに,同コミッショナーが「非EU天然ガ ス生産国がNLNGの例に追随する勇気を持って くれることを望む」とコメントしているように, 2.ガス産業を取り巻く環境の変化 今回のNLNGの決定が他のガス生産国の今後の (1)仕向け地条項(Destination Clause)を撤廃 2002年12月12日,NLNGは,ECが「ガス市 場自由化を促進する上で競争の創出を阻害す る」として撤廃を求めていた仕向け地条項(第 ガス契約に影響を与えることは必至であろう。 (2)NLNGプロジェクト a.第3トレイン,予定より早く生産開始 三者へのガス転売を禁止する規定)を,現行契 約及び新規契約から削除すると発表した。 NLNGは,年間50億cum(3.65百万t/y)の天然 ガスを,イタリア,スペイン,フランス,ポル 2002年11月28日,NNPCとRD/Shell等が Bonny島で進めているNLNGの第3トレイン (表1・図1参照)が予定より3ヶ月早く生産 を開始,12月19日にスペインに向け初出荷した。 トガル等に輸出している欧州向け第2位の天然 同トレインのLNGは21年の長期契約に基づき ガスサプライヤーである。 Gas Natural(スペイン),Transgas(ポルト 表2 計画されているLNG計画 石油/天然ガス レビュー ’03・3 ― 62 ― ガル)に販売される。1999年9月に操業を開始 している第1,2トレイン(生産能力:5.8百 」と表現した。 こと(tremendous milstone) 第4,5トレインに供給される随伴ガスは, 万t/y)は,非随伴ガスが60%で,随伴ガスは RD/Shellがオペレーターの油田から66%, 40%しか処理できなかったが,第3トレイン及び TotalFinaElfのそれから23%,Agipのそれから LPG施設の新規建設により,随伴ガスを全てフ が11%を占める予定。第4,5トレイン拡張に ィードガスとして取り込むことが可能となる。 表4 2001年LNG輸出量TOP10 NLNGプロジェクトでは今後,2005年に第4, 5の2トレインからも生産開始を予定してお 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 り,更に2006年には第6トレインの操業開始も 視野に入れている(最終投資決定は2003年第3 四半期の見通し) 。 b.第4,5トレイン拡張に向け10億ドルの資 金調達に成功 2002年12月19日,NLNGは国際ジンジケート 団と第4,5トレイン拡張に係る費用(21億ド ル)の内,10.6億ドルの融資契約に調印した (表3参照) 。 現在操業中の第1∼3トレインの開発費用 (43億ドル)は,プロジェクト参加企業が全額 資金負担している。これは,当時金融機関が 国 名 インドネシア アルジェリア マレーシア カタール オーストラリア ブルネイ オマーン アブダビ ナイジェリア トリニダッド 輸出量(百万 t/y) 24.0 20.0 15.4 12.6 7.5 6.7 5.7 5.3 5.1 2.7 出典:Poten & Partners “2002-LNG IN WORLD MARKETS” 図1 NLNG位置図 「(NLNGプロジェクトは)非常にriskyな計画 である」と判断したことが最大の理由と見られ ている。今回,拡張プロジェクトが約10億ドル に上る融資を受けられた背景には,①既存プロ ジェクトの長期契約に基づく販売実績,②米国 輸出入銀行を含む伊,蘭,英の金融機関による ナイジェリアの政治的・経済的リスクの包括的 保証,の2点を挙げることができる。NLNGプ ロ ジ ェ ク ト の Managing Directorで あ る Andrew Jamieson氏は10億ドルの融資に関し て「ナイジェリアにとって途方もなく画期的な 表3 NLNG拡張計画シンジケート団内訳 各種資料より作成 ― 63 ― 石油/天然ガス レビュー ’03・3 よってプロジェクト全体の生産能力は, 操業中のメジャー各社のフレア終了予定は下 LNG:16.7百万t/y,LPG:2.2百万t/y(現行: 記の通りであるが,発表が正式に大統領令とし LNG:8.7百万t/y,LPG:1.25百万t/y)に増加し, て発令された場合,Agip以外の各社は計画の 世界上位のLNG輸出国となる(表4参照) 。 変更を余儀なくされる可能性が高い。 (3)ガスフレア禁止デッドラインが4年前倒し ・Agip−操業企業の中で唯一,現段階で2004 年までにフレアを終了予定(現在のフレア量 に は不明) 2003年1月2日,Obasanjoナイジェリア大 ・RD/Shell−現在約8億cf/dをフレア,2008年 統領はTV放送を通じて, 「ガスフレア禁止のデ ッドラインを当初予定の2008年から4年早め 迄に終了予定 ・ExxonMobil−2005年に終了予定(現在のフ レア量は不明) 2004年とする」と発表した。政府は,3年前に ガスフレア禁止のデッドラインを2008年と設定 し,ガス事業に様々なインセンティブ*1を与え ガスプロジェクトの促進に努めてきた。 しかし,デッドラインを4年も早めた明確な ・ChevronTexaco−現在約7億cf/dをフレア, 2008年迄の終了を予定 3.まとめ *2 理由が発表されておらず ,Obasanjo大統領が 「今回の決定は,何十年もの間ガス資産の浪費 フレア処理されているガス資源の貨幣化を狙 に反対してきたナイジェリア国民にとってとて い,ナイジェリア政府が本腰を入れ始めた。欧 も良いニュースである」と国民向けメッセージ 州でのナイジェリア産LNGのプレゼンスを高 を発言したが,一部報道では,今年4月の大統 めるため,同国最大のLNGプロジェクトであ 領選挙での再選を意識した決定ではないかとの るNLNGの欧州での販売先確保のため他国に先 見方がある(Obasanjo大統領は既に国民民主 党の大統領候補として指名されている)。デッ 駆けて仕向地条項を撤廃した。そのNLNGは国 内外金融機関からの巨額の融資が決定し,第4, ドラインの前倒しを発表した同日に,全国民党 5トレインの拡張は順調に進むものと思われ のMuhammadu Buhari氏が大統領選挙への出 馬を表明しており,これに対抗しての発表と見 る。また,フレア禁止デッドラインを前倒しし られている*3。 また,詳細は不明だが,いく つかの石油企業は新しいデッドラインから免除 たことにより,計画中の3つのLNGプロジェク トも早期の立上げが実現する可能性も高く,同 国のガス産業は今後発展していくことが予想さ される可能性ありとの報道もある。 れる。しかし一方で,フレア禁止は,石油開発 *1 と同時にガス有効利用のための設備投資にコス 財務制度のインセンティブ:免税期間3年,更に2年更新 可。加速度資本償却。プラント機器輸入税の免除等 *2 ナイジェリア石油資源庁が発表している「天然ガス有効 活用率予測」では,プロジェクトが計画通りに進捗した 場合,2005年にはガスフレアがゼロになる予定。 *3 Muhammadu Buhari氏は,元軍人で1983∼1985年のナイ ジェリア元首。クーデターにより失脚。 石油/天然ガス レビュー ’03・3 トがかかることになり,石油企業のナイジェリ ア石油産業への投資縮小が懸念されるところで ある。 ― 64 ― (担当:長田順子)