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e - 東海大学理学部 物理学科
1/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型 SU ( 2 ) L ´ U (1)Y 群に基づく素粒子模型は、グラショウ(1961)・ワインバーグ(1967)・サ ラム(1968)(S. L. Glashow、S. Weinberg、A. Salam)により構築された。これはレプトンの 模型であり、グラショウ・ワインバーグ・サラム模型と言い、ワインバーグ・サラムは、ヒッ グス機構を用いてレプトンの質量を生成している。このレプトン模型は、電磁相互作用と弱 い相互作用を統一的に取り扱う統一理論であり電弱相互作用を正しく記述し、この統一模型 は、1979 年ノーベル物理学賞受賞。実際に、実験により W±・Z を発見したファンデルメー ルとルビア(Simon van der Meer、Carlo Rubbia)は、1984 年ノーベル物理学賞を受賞した。 電弱相互作用の統一模型は提唱当時は、未確認のヒッグス粒子を含んでいたが、2012 年 7 月 に候補として発見され、2013 年 8 月に標準模型のヒッグス粒子として認定された。1 ヒッグ ス粒子の提唱者のヒッグス(Peter Higgs)は、エングレール(François Englert)と共に、2013 年ノーベル物理学賞を受賞した。3 世代のクォーク・レプトンの模型は、1973 年に、グラシ ョウ・ワインバーグ・サラム模型を基にして、 ( SU ( 3) c ´ ) SU ( 2 ) L ´ U (1)Y 群に基づいて小林誠・ 益川敏英により構築された。宇宙の物質生成・反物質消滅の機構を組み込んでいる。ヒッグ ス機構の理論的枠組みや SU ( 3) c 群を発見した南部陽一郎(シカゴ大学名誉教授)と共に、2008 年にノーベル物理学賞を受賞した。 Ⅰ.SU(2)群と素粒子の電荷 SU (2) 群に属する行列は、 【第 1 章:SU(N)群】(1.17),(1.16),(1.55)より 2 行 2 列を作ると、3 (=N2-1:N=2)つの行列として æ 0 1 ö ( 2 ) æ 0 -i ö ( 3 ) æ 1 0 ö l (1) = ç ÷ , l = ç i 0 ÷ , l = ç 0 -1 ÷ è 1 0ø è ø è ø が得られる。また、対応するユニタリー行列は、 (2.1) æ 3 (n) l (n ) ö æ 3 ( n ) (n ) ö U = exp ç i åq T ÷ = exp ç i åq ÷ 2 ø è n =1 ø è n=1 (2.2) である。これは、パウリのスピン行列として知られていて、 3 ì é (m) (n) ù (m) (n ) (n ) (m) l , l = l l l l = 2 i e mnk l ( k ) å ïë û k =1 í ï l ( m ) , l ( n ) = l ( m )l ( n ) + l ( n )l ( m ) = 2d mn î { ( }( ) ) ìe 123 = e 231 = e 312 = 1 ï ( m, n = 1, 2,3) Ü íe 132 = e 213 = e 321 = -1 (2.3) ï îそれ以外は, 0 を満たす(【問題1】(2.3)の 2 つの関係式を証明せよ)。構造定数は e mnk になる。T ( n ) としては 1 ATLAS Collaboration, "Measurements of Higgs boson production and couplings in diboson final states with the ATLAS detector at the LHC", Physics Letters B 726 (2013) 88–119; "Evidence for the spin-0 nature of the Higgs boson using ATLAS data", Physics Letters B 726 (2013) 120–144. 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 2/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 T (n) = l (n) 2 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) ( n = 1, 2,3) (2.4) なので、 éëT (m ) , T ( n ) ùû は、角運動量の交換関係を満たす事がわかる。量子力学では、 角運動量は、空間回転に付随する ので、SU ( N ) 群を回転群と呼ぶ事が暗示される(【問題2】A)角運動量の交換関係を求めよ。 B)「角運動量は、空間回転に付随する」を証明せよ)。 SU (2) 群での素粒子 y は æx ö y =ç 1÷ è x2 ø (2.5) で表せる。これは、 ì æ u R ,G ,B ö ïクォーク( quark ) : ç R ,G ,B ÷ æ x1 ö ï èd ø = í çx ÷ æ ne ö è 2ø ï レプトン lepton : ( ) ç -÷ ï è e ø î æ c R ,G ,B ö ç R ,G ,B ÷ ès ø æ t R ,G ,B ö 2e 3 ç R ,G ,B ÷ èb ø -e 3 æ nm ö çç - ÷÷ è m ø æ n t ö 0 ç -÷ è t ø - e (2.6) に適用される。 さて、(2.1)の 3 つのエルミート行列の内、 物理量は、同時対角化可能なエルミート行列の組 3 m n k で与えられる。(2.3)の ëél ( ) , l ( ) ûù = 2i å e mnk l ( ) を考慮すれば、同時対角化可能なエルミート行 k =1 列は、1 つのみとわかるので、通常、対角化行列の l (3) : æ1 0 ö l ( 3) = ç ÷ è 0 -1 ø (2.7) を選ぶ。、そのときの物理量 T (3) は T ( 3) = l ( 3) 2 (2.8) である。そして、 T (3) のみが、 SU (2) 群での物理量 である。この物理量の観測値は、(2.5)の素粒子 y に対して、 T ( 3) y = l ( 3) 1 æ1 0 ö 1 æ 1 0 ö æ x1 ö y = ç y = ç ç ÷ ÷ 2 2 è 0 -1 ø 2 è 0 -1÷ø è x 2 ø であるので、その固有値は ± 1 であり、 2 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 (2.9) 3/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) ì ( 3) æ x1 ö 1 æ x1 ö ïT ç ÷ = ç ÷ è 0ø 2è 0ø ï í ïT ( 3) æ 0 ö = - 1 æ 0 ö çx ÷ ï 2 çè x 2 ÷ø è 2ø î (2.10) を得る。つまり、 1 ì ( 3) は、 x の物理量 T 1 ïï 2 í ïx1の物理量T (3)は、- 1 ïî 2 (2.11) 1 なので、この物理量は、(2.6)の素粒子の電荷になりえない。 eT (3) とすれば、 ± e の電荷を与 2 えれるのみである。 素粒子の理論は、電荷を含むので、例えば、電子や電子ニュートリノに対して、 x1 = n e , x2 = e - であるが、電荷を eQe とすると、その固有値として 0 と - e 、つまり、 ì æn e ö æn e ö ïQe ç ÷ = 0 ç ÷電荷0 ï è0ø è0ø í ïQ æ 0 ö = -e æ 0 ö電荷 - e ç -÷ ï eç -÷ èe ø î èe ø (2.12) が得られる( 【問題3】u-クォークや d-クォークに対して(2.12)を求めよ)。(2.11)の eT (3) から (2.12)を得るためには、± e 2 に加算して電荷にするもう一つ物理量が必要となる。そのために 単位行列 l (0) を利用することができる。新たに U (1) 群が導入されることになる(【問題4】何 故、 U (1) 群の導入になるのか?)。通常、この物理量を Y 2 と表し 超電荷(hypercharge):Y という。 Y は単位行列 l (0) に比例するので 2 éY , T (3) ù = 0 ë û (2.13) を満たし、 T (3) とY は、同時対角化可能なエルミート行列 である。つまり、 T l (3) ö Y ç= ÷, è 2 ø 2 ( 3) æ (2.14) が物理量になる。この超電荷を用いて、電荷 eQe を 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 4/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 Qe = T (3) + 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) Y 2 (2.15) と与える。対応するユニタリー行列は、 U = exp ( iq Qe ) (2.16) である。これは、U (1) 群の要素であるので、特に電荷(electric charge)に関連する U (1) 群と いうことを明示して U (1) e 群 (2.17) という。 SU ( 2 ) の T (3) 以外に U (1) の単位行列を用いるので、(2.15)で与えられる電荷をもつ素 粒子模型は、 SU ( 2 ) ´ U (1) 群に基づく という。また、対応するユニタリー行列は、 æ 3 (n) (n) æ 3 (n) (n ) ö æ (0) Y ö ( 0) Y ö exp exp U= (2.18) ç i åq T + iq 2 ÷ = ç i åq T ÷ exp ç iq 2 ÷ è ø è n =1 ø è n =1 ø æ 3 (n) (n ) ö æ 0 Yö exp である(【問題5】 ç i å q T ÷ exp ç iq ( ) ÷ の 2 つの積にかける事を証明せよ)。超電荷は、 2ø è è n =1 ø (2.6)の電荷を与えるように決定される。具体的には、 ì æ x1 ö æ (3) Y ö æ x1 ö æ 1 Y ö æ x1 ö ïQe ç ÷ = ç T + ÷ ç ÷ = ç + ÷ ç ÷ 2 øè 0 ø è 2 2 øè 0 ø ï è0ø è í ïQ æ 0 ö = æ T (3) + Y ö æ 0 ö = æ - 1 + Y ö æ 0 ö ÷ ç ÷ ï e çè x2 ÷ø çè 2 ø çè x2 ÷ø è 2 2 ø çè x2 ÷ø î (2.19) より、 æ1 Y ö æ 1 Yö x1 の電荷: e ç + ÷ 、 x 2 の電荷: e ç - + ÷ (2.20) è2 2ø è 2 2ø になる。(2.6)より、超電荷Y の値を計算することができて、(2.20)より素粒子の表の様に決定 される。 Yö æ 3 eQe ç = T ( ) + ÷ Y T (3) 2 è ø 2 1 u , c, t e 3 2 1 3 1 1 - e d , s, b 3 2 n e ,n m ,n t e, m ,t 0 1 2 -e 1 2 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 -1 5/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) 求められる(【問題5】(2.20)より、この表の超電荷Y を計算せよ)。 Ⅱ.SU(2)L×U(1)Y 群 実際の標準模型の素粒子は、初期宇宙では、 すべて質量 0 の素粒子 である。そして、 素粒子の質量は、ヒッグス粒子から供給 される。質量 0 の素粒子の状態では、粒子と反粒子でその性質が異なり、 3 反粒子では、 T ( ) = 1 ではなく T ( 3) = 0 2 になる。例えば、電子 e - (粒子)と陽電子 e+ (反粒子)では、 e- = e- e¯- = e- 左回り 右回り e+ = e+ e¯+ = e+ 左回り 右回り e- : T (3) = - 1 2 e+ : T ( 3) = 0 である。反粒子の電荷を同じ粒子の電荷 -e に揃えるため、荷電共役の関係式: æ e+ ö æ 0 1 ö æ e-* ö æ 0 1 ö -* e (= e ) = ç + ÷ = ç e ç ÷= ç e ÷ è -1 0 ÷ø ç e -* ÷ çè -1 0 ÷ø è ¯ø è ¯ ø + -C (2.21) を用いると æ 0 -1ö +* +C e- = - ç (2.22) ÷ e (= e ) 1 0 è ø が得られる(【問題6】(2.22)を証明せよ)。その結果、同じ電荷の状態 e - が現れるので、荷電 共役の関係式から得られる状態に添え字の R を付け、元にある状態 e + を添え字の L を付けて 区別し、 eR- = eL+ C (2.23) にする。つまり、上述のイメージ図は、 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 6/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) eL- = e- eL-¯ = e- 左回り 右回り eL+ = e+ eL+¯ = e+ 左回り 右回り e =( e R¯ + )e C R =( e 左回り + eL- : T ( ) = 3 1 2 eL+ : T ( ) = 0 3 ) C eR- : T ( ) = 0 3 右回り と表す事ができる。他の荷電レプトンやクォークについても同様である。電荷を揃えた添え 字 R で表した反粒子の状態を含めると(質量 0 の)素粒子の表として、 Yö æ 3 eQe ç Qe = T ( ) + ÷ 2ø è uL , c L , t L uR , cR , t R d L , sL , bL d R , sR , bR n eL ,n m L ,n t L n eR ,n m R ,n t R eL , mL ,t L eR , m R ,t R 2 e 3 1 - e 3 0 使用しない -e T (3) Y 1 2 1 3 0 4 3 - 1 2 1 3 2 3 0 - 1 2 -1 0 0 - 1 2 -1 -2 が得られる(【問題7】添え字 R の状態のY の値を確認せよ。)。特に、 0 n eR ,n m R ,n t R の物理量はすべて 0 なので、標準模型では観測できない ことになる。実際、今の所、見つかっていない。また、 T (3) の値は、添え字 L の状態のみ 0 で ない値であり、T (3) は SU ( 2 ) 群に属するので、この事実を想起できるように、SU ( 2 ) に添え字 L をつける場合が多い。同様に、超電荷のY も U (1) の添え字にして、標準模型は 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 7/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) SU ( 2 ) L ´ U (1)Y 群 に基づくと言われる。とくに、添え字の L の素粒子をy L で表し、添え字の R の素粒子をy R で 表すと、(2.18)は ì æ 3 (n) (n) æ 3 (n) (n) ö æ 0 Yö (0) Y ö ¢ y = U y Ü U = exp i q T + i q = exp i åq T ÷ exp ç iq ( ) ÷ L L L ï L ç å ÷ ç 2ø 2ø ï è è n=1 è n =1 ø í ïy ¢ = U y Ü U = exp æ iq (0) Y ö R R R R ç ÷ 2ø è îï (2.24) に変更される。 さて、場の理論によると、 SU ( 2 ) L ´ U (1)Y 群は、ハミルトニアン演算子 Ĥ ( t ) に現れ、2 ハ ミルトニアン密度演算子 Hˆ ( x,t ) を用いて、 ( Hˆ ( t ) = ò Hˆ ( x , t ) dx = ò ¥ ¥ ò ò ¥ -¥ -¥ -¥ Hˆ ( x, y , z , t ) dzdydz ) (2.25) である。このとき、ユニタリ-演算子 U は、 U ( t ) として æ 1 t ö U ( t ) = exp ç -i ò Hˆ ( t ¢) dt ¢ ÷ , y ¢ ( t ) = U ( t ) y ( 0 ) Ü U ( 0 ) = I 0 è ø で与えられる( 【問題8】(2.26)がシュレディンガー方程式 i d y ( t ) = Hˆ ( t ) y ( t ) dt (2.26) を満たす ことを示せ。)。 SU ( 2 ) L ´ U (1)Y 群の物理量 T (1,2,3) , Y は、 Hˆ ( x ,t ) に現れる。質量が生成された後 に現れる相互作用としては (クーロン力を与える)光子(photon): Am ( m = 0,1, 2,3) Ü mAc 2 = 0 2 ïìmW c = 80.4 GeV (崩壊力を与える)弱ボゾン(weak bosons): W ± m , Z m ( m = 0,1, 2, 3) Ü í 2 ïîmZ c = 91.2 GeV との相互作用である。 m ここに、添え字 m = 0,1, 2,3 の意味は、光子 A では、マックスウエルの電磁気学において、 m = 0 クーロンポテンシャル f : A0 = f m = 1, 2,3 ベクトルポテンシャル A : A1,2,3 = Ax , y , z c である。ここに、電場 E と磁場 B は、光子 A を用いて B = Ñ ´ A, E = -Ñf - ¶A である。 ¶t m 2 演算子であることを強調するため 記号を用いる。素粒子の生成消滅演算子を含んでいる。 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 8/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) 標準模型では、最初、 W ± m , Z m を含むすべての素粒子の質量は 0 であるので、質量を持っ ている W ± m , Z m は存在しない。そこで、 「4 つの A,W ± , Z 」の源となる「4 つの W (1,2,3) , B 」が導 入されて、 4 つの質量 0 の素粒子: W (1,2,3)m , B m ( m = 0,1,2,3) (ゲージボゾン) ìïW (1,2 )mからW ± m生成 í ( 3) m m m m ïîW , B からA , Z 生成 とする。質量 0 のクォークやレプトンをy と表して用いるが、電子と陽電子の例では、ニュ ートリノと共に æ eL- } 2列 ö æ * ö æ0 ö æ0 ö æ0ö ç ÷ ç ÷ ç ÷ ç ÷ ç0÷ *÷ ç EL = ç 0 , ER = ç 0 ÷= ÷ = ç0 ÷=ç ÷ ç ÷ 0 ç0 ÷ ç ÷ ç ÷ ç *÷ ç eR } 2列 ÷ ç eL+ C } 2列 ÷ ç ÷ ç ÷ ç ÷ è ø è ø è *ø è ø è 0ø æn e -L } 2列 ö æ * ö ç ÷ ç *÷ NL = ç0 ÷ = ç ÷ , N R = 使用しない ç0 ÷ ç 0÷ ç ÷ ç ÷ è ø è 0ø (2.27) (2.28) とするとき、y は æ 1 ö ç ÷ N æ ö y L ( x, t ) = ç L ÷T ( 3) = ç 2 ÷ , Y = -1 或いは y R ( x, t ) = ER T (3) = 0, Y = -2 1 è EL ø çç - ÷÷ è 2ø (2.29) である。ここに、(電子などの)レプトンの場合 上には電荷 0 下には電荷 - e を思い出しておく(【問題9】クォークの場合には、どう表現されるか?)。 クーロン相互作用は、光子 A を媒介し、質量のある素粒子に働き、電荷が相互作用の強さ を与える。 Hˆ ( x,t ) は、y を用いて 3 3 m =0 m =0 Hˆ ( x, t ) = + y L ( x, t )å g m eQe Amy L ( x, t ) + y R ( x, t )å g m eQe Amy R ( x, t ) + (2.30) である。通常、ハミルトニアン演算子は、観測値として、エネルギーを与えるので、 Hˆ † ( x, t ) = Hˆ ( x, t ) のエルミート演算子である。このとき、y L ( x, t ) とy L† ( x, t ) を用いて、 Hˆ ( x , t ) = y L† ( x, t ) Wy L ( x , t ) Ü W† = W (2.31) のタイプであれば、エルミート演算子になる(【問題10】(2.31)がエルミート演算子になる ことを示せ)。しかし、クォークやレプトンのときには、(2.30)のように 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 9/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) y L†,R ( x, t ) を使わずにy L. R ( x , t ) y L,R ( x, t ) = y † L ,R ( x, t ) g 0 (=y T* L,R 4 行列 4列 4 列 4´ ( x, t ) g ) Ü () = () () 0 (2.32) を用いる。ここに、 g 0 は g m ( m = 0,1,2,3) に含まれる 4×4 行列で æ 0 æ 0 I ö 1,2,3 g 0 = g0 = ç , g g g º = = ç (1,2,3) ( ) x , y ,z 1,2,3 ÷ ç è I 0ø è -s ì (1) æ 0 ïs = ç è1 ï (1,2,3) ö ï s ï (2) æ 0 ÷ ís = ç 0 ø÷ ï èi ï æ1 ïs (3) = ç è0 îï 1ö g x 0 ÷ø -i ö g y 0 ÷ø (2.33) 0ö g z -1÷ø で表され、ディラックの g 行列といわれる。ここに、 {g m ,g n }= g g + g g = 2h m n n m mn ìh 00 = -h 11 = -h 22 = -h 33 = 1 Üí (h : エータ) îそれ以外は0 つまり、 g mg n = -g n g m ( m ¹ n ) (2.34) (2.35) が成り立つ(【問題11】(2.33)を用いて、{g 0 , g 0 } = 2, {g 1 , g 1} = -2, {g 0 , g 1} = 0 を導け)。また、 添え字 L や R も、4×4 行列で表す事ができ、 g m 行列を用いて作られる g 5 行列: æ -I 0ö 2 I = 2 ´ 2単位行列 ) Þ (g 5 ) = I ( = 4 ´ 4単位行列 ) g 5 = ig 0g 1g 2g 3 = ç ( ÷ è 0 Iø g mg 5 = -g 5g m を用いて(【問題12】(2.36)の行列を導け)、 1 - g 5 æ I 0ö 1+ g 5 æ0 0ö L= =ç , R= =ç ÷ ÷ 2 2 è 0 0ø è0 I ø (2.36) (2.37) (2.38) で表される。このとき、 2 2 æ1-g5 ö 1-g5 æ1+g5 ö 1+g5 , ç ç ÷ = ÷ = 2 2 è 2 ø è 2 ø 1- g5 m 1+ g5 1+ g5 m 1- g5 g =gm , g =gm 2 2 2 2 (2.39) (2.40) が成り立つ(【問題13】(2.39)と(2.40)を証明せよ)。電子の場合に、(2.23) eR- = eL+ C より、(2.27) より、 E として æ eL- ö æ eL- ö E = ç +C ÷ = ç - ÷ çe ÷ çe ÷ è L ø è Rø (2.41) とするとき 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 10/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) ì æ eL- ö E = L E = ï L ç ÷ ï è0 ø í æ0 ö ï E = R E = ç -÷ R ï è eR ø î (2.42) が導かれ、(2.27)に一致する(【問題14】 Y L = 作るとき、 Y L = Y 1-g5 Y の時、(2.32)のルールを用いて Y L を 2 1+g5 を証明せよ。(2.37)と(2.38)を用いる)。 2 3m 質量 0 の素粒子には、光子 A の元となる W ( ) , B m を媒介し、それぞれの相互作用の強さを g と g¢ として、 Hˆ ( x,t ) は、 W (1,2 )m も含み、 3 3 Y mö Y æ 3 ( n ) ( n )m ˆ ¢ ¢ B my R ( x , t ) + , t y , t g T W B y , t y , t H ( x ) = + L ( x )å m ç g å +g L ( x ) + R ( x )å g m g ÷ 2 2 m =0 m =0 è n =1 ø (2.43) æN ö と表す。y L ( x , t ) = y L† ( x , t ) g 0 に、(2.29)のy L ( x , t ) = ç L ÷ を用いると è EL ø æN ö y L ( x, t ) = y L† ( x, t ) g 0 Þ ç L ÷ = ( N L†g 0 è EL ø EL†g 0 ) (2.44) æN ö である。また、y L ( x , t ) = ç L ÷ に対する T (3) の固有値は è EL ø æ 1 ö NL ÷ ç 3 2 T ( )y L ( x, t ) = ç ÷ çç - 1 E ÷÷ L è 2 ø (2.45) になる。 (2.26)のユニタリー行列は æ 1 t ö æ 1 t ö U ( t ) = exp ç -i ò Hˆ ( t ¢) dt ¢ ÷ = exp ç -i ò dt ¢òòò Hˆ ( t )dxdydz ÷ 0 0 è ø è ø 3 æ ö é ù Y æ 3 ( n ) ( n )m ö ¢ + y , g + g¢ B m ÷y L ( x, t ¢) ú x t ( ) ç ÷ å m ç gå T W L ¥ ¥ ¥ ê 2 1 t m =0 è n =1 ø ç ê ú ¢ = exp -i ò dt ò ò ò dxdydz ÷ 3 ç 0 ÷ ê ú Y m -¥ -¥ -¥ ¢ ¢ ¢ + B + y , g y , x t x t g çç ÷÷ ( ) ( ) ê ú å m R R 2 m = 0 ë û è ø (2.46) 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 11/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) となっているので、exp に T ( n ) , Y を含む(2.18)の形を引き継いでいる。(2.43)は素粒子の質量が 現れた後に電磁相互作用の(2.30)を含まないといけないので、(2.43)では、 g と g¢ から電荷 e が現れるように調整する 必要がある。 Ⅲ.SU(2)L×U(1)Y 群と電磁相互作用 初期宇宙に現れる質量 0 の素粒子と現宇宙で観測されている質量をもつ素粒子の間の物理 量の違いは・・・ 3 素粒子の質量 0 では、物理量: T ( ) と超電荷Y 、で分類できる 弱い相互作用: gT ( 3) 超電磁相互作用: g¢ Y 2 素粒子の質量が現れた後では、物理量:電荷 Qe のみ、で分類できる Yö æ 3 電磁相互作用: eQe ç Qe = T ( ) + ÷ 2ø è である。したがって、(2.30)の電磁相互作用を導くには、素粒子の質量が現れた後に表れる電 荷のみの分類に従う必要がある。電荷のみの分類では、 W (3)m , B m Þ Am , Z m からもわかるよう に W (3)m , B m の電荷は 0 である ことがわかる。量子力学からは、 同じ量子数(=物理量)の素粒子は混合する ことを知っている。従って、電荷 0 の W (3)m , B m は混合し、その表記は、座標の回転【第 1 章: SU(N)群】(1.24)と同様、ここでは cos qW と sin qW を用いて( Weak の W を添え字として用いる) cos qWW (3)m - sin qW B m , sin qWW (3)m + cos qW B m (2.47) と表わせる。これらを、 Am , Z m であると想定し、 Z m = cos qWW (3)m - sin qW B m Am = sin qWW ( 3) m (2.48) + cos qW B m 表すことにする。逆に表せば W (3)m = cos qW Z m + sin qW Am (2.49) B m = - sin qW Z m + cos qW Am である(【問題15】(2.48)から(2.49)を求めよ)。 質量をもつ素粒子に対しては、 Am と Z m が表れるので、質量 0 の素粒子に対する(2.43)を、 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 12/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) Am と Z m を用いて書き換える。つまり、(2.49)を用いて(2.43)のy L ( x, t ) とy L ( x, t ) に挟まれた項 より 3 ( n =1 ( (1) =g T W (1) m ) Y m Y B = g T (1)W (1)m + T ( 2 )W ( 2)m + T ( 3)W ( 3)m + g¢ B m 2 2 Y + T ( 2)W ( 2 )m + gT (3)W (3)m + g¢ B m 2 gå T ( n )W ( n )m + g¢ ) (2.50) ここで、 Am と Z m の項は V (3)m と B m から表れるので・・・ gT ( 3)W (3)m + g¢ Y m Y B = gT ( 3) ( cos qW Z m + sin qW Am ) + g¢ ( - sin qW Z m + cos qW Am ) 2 2 Yö Yö æ æ = ç g cos qW T ( 3) - g¢ sin qW ÷ Z m + ç g sin qW T (3) + g¢ cos qW ÷ Am 2ø 2ø è è (2.51) と計算できる。 Am の項は、(2.30)の中で対応する eQe Am と一致しないといけないので、 Yö æ 3 eQe Am = ç g sin qW T ( ) + g¢ cos qW ÷ Am 2ø è (2.52) 3 が要請される。ここで、(2.15)より Qe = T ( ) + Y であるので、 2 e e Yö æ ( 3) Y ö m æ ( 3) eQe A = e ç T + ÷ A = ç g sin qW T + g¢ cos qW ÷ Am ç 2ø 2÷ è è ø m (2.53) より、 e = g sin qW = g¢ cos qW = gg¢ g 2 + g¢2 gg¢ を得る(【問題16】 e = を求めよ)。以上から、 g 2 + g¢2 (2.54) 質量をもつ素粒子の電荷 e が、質量 0 の素粒子の"電荷" g と g¢ で表す事 ができた。これを用いると、(2.51)より Z m の様子がわかる。つまり、 Yö m æ ( 3) ( 3) 2 2 2 m ç g cos qW T - g¢ sin qW ÷ Z = g + g¢ T - sin qW Qe Z 2ø è ( ) (2.55) である(【問題17】(2.54)を用いて、(2.55)を示せ)。以上から、 gT (3)W ( 3)m + g¢ ( ) Y m B = g2 + g¢2 T ( 3) - sin 2 qW Qe Z m + eQe Am 2 ì ( 3) Y ïQe = T + 2 ï í gg¢ ïe = g sin qW = g¢ cos qW = g2 + g¢2 ïî を得る。 残りの W (1,2 )m の項は、(2.1)を用いて 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 (2.56) 13/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) é 1 æ 0 1 ö (1)m 1 æ 0 -i ö ( 2)m ù gT (1)W (1)m + gT ( 2)W ( 2 )m = g ê ç ÷W + 2 ç i 0 ÷W ú ø è ë 2 è 1 0ø û 0 W (1)m - iW ( 2 )m ö 1æ =g ç 1m ÷ ÷ 2 çè W ( ) + iW ( 2 )m 0 ø (2.57) を得る。ここで、 W (1)m ± iW ( 2 )m の効果を見るために、(2.43)に含まれる 0 W (1)m - iW ( 2 )m ö Y mö 1æ æ 3 ( n ) ( n )m + g¢ B ÷y L ( x , t ) = + g ç 1 m ÷y L ( x , t ) + (2.58) ç gå T W ÷ 2 2 çè W ( ) + iW ( 2 )m è n =1 ø 0 ø より、y L として(2.29)を用いて より 「上には電荷 0」「下には電荷 - e 」のルール 1 2 1 2 æ æ 0 W ( )m - iW ( )m ö W ( )m - iW ( )m ö æ N L ö n e : 電荷0 0 t x , y = ç (1)m ÷ ç ÷ç ÷ ( ) ç W + iW ( 2 ) m ÷ L ç W (1)m + iW ( 2 )m ÷ è EL ø e - : 電荷 - e 0 0 è ø è ø ( ( ) ) æ W (1)m - iW ( 2 )m E L ö 電荷0 ÷ =ç çç W (1)m + iW ( 2 )m N ÷÷電荷 - e L è ø (2.59) である。従って、電荷の約束より ( ( ) ) ( 2)m ì (1)m EL 電荷0 ï W - iW í (1)m ( 2)m N L 電荷 - e ïî W + iW (2.60) なので、 E L の電荷が - e 、 N L の電荷が 0 である事より ìïW (1)m - iW ( 2)m 電荷 + e í (1)m ( 2)m ïîW + iW 電荷 - e (2.61) とわかる。そこで、 W ± として、 ì + m W (1)m - iW ( 2)m 電荷 + e ïW = ï 2 í (1) m ( 2)m ïW - m = W + iW 電荷 - e ïî 2 (2.62) と表す事が出来る(【問題18】 W (1,2 )m を、 W ± m で表せ)。3 以上から、質量をもつ素粒子に対しての粒子: W ± m , Am , Z m は、質量 0 の素粒子に対するゲ ージ粒子: W (1,2,3)m , B m より 3 2 で割ることは、場の理論での約束による。運動エネルギー項の定義による。 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 14/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 ì + m W (1)m ïW = ï í (1) m ïW - m = W ïî - iW ( 2)m 2 + iW ( 2)m 2 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) ( 3) m m - sin qW B m ïì Z = cos qWW í m ( 3) m + cos qW B m ïî A = sin qWW (2.63) で作られ、電荷は e = g sin qW = g¢ cos qW = gg¢ g 2 + g¢2 (2.64) と計算される。 このままでは、すべての素粒子は、まだ質量が 0 のままである。素粒子に質量を与えるの が、ヒッグス粒子であり、その機構をヒッグス機構(次章で考察)という。特に、 光子だけは、自動的に質量が 0 素粒子のまま で、それ以外の SU ( 2 ) L ´ U (1)Y に関連する素粒子(クォーク・レプトン・ W ± ・ Z )に質量を 与えることができる機構になっている。その理論的アイデアは、1960 年に南部陽一郎とジョ ヴァンニ・ヨナラシニオ(Giovanni Jona-Lasinio)により発見された自発的対称性の破れ (spontaneous symmetry breaking)として知られている。今の場合、電磁相互作用に関連する 物理量は、質量 0 のゲージボゾン(素粒子間の力の源)に付随し ìW (1,2,3)m , B m 質量0ゲージボゾン ïï 1,2,3 質量0の素粒子:SU ( 2 ) L ´ U (1)Y í物理量 = T ( ) , Y ï ( 3) ïî 観測可能物理量 = T , Y ì Am 質量0ゲージボゾン ï æ ( 3) Y ö 質量ありの素粒子:U (1)e í物理量 = Qe ç Qe = T + ÷ 2ø è ï 観測可能物理量 = Q e î とまとめられる。つまり、質量 0 の素粒子に対する SU ( 2 ) L ´ U (1)Y 群が、質量をもつ素粒子 に対する電荷の U (1) e 群に変化する。このように質量 0 の素粒子が質量を持つにつれて、電磁 相互作用に関連する物理量が変化することを、群の変化を用いて SU ( 2 ) L ´ U (1)Y ® U (1)e (2.65) と表す。これを「自発的対称性の破れ」という。破れない場合は「対称性の保存」という。 当然のことながら、 「自発的対称性の破れ」は、質量が生成されるヒッグス機構と共に出現する ことになる。これは質量 0 の素粒子を記述する相互作用(2.43)において、 3 3 Y mö Y æ 3 ( n ) ( n )m ˆ ¢ H ( x , t ) = + y L ( x , t )å g m ç g å T W + g B ÷y L ( x , t ) + y R ( x , t )å g m g¢ B my R ( x , t ) + 2 2 m =0 m =0 è n =1 ø (2.66) 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 15/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) が 3 3 m =0 m =0 Hˆ ( x, t ) = + y L ( x, t )å g m eQe Amy L ( x, t ) + y R ( x, t )å g m eQe Amy R ( x, t ) + (2.67) に変化することに対応する(【問題19】(2.66)から、 W (3)m , B m に(2.49)、電荷 e に(2.54)、 T (1)W (1)m + T ( 2 )W ( 2 )m に(2.57)及び【問題20】の答え、を参照して、(2.67)を導け) 。 Ⅳ.群と対称性 「自発的対称性の破れ」は、標準模型で、素粒子に質量を与える源である。では、この対 称性とは何であろうか?そのため、 「対称性が保存」する場合を調べる。素粒子の変化は、群 の要素であるユニタリー行列で与えられる。つまり、 U ( N ) 群や SU ( N ) 群では、【第 1 章: SU(N)群】(1.65)や(1.66) の æ N -1 n l (n ) ö æ ( 0 ) l ( 0) ö æ N -1 ( n ) l ( n ) ö ( 0) exp exp U ( N ) : U = exp ç i å q ( ) i = q ÷ ç ÷ çi å q ÷ l =I 2 ø 2 ø 2 ø è n =0 è è n =1 2 2 ( ) æ N -1 ( n ) l ( n ) ö SU ( N ) : U = exp ç i å q ÷ 2 ø è n=1 (2.68) 2 で与えられ、素粒子 y (2.69) ( = y ( x, t ) ) は、N 列ベクトルで表され、U によって y ¢ N行 ´ N 行列 N 行 N ì ïï y ¢ = U y Ü () = () () í ´ N 行列 N列 N列 N ï † ïî y ¢ = y U Ü () = () () と変換される: (2.70) である。対称性が保存するかどうかを調べるには、ハミルトニアン密度 Hˆ ( x ,t ) の代わりに、 ラグランジアン密度 L ( x,t ) を用いるとよい。ラグランジアン密度を用いる場の理論では、 「経 路積分」を用いて、素粒子の量子効果を見積もれる(散乱振幅などの)確率密度を計算する。 このとき、ラグランジアン密度に含まれる素粒子は、ハミルトニアン密度のように生成消滅 演算子ではなく、通常の複素数として導入される。ラグランジアン密度は、 あらゆる素粒子の変化に対して不変である という性質を持たせることができる。4 従って、ラグランジアン密度を、 (2.70)での変換に対して不変であると要請する ことができる。このとき、 U ( N ) 対称性が保存する・・・(2.68)のとき ¥ 4 正確には、ラグランジアン密度を L ( x ,t ) とするとき、 ò L ( t ) dt -¥ ( L (t ) = ò L ( x, t ) dx ) 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 が不変になる。 16/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) SU ( N ) 対称性が保存する・・・(2.69)のとき という。(2.68)の U ( N ) 対称性の場合に、対称性が保存する一番簡単な組み合わせとして、 y y = y † ( x , t )y ( x , t ) (2.71) が対称性を保存する。 y ¢ y ¢ = y y が証明できるので、 y y = y † ( x , t )y ( x , t ) では U ( N ) 対称性が保存する。 事になる(【問題21】 y ¢ y ¢ = y y を証明せよ)。【第 1 章:SU(N)群】(1.81) (1.82)より、 一重項の 1 になることからも、対称性が保存することがわかる SU ( 2 ) L ´ U (1)Y の場合のラグランジアン密度 L ( x,t ) は、(2.66)より 3 3 Y mö Y æ 3 ( n ) ( n )m L ( x,t ) = + y L ( x, t )å g m ç gå T W + g¢ B ÷y L ( x, t ) + y R ( x, t )å g m g¢ B my R ( x, t ) + 2 2 m =0 m =0 è n =1 ø (2.72) と表される。相互作用項は、(2.72)で 示し修正してあるように、符号が変わることに注意す る(【問題22】ニュートン力学で、 x 軸上を質量の粒子が速度 v で移動している。ラグラン ジアンを L = 1 1 mv2 - V ( x ) とするとき、ハミルトニアン H = mv2 + V ( x ) を導け。 (素粒子に力 2 2 を及ぼす)相互作用は、 V ( x ) にあたり、 H と L で符号が変わることがわかる)。変換後のラ グランジアン密度 L ¢ ( x,t ) は、変換後の素粒子y L¢ , y R¢ , W ¢( 1,2,3) m , B¢m と表すと、これらを用いて 3 3 Y Y æ 3 ö L ¢ ( x, t ) = - y L¢ ( x, t )å g m ç g å T ( n )W ¢( n )m + g¢ B¢m ÷y L¢ ( x, t ) - y R¢ ( x, t )å g m g¢ B¢my R¢ ( x, t ) + 2 2 m =0 m =0 ø è n =1 (2.73) である。特に、 y L¢ , y R¢ は、 SU ( 2 ) L ´ U (1)Y の変換を用いて表されていて、 y L¢ は(2.24)の Yö æ 3 (n ) (n) ö æ U L = exp ç i åq T ÷ exp ç iq ( 0) ÷ を用いて 2ø è è n =1 ø 2行 2 行列 2 行 2´ y L¢ ( x , t ) = Uy L ( x , t ) Ü () = () () 2 行列 2列 2 列 2´ y L¢ ( x , t ) = y L ( x , t )U Ü () = () () † 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 (2.74) (2.75) 17/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) と表せる(【問題23】y L ( x, t ) の定義(2.32)を(2.74)に用いて、(2.75)を示せ)。同様に、y R は(2.24) æ 0 Yö の U R = exp ç iq ( ) ÷ を用いて 2ø è 1行 行列 1行 1´1 y R¢ ( x, t ) = U Ry R ( x , t ) Ü ( ×) = ( ×) (×) :どれも複素数のこと (2.76) 行列 列 1´1 1 y R¢ ( x, t ) = y R ( x , t )U Ü ( ×) = (× ) ( ×) :どれも複素数のこと (2.77) 1列 † R と表せる。同時に、W ( n )m は W ¢( n )m に、 B m は B¢m に変換される。この変換の元で、 L ¢ ( x,t ) が変 化しなければ、「 SU ( 2 ) L ´ U (1)Y 対称性が保存する」という。つまり、 変換後 L ¢ ( x,t ) が変換前 L ( x,t ) と同じであれば、 SU ( 2 ) L ´ U (1)Y 対称性が保存、或いは、 SU ( 2 ) L ´ U (1)Y 変換で不変 となる。(2.73)に表れている 3 3 Y Y æ 3 ö y L¢ ( x, t )å g m ç gå T ( n )W ¢( n )m + g¢ B¢m ÷y L¢ ( x, t ) + y R¢ ( x, t )å g mg¢ B¢my R¢ ( x, t ) 2 2 m =0 m =0 è n =1 ø は、もし、(2.24)の変換後に、 ìïW ¢(1,2,3)m = W (1,2,3)m í m m ïî B¢ = B (2.78) (2.79) を要請すれば、(2.71)と同じタイプになるので、 (2.78)では、 SU ( 2 ) L ´ U (1)Y が保存する ことになる。 Ⅴ.SU(2)L×U(1)Y ゲージ対称性 実際の標準模型では、正確には、 U による変換は、 場所と時間に依存する U ( x ) = U ( x, y , z, t ) に変更 され、5 (2.24)は、 Yö æ 3 (n ) ö æ ¢ y L = U L ( x )y L Ü U L ( x ) = exp ç i åq ( x ) T ( n ) ÷ exp ç iq (0 ) ( x ) ÷ 2ø è è n =1 ø Yö æ y R¢ = U R ( x )y R Ü U R ( x ) = exp ç iq ( 0) ( x ) ÷ 2ø è 5 U ( x ) = U ( x , y , z , t ) において、左辺の x は 4 次元空間の x m (2.80) (2.81) ( m = 0,1, 2, 3) を表し、右辺の x は、3 次元空間の x 座 標を表す。 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 18/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) と拡張される。その結果、(2.79)は正しい W (1,2,3)m , B m の変換にならない。この変換による群を 局所対称性(local symmetry) ゲージ対称性(gauge symmetry) ( ) という。エッセンスを見るために、時間にのみ依存する例 U x, y , z ,t = U ( t ) を使用する。更 æ 3 ö に、(2.80)で exp ç i å q ( n ) ( x ) T ( n ) ÷ を無視して、簡単化し、 è n =1 ø Yö æ 0 U ( t ) = exp ç iq ( ) ( t ) ÷ 2ø è (2.82) を用いて、 局所 U (1) 対称性の保存 の有無を議論する。このとき、(2.72)に対応して、「 + 」として時間微分を加えて Y æ d ö L ( t ) = y † ( t ) ç i - g¢ B ( t ) ÷y ( t ) 2 è dt ø を考える。そこで、 ìy ¢ ( t ) = U ( t )y ( t ) d Y ï æ ö L ¢ ( t ) = y ¢ ( t ) ç i - g¢ B¢ ( t ) ÷y ¢ ( t ) í Y Y d † 2 è dt ø ïg¢ B¢ ( t ) = g¢ B ( t ) - iU ( t ) U ( t ) 2 dt î 2 とするとき、 † Y Y æ d ö æ d ö y ¢† ( t ) ç i - g¢ B¢ ( t ) ÷y ¢ ( t ) = y † ( t ) ç i - g¢ B ( t ) ÷y ( t ) 2 2 è dt ø è dt ø より、L ¢ ( t ) = L ( t ) が証明できる(【問題24】(2.85)を証明せよ。証明に際し (2.83) (2.84) (2.85) d (U † ( t ) U ( t ) ) =0 dt から導かれる式を用いる。また、 U や U † は、行列なので、順番を変えてはいけない)。従っ て、変換後が変換前と同じなので 局所 U (1) 対称性が保存する ことがわかる。 実際には、 SU ( 2 ) L ´ U (1)Y に対しては、(2.84)を拡張した、 ì Yö æ 3 (n) æ (0) (n) ö ¢ y , t = U x y , t Ü U x = exp x x ( ) ( ) ( ) ( ) L L L ï L ç i åq ( x ) T ÷ exp ç iq ( x ) 2 ÷ ï è ø è n =1 ø í ïy ¢ ( x, t ) = U ( x )y ( x, t ) Ü U ( x ) = exp æ iq (0) ( x ) Y ö R R R ç ÷ ïî R 2ø è (2.86) 3 Y m Y ì 3 ( n ) ( n )m ( n ) ( n )m † ¢ ¢ ¢ T W B U x U L ( x ) + g¢ B m - iU L ( x ) ¶ mU L† ( x )y L用 g + g = g L ( ) åT W ïï å 2 2 n =1 n =1 (2.87) í ïg¢ Y B¢m = g¢ Y B m - iU ( x ) ¶ mU † ( x )y 用 R R R ïî 2 2 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 19/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) が必要になる。ここに、(2.79)に較べて、ゲージボゾン W (1,2,3)m , B m も変換されることに注意す る。このように、 ゲージ変換といい、 U L. R ( x ) が時間と空間による ゲージボゾン W (1,2,3)m , B m が変換される 特徴がある。また、(2.83)に対応して、ラグランジアン密度として(式番号:(2.88)) 3 æ ¶ ö Y n n m L ( x ) = y L ( x )å g m i ç + igå T ( )W ( ) ( x ) + ig¢ B m ( x ) ÷y L ( x ) ç ÷ 2 m =0 n =1 è ¶xm ø 3 3 æ ¶ ö Y + ig¢ B m ( x ) ÷y R ( x ) + y R ( x )å g m i ç ç ¶xm ÷ 2 m =0 è ø m =1 m = 2 m =3 ì ö æ m=0 ï xm : ç ct , - x , - y , - z ÷ ç ÷ ï è ø ï m =3 m = m = m = 0 1 2 í æ ö ï ¶ ç ¶ ¶ ¶ ¶÷ :ç ,- ,- ,- ÷ ï ï ¶xm ç c¶t ¶x ¶y ¶z ÷ è ø î を得る。(2.88)が素粒子の標準模型でクォーク・レプトンの力学を与えるラグランジアン密度 である。ラグランジアン密度(2.88)は、 L ¢ ( t ) = L ( t ) と同様、 L ¢ ( x ) = L ( x ) が証明できるので SU ( 2 ) L ´ U (1)Y ゲージ対称性を持つ という。相互作用の部分は、(2.88)のように 3 gå T ( )W ( n n )m ( x ) + g¢ n =1 Y m B ( x) 2 (2.89) で与えられ、 対応するゲージボゾン W (1,2,3)m ( x ) , B m ( x ) は質量が 0 である。この相互作用が、「自発的対称性の破れ」を用いるヒッグス機構により Yö æ 3 eQe Am ( x ) ç Qe = T ( ) + ÷ 2ø è の電磁相互作用を与え、 (2.90) 対応するゲージボゾン(光子) Am ( x ) は質量が 0 として現れることが保証される。また、同時に (2.63)の W ± m と Z m は質量を持つ ことも保証される。質量を持つ素粒子に対してのラグランジアン密度は、(2.88)より、 g æ ¶ ö ( + ) ( + )m ( x ) + l ( -)W ( - )m ( x ) ç ¶x + i 2 l W ÷ L ( x ) = y L ( x )å g m i ç m ÷y L ( x ) m =0 3 çç +i g2 + g¢2 T ( ) - sin 2 q Q Z m ( x ) + ieQ Am ( x ) ÷÷ W e e è ø 3 ( ) ( ) (2.91) 3 æ ¶ ö + y R ( x )å g m i ç + i g2 + g¢2 ( - sin 2 qW Qe ) Z m ( x ) + ieQe Am ( x ) ÷y R ( x ) ç ÷ m =0 è ¶xm ø である。ここに、(2.1)の l (1,2 ) を使って、 l (±) l (1) ± il ( 2 ) = 2 (2.92) 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 20/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) である(【問題25】(2.91)を導け)。 Ⅵ.SU(3)c ゲージ対称性 素粒子の理論で「対称性が保存する」場合があり、例えば、基本表現 3 (3 つ子)のクォ ークは、色の三原色:赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)で表されているが、この場合は、 添え字に color の c を用いた SU ( 3) c であらわされ、クオーク(quark) q は æ qR ö q = ç qG ÷ ç ÷ çq ÷ è Bø (2.93) と表され、対応するゲージボゾンは 8 個有り、 グルーオン(gluon): G (18)m (2.94) と呼ばれる(【問題26】何故、 SU ( 3) c では、8 個現れるか? SU ( 2 ) L での(2.43)を参考にして 考察せよ)。クォークから陽子( p )や中性子( n )や湯川中間子( p ± ,0 )の複合粒子: p = uud , n = udd (2.95) ì + æ 0 0ö æ u ö l (1) - il ( 2) æ u ö ïp = du = ( u d ) ç ÷ ç ÷ = (u d ) çd ÷ 2 è 1 0ø è d ø è ø ï ïï æ1 0 öæu ö æu ö 0 = ( u d ) l ( 3) ç ÷ íp = uu - dd = ( u d ) ç ÷ ç ÷ è 0 -1 ø è d ø èd ø ï 1 2 ï æ0 1öæu ö l ( ) + il ( ) æ u ö ïp - = ud = ( u d ) ç = u d ( ) ÷ç ÷ çd ÷ 2 ïî è ø è 0 0ø è d ø (2.96) や が生成される。このような複合粒子の作り方も群論のルールで一意的に決まっている。(2.96) には、SU ( 2 ) 群に表れる l (1,2,3) が表れていることにその片鱗が見られる。この様な複合粒子は、 クォークがグルーオンにより強く結合されて生成される。 素粒子の理論では、 SU ( 3) c ゲージ対称性が保存する ことがわかっている。ゲージ変換 U ( x ) は、 ì æ 8 (n) (n) ö ¢ x , = x , Ü = exp q t U x q t U x ( ) ( ) ( ) ï ( ) ç i åq ( x ) L ÷ ï è n =1 ø í 3 3 † † ïg L ( n )G¢( n )m = U ( x ) gc å T ( n )G ( n )mU ( x ) - iU ( x ) ¶ mU ( x ) ïî c å n =1 n =1 ここで、3×3 行列の 8 個の L (1,2,,8) は、 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 (2.97) 21/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 L (n) = l (n ) 2 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) ( n = 1, 2,,8) (2.98) である。この場合も、最初、質量 0 のクォーク・グルーオンであり、質量を持つクォークが 表れても、 SU ( 3) c が保存するので、グルーオンは質量 0 のままである ことが証明されている。対応するラグランジアン密度は、(2.88)に倣って 3´3行列 æ qR ( x ) ö æ ö 8 ¶ ç ÷ m n n ( ) ( ) L ( x ) = q ( x )å g m i ç + igc å L G ( x ) ÷q ( x ) Ü q ( x ) = ç qG ( x ) ÷ ç ¶xm ÷ m =0 n =1 ç q ( x) ÷ è ø è B ø 3 (2.99) で与えられる。 SU ( 3) が SU ( 2 ) を含む事、数学の記号では SU ( 3) É SU ( 2 ) SU ( 2 ) は SU ( 3) の部分群である と表わす、に注意すると、2×2 行列として æ qR ( x ) üï ö ç ý SU ( 2 ) ÷ q ( x ) = ç qG ( x ) ïþ ÷ ÷ ç è qB ( x ) ø (2.100) に着目すると、最初の 3 個のとして、(2.1)を t (1,2,3) と表わして æ (1,2,3) 0 ö (1,2,3) ç t ÷ Ü t (1) = æ 0 1 ö , t (2 ) = æ 0 -i ö , t ( 3) = æ 1 0 ö = l 0 ç 1 0÷ çi 0 ÷ ç 0 -1 ÷ ç ÷ è ø è ø è ø ç 0 0 0÷ è ø とすることができる。同様に、2×2 行列として æ qR ( x ) ö ç ÷ q ( x ) = ç qG ( x ) üï ÷ ý SU ( 2 ) ÷ ç è qB ( x ) ïþ ø (2.101) (2.102) に着目すると、次の 2 個のとして、 æ0 0 0ö æ 0 0 0ö (4) ç ÷ ( 5) ç ÷ l = ç0 = 0 (1) ÷ , l (2) ÷ ç ç0 t ÷ ç0 t ÷ è ø è ø (2.103) とすることができる。更に、2×2 行列として æ qR ( x ) ö ¬ ü ç ÷ ï q ( x ) = ç qG ( x ) ÷ ý SU ( 2 ) ç q ( x) ÷ ï è B ø ¬þ (2.104) に着目すると、次の 2 個のとして、 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 22/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 l (6) æ =ç ç ç è ö æ ÷ , l (7) = ç ÷ ç ÷ ç ø è 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) ö ÷ ÷ ÷ ø (2.105) とすることができる(【問題27】(2.105)の空白を埋めて行列を完成させよ)。但し、(2.102)や (2.104)の SU ( 2 ) に表れるはずの対角化成分: æ qR ( x ) ö æ 0 0 0ö æ 0 0 0 ö ç ÷ ç ÷ ç q ( x ) = ç qG ( x ) üï 0 ÷÷ ÷ Þ ç0 ( 3) ÷ = ç 0 1 ç q x ý SU ( 2 ) ÷ ç 0 t ÷ ç 0 0 -1÷ ø è ø è B ( ) ïþ ø è (2.106) æ qR ( x ) ö ¬ ü æ -1 0 0 ö ç ÷ ï q ( x ) = ç qG ( x ) ÷ ý SU ( 2 ) Þ ç 0 0 0 ÷ ç ÷ ç 0 0 1÷ ç q ( x ) ÷ ïþ è ø ¬ ø è B (2.107) は、採用できない(【問題28】(2.107)が採用できない理由を述べよ。 【第 1 章:SU(N)群】(1.51) を用いる)。対角化成分は、全部で 3 個あるが、2 個分が単位行列と l (3) であり、3 番目を l (8) とすると、 l (8) は l ( 8) æ -1 0 0 ö 1 ç = 0 -1 0 ÷ ç ÷ 3ç ÷ 0 0 2 è ø (2.108) と表わせる(【問題29】(2.108)を、【第 1 章:SU(N)群】を参照して導け)。 標準模型は、対称性として SU ( 2 ) L ´ U (1)Y と SU ( 3) c を含み、これらをまとめて SU ( 3) c ´ SU ( 2 ) L ´ U (1)Y ゲージ模型 という。その物理量は、 ゲージ対称性 U (1) e 物理量 Yö æ 3 eQe ç = T ( ) + ÷ 2ø è uL , c L , t L uR , cR , t R d L , sL , bL 2 e 3 1 - e 3 SU ( 2) L ´ U (1)Y SU ( 3) c T (3) Y 3つ子? 1人? 1 2 1 3 0 4 3 - 1 2 1 3 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 3 23/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) 2 3 d R , sR , bR 0 - n eL ,n m L ,n t L 0 1 2 -1 使用しない 0 0 n eR ,n m R ,n t R eL , mL ,t L - -e eR , m R ,t R 1 2 1 -1 -2 0 である。 Ⅶ.Z ボゾン SU ( 2 ) L ´ U (1)Y ゲージ模型の正しさは、光子以外に新たに予言された Z ボゾンとレプトン との相互作用の大きさが、SU ( 2 ) L ´ U (1)Y ゲージ模型の予言通りであったことによる。Z ボゾ ( ) 3 ンは、(2.55)の g 2 + g¢2 T ( ) - sin 2 qW Qe Z m で与えられるように ( g2 + g¢2 T (3) - sin 2 qW Qe ) (2.109) で相互作用の大きさが決まる。特に、 T ( ) - sin 2 qW Qe の値を表にまとめれば 3 T ( 3) - sin 2 qW Qe uL , c L , t L 1 2 2 - sin qW 2 3 uR , cR , t R 2 - sin 2 qW 3 d L , sL , bL 1 1 - + sin 2 qW 2 3 1 2 sin qW 3 d R , sR , bR n eL ,n m L ,n t L - 1 2 n eR ,n m R ,n t R 使用しない eL , mL ,t L - 1 + sin 2 qW 2 Yö æ 3 Qe ç = T ( ) + ÷ 2ø è 2 3 - 1 3 0 -1 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 T (3) Y 1 2 1 3 0 4 3 - 1 2 1 3 2 3 0 - 1 2 -1 0 0 - 1 2 -1 24/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 eR , m R ,t R 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) sin 2 qW 0 -2 である(【問題30】それぞれのクォーク・レプトンについて、 T ( ) - sin 2 qW Qe の値を計算せ 3 よ)。添え字 L の素粒子(y L )と添え字 R(y R )の素粒子にたいして、y R は T (3) = 0 なので、 ( 3) 2 ïì f L = T - sin qW Qe y L í 2 ïî f R = - sin qW Qe y R (2.110) である。実験の観測値として、和と差をとった ( 3) 2 ïì fV = f L + f R = T - 2sin qW Qe í ( 3) ïî f A = f L - f R = T (2.111) を調べると良い。(2.111)を計算するのに必要になる混合角 sin 2 qW の値も実験で観測され、 理論計算から のデータフィット による予言値 測定値 ( 2013夏 ) mH = 125.6 ± 0.3 GeV ac (1999 年時のデータ:ヒッグス粒子未発見時) eff sin 2θW = 0.2297 ± 0.0010 (2013 年時のデータ:ヒッグス粒子発見以降) としてまとめられ、どちらからも、おおよそ sin 2 qW = 0.23 (2.112) 程度である。この値を用いると、電子などに対して 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】 25/25 平成 29 年 3 月 25 日午前 11 時 8 分 第2章:SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y 模型(学部 4 年次向) ìï fV = T ( 3) - 2sin 2 qW Qe = -0.04 í ( 3) ïî f A = T = -0.5 (2.113) と予言できる(【問題31】(2.113)の値を計算せよ)。実験では と観測されていて、 fV , A の値として ì fV ( = gˆ v ) = -0.0359 ± 0.0018 ï í ïî f A ( = gˆ a ) = -0.50093 ± 0.00082 (2.114) である。(2.113)は、ほぼ実験値を予言していることがわがる。 SU ( 2 ) L ´ U (1)Y ゲージ模型が素 粒子の電弱相互作用を正しく記述する理論を与えることの傍証の 1 つになった。 【安江正樹@東海大学理学部物理学科】