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第一回植樹祭 タスマニア州政府では現在の森林環境が妥当なもので
第一回植樹祭 タスマニア州政府では現在の森林環境が妥当なものであるかについてたえず見直しを行っています。 以前は天然林を伐採したあとプランテーションに転換をはかっていたが、2007 年に全面的に禁止して、 林業公社が中心になって、現状が環境の配慮が十分であるか、そして「タスマニアの森林を持続可能な 形で管理しつつ、人々の生活のために経済的に利用し、かつ次の世代のために残したい」との目標に向 かって行動している。依頼を受けて日本の国際生態学センターが植生調査を行い、土地本来の木は南極 ブナであり、現在のユーカリ二次林は山火事や人間の使用した火による撹乱の結果であることが判明し ている。天然林は天然に近い林にもどすという方針のもとに今回の共同での植樹祭になったのです。 植樹を行った場所はタスマニア南部の南西部山岳国立公園の緩衝地域の森の中で 8 区分に分けて行 われた。ボランテアで日本から訪れた 20 名弱と林業公社の作業員と総勢 40 名強で半日かけて作業した。 (写真 39)植樹祭のオリエンテーション。 作業をする前に植樹の方法に関するオリエンテー ションを行ってから、場所が 8 区分に分かれている ので、両国混合の斑編成をする。皆同じような作業 ベストとヘルメットを被っているが、これはタスマ ニア側が用意してくれたものだ。さすがにオースト ラリアは先進国である。安全作業の配慮がなされて いる。 (写真 40 右)植樹する場所。 植樹する場所は予め伐採されている。倒された 木の幹は腐って肥料になるのでそのままにして ある。丸太の合間に穴を掘って苗を植える。土壌 は熱帯雨林と違って湿っていて腐葉土になって いる。散水の必要はない。ただこの地で植樹する のに不可欠なことが別にあった。 (写真 41 左)ノトファガスの苗木。 植樹するのは今では少なくなってしまった南極ぶ なで、これは予め林業公社が別な場所で種から発芽 させてある。 苗と一緒に後ろの木杭も運んでいく。この木杭を 何に使うと思っていたら、植えた苗の周りに木杭を 三角状に立ててフイルムを張る。野生動物に苗木を 食べられないように防ぐのだそうだ。フイルムは生 分解性のプラスチックフイルム、数年で分解して土になるものを使用している。根がしっかり張って、 或程度の高さになるまで、植樹の時にはこうやって常に保護しているらしい。野生の草食動物の多いオ ーストラリア独特の方法であった。 (写真 42,43)植樹後の状態。私の担当したのが第 6 区であった。 平地でないので、作業は大変だったが、現地の作業員は林業の専門家でしかも若手だったので、お互 いに語りあいながらの和気藹々の作業だった。その点英語圏で片言でも通じるのは有難い。 ヒューオン川の流域 西部の国立公園の渓谷を通過したヒューオン川はホバート近郊で海に出るが、タスマニアの中でもそ んなに長い流れではない。しかし、この流域は豊かな果物王国になっている。特にりんごはタスマニア で収穫される半分がこの地域産であり、アプリコット、チェリー、西洋梨等の農園が有るし、きのこや 魚も獲れるし、ワイン農園もある。さらに河口の汽水域では牡蠣の養殖も行われている。まさにタスマ ニアの中では豊かな地域と言われている地域である。 我々はヒューオンバレーからの帰りに川沿いを走り、幾つかの果樹園を見学し、ブドー園では夕食を 兼ねたワインパーテイを開いて貰った。 (写真 44)川沿いに広がるりんご園。 りんご園は丁度収穫時期で選果場を見学した。紅 玉である。日本では高級種が栽培されて、あまりこ のいかにもりんごらしい紅玉を畑で見るのは難しく なっているが、もぎたてをご馳走になると美味であ る。このりんごは日本に輸出され、イオングループ で販売されているのだそうだ。 近くにさくらんぼ農園もある。収穫時期は過ぎ ていたが、まだたわわに残された果実があった。 (写真 45)さくらんぼ農園。 このさくらんぼも日本に輸出されている。 オーストラリアというとまず牛肉と思っていた が、それだけでなく、新聞紙の原料パルプや果物、 それに養殖の牡蠣が輸入されている。タスマニア は遠い場所と考えていたが、日本との関係が以外 にあることを知りました。 (写真 46)中流のヒューオン川。 ヒューオンも中流まで降りて、ホバートに 近づくと川幅が広くなる。中州もあるし、深 さはそれ程でもないだろう。この山と水と緑 の風景はホバートに生活している人たちに は人気のレクレーション地域である様だ。 英国人は自然好きで、田園生活に憧れを抱 いている人が多い。ランチパーテイを催して くれたぶどう園もそんな人達の別荘であっ た。 ぶどう園のランチパーテイ: ヒューオン川沿いにはホバート等の都市で生活している人達がセカンドライフとして農園を営んで いるケースも多いようだ。このぶどう園もその一つであるらしい。ぶどう畑の規模は大きくないが、広 い庭を持ったコッテージからの見晴らしは素晴らしい。自分の栽培したぶどうでワインを醸造し、ベラ ンダで飲みながら大自然を満喫する。いかにも英国人が好む田園ライフがそこには見られた。 (写真 47 右)ぶどう園。 (写真 48 左)ぶどう畑。 ぶどう園の入り口を入ると右手にぶどう畑が川沿いまで広がっていた。ぶどうは日本で良く見る棚作り でなく、ヨーロッパで見る木立である。この方が採取しやすい。畝の両側に必ずバラの花が植えてある。 聞くと、これはバラの匂いで害虫を寄せない為とい うことだ。 (写真 49)コッテージ・ベランダでのパーテイ。 ベランダが会場になっている。ヒューオン川がす ぐ側を流れる。右にいるのがぶどう園のオーナーで 盛んにワインを勧めてくれる。飲み放題だ。 別な場所に軽食が用意されていた。焼肉、野菜サ ラダにサンドイッチとオーストラリアでは馴染みの つまみが並んでいる。その中に殻付の「生牡蠣」が あった。このヒューオン川の河口付近の汽水域では牡蠣の養殖が行われていて、森林のミネラルを多く 含んだヒューオン川のきれいな水が牡蠣の養殖に適し、美味しい、且つ生食出来る牡蠣として日本にも 輸出されているということだ。今回は林業局の要請で州政府の水産課の女性が日本人への宣伝試供品と していっぱい持ってきてくれていた。 (写真 50 左)ベランダから見た庭とヒューオン川の 上流方向。 (写真 51 右)ベランダから見た下流方向。 ワインの味はまだ若いが香りも良く飲みやすい。何よりもぶどうを栽培し、自ら醸造している手造り の味がする。瓶詰めされてヒューオン川の景色を背景にしたラベルまで貼っている。オーナーに聞くと 自分用以外に地元の店で販売しているらしい。我々もこれからのホテルでの寝酒用に何本か分けてもら った。 植樹作業後のお疲れ様パーテイだが、美味しいワインに生牡蛎を賞味しながら雄大な景色を愛でる。 一汗かいた疲れもとび会話が弾む。粋なはからいをしたものだと感心する。 (写真 52)パーテイの記念写真。 日本から植樹祭に参加した仲間達である。関東地方 だけでない。東北や関西といった遠方からの参加者も いる。中央が植樹の指導をされている国際生態学セン ター長であり、後方左端が私で、右端のひときわ高い 男が案内役の林業局広報部長のアンドリュー。 この辺には都会生活をしている人達の別荘が 多くあるらしい。アンドリューがオーナーと親 しげに話している所をみると、ぶどう園のオー ナーとは旧知の間柄らしい。定年で今ではこのコッテージに住み着いているということだ。 アンドリューに定年したらどうする、と聞いてみた。そうしたら、ヒューオン川沿いに小屋を作って カヌーを買って、毎日釣り三昧だ、との回答がかえってきた。 話が変わるがこのヒューオン川沿いにフランクリンという小さな町があって、そこには木造船の学校 があるそうだ。入学すると木材を切断するところから初めて、板材にし、組み立てて一隻の船にするま で指導されながら作り上げる。生徒が自分の船を一から作り完成して卒業となるユニークな学校で、昔、 ヒューオンパインで作っていた技術を伝承するための施設ということだ。案外、人気があるらしい。 自ら作った船で、釣りをする。自ら栽培したぶどうでワインを作る。いずれも豊かな田園ライフであ る。羨ましいというのが一同の印象であった。