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8:ワインの醸造
ワインの醸造 (1)除梗破砕・圧搾搾汁 収穫してきたぶどうは、病果、腐敗果を除いて、除梗破砕機に投入します。 病果や腐敗果が入るとカビの酸化酵素や有害な細菌や野生酵母によって品質に悪い影響を 及ぼすので、あらかじめ取り除くことが好ましいのです。 ぶどうの軸の部分(果梗:かこう)はえぐみやいやな味の原因となるため、取り除きま す。ただし赤ワインではタンニンの量が増え、ワインの寿命が伸びることがあるため、果梗 を(一部)取り除かない場合もあります。 最近のワイン工場では除梗と破砕を同時に行う除梗破砕機を使用しています。これらの機 械は酸や亜硫酸におかされないステンレス製等を使用し、鉄や銅イオンの混入を防止してい ます。(鉄、銅イオンの混入は後でワインの混濁:金属混濁を生じます。) 回転棒で果粒を叩き落とされた果梗は円筒型のロータリースクリーンの端から排除され、 果粒はスクリーンを通り下部のローラーの部分で、果皮が破れる程度に(丁度ゴムまりがパ ンクした位に)つぶされます。中の種子は果梗と同じような作用があるため、つぶされない ようにします。(この工程ひとつを取り上げても、果汁の品質と収率に影響を与える作業操 作が続きます。) 皮を破られた果実と果汁はマストと呼ばれ、白ワインを造る場合は、搾汁機に移します。 搾汁機では、フリーランジュース(自然流下液、又は一番果汁)を採った後、加圧圧搾して プレスジュース(圧搾果汁)を採ります。 フリーランジュースは糖度が高いため高級ワイン醸造用に使われます。 赤ワインを造る場合は、除梗破砕後に果皮・種子ごと発酵に移されます。 1キログラムのぶどうから搾汁されるジュースの量は 600∼800mlです。 (2)発 酵 ぶどう果には天然酵母が付着していて、これで発酵させる伝統的な方法もありますが、発 酵が充分に進まないことや、望ましくない臭いが生じることがありますので、培養酵母を加 えて発酵させる場合がほとんどです。 酒母の添加 果汁に培養酵母を加えたものを酒母といいます。健全なワインの発酵をうながし、酒質の 均一化を計るには、純粋に育成した酒母を発酵のスタートに際して、多量に添加するのが望 まれます。 (酒母の製法、使用時期、使用量、略) 最近はワイン醸造用の乾燥酵母が市販され、種類も多く、保存等簡便であるがそれぞれ使 用にあたっては注意が必要です。(日本では酒税法により酒類の製造には免許が必要で一般 のご家庭では作れませんのでご注意ください。) アルコール発酵 C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2 + 25キロカロリー ブドウ糖 → エチルアルコール 炭酸ガス 白ワインは10℃∼15℃、赤ワインは25℃程度で1週間∼2週間で発酵させます。 発酵によってぶどう糖はアルコールと炭酸ガスになり、どの程度の糖を発酵させないで残す かによってワインの甘口、辛口が決まります。 酵母は急速に極低温に冷やしたり、高濃度のアルコール分を加えると活動を止めたり死ん でしまうので、望みの残留糖度にして発酵を止めます。(酵母を遠心分離したり濾過して、 発酵液から分離して止めることもあります。) 赤ワインの色は原料の黒ぶどうの果皮から付きます。 赤ワインでは除梗破砕後、果汁は果皮・種子ごと発酵させるので、果皮に含まれる色素や 種子にあるタンニンが、ワインに溶け出してきます。 この果皮や種子と一緒に発酵させる(かもし発酵)期間を調整することによって、色の濃 淡の度合い、渋味の程度が異なってきます。 望みの段階で、ワインは発酵タンクから移され、残った果皮と果肉は圧搾機にかけられ液 体がしぼられます。(これが主発酵の完了した、若い赤ワインになります。) その後、後発酵を行います。この間にぶどうからのリンゴ酸がワイン液中の乳酸菌の働き により、まろやかな乳酸と炭酸ガスに分解する、マロラクティック発酵が起こり、若い赤ワ インにまろやかな香味が増します。 ロゼワインは赤ワインと同様にぶどうの皮も果肉も種子も一緒に発酵させますが、発酵液 が適度な色になったところで、皮と種子を取り除き、さらに発酵を続けます。 (仕込み)発酵時に適量の亜硫酸を添加します。亜硫酸はぶどう果汁中の有害な微生物の 繁殖を抑制するほか、果汁中の色素の固定、抽出に有効で、白ワインの褐変防止、赤ワイン の色の安定の効果もあり、熟成を順調に調整します。またワインの成分にも影響してグリセ リンの生成を助け、更には容器、器具類の殺菌にも用いられ、他の食品添加物では代用出来 ない特徴を備えた食品添加物です。 亜硫酸の使用量は食品衛生法により、ワイン1kg中350mg(350ppm)以上残 留しないように使用することに定められています。 亜硫酸は、酵母の種類によっても生成されることのあるものであり、ワイン中の亜硫酸は、 胃の中の酸化酵素によって、酸化されて、無害の物質になることが最近の研究であきらかに なっています。 最近、無添加を表明して販売されるワインがありますが、これは亜硫酸無添加を意味し、 既に述べた通り、発酵で酵母の種類によっては製造中に自然に生成されることは考えに入れ ていません。無添加を守り維持していくためには、設備面、抗酸化処理技術、衛生管理、流 通管理、保存冷温管理、等の苦労が多く、研究が続けられています。 工程全体を、低温仕込、低温発酵、低温貯蔵等、低温コントロールすることで、亜硫酸の 添加量を抑えて製造しているところもあります。 (3)オリ引き・熟成 発酵の終了したワインを透明にするにはオリ引きする必要があります。主発酵の終わり頃 になると、酵母や酒石、蛋白などが容器の底に沈殿(澱・オリ)し、ワインは自然に清澄し てくるので、上澄みを別のタンクに移します。沈殿せずに、液中に浮遊している微粒子など は、卵白ゼラチン、あるいはベントナイトと呼ばれる粘土等を用いて、吸収沈殿させます。 さらにその後、フィルターや遠心分離機によって、ワインを清澄させます。 フランスのムスカデ地方や南フランスの“砂地のワイン”では、ワインをオリと一緒に半 年程度置いた後、上澄みだけを瓶詰めする“シュール・リ 造り”が行われています。 ワインがなめらかで調和のとれた風味と酒質となるには熟成が必要です。貯蔵することに よって、果実に由来する成分と、発酵によって生じたアルコール類をはじめ、酸類、アミノ 酸等が酸化還元、重合作用によって、複雑な化学変化を起こし、トゲトゲした荒い香味がな くなって、まろやかで芳醇な香味に発展します。 大部分の白ワインは新鮮でフルーティーな風味を最大限引き出すため、ステンレスやグラ スライニングのタンクで低温貯蔵によって、比較的短期熟成され、高級赤ワインはブーケを つけるためオーク樽で比較的長期熟成させるのが一般的です。 (4)ブレンド ワインはぶどうの品種。生育した土地・気候、収穫された年度、製法、熟成の程度で、ひ とつとして,同じものがないといって良いほど多種多様です。これを一つのワインに仕上げる ことは、経験と技術、それにセンスを必要とする仕事です。 ワインには、ぶどう園、種類、地域、年度など種類が多いだけに、無限といっても過言で ない組合わせかたがあります。これを、ロットによるバラツキをできるだけ少なくするとか、 新しいキャラクターを作り出すとか、目的に合わせた商品に仕上げていくのが、このブレン ドです。 (5)低温処理・濾過・瓶詰め 酒石の結晶を除去したり品質を安定するために、極低温(−3℃∼−5℃)で数日間、ワ インを貯蔵します。瓶詰め前に最後の濾過を行いますが、残存していた酵母や不純物を取り 除いて安定した品質の、光沢の良いワインにしあげます。 瓶詰め後、コルク栓で密閉します。コルクは組織の細胞が細緻で、弾力性があり、気体や 液体を逃がさないため理想的な栓の役割を果たします。 コルクは南欧から北アフリカに分布するコルク・オークの樹皮から作られます。 打栓されたワインはセラーで横置きにして瓶熟が行われます。瓶熟中に酸とアルコールに よるエステルの形成、タンニンの重合などが起こり、まろやかな香味に発展します。 貯蔵期間は2ヶ月程度から、長いものでは1∼3年に及びます。 ワインの製造工程 原 料 ぶ ど う 圧 搾 除 梗 搾 汁 破 醗 白 砕 純粋培養酵母 酵 圧 搾 後 オ リ 搾 醗 汁 酵 (マロラクティック醗酵) 引 樽・タ ン ク 熟 成 ブ レ ン ド 低 温 処 理 洗浄検査 濾 過 瓶 詰 瓶 打 栓 コルク 瓶 熟 検査 キャ ップ シール 札 貼 箱 詰 白 ワ イ ン 赤ロ ワゼ イワ ンイ ン 赤・ロゼ ラベル