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これからの社会に求められる 「グローカル人材」とは?

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これからの社会に求められる 「グローカル人材」とは?
語学
や国
地域 際的視野
で
が
生かさ どのように
れるの
か?
進路指導に役立つ最新DATA
これからの社会に求められる
「グローカル人材」
とは?
あらゆる分野で進んでいるグローバル化の流れは、
地域社会と世界をも急速に結びつけつつある。
そんな今、
「グローバル」と
「ローカル」を合わせた造語である
「グローカル」が時代のキーワードとして注目されている。
これからの地域で活躍する「グローカル人材」のイメージと、
その育成に繋がる大学の取り組みを探っていこう。
まとめ/伊藤敬太郎
変化の背景にあるキーワードは「グローバル化」だ。
就きたい職業 公務員、教師、看護師 ……
高校生に「地域志向」
図2に示した通り、
国内の外国人人口はこの15年で50万人
高校生の間で、
将来就きたい職業として公務員人気が上昇
同時に、地方自治体が海外に目を向けた施策に乗り出す例
している。図1を見てほしい。2011年の調査では、
高校生の10.0
も増加。海外都市との姉妹都市提携数が年々増えている(図
%が「公務員(国家・地方)」になりたいと回答。2009年との比
4)
こともこうした動きを象徴している。
較で、
2.1ポイント上昇している。
政策研究大学院大学で地方公務員などを対象とした地域
先行き不透明な時代背景を意識して、公務員の安定性に
政策プログラムのディレクターを務める横道清孝教授は、地方
魅力を感じる高校生が増えているとも分析できるが、2∼4位
自治体の現状と今後を次のように解説する。
増加。図3から推測できるように国籍も多様化している。
(保育士・幼稚園教諭、
教師、
看護師)
の職種も併せて見ると、
もう一つ「地域志向」
という傾向を読み取ることができる。
「これからの地域振興を考える場合、農水産物などを売るな
ら、縮小している国内市場だけでなく、海外に市場を拡大する
その一方で、地方公務員をはじめとする地域社会で求めら
必要があります。また、
企業誘致にしても、
今までは国内の自治
れる人材像は、
かつてのイメージとは変わって来つつある。
その
体間での競争でしたが、
今は海外との競争。観光も同様に、
海
図1 高校生が就きたい職業
2007年 2009年 2011年
(%)
建築設計士
トリマー・動物関連
ファッションデザイナー・
スタイリスト
整備士
ジャーナリスト・
編集者・ライター
心理カウンセラー
管理栄養士・栄養士
美容師・理容師
会社員
グラフィックデザイナー・
CGデザイナー
薬剤師
ゲーム関係
社会福祉士・
介護福祉士・福祉関係
理学療法士・
作業療法士
事務
製造・加工・組立などの
モノづくり
調理師・シェフ・
パティシエ・フード関連
医師・歯科医師・獣医
俳優・タレント・
ミュージシャン・声優
技術者・研究者
看護師
教師
保育士・幼稚園教諭
公務員
︵国家・地方︶
2011年全体 10.0 6.5 6.4 5.8 4.3 3.9 3.9 3.6 3.3 3.0 2.7 2.5 2.4 2.4 1.7 1.6 1.6 1.6 1.6 1.4 1.4 1.4 1.3 1.3
2009年全体
7.9 5.0 7.2 5.8 3.7 1.3 3.9 3.6 8.2 1.9 2.3 1.8 2.9 2.1 1.3 1.7 2.6 2.0 0.6 0.8 3.1 2.0 0.7 2.2
2007年全体
7.9 5.1 6.5 6.7 4.2 3.0 1.7 4.4 5.7 3.2 1.2 3.4 1.7 4.0 1.8 1.2 1.8 0.8 1.2 1.7 2.0 1.9 1.3 0.9
■各年で最も高い ■各年で2∼5番目に高い
出典:社団法人全国高等学校PTA連合会・株式会社リクルート
「第5回 高校生と保護者の進路に関する意識調査 2011年」
2
No.41 別冊付録
図2 国内の外国人人口の推移
図3 国籍別外国人人口の割合の推移
韓国、朝鮮 中国 アメリカ
ブラジル フィリピン ペルー その他
(千人)
平成7年
平成12年
平成17年
平成22年
平成7年
平成12年
平成17年
平成22年
(%)
図2、3 出典:総務省「平成22年国勢調査 人口等基本集計結果」
図4 海外との姉妹都市提携数(全地方公共団体)の推移
(提携数)
21
平成 年度
20
平成 年度
19
平成 年度
18
平成 年度
17
平成 年度
16
平成 年度
15
平成 年度
14
平成 年度
13
平成 年度
12
平成 年度
11
平成 年度
10
平成 年度
9
平成 年度
8
平成 年度
7
平成 年度
6
平成 年度
5
平成 年度
4
平成 年度
3
平成 年度
平成 年度
平成 年度
平成元年度
2
22
出典:財団法人自治体国際化協会
(CLAIR)
HP
外からの観光客をいかに増やすかが大きな課題になっていま
「語学力に関していえば、
県庁や大きな市であれば英語が使
す。海外事務所を拠点に、
地元のプロモーションに力を入れる
える人材が3割程度は必要になるでしょう。各自治体の戦略に
動きなども今後さらに活発化していくはずです」
応じて、
その他の言語が使える人材も求められます。ただし、
本
質的に要求されるのは、
コミュニケーション能力。日本流のあう
地域行政のグローバル化に伴う
「グローカル人材」へのニーズ
んの呼吸は世界では通用しませんから、海外留学経験などを
通して培った『他者を理解する力』
『 伝える力』
『 交渉力』
など
が大きな意味をもつようになります」
(横道教授)
経済政策だけではない。急激な外国人の増加が、
地域社会
さらに、
横道教授は「ローカルを知ること」の重要性も説く。自
における摩擦を生み出すケースも出てきており、
こうした諸問題
分が暮らす地域、あるいは日本や世界各地のさまざまな地域
を解決し、新しい地域社会を作り出していくための自治体の役
が、それぞれにどんな特色をもち、
どんな課題を抱えているかを
割もクローズアップされていると横道教授は指摘する。
実際に見て理解すること。前述の語学力やコミュニケーション
このような変化の中で、地方自治体では、今、
グローバルにも
能力が「問題を解決するためのツールや能力」だとすると、地
ローカルにも通じる「グローカル人材」が必要とされるようになっ
域を知ることは「問題意識」
を深めていくための原点となる。
ている。
では、
そこで求められる能力とは何だろうか?
なお、公務員に関しては、経済学、法律学、政治学などベー
No.41 別冊付録
3
図5 大学の英語教育に関する取り組み(平成21年度)
図6 大学の外国語教育の実施状況(平成21年度)
国立 公立 私立 ※平成21年度の全大学数は731
会話中心、速読中心など
目的別クラス編成
国立 公立 私立 ※平成21年度の全大学数は731
英語
フランス語
能力別クラス編成
ドイツ語
少人数クラス
(1クラス20人以下)
の開設
スペイン語
LL、
ビデオ等の活用
中国語
ICTの活用
ロシア語
ラテン語
ネイティブ・スピーカーの活用
朝鮮語
(韓国語)
TOEIC、
英検等に必要な能力の
養成を目的とした科目の開設
アラビア語
TOEIC、
英検等の
学外試験結果の単位認定
イタリア語
(大学)
スとなる学問をしっかり学んでおくことも重要だと横道教授。そ
(大学)
図7 英語による授業を実施している大学(平成21年度)
れらの知識が新しい仕組みを提案するための土台になると同
時に、
グローバルなコミュニケーションで必須の論理的な思考
【内訳】
国立=47大学
公立=24大学
私立=123大学
力を養うトレーニングにもなるためだ。
グローカル人材を目指すうえで
大学選びに必要な視点とは?
実施
している
“Think Globally , Act Locally”
──。
これを実践できるグ
実施
していない
ローカル人材へのニーズは何も地方公務員だけに限らない。
地域住民の多国籍化が進めば、看護師や教師にも必要とな
る。企業の海外進出が加速する中、
グローバルな視野から各
地域に対応した戦略を立案できる人材は今や引く手あまただ。
では、高校生が将来グローカル人材となるためにはどのよう
な大学を選ぶべきなのだろうか? 基本となる語学に関しては、
実践力強化や効率的学習につながる幅広いアプローチをして
いるかどうか(図5)、
トリリンガルを目指すのであれば、多言語
の教育に対応しているか(図6)
などがポイントになる。また、
応
用力を磨く意味で、
語学科目以外でも英語による授業を行って
図8 国外大学等と交流協定に基づく
ダブル・ディグリー制度を
導入している大学(平成21年度)
いるかどうか(図7)
なども重要な項目だ。
国立 公立 私立 ※平成21年度の全大学数は731
さらに、
グローカル人材として成長するには実地体験がもつ
意味も大きい。海外留学制度や海外研修の有無なども大きな
ポイントだが、
留学先の学位も取得できるダブル・ディグリー制度
平成20年度
(図8)
や海外大学との単位互換制度を設けて留学環境を整
備している大学も少しずつ増加している。このほかでは、留学
平成21年度
生数やその国籍の多様性などにも注目したい。
もちろん、
何より重要なのは学生自身が自ら問題意識を育み
ながら、能動的に学ぶ姿勢だ。その気持ちを後押ししてくれる
大学かどうかも大学選びの重要な視点になるだろう。
4
No.41 別冊付録
(大学)
図5∼8 出典:文部科学省「大学における教育内容等の改革状況について(平成23年)」
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