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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
Title Author(s) Citation Issue Date URL 地域通貨実践と課題に関する一考察--地域通貨視察会の 成果から 倉知, 典弘; 安川, 由貴子 京都大学生涯教育学・図書館情報学研究 (2008), 7: 155176 2008-03 http://hdl.handle.net/2433/66087 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 倉知 。安川 : 地域通貨実践 と課題 に関す る一考察 地域通貨実践 と課題 に関す る一考察 一 倉 地域通貨視察会の成果か ら - 知 典 弘 ◎安 川 由貴子 Co ns i de r a t i o no nPr a c t i c e sa ndI s s ue sofLoc alCur r e nc y - Fr o m Fi n d i ng so fl t sRe s e a r c hTo ut ,- No r i hi r oKURACHI ・Yuki koYASUKAWA 1 地域通貨視察会の概要 0日 ( 金) ∼2 2日 地域通貨研究会1 )で は、地域通貨実践の現場視察の目的で、2 00 4年 8月2 ( 冒)にか けて、 「ピーナ ッツ」 (千葉市西千葉)、「 COMO」 (東京都多摩市)、府中市 にある 「カフェスロー」 にて定期的に行われている 「 地域通貨のつ どい」 に参加 し、「ナマケ」 とオ ン ライン上の地域通貨 「 Q」についての話 を伺 った。参加者 は、京都大学大学院教育学研究科教 授の前平泰志、東京農工大学大学院生の開上哲、関西大学大学院文学研究科大学院生の南滞由 香里、京都大学大学院教育学研究科大学院生の倉知典弘、安川由貴子、他、各地域通貨のメン 0 0 4 年 9月2 0日 (月) には、「カマ バーの方 々の ご協力の もと実現す ることがで きた。 また、2 通」 ( 大阪市西成区)の視察を行 った。 この時の参加者 は、前乎教授、大学院生の倉知典弘、 安川由貴子、地域通貨 「 COMO」会員の斉藤美冬民 とその知 り合いの小学生であった。 本報告 は、 これ ら地域通貨実践の訪問記である。各々の地域通貨 ごとに、概要や質疑応答の 内容を反映 させなが らまとめてい く。 それぞれの地域によって地域特有の特徴や課題が存在 し、 それに応 じて多様なシステムが存在 している。最後にそれ らを踏まえて、全体的な考察を行なっ 0 0 4 年以降、 これ らの地域通貨実践 は各々の発展を遂 げていると考え られるが、 てい く。尚、2 0 0 4 年 8月および 9月の時点でのまとめであることを予め 本報告 においては、視察を行なった2 0 0 4 年当時の ものである。 ここにお断 りしておきたい。尚、所属 も2 ( 担当 :安川) 2 「ピーナ ッツ」 ( 千葉県千葉市西千葉) 2 . 1 .調査の概要 地域通貨 「ピーナ ッツ」 は、 日本 における地域通貨の運動 を活性化 させたといわれるNHK 番組 「エ ンデの遺言」 において、 日本の先進事例 と紹介 されたこともあり、地域通貨の運動を 考える上で欠かせない存在 となっている。 そのため、今回の地域通貨実践の訪問にあた り、 ま 株)みん ず最初 に訪れ ることとなった。今回 は、「ピーナ ッツ」の管理運営を担当 している ( なのまち 村山和彦氏を 「ピーナ ッツ」を導入 している 「ゆ りの木商店街」 に訪ね、その話を -1 55- 京都大学 生涯教育学 ⑳図書館情報学研究 vol .7 .2 0 0 8 年 うかが った。 なお、 この ときに ピーナ ッツの電子 ネ ッ トワークシステムの構築 に関わる特定非 営利活動法人 トライワープの方 に案内 として同行 していただいた。 2 . 2 . 「ピーナ ッツ」概要 まず、「ピーナ ッツ」導入 の経緯 を説明す る。「ピーナ ッツ」の試験運用 は、「 千葉県 まちづ 」 が設立 された1 9 9 9 年 2月 に始 ま っている。 この 「ボー ンセ くりセ ンター (ボー ンセ ンター) ンター」は、千葉大学 の教授 を中心 として発足 したまちづ くりに関す る研究会 に端を発す る組 織で、 まちづ くりのためには市民活動が必要であ り、その養成やサポー トが必要であるとい う 。 問題意識か ら生 まれた ものである 「ピーナ ッツ」の導入 の背景 には、村山氏の貢献がある。 都市計画を専門 とす る村 山氏が、 まちづ くりにLETSが有効 であ ると指摘 し、導入 を積極的 に 働 きかけたのである。 しか し、地域通貨がだれにで も開かれている性質を持つ ことか ら、民主 的な合意 で地域通貨が廃止 され るとい うことも考 え られ ること、 また発足 し始 めたNPOで は 地域通貨 の運営がで きないか もしれない とい うことか ら村山民が経営す る、 ( 樵)みんなのま ちに外部無償委託す るとい う形で実施す ることとな った。株式会社が管理運営す る地域通貨 は 非常 に珍 しいが、 このような意思決定過程 などに対す る問題をク リアす るために行われている。 この 「ピーナ ッツ」は、 テ レビによる報道 などを通 じて、社会的に注 目されることになる。 そ れゆえ、試験運用段階を越 えて、本格的に機能 させ るために、当時副代表を務 めていた村 山氏 がLETSシステムが導入 されていたイギ リス 。マ ンチェス ターなどを調査 し、本格的な活動へ 9 9 9 年i O月 には、「ゆ りの木商店街」 への説明が行われたが、当初 はその導入 に と発展 した。1 否定的な考えが大半であ り、2 0 0 0 年 3月の段階で商店街 の役員が導入 を拒否す るものの、 その 商店街で理髪店を営む海保真氏が導入を決 めた。以降、海保氏 の実践を見て、地域通貨 の意義 を実感 したほかの商店主が徐 々に導入を行 ってい った。調査 の段階では、2 0 件が加入 ◎1 4 件が 非加入 とい う状況へ と発展 した。調査当時の会員数 は、 およそ8 0 0 名であるが、 この数 は葉書 が返 って くる数であ り、休会の人数 などはよ く分か っていないよ うである。 。 次 に、「ピーナ ッツ」 の システムについてである 「ピーナ ッツ」は、円への允換がで きない 。 通帳 タイプの地域通貨 であ る 「ピーナ ッツ」導入 当初 は、小切手型 の地域通貨 を用 いていた よ うであるが、途中か らこの通帳型 の地域通貨 を用 いるよ うにな った0 「ピーナ ッツ」 の会員 には個人会員 と法人会員がある。 加入の方法 は、個人 の場合 は特 に資格 などはな く、加入 を希 」 望すれば、通帳の発行手続 きを とることになる。 その際に、「で きること 「して ほしい こと」 の リス トを作成 し提 出す る。 この リス トは 「ピーナ ッツカタログ」 に記載 され る。 法人の場合 は、地域経済の発展 とい う視点か ら千葉県内の事業者 ( 村 山氏 の言葉 を借 りれば、「 千葉県 に 。 法人税 を払 っている事業者 」 )に限定 されている 「ピーナ ッツ」は、葉書 とな ってお り、裏面 が埋 め られたときに、切手 を貼 って、運営事務局 に郵送す ることとな っている。 この台帳を受 0 %減価 して、新 しい地域通貨の台帳を発行す る。 回収 された けた運営事務局 は、 その残高 を1 台帳 は、 その取引が記録 され、地域通貨の流通量 を管理す ることが可能 になる。主な流通範囲 は、「ゆ りの木商店街 」であ るo この商店街で は、様 々な商店が ピーナ ッツの受 け入れを行 っ てお り、代金の一部を ピーナ ッツで支払 うことが可能である。 -1 56- 倉知 ◎安川 : 地域通貨実践 と課題 に関す る一考察 この 「ピーナ ッツ」の主要な目的 は地域経済の振興である。 グローバルなマーケ ッ トが成立 し、国境 を越えて、資本が移勤 し、地域の経済基盤が収奪 されるということが 日常的に起 こっ ている今、地域経済 を支え る資本 の流れを組み立て ることが求 め られている。「ピーナ ッツ」 は、 このよ うな視点の下、新 しいお金の循環の仕組みを構築す るという目的を持 っている。 こ れは、新 たな共存 ◎互助互鮒の仕組みを作 ることとも関係 している。 需要 に基づいた生産を行 い、売れ残 りを作 らないという社会構造への転換を都市計画を通 じて図ることで、グローバル 。 縮小のデザイ ン」 マーケ ッ トに対抗 しようという意図である。 これ らの考え方を、村山氏 は 「 として措写 し、地域通貨 も需要があ って初めて流通す るとい う性質を持っ ものであ り、「 縮小 のデザイ ン」 にマ ッチ したものだ と考えている。 では、「ピーナ ッツ」の導入で、商店街 にどのよ うな効果があったと認識 しているのであろ うか。地域通貨の実践過程 において、様々なイベ ン トを開催することがあるが、 ピーナ ッツは それほど盛んにそのようなイベ ン トを行 っているわけではない。あ くまで地域の人たちを結 び つ けるツール として機能 しているとい う考え方である.「ゆ りの木商店街」で も新 しい住民 と 古 くか らの住民の問には溝が横 たわ ってお り、 こ の清を埋 めることが必要 とされている現状がある が、 このための ツール と して理解 されている。 「ゆ りの木商店街」では、「ピーナ ッツ」の導入を ひとつのきっかけとして、商店街で話 し合いを行 っ たり、有機野菜を販売する 「日曜市」を開催 した り、福祉施設を巻 き込んだ夏祭 りを開催 した りす るよ うにな った。 この ことにみ られ るよ うに、 「ピーナ ッツ」は新 しいっなが りを生み出 してい †ピーナ ッツクラブ会員 の店舗 に張 られてい る ビラ る. 2 . 3 .質疑応答などの記録 このよ うな地域通貨の概要 に関す る説明を受 けた後、村山氏か ら今後の課題などの話を うか が った。 ここでは、その質疑応答の中か ら主要な点をまとめて記 してお く。 まず地域通貨全体の話 として、今後地域通貨 はどのように展開 してい くか ということをたず ねた。村山民 は、過去の事例か らして、地域通貨が大 きくな りす ぎれば国が地域通貨を禁止す るという方向に向か うだろうと指摘 し、その際は地域通貨 と法定通貨の党襖を可能 としている 地域通貨が狙われるのではないか と見通 しを述べた。 また、 この ことと関連 して、地域通貨が 目指す もの として 「 地域循環型社会」 とい うビジョンを改めて提示 した。その際に、 スイスの 地域 事例を紹介 している. スイスは、多国家連合のEUなどに加盟 もしていないが、 これは 「 地域循環型社会」を作 るためには、地域通 循環型社会」 が成立 しているか らだ とみる。 この 「 貨が流通す る社会を作 り、食糧 自給率を高めて、軍事費を削減す ることが必要であろうとして いる。 このような地域通貨の流通す る社会を目指すために、国家 は正 しい地域通貨の システム に支援を しなければな らないとしている。正 しい地域通貨 とは、あ くまで地域通貨が地域の循 -1 57- 京都大学 生涯教育学 ◎図書館情報学研究 vol . 7 .2 0 0 8 年 環 のツール として考察 されているものであ って、国の支援 は システムに対 して行 われ るべ きで あ り、通貨その ものに支援が行われるべ きではないと国家の役割 を述べていた。 次 に、調査当時 には、様 々な地域通貨が存在 していたが、 それ らの地域通貨をどのよ うに見 るかを うかが った。 まず、 エコマネーをっ くっている加藤敏春氏 との対比である。 エコマネー は、実物経済 に使 わない、 ボランティア経済の形成 を目指す ものである。 それに対 して、村 山 氏 は反対 の立場 にたっ とい うことである。 これ は、「ピーナ ッツ」が地域経済 の活性化 とい う ことを一番の目的 においていることと関連がある。 当時先進的な事例 として考え られていた栗 林 の事例 との対比 もうかが った。 この対比か ら、地域通貨 を自治体主導 により導入す ることに 対す る考え方が明 らかにされた。その主要 な問題点 は、補助金 との関わ りである。地域通貨 の 運営が、国や地方公共団体、 あるいは財団か らの運営補助金だ けでまかなわれている現実 に対 して、その補助金漬 けか ら脱す ることが地域通貨 にとって必要であるとい うことが主張 されて いた。 また、地域通貨 を商店街 に導入 して いるとい う点 で は、滋賀県草津市で行 われて い る 「お うみ」 の実践 とも重 なる点があるので、 その点 について もうかが った。 その際 に問題 とな るのは、 どのような職種 を地域通貨の流通圏 とす るか とい う点である。村山氏 は、 タクシーな どの産業 には用 いないとい うことである。 これは、 タクシーはグローバルのマーケ ッ トに非常 に近 い存在であるとい うことによる。 そのため、 もっともグローバル市場 に近 いと考え られ る 保険などは地域通貨 に最 も遠 い もの と して、「ピーナ ッツ」 の流通 の対象 に しないとい うこと である。 これは、地域経済 の基盤が グローバル ◎マーケ ッ トによ り大 きく崩 されているとい う 現状認識 と地域経済を活性化す るためには、 このグローバ ル ・マーケ ッ トに対 して ローカルな 市場 を守 ることが 「ピーナ ッツ」の役割であるとい う認識がある。 また、 ほかの地域通貨 の認 識 と関連 して、他 の地域通貨 との 「 乗 り入れ」 とい うことをどう捉え るか ということも質問 し た。実際、他の地域通貨 を 「ピーナ ッツ」 の活動 を通 じて流通 させ よ うと試みた人 もいたが、 それは村 山氏が拒否 している。村山氏 も、 その 「 乗 り入れ」 を図 った こともあるが断念 してい る。 それは、減価 の利率が異 なるといった システム的な問題 もさることなが ら、機械的に シス テムを同 じに した として も、地域の消費 システムが違 うか らで きないだろうという認識 による。 また、相互の乗 り入れが行われ ることで、地域通貨の相場が立 って しまい、地域通貨 自体が投 機的な性質 を帯 びて しまうことが考え られ るとい う、地域通貨 自体 の存在意義 と矛盾す る性質 を帯 びることが考え られ ることも理 由の一つである。各人が多様 な地域通貨の システムに参加 すればよいのであ って、 システム側が無理 に乗 り入れ る必要 はないとの認識であ った。 地域通貨の管理 は、葉書 による回収 によってなされているが、 この形式だと時間的のずれな どが起 こった り、台帳を紛失 した りとェ ラーが起 こることが予想 され るが、その対応をどうす るか とい う質問を した。 それに対 して、減価 を行 うことに しているので、 たとえ 1 0 0 0 0Pのエ ラーが出た として も、 そのエラーは時間が解決 して くれ るか ら、 それほどこだわる必要がない ので、 そのままに していると言 うことである。 その上で、 そ もそ も地域通貨 は信頼 を担保 に し て成立す るもので もあるので、参加 している会員を信 じて運営 を しているとも述べ られていた。 そ して、今後の見通 しについてである。村山氏 は、千葉県内の人 口の 1%にあたる6 0 万人 の 会員数を流通範囲の目標 に している。 これ は、人 口を母数 にす るとい う都市計画的な発想 右 品も - 1 5 8- 倉知 。安川 : 地域通貨実践 と課題 に関する一考察 よるが、地域経済を都道府県 という単位で捉えていることを明 らかに している。 また、 この流 通圏の拡大 とも関わるが、取引決済をより簡易 にす るために、携帯電話やパ ソコンによる決済 が可能 になるシステムの構築を進めていることも述べ られた。 さらに、地域通貨の システムを 貸 し出す とい う実践 も多 くな っているが、「ピーナ ッツ」 は自由に使 って もらって もよいと考 えているようである。 新 しい会員の獲得 に関 しては、広報を積極的に行 うということは しない との ことであった。 2 . 4.視察を通 じて 「ピーナ ッツ」 については、様々な本 によってその活動がひろ く知 られていたが、その実態 O について、 この調査を通 じて知 ることができた 「ゆ りの木商店街」の多 くが店頭に 「ピーナ ッ ツ」の受 け入れを行 っていることを明示 してお り、かな り広 い範囲で受 け入れ られている様子 がかいまみ られた。ただ、その過程 は平坦ではなか ったことが明確 になった。 また、地域通貨 の先進事例 として捉え られ、広め られたことに対 しては、非常 に困惑 したと率直な感想 を聞 く ことがで きた。地域通貨実践 は、その新 しさゆえに過大に報 じられていたことが現地の実感 と してあることも理解 された。 また、その運営 について も、大 きな示唆を得 ることができたように思われる.「ピーナ ッツ」 の実践 は、ひろい視野を持 った村山氏の一入の力に大 きく依存 していると考え られる.確かに、 海保塵氏のように中心的なメンバーが存在す るの も事実であるが、村山氏が システムの構築 な どに大 きな権限を持 っていることもイ ンタビュー調査の過程で明 らかになったと思われる。 シ ステム構築を民主的に進めることの難 しさを示 しているとも考え られる。 村山民の考え方 には、都市計画 とい う視点が存在 している。 この視点 に対 して、例えば加藤 敏春のような立場の人 は入づ くりとい う観点か ら地域通貨を考察 している。 この両者 は、必ず しも矛盾す るものではないが、大 きな相違点が存在す るはずである。生涯学習 という観点で見 たときに、 この都市計画的な地域通貨の発想 と人づ くり的な地域通貨の発想 は、 どのように発 展 ◎批判が可能であろうか。今後の課題 としてあげておきたい。 3 ( 担当 :倉知) 「 COMO」 ( 東京都多摩市 :多摩ニュータウン) 3. 1 .視察の概要 「 COMO」の視察では、 8月21日 ( 土) に多摩 ニ3 .-タウンの鶴牧商店街を訪れ、「まちづ COMO」 の総会 を傍聴 し、 引 き続 き行 われ た くりカ フェ ◎ドゥ- ドゥ-」 にて行われた 「 「 COMO」パーティに参加 した。 「 COMO」 とは、2 0 0 0 年 にスター トした、多摩 ニュータウンの住民 を中心 に行われている COMO総会」 とは、年 に 1回行なわれる総会で、旧年度の活動報告 地域通貨 の名称である。「 や反省を行いなが ら、新年度の活動計画、予算案の提示、事務局人員の引継 ぎなどが行なわれ COMO」 のメ ンバー全員か ら構成 されている 「 COMO倶楽部」 の事務局である る。総会 は、「 「 COMO運営協議会 ( Te am COMO)」 のメ ンバーが中心 となって行なわれているが、他 のメ 1日の総会の出席者 は約 2 0 名であった。総会の ンバーの総会への参加 も呼びかけている。 8月2 - 159 - 京都大学 生涯教育学 。図書館情報学研究 v o l . 7 .2 0 0 8 年 COMO」 の活動がより活性化するためにはどうすれば 中では、会費 についての議論の他 に、「 COMO」 の目指す ものは何 なのか、「 COMO」 の進 む方向はどこなのか、 といった よいか、「 ことが議論 にな っていた。やはり 「 入」が財産なのであり、 より顔の見える関係 になるように な らないと実際の活用 にはなかなか繋が らないということ、また、その人 自身の 「で きること」 も時の経過 に応 じて更新 されてい くということについての意見 も出された。 その結果、「 今月 の人」5人を決めて、 メー リング リス ト上で各 自が ア ピールす るコ-チ-をスター トさせ るこ とが決定 された。 総会 に引 き続 いて行われた 「 COMOパ ーテ ィ」 は、 メ ンバ ーの対面的な交流 の機会をよ り 多 く作 ってい くために開かれている会である。メンバーは、 日常的にはインターネット上のメー COMOパ ーティ」 は、手料理や交換す リング リス トを通 じての情報交換が中心であるため、「 るものを持 ち寄 って、食を共 に しなが ら相互の親睦を深めるよい機会である。 ここは、市場 に は流通 しないサー ビスや農産物、手作 り品を交換す る 「 定期市」 として も機能 しているo ク リ COMOパ-ティ」 はサー スマス 。ノ ヾ-ティなども企画 されているということである。 同時に、「 COMO」の流通を促進す ることを目的 としている。 ビスの交換を通 して、「 3 . 2 .多摩ニ ュータウンのもつ地域の特徴 と課題2) 多摩 ニュータウンは、東京都心か ら約4 0 k m圏、総面積約3 , 0 0 0 haであり、稲城市、多摩市、 八王子市、町田市の 4つの行政地域 にまたが る日本の最大規模のニ3 . -タウンである.1 9 6 3 年 9 7 1 年か ら第 1 期の入居が開始 され、現在 も建設中である。居住計画人 口 に着工が開始 され、1 0 万人であるが、2 0 0 2 年現在 は約 1 9 . 5 万人である。住宅の供給主体 としては、2 0 0 2 年1 0 月 は約3 現在、東京都 ( 2 3 %) 、都市基盤整備公団 ( 現 独立行政法人都市再生機構) ( 4 4 %) 、東京都 住宅供給公社、民間 となっている。住宅形式 は、集合住宅主体が 9割強となっている。 所有形 0 0 2 年 式 は、2 3月現在、賃貸住宅、分譲住宅がほぼ 1:1である 開発が始 まって4 0 年が経過 し、入居が始 まって2 0 0 4 年で3 1 年が経 っ 。 団塊の世代が一気 に入 。 居 してそのまま住んでいる人が多いため、少子高齢化が進んでいる。子 どもがいれば子 どもが 媒介 となって人 と繋が りが もてたが、子 どもの成長や少子化 によって、 コ ミュニティの繋が り が希薄 になって きたという。 団地の 1階は商店街になっていたが、駅前への大型量販店の進出 によって、商店の シャッターダウン化が進んでいるということである。 3 . 3 . 「COMO」の概要 「 COMO倶楽部」では、多摩 ニェ-タウンが抱え る急速 な少子高齢化や コ ミュニティのつ なが りの希薄化 に対 して、 コ ミュニティの活性化をめざ し、市民がお互いに支えあ うことので きるコ ミュニティサポー トの仕組みとして 「 地域通貨」の実践がすすめ られている。 そ して、 「 COMO」 を使 ったサー ビスの交換を通 じて、地域社会の抱え る様々な課題の自主的な解決 に COMO」 の 目的 は、 「お互 い様 の助 け合 い」 の精神 で、 結 びっ けて い こ うと して い る。 「 「 COMO」を媒介 とした出会いや知恵や労力の交換による助 け合いによって、より元気なコ ミュ ニティを築 くこととされているO 多様なニーズへの対応、双方向の助 け合い、住民同士で課題 - 16 0- 倉知 ◎安 川 :地域通貨実践 と課題 に関す る一考察 解決、地域 の人材 ( 資源) の顕在化、多世代 ◎多分野 の交流、入 ◎地域活動 のネ ッ トワー ク化、 COMO」 には、c o mmo n( 共通 の) とい 新 たな地域活動、事業 へ の展開が 目指 されて い る。「 う意味 とc o mmuni も y (コ ミュニテ ィ、共 同体) とい う意味が込 め られて いる。 COMO倶 楽部 」 の誕生 の流 れ につ いてで あ るが 、1 9 9 9 年 か ら多摩 ニ ェ- タウ ン学 会 次に 「 部会 にて、住民主体 の コ ミュニテ ィサ ポー トの しくみ コ ミュニテ ィの再生 ◎活性化 が検討 され 始 めた。 既存 ボ ラ ンテ ィア活動、 NPO等 の ネ ッ トワー クの強化、 国 内の地域通貨先進事例、 英国LETSの勉強等 な どが行 われ た とい う。 そ して、2 0 0 0 年 3月 2 5日、 同学会部会 にて、 地域 通貨 「 COMO」の構想 が発表 され、2 0 0 0 年 6月 1 1日、COMOの参加者 で構成 され る 「 COMO 倶楽部」 が発足 した。 この ときの人数 は4 0 人、 2団体 で、地域通貨 「 COMO」 の実証実験 が 0 01 年 6月30日に本格 的 に遅周が開始 され た。 この ときには、会 員 は5 0 開始 され た。 その後 、2 人増加 して9 7 人 ◎2団体 にな ってお り、 その後 2 0 0 4 年 には1 0 5 人 ◎2団体 に増 え たが、 近年大 COMO」の運営形態 きな変動 はない とい うことで あ る。 以下 に、 資料 や当 日の話 を もとに 「 COMO倶楽部」 で作成 されてい る 「 COMO」の運用 システム図 を示 し をま とめた もの及 び、「 てお く。 ※商店街などでの買い物直接をC OMOで支払 うこと はできない。今後、商品の割引クーポンやポイント カー ド、スタンプなどのサービスと連動 して商 店街 といっしょにC OMOをひろげて行 くしくみづ くりが 検討 されている。 -1 61- 京都大学 生涯教育学 。図書館情報学研究 vol . 7 .2 0 0 8 年 なお、「 COMO倶楽部 」への入会 は、 エ ン トリー シー トに氏名、連絡先、「で きること」「し Te a m COMO」 のスタッフとの面談を行 うことが て欲 しい こと」 を記入す ることに加 えて、「 1 , 0 0 0円) と年 会 費 ( 2 , 0 0 0円) の納 付 と引換 え に、 1 0 , 0 0 0 原 則 とな って い る。 入 会 金 ( 「 COMO」 が発行 され渡 され る。「 COMO」 のメー リング リス トへの登録 とホームペー ジへの 記載 ( 「で きる事」「して欲 しい事」 -現在 は個人情報保護か ら閉鎖中)が行われ、必要 に応 じ COMO」 が支 てサー ビスの提供 ◎受 け取 りを行 ない、 サー ビス提供者 に対す るお礼 と して 「 払われる。 対価等 の交渉や トラブル も当事者同士 の責任で解決す る。退会す るときは、事務局 に連絡 してメー リング リス トか ら登録 を削除 して もらう。 入会金 ◎年会費の返却 は行なわれな COMO」 の交換事例 としては、次のような ものが挙 げ られている0 い。「 〔 個人 一個人〕車での送迎、パ ソコン トラブルの解決 申指導、名刺作成、 イベ ン トの ビデオ撮 影、引越 しの手伝 い、畑 の草刈、掛軸の解読、犬の散歩、貸 して ください ( スキ ャナー、劇 に OA機器 、FAX、電動- ブラシ、絵本他)O 使 う金髪のかっ ら、旅行用 カバ ン他) 、譲 ります ( dsイ ンターネ ッ ト安全 〔 個人 一複数〕 - -ブ講習会、鮫子作 り講習会、魚 おろ し講習会、 Ki 0 世紀」 。 教室、足裏 マ ッサージ講習会、押 し花講習会、桃井講座 「映像か ら読み解 く人間の2 〔 個人 一地域活動団体〕「お もちゃの病院」 の ドクターとい ったよ うなCOMOの会員で はない 人 と、お もちゃの修理 ワークショップに参加 して もらうことなどを通 じて交換を可能 にす る。 〔 「 COMO」 一他 の地域通貨〕「 COMO」 と三鷹 「 Se e ds 」 など、会員が複数の地域通貨 に参加 している場合 に可能。 会員 には、「で きること」「してほ しい こと」の リス トが配布 されるが、実際の活動では、 リ ス トを見て人を探す ということは殆 どな く、何かを して欲 しい人が メー リング リス ト上で呼び か け、で きる人がその都度反応 して交換が成立 しているとい う。 アマチュアで交流す る世界 と もいえ る。 事務局発の企画だけでな く会員発の企画 も多 い との ことである。 円 との允換性 はな 0 , 0 0 0「 COMO」がな くなって しまった人 はまだいないとのことである。 く、最初 に発行 された1 また、新 しい試み として 「 Ki ds COMO」 の実験的 な取 り組 みが行 われているO これ は、地 域の一員 と しての子 どもが 「 COMO」 へ参加す る しくみづ くりを 目指 した ものであ り、地域 COMO」 の循環への取 り組みおよび保護者への 「 COMO」 のPRを行 って 貢献 を取 り入れた 「 0 0 3 年 8月 2日には、「 大乗 川水辺 まつ り」で川 の ゴ ミ拾 いが行 われ、 いこうとされている。2 0人 にお礼 と して、「 Ki ds COMO」 ( 「 COMO」 の メ ンバ ーの協力 によ って実 参加 した子 ど も4 施 されている 「お もち ゃの病院」「 牧場見学 」「冒険遊 び場」「ガキ大将講座」への参加券 のよ Ki ds COMO」 を利用 してイベ ン うな もの) が配布 された. その うちの 4人の子 どもたちが 「 トに参加 して くれた とい うことである。今後 は、古切手 ⑳使用済 テ レカ回収 などを検討中 とい うことである。 3 . 5 .質疑応答などの記録 上記 の事柄 に加 えて、今回の視察 の中で聞 くことので きた質疑応答の内容や会員か らの声を ● 以下 にまとめてお きた い 。 まず、「まちづ くり」には色 々な方法があるが、 なぜ地域通貨 を選 んだのか とい う質問に対 して は、 メ ンバ ーの 1人でまちづ くりNPOの理事長 を している方が、 ー 16 2 - 倉知 ◎安川 : 地域通貨実践 と課題 に関す る一考察 1 9 9 9 年 に仕事 の一環でイギ リスのまちづ くりの2 0の事例 を視察 にいき、その うちの一つで、 マ ンチ ェスターで行われていたLETSに出会 ったのが きっか けであ ったとい う。 今 は下 り坂であ るが当時 は会員 も2 0 0 0 人程 いたようで、人 々をつな ぐ助 け合 いの ツールとして、多摩 コ ミュニ COMO」 と して実現 したとい うことであるO 次 に、子 どもの参加 はあ テ ィ部会で提案 され、「 るのか とい う質問に対 しては、中学生が 1人 いたが、高校生 にな り忙 しくな ったので退会、そ の後 は親が入 っていて子 どもが一緒 に参加す る形が多いということである。 また、本当にサポー トを必要 としている人 たちに届かないのではないか とい う質問 に対 しては、本当に必要 な人た ちには、国家通貨で支払われればよいとい う考えが聞かれた。地域通貨がないと生 きていけな i t yofl i f eのために 「 COMO」 を行 っているといえ る部分があ り、本当 い とい うよ りも、qual に必要 な助 け合 いに至 るには糞 しいところもあるとい うことであ った。今 は、 お互 いに楽 しい 居心地 のいい関係 にな って しま っているとい うことも事実のよ うであ った。 また、体 の不 自由 な入 なども昔話や生活の知恵 を話す とい ったように何か提供で きるものがあるはずである し、 今後 はさまざまな人が参加で きるような工夫を考えていきたいとい うことであ った。次 に、発 券型 のメ リッ トとデメ リッ トは何か とい う質問に対 しては、 メ リッ トとして は実際 に券 を交換 で きること、デメ リッ トとしては流通の集計が分か らないということが挙 げ られた。 とはいえ、 交換実態の集計が取れない ことは研究者 にとっては不便か もしれないが、実際の運用 に関 して 0 0「 COMO」 の使用率が一番高 いため不足気味 は特 に問題 ないとい う声 も聞かれた。 また、1 にな っているとい う現状 も指摘 された。 その他、会員の方 か ら聞かれた 「 COMO」 の良 さと して、「 今 までの仕事 と家庭 の中での生活で は絶対 に知 りえなか った人達 に出会 うことがで き 」 、『COMO』 とい う地域通 貨 はあ くまで人 と人 とを繋 ぐき っか けにす ぎない。 最初 は た。 『 COMO』 を交換 していたが、今では 『 COMO』交換 な しで互 いに助 け合える関係 にな ってい ることも多 い。」、「 次第 に顔 の見 える生 き生 きとした関係 にな ってい く。 信頼関係が築 いてい 」、「 市場流通 には乗 りに くいサー ビスやモノの交換がで きる。」 とい う意見を聞 くことが ける。 で きた。 3. 6.課題 「COMO倶 楽 部 」 の課 題 と して は、 ① 管 理 運 営体 制 と して、 現 在 1 4-1 5人 で 「Te am COMO」 の仕組みに COMO」 として行 っている事務局 の維持 と専従化 と資金面 の問題、② 「 関す る課題 として、「 COMO」札 の形式や発行量 に関す ること、商店街や地域 の生産者 との連 携 の仕組み作 りが挙 げ られた。現在 は、商店街 との連携 はないが、今後 は商店 の買 い物で も一 COMO」が使え るよ うな仕組みづ くりを検討 していきたい とい う意見 も聞かれた。 また、 部 「 ③ イ ンターネ ッ トを補完す る情報提供 として、 イ ンターネ ッ トを使えない会員への情報提供 を c omoc omo』 によ って補完 している) および、 フェ どのよ うに行 ってい くか ( 現在 は、会報 『 イス 争トゥ 争フェイスの関係 の構築 を行 ってい くこと、④ コ ミュニティ ◎サポー トを必要 とす R活動 を積極的 に行 ってい くこと、地域で活動す る人 たちへの浸透 の課題 と して、地域へのP る他の団体 ( 多摩 ニュータウンではさかんに行われている)や住民 との連携 をはか ってい くこ とが挙 げ られた。 - 16 3 - 京都大学 生涯教育学 ◎図書館情報学研究 vol . 7 .2 0 0 8 年 また、今後、 コ ミュニテ ィ 申ビジネスや市民事業 と発展 させてい くこと、地域 の高齢者 の生 活 を支え る活動 を行 ってい くこと、 ゴ ミ問題、環境問題 の解決 に向 けた活動 を行 ってい くこと、 地域 ぐるみの子育てや教育 を行 ってい くことなどの抱負が挙 げ られた0 3 . 7 .視察を終えて 「 COMO」が導入 された ことによ って、多摩 こ ェ- タウ ンに住 む住民 自身 の 日々の暮 らし に、今 まで以上 の人 との繋が りが生 まれて きていることが分か った。 また、「 COMO」 も先 に 述べ られた 「ピーナ ッツ」 も共 に、 イギ リス ⑳マ ンチェスターでのLETSの実践への視察が きっ か けにな っていた とい うことも指摘 で きる これ は、 当時LETSが まちづ くりの 1モデル と し 。 て大 きな影響力 を持 っていた ことを示 している一方 で、同 じシステムをモデル と しなが らも、 商店街 の活性化や人々の コ ミュニケー ションの促進 など共通 した地域課題 を抱 えているものの、 その力点 の置 き方 や地域 の特性 に応 じて、少 しづっ地域通貨 の形態が異 な って くることは、 ま さ しく地域通貨所以であ り、 とて も興味深 い点であると感 じた。 また、多摩ニュータウンが抱え る少子高齢化や コ ミュニティのつなが りの希薄化 は、当ニュー タウンのみに関わ る課題で はな く、各地 に広が るニュータウ ンが もっ共通課題 であるといえ る。 「 COMO」で は、 メ ンバ ーの数が本格的始動以降 あま り変化がない とい う状況 はある ものの、 4、 5年 が経過 して も 「 COMO総会 」が住民 自身 が集 い、地域通貨 の よ りよい運用 のために 意見 を出 し合 う場 と して機能 している点 は、評価 され るべ き点 なので はないだ ろ うか。 また、 他 の地域通貨 との交流実践 も行 なわれていることは興味深 い.「 COMO」の実践 が、 これ らの 共通課題 を突破す るひ とっの きっか けと して更 に発展 してい くことが期待 され るだろ う。 ( 担当 :安川) 4 地域通貨のつ どい ( 府 中市 「カフ ェスロー」にて) 4 . 1 . 「カフ ェス ロー」 について 地域通貨 のつ どいは、府 中市 にある 「カ フェスロ-」3 )において行 われた。「カフェスロー」 は、地域通貨 を積極的に受 け入れて いるカ フェであ る。 ここで簡単 に述べてお きたい。 「カ フェスロー」 は、「ナマケモノ倶楽部」を母体 と して運営 されて いるカ フェである。「ナ マ ケモ ノ倶楽部」 は、1 9 9 7 年 に発足 した環境 NGOで あ る。 日本 とェクア ドルを結んで、循環型 ライ フスタ イルを提唱 し、環境運動 と文化運動、 そ して エコ ビジ ネス運動 をあわせた 「ス ロームー ブメ ン ト」 を展開 し て いる組織 であ る。 主 な活動 は、 フェア トレー ドや環 境負荷 のない製品の作成 などであ るが、環境保護 を苦 痛 な活動 と してで はな く、 ファッシ ョンと して提案 し ている点 に特徴が見 られ る。 この エ コビジネスの一環 と して設 け られたのが、「カフェス ロ-」である。 活動 のあ り方 は、 以下 の 「ス ロ-カフェ宣言 」 によ く現れていると思 われ るので、長 いが引用 してお きたい。 -1 6 4- 倉知 ◎安 川 :地域通貨実践 と課題 に関す る一考察 「 スローカフェ宣言 SLOW CAPE MANI FESTO カフェスロ ナマケモノ倶楽部のナマケモノ運動 に深 く関わ っています. カフェスロー が立ち上が にも、た くさんのナマケモノ倶楽部有志の関わ りがあ り、今 もカフェスロー 支えていますoそんなナマケモノ倶楽部か ら、 スロー ◎カフェ宣言が出されま した。 磨 るカフェスローは、 スロー ◎カフェ第 1号 として、宣言を ここに紹介 します。 ● 5月22日、 スローカフェデーと国際有機 コー ヒーデーに寄せて ●ひとっ、 スロー ・カフェはオーガニ ック ・カフェ 有機無農薬 コT ヒ-の普及 をっ うじて 「 南 」の生産者の持続可能 な地域づ くり、 そ して 日本 の消費者の健康 な食生活 に寄与す ることを目指 します。 ⑳ひ とつ、 スロー 。カフェはフェア トレー ドショップ 環境を破壊 し富 と貧困の格差 を拡大す る一方のグローバル化 のかわ りに、生産者 と消費者、 都市 と農村、「 南」 と 「 北」、今の世代 と未来の世代、人 と他の生物 たちとの問のより公正 な 関係 を 目指 します。 ●ひとっ、 スロー ・カフェはスロー ・フー ド 安全で新鮮 な食材 を使 った手づ くりのおい しい料理を、 ゆ っくりと楽 しんでいただける場を 目指 します。 ●ひとっ、 スロー ・カフェはスロー ビジネス カフェスローは投資、企業、販売、消費など人それぞれの経済行動 を通 して、美 しさ楽 しさ 安 らぎなどの価値 を社会 に取 り戻すための事業を目指 します。 ●ひとっ、 スロー ・カフェはスロー ・マ ネー 利子 を生 まない通貨 として今世界中で注 目されている地域代替通貨 を取 り入れ、 より公正で いきい きとした地域経済圏をっ くり出す ことを目指 します。 ⑳ひとっ、 スロー ◎カフェはイ ンフォ 。カフェ 環境問題、「 南北」問題 をは じめ とす る様 々な情報交換 の場、 そ して音楽 ◎映像 などの表現 活動 の場 となることを目指 します。 ⑳ひとっ、 スロー ⑳カフェはナマケモノ的 ライフスタイル 切迫す る環境危機 とは、他 な らぬ私 たち白身の文化の危機 であ りライフス タイルの破綻であ ると考 え、 自然 と人 との、人 と人 との、 よりスローでエコロジカルな関係 に基づ く心豊かな 生活文化を提案 します。 ⑳スロー ◎カフェは、「 私 もこんなカフェをや ってみたいな」 とい う人 たちを応接 します 2 0 0 2 年 1月 ナマケモノ倶楽部」4) このよ うな方針 の下、 カフェスローはカフェだけではな く、 その建物全体 を使 って、地域の 文化活動 の拠点であることを目指 している。 地域通貨実践 と関わ って、地域通貨のつ どいとい うフ リーマーケ ッ トを開催 した り、 2階のスペ-スを用 いて様 々なイベ ン トを行 った り、 3階 ではNPOなどの活動拠点が設 け られた りしている。 - 16 5 - 京都大学 生涯教育学 。図書館情報学研究 4. 2 . 「ナマケ」 vol . 7 .2 0 0 8 年 J 「カフェスロー」 にて 「 地域通貨のつ どい」 地域通貨 「ナマケ」 の話 は、後述す る 「 地域通貨 の つ どい」において、 「カ フェス ロー」 の吉 岡氏 を通 じ て伺 うことがで きた。 「ナマケ」 とは、 カ フェスローの運営 の母体 とな っ ている 「ナマケモノ倶楽部」が運用す る地域通貨であ る。 この地域通貨 は、貨幣型であり、円 との党襖を行 っ ていない。単位 は、 ナマケ ( N)で、 1円 -1Nを基 準 としている。 この地域通貨 の最大 の特徴 は、 フェア トレー ドと リンク した地域通貨であ ると い うことである。 まず、紙幣 タイプのナマケは、 エ コバベル とい う用紙 を用 いている。 この用 紙 は、水 に溶 けやす い ⑳破 れやす い とい った特徴 を有 してお り、 これは法定通貨が破 れ に くい ことを重視 してい るの とは対極 であ る。 また、紙幣の裏側 には、 「ナマケモノ倶楽部 」会員が 経営 してい るエクア ドルの学校 に張 り出 されてい る言葉 が記載 されて いる。 それ は、 「人 が最 後 の木 を切 って しま った時/人が最後 の川 を汚 して しま った時/人が最後 の魚 を食 べて しまっ た時/ その時 軍人 は気づ くだろ う、/ お金 は食べ られない とい うことを」 とい う言葉 であ り、 通貨 はあ くまで物 の交換 を媒介す るもので あ り、 それ 自体が食糧 な どの入間の存在 に不可欠 な もの と してあるので はない ことを示す文章 である。 このよ うに地域通貨で は、 その用紙 な どに それぞれの各発行主体 のメ ッセー ジを掲載 す ることが可能であ り、 コ ミュニケー シ ョンの ツー ル として も考察 され ることがある。 コイ ン型 の 「ナマケ」 は、 エクア ドルに自生 している象牙 や し (タグア) の実で作成 された ものであ る。 この タグアコイ ンは、 それ 自体が フェア トレー ドの商品で もある。 これ は、地域通貨 と しての用途 と してで はな く、 チェー ンにつ るす ことで ネ ック レスにな るなど、「ナマケモ ノ倶楽部 」の 目指す、 お しゃれな環境運動 とい う面 を通貨 に投影 した試 みであ り、非常 にユニークな ものであ る。 この 「ナマケ」を手 に入 れ るには、主 に 2つ の方法がある。 まず第 1に、「ナマケ」を購入 す ることである。 その代金 は、必要経費 を除 いた分が 「エクア ドル環境基金」にプール され る。 この 「 基金」は、 エクア ドルの コ ミュニテ ィレベルで活動す るグループを支援 している 「 基金」 である。 もう一つの方法 と して は、 「カ フェス ロー」で1 5 0 0円以上 の飲食 を し、1 0 0 Nを受 け取 るとい う方法がある。「ナマケ」は、用途 の制限 は設 け られないが、「カフェスロー」 において 用 いることがで き、 その他 の 「ナマケモ ノネ ッ トワーク」 のエコ ビジネス関係企業 において用 。「ナマケ」 は、 このよ うな フェア トレー ドな どの 目的の ほか に、地域通貨 いることがで きる を人 と人 とのつなが りをスローな中で回復 してい くことを 目的 に導入 されている。 このよ うな 「ナマケ」であるが、実際 にはどのよ うに展開 しているのであろ うか。 ここで は、 「カフェスロー」にお ける 「ナマケ」 の現状 につ いて吉岡氏 に うかが った。「ナマケ」は、様 々 な場所で用 いることがで きるが、 その多 くは 「カ フェスロー」 に蓄積 されている。 これ は、積 極的に 「カフェスロー」が 「ナマケ」を受 け入 れていることに もよるが、地域社会で必ず しも うま く循環 しているわ けで はない とい うことを暗示 していると思 われ る。 この 「ナマケ」 は、 -1 6 6- 倉知 。安川 : 地域通貨実践 と課題 に関す る一考察 「カフェス ロー」のスタッフの給与 として使われることもある。「ナマケ」 を受 け入れて くれて いる事業所 などに対 して は、原材料 に対す る対価 として も用 い られている。 この場合、「カフェ スロー」で は 「ナマケ」は別会計で処理 されている。 月に数万 ナマケがイベ ン トや食費 として、 「カフェス ロー」 に関連 して流通 しているとい うことである。 現在、「ナマケ」 は店の売 り上 げ の中で 5%程度 の割合であるが、将来的には2 0 %程度流通 を図 りたい とい うことであ った。 4 . 3 .地域通貨のつ どいの概略 地域通貨 のつ どいは、「カフェスロー」において 「ナマケモノ倶楽部 」などと共同で行 って いるイベ ン トである。 われわれが、訪れた際 にはオ ンライ ンの地域通貨である 「 Q」について の報告会 が行われ ることにな っていた。 まず最初 に、地域通貨が何であるかをワークショップ形式で体験す ることとな った。地域通 貨の ワー クショップは以下 の手順で行われたO ①簡単 な自己紹介- ここでは何がで きるか、何が は しいかなどをあげて もらう ②実際 の通貨 の システムで交換を行 ってみる 0 0 円の融資を行 う あ :ワークショップのファシリチーターが 「 銀行」 として、各 自に1 い :それを元手 に、参加者 それぞれが店を開いたとい う設定で商売 を行 う 0 分程度の交換 の後 に、「 銀行」 が融資 したお金 を1 0 %の利子 を付 けて回収す る う :2 え :当然、倒産す る店が多数出て くるが、 その ことを通 じて、利子がつ く円の もた らす影 響 を説明す る ③地域通貨 の システムで同様 な交換を行 う ④ この体験を基 に した話 し合 いを行 う このよ うな地域通貨 の ワークショップを行 った後、地域通貨 Qについて、技術運営者である 田中利昌氏 の報告が行われた。 この報告 は、同年 6月 に行われた地域通貨国際 シンポジウムの 原稿 に基 づ いた ものである。 内容 は、後述す る。 その後、地域通貨 「 Q」を含 めた、質疑応答 および意 見交換会 に移 った。 この席 には、「カフェスロー」の方 も在席 し、「カフェスロー」お よび地域 通貨 「ナマケ」に関す る質問なども行われた。 4 . 4 .オンライ ン地域通貨 「 Q」 について 「 Q」は、2 0 0 1 年 に柄谷行人 を中心、 とす る 「 NAM」活動 の一環 と して 始 め られ た。当初の目的 は、① ボランテ ィア活動やNP O活動 の支援 ◎奨励、個人間の経済的 や オ ンライ ン地域通貨 言語的な コ ミェニケ- ション ( 交流)の活性化、②資本主義的市場 に対す る批判的でオルタナ テ ィブな市場 の漸進的拡大、諸産業分野を包括す る自立的な 「 Q」市場経済圏の形成、③資本 主義市場 経済を越える、 自由な生産者 -消費者 による経済的 ◎倫理的なアソシエー ションの構 点である。「 Q」は、「 NAM」の思想的な影響 の下 に、補完通貨で はな くグロー 築、以上 の 3 バルな資本主義 のカウンターメデ ィアであろうとしている。 「 Q」の システムは、Wi n d s という独 自のプログラムを活用 し、決済 にかか る人的 申動的 コ ス トを削減 し、 さらにイ ンターネ ッ ト上で決済で きる形 にす ることで、 グローバルな取引を可 -1 67 - 京都大学 生涯教育学 ◎図書館情報学研究 vol . 7 .2 0 0 8年 c aiCur r e nc yではな く、 Gl o c alCur r e nc yであるとい 能 に している。 そのため、 田中氏 はLo う指摘を している。 「 Q」の実装 しているシステムとしては、①実名登録制度の採用、②赤字上限の設定、③団 Qファイナ ンス」 という融資制度、⑤Q保険制度の 5つがある。 体会員 と支援率の設定、④ 「 ① は、匿名制度 。ニ ックネームなどにす ることで起 こるモ ラルハザー ドの防止のために設 け Q」 に登録す ること られているものである。 本人確認書類の管理者への提出を持 って初めて 「 が可能 となる。 本人確認書類 は、 コス ト削減のために登録がなされた段階で破棄 される。 ② に関 しては、登録者 は最初 1 0万Qの赤字上限が設 けられている。 ただ し、 この上限 は取引 額 に応 じて引き上 げ られることになっている。 というのは、取引が多いということは、その分 コ ミュニティーへの貢献が大 きいと考え られるか らである。 取引量が コ ミュニティーへの貢献 を示す と同時に、信頼を示す もの として考え られているか らである。 ③ は、NP O⑳法人 などの団体会員窓 口の設定 に関わるものである。NPO法人が 「Q」 に参 加する際には、 5名以上の支援会員を必要 とす る。 支援会員 は、各個人で支援率 を設定 し、各 自の赤字上限を当該団体の赤字上限に付与す ることがで きる。 これは、 NP O。ボランテ ィア 活動の活性化のために設 けられている。 ④ は、余剰の黒字を集 め、それを管理運営委員会を通 じて 「 Q」 の必要な個人 ◎団体 に融通 す る制度である。 ただ し、 この制度 はこの報告がなされた段階では、構想 にとどまってお り、 実装 はされていなか った。 ⑤ は、やむ得ない脱会などで生 じる 「デ ッ ド赤字」をカバーす るための制度である。 個人や Q」 は、管 団体の赤字 に保険料率をかけて計算 し、毎年徴収 され るものである。徴収 された 「 理運営委員会にプールされ、 デ ッ ド赤字が出た祭の穴埋めに利用 される。 以上のような概略を述べた後 、「 Q」 の抱える課題を述べた。以下 は、① コス ト削減 と② モ ラルハザー ドの 2点 についてまとめてお く。 まず① についてである。「 Q」がオ ンライ ン化を進めたのは、 グローバ ルなネ ッ トワークを 構築す ることもさることなが ら、 コス ト削減 という点 も重要 な要素である。 しか し、本当にオ ンライ ン化で コス トが削減で きるのだろうか。 田中氏 によれば、「 地域通貨運営 に関わるコス トは媒体 に左右 されない」ということである。 オ ンライ ンシステム自体 に、 エラーはつ きもの であるし、オ ンライ ンで処理で きる量 にも限界点があり、絶えず システムを管理す る必要があ り、そのためにそれ相応のコス トをかけ続 けなければな らないか らである。 次 に、②である。 モラルハザー ドの問題 は、「 Q」の システムに大 きな課題 を投 げか けた。 その要因 となったのは、赤字上限の拡大である。 取引時に赤字上限の引き上 げを行 っていた際 に、空投 げが発生 した。 それは、 ABの問で 「 Q」 の往復 を行 うことにより、赤字上限を引 き 上げようとす るものである。 以上が田中氏の報告を基 に した 「 Q」の概要である。「 Q」 は、 オ ンライ ンの地域通貨である ことで、「 地域」の意味を改めて問いかけると共 にモ ラル-ザー ドなどの問題 を通 じて、性善 説 に基づいた地域通貨制度の課題を問いかけるものであった。 1 6 8 - 1 倉知 ◎安川 :地域通貨実践 と課題 に関す る一考察 4 . 5 .視察を通 じて この一 日の視察 を通 じて、 2つの種類 の地域通貨実践 につ いて検討す ることがで きた。 この 2 つの地域通貨 は、形式 は大 き く異 なるものの、地理的な意味での地域 を越えて、 グローバル に展開す る地域通貨であ るとい う共通点がみ られ る。「ピーナ ッツ」 や 「 COMO」が グローバ Q」はグロー リズムなどに対抗 す るために地域社会 に こだわ ったのに対 して、 「ナマケ」 や 「 バルなっなが りを前提 に した活動を展開 しているとい う点で独 自である。 これは、地域通貨が 地域 に限定 された ものであ り、 グローバ リゼー ションが進んだ社会 において、地域通貨 は意味 を成 さないとい うよ うな批判 などに答え る一つの視座を提供す ることだろ う。 つまり、地域 を 従来の意味で地理的な近縁性 を前提 として捉え るのではな く、 あ くまで コ ミュニティという意 味で捉えなおす視点 を提起 しているように思われ る。 また、地域通貨 「 Q」の報告では、地域 通貨実践 におけるモ ラルの問題 を考え るための良 い材料を与 えて くれたと考えている。 地域通 貨の実践報告の多 くが このモラルの問題 に 「 信頼」 とい う考え方で答えて きたが、非常 に多 く の人が地域通貨実践 に参加 した際に、や はりモ ラルの問題が発生 し、それが場合 によっては シ ステムにダメー ジを与 え る可能性 もあることが示唆 されているのである。 この点 は、地域通貨 実践が避 けようと しているテーマで もあるので、今後検討 の価値があると思われる。 最後 に、地域通貨 のつ どいでは、社会教育施設 における地域通貨実践を考えている人 たちの 話 も少 しであるが聞 くことがで きた。 まさに地域通貨が人 をっな ぐということを身を もって理 ( 担当 :倉知) 解す ることがで きた と思 っている。 5 「カマ通」 ( 大阪市西成区の一地域 :通称 「 釜 ヶ崎」 ) 5 . 1 .視察の概要 「カマ通」 に関 しては、釜 ヶ崎地域通貨委員会のメ ンバーである Ⅰ氏 と∬氏の案内の もとで、 社会福祉法人 ヒューマ ンライツ福祉協議会が運営 している特別養護老人 ホーム 「まちか どホー ムすず らん」 にて行 なわれていた 「カマ通」 メ ンバーによる紙芝居劇 「おむすびころりん」 を 見学 した。 これは、単 なる紙芝居ではな く、各登場人物をひ とりひ とりが担当 し、頑の上 にお 面をつけてセ リブを読み上 げる一方で、 もちっ きの場面 など、一部 は劇 として演出す る場面 も 見 られるという、紙芝居 と劇が一体 とな った ものであった。 このグループは、夏祭 りやカマ通 0 人 くらいが事務所 に集 まるよ うにな り自主的にで きたグ の実践、 ソフ トボールなどを通 じて3 ル-プであるとい うことである。 まちか どホームに入居 している住民 など観客 も多 く来 られて いた。その後、 カマ通 をかせ ぐことので きる共同作業 「金曜作業 」が行 なわれている事務所を見学 した。 そ の後、釜 ヶ崎地域 を視察 の後、 「ぴ ょんぴ ょん通貨」 とい う地域通貨 も発行 して いるNPO法人 「こえ とこ とば と こ こ ろ の 部 屋 」 が 運 営 の カ フ ェ ROOM」にて、 「 COCO Ⅰ氏 とH氏 よ り 「カマ通」に関わ る 話 を聞かせていただ き質問 に も答えていただいた。 †「まちか どホームすず らん」にて上演 された 紙芝居劇 「おむすびころりん」の様子 ー 169 - 京都大学 生涯教育学 や図書館情報学研究 vol . 7 .2 0 0 8 年 5 . 2 .釜 ヶ崎 という地域の特徴 釜 ヶ崎は、 日雇い労働者が多 く住む町 として知 られている。 戦前か ら戦後 にかけては木賃宿 街 として存在 していた。現在で こそ単身男性 日雇い労働者が多い町 となっているが、以前は家 族持 ちの労働者 も多 く住んでいたとい う。 しか しなが ら、釜 ヶ崎やその近隣に住んでいるとい 9 6 6 年 には大阪府 ◎ うことだけで結婚差別や就職差別が発生するようになるという問題 も生 じ、1 大阪市 。大阪府警の申 し合わせによ り 「あいりん地区」 とい う全 く新 しい地名 に置 き換え られ た。 これ以降、 マスコ ミや行政の周語では 「あいりん」が用 いられるようになった ものの、そ 釜」 という表現を使 うことが多いという。 また、同 じ こに住んでいる人たちは 「 釜 ヶ崎」や 「 く通称 として 「ニシナ リ」 という呼 び方 も存在する。 これは、釜 ヶ崎の位置す る西成区か ら派 生 した言葉であり、現在 この地域 には 「 釜 ヶ崎ム 「ニシナ リ」 、「あいりん」 といい う 3つの名 前が重 なって存在 しているということである。 釜 ヶ崎に対する行政対策 としては、1 9 6 0 -1 9 6 1 年 には大阪市 によって 「あい りん会館 ( 現在 」が、1 9 6 1 -1 9 6 6 年 には 「 第一次騒動」も影響 して、家族持 ち限定の寮 と の私立更生相談所) 今池生活館」 が建設 され、港湾労働者対策 として 「みなと宿泊 して釜 ヶ崎内に 「 愛隣寮」と 「 所」を港区八幡屋町に建設、そ して不就学児童対策 として 「あいりん学園」が設置 された。 ま 9 6 6 年以降は、労働省 は釜 ヶ崎を 「 特別 た 「 釜 ヶ崎」が 「あいりん地区」 として指定を受 けた1 対策地区」 として認定 し、建設省 も住宅政策の実施に動 きだ した.そ して西成労働福祉センター、 9 7 0 年 に建設 されてい あい りん職安、社会医療セ ンターを有す る 「あいりん総合 セ ンター」が1 る。 しか し、 これ らの対策 は、む しろ日雇い労働力の供給地 として釜 ヶ崎を位置づげ、全国か ら集 まる日雇 い労働者を受 け入れ る体制を整えることになったという見方 もされている。 、「 ○○ホテル」 と看板を掲 げていた 「簡易宿所」か ら、「 ○○アパ ー ト」「 ○○マンショ また ン」と名前を変え共同住宅への転換 されている傾向か らも分かるように、かつてのような全国 をまたにかけた労働者の集 まる町か ら定住志向が高 まる町へ と変貌 しつつあるという。 最近で は、 日雇い労働者 は高齢のために仕事がで きない為、簡易宿泊所を使わな くなって きてお り、 代わ りに生活保護か ら支払われる福祉 マ ンションに住む人が増えてきているという。 それと同 時に、町の もっ機能 も変化 し、 コ ミュニティとして新たな機能が求め られ るようになってきて いるのであり、その変化の中で提案 されたのが 「カマ通」 ということもで きるであろう。 5 . 3 . 「カマ通」の概要5) カマ通がは じめて実際に取引 されたのは、2 0 0 1 年 5月の ことである。 カマ通 は、「 釜 ヶ崎の まち再生 フォーラム」発足の きっか けとなった 「 釜 ヶ崎居住C OM」のまちづ くりヴィジョン 人の有志の発案で始 まったが、なか 策定のプロセスの中で、 まちづ くりプランナー等、 4-5 なか本格的な実施へ とは踏み出せずにいた。そ こへ、再生 フォーラムの事務局長の A氏が、大 阪で開催 される会議の資料づ くりを地域通貨を介 して行なったことをきっか けに、事実上、カ 0 0 0 年 8月には地域通貨委員会で夏祭 りにソーメ ン店を出 し、 マ通がスタ- トした。その後、2 そこで地域通貨で割引がで きるようになされた。実際には、 ソーメ ンの作 り手 として参加 した 1 0 人程のサボ-ティプ- ウス6)の入居者 にカマポイ ントを渡す ことにな った ものの、逆にソー ー 170- 倉知 。安川 : 地域通貨実践 と課題 に関す る一考察 メ ンの購入で地域通貨を利用 した人 は皆無であ ったとい う。 この ときにカマポイ ン トを手 に し た人 たちは、 カマポイ ン トを消費す る側ではな く、なによ りもまず与え る側を積極的に選んだ 0 0 0 年1 1 月 には、地域 とい うことが注 目すべ きこととして地域通貨委員会では指摘 している02 通貨の更 なる流通 のために 「や りとり百貨」 も発行 された。「や りとり百貨」 は、「で きること」 4 7 項 目の 「で きる と 「して ほ しい こと」 を紙面 に陳列 してい く情報誌である。 結果 と して、1 こと」、1 2 6 項 目の 「して ほしい こと」が集 まった ものの、実際 には、 それ らが本当のニーズか どうか、あるいは、いきなり全 く知 らない人 にものを頼んだ り頼 まれたりす ることの料発 といっ たことか ら、 コーデ ィネー トはうま くいかず袋小路 にさ しかか っていた。 そのような 1対 1の や りとりの半 しさに直面 していたとき 「 金曜作業」が提案 された。 これは、定期的にカマポイ ン トを稼 げる場を設 けようとして始 め られたものであ り、作業が金曜 日に行われるので 「 金作」 と呼ばれた。 しか し、 よ り多 くの人が参加で きるようにとい う事情 もあ り、視察 に行 ったち ょ 0 0 4 年 9月よ り作業 日が土曜 日、 日曜 日に変更 になったということであ った。作業内容 は、 うど2 折鶴づ くりや小箱づ くり、釜 ヶ崎キ リス ト教協友会の袋づめ作業や、木曜 よまわ り会が定期的 に出 している冊子 の帳合、保育園の草む しりなどの作業 などである。 一方、定期的にカマポイ ン トが使える場所 として、火曜 。水曜 。木曜 。金曜には各サボ-テ ィブ- ウスが持 ち回 りで室 内の談話室で開催 しているモーニ ング喫茶が存在 し、 ここに、金曜作業でカマポイ ン トを稼 ぎ、 モーニ ング喫茶で使 うとい う循環が生 まれたのである。 その他、事務局体制 の整備 として、有 0 0 2 年 2月か らは、 ボランテ ィアによるヨガ教室 償 ボランティアを募集 した りす る以外 に も、2 や、 3月 には足裏 マ ッサージが始 ま り、 カマポイ ン トを使 って受講す ることがで きるよ うにな 0 0 4 年度 るとい うカマポイ ン トの流通の可能性が他 にも生 まれた (ヨガと足裏 マ ッサー ジは、2 よ りカマ通が使用で きな くな っている)。 とはい うものの、今度 は逆 にサポーテ ィブ- ウスの 入居者 にポイ ン トがひたす らたまってい くとい う構造 も生 まれて しまい、 それを使 う手段 とし 0 0 2 年1 1 月か らは、釜 ヶ て、「カマ通バザ ー」や ライブや コンサー トが開催 された。 その他、2 崎地域通貨委員会 ( カマ通委員会)が月 1回メールマガ ジンを配信す るようにな った。 その後 金 「 釜 ヶ崎のまち再生 フォーラム」 のメー リング リス トに も配信 され るよ うにな り、毎週 の 「 曜作業」や毎月の事務局会議の報告、利用者 の声 などが生 き生 きと掲載 されている。 5. 4. 「カマ通」の システムーLETSシステムか ら 「カマガサキ システム」へカマ通 は、実際の運用が始 まる2 0 0 1 年 5月まで、 1年以上の準備期間を経 たが、 そ こで採用 LETS」 システムであ った.LETS ( Lo c alExc ha ngeTr a di ngSys t e m) とは、 されたのは、「 1 9 8 3 年カナダのバ ンク-バー島東海岸の コモ ックスバ レイにおいて、マイケル リントンらによっ て始め られた異体的な地域通貨の名称であ り、現在では類似 システムを総称す る言葉 として も 用 い られているo LETSシステムの特徴 は、会員同士 はいっで も誰 とで も相互 のモノやサー ビ スなどを交換で き、 その交換 に応 じて通帳やカー ド形態の口座 にプラス 。マイナスが記入 され る点 と、 口座管理 などを担当す る事務局 とそれ以外の通常会員の区別が ほとん どないとい う点 にあるとい うことである。 カマ通 も、通帳を使用 し、当事者同士で自由に使用 して もらえるも 0 0 0 年 3月 には、 「カ の と してデザイ ンされた。 その後、徐 々に システムは変化 し、 2年後 の2 - 171 - 京都大学 生涯教育学 。図書館情報学研究 vol .7 .2 0 0 8 年 マ」は純粋 なLETSシステムを抜 け出 して、独 自の 「カマガサキ システム」 と呼べ るよ うな も のに変化 を遂 げてい った。 す なわち、「 支援団体 。施設 。NPO」 ( 稼 ぎ先) ( 依頼作業への対価 を 「カマ」で支払 い)、「モーニ ング喫茶」 ( 払 い先) ( 代替 の 3分 の 1を 「カマ」で受 け入 れ)、 「当事者」 ( サ ボ-テ ィブ- ウス入居者 ほか) とい う代表的 な三者 の間で多 くの取引がな されて い く中で、「事務局 」 は コーデ ィネーターの役割 を果 た してい くよ うにな ったのであ る。純粋 なLETSシステムとの違 いは、事務局 の果 たす役割が大 き くな った とい う点であるといえ るだ ろ う。 このよ うな、LETSシステムか ら変化 した 「カマガサキ システム」は、 マイケル 。リン トンがLETSの問題点 を改善 しよ うと して考え出 した システムとされ る 「コ ミュニテ ィウェイ ( c o mmuni t yway) 」に類似 しているとされて いる。 LETSシステム とコ ミュニテ ィウェイの 違 いは、事務局 の位置づ けとその役割 にあ るo LETSシステムは、個人 同士 の直接 の取 引が可 能 なため、 自由に交換 レー トを決 めることがで きるのに対 して、 コ ミュニテ ィウェイで は、事 務局が代表 して交換 レー トを決定す る。 その結果、 コ ミュニテ ィウェイで は 「 通貨 の信用が共 」 同体外 に も共有 されやす い」 とい う長所が ある一方、 「 事務局 に多大 な負担がかか る 「 企業 に 地域通貨がたまる」 とい う短所 もあるといえ る。 カマ通 も最初 は入居者が 1対 1でや りとりを 行 な うよ うに想定 していたが、 もともとそれ ほど対人関係が得意 な方 たちで はなか った ことや、 もともと地域通貨 自体 をや りたいとい うことで もなか ったため、会員同士 の直接の取 引 はほと ん ど発生せず、 コーデ ィネー タによる仲介が 自然 と積極的 に行 なわれ るよ うにな った とい うこ とである。 そ して地域通貨が よ り活用 され るために取 られた方法 は、地域通貨 を 「 使 う場所」 と 「もらえ る場所 」を設定す るとい うことであ った。 コ ミュニテ ィウェイは、様々な価値観 を もった人 々が住 む釜 ヶ崎 においては、非常 に有効 な方法 とな っているといえ る。 箕猿轡輯 華 募 N . + ≡ 軍≡ ? て ?十 外 部 十釜 サ 埠 呼 率 ≡ . ≡ j 似 盗: . 三 淑㍗ i i ' = ; = 三 毛 / ; = T = = : = 舶 : 達て : : = ≡ 滋 三 千2 0 0 3 当時のカマ通の運営のシステム図 h t t p: / / wwwl . o d n. n e . j p rc b t 2 5 3 6 0 / k a ma . hi m ( 2 0 0 7 / 5 / 1 5 にアクセス) †2 0 0 3 年 3月以降に目指されていたカマ通のシステム図 ht t p : / / wwwl . o d n. ne . j p / ∼ c b t 2 5 3 6 0 / ka ma . h上 m( 2 0 0 7 / 5 /1 5にアクセス) -1 7 2- 倉知 ◎安川 : 地域通貨実践 と課題 に関す る一考察 5 . 5 .カマ通の課題 釜 ヶ崎では、単身高齢男性が多 く、女性が少 ないとい う特徴がある。 カマ通への登録者 は約 3 0 0 人であ り、 その うち手帳を使 っているのは3 0 人 くらいである 生活保護を受給 された人 と、 。 保証金がないなど一般住居 に入 りに くい人たちが多 いとい うことである。 カマ通 の課題 と して以下 のように何点か挙 げることがで きる。 まず、金曜作業 の仕事 をいか に生み出 してい くか とい うことがある。 鶴を折 った り、籍 を折 った りという仕事 も、細かい手 作業が苦手 な人 もいるため参加者が一様 に達成感 を得 るとい うことの難 しさ、 あるいは仕事 自 体 の依頼 に限度が あるとい うことである. また、「カマ通 」 の利用者のほとん どはサポーテ ィ ブ- ウスの入居者 とい う実態があ り、 「 今 のカマ通がサボ-テ ィブ- ウスの入居者 に特化 して 進化 して きた」 とい って も過言でない とい うことがある。「カマ通がただ一つの システムで拡 大 してい くので はな く、釜 ヶ崎 とい う地域の中に使 う人 のさまざまな立場 に応 じて さまざまな ヴァリエー ションの地域通貨がで きるということがあ って もいいのではないか」 とい うことで システムの ヴァリエーションその ものを増や してい く必要があるという課題 も提起 されている。 次 に、 コーデ ィネータの人手不足 とコーディネータにかか る大 きな負担 も大 きな課題 として挙 げ られている。更 には、 これは他の地域通貨の団体が抱えている課題 とも重 なるが、金曜作業 やモーニ ング喫茶 などでや り取 りが増 える中で、次第 に手帳を介 さずにコ ミュニケー ションの 輪が広が ってい くとい う傾向 もあるとい う点や、「 手帳 は もっているけれ どほとん ど使用 した ことがない」 とい う 「幽霊会員」 の掘 り起 こしとい った ことも指摘 されている。 5 . 6 .これか らに向けての展望など 再生 フォーラムは1 9 9 9 年 に結成 されたが、そ こでは有償 ボランティアとして活動 を行 な って いるとい うことである。 実質 は Ⅰ氏 1人で動 いているけれ ども、 Ⅰ氏が代表 とい うことではな い。 Ⅰ民か らは、地域通貨 の活性 自体 を目的に しているのではな く、住んでいる人 自体が幸せ であればいいとい う展望 を聞 くことがで きた。 Ⅰ氏 によると、事務局だけ しっか りしていて、 地域通貨が勝手 にまわればよいとい うことには魅力を感 じていないとい うことである。 そ うで あれば、 日銀券でやればよいことであろうか らとい うことである. 釜 ヶ崎では、野宿生活者 を 対象 としているとい うことが大事であるとい うことであ った。 また、 Ⅰ氏が再生 フォーラムに 対 して抱 いている良 さは、 NPOに しない良 さとい うことがひ とつ挙 げ られた。 それ は、偶然 性の要素がや って くる良 さ、計画で きない良 さ、 その分偶然転が り込んだチ ャンス も生かす こ とがで きる良 さがあるか らとい うことである。 また、責任 。継続性 とい うことか らもかえ って 有利な部分 もあ り、営利 に対 して もコ ミェニディに開かれているという点 も指摘 された。 また、 この取 り組 みは、運動ではな くて事業 として行 な っているとい うことであ った。運営 に対 して は、課題 は多 くあるものの、管理が しっか りしていない良 さが続 くきっか けにな っているので はないか とい う意見 も聞かれた。 しっか りしていない ことで、 どのように して信頼で きるか と い うことに繋が っていき、手帳を使 い続 けることが、「カマ通」の続 いてい く鍵であるとい う ことであ った。 また、権力 とい うことについて は、中心 をおかないとい うことに力点 を置かれ ていた。権力を置 くことに対す る怖 さや危険性があるだろうとい うことか らである。 地域通貨 -1 7 3- 京都大学 生涯教育学 ¢図書館情報学研究 vol . 7 .2 0 0 8 年 によって、権力関係がゆるやかになるのではないかという展望 も聞 くことができた。地域通貨 ということに関 しては、交換やバザーを行 うことと、その意味や意義の確認作業をどち らかに 傾斜 して しまうのではな くそのバ ランスをとってい くことが大切であるということも指摘 され た。 にもかかわ らず、実際には行政で も地域通貨を奨励 し始 めているのは、バザーや商店街で 商品券 として使えるツール として利用 しようとしているか らなのではないか という点 も指摘 さ れた。地域通貨 は、お金があ って も幸せではないとい う状況 もある中で、お金を使わないで幸 せに暮 らす方法 として有用であ り、お金を使わないで、時間をっぶす方法 として も有用ではな いか ということであった。 また、地域通貨によってアンペイ ドワークが可視化 されることのお もしろさ、 日本円でで きないことができることの魅力などについての指摘 もあった。 Ⅰ氏 自身 の人生設計 に対 して も、最初 はどうや って 日本銀行券を稼 ぐか しか考えていなか ったが、お金 を持 っていな くてどうしようという時にどうや って人に支え られて生 きてい くかということ、 地域通貨で生活で きるということも次第 に考えるようになったという。 地域通貨 は、人 とのつ なが りを考え直す大 きなきっかけで もあるといえるだろう。 5 . 7 .視察を終えて カマ通 は、実際にカマ通を利用 している率の高い当事者 自身の声 によって作 られた訳ではな 釜 ヶ崎のまち再生 フォーラム」や 「 釜 ヶ崎地 いという点が特徴 として挙 げ られる。 一方で、「 域通貨委員会」などには、地域住民以外の人たちが多 く関わ ってお り、地域内外の視点が共存 しなが ら地域や 日々の暮 らしをよ くしてい くための活動が行われているという点が特徴的であ る。 これ らの特徴 は、共 にプラス面 とマイナス面を持 ち合わせていると考え られるが、 カマ通 を最 も利用 している入 自身の声や行動が活動 にもう少 し反映 されて くると、 より活性化 してい くように思われ るO また、 ここで もLETSシステムがモデル とな っていたことが指摘で き、次 第 に事務局の役割が大 きくなる 「カマガサキ システム」へ と変化 していったことが示 されてい たo 王氏の言及か らも伺えるが、事務局 はもちろん重要で、地域通貨が循環 しているという状 態 も大切であるが、やはりその背後で一番大切なのは、地域通貨の利用 によって何が人々の心 や暮 らしの率に何が生 まれ何が残 ってい くか、 あるいは、何を生み出 していきたいか というこ となのではないだろうか。 ( 担当 :安川) 6 終わ りに 以上、地域通貨実践の訪問の記録を簡潔 に記 した。最後 に、今回の訪問で考えた点をい くつ か述べておきたい 。 まず第 1点 目が どのような目的を持 った活動 に地域通貨の実践が埋 め込 まれているかによっ 「ピーナ ッツ」 て、地域通貨のあ り方が大 きく異 なる可能性 を持 っているとい うことである。 の実践 は、商店街の活性化 という目的や地域経済の活性化 という目的の中に埋め込まれている。 「 COMO」の実践 は、 ボランティアや市民活動の活性化 とい う目的に埋め込 まれていると考え られ、「ナマケ」 の実践 は 「カフェスロー」 と結 びつ きなが ら、環境保護 とい う目的を持っ活 動に埋 め込 まれている。「カマ通」は、釜 ヶ崎 という地域 の特性 に合わせて、 日雇い労働者 。 -1 7 4- 倉知 ◎安川 :地域通貨実践 と課題 に関す る一考察 路上生活者 の生活の向上 とい った主 たる活動 の中に存在す る。 このよ うな異体的な活動 目的に 埋 め込 まれて こそ、地域通貨 は意味を持っ ことが明 らかであろう。 次 に、 どのような目的に埋 め込 まれた地域通貨 に しろ、 そ こには 「コ ミュニケー ション」 が 介在 していることが示 されている。 これは、通常の法定通貨が不特定多数 を結 びっけるもので あ るのに対 して、地域 を限定す ることで特定 の人 に開かれ ることにな り、結果 として、 その内 部で コ ミュニケー ションが促進 され るとい うことである。「ピーナ ッツ」は、交換 に際 して、 「ア ミーゴ」と声 を交 わ し、握手 をす るとい う具体的なコ ミュニケー シ ョンを入れ ることで、 その意味を深 めていると考 え られ る. また、地域通貨 は、内部の コ ミュニケー ションを促進す Q」 の事例 に端的に見 られ るよ うに、国家 の枠組 みを超 えた るのみで はな く、 「ナマケ」 や 「 コ ミュニケーションを通 じて、外部 とつなが ることによって地域 を変えてい くとい う動 きも見 られ る。 生涯学習が一番端的に関わ る論点 になるだろう。 このよ うな効果のみ られ る地域通貨であるが、課題 も少 な くない。全ての地域通貨 に共通 し てみ られた課題 は、流通範囲が拡大 していかないという課題である。 地域通貨がスター トす る 際 には、多 くの人が参加 し、 それな りに活動が展開す るのであるが、徐 々にその会員数 は伸 び な くなり、幽霊会員が多 くなるなどで して、地域通貨の活動が停滞 してい くことである。 また、 互 いに関係がで きてい くにつれて、地域通貨 を介 さず とも、サー ビスが交換 され るようにな っ てい くことをどのよ うに考 えるか ということもひとっの課題であろ う。 コ ミュニケー ションを 促進す るという意味では、効果を奏 したが、新 しい会員 は入 りに くくなるか もしれない し、地 域通貨 自体が動かな く ( 循環 しな く)な って しまうという課題 もある。 地域通貨の実践 は、今後 も様 々な文脈の中で展開 され るだろう。 以上のよ うな、課題をいか に克服 してい くのか。 また、 このような課題 を克服 してい く際に、 どのよ うな学習が展開 され ることになるのか。今後 の研究の深化が待 たれ るところである。 ( 担当 :倉知) 謝辞 本視察 を行 うにあた って は、沢山の方 の ご協力をいただいた。視察当 日、対応 くださった り お話 しを聞かせていただ皆様 には心 よ り御礼 申 し上 げる。 とりわけ、多摩 「 COMO」倶楽部 運営協議会 の横山真理氏 は じめ運営協議会の方 々、釜 ヶ崎地域通貨委員会の潰西栄司氏、泉谷 洋平氏 には、原稿 に対 して コメ ン ト及 び内容 に関す る訂正 をいただいた。文末ではあるが、記 して感謝 の意を表 したい。 なお、本文の内容 に関す る責任 は、あ くまで執筆者 にあることをお 断 りしてお きたい。 1)前平泰志による萌芽的研究 「 地域通貨の生涯学習論的研究」( 2 0 0 3 年度∼2 0 0 6 年度、科学研究費)に 関わって立ち上げられた研究会である。 2)以降の記述は、当日のメモに加えて、当日の配布資料 「 COMO倶楽部」 、「 COMO誕生のいきさつ」 、 「 Ki ds COMOの実験的取 り組み」 、「 COMO倶楽部チャレンジ&エンジョイ」( 2 0 0 4 年2 月号)および、 COMOのホームページ ( ht t p: //www. c o mo. gr . j p/ )( 2 0 0 7 /5 /1 5 確認)を参考にしている。 3)吉岡淳 『カフェがつなぐ地域と世界-カフェスローへようこそ』自然食通信社、2 0 0 4 年、を参考。 4) 「カフェスロー」のホームページ ( ht t p: // www. c a f e s l o w. c o m/ a b o ut c a f e s l o w仙 a l l . ht m)より引用。 -1 7 5- 京都大学 生涯教育学 。図書館情報学研究 v ol . 7 .2 0 0 8 年 ( 2 0 0 7 / 5 / 2 7 確認) 5)以降の記述 は、当 日のメモに加えて、釜 ヶ埼地域通貨委員会発行の 『むすんでひ らく-釜 ヶ埼地域通 貨実践報告書』および、釜 ヶ瞭地域通貨委員会のホームページを参考 に している。 ( h t t p : / / www. ka ma ga s a k i 守o r u m. c o m/ j a / p r o j e c t / k a ma t s u/ ka ma t s u _ t o p . h上 m)( 2 0 0 7 / 0 5 /1 5 確認) 6)サボ-テ ィブ- ウスとは、福祉 マ ンションの中で、談話室などの共同スペースとい った-- ド面 と、 4時間常駐 し、生活相談、金銭管理、在宅型栄養相談、地域通貨 による軽作業作 り、 生活相談スタッフが2 生 きがいづ くり事業などのサポー トとうソフ ト面を兼ね備えた生活支援型の住宅 として正式 に運営 され 0 0 0 年より運営 されている。民間の事業体 として行われてお り、最近では簡易宿 ているものの総称で、2 泊所か ら福祉 マ ンションに業種転換するオーナーが多 くなっているという。 ー1 7 6-