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高血圧緊急症 - 日本赤十字社 松山赤十字病院

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高血圧緊急症 - 日本赤十字社 松山赤十字病院
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松山赤十字病院
Matsuyama Red Cross Hospital
Division of Hypertension and Endocrinology
創立101 周年
高血圧緊急症
松山赤十字病院 内科
福岡 富和(高血圧)
2014年1月10日
Matsuyama Red Cross Hospital , Internal Medicine
Division of Hypertension and Endocrinology
高血圧緊急症
「血圧の高度の上昇(180/120 mmHg以上)によっ
て、脳、心、腎、大血管などの標的臓器に急性の
障害が生じ進行しているため、直ちに降圧治療を
開始しなければならない病態。」
・乳頭浮腫を伴う加速型ー悪性高血圧
・高血圧性脳症
・急性の臓器障害を伴う重症高血圧
アテローム血栓性脳梗塞
脳出血
くも膜下出血
大動脈解離
急性あるいは進行性腎不全
・脳梗塞血栓溶解療法後の重症高血圧
・子癇
高血圧緊急症
「血圧の高度の上昇(180/120 mmHg以上)によっ
て、脳、心、腎、大血管などの標的臓器に急性の
血圧のレベルで判断するのではない
障害が生じ進行しているため、直ちに降圧治療を
開始しなければならない病態。」
臓器障害の有無で判断
高血圧切迫症
「高度の高血圧であるが、臓器障害の急速な進行
高血圧緊急症;BP 180/100 mmHg
がない場合は切迫症として扱う。切迫症では緊急
降圧による予後改善のエビデンスはない。」
高血圧切迫症;BP200/110 mmHg
症例提示 1
高血圧緊急症:高血圧性脳症・悪性高血圧
【症例】77歳、女性。
【現病歴】
平成23年、腎癌のため腎摘出目的で当院泌尿器科入院
【臨床経過(血圧経過)】 手術
120 mmHg
(術後;3~9日)
120 mmHg
【症例】77歳、女性。
【臨床経過】
9日目
ニカルジピン
ミオコール
9日目
209/102 mmHg
10日目
185/98
182/68
120 mmHg
食事摂取量低下
意識障害
頭部MRI
頭部MRI
【症例】77歳、女性。
内科(高血圧内科)
【血圧経過】
17日目
(6日目)
180 mmHg
ニカルジピン
ノルバスク5×2
カルデナリン2×2
オルメテック10×2
メインテート2.5×2
血圧の高い方がおられましたら
お気軽にご紹介ください
ミオコール
頭部MRI施行
22日目
ノルバスク5
120 mmHg
【症例】77歳、女性。
【臨床検査成績】
生化学検査
BUN
17.3
mg/dl
Cr
0.64
mg/dl
(eGFR 67.4 ml/min/1.73)
UA
3.4
mg/dl
Na
129
mEq/l
K
4.5
mEq/l
Cl
90
mEq/l
Ca
9.6
mg/dl
内分泌検査
レニン
0.6 ng/ml/h
アルドステロン 1.5 ng/dl
ACTH
87.9 pg/ml
コルチゾール 15.1μg/dl
TSH
freeT4
PTH-INT
1.45 μIU/ml
1.06 ng/ml
46.8 pg/ml
Matsuyama Red Cross Hospital , division of Hypertension and Endocrinology
【症例1】77歳、女性。
高血圧切迫症症
食事摂取量低下
高血圧緊急症
意識障害
静注薬による降圧治療
・65歳以上;ノルバスク1錠 or アダラートCR1錠 or コニール1錠
アテレック1錠、1×
・65歳未満;ノルバスク2錠 or アダラートCR2錠 or コニール2錠
アテレック2錠、1×
【まとめ】
【症例】77歳、女性。
著明な血圧上昇と意識障害.
MRI所見と治療経過
急性期頭部MRI
急性期頭部MRI
慢性期頭部MRI
・著明な血圧上昇によるPosterior reversible encephalopathy
syndrome (PRES). ⇒ 緊急降圧治療
・ 頭痛を伴う症候群の一つ。
・ 急激な血圧上昇による血管透過性亢進や血管内皮細胞障害
により生じると考えられている。
・ 血管原性浮腫
・ 血圧、痙攣コントロール、原因薬剤の中止
PRES類縁疾患
・Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome
(RCVS)
頭部MRA(急性期)
頭部MRA(2週間後)
・ 子癇や薬剤使用を背景に頭痛、嘔吐、痙攣等で発症し
後頭葉や境界領域を中心に病変を生じる。
・ 臨床像はPRESと類似点が多いが、PRESと比べて梗塞に
陥り後遺症を残しやすい。(脳血管攣縮がPRESより重篤)。
・ 血管攣縮が病因であるため、Ca拮抗薬による積極的な加療
が予後の改善につながる可能性がある。
症例提示 2
高血圧緊急症;悪性高血圧
【症例】29歳、女性。
【現病歴】
2か月前から、頭痛が出現(頭全体が痛い)した。1週間前から
右視野異常、3日前から左視野異常が出現したため、当院神
経内科受診した際、血圧高値を指摘され当科に紹介された。
軟性白斑、黄斑部に星茫状白斑
悪性高血圧眼底ににる
【文字所見】
両眼高血圧眼底
血圧200/120 mmHg
内科緊急受診
高血圧緊急症;悪性高血圧
【症例】29歳、女性。
【臨床検査成績】
内分泌検査
血算
生化学検査
WBC
5250 /μl
T.P
8.0
g/dl
レニン
47.3 ng/ml/h
【悪性高血圧】
RBC
262万 /μl
T.Bil
1.3
mg/dl
(0.5~2.0)
Hb ・拡張期血圧120~130
8.7g/dl
AST mmHg以上で、両側眼底に浸出性病
39
U/l
アルドステロン 101.3 ng/dl
Ht
24.8 %
ALT
25
U/l
(< 15.0)
変(Keith-Wagener
III度)を合併し、腎機能障害が急速に進
MCV
94.7 fl
LDH
655
U/l
ACTH
7.4
pg/ml
MCH 行して、放置すると全身状態が急激に増悪し心不全や高血圧
33.5 Pg
ALP
235
U/l
コルチゾール
17.2 μg/dl
MCHC脳症、脳出血を発症して予後不良なため、数時間以内に治
35.31%
γGTP 31
U/l
Plt
7.3万 /μl
BUN
12.4
mg/dl
TSH
1.95 μIU/ml
療を開始すべき高血圧。
Cr
1.17
mg/dl
freeT4
1.29 ng/ml
UA
4.1
mg/dl
PTH-INT
144 pg/ml
Na
136
mEq/l
BNP
160 pg/ml
K
2.6
mEq/l
Cl
95
mEq/l
Ca
9.4
mg/dl
P
2.0
mg/dl
HbA1c 3.8
%
血糖
131
mg/dl
Matsuyama Red Cross Hospital Internal Medicine
【症例】29歳、女性。悪性高血圧
(mmHg)
260
ラジレス1錠
オルメテック(10)1錠
カルデナリン(2)1錠
メインテート(5)1錠
アムロジン(2.5)1錠
(腎エコー;副腎腫瘍?)
200
【入院後一時帰宅】
100
1
2
3
4
4 (日)
高血圧緊急症を疑った場合の病態把握のために
必要なチェック項目
病歴,症状
高血圧の診断・治療歴,交感神経作動薬ほかの服薬
頭痛,視力障害,神経系症状,悪心・嘔吐,胸・背部痛,心・呼吸器症状,乏尿,体重の変化など
身体所見
血圧:測定を繰り返す(拡張期血圧は120mmHg以上のことが多い),左右差
脈拍,呼吸,体温
体液量の評価:頻脈,脱水,浮腫,立位血圧測定など
中枢神経系:意識障害,けいれん,片麻痺など
眼底:線状-火炎状出血,軟性白斑,網膜浮腫,乳頭浮腫など
頸部:頸静脈怒張,血管雑音など
胸部:心拡大,心雑音,心不全所見など
腹部:肝腫大,血管雑音,(拍動性)腫瘤など
四肢:浮腫,動脈拍動など
緊急検査
尿,血球検査(スメアを含む)
血液生化学(尿素窒素,クレアチニン,電解質,糖,LDH,CPKなど)
心電図,胸部X線,必要に応じ動脈血ガス分析
必要に応じ,心・腹部エコー,頭部CT,またはMRI,胸部・腹部CT
必要に応じ,血漿レニン活性,アルドステロン,カテコールアミン*,BNP濃度測定
* 褐色細胞腫の疑いがあれば少量のフェントラミン静注
救急で高血圧を診たら;緊急症?・切迫症?
CBC、生化学
胸写・心電図
(頭部CT)
(異常なし)
頭痛なし
視力障害なし
ノルバスク1錠 or
アダラートCR1錠 or
コニール2錠 or
アテレック2錠
⇒翌日 受診
(高血圧内科、
かかりつけ医、近医)
(異常あり)
専門科コンサルト(神経内科
・脳外科・腎内・循環器科・
高血圧内科等)
高血圧緊急症に用いられる注射薬(降圧薬)
薬剤
用法・用量
副作用・注意点
特殊条件下
高血圧の治療
主な適応
効果発現
作用持続
5-10分
15-30分
頻脈,頭痛,顔面紅潮,
局所の静脈炎など
ほとんどの緊急症。頭蓋内圧亢
進や急性冠症候群では要注意
急性心不全を除くほとんどの
緊急症
血管拡張薬
ニカルジピン
持続静注
0.5-6g/kg/分
ジルチアゼム
持続静注
5-15g/kg/分
5分以内
30分
徐脈,房室ブロック,洞停止
など。不安定狭心症では
低用量
ニトログリセリン
持続静注
5-100g/分
2-5分
5-10分
頭痛,嘔吐,頻脈,メトヘモグ
ロビン血症,耐性が生じや
すいなど。遮光が必要
急性冠症候群
頭蓋内圧亢進では要注意
ニトロプルシド
・ナトリウム
持続静注
0.25-2g/kg/分
瞬時
1-2分
悪心,嘔吐,頻脈,高濃度・
長時間でシアン中毒など。
遮光が必要
ほとんどの緊急症。頭蓋内圧亢
進や腎障害例では要注意
ヒドララジン
静注
10-20mg
10-20分
3-6時間
頻脈,顔面紅潮,頭痛,
狭心症の増悪,持続性の
低血圧など
子癇(第一選択薬ではない)
フェントラミン
静注
1-10mg
初回静注後0.5-2mg/分
で持続投与してもよい
1-2分
3-10分
頻脈,頭痛など
褐色細胞腫,カテコールアミン
過剰
プロプラノロール
静注
2-10mg(1mg/分)→
2-4mg/4-6時間ごと
徐脈,房室ブロック,
心不全など
他薬による頻脈
交感神経抑制薬
肺水腫,心不全や体液の貯留がある場合や耐性が生じた場合にはフロセミドやカルペリチドを併用する。
高血圧緊急症
脳血管障害急性期の降圧治療
・降圧する必要があるのか?、ないのか?
・降圧していいのか?、いけないのか?
(Hypertension. 2013;61:1309-1315.)
Hypertensive Subjects
・Age > 70
・Intensive BP lowering for 12 weeks(Target BP < 130/80 mmHg)
・Usual BP lowering for 12 weeka(Target BP <140/85 mmHg)
50
100
Changes in CBF
Whole gray matter CBF
120
80
60
40
R2=0.213
10
-10
20
20
pre post
0
30
Usual group
pre post
Intensive group
-30
-70
-50
-30
-10
10
Changes in systolic BP
30
(Hypertension. 2013;61:1309-1315.)
Schematic diagram of the autoregulatory curve shift
Hypertension
Cerebral blood flow
Intensive treated HT
130
140
Blood Pressure
150
(Hypertension. 2013;61:1309-1315.)
Schematic diagram of the autoregulatory curve shift
Normal subjects
Cerebral blood flow
Patient with acute stroke
150 mmHg
Blood Pressure
JSH2009; 脳血管症状急性期の降圧治療
Osaki Y, et al. Poststroke hypertension correlates with
neurologic recovery in patients with acute ischemic stroke.
Hypertens Res 1998;21:169
脳血管障害急性期の降圧治療(脳梗塞)
脳血管障害急性期の降圧治療(脳出血)
Randomized Control Trial
・a spontaneous intracerebral hemorrhage
・Intensive BP lowering (Target BP < 140mmHg for 1 hour)
・Guideline-recommended treatment (Target BP <180 mmHg)
・primary outcome
death or severe disability
・Functional outcomes
modified rankin scores
・降圧していいのか?⇒ Yes
・降圧する必要があるのか?⇒ Yes
脳血管障害急性期の降圧治療
高血圧性脳症・高血圧緊急症
クモ膜下出血
脳出血
脳梗塞
超急性期で血栓溶解療法(+)
超急性期で血栓溶解療法(-)。
脳血管障害急性期の降圧治療
高血圧性脳症・高血圧緊急症
クモ膜下出血
脳出血
脳梗塞
超急性期で血栓溶解療法(+)
超急性期で血栓溶解療法(-)。
脳血管障害急性期の降圧治療
高血圧性脳症・高血圧緊急症
クモ膜下出血
脳出血
脳梗塞
超急性期で血栓溶解療法(+)
超急性期で血栓溶解療法(-)。
・降圧する必要があるのか?⇒ Yes ?
・降圧していいのか?⇒ Yes?
症例提示 3
【症例】45歳、男性。
【現病歴】
平成25年、右半身にしびれ感が出現してたために当院脳
外科を受診し、左内包~放線冠に梗塞を指摘されて同日
入院した。
頭部MRI
頭部CT
【既往歴】平成24年;脳出血で当院脳
外科入院
【症例】45歳、男性。
頭部MRI
脳外科入院
頭部MRI
頭部MRA
内科紹介
120 mmHg
ディオバン160mg +アテレック20mg
BP>150 mmHgでニカルジピン開始
オルメテック40mg +コニール8mg
•
松山赤十字病院
Matsuyama Red Cross Hospital
Division of Hypertension and Endocrinology
創立101 周年
今後も質の高い医療をめざして
ご静聴ありがとうございました
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